位置検出装置および表示装置
【課題】静電シールドとしての性能と、磁気的なノイズの影響を防止する性能を両立させた軽量な磁路板を備えた位置検出装置を提供する。
【解決手段】アモルファス金属層と非アモルファス金属層を有する磁路板を、位置指示器から見てセンサ基板の反対側に配置する。これによって、磁路板を軽量化した上で、センサ基板の背景に電子回路等を配置しても座標を入力できる位置検出装置を構成することができる。さらにこのような構成の位置検出装置をコンピュータ等に用いることによって、位置検出装置を備えた機器を軽量化することができる。
【解決手段】アモルファス金属層と非アモルファス金属層を有する磁路板を、位置指示器から見てセンサ基板の反対側に配置する。これによって、磁路板を軽量化した上で、センサ基板の背景に電子回路等を配置しても座標を入力できる位置検出装置を構成することができる。さらにこのような構成の位置検出装置をコンピュータ等に用いることによって、位置検出装置を備えた機器を軽量化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばペン型の位置指示器を使用して入力操作を行う位置検出装置およびこれを用いた表示装置に関し、特に電磁的な作用により位置検出を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パーソナルコンピュータ(PC)、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の入力装置にはキーボード、マウス、ジョイスティックなどさまざまな種類がある。このような入力装置の中でペン型形状の装置を用いて、専用の板状の装置に描画することにより座標を入力する、いわゆるペンタブレットがある。
図9は、ペンタブレットの構成例を示した斜視図である。図9に示したペンタブレットは、鉛筆型の形状を有する位置指示器(ペン)10とセンサ(タブレット)20で構成されており、センサ20にはセンサ基板27が配置されている。詳細は後述するがセンサ基板27には位置検出用のコイルが配置されており、このコイルに発生する誘導起電圧によってセンサ20の描画領域26−a上の位置指示器10の座標が検出されるようになっている。
【0003】
このようなペンタブレットには、センサ20をコンピュータ(特にノート型パーソナルコンピュータ)のディスプレイに組み込み、ディスプレイに直接描画するように座標を入力するタブレットPCもある。
【0004】
まず、このようなペンタブレットの原理を説明する。なお、以後ペンタブレットを位置検出装置と称するが、説明の便宜上ペンタブレットという語を使用しても位置検出装置と同義である。
【0005】
図9の位置指示器10とセンサ20には、それぞれコイルが搭載されている。動作の詳細については後述するが概略的には以下のようになる。まずセンサ20側のコイルから短時間に電磁波を送信する。位置指示器10側のコイルはこの電磁波を受信し同じ周波数で共振する。つまり位置指示器10側の共振回路にはエネルギーが蓄えられる。次にセンサ20側のコイルからの電磁波の送信が停止し、位置指示器10側のコイルから共振回路に蓄えられたエネルギーが電磁波として送信される。
そして、この位置指示器10側のコイルから送信された電磁波を、センサ20側のコイルで再度受信することで、位置指示器10の現在の座標を知ることができる。
【0006】
次に、位置指示器10の座標の検出について詳細に説明する。図10は、センサコイル21が1つの場合を示した位置検出装置の概念的な図である。コイル11およびコンデンサ12を有する共振回路13が位置指示器10に搭載されている。以後、この「コイル」を「ペンコイル」と称する。
【0007】
また、センサ20側にはセンサコイル21があり、センサコイル21は送受信切換スイッチ24と接続している。この切換スイッチ24は電流ドライバ23およびアンプ25と接続されており、センサコイル21を電流ドライバ23、アンプ25との間で切換える。以後、センサ20側のコイルを「センサコイル」と称する。
【0008】
次に、図10を用いて、このような構成の位置検出装置の動作を説明する。
(1)まず、送受信切換スイッチ24は一定時間(T1)、電流ドライバ23に接続し、センサコイル21に交流信号を供給して電磁波を発生させる。
(2)センサコイル21から出力された電磁波はペンコイル11で受信され、位置指示器の共振回路13内で共振する。
【0009】
(3)一定期間(T1)が経過した後に、送受信切換スイッチ24は一定期間(T2)の間、アンプ25側に切り替わる。
(4)このとき、位置指示器10には電磁波が供給されなくなり、共振回路13に蓄えられているエネルギーによりペンコイル11から電磁波が送信される。この電磁波の送信は一定期間(T2)の間行われるが、共振回路13には外部からエネルギーが供給されないので、図10の受信電圧波形に示すように送信される電磁波の振幅は徐々に減衰する。
(5)再び一定期間(T1)、送受信切換スイッチ24が電流ドライバ23側に切り替わり、上記(1)と同様の動作を行う。
【0010】
このようにしてセンサ20側と位置指示器10側で電磁波の送受信が行われる。このセンサコイル21が複数配置されると、どのセンサコイル21と通信しているかを検出することによって、位置指示器10が指示している座標を決定することができる。
【0011】
図11は、位置指示器10、センサ20およびセンサ20上での誘導起電圧の分布を模式的に示した図である。コイル11およびコンデンサ12を有する共振回路13が位置指示器10に搭載される。またセンサ20は複数のセンサコイル21を有しており、図11では211〜214の4つが模式的に示されている。
【0012】
各センサコイル211〜214は、センサコイル切換スイッチ22に接続しており、このスイッチによりそれぞれのセンサコイル211〜214を個別に動作させることができる。センサコイル切換スイッチ22は送受信切換スイッチ24と接続しており、これによってセンサコイル21を送信、受信に切換えることができる。また、送受信切換スイッチ24は電流ドライバ23、アンプ25と接続している。電流ドライバ23は交流信号を発生する。
【0013】
次に、このように複数のセンサコイル21を配置して指示器の座標を検出する方法を説明する。
(a)まず、センサコイル切換スイッチ22をセンサコイル211に接続し、送受信切換スイッチ24を電流ドライバ側に接続する。これによってセンサコイル211から電磁波が送信される。
(b)次に、上記(1)〜(5)のようにペン10とセンサ20との間で送受信切換スイッチ24を介して電磁波の送受信が行われ、センサコイル211の誘導起電圧の値を検出する。
(c)センサコイル切換スイッチ22をセンサコイル212、213、214と順次切換えて、上記(1)〜(5)の動作を行う。
【0014】
このようにセンサコイル切換スイッチ22をセンサコイル211〜214へ順次切り換え、それぞれのセンサコイル211〜214での誘導起電圧の大きさを検出する。これによって図11のグラフに示されているように、各センサコイル211〜214における位置指示器10から出力される電磁波の強度分布が得られる。グラフのx軸は各センサコイル211〜214の位置(x1〜x4)に対応している。
【0015】
センサコイル21は細長い形状であり長軸および短軸を有している。また図11に示されているように短軸方向、つまりx軸方向に並列して配置されている。センサコイル21のx座標はこの短軸の中心点に対応している。センサコイル21のx座標を決定する上で短軸の中心点に対応させるか、短軸方向の他の位置に対応させるかは任意である。
【0016】
各センサコイル211〜214のx座標に対応して、各センサコイル211〜214で検出された誘導起電圧Vをプロットし、各点を曲線で近似すると図11に示されているようなグラフとなる。このグラフの頂点の位置がペンコイル11の中心軸の座標Xcに対応する。よって位置指示器のx座標を計算により求めることができる。同様にしてセンサコイル21に直交するにように別のセンサコイルを配置することによって指示器10のy座標を算出することができる。
【0017】
よって、例えば位置指示器10をセンサコイルが並んでいる間隔より小さい間隔で移動させても、ペンコイル11と近隣のセンサコイル21との距離が変化するため、各センサコイル21に発生する誘導起電圧がわずかに変化する。この変化から位置指示器10が指示している座標を計算により求めることができる。
【0018】
したがって、センサコイル21の配置に比べて、検出できる座標の分解能は高くなる。つまりセンサコイル21はできるだけ精度良く誘導起電圧を検出することが好ましい。そうすることによって位置指示器10の座標をより正確に検出することができ、解像度の高い位置検出装置を実現することができる。
【0019】
図12は一般的な位置検出装置の構造を模式的に示した図である。位置検出装置はx座標、y座標をそれぞれ検出しなければならないため、センサコイル:x(21x)、センサコイル:y(21y)としてそれぞれx軸、y軸に対応して配置されている。ここで、図11に示されている送受信切換スイッチ24、電流ドライバ23、アンプ25は座標算出回路内に配置されている。
【0020】
このような位置検出装置ではセンサコイル:x、センサコイル:yについて、それぞれ上述した(a)〜(c)の動作を行わせることにより、位置指示器10のx座標、y座標を求めることができる。
【0021】
位置検出装置による情報の入力は、ペンで紙に字や絵を描くのと同様に行うことができる。この際、筆圧により描く線の太さを変化させたり、ペンを傾けて描くときに線の太さを変化させたりすることが望まれる。そのためにも、ペンに加えられる筆圧の検出やペンの傾きの検出が必要とされる。
【0022】
図13は、このような動作を行う位置指示器10の一例である。図示されているようにペン先14から延長される軸にペンコイル11が接続されており、さらに軸の端部にはコンデンサ12が接続されている。ペン先14に圧力が加えられると軸が移動しコンデンサが押圧される構造となっている。コンデンサ12は通常2つの電極が対向した構造を有しており、電極間に誘電体が位置している。
【0023】
この誘電体の材料として、圧力によって誘電率が変化する材料を用いることによって、ペン先14に力が加えられたときにコンデンサ12の容量を変化させることができる。これにより、共振回路13の共振周波数を筆圧によって変化させることができる。
【0024】
このように電磁誘導型の位置検出装置は、位置指示器10とセンサ20との間で電磁誘導を用いて電気的な信号の送受信を行う。つまり、位置指示器10とセンサ20との間で電波の送受信が行われる。この電磁波の強度は微弱であるため外部のノイズにより悪影響を受けやすい。また、上記のように分解能の高い位置検出装置を製造するには精度良くペンコイル11からの誘導起電圧を検出できなければならないため、センサコイル21に到達するノイズをできるだけ少なくしなければならない。
【0025】
特許文献1には、リボン状のアモルファス金属を平行に並べて板状に構成し、さらにアルミニウム板と重ねることにより構成したシールド板について記載されている。
【特許文献1】特開平7−115291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
近年、ペンタブレットを内蔵する携帯型電子機器が実現されている。携帯型電子機器は、その携帯性を向上させるために装置全体をより小型、軽量に製造することが要求される。このような要求を満たすペンタブレットを内蔵した携帯型電子機器を実現するために、センサコイル21が配置されているセンサ基板と電子回路とを重ね合わせるように配置することが多い。
【0027】
ところが、センサ基板と電子回路とを重ね合わせるように配置すると、センサ基板に設けられたセンサコイル21から位置指示器10に対して出力された磁界が電子回路の金属部分の影響により減衰されてしまい、位置指示器10で受け取れる磁界が弱くなる、という問題が発生してしまう。また、センサ基板と電子回路とを重ね合わせて配置すると、電子回路が発生するノイズがセンサコイル21に影響を与え、位置指示器10の座標が正確に検出できない、という問題も発生してしまう。
【0028】
このように、携帯型電子機器にペンタブレットの機能を搭載するには、センサコイル21から出力される磁界等を減衰させることなくノイズ(例えば、いわゆるEMI(Electromagnetic Interference)など)の影響を低減することが重要な課題となる。
【0029】
ところで、センサコイル21が電子回路から発生したノイズの影響を受けるという問題を解決するための一つの手段として、センサコイル21と電子回路との間に、アルミ箔や銅箔等を電磁シールドとして設け、この電磁シールドにより電磁波等のノイズを遮断し、センサコイル21への影響を低減させる方法がある。しかしながら、かかる電磁シールドを用いた場合、電子回路が発生するノイズは低減できるが、センサコイル21により発生した磁界等により電磁シールドに渦電流が発生してしまい、その結果、この渦電流によってセンサコイル21に発生した磁界等が減衰されてしまう、という問題を新たに発生してしまう。
【0030】
この渦電流による磁界の減衰を防ぐため、アルミニウム箔等の電磁シールドの代わりに、例えば、珪素鋼板を用いる方法が考えられる。珪素鋼板は磁束をその内部に通す性質を有しており、厚さを0.5mm程度にすれば電磁シールドの効果も得られることが知られている。しかしながら、珪素鋼板はアルミニウム箔等に比べて重いから、珪素鋼板を用いると携帯型電子機器が重くなってしまうので、携帯型電子機器への搭載には不向きである。また、珪素鋼板は一般的にアルミニウム箔等に比べて高価であるため、据え置き型の電子機器と比較して割高になる携帯型電子機器への搭載には不向きである。
【0031】
また、磁界を減衰させずに磁束を通過させる材料として、アモルファスが知られている。そこで、珪素鋼板の代わりにアモルファスリボンを用いることも考えられる。しかしながら、アモルファスリボンは、その厚さを50μm程度にしか製造できないため、電磁シールドとしての役目を果たさないという問題点がある。
【0032】
よって、本発明の目的は、電磁シールドとしての性能を有し、位置指示器10やセンサコイル21が発生する磁界を減衰させず、且つ外部からの磁気的なノイズの影響を受けにくい磁路板を構成し、当該磁路板を有する位置検出装置、およびその位置検出装置を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
よって、本発明の目的は、携帯型電子機器の携帯性を損なうことなく、位置指示器10やセンサコイル21が発生する磁界を減衰させずに磁束を通過させると共に、電磁シールドとしての性能を備える、安価な磁路板を提供し、さらに、当該磁路板を有する位置検出装置及びその位置検出装置を備えた表示装置を提供することにある。
【0034】
また、本発明の表示装置は、位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、このセンサ基板上のセンサコイルが配置されている領域以上の面積を有する磁路板と、センサ基板の一方の面側に設けられた表示部と、を備え、磁路板は、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属とを積層して形成され、センサ基板の、位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される、ことを特徴としている。なお、本発明の表示装置の一形態として、上記センサ基板は、透明な材料で形成され、このセンサ基板と磁路板との間に、表示部が配置されるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電子回路から発生するノイズの影響を受けない位置検出装置、および該位置検出装置を用いた表示装置を実現することができる。また、磁路板として、アモルファス金属と、アモルファス金属より比透磁率の低い金属として、例えば、アルミニウムを用いているので、アルミニウムはアモルファス金属よりも軽いから、位置検出装置や表示装置の軽量化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態の例を、図1〜図8を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の位置検出装置20の分解斜視図である。図示されているように、上側ケース26と下側ケース28の間にセンサ基板27と磁路板30が配置されている。上側ケース26は位置指示器10(図1には示されていない)の描画面26aを有している。磁路板30は、センサ基板27が位置指示器10と対向する面(上側ケース26側)と反対側の面(下側ケース28側)に配置されている。このセンサ基板27には位置指示器10の座標を検出するセンサコイル21が配置されている。
【0037】
センサコイル21は、センサ基板27の一方の面にx座標を検出するセンサコイル21x、他方の面にy座標を検出するセンサコイル21y(図1には示されていない)が形成されている。しかし、センサコイル21の配置はこれに限定されるものではなく、例えばセンサ基板27の片面に絶縁層を挟んでx座標を検出するセンサコイル21xとy座標を検出するセンサコイル21yが配置される形態でもよい。センサ基板27において、センサコイル21が占める領域は、描画面26aと同じ面積であればよい。
【0038】
磁路板30は、位置指示器10から出力された電磁波を、センサコイル21で受信する際に、センサコイル21に対して位置指示器10と反対側からの電磁的なノイズの影響を受けないようにするためのものである。また、センサコイル21に対して位置指示器10が位置する側と反対側に金属板等がある場合(つまり金属板の上で位置検出装置を使用する場合)には、この磁路板30によってセンサコイル21の磁界が金属板に減衰されるのを防止することができる。したがって、磁路板30は、センサコイル21が配置されている領域以上の面積を有していれば有効に機能する。なお、電磁的なノイズが、センサコイル21が配置されている基板に対して斜めに進入するような場合には、磁路板30の面積をさらに大きく形成することが好ましい。
【0039】
次に、本実施の形態に用いる磁路板30についてより詳細に説明する。図2(a)は本実施の形態における磁路板30の構造例を示した部分斜視図であり、図2(b)はその断面図である。磁路板30は、アモルファス層31とアモルファス層31よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層32とで構成される。この非アモルファス層32となる金属として例えばアルミニウムを使用することができる。
アモルファス層31は、帯状のアモルファス金属31aを長手軸に平行に複数並べて面状に形成する。
【0040】
アモルファス金属31aは非常に薄い(約20μm)ので電気的なシールド効果は期待できない。よって電気的なシールド効果を有し、アモルファス層31よりも比透磁率の低い金属としてアルミニウムを用いて磁路板30を構成している。また、アルミニウムは軽量の金属であるため、従来の珪素鋼板に比べて位置検出装置の軽量化に貢献できる。さらに、アルミニウムを使用することによってコストの低減を図ることもできる。なお、非アモルファス層32に使用する材料は、アルミニウムに限定されるものではなく、電気的なシールドを行うことができ、アモルファス金属31aより比透磁率が低い金属であればよい。
【0041】
図3(a)、(b)は、上述した磁路板30が磁束の通り道を形成する状態を示した断面図である。図3(a)は、センサコイル21の電流によって発生した磁束33が磁路板30のアモルファス層31内を通っている状態を示している。図示したように、磁束33は磁路板30のアモルファス金属31a内に入ると磁路板31aに沿って進み表面から出る。つまりアモルファス層31は磁束の通り道である磁路を形成している。図の点線は磁路板31aがない場合の磁力線33bを示している。アモルファス層31がある場合(実線)とない場合(点線)を比較すると、アモルファス層31がある場合は、磁力線33がアモルファス層31内を通過して表面に出ており、アモルファス層31が磁路を形成していることがわかる。
【0042】
同様に図3(b)には、磁路板30から見てセンサコイル21と反対側から入ってくる磁束34の様子を示した。これはいわゆる磁気的なノイズである。図示したようにノイズとなる磁束34は非アモルファス層32側からアモルファス層31内に入り、再び非アモルファス層32側から出る。よってノイズとなる磁束34はアモルファス層31による磁路のためにセンサコイル21に到達しない。
このようにアモルファス層31は磁束33、34の通り道を形成するので、磁束がアモルファス層31を貫通せず、外部の磁気的なノイズがセンサコイル21の磁界に影響を及ぼすことはない。
【0043】
ここで磁路板30を使用した本実施の形態の装置と、従来のシールド板とを比較した例を図4のグラフに基づいて説明する。
図4は、位置指示器10が発生する誘導起電圧をペン先14近傍の領域で測定したグラフである。ペン先14の座標はグラフのピーク部分に対応する。測定はそれぞれ従来の静電用のシールド板あり、シールド板なし、および本実施の形態の構造に対して行った。グラフの横軸は座標を表しているが任意目盛りである。
【0044】
グラフの記号「◆」は磁路板を使用せずノイズ等のない状態である。記号「×」は本発明の磁路板を使用した状態である。記号「*」は従来の珪素鋼板を使用した状態、実線のグラフは通常用いられる金属板によるシールドである。磁路板を用いない状態は、センサコイルで受信する信号レベルが最も大きい。また、通常の金属板によるシールドは、信号レベルはほとんどゼロである。
【0045】
図4において「アモルファス+アルミ箔」と「珪素鋼板」を比較すると、アモルファス+アルミ箔を用いた場合信号レベルは珪素鋼板の約2倍となっており、明らかに信号レベルが上がっていることがわかる。アルミ箔はアルミニウムを薄くした状態であるのでアルミニウム層と同じである。このグラフから「アモルファス+アルミ箔」は珪素鋼板より信号レベルを大きく取り出せることがわかる。
【0046】
図5は、コンピュータ機器に本実施の形態の位置検出装置を適用した構成例である。本構成例ではパーソナルコンピュータ100に接続されるディスプレイ200にセンサ20(図4では示されていない)が組み込まれており、ディスプレイ200の画面上で位置指示器10を使用して座標を指示する。
【0047】
図6は図5に示されているディスプレイ200の主要な部分の分解斜視図である。図示されているように、表示パネル201に対して、位置指示器10が位置する側と反対側にセンサ基板27が配置され、さらにその背後に磁路板30が配置されている。磁路板30に対してセンサ基板27が位置している側と反対側には、表示パネル201を駆動する回路基板202が配置されている。ここでは表示パネル201として液晶パネルを想定している。液晶パネルはガラス基板、バックライト、偏光板などを有しているが、本例ではこれらをすべて包含して液晶パネルとする。
【0048】
このような構造とすることによって、表示パネル201の駆動回路202が発生するノイズを磁路板30によって遮断することができる。これにより、パーソナルコンピュータ100に座標を入力するにはディスプレイ200の画面に直接描くように位置指示器10を使用することができる。なお、図5及び6の例では、パーソナルコンピュータ100とディスプレイ200とが別体の構成のものを示したが、ノート型コンピュータのように、ディスプレイと本体とが一体化されたコンピュータとして構成してもよい。
【0049】
以上説明したように、磁路板30にアモルファス層31とアルミニウム層32とを積層した構成とすることで、回路基板202が発生する電磁的なノイズを遮断するとともに、渦電流の発生による磁界の減衰を防ぐことができ、さらに軽量化も図ることができる。
【0050】
図7(a)は携帯型電子機器としてPDA(Personal Digital Assistant)40を例として示した全体図であり、図7(b)は主要部分の分解斜視図である。図7(b)に示されているように、表示パネル201の下側(図の下方)にセンサ基板27、磁路板30、および表示パネル駆動回路基板41が配置されている。ここで、表示パネル201には液晶パネルを想定している。
【0051】
本例の構造はセンサコイル21が位置指示器10と磁路板30の間に位置しているので、表示パネル駆動回路基板41からのノイズを遮断することができる。また渦電流によるペンコイル11(図8では図示されていない)の磁界の減衰を低くすることができる。
【0052】
本例の場合は磁路板30として、アモルファス層31と非アモルファス層32を用いており、非アモルファス層32にはアルミニウムを使用しているので、従来の珪素鋼板を用いた電磁的なシールドに比べて装置の軽量化に貢献できる。よって本実施の形態の位置指示器を用いて、PDAだけでなく、電子手帳、携帯型ゲーム機、携帯電話などに使用することができる。
【0053】
また、図5から図7の適用例では表示パネル201に液晶パネルを想定したが、これに限定されるものではなく例えば電界発光素子、発光ダイオードを用いた表示パネルでもよい。また電子ペーパとして知られている表示装置や、プラズマディスプレイなどにも使用してもよい。
【0054】
図8には、本実施の形態の他の適用例として表示パネル201の上側(上方)にセンサ基板27を配置した例を説明する。このセンサ基板27としては、ガラスなどの透明基板が使用され、センサコイル21はITO等の透明導電材料や肉眼では認識できない程度の細線で形成されている。したがって、センサ基板27は光を透過し、センサコイル21は肉眼では認識できないので表示パネル201の上側(つまり表示面側)にセンサ基板27を配置することができる。
この場合、磁路板30は、センサ基板27に対して、表示パネル201の背景に配置される。つまり、表示パネル201に対して、センサ基板27が位置する側と反対側に磁路板30が配置される。またセンサコイル21を形成する材料は透明導電材料だけでなく金属の細線でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の位置検出装置の分解斜視図である。
【図2】(a)は本発明の一実施の形態の例における磁路板の斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図3】(a)は磁路板内をセンサコイルの磁力線が通る状態を示している断面図であり、(b)はノイズとなる磁力線が磁路板内を通る状態の断面図である。
【図4】センサコイルの受信信号レベルを示した特性図である。
【図5】本発明の実施の形態の位置検出装置を適用したパーソナルコンピュータの例を示す斜視図である。
【図6】ディスプレイの主要部の分解斜視図である。
【図7】(a)は本発明の実施の形態の位置検出装置を適用したPDAの全体の斜視図であり、(b)はその主要部の分解斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態の他の例である。
【図9】従来の位置検出装置の全体構成例を示す斜視図である。
【図10】センサコイルが1つの場合の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図11】センサコイルが複数の場合の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図12】実際の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図13】位置指示器の内部例を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10…位置指示器、11…ペンコイル、12…コンデンサ、13…共振回路、20…センサ、27…センサ基板、21…センサコイル、30…磁路板、31a…アモルファス金属、31…アモルファス層、32…非アモルファス層
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばペン型の位置指示器を使用して入力操作を行う位置検出装置およびこれを用いた表示装置に関し、特に電磁的な作用により位置検出を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パーソナルコンピュータ(PC)、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の入力装置にはキーボード、マウス、ジョイスティックなどさまざまな種類がある。このような入力装置の中でペン型形状の装置を用いて、専用の板状の装置に描画することにより座標を入力する、いわゆるペンタブレットがある。
図9は、ペンタブレットの構成例を示した斜視図である。図9に示したペンタブレットは、鉛筆型の形状を有する位置指示器(ペン)10とセンサ(タブレット)20で構成されており、センサ20にはセンサ基板27が配置されている。詳細は後述するがセンサ基板27には位置検出用のコイルが配置されており、このコイルに発生する誘導起電圧によってセンサ20の描画領域26−a上の位置指示器10の座標が検出されるようになっている。
【0003】
このようなペンタブレットには、センサ20をコンピュータ(特にノート型パーソナルコンピュータ)のディスプレイに組み込み、ディスプレイに直接描画するように座標を入力するタブレットPCもある。
【0004】
まず、このようなペンタブレットの原理を説明する。なお、以後ペンタブレットを位置検出装置と称するが、説明の便宜上ペンタブレットという語を使用しても位置検出装置と同義である。
【0005】
図9の位置指示器10とセンサ20には、それぞれコイルが搭載されている。動作の詳細については後述するが概略的には以下のようになる。まずセンサ20側のコイルから短時間に電磁波を送信する。位置指示器10側のコイルはこの電磁波を受信し同じ周波数で共振する。つまり位置指示器10側の共振回路にはエネルギーが蓄えられる。次にセンサ20側のコイルからの電磁波の送信が停止し、位置指示器10側のコイルから共振回路に蓄えられたエネルギーが電磁波として送信される。
そして、この位置指示器10側のコイルから送信された電磁波を、センサ20側のコイルで再度受信することで、位置指示器10の現在の座標を知ることができる。
【0006】
次に、位置指示器10の座標の検出について詳細に説明する。図10は、センサコイル21が1つの場合を示した位置検出装置の概念的な図である。コイル11およびコンデンサ12を有する共振回路13が位置指示器10に搭載されている。以後、この「コイル」を「ペンコイル」と称する。
【0007】
また、センサ20側にはセンサコイル21があり、センサコイル21は送受信切換スイッチ24と接続している。この切換スイッチ24は電流ドライバ23およびアンプ25と接続されており、センサコイル21を電流ドライバ23、アンプ25との間で切換える。以後、センサ20側のコイルを「センサコイル」と称する。
【0008】
次に、図10を用いて、このような構成の位置検出装置の動作を説明する。
(1)まず、送受信切換スイッチ24は一定時間(T1)、電流ドライバ23に接続し、センサコイル21に交流信号を供給して電磁波を発生させる。
(2)センサコイル21から出力された電磁波はペンコイル11で受信され、位置指示器の共振回路13内で共振する。
【0009】
(3)一定期間(T1)が経過した後に、送受信切換スイッチ24は一定期間(T2)の間、アンプ25側に切り替わる。
(4)このとき、位置指示器10には電磁波が供給されなくなり、共振回路13に蓄えられているエネルギーによりペンコイル11から電磁波が送信される。この電磁波の送信は一定期間(T2)の間行われるが、共振回路13には外部からエネルギーが供給されないので、図10の受信電圧波形に示すように送信される電磁波の振幅は徐々に減衰する。
(5)再び一定期間(T1)、送受信切換スイッチ24が電流ドライバ23側に切り替わり、上記(1)と同様の動作を行う。
【0010】
このようにしてセンサ20側と位置指示器10側で電磁波の送受信が行われる。このセンサコイル21が複数配置されると、どのセンサコイル21と通信しているかを検出することによって、位置指示器10が指示している座標を決定することができる。
【0011】
図11は、位置指示器10、センサ20およびセンサ20上での誘導起電圧の分布を模式的に示した図である。コイル11およびコンデンサ12を有する共振回路13が位置指示器10に搭載される。またセンサ20は複数のセンサコイル21を有しており、図11では211〜214の4つが模式的に示されている。
【0012】
各センサコイル211〜214は、センサコイル切換スイッチ22に接続しており、このスイッチによりそれぞれのセンサコイル211〜214を個別に動作させることができる。センサコイル切換スイッチ22は送受信切換スイッチ24と接続しており、これによってセンサコイル21を送信、受信に切換えることができる。また、送受信切換スイッチ24は電流ドライバ23、アンプ25と接続している。電流ドライバ23は交流信号を発生する。
【0013】
次に、このように複数のセンサコイル21を配置して指示器の座標を検出する方法を説明する。
(a)まず、センサコイル切換スイッチ22をセンサコイル211に接続し、送受信切換スイッチ24を電流ドライバ側に接続する。これによってセンサコイル211から電磁波が送信される。
(b)次に、上記(1)〜(5)のようにペン10とセンサ20との間で送受信切換スイッチ24を介して電磁波の送受信が行われ、センサコイル211の誘導起電圧の値を検出する。
(c)センサコイル切換スイッチ22をセンサコイル212、213、214と順次切換えて、上記(1)〜(5)の動作を行う。
【0014】
このようにセンサコイル切換スイッチ22をセンサコイル211〜214へ順次切り換え、それぞれのセンサコイル211〜214での誘導起電圧の大きさを検出する。これによって図11のグラフに示されているように、各センサコイル211〜214における位置指示器10から出力される電磁波の強度分布が得られる。グラフのx軸は各センサコイル211〜214の位置(x1〜x4)に対応している。
【0015】
センサコイル21は細長い形状であり長軸および短軸を有している。また図11に示されているように短軸方向、つまりx軸方向に並列して配置されている。センサコイル21のx座標はこの短軸の中心点に対応している。センサコイル21のx座標を決定する上で短軸の中心点に対応させるか、短軸方向の他の位置に対応させるかは任意である。
【0016】
各センサコイル211〜214のx座標に対応して、各センサコイル211〜214で検出された誘導起電圧Vをプロットし、各点を曲線で近似すると図11に示されているようなグラフとなる。このグラフの頂点の位置がペンコイル11の中心軸の座標Xcに対応する。よって位置指示器のx座標を計算により求めることができる。同様にしてセンサコイル21に直交するにように別のセンサコイルを配置することによって指示器10のy座標を算出することができる。
【0017】
よって、例えば位置指示器10をセンサコイルが並んでいる間隔より小さい間隔で移動させても、ペンコイル11と近隣のセンサコイル21との距離が変化するため、各センサコイル21に発生する誘導起電圧がわずかに変化する。この変化から位置指示器10が指示している座標を計算により求めることができる。
【0018】
したがって、センサコイル21の配置に比べて、検出できる座標の分解能は高くなる。つまりセンサコイル21はできるだけ精度良く誘導起電圧を検出することが好ましい。そうすることによって位置指示器10の座標をより正確に検出することができ、解像度の高い位置検出装置を実現することができる。
【0019】
図12は一般的な位置検出装置の構造を模式的に示した図である。位置検出装置はx座標、y座標をそれぞれ検出しなければならないため、センサコイル:x(21x)、センサコイル:y(21y)としてそれぞれx軸、y軸に対応して配置されている。ここで、図11に示されている送受信切換スイッチ24、電流ドライバ23、アンプ25は座標算出回路内に配置されている。
【0020】
このような位置検出装置ではセンサコイル:x、センサコイル:yについて、それぞれ上述した(a)〜(c)の動作を行わせることにより、位置指示器10のx座標、y座標を求めることができる。
【0021】
位置検出装置による情報の入力は、ペンで紙に字や絵を描くのと同様に行うことができる。この際、筆圧により描く線の太さを変化させたり、ペンを傾けて描くときに線の太さを変化させたりすることが望まれる。そのためにも、ペンに加えられる筆圧の検出やペンの傾きの検出が必要とされる。
【0022】
図13は、このような動作を行う位置指示器10の一例である。図示されているようにペン先14から延長される軸にペンコイル11が接続されており、さらに軸の端部にはコンデンサ12が接続されている。ペン先14に圧力が加えられると軸が移動しコンデンサが押圧される構造となっている。コンデンサ12は通常2つの電極が対向した構造を有しており、電極間に誘電体が位置している。
【0023】
この誘電体の材料として、圧力によって誘電率が変化する材料を用いることによって、ペン先14に力が加えられたときにコンデンサ12の容量を変化させることができる。これにより、共振回路13の共振周波数を筆圧によって変化させることができる。
【0024】
このように電磁誘導型の位置検出装置は、位置指示器10とセンサ20との間で電磁誘導を用いて電気的な信号の送受信を行う。つまり、位置指示器10とセンサ20との間で電波の送受信が行われる。この電磁波の強度は微弱であるため外部のノイズにより悪影響を受けやすい。また、上記のように分解能の高い位置検出装置を製造するには精度良くペンコイル11からの誘導起電圧を検出できなければならないため、センサコイル21に到達するノイズをできるだけ少なくしなければならない。
【0025】
特許文献1には、リボン状のアモルファス金属を平行に並べて板状に構成し、さらにアルミニウム板と重ねることにより構成したシールド板について記載されている。
【特許文献1】特開平7−115291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
近年、ペンタブレットを内蔵する携帯型電子機器が実現されている。携帯型電子機器は、その携帯性を向上させるために装置全体をより小型、軽量に製造することが要求される。このような要求を満たすペンタブレットを内蔵した携帯型電子機器を実現するために、センサコイル21が配置されているセンサ基板と電子回路とを重ね合わせるように配置することが多い。
【0027】
ところが、センサ基板と電子回路とを重ね合わせるように配置すると、センサ基板に設けられたセンサコイル21から位置指示器10に対して出力された磁界が電子回路の金属部分の影響により減衰されてしまい、位置指示器10で受け取れる磁界が弱くなる、という問題が発生してしまう。また、センサ基板と電子回路とを重ね合わせて配置すると、電子回路が発生するノイズがセンサコイル21に影響を与え、位置指示器10の座標が正確に検出できない、という問題も発生してしまう。
【0028】
このように、携帯型電子機器にペンタブレットの機能を搭載するには、センサコイル21から出力される磁界等を減衰させることなくノイズ(例えば、いわゆるEMI(Electromagnetic Interference)など)の影響を低減することが重要な課題となる。
【0029】
ところで、センサコイル21が電子回路から発生したノイズの影響を受けるという問題を解決するための一つの手段として、センサコイル21と電子回路との間に、アルミ箔や銅箔等を電磁シールドとして設け、この電磁シールドにより電磁波等のノイズを遮断し、センサコイル21への影響を低減させる方法がある。しかしながら、かかる電磁シールドを用いた場合、電子回路が発生するノイズは低減できるが、センサコイル21により発生した磁界等により電磁シールドに渦電流が発生してしまい、その結果、この渦電流によってセンサコイル21に発生した磁界等が減衰されてしまう、という問題を新たに発生してしまう。
【0030】
この渦電流による磁界の減衰を防ぐため、アルミニウム箔等の電磁シールドの代わりに、例えば、珪素鋼板を用いる方法が考えられる。珪素鋼板は磁束をその内部に通す性質を有しており、厚さを0.5mm程度にすれば電磁シールドの効果も得られることが知られている。しかしながら、珪素鋼板はアルミニウム箔等に比べて重いから、珪素鋼板を用いると携帯型電子機器が重くなってしまうので、携帯型電子機器への搭載には不向きである。また、珪素鋼板は一般的にアルミニウム箔等に比べて高価であるため、据え置き型の電子機器と比較して割高になる携帯型電子機器への搭載には不向きである。
【0031】
また、磁界を減衰させずに磁束を通過させる材料として、アモルファスが知られている。そこで、珪素鋼板の代わりにアモルファスリボンを用いることも考えられる。しかしながら、アモルファスリボンは、その厚さを50μm程度にしか製造できないため、電磁シールドとしての役目を果たさないという問題点がある。
【0032】
よって、本発明の目的は、電磁シールドとしての性能を有し、位置指示器10やセンサコイル21が発生する磁界を減衰させず、且つ外部からの磁気的なノイズの影響を受けにくい磁路板を構成し、当該磁路板を有する位置検出装置、およびその位置検出装置を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
よって、本発明の目的は、携帯型電子機器の携帯性を損なうことなく、位置指示器10やセンサコイル21が発生する磁界を減衰させずに磁束を通過させると共に、電磁シールドとしての性能を備える、安価な磁路板を提供し、さらに、当該磁路板を有する位置検出装置及びその位置検出装置を備えた表示装置を提供することにある。
【0034】
また、本発明の表示装置は、位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、このセンサ基板上のセンサコイルが配置されている領域以上の面積を有する磁路板と、センサ基板の一方の面側に設けられた表示部と、を備え、磁路板は、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属とを積層して形成され、センサ基板の、位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される、ことを特徴としている。なお、本発明の表示装置の一形態として、上記センサ基板は、透明な材料で形成され、このセンサ基板と磁路板との間に、表示部が配置されるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電子回路から発生するノイズの影響を受けない位置検出装置、および該位置検出装置を用いた表示装置を実現することができる。また、磁路板として、アモルファス金属と、アモルファス金属より比透磁率の低い金属として、例えば、アルミニウムを用いているので、アルミニウムはアモルファス金属よりも軽いから、位置検出装置や表示装置の軽量化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態の例を、図1〜図8を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の位置検出装置20の分解斜視図である。図示されているように、上側ケース26と下側ケース28の間にセンサ基板27と磁路板30が配置されている。上側ケース26は位置指示器10(図1には示されていない)の描画面26aを有している。磁路板30は、センサ基板27が位置指示器10と対向する面(上側ケース26側)と反対側の面(下側ケース28側)に配置されている。このセンサ基板27には位置指示器10の座標を検出するセンサコイル21が配置されている。
【0037】
センサコイル21は、センサ基板27の一方の面にx座標を検出するセンサコイル21x、他方の面にy座標を検出するセンサコイル21y(図1には示されていない)が形成されている。しかし、センサコイル21の配置はこれに限定されるものではなく、例えばセンサ基板27の片面に絶縁層を挟んでx座標を検出するセンサコイル21xとy座標を検出するセンサコイル21yが配置される形態でもよい。センサ基板27において、センサコイル21が占める領域は、描画面26aと同じ面積であればよい。
【0038】
磁路板30は、位置指示器10から出力された電磁波を、センサコイル21で受信する際に、センサコイル21に対して位置指示器10と反対側からの電磁的なノイズの影響を受けないようにするためのものである。また、センサコイル21に対して位置指示器10が位置する側と反対側に金属板等がある場合(つまり金属板の上で位置検出装置を使用する場合)には、この磁路板30によってセンサコイル21の磁界が金属板に減衰されるのを防止することができる。したがって、磁路板30は、センサコイル21が配置されている領域以上の面積を有していれば有効に機能する。なお、電磁的なノイズが、センサコイル21が配置されている基板に対して斜めに進入するような場合には、磁路板30の面積をさらに大きく形成することが好ましい。
【0039】
次に、本実施の形態に用いる磁路板30についてより詳細に説明する。図2(a)は本実施の形態における磁路板30の構造例を示した部分斜視図であり、図2(b)はその断面図である。磁路板30は、アモルファス層31とアモルファス層31よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層32とで構成される。この非アモルファス層32となる金属として例えばアルミニウムを使用することができる。
アモルファス層31は、帯状のアモルファス金属31aを長手軸に平行に複数並べて面状に形成する。
【0040】
アモルファス金属31aは非常に薄い(約20μm)ので電気的なシールド効果は期待できない。よって電気的なシールド効果を有し、アモルファス層31よりも比透磁率の低い金属としてアルミニウムを用いて磁路板30を構成している。また、アルミニウムは軽量の金属であるため、従来の珪素鋼板に比べて位置検出装置の軽量化に貢献できる。さらに、アルミニウムを使用することによってコストの低減を図ることもできる。なお、非アモルファス層32に使用する材料は、アルミニウムに限定されるものではなく、電気的なシールドを行うことができ、アモルファス金属31aより比透磁率が低い金属であればよい。
【0041】
図3(a)、(b)は、上述した磁路板30が磁束の通り道を形成する状態を示した断面図である。図3(a)は、センサコイル21の電流によって発生した磁束33が磁路板30のアモルファス層31内を通っている状態を示している。図示したように、磁束33は磁路板30のアモルファス金属31a内に入ると磁路板31aに沿って進み表面から出る。つまりアモルファス層31は磁束の通り道である磁路を形成している。図の点線は磁路板31aがない場合の磁力線33bを示している。アモルファス層31がある場合(実線)とない場合(点線)を比較すると、アモルファス層31がある場合は、磁力線33がアモルファス層31内を通過して表面に出ており、アモルファス層31が磁路を形成していることがわかる。
【0042】
同様に図3(b)には、磁路板30から見てセンサコイル21と反対側から入ってくる磁束34の様子を示した。これはいわゆる磁気的なノイズである。図示したようにノイズとなる磁束34は非アモルファス層32側からアモルファス層31内に入り、再び非アモルファス層32側から出る。よってノイズとなる磁束34はアモルファス層31による磁路のためにセンサコイル21に到達しない。
このようにアモルファス層31は磁束33、34の通り道を形成するので、磁束がアモルファス層31を貫通せず、外部の磁気的なノイズがセンサコイル21の磁界に影響を及ぼすことはない。
【0043】
ここで磁路板30を使用した本実施の形態の装置と、従来のシールド板とを比較した例を図4のグラフに基づいて説明する。
図4は、位置指示器10が発生する誘導起電圧をペン先14近傍の領域で測定したグラフである。ペン先14の座標はグラフのピーク部分に対応する。測定はそれぞれ従来の静電用のシールド板あり、シールド板なし、および本実施の形態の構造に対して行った。グラフの横軸は座標を表しているが任意目盛りである。
【0044】
グラフの記号「◆」は磁路板を使用せずノイズ等のない状態である。記号「×」は本発明の磁路板を使用した状態である。記号「*」は従来の珪素鋼板を使用した状態、実線のグラフは通常用いられる金属板によるシールドである。磁路板を用いない状態は、センサコイルで受信する信号レベルが最も大きい。また、通常の金属板によるシールドは、信号レベルはほとんどゼロである。
【0045】
図4において「アモルファス+アルミ箔」と「珪素鋼板」を比較すると、アモルファス+アルミ箔を用いた場合信号レベルは珪素鋼板の約2倍となっており、明らかに信号レベルが上がっていることがわかる。アルミ箔はアルミニウムを薄くした状態であるのでアルミニウム層と同じである。このグラフから「アモルファス+アルミ箔」は珪素鋼板より信号レベルを大きく取り出せることがわかる。
【0046】
図5は、コンピュータ機器に本実施の形態の位置検出装置を適用した構成例である。本構成例ではパーソナルコンピュータ100に接続されるディスプレイ200にセンサ20(図4では示されていない)が組み込まれており、ディスプレイ200の画面上で位置指示器10を使用して座標を指示する。
【0047】
図6は図5に示されているディスプレイ200の主要な部分の分解斜視図である。図示されているように、表示パネル201に対して、位置指示器10が位置する側と反対側にセンサ基板27が配置され、さらにその背後に磁路板30が配置されている。磁路板30に対してセンサ基板27が位置している側と反対側には、表示パネル201を駆動する回路基板202が配置されている。ここでは表示パネル201として液晶パネルを想定している。液晶パネルはガラス基板、バックライト、偏光板などを有しているが、本例ではこれらをすべて包含して液晶パネルとする。
【0048】
このような構造とすることによって、表示パネル201の駆動回路202が発生するノイズを磁路板30によって遮断することができる。これにより、パーソナルコンピュータ100に座標を入力するにはディスプレイ200の画面に直接描くように位置指示器10を使用することができる。なお、図5及び6の例では、パーソナルコンピュータ100とディスプレイ200とが別体の構成のものを示したが、ノート型コンピュータのように、ディスプレイと本体とが一体化されたコンピュータとして構成してもよい。
【0049】
以上説明したように、磁路板30にアモルファス層31とアルミニウム層32とを積層した構成とすることで、回路基板202が発生する電磁的なノイズを遮断するとともに、渦電流の発生による磁界の減衰を防ぐことができ、さらに軽量化も図ることができる。
【0050】
図7(a)は携帯型電子機器としてPDA(Personal Digital Assistant)40を例として示した全体図であり、図7(b)は主要部分の分解斜視図である。図7(b)に示されているように、表示パネル201の下側(図の下方)にセンサ基板27、磁路板30、および表示パネル駆動回路基板41が配置されている。ここで、表示パネル201には液晶パネルを想定している。
【0051】
本例の構造はセンサコイル21が位置指示器10と磁路板30の間に位置しているので、表示パネル駆動回路基板41からのノイズを遮断することができる。また渦電流によるペンコイル11(図8では図示されていない)の磁界の減衰を低くすることができる。
【0052】
本例の場合は磁路板30として、アモルファス層31と非アモルファス層32を用いており、非アモルファス層32にはアルミニウムを使用しているので、従来の珪素鋼板を用いた電磁的なシールドに比べて装置の軽量化に貢献できる。よって本実施の形態の位置指示器を用いて、PDAだけでなく、電子手帳、携帯型ゲーム機、携帯電話などに使用することができる。
【0053】
また、図5から図7の適用例では表示パネル201に液晶パネルを想定したが、これに限定されるものではなく例えば電界発光素子、発光ダイオードを用いた表示パネルでもよい。また電子ペーパとして知られている表示装置や、プラズマディスプレイなどにも使用してもよい。
【0054】
図8には、本実施の形態の他の適用例として表示パネル201の上側(上方)にセンサ基板27を配置した例を説明する。このセンサ基板27としては、ガラスなどの透明基板が使用され、センサコイル21はITO等の透明導電材料や肉眼では認識できない程度の細線で形成されている。したがって、センサ基板27は光を透過し、センサコイル21は肉眼では認識できないので表示パネル201の上側(つまり表示面側)にセンサ基板27を配置することができる。
この場合、磁路板30は、センサ基板27に対して、表示パネル201の背景に配置される。つまり、表示パネル201に対して、センサ基板27が位置する側と反対側に磁路板30が配置される。またセンサコイル21を形成する材料は透明導電材料だけでなく金属の細線でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の位置検出装置の分解斜視図である。
【図2】(a)は本発明の一実施の形態の例における磁路板の斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図3】(a)は磁路板内をセンサコイルの磁力線が通る状態を示している断面図であり、(b)はノイズとなる磁力線が磁路板内を通る状態の断面図である。
【図4】センサコイルの受信信号レベルを示した特性図である。
【図5】本発明の実施の形態の位置検出装置を適用したパーソナルコンピュータの例を示す斜視図である。
【図6】ディスプレイの主要部の分解斜視図である。
【図7】(a)は本発明の実施の形態の位置検出装置を適用したPDAの全体の斜視図であり、(b)はその主要部の分解斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態の他の例である。
【図9】従来の位置検出装置の全体構成例を示す斜視図である。
【図10】センサコイルが1つの場合の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図11】センサコイルが複数の場合の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図12】実際の位置検出装置の検出原理の模式図である。
【図13】位置指示器の内部例を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10…位置指示器、11…ペンコイル、12…コンデンサ、13…共振回路、20…センサ、27…センサ基板、21…センサコイル、30…磁路板、31a…アモルファス金属、31…アモルファス層、32…非アモルファス層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
からなることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記非アモルファス層は、アルミニウムで形成されることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
前記センサ基板のいずれか一方の面に設けられた表示部と、
からなることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記センサ基板は、透明な材料で形成されており、
前記センサ基板と前記磁路板との間に、前記表示部が配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項1】
位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
からなることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記非アモルファス層は、アルミニウムで形成されることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
前記センサ基板のいずれか一方の面に設けられた表示部と、
からなることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記センサ基板は、透明な材料で形成されており、
前記センサ基板と前記磁路板との間に、前記表示部が配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−3796(P2009−3796A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165469(P2007−165469)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
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