説明

位置決め装置、製造装置及び検査装置

【課題】浮揚手段から噴出される空気が、スライダ部上方のセンサに悪影響を及ぼすことを抑制し、装置全体の性能低下を低減する。
【解決手段】この位置決め装置には、対象物が載置されるスライダ部と、スライダ部を水平移動させるためのプラテンと、スライダ部をプラテンから浮揚させる浮揚手段と、浮揚手段により浮揚したスライダ部を水平移動させる平面モータと、浮揚手段に空気を供給する空気供給部と、空気供給部から供給された空気を冷却する冷却部と、浮揚手段から噴出された空気の温度を検出する温度センサと、温度センサの検出結果に基づき冷却部を制御する温度制御部とを備えている。温度制御部は、浮揚手段から噴出する空気の温度が、温度センサの検出結果よりも低くなるように、冷却部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め装置、製造装置及び検査装置に係り、特に浮揚手段を用いた位置決め装置、製造装置及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や検査装置などには、対象物を浮揚手段によって浮上させ、スライドさせる位置決め装置が搭載されたものが知られている。図4は位置決め装置の概略構成を模式的に示す側面図である。この図4に示すように位置決め装置200には、半導体製造装置や検査装置のカバー210内に配置されたプラテン211と、対象物Tをプラテン211上でスライドさせるスライダ部201とが設けられている。また、位置決め装置200には、図示は省略するものの、プラテン211に空気を噴出してスライダ部201を浮揚させる浮揚手段と、浮揚したスライダ部201を水平方向に移動させる平面モータとが設けられている。スライダ部201には、浮揚手段に空気を送るための配管203と、平面モータを駆動するためのケーブル204とが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−65970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライダ部201を駆動すると、推力に変換されなかった電気エネルギーの大部分が熱となり、スライダ部201やプラテン211が加熱されることになる。これにより、浮揚手段から噴出された空気は暖められて上部に舞い上がることになる(図中矢印c参照)。
ここで、例えばスライダ部201の上方に温度に敏感なセンサ(例えばレーザ干渉計)が搭載されている場合、暖められた空気が上昇することでそのセンサに伝わり、悪影響を及ぼしてしまう。これによってセンサによる正確な計測が阻害されてしまい、装置自体の製造性能や検査性能が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、浮揚手段から噴出される空気が、スライダ部上方のセンサに悪影響を及ぼすことを抑制し、装置全体の性能低下を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、カバー内部に搭載される位置決め装置において、
対象物が載置されるスライダ部と、
前記スライダ部が載置され、当該スライダ部を水平移動させるためのプラテンと、
前記スライダ部を前記プラテンから浮揚させるため、前記スライダ部から前記プラテンに向けて空気を噴出させる浮揚手段と、
前記浮揚手段により浮揚した前記スライダ部を水平移動させる平面モータと、
前記浮揚手段に空気を供給する空気供給部と、
前記空気供給部から供給された空気を冷却する冷却部と、
前記浮揚手段から噴出された空気の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づき前記冷却部を制御する温度制御部とを備え、
前記温度制御部は、前記浮揚手段から噴出する空気の温度が、前記温度センサの検出結果よりも低くなるように、前記冷却部を制御することを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置を内蔵するカバーと、を備える製造装置であって、
前記カバー内部の空気を当該カバー外部に排気するための排出部が前記プラテンの周囲に配置されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の製造装置において、
前記カバーにおける前記位置決め装置の上方部分には、前記カバー内部に空気を取り込む空気口が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置を内蔵するカバーと、を備える検査装置であって、
前記カバー内部の空気を当該カバー外部に排気するための排出部が前記プラテンの周囲に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の検査装置において、
前記カバーにおける前記位置決め装置の上方部分には、前記カバー内部に空気を取り込む空気口が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浮揚手段から噴出する空気の温度が、温度センサの検出結果よりも低くなるので、浮揚手段から噴出した空気がカバー内部で舞い上がりにくくなる。このため、温度に敏感なセンサがスライダ部の上方に配置されていたとしても、浮揚手段から噴出した空気はセンサまで到達しにくくなる。したがって、浮揚手段から噴出される空気がスライダ部上方のセンサに悪影響を及ぼすことを抑制することができ、結果として装置全体の性能低下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の位置決め装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の位置決め装置を搭載した応用装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【図3】図2におけるプラテンの周囲を示す上面図である。
【図4】従来の位置決め装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る位置決め装置について説明する。図1は位置決め装置の概略構成を示す説明図である。この位置決め装置1には、プラテン2と、プラテン2に移動自在に載置されるスライダ部3とが設けられている。
【0014】
プラテン2は、X軸方向及びY軸方向に沿って一定ピッチで歯21,22が形成されている。図では簡略化のため一部の歯21,22だけを示している。このようなプラテン2は、平坦面に格子状に溝を切ることによって形成される。プラテン2は磁性体で構成されている。
【0015】
スライダ部3には位置決めの対象物が載置される。このスライダ部3には、スライダ部3を浮揚させるための浮揚手段5と、スライダ部を水平移動させるための平面モータ6,7と、平面モータ6,7を連結する連結部材8,9とが設けられている。
【0016】
浮揚手段5は、スライダ部3をプラテン2から浮揚させるため、スライダ部3からプラテン2に向けて空気を噴出させるものである。具体的には、スライダ部3のプラテン2と対向する面にはノズル(図示省略)が設けられていて、このノズルから浮揚手段5が圧縮空気を噴出させることによって、浮上力を得ている。スライダ部3とプラテン2の間をノズルから噴出した空気が流れることによって、エアベアリングを構成している。スライダ部3とプラテン2とのギャップは数十μm程度である。
【0017】
平面モータ6は、スライダ部3に搭載され、コア61のプラテン2と対向する面にはY軸方向に一定ピッチで歯62が形成されている。また、コア61にはコイル63が巻かれている。平面モータ6は、コイル63に電流が流れることで、歯62とプラテン2の歯22との間に磁気吸引力を生じさせてスライダ部3をY軸方向に移動させる。
【0018】
平面モータ7は、スライダ部3の中心に対してY方向に対称な位置にそれぞれ搭載されている。平面モータ7は、コア71のプラテン2と対向する面にはX軸方向に一定ピッチで歯72が形成されている。また、コア71にはコイル73が巻かれている。平面モータ7は、コイル73に電流が流れることで、歯72と歯21との間に磁気吸引力を生じさせてスライダ部3をX軸方向に移動させる。
【0019】
プラテン2の側面には、Y軸方向に鏡面が形成されたX軸ミラー37が装着されているとともに、X軸方向に鏡面が形成されたY軸ミラー36が装着されている。
【0020】
Y軸センサ38は、平面モータ6に搭載されていて、スライダ部3のY軸方向の位置を検出するものである。Y軸センサ38は、Y軸ミラー36に光を照射し、その反射光を受け、光の干渉を利用してスライダ部3のY軸方向の位置を検出する干渉計である。
【0021】
X軸センサ39は、平面モータ7にそれぞれ搭載されていて、スライダ部3のX軸方向の位置をそれぞれ検出する。X軸センサ39は、X軸ミラー37に光を照射し、その反射光を受け、光の干渉を利用してスライダ部3のY軸方向の位置を検出する干渉計である。
【0022】
Y軸制御部41は、Y軸センサ38の検出位置を基にスライダ部3の位置をフィードバック制御するものであり、ケーブル43を介してY軸センサ38及び平面モータ6に電気的に接続されている。
【0023】
X軸制御部42は、X軸センサ39の検出位置を基にスライダ部3の位置をそれぞれフィードバック制御するものであり、ケーブル44を介してX軸センサ39及び平面モータ7に電気的に接続されている。
【0024】
また、位置決め装置1には、各浮揚手段5に空気を供給する空気供給部50と、空気供給部50から供給された空気を冷却する冷却部51と、浮揚手段5から噴出された空気の温度を検出する温度センサ52と、空気供給部50及び冷却部51を制御する温度制御部53とが備えられている。
【0025】
空気供給部50は、外部の空気を供給するための例えば空気ポンプなどであり、配管54を介して各浮揚手段5に連通されている。
冷却部51は、配管54の途中に介在していて、配管54内部の空気を冷却するようになっている。
温度センサ52は、ノズルから噴出された空気の温度を検出するように平面モータ7の側面に取り付けられている。
【0026】
温度制御部53は、空気供給部50を駆動して、浮揚手段5から空気を噴出させるとともに、温度センサ52の検出結果に基づき冷却部51を制御する。具体的には、温度制御部53は、温度センサ52の検出結果に基づいてフィードバック制御することで、浮揚手段5から噴出する空気の温度が、温度センサ52の検出結果よりも低くなるように冷却部51を制御する。なお、制御目標温度は、浮揚手段5から噴出した空気の温度が、装置内部の空気温度に比べてやや低い値とする。装置内の空気温度よりもあまりに低いと空気擾乱の原因になり好ましくない。空気擾乱が発生する温度差は装置サイズや、平面モータ6,7の性能等により異なるために、種々の実験やシミュレーション等を用いて最適な制御目標温度を求めることが好ましい。
【0027】
このような位置決め装置1は、例えば半導体を製造する製造装置や、半導体の検査を行う検査装置等に搭載されるものである。以下では、この位置決め装置1が製造装置或いは検査装置に搭載された場合について説明する。なお、以下の説明においては、製造装置及び検査装置を便宜上応用装置と称して説明する。
【0028】
図2は応用装置100の概略構成を模式的に示した側面図である。この図2に示すように、応用装置100には、対象物Tが搭載される位置決め装置1と、位置決め装置1を内蔵するカバー101とが備えられている。
【0029】
カバー101の上面には、当該カバー101内部に空気を取り込む空気口102が形成されている。なお、空気口102は、位置決め装置1の上方となる部分に形成されていればよく、位置決め装置1の上方であればカバー101の上面でなくとも側面に形成されていてもよい。
【0030】
図3は、プラテン2の周囲を示す上面図である。図2,3に示すように、プラテン2の周囲には、カバー101内部の空気を当該カバー101外部に排気するための排出部110が複数配置されている。排出部110には、プラテン2周囲の空気を吸引する排気ファン111と、排気ファン111によって吸引された空気をカバー101外部に案内するダクト112とが設けられている。排気ファン111としては例えばクロスフローファンが挙げられる。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
応用装置100が稼働すると、それに伴い排気ファン111が駆動する。一方、位置決め装置1では、X軸制御部41及びY軸制御部42が平面モータ6,7を制御するとともに、温度制御部53が空気供給部50を制御することで、スライダ部3をスライドさせ、対象物Tを移動させる。この際、温度制御部53は、温度センサ52の検出結果に基づいてフィードバック制御することで、浮揚手段5から噴出する空気の温度が、温度センサ52の検出結果よりも低くなるように冷却部51を制御する。これにより、浮揚手段5から噴出した空気はカバー101内部における大半の空気よりも冷やされることになり、舞い上がりにくくなる。さらに、排気ファン111が駆動しているために、カバー101内部では、空気口102からダクト112に向かう下降気流が発生している(図2中矢印c1参照)。これらのことから、浮揚手段5から噴出した空気はより舞い上がりにくくなり、当該空気がスライダ部3の上方にあるセンサ(Y軸センサ38、X軸センサ39)まで達してしまうことを防止することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、浮揚手段5から噴出される空気がスライダ部3上方のセンサに悪影響を及ぼすことを抑制することができ、結果として応用装置100全体の性能低下を低減することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 位置決め装置
2 プラテン
3 スライダ部
5 浮揚手段
6,7 平面モータ
50 空気供給部
51 冷却部
52 温度センサ
53 温度制御部
100 応用装置(製造装置、検査装置)
101 カバー
102 空気口
110 排出部
T 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー内部に搭載される位置決め装置において、
対象物が載置されるスライダ部と、
前記スライダ部が載置され、当該スライダ部を水平移動させるためのプラテンと、
前記スライダ部を前記プラテンから浮揚させるため、前記スライダ部から前記プラテンに向けて空気を噴出させる浮揚手段と、
前記浮揚手段により浮揚した前記スライダ部を水平移動させる平面モータと、
前記浮揚手段に空気を供給する空気供給部と、
前記空気供給部から供給された空気を冷却する冷却部と、
前記浮揚手段から噴出された空気の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づき前記冷却部を制御する温度制御部とを備え、
前記温度制御部は、前記浮揚手段から噴出する空気の温度が、前記温度センサの検出結果よりも低くなるように、前記冷却部を制御することを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置を内蔵するカバーと、を備える製造装置であって、
前記カバー内部の空気を当該カバー外部に排気するための排出部が前記プラテンの周囲に配置されていることを特徴とする製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の製造装置において、
前記カバーにおける前記位置決め装置の上方部分には、前記カバー内部に空気を取り込む空気口が設けられていることを特徴とする製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置を内蔵するカバーと、を備える検査装置であって、
前記カバー内部の空気を当該カバー外部に排気するための排出部が前記プラテンの周囲に配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の検査装置において、
前記カバーにおける前記位置決め装置の上方部分には、前記カバー内部に空気を取り込む空気口が設けられていることを特徴とする検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−175473(P2010−175473A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20520(P2009−20520)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】