説明

位置検出装置およびカメラ

【課題】 1つの検出軸のみだけで独立して精度の良い位置検出を可能とする位置検出装置を提供すること。また、このような位置検出装置をカメラ振れによる像振れの補正に利用したカメラを提供すること。
【解決手段】 位置検出装置は、互いに垂直なx方向、y方向、z方向の座標軸を定義した場合に、x方向の位置を検出する。この位置検出装置は、x方向の同一平面内にN極11とS極12が配置され、x方向の位置によってx方向に垂直なz方向の磁場の強度が異なるように構成された磁石11、12と、この磁石の磁場の中に配置され、x方向に移動可能に構成され、x方向の位置によりz方向の磁場の影響を受けて出力が異なるホール素子3と、ホール素子3の出力に基づきホール素子3のx方向の位置を演算する位置演算部32とを備える。この磁石11、12は、磁石のy方向中央からy方向に位置がずれるにつれて、x方向のN極11とS極12の間の距離を短くするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場強度を検出することにより移動対象の位置を検出する位置検出装置、およびこの位置検出装置をカメラ振れによる像振れの補正に利用したカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
磁石およびホール素子を利用した位置検出装置が知られている。このような位置検出装置を2軸分設け、一方の軸方向の位置を検出する際に、他の軸の位置検出装置の出力を利用してオフセットを行う技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−39303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、一方の軸方向の位置を精度よく検出するために、他方の軸の位置検出装置の出力を利用するため、被検出体に回転が発生した場合に正確な位置検出ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、1つの検出軸のみだけで独立して精度の良い位置検出を可能とする位置検出装置を提供する。また、このような位置検出装置をカメラ振れによる像振れの補正に利用したカメラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、互いに垂直なx方向、y方向、z方向の座標軸を定義した場合に、x方向の位置を検出する位置検出装置に適用され、x方向にN極とS極が配置され、x方向の位置によってx方向に垂直なz方向の磁場の強度が異なるように構成された磁石と、磁石の磁場の中に配置され、x方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりz方向の磁場の影響を受けて出力が異なる磁気センサ手段と、磁気センサ手段の出力に基づき磁気センサ手段のx方向の位置を演算する位置演算手段とを備え、磁石は、磁石のy方向中央からy方向に位置がずれてもz方向の磁場の強度が一定になるように構成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、磁石は、磁石のy方向中央からy方向に位置がずれてもz方向の磁場の強度が一定になるように、y方向中央からy方向にずれるにつれてx方向のN極とS極の間の距離を短くするように構成されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、互いに垂直なx方向、y方向、z方向の座標軸を定義した場合に、x方向の位置を検出する位置検出装置に適用され、x方向にN極とS極が配置され、x方向の位置によってx方向に垂直なz方向の磁場の強度が異なるように構成された磁石と、磁石の磁場の中に配置され、x方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりz方向の磁場の影響を受けて出力が異なる第1の磁気センサ手段と、第1の磁気センサ手段の出力に基づき第1の磁気センサ手段のx方向の位置を演算するx方向位置演算手段とを備え、磁石の磁場の中に配置され、第1の磁気センサ手段と一体になってx方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりy方向の磁場の影響を受けて出力が異なる第2の磁気センサ手段と、2の磁気センサ手段の出力に基づき第1の磁気センサ手段のy方向の位置を演算するy方向位置演算手段とをさらに備え、x方向位置演算手段は、y方向位置演算手段による第1の磁気センサ手段のy方向の位置を考慮して、第1の磁気センサ手段のx方向の位置を演算することを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、カメラに適用され、カメラの振れを検出するカメラ振れ検出手段と、カメラの振れによる像振れを補正する振れ補正レンズと、振れ補正レンズの位置を検出する請求項1から3のいずれかに記載の位置検出装置と、カメラ振れ検出手段により検出されたカメラの振れと、位置検出装置により検出された振れ補正レンズの位置とに基づき、振れ補正レンズの駆動を制御する駆動制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成しているので、1つの検出軸のみだけで独立して精度の良い位置検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
−第1の実施形態−
本発明の一実施の形態である位置検出装置は、磁石(永久磁石)およびホール素子を利用する。まず、図1を参照して、位置検出装置の原理を説明する。図1は、磁石およびホール素子を利用した位置検出装置の原理を説明する図である。
【0009】
図1(a)は磁石1、2を上部から見た平面図、図1(b)は磁石1、2およびホール素子3を側面から見た側面図、図1(c)はホール素子3の出力を示す図、図1(d)は座標軸の定義を示す図である。
【0010】
磁石1、2は直方体形状を有し、磁石1のN極と磁石2のS極が同一平面内でx軸方向に一定の距離D離れて配置されている。このように配置された磁石1、2は、図1(b)に示すような磁場を形成する。ホール素子3は、このように形成された磁場の中をx軸方向に移動する。ホール素子3は、ある一方向の磁場(磁気)が検出可能な素子であり、図1では、z軸方向の磁場を検出するような姿勢を保ちながらx軸方向に移動する。
【0011】
このような磁場の中を、z軸方向の磁力強度を検出するように姿勢が保たれたホール素子3がx軸方向に移動すると、図1(c)のような出力を得ることができる。図1(c)のリニアな領域4を使用することにより、磁石1、2とホール素子3とのx軸方向の相対的な位置関係が分かる。このような原理を利用して移動物体の位置検出が行われる。
【0012】
次に、図1の磁石1、2の問題点を説明する。図2は、磁石1、2の問題点を説明する図である。図2(a)は、図1(a)と同様に、磁石1、2を上部から見た平面図であり、図2(b)はホール素子3の出力を示す図である。図1あるいは図2のような磁石1、2においては、磁石のy軸方向中心付近(y=0)からy軸方向周辺(y=+k、−k)に行くにつれて、磁力強度は小さくなることが分かっている。
【0013】
図2(b)は、ホール素子3がy=0上をx軸方向に移動する場合の出力5と、y=+k、−k上をx軸方向に移動する場合の出力6が示されている。y=+k、−k付近ではy=0付近に比べて磁力強度が小さいため、ホール素子3の出力が小さい値を示し、リニアな領域4の傾きが小さくなる。従って、ホール素子3がx軸方向にy=0上を移動するものとして設計されている場合に、x軸方向に移動するときにy軸方向にぶれると出力に誤差を生じる。その結果、位置検出精度が低下する。
【0014】
そこで、第1の実施の形態では、磁石1、2の形状に工夫をこらし、上記誤差が生じないようにした。図3は、第1の実施の形態の磁石11、12およびホール素子3の出力を示す図である。
【0015】
図1の磁石1、2では、磁石1のN極と磁石2のS極との距離は、y軸方向に移動しても一定の距離Dとなるようにされている。しかし、図3の磁石11、12では、磁石11のN極と磁石12のS極との距離を、y軸方向中心付近(y=0)からy軸方向周辺(y=+k、−k)に行くにつれて近づけるような構成とした。
【0016】
このような構成を実現するために、磁石11、12の形状を、図3(a)に示すような湾曲した形状とした。図3(a)のような形状をした磁石11、12は、公知な手法を含むさまざまな手法により作製することができる。
【0017】
例えば、着磁ヘッドの形状を特殊な形状に形成し、このような特殊な形状の着磁ヘッドを使用して磁石となる素材に着磁して作成する。この場合、1個の磁石を領域により磁化状態を変えることにより図3(a)のような着磁状態が得られる。また、図3の磁石11、12のような形状をしたシート状の磁石(z軸方向の厚みが薄い)を形成し、土台(ヨークなど)に貼り付けるようにしてもよい。また、直方体や他の形状をした磁石から、図3の磁石11、12のような形状の磁石を切り出して作るようにしてもよい。さらに、磁石となる素材を着磁前に図3の磁石11、12のような形状に形成し、その後、着磁するようにしてもよい。
【0018】
磁石11と磁石12の相対する面は、図3(a)に示されているように、上面から見た場合2次曲線的な形状を呈している。しかし、必ずしもこのような曲線でなくてもよい。直線を接続するような折れ線状であってもよい。すなわち、y軸方向中心付近(y=0)からy軸方向周辺(y=+k、−k)に行くにつれて、磁石11のN極と磁石12のS極との距離が近づくような構成であればよい。
【0019】
図3(b)は、図3(a)のように構成された磁石11、12の磁場の中を、ホール素子3がy=0上をx軸方向に移動する場合の出力13と、y=+k、−k上をx軸方向に移動する場合の出力14が示されている。y=+k、−k付近では、N極とS極を近づけることにより磁力強度の低下を防いでいる。その結果、出力13と出力14はリニアな領域15が一致する。
【0020】
ただし、図3(a)から分かるように、磁石11の中心と磁石12の中心間の距離(x軸方向の距離)は、y軸方向中心付近(y=0)よりy軸方向周辺(y=+k、−k)の方が短い。その結果、出力14の方が、x軸方向中心からx軸方向に移動するときの出力のピークは早く現れ、リニアな領域の範囲は狭い。しかし、一致するリニアな領域15を位置検出に使用する限り、ホール素子3がy軸方向にぶれても誤差は生じない。
【0021】
図4は、図3の磁石11、12を使用した位置検出装置をカメラのブレ補正レンズの位置検出に応用した構成を示す図である。カメラの振れ補正レンズの制御は、ジャイロ23、24などからカメラの振れを検出し、これを打ち消すように、モータ26、27を使用して、振れ補正レンズ25を光軸と直交する平面内でx方向、y方向独立に駆動する。本実施の形態の位置検出装置は、モータ26、27により駆動され常時移動している振れ補正レンズ25の位置を検出する。振れ補正レンズ25は、光軸に垂直に駆動されることにより、カメラの振れによる光学像の振れを補正する。
【0022】
位置検出部21は、図3(a)に示す磁石11、12およびホール素子3により構成され、振れ補正レンズ25のx方向の位置の変化に対応した信号を出力する。位置検出部22は、同様に、図3(a)に示す磁石11、12およびホール素子3により構成され、振れ補正レンズ25のy方向の位置の変化に対応した信号を出力する。なお、y方向の位置の変化を検出する位置検出部22は、図1〜図3の説明において、x軸とy軸を入れ替えて考えればよい。すなわち、ホール素子3はy軸方向に移動するように構成される。なお、ホール素子3は振れ補正レンズ25のレンズ枠40に固定され、磁石11、12はレンズ鏡筒(不図示)側に固定される。
【0023】
位置検出部21、22のホール素子3の出力は、差動増幅28、29で増幅され、A/D回路30、31でデジタルデータVHx、VHyに変換されて位置演算部32、33に入力される。位置演算部32、33は、入力されたデジタルデータVHx、VHy、および、内部メモリ(不図示)に格納されたホール素子3の出力特性などに基づき、演算により振れ補正レンズ25のx方向およびy方向の位置情報Posx、Posyを求める。
【0024】
位置検出部21、差動増幅28、A/D回路30、位置演算部32は、振れ補正レンズ25のx方向の位置を検出する位置検出装置を構成し、位置検出部22、差動増幅29、A/D回路31、位置演算部33は、振れ補正レンズ25のy方向の位置を検出する位置検出装置を構成する。
【0025】
比較部34、35は、位置情報Posx、Posyとジャイロ23、24との出力値を入力して比較し、偏差を求めて駆動演算部36、37に出力する。駆動演算部36、37は、入力された偏差に基づき、振れ補正レンズ25のx方向およびy方向の駆動量を求めてモータドライブ回路(IC)38、39に出力する。モータドライブ回路38、39は、入力された駆動量信号に基づきモータ26、27をそれぞれ駆動する。
【0026】
位置演算部32、33、比較部34、35、駆動演算部36、37は、マイクロプロセッサ41および周辺回路により構成され、所定のプログラムを実行することにより、それぞれの演算を行う。
【0027】
以上のように構成された第1の実施の形態の位置検出装置は、次のような効果を奏する。
(1)磁石11、12を、図3(a)に示すように、y軸方向中央からy軸方向に位置がずれてもz軸方向の磁場の強度が一定になるように構成するようにしたので、ホール素子3がx軸方向に移動するときにy軸方向にずれても誤差のない正確な位置検出信号を出力する。これにより、誤差のない正確な位置検出が可能となる。
(2)磁石11、12は、y軸方向中央からy軸方向に位置がずれてもz軸方向の磁場の強度が一定になるように、y軸方向中央からy軸方向にずれるにつれてx軸方向のN極とS極の間の距離を短くするように構成したので、簡単な構成で誤差のない正確な位置検出装置が可能となる。
(3)本実施の形態の位置検出装置は、1つの検出軸の位置を検出する位置検出装置のみで、誤差のない正確な位置検出を実現している。すなわち、他の検出軸の位置を検出する位置検出装置の出力を使用する必要がない。これにより、1つの検出軸のみだけで独立して精度の良い位置検出を可能とし、このような位置検出装置を利用する振れ補正レンズの制御などの構成を簡単にしている。言い換えれば、本実施の形態の位置検出装置は、検出方向とは別の方向(同じ平面内で垂直に交差する方向)に検出対象物体が移動している場合に生じる検出誤差を、他軸の位置検出装置の出力に頼ることなく押さえることができ、簡単な構成で精度良く位置検出を行うことができる。
【0028】
−第2の実施形態−
第1の実施の形態では、磁石11、12の形状を工夫することにより、ホール素子3がy方向にずれても、位置検出に誤差を生じないようにした。第2の実施の形態では、2つのホール素子を使用して、ホール素子がy方向にずれても、誤差の生じない構成を実現する。
【0029】
図5は、第2の実施の形態の磁石53、54およびホール素子51、52を説明する図である。図5(a)は、磁石53、54およびホール素子51、52を斜め上方から見た斜視図、図5(b)は磁石53、54のxy平面内の磁力線の様子を示す図、図5(c)はホール素子52の出力を示す図である。座標軸は、図1(d)と同様に定義される。
【0030】
磁石53、54は、第1の実施の形態で説明した図1の磁石1、2と同様である。ホール素子51、52のうち、ホール素子51は、第1の実施の形態で説明したホール素子3と同様である。すなわち、図1の磁石1、2およびホール素子3とは、ホール素子52が追加されている点が異なる。
【0031】
ホール素子51は、ホール素子3と同様に、z軸方向の磁場を検出するような姿勢を保ちながらx軸方向に移動する。ホール素子52は、y軸方向の磁場を検出するような姿勢を保ちながら、ホール素子51と一体になってx軸方向に移動する。
【0032】
図5(c)は、ホール素子52がy=0上をx軸方向に移動する場合の出力55と、y=+k上をx軸方向に移動する場合の出力56と、y=−k上をx軸方向に移動する場合の出力57とが示されている。このような磁場の中を、y軸方向の磁力強度を検出するように姿勢が保たれたホール素子52がx軸方向に移動すると、図5(c)のような出力を得ることができる。
【0033】
なお、図5(b)は、y=0上からのみ磁界が発生し磁場が形成されているように記載されているが、実際には磁石53、54のy方向のあらゆる点からも磁界が発生している。図5(b)は、それらを総合した磁石53、54全体の磁場を概念的に理解できるように図示されたものとして理解すればよい。
【0034】
第2の実施の形態では、y=+aからy=−aの範囲の図5(c)に示されるようなホール素子52の出力特性と、y=+aからy=−aの範囲の図2(b)に示されるようなホール素子51の出力特性とを予めデータとして保有し、検出されたホール素子51、52の出力とこれらのデータに基づき検出対象の位置の演算を行う。なお、y=+a、−aは、検出対象がy軸方向にずれるとされる最大値および最小値を示す。処理の詳細については後述する。
【0035】
図6は、図5の磁石53、54およびホール素子51、52を使用した位置検出装置をカメラのブレ補正レンズの位置検出に応用した構成を示す図である。カメラの振れ補正レンズの制御は、基本的に第1の実施の形態と同様に行われる。第1の実施の形態の図4と異なるところは、2つのホール素子を使用して1軸の位置検出を行っているところである。
【0036】
ホール素子51x、52xの出力は、差動増幅61、62で増幅され、A/D回路63、64でデジタルデータVHx1、VHx2に変換されて位置演算部65に入力される。位置演算部65は、入力されたデジタルデータVHx1、VHx2、および、内部メモリ(不図示)に格納されたホール素子51x、52xの出力特性などに基づき、演算により振れ補正レンズ25のx方向の位置情報Posxを求める。
【0037】
ホール素子51y、52yの出力は、差動増幅71、72で増幅され、A/D回路73、74でデジタルデータVHy1、VHy2に変換されて位置演算部75に入力される。位置演算部75は、入力されたデジタルデータVHy1、VHy2、および、内部メモリ(不図示)に格納されたホール素子51y、52yの出力特性などに基づき、演算により振れ補正レンズ25のy方向の位置情報Posyを求める。
【0038】
ホール素子51x、52x、磁石53x、54x(不図示)、差動増幅61、62、A/D回路63、64、位置演算部65は、振れ補正レンズ25のx方向の位置を検出する位置検出装置を構成し、ホール素子51y、52y、磁石53y、54y(不図示)、差動増幅71、72、A/D回路73、74、位置演算部75は、振れ補正レンズ25のy方向の位置を検出する位置検出装置を構成する。
【0039】
ジャイロ23、24、比較部34、35、駆動演算部36、37、モータドライブ回路38、39、モータ26、27の動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0040】
図7は、マイクロプロセッサ66の位置演算部65の処理のフローチャートを示す図である。ステップS1では、ホール素子51xの出力に対応したデータVHx1を取得する。ステップS2では、ホール素子52xの出力に対応したデータVHx2を取得する。ステップS3では、データVHx1に基づき、ホール素子51x、52xの誤差を含むx軸方向の位置を求める。
【0041】
ステップS4では、ステップS3で求められたx軸方向の位置とy軸方向の磁力強度であるデータVHx2とによって特定される座標点を通過するホール素子52xの出力グラフを求める。マイクロプロセッサ66には、内部メモリ(不図示)に、y=+aからy=−aの範囲の図5(c)で示されるグラフのデータセットが格納されている。座標点が特定されると、このデータセットを参照し、この座標点を通過するy=いずれかのグラフが特定できる。その結果、ホール素子51x、52xのy軸方向の位置を求めることができる。
【0042】
ステップS5では、ステップS4で求めたホール素子51x、52xのy軸方向の位置に基づき、ホール素子51xの出力を補正する。マイクロプロセッサ66には、内部メモリ(不図示)に、y=+aからy=−aの範囲の図2(c)で示されるグラフのデータセットが格納されている。ホール素子51xのy軸方向の位置が分かると、このデータセットを参照し、ホール素子51xの出力データであるVHx1の補正値を求めることができる。すなわち、y=0を基準としたデータに補正することができる。
【0043】
ステップS6では、補正後のホール素子51xのx方向の位置データ、および、内部メモリ(不図示)に格納されたホール素子51xの出力特性などに基づき、演算により振れ補正レンズ25のx方向の位置情報Posxを求める。
【0044】
y方向の位置情報Posyも同様にして求めることができる。
【0045】
なお、第2の実施の形態では、ホール素子51、52を、図5(a)のようにz軸方向に並べる構成を示した。しかし、図8に示すようにy軸方向に並べる構成であってもよい。
【0046】
以上のように構成された第2の実施の形態の位置検出装置は、次のような効果を奏する。
(1)第1の実施の形態のような特殊な形状の磁石を作成しなくても、第1の実施の形態と同様に、ホール素子51がx軸方向に移動するときにy軸方向にずれても誤差のない正確な位置検出信号を出力する。これにより、誤差のない正確な位置検出が可能となる。
(2)第2の実施の形態の位置検出装置も、1つの検出軸の位置を検出する位置検出装置のみで、誤差のない正確な位置検出を実現できる。従って、第1の実施の形態と同様に、検出方向とは別の方向(同じ平面内で垂直に交差する方向)に検出対象物体が移動している場合に生じる検出誤差を、他軸の位置検出装置の出力に頼ることなく押さえることができ、簡単な構成で精度良く位置検出を行うことができる。
(3)ステップS3でのx位置は誤差を含んでいる。従って、ステップS4で求めるy位置もこの誤差を引き継ぐことになる。しかし、ステップS5で再度求めるx位置は、この誤差が軽減されたものとなる。また、ステップS3からS5の処理をさらに繰り返せば、さらに誤差を軽減することができる。
【0047】
上記実施の形態では、本発明の位置検出装置をカメラの振れ補正レンズの制御に応用する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。その他の移動物体の位置検出にも応用できる。すなわち、他の軸にぶれる可能性がある移動物体の1軸方向の移動位置を精度よく検出するあらゆる場合に適用することができる。
【0048】
上記実施の形態では、磁気センサとしてホール素子を使用する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。特定方向の磁場の強度を検出できるような磁気センサであれば、どのようなものであってもよい。
【0049】
上記実施の形態では、ホール素子3が磁場の中をx軸方向に移動する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。磁場側が移動するものであってもよい。すなわち、ホール素子3が磁場との関係で相対移動するのであればどのような形態でもよい。
【0050】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
以下、請求項の構成要素と上記実施の形態の構成要素との対応付けについて説明する。
請求項1において、磁石は磁石11、12に対応し、磁気センサ手段はホール素子3に対応し、位置演算手段は位置演算部32、33に対応する。請求項3において、磁石は磁石53、54に対応し、第1の磁気センサ手段は、ホール素子51x、51yに対応し、x方向位置演算手段は位置演算部65に対応し、第2の磁気センサ手段はホール素子52x、52yに対応し、y方向位置演算手段は位置演算部75に対応する。請求項4において、カメラ振れ検出手段はジャイロ23、24に対応し、振れ補正レンズは振れ補正レンズ25に対応し、駆動制御手段は比較部34、35、駆動演算部36、37、モータドライブIC38、39に対応する。なお、これらの対応付けの説明はあくまで一例であり、本発明はこの対応付けに限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】磁石およびホール素子を利用した位置検出装置の原理を説明する図である。
【図2】図1の問題点を説明する図である。
【図3】第1の実施の形態の磁石11、12およびホール素子3の出力を示す図である。
【図4】図3の磁石11、12を使用した位置検出装置をカメラのブレ補正レンズの位置検出に応用した構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の磁石53、54およびホール素子51、52を説明する図である。
【図6】図5の磁石53、54およびホール素子51、52を使用した位置検出装置をカメラのブレ補正レンズの位置検出に応用した構成を示す図である。
【図7】マイクロプロセッサ66の位置演算部65の処理のフローチャートを示す図である。
【図8】ホール素子51、52を、y軸方向に並べる構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1、2、11、12、53、54 磁石
3、51、51x、51y、52、52x、52y ホール素子
23、24 ジャイロ
26、27 モータ
25 振れ補正レンズ
21 位置検出部
22 位置検出部
40 レンズ枠
28、29、61、62、71、72 差動増幅
30、31、63、64、73、74 A/D回路
32、33、65、75 位置演算部
34、35 比較部
36、37 駆動演算部
38、39 モータドライブIC
66 マイクロプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに垂直なx方向、y方向、z方向の座標軸を定義した場合に、x方向の位置を検出する位置検出装置であって、
x方向にN極とS極が配置され、x方向の位置によってx方向に垂直なz方向の磁場の強度が異なるように構成された磁石と、
前記磁石の磁場の中に配置され、x方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりz方向の磁場の影響を受けて出力が異なる磁気センサ手段と、
前記磁気センサ手段の出力に基づき前記磁気センサ手段のx方向の位置を演算する位置演算手段とを備え、
前記磁石は、前記磁石のy方向中央からy方向に位置がずれてもz方向の磁場の強度が一定になるように構成されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置において、
前記磁石は、前記磁石のy方向中央からy方向に位置がずれてもz方向の磁場の強度が一定になるように、y方向中央からy方向にずれるにつれてx方向のN極とS極の間の距離を短くするように構成されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
互いに垂直なx方向、y方向、z方向の座標軸を定義した場合に、x方向の位置を検出する位置検出装置であって、
x方向にN極とS極が配置され、x方向の位置によってx方向に垂直なz方向の磁場の強度が異なるように構成された磁石と、
前記磁石の磁場の中に配置され、x方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりz方向の磁場の影響を受けて出力が異なる第1の磁気センサ手段と、
前記第1の磁気センサ手段の出力に基づき前記第1の磁気センサ手段のx方向の位置を演算するx方向位置演算手段とを備え、
前記磁石の磁場の中に配置され、前記第1の磁気センサ手段と一体になってx方向に相対移動可能に構成され、x方向の位置によりy方向の磁場の影響を受けて出力が異なる第2の磁気センサ手段と、
前記2の磁気センサ手段の出力に基づき前記第1の磁気センサ手段のy方向の位置を演算するy方向位置演算手段とをさらに備え、
前記x方向位置演算手段は、前記y方向位置演算手段による前記第1の磁気センサ手段のy方向の位置を考慮して、前記第1の磁気センサ手段のx方向の位置を演算することを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
カメラであって、
カメラの振れを検出するカメラ振れ検出手段と、
前記カメラの振れによる像振れを補正する振れ補正レンズと、
前記振れ補正レンズの位置を検出する請求項1から3のいずれかに記載の位置検出装置と、
前記カメラ振れ検出手段により検出された前記カメラの振れと、前記位置検出装置により検出された前記振れ補正レンズの位置とに基づき、前記振れ補正レンズの駆動を制御する駆動制御手段とを備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−284415(P2006−284415A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105944(P2005−105944)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】