説明

位置検出装置および液体吐出装置

【課題】 リニアスケールの汚れを検出できる構成を備えた位置検出装置を提供すること。
【解決手段】 キャリッジの位置を検出するリニアエンコーダは、発光部と受光部とリニアスケール31とを備えている。リニアスケール31は、キャリッジの位置を検出するために、第1透光部31fおよび第1遮光部31eが交互に形成される位置検出パターン31bと、リニアスケール31の汚れを検出するために、第2透光部31hおよび第2遮光部31gが交互に形成される汚れ検出パターン31cとを備えている。汚れ検出パターン31cには、第2透光部31hの光の透過面積を第1透光部31fの光の透過面積よりも小さくする遮光パターン31k1〜31k3が形成され、汚れ検出パターン31cでは、遮光パターン31k1〜31k3が変化することで光の透過面積が変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置およびそれを備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の所定の媒体へ液体を吐出する液体吐出装置としてインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタには、媒体となる印刷用紙を搬送する搬送ローラを駆動するための紙送りモータや、印刷ヘッドが搭載されたキャリッジを駆動するためのキャリッジモータ等の各種のモータが搭載されている。かかるモータとしては、静音化等の目的で、DCモータが広く利用されている。DCモータが搭載されるインクジェットプリンタは、DCモータの位置制御や速度制御等を行うための位置検出装置として、発光素子と受光素子とを有するフォトセンサと、発光素子からの光を透過する透光部と発光素子からの光を遮断する遮光部とが交互に形成されたスケールとから構成されるエンコーダを備えている。
【0003】
また、インクジェットプリンタでは、印刷ヘッドからインク滴が吐出される際、インク滴が印刷用紙等の印刷面に到達するまでの間、または、インク滴が印刷面に到達した際に、インク滴の一部が霧状になって空気中を浮遊するインクミストが発生し、発生したインクミストはプリンタ内部の各構成に付着することが知られている。インクミストがエンコーダを構成するスケールに付着すると、インクミストの影響で、スケールは、発光素子から発光された光を適切に透過し、あるいは、遮断することができなくなる。そこで、リニアスケールへのインクミストの付着を抑制して、リニアエンコーダでの検出精度を維持するための位置検出精度維持装置を備えたインクジェットプリンタが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、位置検出精度維持装置として、印刷ヘッドのインク吐出面とリニアスケールとの間を遮るように配設された遮蔽板が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−81691号公報(図面等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたリニアエンコーダでは、遮蔽板によって、リニアスケールへのインクミストの付着を抑制して、検出精度を維持することができる。しかしながら、特許文献1では、リニアスケールへのインクミストの付着(すなわち、リニアスケールの汚れ)自体を検出するための具体的な手段は提案されていない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、リニアスケールの汚れを検出できる構成を備えた位置検出装置および液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、被検出物の位置を検出する位置検出装置において、発光部と、発光部からの光を受光する受光部と、長尺状に形成され、発光部と受光部との間に配設されるリニアスケールとを備え、リニアスケールは、被検出物の位置を検出するために、発光部からの光を透過する第1透光部および発光部からの光を遮断する第1遮光部が少なくとも被検出物の検出範囲内で交互に形成される位置検出パターンと、リニアスケールの汚れを検出するために、発光部からの光を透過する第2透光部および発光部からの光を遮断する第2遮光部が交互に形成される汚れ検出パターンとを備え、汚れ検出パターンには、第2透光部の発光部からの光の透過面積を第1透光部の発光部からの光の透過面積よりも小さくする、または、第2透光部の発光部からの光の透過率を第1透光部の発光部からの光の透過率よりも低くする遮光パターンが形成され、汚れ検出パターンでは、遮光パターンが変化することで透過面積または透過率が変化することを特徴とする。
【0008】
本発明の位置検出装置では、リニアスケールが、被検出物の位置を検出するための位置検出パターンに加え、第2透光部および第2遮光部が交互に形成される汚れ検出パターンを備えている。そのため、発光部から発光され第2透光部を透過する光の受光部での検出結果から、リニアスケールの汚れを検出することができる。また、汚れを検出することで、たとえば、リニアスケールの清掃の必要性の有無を確認等することができる。
【0009】
また、本発明の位置検出装置では、汚れ検出パターンには、第2透光部の発光部からの光の透過面積を第1透光部の発光部からの光の透過面積よりも小さくする、または、第2透光部の発光部からの光の透過率を第1透光部の発光部からの光の透過率よりも低くする遮光パターンが形成されている。そのため、リニアスケールの汚れによって、第2透光部では、第1透光部に比べ、リニアスケールの長手方向の一部に光が遮断される部分が生じやすくなる。あるいは、リニアスケールの汚れによって、第2透光部では、第1透光部に比べ、光が遮断されやすくなる。したがって、被検出物の位置を検出するために用いられる第1透光部において、リニアスケールの長手方向の一部または全部で光が遮断され、位置検出装置での誤検出が発生する前に、第2透光部を透過する光の受光部での検出結果からリニアスケールの汚れを検出することができる。
【0010】
さらに、本発明の位置検出装置では、汚れ検出パターンにおいて、遮光パターンが変化することで透過面積または透過率が変化する。そのため、透過面積の比較的小さいまたは透過率の比較的低い第2透光部では、リニアスケールの汚れによって比較的早く光が遮断され、透過面積の比較的大きいまたは透過率の比較的高い第2透過部では、比較的遅く光が遮断される。したがって、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することが可能となる。また、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することで、リニアスケールに生じる汚れの経時的な変化を把握することができる。その結果、最終的に位置検出装置で誤検出が生じるまでの時間等の予測が可能になる。また、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することで、どの程度の汚れが発生すると位置検出装置に誤検出が生じるかという位置検出装置の検出限界を認識することができる。
【0011】
本発明において、汚れ検出パターンでは、遮光パターンがリニアスケールの長手方向に沿って変化する構成とすることができる。このように構成すると、被検出物の位置検出時にリニアスケールの長手方向に相対的に移動する発光部および受光部の動きを利用するという簡易な構成で、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することが可能になる。また、本発明において、汚れ検出パターンでは、遮光パターンがリニアスケールの短手方向に沿って変化する構成とすることもできる。このように構成すると、リニアスケールの長手方向で、位置検出装置の小型化を図ることが可能となる。
【0012】
本発明において、遮光パターンは、リニアスケールの長手方向に対して傾斜した斜線状の光遮断部によって形成されていることが好ましい。このように構成すると、リニアスケールの汚れを簡易かつ適切に検出することができる。すなわち、遮光パターンがリニアスケールの長手方向と平行な光遮断部によって形成されている場合には、リニアスケールの短手方向で発光部の光軸と光遮断部との位置がずれると、第1透光部に対して、第2透光部の光の透過面積を小さくしたり、光の透過率を低くすることができなくなる。また、遮光パターンがリニアスケールの長手方向に直交する光遮断部によって形成されている場合には、この光遮断部が光を遮断する長手方向の一部となってしまう。そのため、第2透光部では、長手方向の一部に汚れによって光を遮断する部分を形成しにくくなる。また、リニアスケールの汚れを検出するための処理が複雑になる。したがって、遮光パターンが斜線状の光遮断部によって形成されていると、リニアスケールの汚れを簡易かつ適切に検出することができる。
【0013】
本発明において、遮光パターンは、矩形状の光透過部とともに市松模様状に配置された矩形状の光遮断部によって形成されていることが好ましい。このように構成すると、遮光パターンの形成が容易になる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、被検出物の位置を検出する位置検出装置において、発光部と、発光部からの光を受光する受光部と、長尺状に形成され、発光部と受光部との間に配設されるリニアスケールとを備え、リニアスケールは、被検出物の位置を検出するために、発光部からの光を透過する第1透光部および発光部からの光を遮断する第1遮光部が少なくとも被検出物の検出範囲内で交互に形成される位置検出パターンと、リニアスケールの汚れを検出するために、発光部からの光を透過する第2透光部および発光部からの光を遮断する第2遮光部が交互に形成される汚れ検出パターンとを備え、第2透光部の幅は第1透光部の幅よりも狭く形成されるとともに、汚れ検出パターンでは、第2透光部の幅が変化することを特徴とする。
【0015】
本発明の位置検出装置では、リニアスケールが、被検出物の位置を検出するための位置検出パターンに加え、汚れ検出パターンを備えている。そのため、発光部から発光され第2透光部を透過する光の受光部での検出結果から、リニアスケールの汚れを検出することができる。また、汚れを検出することで、たとえば、リニアスケールの清掃の必要性の有無を確認等することができる。また、本発明の位置検出装置では、第2透光部の幅は、第1透光部の幅よりも狭く形成されている。そのため、リニアスケールの汚れによって、第2透光部では、第1透光部に比べ、光が遮断されやすくなる。したがって、被検出物の位置を検出するために用いられる第1透光部において、リニアスケールの長手方向の一部または全部で光が遮断され、位置検出装置での誤検出が発生する前に、第2透光部を透過する光の受光部での検出結果からリニアスケールの汚れを検出することができる。
【0016】
さらに、本発明の位置検出装置では、汚れ検出パターンにおいて、第2透光部の幅が変化する。そのため、幅が比較的狭い第2透光部では、リニアスケールの汚れによって比較的早く光が遮断され、幅が比較的広い第2透過部では、比較的遅く光が遮断される。したがって、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することが可能となる。また、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することで、リニアスケールに生じる汚れの経時的な変化を把握することができ、最終的に位置検出装置で誤検出が生じるまでの時間等の予測が可能になる。また、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することで、位置検出装置の検出限界を認識することができる。
【0017】
本発明において、汚れ検出パターンは、リニアスケールの長手方向における位置検出パターンの外側に配置される構成とすることができる。このように構成すると、被検出物の位置検出に影響を与えることなく、リニアスケールの汚れを検出することができる。また、被検出物の位置検出時に、リニアスケールの長手方向に相対的に移動する発光部および受光部をさらに、リニアスケールの長手方向へ相対的に移動させるという簡易な構成で、リニアスケールの汚れの検出が可能になる。
【0018】
本発明において、位置検出パターンと汚れ検出パターンとは、リニアスケールの短手方向で隣接して配置される構成とすることができる。このように構成すると、リニアスケールの長手方向に発光部や受光部が移動することで行われる被検出物の位置検出に影響を与えることなく、リニアスケールの汚れを検出することができる。また、リニアスケールの長手方向で、位置検出装置の小型化を図ることができる。すなわち、位置検出パターンと汚れ検出パターンとがリニアスケールの長手方向で隣接している場合、位置検出パターンの長手方向外側に汚れ検出パターンが配置されることになるため、位置検出装置がリニアスケールの長手方向で大型化する。これに対し、位置検出パターンと汚れ検出パターンとがリニアスケールの短手方向で隣接する構成とすることで、リニアスケールの長手方向で、位置検出装置の小型化を図ることができる。
【0019】
なお、本発明において、「隣接して配置される」には、位置検出パターンと汚れ検出パターンとが直接隣接して配置されている場合の他、位置検出パターンと汚れ検出パターンとが他の構成(たとえば、受光素子からの光を遮断する遮光部が形成されていない光の通過部分)を介して隣接配置される場合も含まれる。
【0020】
本発明の位置検出装置は、所定の媒体に液体を吐出する液体吐出部を備える液体吐出装置に用いることができる。この液体吐出装置では、液体吐出部から吐出された液体によって発生するリニアスケールの汚れを検出することができる。また、この液体吐出装置では、リニアスケールの汚れに起因する被検出物の誤動作を防止するための処置を取ることができる。さらに、この液体吐出装置では、リニアスケールに生じる汚れの程度を検出することが可能となる。
【0021】
本発明の液体吐出装置は、位置検出装置の検出結果に基づいて発光部からの発光量を増減させる制御を行う光量制御手段を備えることが好ましい。このように構成すると、位置検出装置の検出結果に応じた光量で発光部から発光することができる。そのため、被検出物の位置検出に必要な光量を確保しつつ発光部から発光される光量を抑えることができる。その結果、適切な位置検出と消費電力との低減とを同時に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にかかる位置検出装置および液体吐出装置を図面に基づいて説明する。
【0023】
(液体吐出装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる液体吐出装置(プリンタ)1の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のプリンタ1の紙送りに関する部分の概略構成を示す概略側面図である。図3は、図1のキャリッジ3および図2のPF駆動ローラ6の検出機構を模式的に示す概略構成図である。
【0024】
本形態の液体吐出装置1は、媒体としての印刷用紙P等に対して液体状のインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタである。以下では、本形態の液体吐出装置1をプリンタ1と表記する。本形態のプリンタ1は、図1から図3に示すように、インク滴を吐出する印刷ヘッド2が搭載されたキャリッジ3と、主走査方向MSのキャリッジ3を駆動するキャリッジモータ(CRモータ)4と、印刷用紙Pを副走査方向SSへ搬送する紙送りモータ(PFモータ)5と、PFモータ5に連結されたPF駆動ローラ6と、印刷ヘッド2のノズル面(図2の下面)と対向するように配置されたプラテン7と、これらの構成が搭載された本体シャーシ8とを備えている。本形態では、CRモータ4とPFモータ5とは、ともに直流(DC)モータである。
【0025】
また、プリンタ1は、図2に示すように、印刷前の印刷用紙Pが載置されるホッパ11と、ホッパ11に載置された印刷用紙Pをプリンタ1の内部へ取り込むための給紙ローラ12および分離パッド13と、ホッパ11からプリンタ1の内部へ取り込まれた印刷用紙Pの通過を検出する紙検出器14と、プリンタ1の内部から印刷用紙Pを排出する排紙駆動ローラ15とを備えている。
【0026】
なお、プリンタ1では、図1の右側(図2の紙面手前側)がキャリッジ3のホームポジション側になっている。以下では、プリンタ1におけるキャリッジ3のホームポジション側を0桁側と表記し、プリンタ1におけるキャリッジ3のホームポジションと反対側(図1の左側、図2の紙面奥側)を80桁側と表記する。
【0027】
キャリッジ3は、本体シャーシ8に固定された支持フレーム16に支持されたガイドシャフト17と、タイミングベルト18とによって主走査方向MSに搬送可能に構成されている。すなわち、タイミングベルト18は、その一部がキャリッジ3に固定されるとともに(図2参照)、CRモータ4の出力軸に取り付けられたプーリ19と支持フレーム16に回転可能に取り付けられたプーリ20とに掛け渡された状態で一定の張力を有するように配設されている。ガイドシャフト17は、キャリッジ3を主走査方向MSへ案内するように、キャリッジ3を摺動可能に保持している。また、キャリッジ3には、印刷ヘッド2に加え、印刷ヘッド2に供給される各種のインクが収納されたインクカートリッジ21が搭載されている。
【0028】
印刷ヘッド2には、図示を省略する複数のノズルが配設されている。また、印刷ヘッド2にはたとえば、各ノズルに対応するように、電歪素子の1つであって応答性に優れるピエゾ素子(図示省略)が配設されている。具体的には、ピエゾ素子は、インク通路(図示省略)を形成する壁面に接する位置に配設されている。そして、このピエゾ素子の動作によって壁面が押されることで、印刷ヘッド2はインク通路の端部に配設されたノズルからインク滴を吐出する。このように、本形態では、印刷ヘッド2は、印刷用紙Pに対して液体状のインクを吐出する液体吐出部となっている。また、インクカートリッジ21には、たとえば、発色が良く画質に優れる染料系インクや、耐水性や耐光性に優れる顔料系インク等が収納されており、印刷ヘッド2から染料系インクや顔料系インク等が吐出される。
【0029】
給紙ローラ12は、図示を省略するギアを介してPFモータ5に連結され、PFモータ5によって駆動される。ホッパ11は、図2に示すように、印刷用紙Pを載置可能な板状部材であり、図示を省略するカム機構によって、上部に設けられた回動軸22を中心に揺動可能となっている。そして、カム機構による揺動によって、ホッパ11の下端部が給紙ローラ12に弾性的に圧接され、また、給紙ローラ12から離間する。分離パッド13は、摩擦係数の高い部材から形成され、給紙ローラ12に対向する位置に配置されている。そして、給紙ローラ12が回転すると、給紙ローラ12の表面と分離パッド13とが圧接する。そのため、給紙ローラ12が回転すると、ホッパ11に載置された印刷用紙Pのうち、一番上の印刷用紙Pは、給紙ローラ12の表面と分離パッド13との圧接部分を通過して排紙側へ送られるが、上から2番目以降に載置された印刷用紙Pは、分離パッド13によって、排紙側への搬送が阻止される。
【0030】
PF駆動ローラ6は、PFモータ5に直接あるいは図示を省略するギアを介して連結されている。また、図2に示すように、プリンタ1には、PF駆動ローラ6とともに印刷用紙Pを搬送するPF従動ローラ23が設けられている。PF従動ローラ23は、回転軸25を中心に揺動可能に構成された従動ローラホルダ24の排紙側に回動可能に保持されている。従動ローラホルダ24は、図示を省略するバネによって、PF従動ローラ23がPF駆動ローラ6へ向かう付勢力を常時受けるように、図示反時計方向へ付勢されている。そして、PF駆動ローラ6が駆動されると、PF駆動ローラ6とともに、PF従動ローラ23も回転する。
【0031】
紙検出器14は、図2に示すように検出レバー26とセンサ27とから構成され、従動ローラホルダ24の近傍に設けられている。検出レバー26は、回転軸28を中心に回動可能になっている。そして、図2に示す印刷用紙Pの通過状態から、検出レバー26の下側を印刷用紙Pが通過し終わると、検出レバー26が反時計方向へ回動する。検出レバー26が回動すると、センサ27の発光部から受光部へ向かう光を遮断して、印刷用紙Pの通過を検出できる構成となっている。
【0032】
排紙駆動ローラ15は、プリンタ1の排紙側に配置され、図示を省略するギアを介してPFモータ5に連結されている。また、図2に示すように、プリンタ1には、排紙駆動ローラ15とともに印刷用紙Pを排紙する排紙従動ローラ29が設けられている。排紙従動ローラ29も、PF従動ローラ23と同様に、図示を省略するバネによって、常時、排紙駆動ローラ15へ向かう付勢力を受けている。そして、排紙駆動ローラ15が駆動されると、排紙駆動ローラ15とともに、排紙従動ローラ29も回転する。
【0033】
また、プリンタ1は、図2および図3に示すように、主走査方向MSにおけるキャリッジ3の位置等を検出する位置検出装置として、リニアスケール31およびフォトセンサ32を有するリニアエンコーダ33を備えている。また、プリンタ1は、図3に示すように、副走査方向SSにおける印刷用紙Pの位置等を検出する位置検出装置として、ロータリスケール34およびフォトセンサ35を有するロータリエンコーダ36を備えている。リニアエンコーダ33およびロータリエンコーダ36から出力された信号は、図3に示すように、制御部37へ入力され、プリンタ1の各種の制御が行われている。なお、本形態では、キャリッジ3が、リニアエンコーダ33によって位置検出される被検出物となっている。また、図1では、便宜上、リニアスケール31の図示を省略している。
【0034】
リニアスケール31は、透明な樹脂等の薄板から長尺状(細長の直線状)に形成されている。このリニアスケール31は、主走査方向MSと平行に支持フレーム16に取り付けられている。すなわち、プリンタ1では、リニアスケール31の短手方向を高さ方向とした状態で、リニアスケール31が支持フレーム16に取り付けられている。また、リニアスケール31は、後述のスケール昇降機構44(図4等参照)によって、支持フレーム16に対して上下動できる構成となっている。
【0035】
リニアエンコーダ33を構成するフォトセンサ32は、図2および図3に示すように、発光部41と受光部42とを備え、キャリッジ3に固定されている。具体的には、フォトセンサ32は、キャリッジ3の背面(図1の紙面奥側の面)に固定されている。リニアスケール31およびフォトセンサ32の詳細な構成については後述する。
【0036】
ロータリエンコーダ36を構成するフォトセンサ35は、発光素子(図示省略)を有する発光部と受光素子(図示省略)を有する受光部とを備え、図示を省略するブラケットを介して本体シャーシ8等に固定されている。
【0037】
ロータリスケール34は、たとえばステンレス製の薄鋼板や透明な樹脂製の薄板で、円盤状に形成されている。本形態のロータリスケール34は、PF駆動ローラ6と一体で回転するように、PF駆動ローラ6に取り付けられている。このロータリスケール34には、フォトセンサ35の発光素子からの光を透過する透光部(図示省略)と、フォトセンサ35の発光素子からの光を遮断する遮光部(図示省略)とが、円周方向に沿って、交互に形成されている。そして、ロータリエンコーダ36では、発光素子からロータリスケール34に向かって発光されロータリスケール34の透光部を透過した光を受光素子が受光して、所定の出力信号が出力される。
【0038】
制御部37は、ROMやRAM等の各種メモリや、各種モータ等の駆動回路、CPU、ASIC等を備えている。CPUおよびASIC等には、リニアエンコーダ33やロータリエンコーダ36等からの各出力信号が入力される。
【0039】
(スケール昇降機構の構成)
図4は、図3のリニアスケール31の一端部の取付状態を示した概略斜視図である。図5は、図4の紙面奥側からリニアスケール31の一端部の取付状態を示した概略斜視図である。図6は、図4のカム45と取付ブラケット46との関係を示す図である。
【0040】
本形態のプリンタ1は、支持フレーム16に対して、リニアスケール31を昇降させるスケール昇降機構44を備えている。すなわち、リニアスケール31は、スケール昇降機構44によって、支持フレーム16に対して上下動可能になっている。なお、本形態では、初期状態におけるリニアスケール31は、たとえば、上限位置に近い位置に配置されており、スケール昇降機構44によって上昇および下降が可能となっている。
【0041】
スケール昇降機構44は、図4、図5に示すように、支持フレーム16の一側面16a(図1の右側面)の内側でガイドシャフト17に固定された偏心カム45と、リニアスケール31の一端部(0桁側の端部)が取り付けられ、偏心カム45によってリニアスケール31とともに上下動する取付ブラケット46と、一側面16aの外側でガイドシャフト17の先端に固定された従動ギア47と、従動ギア47に駆動モータ(図示省略)の動力を伝達する中間ギア48とを、一側面16a側に備えている。また、スケール昇降機構44は、他側面16b(図1の左側面、図1参照)側にも同様に、偏心カム45、取付ブラケット46、従動ギア47、中間ギア48および駆動モータ(図示省略)を備えている。これらの構成は、一側面16a側に設けられた構成と共通するため、以下では図示および説明を省略する。なお、図1では便宜上、スケール昇降機構44の図示を省略している。
【0042】
本形態では、中間ギア48を介して伝達される駆動モータ(図示省略)の動力によって、ガイドシャフト17に固定された従動ギア47が回転する。すなわち、ガイドシャフト17が従動ギア47とともに回転する。また、ガイドシャフト17に固定された偏心カム45も回転する。なお、中間ギア48は、直接、駆動モータに連結されても良いし、所定のギア輪列を介して駆動モータに連結されても良い。
【0043】
偏心カム45は、外周側にカム面45aが形成された略円盤状の部材である。この偏心カム45は、図6に示すようにたとえば、所定の角度範囲θで回転中心に対する半径が半径r1から半径r1よりも大きな半径r2まで連続的に変化するように形成されている。
【0044】
取付ブラケット46は、たとえば、平板状の金属部材で形成され、図4に示すように、偏心カム45のカム面45aに当接する当接部46aが形成された基部46bと、リニアスケール31の端部が取り付けられる取付部46cとから構成されている。
【0045】
基部46bには、ガイドシャフト17を挿通するため、上下方向に長い長穴状の貫通孔(図示省略)が形成されている。この貫通孔は、ガイドシャフト17に対して取付ブラケット46が上下動可能となるように形成されている。基部46bは、図4に示すように、ガイドシャフト17が貫通孔に挿通された状態で、偏心カム45と支持フレーム16の一側面16aとの間に挟まれて配置されている。また、当接部46aは、基部46bからプリンタ1の内側に向かって立ち上がるように形成されている。この当接部46aの図示下面がカム面45aに当接している。さらに、取付部46cは、基部46bの図示上端からプリンタ1の内側に向かって立ち上がるように形成されている。この取付部46cには、リニアスケール31に形成された後述の取付孔31aに係止される係止フック46dが形成されている。なお、取付ブラケット46は、図示を省略する案内手段によって傾くことなく上下動する構成となっている。
【0046】
駆動モータ(図示省略)が駆動され、ガイドシャフト17とともに偏心カム45が回転すると、カム面45aに沿って当接部46aが昇降し、取付ブラケット46に取り付けられたリニアスケール31が昇降する。たとえば、図6に示すように、偏心カム46が時計方向に回転すると、リニアスケール31が上昇する。なお、一側面16a側に設けられた取付ブラケット46と、他側面16b側に設けられた取付ブラケット46とは、同期して昇降するように構成されており、リニアスケール31は水平を保った状態で昇降する。
【0047】
(リニアエンコーダの構成)
図7は、図3のリニアエンコーダ33の概略構成を示す模式図である。図8は、図3のリニアスケール31の80桁側を示す図である。図9は、図3のリニアエンコーダ33から出力される信号波形を示す図であり、(A)は、キャリッジ3が0桁側から80桁側へ移動するときの信号波形を示す図、(B)は、キャリッジ3が80桁側から0桁側へ移動するときの信号波形を示す図である。
【0048】
リニアスケール31は、上述のように、透明な樹脂等の薄板で長尺状に形成されている。具体的には、本形態のリニアスケール31は、たとえば、厚さ180μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。このリニアスケール31の長手方向の両端側にはそれぞれ、取付ブラケット46の係止フック46dが係止される略矩形状の取付孔31aが形成されている。また、リニアスケール31は、図8等に示すように、キャリッジ3の位置を検出するための位置検出パターン31bと、リニアスケール31の汚れを検出するための汚れ検出パターン31cとを備えている。
【0049】
位置検出パターン31bは以下のように形成されている。すなわち、印刷用紙Pへ印刷を行うため、位置の検出が必要となるキャリッジ3の検出範囲L(図4、図8参照)では、リニアスケール31の一方の表面に光を遮断する黒色等の印刷が所定間隔で施されている。具体的には、検出範囲Lでは、図7に示すように、PET製の基材31dの一面に一定幅Hの黒色の印刷が一定のピッチPで施されている。すなわち、検出範囲Lでは、リニアスケール31に、黒色の印刷部分が縦縞をなすように(図4、図5参照)、主走査方向MSでピッチPを保った状態で、一定幅Hの黒色の印刷がリニアスケール31の短手方向に施されている。この黒色の印刷が施された部分が発光部41からの光を遮断する第1遮光部31eとなっている。また、各第1遮光部31e間の、黒色の印刷が施されていない部分が、発光部41からの光を透過する第1透光部31fとなっている。このように、検出範囲Lでは、リニアスケール31に、第1遮光部31eと第1透光部31fとが交互に形成されている。なお、第1透光部31fの幅も一定幅Hとなっている。
【0050】
汚れ検出パターン31cは、リニアスケール31の長手方向における位置検出パターン31bの外側(端部側)に配置されている。本形態では、図8に示すように、リニアスケール31の80桁側で位置検出パターン31bの外側に隣接するように汚れ検出パターン31cが形成されている。
【0051】
この汚れ検出パターン31cは、位置検出パターン31bとほぼ同様に形成されている。すなわち、リニアスケール31の80桁側の検出範囲L外には、第1遮光部31eが形成された面と同じ面に光を遮断する黒色等の印刷が所定間隔で施されている。具体的には、図7における基材31dの右面に一定幅Hの黒色の印刷が一定のピッチPで施されている。すなわち、図8に示すように、80桁側の検出範囲L外でも、黒色の印刷部分が縦縞をなすように、長手方向でピッチPを保った状態で、一定幅Hの黒色の印刷がリニアスケール31の短手方向に施されている。この黒色の印刷が施された部分が発光部41からの光を遮断する第2遮光部31gとなっている。また、各第2遮光部31g間の、黒色の印刷が施されていない部分が、発光部41からの光を透過する第2透光部31hとなっている。このように、リニアスケール31の80桁側の検出範囲L外では、リニアスケール31に、第2遮光部31gと第2透光部31hとが交互に形成されている。なお、第2透光部31hの幅も一定幅Hとなっている。
【0052】
第2透光部31hには、第2透光部31hの発光部41からの光の透過面積(透過率)を第1透光部31fの発光部41からの光の透過面積(透過率)よりも小さくする第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3が形成されている。具体的には、第1の遮光パターン31k1、第2の遮光パターン31k2、第3の遮光パターン31k3は、この順番で第2透光部31hの光の透過面積および透過率がしだいに小さくなるように、0桁側から形成されている。たとえば、図8に示すように、汚れ検出パターン31cでは、0桁側から80桁側に向かって、初めの3つの第2透光部31hに第1の遮光パターン31k1が形成され、次の3つの第2透光部31hに第2の遮光パターン31k2が形成され、最後の3つの第2透光部31hに第3の遮光パターン31k3が形成されている。なお、以下では、第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3をまとめて表す場合には、遮光パターン31kと表記する。
【0053】
第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3は、リニアスケール31の長手方向に対して傾斜した斜線状の第1から第3の光遮断部31m1〜31m3によって形成されている。本形態では、基材31dの表面に、光を遮断する黒色等の印刷が、長手方向に対してたとえば、45°傾斜した斜線状にかつ一定のピッチで施されることで複数の第1から第3の光遮断部31m1〜31m3が形成されている。具体的には、図8に示すように、第1の光遮断部31m1、第2の光遮断部31m2、第3の光遮断部31m3は、この順番でその幅がしだいに広くなるように形成されている。そして、複数の第1の光遮断部31m1によって第1の遮光パターン31k1が形成され、複数の第2の光遮断部31m2によって第2の遮光パターン31k2が形成され、複数の第3の光遮断部31m3によって第3の遮光パターン31k3が形成されている。このように、汚れ検出パターン31cでは、第1から第3の光遮断部31m1〜31m3の幅が変化して、リニアスケール31の長手方向に第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3がしだいに変化することで、第2透光部31hの透過面積および透過率が変化している。なお、以下では、第1から第3の光遮断部31m1〜31m3をまとめて表す場合には光遮断部31mと表記する。
【0054】
遮光パターン31kによって、第2透光部31hの光の透過面積または透過率は、第1透光部31fの光の透過面積または透過率に対し一定の比率となっている。たとえば、第1の遮光パターン31k1が形成された第2透光部31hの光の透過面積、第2の遮光パターン31k2が形成された第2透光部31hの光の透過面積および第3の遮光パターン31k3が形成された第2透光部31hの光の透過面積は、それぞれ、第1透光部31fの光の透過面積の90%、80%、および、70%となっている。また、たとえば、第1の遮光パターン31k1が形成された第2透光部31hの光の透過率、第2の遮光パターン31k2が形成された第2透光部31hの光の透過率および第3の遮光パターン31k3が形成された第2透光部31hの光の透過率をそれぞれ、第1透光部31fの光の透過率の90%、80%および70%としても良い。
【0055】
フォトセンサ32は、図2、図3に示すように、略直方体形状のハウジングを備えている。このフォトセンサ32では、ハウジングの一側面(図2の下面)からハウジングの中央部にかけて、凹部32aが形成されている。この凹部32aにおいて相対向する2つの面の一方に発光部41が配設され、他方に受光部42が配設されている。具体的には、図2等に示すように、キャリッジ3側の面に発光部41が配設されている。また、図2等に示すように、フォトセンサ32は、発光部41と受光部42とによってリニアスケール31を挟み込むように、キャリッジ3に固定されている。そして、リニアエンコーダ33では、発光部41からリニアスケール31に向かって発光され第1透光部31fや第2透光部31kを透過した光を受光部42が受光して、所定の出力信号が出力される。
【0056】
発光部41は、図7に示すように、発光素子50と、発光素子50から出射された光を平行光にするコリメータレンズ51とを備えている。発光素子50は、たとえば発光ダイオードである。この発光素子50には、可変抵抗52を介して電流が供給されており、発光素子50からの発光量を増減できる構成となっている。本形態では、可変抵抗52は、発光部41からの発光量を制御する光量制御手段となっている。なお、初期状態では、リニアエンコーダ33での適切な位置検出が可能な範囲で、発光素子50からの発光量は可能な限り低くしておくことが、発光部41での消費電力を低減する上で好ましい。
【0057】
受光部42は、図7に示すように、基板53と、この基板53上に形成された4つの受光素子54〜57とを備えている。受光素子54〜57は、たとえばフォトダイオードであり、受光光量に応じたレベルの信号を出力する。また、受光部42は、図7に示すように、第1から第4の4つのアンプ58〜61と、第1差動信号生成回路63と、第2差動信号生成回路64とを備えている。なお、以下では、4つの受光素子54〜57を区別して表記する場合には、第1の受光素子54、第2の受光素子55、第3の受光素子56および第4の受光素子57と表記する。
【0058】
4つの受光素子54〜57は、キャリッジ3の移動方向に沿って基板53上に配置されている。具体的には、第1の受光素子54と第3の受光素子56とは、それぞれから出力されるレベル信号の位相が180°異なるように配置されている。また、第2の受光素子55と第4の受光素子57とは、それぞれから出力されるレベル信号の位相が180°異なるように配置されている。たとえば、第1の受光素子54と第3の受光素子56との配置ピッチ、および第2の受光素子55と第4の受光素子57との配置ピッチは、第1遮光部31eと第1透光部31fとによって形成される明暗のピッチPの2分の1となっている。さらに、第1の受光素子54と第2の受光素子55とは、それぞれから出力されるレベル信号の位相が90°異なるように配置されている。たとえば、第1の受光素子54と第2の受光素子55とは、明暗のピッチPの4分の1の配置ピッチで配置されている。
【0059】
また、キャリッジ3が移動すると、発光部41と受光部42との間において、リニアスケール31が相対的に移動する。リニアスケール31の相対的な移動に伴って、受光素子54〜57はその受光光量に応じたレベルの信号を出力する。すなわち、第1透光部31fや第2透光部31hの位置に対応する受光素子54〜57は、ハイレベルの信号を出力し、第1遮光部31eや第2遮光部31gの位置に対応する受光素子54〜57は、ローレベルの信号を出力する。このように、受光素子54〜57は、リニアスケール31の相対移動速度(キャリッジ3の移動速度)に応じた周期で変化するレベル信号を出力する。
【0060】
図7に示すように、第1から第4の4つのアンプ58〜61および、第1差動信号生成回路62、第2差動信号生成回路63は、基板53上に配設されている。
【0061】
第1のアンプ58には、第1の受光素子54が接続され、第1のアンプ58は、第1の受光素子54から出力されたレベル信号を増幅した信号を出力する。第2のアンプ59には第2の受光素子55が接続され、第2のアンプ59は、第2の受光素子55が出力するレベル信号を増幅した信号を出力する。第3のアンプ60には第3の受光素子56が接続され、第3のアンプ60は、第3の受光素子56が出力するレベル信号を増幅した信号を出力する。第4のアンプ61には第4の受光素子57が接続され、第4のアンプ48は、第4の受光素子57が出力するレベル信号を増幅した信号を出力する。
【0062】
第1のアンプ58と第3のアンプ60とは、第1差動信号生成回路62へ、増幅したレベル信号を出力する。第1のアンプ58により増幅されたレベル信号は、第1差動信号生成回路62の非反転入力端子に入力され、第3のアンプ60により増幅されたレベル信号は、第1差動信号生成回路62の反転入力端子に入力される。第1差動信号生成回路62は、非反転入力端子に入力される第1のアンプ58の出力信号のレベルが、反転入力端子に入力される第3のアンプ59の出力信号のレベルより高い場合、ハイレベルを出力し、逆の場合には、ローレベルを出力する。すなわち、第1差動信号生成回路62は、図9に示すように、第1遮光部31eと第1透光部31fとによって形成される明暗のピッチPに対応した周期Tのデジタル的な波形のA相信号SG1を出力する。
【0063】
第2のアンプ59と第4のアンプ61とは、第2差動信号生成回路63へ、増幅したレベル信号を出力する。第2のアンプ59により増幅されたレベル信号は、第2差動信号生成回路63の非反転入力端子に入力され、第4のアンプ61により増幅されたレベル信号は、第2差動信号生成回路63の反転入力端子に入力される。第2差動信号生成回路63は、非反転入力端子に入力される第2のアンプ59の出力信号のレベルが、反転入力端子に入力される第4のアンプ61のレベルより高い場合、ハイレベルを出力し、逆の場合には、ローレベルを出力する。すなわち、第2差動信号生成回路63は、図9に示すように、第1遮光部31eと第1透光部31fとによって形成される明暗のピッチPに対応した周期Tのデジタル的な波形のB相信号SG2を出力する。なお、図9に示すように、第1差動信号生成回路62から出力されるA相信号SG1と、第2差動信号生成回路63から出力されるB相信号SG2とは、位相が90°ずれている。
【0064】
なお、図9(A)では、キャリッジ3が0桁側から80桁側へ移動するときの信号波形を示し、図9(B)では、キャリッジ3が80桁側から0桁側へ移動するときの信号波形を示している。すなわち、図9(A)に示すように、B相信号SG2がローレベルでA相信号SG1が立ち上がる場合(または、B相信号SG2がハイレベルでA相信号SG1が立ち下がる場合等)には、キャリッジ3が0桁側から80桁側へ移動している。また、図9(B)に示すように、B相信号SG2がローレベルでA相信号SG1が立ち下がる場合(または、B相信号SG2がハイレベルでA相信号SG1が立ち上がる場合等)には、キャリッジ3が80桁側から0桁側へ移動している。
【0065】
また、発光部41から発光される光は、リニアスケール31の短手方向(図8の上下方向)では、図8に示すように、所定の幅Wでリニアスケール31に照射されている。具体的には、第2透光部31hに斜線状の光遮断部31mが形成されていても、第2透光部31hに汚れが生じていなければ、リニアスケール31の長手方向における第2透光部31hの一部に発光部41からの光を完全に遮断する部分が生じないような短手方向の所定の幅Wで、発光部41からリニアスケール31に光が照射されている。そのため、第2透光部31hに光遮断部31mが形成されていても、リニアスケール31に汚れが生じておらず、かつ、キャリッジ3が一定速度で移動する場合であれば、リニアスケール31の汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過するときには、リニアスケール31の位置検出パターン31bが形成された部分をフォトセンサ32が通過するときと同じ周期のA相信号SG1およびB相信号SG2がリニアエンコーダ33から出力される。
【0066】
(プリンタの概略動作)
以上のように構成されたプリンタ1では、給紙ローラ12や分離パッド13によってホッパ11からプリンタ1の内部に取り込まれた印刷用紙Pを、PFモータ5で回転駆動されたPF駆動ローラ6で副走査方向SSへ送りながら、CRモータ4で駆動されたキャリッジ3が主走査方向MSで往復移動する。キャリッジ3が往復移動する際には、印刷ヘッド2からインク滴が吐出され、印刷用紙Pへの印刷が行われる。また、印刷用紙Pへの印刷が終了すると、排紙駆動ローラ15等によって印刷用紙Pはプリンタ1の外部へ排出される。
【0067】
キャリッジ3が移動すると、リニアエンコーダ33からA相信号SG1およびB相信号SG2が出力される。出力されたA相信号SG1およびB相信号SG2は、制御部37の所定の処理回路(たとえば、ASIC等)へ入力される。入力されたリニアエンコーダ33からのA相信号SG1およびB相信号SG2を利用して、制御部37の所定の処理回路は、キャリッジ3の位置、速度および移動方向の検出(すなわち、CRモータ4の回転位置、回転方向および回転速度の検出)を行う。そして、検出結果に基づいて、プリンタ1の制御を行う。たとえば、CRモータ4の回転速度の制御等を行う。
【0068】
(リニアスケールの汚れ検出時のプリンタの動作)
図10は、図3のリニアスケール31の汚れ検出時におけるプリンタ1の一連の動作を示すフローチャートである。図11は、図3のリニアスケール31の汚れ検出動作の一例を示すフローチャートである。図12は、図3のリニアスケール31の汚れ検出動作の他の例を示すフローチャートである。図13は、図3のリニアスケール31に汚れが生じた時のリニアエンコーダ33から出力される信号波形の例を示す図である。図14は、図8のE部を拡大して示す部分拡大図である。
【0069】
印刷用紙Pへの印刷を行うため、印刷ヘッド2からインク滴が吐出されると、印刷ヘッド2からインク滴が吐出される際等に、インク滴の一部が霧状になって空気中を浮遊するインクミストが発生する。このインクミストは、プリンタ1の内部を浮遊し、リニアスケール31に汚れとして付着する。インクミストによってリニアスケール31に汚れが生じると、キャリッジ3の位置や速度等を適切に検出することができなくなるため、プリンタ1では、リニアスケール31の汚れの検出が行われる。以下、リニアスケール31の汚れ検出時におけるプリンタ1の一連の動作を説明する。
【0070】
図10に示すように、まず、制御部37がリニアスケール31の汚れの検出タイミングであるか否かを判断する(ステップS1)。リニアスケール31の汚れの検出タイミングはたとえば、1枚の印刷用紙Pへの印刷終了後または、プリンタ1の電源投入時である。リニアスケール31の汚れの検出タイミングが1枚の印刷用紙Pへの印刷終了後であると、検出回数を増やすことができ、リニアスケール31の汚れを適切なタイミングで検出できる。また、リニアスケール31の汚れの検出タイミングがプリンタ1の電源投入時であると、立上げ時のプリンタ1の初期動作でリニアスケール31の汚れ検出が可能となり、別途、リニアスケール31の汚れの検出動作を行う必要がなくなる。そのため、リニアスケール31の汚れの検出動作によるロスタイムをなくすことができる。
【0071】
また、リニアスケール31の汚れの検出タイミングはたとえば、プリンタ1の電源投入後の一定時間t1経過後、また、その後は一定時間t2経過後ごとであっても良い。この場合、一定時間t1と一定時間t2とは同じでも異なっても良い。さらに、リニアスケール31の汚れの検出タイミングは、電源投入後の一定枚数n1の印刷用紙Pへの印刷終了後、また、その後は一定枚数n2の印刷用紙Pへの印刷終了後ごとであって良い。この場合、一定枚数n1と一定枚数n2とは同じでも異なっても良い。さらにまた、リニアスケール31の汚れの検出タイミングは、プリンタ1の電源投入後の一定時間t1の経過と、一定枚数n1の印刷用紙Pへの印刷の終了とのいずれか早い方、また、その後は一定時間t2の経過と、一定枚数n2の印刷用紙Pへの印刷の終了とのいずれか早い方といったように、経過時間と印刷枚数との両者を利用してリニアスケール31の汚れの検出タイミングを定めても良い。なお、印刷枚数で検出タイミングを定める場合には、A4サイズの用紙へ縁無し印刷したときの枚数換算で一定枚数n1やn2を定めても良い。
【0072】
ステップS1で、検出タイミングでないと判断されると、リニアスケール31の汚れの検出は行われず、プリンタ1はたとえば、待機状態となったり、次の印刷用紙Pへの印刷を行う。一方、ステップS1で検出タイミングであると判断されると、キャリッジ3がホームポジションあるいは所定の位置へ移動する(ステップS2)。
【0073】
その後、所定の前処理を行う(ステップS3)。ステップS3では、たとえば、可変抵抗52を調整することで発光素子50からの発光量を増減する。後述のように、第2透光部31hに付着したインクミストにより、第2透光部31hの、リニアスケール31の長手方向の一部に、所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が発生すると、または、第2透光部31hで、所定の幅Wの範囲にわたって発光部41からの光が遮断されると、リニアスケール31に汚れが生じていることが検出される。そのため、発光素子50からの発光量が多ければ、第2透光部31hにインクミストが付着していても、第2透光部31hの汚れの程度が大きくなければ、リニアスケール31の汚れは検出されない。また、発光素子50からの発光量が少なければ、第2透光部31hの汚れの程度が小さくても、リニアスケール31の汚れが検出される。このように、発光素子50からの発光量を増減することで、リニアスケール31の汚れの程度を検出することが可能となる。なお、ステップS3での前処理は必ずしも必要でなく、省略しても良い。
【0074】
ステップS3での前処理が終了すると、実際にリニアスケール31の汚れの検出と必要に応じた処理を行う(ステップS4)。ステップS4では、図11に示すように、まず、CRモータ4の駆動電圧の設定を行う(ステップS11)。具体的には、加速が完了した後のキャリッジ3が略一定速度で移動するように一定の駆動電圧を設定する。また、CRモータ4の駆動時間の設定を行う(ステップS12)。具体的には、ホームポジションあるいは所定の場所に位置するキャリッジ3に固定されたフォトセンサ32がリニアスケール31の汚れ検出パターン31cの部分を略一定速度で通過するようにCRモータ4の駆動時間を設定する。
【0075】
その後、上述のように設定された駆動電圧および駆動時間でCRモータ4を駆動する(ステップS13)。CRモータ4によってキャリッジ3が移動し、フォトセンサ32はリニアスケール31に対して相対移動する。この相対移動によって、リニアエンコーダ33は、たとえば、周期TのA相信号SG1およびB相信号SG2を出力する。リニアエンコーダ33の出力信号であるA相信号SG1、B相信号SG2は制御部37に入力される。すなわち、制御部37は、リニアコーダ33の出力信号を取得する(ステップS14)。
【0076】
その後、制御部37はリニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断する(ステップS15)。リニアスケール31にインクミストが付着すると、たとえば、図14に示すように、第2透光部31hにもインクミストの付着部分D1、D2、D3が生じる。そして、付着部分D1、D2および光遮断部31mによって、第2透光部31hには、リニアスケール31の長手方向の一部で所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じる。または、インクミストの付着によって、第2透光部31hで発光部41からの光が遮断される。リニアスケール31の長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じると、または、第2透光部31hで所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光が遮断されると、リニアエンコーダ33から出力されるA相信号SG1やB相信号SG2の周期に変動が生じる。本形態では、リニアエンコーダ33から出力されるA相信号SG1やB相信号SG2の周期に所定の変動が生じたときに、リニアスケール31の長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じている、または、第2透光部31hで発光部41からの光が遮断されていると判断する。そして、その状態では、リニアスケール31に汚れが生じていると判断する。
【0077】
より具体的には、ステップS15では、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のA相信号SG1やB相信号SG2の周期(または、周波数)が基本となる周期T(または、周波数)の±x%(たとえば、±15%)の範囲から外れているか否かを判断する。A相信号SG1やB相信号SG2の周期が基本となる周期Tの±x%の範囲から外れていない場合には、汚れ検出パターン31cが形成された部分でも、リニアエンコーダ33での正確な位置の検出は可能(すなわち、正確な読取は可能)となる(ステップS16)。すなわち、この場合には、第2透光部31hには、リニアスケール31の長手方向の一部で所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じておらず、また、第2透光部31hで所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光が遮断されていないため、リニアスケール31に汚れが生じていないと判断する。また、リニアスケール31に汚れが生じていないため、リニアエンコーダ33での適切な位置検出が可能であると判断する。
【0078】
リニアスケール31に汚れが生じていないと判断すると、CRモータ4の駆動時間が設定時間以上であるか否かを判断する(ステップS17)。CRモータ4の駆動時間が設定時間未満である場合には、ステップS14へ戻って、制御部37は、リニアコーダ33の出力信号を取得する。また、CRモータ4の駆動時間が設定時間以上である場合には、CRモータ4を停止する(ステップS18)。たとえば、キャリッジ3がホームポジションに位置した状態で、CRモータ4を停止して、ステップS4でのリニアスケール31の汚れの検出が終了する。
【0079】
一方、たとえば、図13(A)に示すように、A相信号SG1やB相信号SG2の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、図14に示すように、付着部分D1、D2および光遮断部31mによって、第2透光部31hには、リニアスケール31の長手方向の一部で所定の幅Wの範囲にわたって発光部41からの光を遮断する部分が生じていると考えられる。この場合に、本形態では、汚れ検出パターン31cの中で、第1の遮光パターン31k1が形成され、透過面積および透過率の最も高い部分(すなわち、最も光が遮断されにくい部分)のA相信号SG1やB相信号SG2の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れているか否かを判断する(ステップS19)。すなわち、本形態では、第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、リニアスケール31に汚れが生じており、そのままの状態では、リニアエンコーダ33で誤った位置検出が行われる可能性が高いと判断する。また、第2の遮光パターン31k2および/または第3の遮光パターン31k3が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れていても、リニアエンコーダ33で誤った位置検出が行われる可能性は非常に低いと判断する。
【0080】
第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れていない場合、すなわち、第2の遮光パターン31k2および/または第3の遮光パターン31k3が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、たとえば、キャリッジ3がホームポジションに位置した状態で、CRモータ4を停止して(ステップS20)、所定の処理を行う(ステップS21)。ステップ21では、たとえば、その時点の印刷枚数を確認する。あるいは、ステップ21では、リニアスケール31の汚れの検出タイミングが所定時間ごとにある場合には、どれぐらいの時間が経過したかを確認する。具体的には、制御部37がこれらの印刷枚数や印刷時間を算出する。
【0081】
また、ステップS21では、たとえば、リニアエンコーダ31での検出結果に基づいて、可変抵抗52を調整して発光素子50からの発光量を増加する。具体的には、第3の遮光パターン31k3が形成された部分のみのA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、リニアスケール31の汚れの程度は大きくないため、比較的低い増加率で発光素子50からの発光量を増加する。また、第2の遮光パターン31k2が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、リニアスケール31の汚れの程度は大きくなってきているため、第3の遮光パターン31k3が形成された部分のみのA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合と比べ、大きな増加率で発光素子50からの発光量を増加する。このように、リニアエンコーダ31での検出結果に基づいて、段階的に発光素子50からの発光量を増加する。
【0082】
ステップS21での処理が終了すると、ステップS4でのリニアスケール31の汚れの検出および処理が終了する。
【0083】
また、第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合には、汚れ検出パターン31cが形成された部分では、リニアエンコーダ33での正確な位置の検出は不可能(すなわち、正確な読取は不可能)となる(ステップS22)。すなわち、この場合には、リニアスケール31に汚れが生じていると判断する。また、リニアスケール31に汚れが生じているため、そのままの状態では、リニアエンコーダ33で誤った位置検出が行われる可能性が高いと判断する。リニアスケール31に汚れが生じていると判断すると、CRモータ4を停止する(ステップS23)。
【0084】
ここで、上述のように本形態では、第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合に、リニアスケール31に汚れが生じていると判断している。しかし、第2の遮光パターン31k2、または、第3の遮光パターン31k3が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合に、リニアスケール31に汚れが生じていると判断しても良い。
【0085】
なお、図14に示すように、第2透光部31hに、付着部分D1、D2および光遮断部31mによって、リニアスケール31の長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じる場合には、図13(A)に示すように、A相信号SG1やB相信号SG2の周期T1は周期Tに比べ短くなる。これに対し、インクミストによって、第2透光部31hが所定の幅Wの範囲にわたって遮断される場合には、A相信号SG1やB相信号SG2の周期は周期Tに比べ長くなる。
【0086】
ステップS23でCRモータ4を停止すると、プリンタ1は所定の処理を行う(ステップS24)。たとえば、何枚の印刷用紙Pへ印刷を行うとリニアスケール31に汚れが生じるか、または、リニアスケール31の汚れの検出タイミングが所定時間ごとにある場合には、どれぐらいの時間、印刷を行うとリニアスケール31に汚れが生じるかを確認する。具体的には、リニアスケール31に汚れが生じるまでの印刷枚数や印刷時間を制御部37が算出する。この確認によって、リニアスケール31に汚れが生じるまでの印刷枚数や印刷時間の把握が可能となる。
【0087】
また、ステップS24では、たとえば、プリンタ1の本体シャーシ8に取り付けられた液晶ディスプレイ等の表示装置(図示省略)に、リニアスケール31に汚れが生じているとの注意メッセージやリニアスケール31の汚れに起因するエラーメセージ等を表示する。これらのメッセージの表示によって、リニアスケール31の汚れをユーザに知らせることができ、リニアスケール33での誤検出によるプリンタ1の動作不良を防止できる。
【0088】
さらに、ステップS24では、たとえば、プリンタ1の動作を停止して、プリンタ1を使用不可とする。プリンタ1を使用不可とすることで、リニアスケール33での誤検出によるプリンタ1の動作不良を防止し、キャリッジ3の暴走等によるユーザの怪我等を防止できる。また、ステップS24では、その後さらに所定時間印刷をした後、または、さらに所定枚数の印刷をした後に、プリンタ1が動作を停止するように、制御部37が所定の設定を行っても良い。
【0089】
さらにまた、ステップS24では、たとえば、制御部37は、キャリッジ3の移動速度の上限を設定する。リニアスケール31に汚れが生じて、第1透光部31fを透過して受光部42で受光される光量の低下等が生じても、キャリッジ3の移動速度がある程度遅ければ、リニアエンコーダ33での誤検知は回避することができる。そのため、キャリッジ3の移動速度の上限を設定することで、リニアスケール31に汚れが生じていても、リニアエンコーダ33での誤検知を防止することが可能となる。その結果、プリンタ1では、さらに所定枚数あるいは所定時間の印刷が可能となる。なお、ステップS24では、PF駆動ローラ6による印刷用紙Pの送り速度の上限を設定しても良い。
【0090】
また、ステップS24では、たとえば、可変抵抗52を調整して発光素子50からの発光量を増加する。発光素子50の発光量を増加することで、リニアスケール31に汚れが生じていても、プリンタ1では、さらに所定枚数あるいは所定時間の印刷が可能となる。この場合、発光素子50の発光量は可変抵抗52で調整できるため、発光素子50の発光量の増加を容易に行うことができる。なお、この場合の発光素子50の発光量の増加率は、第2の遮光パターン31k2が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れている場合の発光量の増加率よりも大きくなる。
【0091】
さらに、ステップS24では、たとえば、スケール昇降機構44がリニアスケール31を下降させる。すなわち、リニアスケール31において、発光部41からの光が照射される所定の幅Wの部分(図8参照)を上側へ相対移動する。短手方向を高さ方向としてリニアスケール31が支持フレーム16に取り付けられているため、印刷ヘッド2からのインクの吐出によって生じるインクミストは、リニアスケール31の下側部分に付着し、この下側部分に汚れが生じやすくなる。そのため、スケール昇降機構44がリニアスケール31を下降させることで、汚れの少ないリニアスケール31の上側部分を利用したキャリッジ3の位置検出が可能となる。その結果、プリンタ1では、さらに所定枚数あるいは所定時間の印刷が可能となる。なお、リニアスケール31の下降動作をステップS21でも行い、リニアエンコーダ33での検出結果に基づいて、段階的に、リニアスケール31を下降させても良い。
【0092】
さらにまた、ステップS24では、たとえば、リニアスケール31の清掃をする。この清掃によって、リニアエンコーダ33での誤検知を防止することができる。
【0093】
以上のようなステップS24での処理が終了すると、ステップS4でのリニアスケール31の汚れの検出および処理が終了する。
【0094】
なお、上述した例では、ステップS15で、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のA相信号SG1やB相信号SG2の周期(周波数)が基本となる周期T(周波数)の±x%の範囲から外れているか否かを判断するとともに、第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れているかを判断することで、リニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断する。この他にもたとえば、図12に示すフローチャートのように、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のA相信号SG1とB相信号SG2との位相に逆転が生じているか否かを判断する(ステップS25)とともに、第1の遮光パターン31k1が形成された部分で位相に逆転が生じているか否かを判断する(ステップS29)ことで、リニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断しても良い。なお、この場合にも、第2の遮光パターン31k2、または、第3の遮光パターン31k3が形成された部分で位相に逆転が生じている場合に、リニアスケール31に汚れが生じていると判断しても良い。
【0095】
具体的には、以下のように、リニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断しても良い。すなわち、たとえば、図13(B)に示すように、キャリッジ3が0桁側から80桁側へ移動する際、B相信号SG2がローレベルのときに立ち上がっていたA相信号SG1が、B相信号SG2がハイレベルのときに立ち上がる(すなわち、A相信号SG1とB相信号SG2との位相に逆転が生じる)場合、図14に示すように、付着部分D1、D2および光遮断部31mによって、リニアスケール31の長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、発光部41からの光を遮断する部分が生じている。また、この光を遮断する部分が、第1の遮光パターン31k1が形成された第2透光部31hに生じている場合に、汚れ検出パターン31cが形成された部分では、リニアエンコーダ33での正確な位置の検出は不可能(すなわち、正確な読取は不可能)となる(ステップS22)。この場合に、リニアスケール31に汚れが生じていると判断し、そのままの状態では、リニアエンコーダ33で誤った位置検出が行われる可能性が高いと判断する。
【0096】
また、ステップS15およびステップS19とステップS25およびステップS29との組合せでリニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断しても良い。すなわち、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のA相信号SG1やB相信号SG2の周期が基本となる周期Tの±x%の範囲から外れているか否かを判断するとともに、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のA相信号SG1とB相信号SG2との位相に逆転が生じているか否かを判断することで、リニアスケール31に汚れが生じているか否かを判断しても良い。
【0097】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、リニアスケール31が、キャリッジ3の位置を検出するための位置検出パターン31bに加え、汚れ検出パターン31cを備えている。そのため、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のリニアエンコーダ33からのA相信号SG1やB相信号SG2を用いて、リニアスケール31の汚れを検出できる。また、リニアスケール31の汚れを検出することで、たとえば、リニアスケール31の汚れに起因するリニアエンコーダ33での位置検出不良によって生じ得るプリンタ1の誤動作を防止するための種々の処理や、リニアスケール31で汚れが生じていると検出された後であっても、さらに所定枚数あるいは所定時間の印刷を行うための種々の処理、あるいは、リニアスケール31の清掃の必要性の有無の確認ができる。
【0098】
また、本形態では、第2透光部31hには、第2透光部31hの光の透過面積および透過率を第1透光部31fの光の透過面積および透過率よりも小さくする遮光パターン31kが形成されている。そのため、リニアスケール31にインクミストが汚れとして付着すると、第2透光部31hでは、第1透光部31fに比べ、リニアスケール31の長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、光が遮断される部分が生じやすくなる。また、第2透光部31hでは、第1透光部31fに比べ、光が遮断されやすくなる。したがって、キャリッジ3の位置検出に用いられる第1透光部31fにおいて、リニアスケール31の長手方向の一部または全部で所定の幅Wの範囲にわたって光が遮断される。そのため、リニアエンコーダ33での誤検出が発生する前に、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のリニアエンコーダ33からのA相信号SG1等によって、リニアスケール31の汚れを検出できる。
【0099】
さらに、本形態の汚れ検出パターン31cでは、第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3が変化することで第2透光部31hの透過面積または透過率が変化する。そのため、第3の遮光パターン31k3が形成された第2透光部31hでは、リニアスケール31の汚れによって比較的早く光が遮断され、第1の遮光パターン31k1が形成された第2透過部31hでは、比較的遅く光が遮断される。そのため、第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3の中で、どの遮光パターン31kが形成された部分のA相信号SG1等の周期に乱れが生じるか(すなわち、どの遮光パターン31kが形成された第2透光部31hに光が遮断される部分が生じるか)を検出することで、リニアスケール31に生じる汚れの程度の検出が可能となる。
【0100】
また、本形態のように、第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3が形成された部分のA相信号SG1等の周期に乱れが生じた際の印刷枚数や印刷時間を確認することで、リニアスケール31に生じる汚れの経時的な変化を把握できる。その結果、最終的にリニアエンコーダ33で誤検出が生じるまでの時間や印刷枚数等の予測が可能になる。さらに、仮に、第2の遮光パターン31k2が形成された部分のA相信号SG1等の周期に乱れが生じ、このときに、リニアエンコーダ33で誤検知が生じるような場合には、どの程度の汚れが発生するとリニアエンコーダ33に誤検出が生じるかというリニアエンコーダ33の検出限界を認識できる。
【0101】
本形態の汚れ検出パターン31cでは、遮光パターン31mがリニアスケール31の長手方向に変化している。そのため、印刷用紙Pへの印刷時に0桁側から80桁側へ移動するキャリッジ3の動きを利用するという簡易な構成で、リニアスケール31に生じる汚れの程度の検出が可能になる。
【0102】
本形態では、遮光パターン31kは、リニアスケール31の長手方向に対して傾斜した斜線状の光遮断部31mによって形成されている。ここで、遮光パターンがリニアスケール31の長手方向と平行な光遮断部によって形成されている場合には、リニアスケール31の短手方向で発光部41からの光が照射される所定の幅Wの部分(図8参照)と光遮断部との位置がずれると、第1透光部31fに対して、第2透光部31hの光の透過面積を小さくしたり、光の透過率を低くすることができなくなる。また、遮光パターンがリニアスケールの長手方向に直交する光遮断部によって形成されている場合には、この光遮断部が光を遮断する長手方向の一部となってしまう。そのため、第2透光部31hでは、長手方向の一部に所定の幅Wの範囲にわたって、インクミストに起因する汚れによって光を遮断する部分を形成しにくくなる。また、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する場合、位置検出パターン31bが形成された部分をフォトセンサ32が通過するときのA相信号SG1等と異なる周期の信号が出力される。したがって、リニアスケール31の汚れを検出するための制御部37での処理が複雑になる。以上から、遮光パターン31kが斜線状の光遮断部31mによって形成されていると、リニアスケール31の汚れを簡易かつ適切に検出することができる。
【0103】
本形態では、リニアエンコーダ33での検出結果に基づいて、発光素子50からの発光量を増加させている。すなわち、本形態では、第3の遮光パターン31k3が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れたときに、所定の増加率で発光素子50の発光量を増加し、その後、第2の遮光パターン31k2が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れたときに、所定の増加率で発光素子50の発光量をさらに増加し、その後、第1の遮光パターン31k1が形成された部分のA相信号SG1等の周期T1が周期Tの±x%の範囲から外れたときに、所定の増加率で発光素子50の発光量をさらに増加している。そのため、キャリッジ3の位置検出に必要な光量を確保しつつ、発光素子50の発光量を抑えることができる。したがって、適切な位置検出と消費電力との低減とを同時に実現することが可能となる。
【0104】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【0105】
上述した形態では、リニアスケール31の80桁側で位置検出パターン31bの外側に隣接するように汚れ検出パターン31cが形成されている。この他にもたとえば、図15に示すように、位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとがリニアスケール31の短手方向で隣接して配置されても良い。この場合には、キャリッジ3の位置検出に影響を与えることなく、リニアスケール31の汚れを検出できる。また、リニアスケール31の長手方向で、リニアエンコーダ33の小型化を図れる。特に、図15に示すように、汚れ検出パターン31cが位置検出パターン31bの下側に配置されている場合には、リニアスケール31の下側部分に汚れが生じやすくなる。そのため、汚れ検出パターン31cが位置検出パターン31bの下側に配置されていると、第1透光部31fにおいて、リニアスケール31の長手方向の一部または全部で所定の幅Wの範囲にわたって光が遮断され、リニアエンコーダ33での誤検出が発生する前に、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のリニアエンコーダ33からのA相信号SG1等によって、リニアスケール31の汚れを確実に検出できる。なお、位置検出パターン31bの上側に汚れ検出パターン31cが形成されて良いし、位置検出パターン31bの上下方向両側に汚れ検出パターン31cが形成されても良い。
【0106】
また、図15に示すように、位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとがリニアスケール31の短手方向で隣接して配置される場合には、リニアスケール31の短手方向で発光部41からの光の透過面積および透過率が互いに異なる第1および第2の遮光パターン131k1、131k2を第2透光部31hに形成しても良い。具体的には、長手方向に対して傾斜した斜線状の第1の光遮断部131m1によって、第1の遮光パターン131k1を形成するとともに、第1の光遮断部131m1に平行でかつ第1の光遮断部131m1よりも幅の広い第2の光遮断部131m2によって、第2の遮光パターン131k2を上側から順番に形成しても良い。この場合、リニアスケール31の長手方向で、リニアエンコーダ33の小型化を図ることが可能となる。
【0107】
なお、図15に示すようにリニアスケール31を構成する場合においては、リニアスケール31の汚れ検出時に、上述したステップS3で、位置検出パターン31bに照射されていた発光部41からの光が汚れ検出パターン31cに照射されるように、スケール昇降機構44がリニアスケール31を上昇させれば良い。また、発光部41からの光が第1の遮光パターン131k1が形成された部分に照射されるように、または、第2の遮光パターン131k2が形成された部分に照射されるようにスケール昇降機構44がリニアスケール31の上昇量を変えて、リニアスケール31の汚れ検出を行うことで、上述した形態と同様に、リニアスケール31に生じる汚れの程度の検出が可能となる。
【0108】
また、上述した形態では、第2透光部31hには、複数の斜線状の第1から第3の光遮断部31m1〜31m3によって第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3が形成されている。この他にもたとえば、図16に示すように、矩形状の第1から第3の光透過部31p1〜31p3とともに市松模様状に配置された矩形状の第1から第3の光遮断部31q1〜31q3によって、第1から第3の遮光パターン31n1〜31n3が形成されても良い。すなわち、第2透光部31hの光の透過面積および透過率をしだいに小さくする第1から第3の遮光パターン31n1〜31n3を、しだいに面積が小さくなる第1から第3の光透過部31p1〜31p3とともに市松模様状に配置されたしだいに面積が大きくなる第1から第3の光遮断部31q1〜31q3によって形成しても良い。この場合には、遮光パターン31nの形成が容易になる。また、マクロ的には、第1から第3の光遮断部31q1〜31q3によって斜線状に発光部41からの光が遮断されるため、斜線状の第1から第3の光遮断部31m1〜31m3によって第1から第3の遮光パターン31k1〜31k3を形成する場合と同様の効果を得ることができる。
【0109】
同様に、図15に示す斜線状の第1の光遮断部131m1、第2の光遮断部131m2に代えて、図17に示すように、しだいに面積が小さくなる第1、第2の光透過部131p1、131p2とともに市松模様状に配置されたしだいに面積が大きくなる第1から第3の光遮断部131q1、131q2によって、第1の光遮断部131n1、第2の光遮断部131n2を形成しても良い。
【0110】
また、図18に示すように、第2透光部31hの幅H1〜H3が、第1透光部31fの幅Hよりも狭く形成されるとともに、汚れ検出パターン31cでは、第2透光部31hの幅H1〜H3が変化するようにしても良い。たとえば、0桁側から80桁側に向かって、初めの3つの第2透光部31hの幅H1、次の3つの第2透光部31hの幅H3および最後の3つの第2透光部31hの幅H5がこの順番でしだいに狭くなるように汚れ検出パターン31cを形成しても良い。この場合には、たとえば、0桁側から80桁側に向かって、初めの3つの第2遮光部31gの幅H2、次の3つの第2遮光部31gの幅H4および最後の3つの第2遮光部31gの幅H6がこの順番でしだいに広くなるように形成しても良い。また、この場合には、たとえば、幅H1と幅H2との和、幅H3と幅H4との和および幅H5と幅H6との和はいずれも、明暗のピッチPとなっている。なお、第2透光部31hの幅H1〜H3が第1透光部31fの幅Hよりも狭く形成される場合には、図18に示すように、第2透光部31hには、遮光パターンが形成されなくても良いし、遮光パターンが形成されても良い。
【0111】
図18に示すようにリニアスケール31を構成した場合には、リニアスケール31に付着するインクミストによって、第2透光部31hでは、第1透光部31fに比べ、光が遮断されやすくなる。そのため、キャリッジ3の位置検出に用いられる第1透光部31fにおいて、リニアスケール31の長手方向の一部または全部で所定の幅Wの範囲にわたって光が遮断され、リニアエンコーダ33での誤検出が発生する前に、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際のリニアエンコーダ33からのA相信号SG1等によって、リニアスケール31の汚れを検出できる。また、汚れ検出パターン31cにおいて、第2透光部31hの幅H1〜H3が変化するため、リニアスケール31に生じる汚れの程度を検出することができる。また、リニアスケール31の汚れの程度を検出することで、リニアスケール31に生じる汚れの経時的な変化を把握することができるとともに、リニアエンコーダ33の検出限界を認識することができる。さらに、第2透光部31hの幅H1〜H3が、リニアスケール31の長手方向に変化するため、キャリッジ3の動作を利用するという簡易な構成で、リニアスケール31に生じる汚れの程度を検出することが可能になる。
【0112】
なお、位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとがリニアスケール31の短手方向で隣接して配置される場合においても、図19に示すように、第2透光部31hの幅が、第1透光部31fの幅Hよりも狭く形成されるとともに、リニアスケール31の短手方向で、第2透光部31hの幅が連続的に変化するようにしても良い。
【0113】
図8および図15〜図19に示すように、上述したリニアスケール31では、リニアスケール31の長手方向で位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとが隣接する場合には、長手方向で第2透光部31hの透過面積等が変化しあるいは、第2透光部31hの幅H1〜H3が変化している。また、リニアスケール31の短手方向で位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとが隣接する場合には、短手方向で第2透光部31hの透過面積等が変化しあるいは、第2透光部31hの幅が変化している。この他にもたとえば、長手方向で位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとが隣接する場合に、短手方向で第2透光部31hの透過面積等が変化しあるいは、第2透光部31hの幅が変化しても良いし、短手方向で位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとが隣接する場合に、長手方向で第2透光部31hの透過面積等が変化しあるいは、第2透光部31hの幅が変化しても良い。
【0114】
さらに、上述した形態では、第2透光部31hと第2遮光部31gとによって形成される明暗のピッチPは、第1透光部31fと第1遮光部31eとによって形成される明暗のピッチPと同じである。この他にもたとえば、第2透光部31hと第2遮光部31gとによって形成される明暗のピッチは、第1透光部31fと第1遮光部31eとによって形成される明暗のピッチPと異なっていても良い。
【0115】
さらにまた、スケール昇降機構の構成は上述したスケール昇降機構44の構成には限定されず、図20に示すスケール昇降機構84のように、偏心カム45に相当する偏心カム85と従動ギア47とが一体で形成され、この一体となった偏心カム85と従動ギア47とが、一側面16aの外側でガイドシャフト17の先端に回転可能に取り付けられても良い。この場合には、図20に示すように、取付ブラケット46には、当接部46aが、基部46bからプリンタ1の外側に向かって立ち上がるように形成され、偏心カム85のカム面85aに当接している。また、カム面85aはカム面45aと同様に形成されている。なお、この場合には、ガイドシャフト17は回転しない。また、図20では、図5で図示した構成と共通する構成には、同一の符号を付している。
【0116】
また、上述した形態では、位置検出パターン31bと汚れ検出パターン31cとがリニアスケール31の短手方向で隣接して配置される場合、リニアスケール31の汚れ検出時には、ステップS3で、スケール昇降機構44がリニアスケール31を上昇させている。この他にもたとえば、プリンタ1が、印刷ヘッド2のノズル面(図2の下面)とプラテン7との隙間(ギャップ)を調整するギャップ調整機構を備えている場合には、ステップS3で、このギャップ調整機構が、キャリッジ3に取り付けられたフォトセンサ32をキャリッジ3とともに下降させ、位置検出パターン31bに照射されていた発光部41からの光が汚れ検出パターン31cに照射されるようにしても良い。
【0117】
さらに、上述した形態のリニアスケール31の汚れ検出時のステップS3の前処理として、副走査方向SSで発光部41側または受光部42側にリニアスケール31を平行移動しても良い。上述のように受光部41はコリメータレンズ51を備えている。しかし、受光部41から発光される光は完全な平行光にはならない。そのため、リニアスケール31が受光部42に近い場合の方が受光部42での適切な検出を行いやすくなる。したがって、リニアスケール31を発光部41側に移動すると、第2透光部31hの汚れの程度が小さくても、リニアエンコーダ33から出力されるA相信号SG1やB相信号SG2の周期に変動が生じやすい。すなわち、リニアスケール31の汚れが検出されやすい。また、リニアスケール31を受光部42側に移動すると、第2透光部31hの汚れの程度が大きくなければ、リニアエンコーダ33から出力されるA相信号SG1やB相信号SG2の周期に変動が生じにくい。すなわち、リニアスケール31の汚れは検出されにくい。このように、ステップS3で、リニアエンコーダ31を発光部41側または受光部42側に移動させることで、リニアスケール31の汚れの程度を検出することが可能となる。
【0118】
さらにまた、上述した形態では、第1のアンプ58からの出力信号と第3のアンプ60からの出力信号との差動からデジタル信号であるA相信号SG1を生成し、第2のアンプ59からの出力信号と第4のアンプ61からの出力信号との差動からデジタル信号であるB相信号SG2を生成している。この他にもたとえば、図21(A)に示すように、第1のアンプ58等のアンプの出力信号に所定の閾値Cを設定することで、デジタル信号であるA相信号等を生成しても良い。すなわち、出力信号の値が閾値Cより大きければハイレベルの信号を出力し、出力信号の値が閾値Cより小さければローレベルの信号を出力することで、デジタル信号を生成しても良い。この場合のリニアスケール31の汚れの検出は以下のように行えば良い。
【0119】
発光部41から発光され、第1透光部31fを透過する光量は、第2透光部31hを透過する光量よりも多い。そのため、リニアスケール31にインクミストが付着していない場合に、たとえば、図21(A)に示すように、位置検出パターン31bが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際には、アンプから信号SG11が出力され、汚れ検出パターン31cが形成された部分をフォトセンサ32が通過する際には、アンプから信号SG11よりも低いレベルの信号SG12が出力される。また、信号SG11と閾値Cとから図21(B)に示すデジタル信号SG13が生成され、信号SG12と閾値Cとから図21(C)に示すデジタル信号SG14が生成される。ここで、発光部41から発光された光のリニアスケール31の透過量が多い程、デジタル信号のハイレベルの周期が長くなるため、デジタル信号SG13のハイレベルの周期T11は、デジタル信号SG14のハイレベルの周期T12よりも長くなる。また、リニアスケール31に汚れが発生していない場合には、周期T11に対する周期T12の比率はたとえば、80%となっている。
【0120】
ここで、リニアスケール31にインクミストが均等に付着すると、アンプから出力される信号SG11、SG12のレベルは同程度で低下する。たとえば、図21(D)に示すように、信号SG11から信号SG21までレベルが低下し、信号SG12は信号SG22までレベルが低下する。また、図21(E)に示すように、信号SG21と閾値Cとから生成されるデジタル信号SG23のハイレベルの周期T21は、周期T11よりも短くなる。また、図21(F)に示すように、デジタル信号SG24のハイレベルの周期T22は、周期T12よりも短くなる。
【0121】
この場合、図21に示すように、周期T11に対する周期T12の比率よりも周期T21に対する周期T22の比率は低下する。たとえば、周期T11に対する周期T12の比率が80%であったのに対し、周期T21に対する周期T22の比率は50%となる。そのため、リニアスケール31にインクミストが付着したときの、位置検出パターン31bに基づくデジタル信号のハイレベルの周期(たとえば、周期T21)と、汚れ検出パターン31cに基づくデジタル信号のハイレベルの周期(たとえば、周期T22)との比率が所定の値以下になったときに、リニアスケール31に汚れが生じていると判断することができる。以上のように、アンプの出力信号に所定の閾値Cを設定することで、デジタル信号を生成する場合には、上述した方法で、リニアスケール31の汚れの検出を行うことができる。なお、汚れ検出パターン31cに基づくデジタル信号のハイレベルの周期の、初期状態に対する低下率から、リニアスケール31の汚れの検出を行うことも可能である。
【0122】
また、上述した形態では、液体吐出装置としてプリンタ1を例に本発明の構成を説明したが、本発明の構成は、たとえば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置等のインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置にも適用可能である。なお、これらの液体吐出装置で吐出される液体は、たとえば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク等を含む液体や、加工液、遺伝子溶液等になる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施の形態にかかる液体吐出装置(プリンタ)の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1のプリンタの紙送りに関する部分の概略構成を示す概略側面図。
【図3】図1のキャリッジおよび図2のPF駆動ローラの検出機構を示す概略構成図。
【図4】図3のリニアスケールの一端部の取付状態を示した概略斜視図。
【図5】図4の紙面奥側からリニアスケールの一端部の取付状態を示した概略斜視図。
【図6】図4のカムと取付ブラケットとの関係を示す図。
【図7】図3のリニアエンコーダの概略構成を示す模式図。
【図8】図3のリニアスケールの80桁側を示す図。
【図9】図3のリニアエンコーダから出力される信号波形を示す図。
【図10】図3のリニアスケールの汚れ検出時におけるプリンタの一連の動作を示すフローチャート。
【図11】図3のリニアスケールの汚れ検出動作の一例を示すフローチャート。
【図12】図3のリニアスケールの汚れ検出動作の他の例を示すフローチャート。
【図13】図3のリニアスケールに汚れが生じた時のリニアエンコーダから出力される信号波形の例を示す図。
【図14】図8のE部を拡大して示す部分拡大図。
【図15】他の形態にかかるリニアスケールの80桁側を示す図。
【図16】他の形態にかかるリニアスケールの80桁側を示す図。
【図17】他の形態にかかるリニアスケールの80桁側を示す図。
【図18】他の形態にかかるリニアスケールの80桁側を示す図。
【図19】他の形態にかかるリニアスケールの80桁側を示す図。
【図20】他の形態にかかるリニアスケールの一端部の取付状態を示した概略斜視図。
【図21】他の形態にかかるリニアスケールの汚れ検出方法を説明するための図。
【符号の説明】
【0124】
1 プリンタ(液体吐出装置)、2 印刷ヘッド(液体吐出部)、3 キャリッジ(被検出物)、31 リニアスケール、31b 位置検出パターン、31c 汚れ検出パターン、31e 第1遮光部、31f 第1透光部、31g 第2遮光部、31h 第2透光部、31k(31k1〜31k3)・31n(31n1〜31n3)・131k(131k1〜131k2)・131n(131n1〜131n2) 遮光パターン、31m(31m1〜31m3)・31q(31q1〜31q3)・131m(131m1〜131m2)・131q(131q1〜131q2) 光遮断部、31p(31p1〜31p3)・131p(131p1〜131p2) 光透過部、33 リニアエンコーダ(位置検出装置)、41 発光部、42 受光部、52 可変抵抗(光量制御手段)、L 検出範囲、P 印刷用紙(媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物の位置を検出する位置検出装置において、
発光部と、該発光部からの光を受光する受光部と、長尺状に形成され、上記発光部と上記受光部との間に配設されるリニアスケールとを備え、
該リニアスケールは、上記被検出物の位置を検出するために、上記発光部からの光を透過する第1透光部および上記発光部からの光を遮断する第1遮光部が少なくとも上記被検出物の検出範囲内で交互に形成される位置検出パターンと、上記リニアスケールの汚れを検出するために、上記発光部からの光を透過する第2透光部および上記発光部からの光を遮断する第2遮光部が交互に形成される汚れ検出パターンとを備え、
該汚れ検出パターンには、上記第2透光部の上記発光部からの光の透過面積を上記第1透光部の上記発光部からの光の透過面積よりも小さくする、または、上記第2透光部の上記発光部からの光の透過率を上記第1透光部の上記発光部からの光の透過率よりも低くする遮光パターンが形成され、
上記汚れ検出パターンでは、上記遮光パターンが変化することで上記透過面積または上記透過率が変化することを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記汚れ検出パターンでは、前記遮光パターンが、前記リニアスケールの長手方向に沿って変化することを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記汚れ検出パターンでは、前記遮光パターンが、前記リニアスケールの短手方向に沿って変化することを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記遮光パターンは、前記リニアスケールの長手方向に対して傾斜した斜線状の光遮断部によって形成されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記遮光パターンは、矩形状の光透過部とともに市松模様状に配置された矩形状の光遮断部によって形成されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の位置検出装置。
【請求項6】
被検出物の位置を検出する位置検出装置において、
発光部と、該発光部からの光を受光する受光部と、長尺状に形成され、上記発光部と上記受光部との間に配設されるリニアスケールとを備え、
該リニアスケールは、上記被検出物の位置を検出するために、上記発光部からの光を透過する第1透光部および上記発光部からの光を遮断する第1遮光部が少なくとも上記被検出物の検出範囲内で交互に形成される位置検出パターンと、上記リニアスケールの汚れを検出するために、上記発光部からの光を透過する第2透光部および上記発光部からの光を遮断する第2遮光部が交互に形成される汚れ検出パターンとを備え、
上記第2透光部の幅は上記第1透光部の幅よりも狭く形成されるとともに、上記汚れ検出パターンでは、上記第2透光部の幅が変化することを特徴とする位置検出装置。
【請求項7】
前記汚れ検出パターンは、前記リニアスケールの長手方向における前記位置検出パターンの外側に配置されていることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記位置検出パターンと前記汚れ検出パターンとは、前記リニアスケールの短手方向で隣接して配置されていることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】
請求項1から8いずれかに記載の位置検出装置と、所定の媒体に液体を吐出する液体吐出部とを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記位置検出装置の検出結果に基づいて、前記発光部からの発光量を増減させる制御を行う光量制御手段を備えることを特徴とする請求項9記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−83636(P2007−83636A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277275(P2005−277275)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】