説明

位置検出センサ

【課題】製造工程の遅延や製造コストの増大を抑制しつつ、高精度な位置検出を実現可能な位置検出センサを提供すること。
【解決手段】工作機械に装備された主軸に装着されるホルダと、上記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、上記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、を備えている。そして、上記アンテナは、当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう上記ホルダに装着されていると共に、上記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出センサにかかり、特に、工作機械に装備されワークなどの位置を検出する位置検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
加工対象となるワークを種々の形状に加工するマシニングセンタなどの工作機械では、ワークの加工位置や加工精度を検出するために、位置検出センサが取り付けられる。例えば、特許文献1に示す位置検出センサは、棒状の接触プローブを備えており、被測定物に接触した接触プローブが、X方向、Y方向、Z方向、あるいは、それらの合成した方向に変位すると、当該接触プローブ後端がZ方向に変位して、スイッチが押圧される。これにより、接触した位置に被測定物が存在することを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−264705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上述した接触プローブは、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれ所定量だけ変位可能なよう構成されているものの、その変位量はある範囲に制限されている。従って、許容されている変位量を超えて接触プローブが被測定物に接触すると、相互に過度の力で押圧し合うこととなる。そして、特に、上記構成の接触プローブは棒状部材で構成されているため、その強度が高く、接触プローブあるいは被測定物を破損してしまう、という問題が生じる。その結果、センサやワークを交換することによる製造工程の遅延が生じたり、製造コストが増大する、という問題も生じる。
【0005】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、製造工程の遅延や製造コストの増大を抑制しつつ、高精度な位置検出を実現可能な位置検出センサを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である位置検出センサは、
工作機械に装備された主軸に装着されるホルダと、
上記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、
上記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、を備えている。
そして、上記アンテナは、当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう上記ホルダに装着されていると共に、上記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にて形成されている。
【0007】
また、本発明の他の形態である位置検出センサユニットは、
工作機械に装備された複数の主軸にそれぞれ装着される第1の位置検出センサ、及び、第2の位置検出センサを備えている。
そして、上記第1の位置検出センサ及び上記第2の位置検出センサは、上記主軸に装着されるホルダと、上記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、上記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、をそれぞれ備えて構成されており、上記各アンテナは、それぞれ当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう上記各ホルダに装着されていると共に、上記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にてそれぞれ形成されている。
【0008】
また、上記第1の位置検出センサの上記アンテナは、当該アンテナに上記他の物体が接触したことにより静電容量が変化する静電容量型アンテナであり、上記第1の位置検出センサの上記接触検出手段は、上記アンテナの静電容量の変化に応じて上記物体と接触したことを検出する。
また、上記第2の位置検出センサの上記アンテナは、当該アンテナの一端側に位置する先端付近に他の物体が接触したことにより受けた押圧力にて当該アンテナの他端が可動するよう上記ホルダに装備されており、上記第2の位置検出センサの上記接触検出手段は、上記アンテナの他端の可動に応じて上記他の物体が接触したことを検出する。
そして、さらに、上記第1の位置検出センサと上記第2の位置検出センサとの検出結果に基づいて上記他の物体の位置を検出する位置検出手段を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されることにより、製造工程の遅延や製造コストの増大を抑制しつつ、高精度な位置検出を実現可能な位置検出センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1における位置検出センサが装備された工作機械の一部の構成を示す図である。
【図2】実施形態1における位置検出センサの構成を示す図である。
【図3】図1に開示した位置検出センサの構成及び動作を示す拡大断面図である。
【図4】図1に開示した位置検出センサの構成及び動作を示す拡大断面図である。
【図5】実施形態1における位置検出センサの使用例を示す図である。
【図6】実施形態1における位置検出センサの使用例を示す図である。
【図7】実施形態1における位置検出センサの使用例を示す図である。
【図8】実施形態1における位置検出センサの使用例を示す図である。
【図9】実施形態1における位置検出センサの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図9を参照して説明する。図1は、工作機械の一部の構成を示す図である。図2は、位置検出センサの構成を示す図であり、図3乃至図4は、位置検出センサの拡大断面図である。図5乃至図9は、位置検出センサの使用例を示す図である。
【0012】
[構成]
本実施形態における位置検出センサは、ボール盤、フライス盤、マシニングセンタなどの工作機械に装備するものである。ここで、図1に、工作機械の構成の一例を示す。図1に示すように、工作機械は、加工対象物であるワークWを載置してX−Y方向(図2参照)に可動するテーブルTを備えており、その上方に工具110を保持する複数のスピンドルヘッド部(主軸)を有する工具保持部100を備えている。この工具保持部100は、回転可能に構成されており、各スピンドルヘッド部に装備された工具110のうち必要なものを、ワークW上に配置して、当該工具110をZ方向(図1では上下方向、図2参照)に可動して、ワークWを加工する。
【0013】
そして、本実施形態における位置検出センサ1,2は、図1及び図2に示すように、上述したように工具110を保持するスピンドルヘッド部101に装着される。特に、本実施形態では、図1に示すように、2つの位置検出センサ1,2を備えている。これら位置検出センサ1,2は、それぞれ検出方法が異なり、その構成が異なっているが、基本的な構成は同一である。つまり、位置検出センサ1(2)は、図1及び図2に示すように、スピンドルヘッド部101に装着されるホルダ11(21)と、このホルダ11(21)の先端から突出して延びる1本のアンテナ12(22)と、を備えている。そして、アンテナ12(22)と協働して当該アンテナ12(22)が他の物体と接触したことを検出する検出部13(23)と、検出部13(23)による検出結果を無線通信にて外部に送信する送信機14(24)と、をホルダ11(21)内部に装備している。そして、さらに、上述した2つの位置検出センサ1,2を含む位置検出センサユニットの構成として、図2に示すように、位置検出センサ1,2の外部に、受信機31と、制御部32と、を備えている。以下、各構成について詳述する。
【0014】
まず、符号1に示す位置検出センサの構成について説明する。この位置検出センサ1は、静電容量型センサである。具体的には、位置検出センサ1のアンテナ12(静電容量型アンテナ)は、他の物体が接触すると当該アンテナ12の静電容量が変化するよう構成されている。そして、このアンテナ12には、当該アンテナ12の静電容量を検出する上記検出部13(接触検出手段)が接続されており、一定の時間間隔で検出した結果、アンテナ12の静電容量が設定値以上に減少するなど変化があると、アンテナが物体に接触したことを検出する。そして、検出部13は、検出結果を送信機14に通知する。
【0015】
そして、上記アンテナ12は、図1,2に示すように、所定の剛性を有する所定の長さの線状部材(針金状部材)にて構成されている。また、アンテナ12は、図3に示すように、先端部が予め設定された範囲に変位可能なよう構成されている。具体的には、アンテナ12の他端側がホルダ11内部で傾くなどして可動する可動部材15によって保持されている。このため、アンテナ12の先端部に他の物体が接触することにより側方から押圧力を受けると、上記可動部材15が傾くよう可動して、アンテナ12の先端部が押圧方向に変位する。このとき、アンテナ12は、所定の剛性を有しているため、その形状は変化せず、図3の符号R1に示す角度の範囲(変位許容量)内で変位する。
【0016】
また、上記アンテナ12は、上述したように所定の剛性を有していると共に、所定の弾性も有している。従って、アンテナ12が上述した図3の符号R1に示す変位許容量以上に変位した後に、さらに側方から押圧力を受けた場合には、アンテナ12自身が曲折する。これにより、過度にアンテナ12が移動されて、当該アンテナ12とワークWやテーブルT等が接触したとしても、アンテナ12の先端部が変位すると共に、その形状が曲折して変形することで、相互に当接したアンテナ12とワークW等の損傷を抑制することができる。
【0017】
また、上記送信機14は、上述したように検出部13が受け取ったアンテナに物体が接触したことを検出した結果を、赤外線通信にて外部に設置された受信機31に送信する。このとき、赤外線通信は、例えば、図2に示すように、ホルダ11の外周に設けられた赤外線発光ダイオード14aから出力する赤外線パルス信号を用いて行う。但し、送信機14による検出結果の送信は、赤外線通信で行うことに限定されない。他の無線通信方法にて検出結果を受信機31に送信してもよい。
【0018】
そして、上記受信機31は、上記送信機14から送信されたデータを無線通信にて受信し、制御部32に渡す。制御部32(位置検出手段)は、受信した検出結果に基づいて、ワークW等の物体の位置を検出する。例えば、アンテナ12から物体に接触した旨の通知を受信したときのテーブルTやスピンドルヘッド部101(工具保持部100)の位置に基づいて、その場所に物体が存在していることを検出する。さらに、制御部32は、予めワークWやクランプCの加工工程毎の位置や、ワークWの形状などを、テーブルT上における位置情報と共に記憶している。従って、後述するように、検出した物体(ワークWやクランプCなど)の位置に応じて、ワークWの配置や加工工程の順序などが正しいか否かを判断することができる。
【0019】
次に、符号2に示す位置検出センサの構成について説明する。この位置検出センサ2は、可動型センサである。具体的には、位置検出センサ2のアンテナ22は、当該アンテナ22の一端側に位置する先端付近に物体が接触したことにより当該先端付近に押圧力を受けると、その他端がホルダ21内で可動するよう構成されている。
【0020】
具体的に、アンテナ22は、図1,2に示すように、所定の剛性を有する所定の長さの線状部材(針金状部材)にて構成されている。そして、アンテナ22は、図4に示すように、アンテナ22の他端側がホルダ21内部で傾いたり、上方に移動するなどして可動する可動部材25によって保持されている。このため、アンテナ22の先端部に他の物体が接触することにより、例えば側方から押圧力を受けると、上記可動部材15が傾くよう可動して、アンテナ12の先端部が押圧方向に変位する。また、アンテナ22の先端側が当該アンテナ22の長手方向(上方)に押圧されたときに、当該アンテナ22自体が他端側(上方)に移動する。このとき、アンテナ22は、所定の剛性を有しているため、その形状は変化せず、当該アンテナ22の先端が、図4の符号R2に示す角度の範囲(変位許容量)内で変位し、また、図4の符号R3に示す距離の範囲(変位許容量)内で変位する。
【0021】
また、上記アンテナ22は、上述したように所定の剛性を有していると共に、所定の弾性も有している。従って、アンテナ22が上述した図4の符号R2,R3に示す変位許容量以上に変位した後に、さらに押圧力を受けた場合には、アンテナ22自身が曲折する。これにより、過度にアンテナ22が移動されて、当該アンテナ22とワークWやテーブルT等が接触したとしても、アンテナ22の先端部が変位すると共に、当該アンテナ22の形状が曲折して変形することで、相互に当接したアンテナ12とワークW等の損傷を抑制することができる。
【0022】
そして、このアンテナ22の他端には、当該アンテナ22が所定の距離以上可動したか否かを検出するスイッチを有する上記検出部23(接触検出手段)が接続されている。この検出部23は、上述したようにアンテナ22の先端が揺動したり長手方向に押されることで、当該アンテナ22の他端部の位置が上方に移動するが、この上方への移動によりスイッチが押圧されるよう構成されている。そして、検出部23は、スイッチが押されると、アンテナ22が物体に接触したことを検出し、検出結果を送信機24に通知する。
【0023】
また、上記送信機24は、上述したように検出部23が受け取ったアンテナに物体が接触したことを検出した結果を、赤外線通信にて外部に設置された受信機31に送信する。このとき、赤外線通信は、上述同様に、ホルダ21の外周に設けられた赤外線発光ダイオード24aにて出力した赤外線パルス信号を用いて行う。但し、送信機24による検出結果の送信は、赤外線通信で行うことに限定されない。
【0024】
そして、上記受信機31は、上記送信機14から送信されたデータを無線通信にて受信し、制御部32に渡す。制御部32(位置検出手段)は、受信した検出結果に基づいて、ワークW等の物体の位置を検出する。例えば、アンテナ22から物体に接触した旨の通知を受信したときのテーブルTやスピンドルヘッド部101(工具保持部100)の位置に基づいて、その場所に物体が存在していることを検出する。
【0025】
[使用例]
次に、上述した位置検出センサの使用例を、図5乃至図9を参照して説明する。まず、図5の例は、ワークWに対する加工済み穴の有無を判定し、加工が終了したワークWの付け替えを行ったか否かを判定する場合である。そして、図5(A)は、加工前のワークWを配置した場合であり、加工後に穴が開けられる位置に位置検出センサ2のアンテナ22を移動する。すると、加工前であるワークWには穴が空いておらず、アンテナ22の先端が接触する。そして、これを検出した位置検出センサ2は、検出結果を赤外線発光ダイオード24aにて赤外線通信で受信機31及び制御部32に通知する。これを受けた制御部32は、正常に新しいワークWに交換されていることを検出して、穴あけ加工工程に進むよう制御する。
【0026】
一方、図5(B)は、加工後のワークWをそのまま配置しており、ワークWの交換を忘れた場合である。この場合には、加工後に穴が開けられる位置に位置検出センサ2のアンテナ22を移動すると、予定位置にアンテナ22を移動しても接触の検出を得られない。すると、これを制御部32が検知して、ワークWの交換忘れを通知するアラートを出力する。これにより、すでに加工したワークWの2度加工を抑制することができる。
【0027】
なお、上述した使用例では、アンテナを付き当てる動作を行うため、上述した符号2に示す可動式の位置検出センサを用いることが望ましい。つまり、可動式の位置検出センサ2は、アンテナ22が上方に変位許容量だけ変位可能に構成されているため、ワークWに接触したときに、アンテナ22とワークWとの損傷を抑制することができる。また、仮に、さらにアンテナ22をワークW等に対して強く接触させてしまった場合であっても、アンテナ22が曲折するため、当該アンテナ22自体あるいはワークW等の損傷を抑制することができる。
【0028】
続いて、図6の例は、ワークWの形状を判定し、ワークWの取り付け方向が正しいか否かを判定する場合である。そして、図6(A)は、ワークWを正しい方向に配置した場合であり、ワークWに形成された凸状部W1に上方から位置検出センサ2のアンテナ22を移動する。すると、予め設定されている位置に凸状部W1の上端にアンテナ22の先端が接触する。そして、これを検出した位置検出センサ2は、検出結果を赤外線発光ダイオード24aにて赤外線通信で受信機31及び制御部32に通知する。これを受けた制御部32は、ワークWが正しい方向は配置されていることを検出して、次の工程に進むよう制御する。
【0029】
一方、図6(B)は、ワークWを誤った方向に配置した場合である。この場合には、ワークWに形成された凸状部W1があるはずの予定位置に凸状部W1がなく、当該予定位置にアンテナ22を移動しても接触の検出を得られない。すると、これを制御部32が検知して、ワークWの方向の間違いを通知するアラートを出力する。これにより、ワークWを誤った方向に配置して加工することを抑制でき、加工ミスを防止することができる。
【0030】
なお、上述した使用例でも、アンテナを付き当てる動作を行うため、上述した符号2に示す可動式の位置検出センサを用いることが望ましい。これにより、アンテナ22とワークWとの損傷を抑制することができる。
【0031】
続いて、図7の例は、ワークWが正しく配置されているか否かを判定する場合である。そして、図7(A)は、ワークWを正しく配置した場合であり、ワークWが配置されていると設定されている場所の上方から位置検出センサ2のアンテナ22を移動する。すると、予定された位置でワークWの上面にアンテナ22の先端が接触する。そして、これを検出した位置検出センサ2は、検出結果を赤外線発光ダイオード24aにて赤外線通信で受信機31及び制御部32に通知する。これを受けた制御部32は、ワークWが正しく配置されていることを検出して、次の工程に進むよう制御する。
【0032】
一方、図7(B)は、ワークWを配置することを忘れた場合である。この場合には、ワークWが配置されているはずの予定位置にワークW自体がなく、当該予定位置にアンテナ22を移動しても接触の検出を得られない。すると、これを制御部32が検知して、ワークWの配置忘れを通知するアラートを出力する。これにより、ワークWを配置せずに加工を開始してしまうことを抑制でき、製造工程の遅延を抑制することができる。
【0033】
なお、上述した使用例でも、アンテナを付き当てる動作を行うため、上述した符号2に示す可動式の位置検出センサを用いることが望ましい。これにより、アンテナ22とワークWとの損傷を抑制することができる。
【0034】
続いて、図8の例は、ワークWをテーブルT上で保持するクランプCの位置がずれていないかを判定する場合である。そして、図8(A)は、ワークWを保持するクランプCの位置を正しく配置した場合であり、クランプCが位置しているはずの予定位置の側方から位置検出センサ1のアンテナ12を移動する。すると、予定位置でクランプCの側面にアンテナ12が接触する。そして、これを検出した位置検出センサ1は、検出結果を赤外線発光ダイオード14aにて赤外線通信で受信機31及び制御部32に通知する。これを受けた制御部32は、クランプCが正しい位置に配置されており、ワークWが正しく保持されていることを検出して、次の工程に進むよう制御する。
【0035】
一方、図8(B)は、ワークWを保持するクランプCを正しく配置しなかった場合である。この場合には、クランプCが配置されているはずの予定位置にクランプC自体がなく、予定位置にアンテナ12を移動しても接触の検出を得られない。すると、これを制御部32が検知して、クランプCの位置ずれを通知するアラートを出力する。これにより、ワークWをクランプCで保持せずに加工を開始してしまうことを抑制でき、製造工程の遅延を抑制することができる。
【0036】
なお、上述した使用例では、物体の側方にアンテナの側方を接触させて検出する動作を行うため、上述した符号1に示す静電容量式の位置検出センサを用いることが望ましい。これにより、アンテナ12とクランプCとの損傷を抑制することができる。
【0037】
続いて、図9の例は、ワークWを加工する工程の順序が正か否か判定する場合である。そして、図9(A)は、ワークWの加工工程が正しい順序で進んでいる場合であり、ワークWに穴が形成されているはずの予定位置の上方から位置検出センサ2のアンテナ22を移動する。すると、ワークWに穴が形成されているはずの予定位置で接触が検出されない。従って、制御部32は、ワークWが正しい順序の工程を経て加工されていることを検出でき、次の工程に進むよう制御する。
【0038】
一方、図9(B)は、ワークWの穴あけ工程を飛ばした場合である。この場合には、ワークWに穴が形成されているはずの予定位置に穴が形成されておらず、当該予定位置にアンテナ22を上方から移動すると、ワークWと接触する。そして、これを検出した位置検出センサ2は、検出結果を赤外線発光ダイオード24aにて赤外線通信で受信機31及び制御部32に通知する。これを受けた制御部32は、ワークWが正しい順序の加工工程を経ていないことを検出し、アラートを出力する。これにより、ワークWの工程飛ばしによる不良を検出でき、製造工程の遅延を抑制することができる。
【0039】
なお、上述した使用例でも、アンテナを付き当てる動作を行うため、上述した符号2に示す可動式の位置検出センサを用いることが望ましい。これにより、アンテナ22とワークWとの損傷を抑制することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態における位置検出センサは、アンテナが弾性を有する線状部材で構成されているため、物体との接触を高精度に検出しつつ、アンテナと物体の損傷を抑制することができる。そして、アンテナに高価な部品を装備することなく、当該アンテナの構成を簡易かつ低コストに構成することができる。その結果、センサ自体の組み付けの容易化、低コスト化を図ることができる。そして、特に、上述したように、静電容量型と可動型の2つのアンテナを用いることで、主に静電容量型でアンテナ先端付近の側方に位置する物体を、可動型で先端方向の位置する物体を、破損を抑制しつつそれぞれ高精度に検出することができる。
【0041】
また、本実施形態における位置検出センサは、検出結果を無線通信にて外部の受信機に送信している。従って、複数の位置検出センサを工作機械に装備した場合であっても配線が不要であり、工作機械への装着が容易となる。
【0042】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、上述した位置検出センサの構成の概略を説明する。
【0043】
本実施形態における位置検出センサは、工作機械に装備された主軸に装着されるホルダと、上記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、上記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、を備えている。そして、上記アンテナは、当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう上記ホルダに装着されていると共に、上記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にて形成されている、という構成を採る。
【0044】
また、上記位置検出センサでは、上記アンテナは、当該アンテナに上記他の物体が接触したことにより静電容量が変化する静電容量型アンテナであり、上記接触検出手段は、上記アンテナの静電容量の変化に応じて上記他の物体と接触したことを検出する、という構成を採る。
【0045】
また、上記位置検出センサでは、上記アンテナは、当該アンテナの一端側に位置する先端付近に上記他の物体が接触したことにより受けた押圧力にて当該アンテナの他端が可動するよう上記ホルダに装備されており、上記接触検出手段は、上記アンテナの他端の可動に応じて上記他の物体が接触したことを検出する、という構成を採る。
【0046】
さらに、上記位置検出センサでは、上記アンテナは、当該アンテナの先端側が当該アンテナの長手方向に押圧されたときに当該アンテナ自体が他端側に上記変位許容量だけ変位可能なよう上記ホルダに装着されている、という構成を採る。
【0047】
上記構成の位置検出センサによると、アンテナが弾性を有する線状部材であるため、他の物体と接触してアンテナの変位許容量を超えたとしても、当該アンテナが曲折する。従って、アンテナあるいは他の物体が破損することを抑制することができ、製造工程の遅延や製造コストの増加を抑制することができる。そして、線状部材のアンテナは、当該アンテナ自体に接触することにより静電容量が変化する静電容量型や、先端に他の物体が接触したことにより受ける押圧力にて他端が可動する可動型の構成により、実現することができる。従って、アンテナに高価な部品を装備することなく、当該アンテナの構成を簡易かつ低コストに構成することができ、センサ自体の組み付けの容易化、低コスト化を図ることができる。
【0048】
また、本発明では、上述した2種類の位置検出センサ装備した位置検出センサユニットを提供している。具体的に、位置検出センサユニットは、工作機械に装備された複数の主軸にそれぞれ装着される第1の位置検出センサ、及び、第2の位置検出センサ備えている。
そして、上記第1の位置検出センサ及び上記第2の位置検出センサは、上記主軸に装着されるホルダと、上記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、上記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、をそれぞれ備えて構成されており、上記各アンテナは、それぞれ当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう上記各ホルダに装着されていると共に、上記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にてそれぞれ形成されている。
【0049】
また、上記第1の位置検出センサの上記アンテナは、当該アンテナに上記他の物体が接触したことにより静電容量が変化する静電容量型アンテナであり、上記第1の位置検出センサの上記接触検出手段は、上記アンテナの静電容量の変化に応じて上記物体と接触したことを検出する、という構成を採る。
また、上記第2の位置検出センサの上記アンテナは、当該アンテナの一端側に位置する先端付近に他の物体が接触したことにより受けた押圧力にて当該アンテナの他端が可動するよう上記ホルダに装備されており、上記第2の位置検出センサの上記接触検出手段は、上記アンテナの他端の可動に応じて上記他の物体が接触したことを検出する、という構成を採る。
そしてさらに、上記第1の位置検出センサと上記第2の位置検出センサとの検出結果に基づいて上記他の物体の位置を検出する位置検出手段を備えた、という構成を採る。
【0050】
また、上記位置検出センサユニットでは、上記第2の位置検出センサの上記アンテナは、当該アンテナの先端側が当該アンテナの長手方向に押圧されたときに当該アンテナ自体が他端側に上記変位許容量だけ変位可能なよう上記ホルダに装着されている、という構成を採る。
【0051】
また、上記位置検出センサユニットでは、上記第1の位置検出センサと、上記第2の位置検出センサとは、上記各接触検出手段による検出結果を外部に無線通信にて送信する送信機をそれぞれ備えると共に、上記送信機から無線通信にて送信された各検出結果を受信して上記位置検出手段に通知する受信機を備えた、という構成を採る。
【0052】
上記構成の位置検出センサユニットによると、まず、上述同様に、アンテナが弾性を有する線状部材であるため、他の物体と接触してアンテナの変位許容量を超えたとしても、当該アンテナが曲折する。従って、アンテナあるいは他の物体が破損することを抑制することができ、製造工程の遅延や製造コストの増加を抑制することができる。そして、さらに、静電容量型と可動型の2つのアンテナを用いることで、主に静電容量型でアンテナ先端付近の側方に位置する物体を、可動型で先端方向の位置する物体を、破損を抑制しつつそれぞれ高精度に検出することができる。そして、さらに、各位置検出センサによる検出結果を無線通信にて外部の受信機に送信する送信機を装備することで、複数の位置検出センサを装備した場合であっても配線が不要であり、工作機械への装着が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明における位置検出センサは、ボール盤、フライス盤、マシニングセンタなどの工作機械に装備して、ワークやクランプなどの位置を検出するために利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
1,2 位置検出センサ
11,21 ホルダ
12,22 アンテナ
13,23 検出部
14,24 送信機
14a,24a 赤外線発光ダイオード
15,25 可動部材
100 工具保持部
101 スピンドルヘッド部
110 工具
C クランプ
T テーブル
W ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に装備された主軸に装着されるホルダと、
前記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、
前記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、を備え、
前記アンテナは、当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう前記ホルダに装着されていると共に、前記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にて形成されている、
位置検出センサ。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出センサであって、
前記アンテナは、当該アンテナに前記他の物体が接触したことにより静電容量が変化する静電容量型アンテナであり、
前記接触検出手段は、前記アンテナの静電容量の変化に応じて前記他の物体と接触したことを検出する、
位置検出センサ。
【請求項3】
請求項1記載の位置検出センサであって、
前記アンテナは、当該アンテナの一端側に位置する先端付近に前記他の物体が接触したことにより受けた押圧力にて当該アンテナの他端が可動するよう前記ホルダに装備されており、
前記接触検出手段は、前記アンテナの他端の可動に応じて前記他の物体が接触したことを検出する、
位置検出センサ。
【請求項4】
請求項3記載の位置検出センサであって、
前記アンテナは、当該アンテナの先端側が当該アンテナの長手方向に押圧されたときに当該アンテナ自体が他端側に前記変位許容量だけ変位可能なよう前記ホルダに装着されている、
位置検出センサ。
【請求項5】
工作機械に装備された複数の主軸にそれぞれ装着される第1の位置検出センサ、及び、第2の位置検出センサを備え、
前記第1の位置検出センサ及び前記第2の位置検出センサは、前記主軸に装着されるホルダと、前記ホルダの先端から突出して延びるアンテナと、前記アンテナが他の物体と接触したことを検出する接触検出手段と、をそれぞれ備えて構成されており、前記各アンテナは、それぞれ当該アンテナの先端側が予め設定された変位許容量だけ変位可能なよう前記各ホルダに装着されていると共に、前記他の物体との接触により外部から所定の力がかかったときに曲折するよう弾性を有する線状部材にてそれぞれ形成されており、
前記第1の位置検出センサの前記アンテナは、当該アンテナに前記他の物体が接触したことにより静電容量が変化する静電容量型アンテナであり、前記第1の位置検出センサの前記接触検出手段は、前記アンテナの静電容量の変化に応じて前記物体と接触したことを検出し、
前記第2の位置検出センサの前記アンテナは、当該アンテナの一端側に位置する先端付近に他の物体が接触したことにより受けた押圧力にて当該アンテナの他端が可動するよう前記ホルダに装備されており、前記第2の位置検出センサの前記接触検出手段は、前記アンテナの他端の可動に応じて前記他の物体が接触したことを検出し、
前記第1の位置検出センサと前記第2の位置検出センサとの検出結果に基づいて前記他の物体の位置を検出する位置検出手段を備えた、
位置検出センサユニット。
【請求項6】
請求項5記載の位置検出センサユニットであって、
前記第2の位置検出センサの前記アンテナは、当該アンテナの先端側が当該アンテナの長手方向に押圧されたときに当該アンテナ自体が他端側に前記変位許容量だけ変位可能なよう前記ホルダに装着されている、
位置検出センサユニット。
【請求項7】
請求項5又は6記載の位置検出センサユニットであって、
前記第1の位置検出センサと、前記第2の位置検出センサとは、前記各接触検出手段による検出結果を外部に無線通信にて送信する送信機をそれぞれ備えると共に、
前記送信機から無線通信にて送信された各検出結果を受信して前記位置検出手段に通知する受信機を備えた、
位置検出センサユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143484(P2011−143484A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4482(P2010−4482)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(508375066)日本アイディーシステム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】