位置決め装置
【課題】位置決め機構により二次元平面内で位置決めされる位置決め対象物の、装置内での可動範囲を拡張できる位置決め装置を提供する。
【解決手段】墨出し装置10(位置決め装置)は、スタンプ部14(位置決め対象物)をx´−y´平面(二次元平面)内で位置決めするx−y調整機構30と、x−y調整機構30を、x´−y´平面と直交する回転支軸42の周りに回転させる回転角調整機構40と、を備えることを特徴とする。この墨出し装置10において、回転支軸42は、x´−y´平面の中心からずれて配されている。
【解決手段】墨出し装置10(位置決め装置)は、スタンプ部14(位置決め対象物)をx´−y´平面(二次元平面)内で位置決めするx−y調整機構30と、x−y調整機構30を、x´−y´平面と直交する回転支軸42の周りに回転させる回転角調整機構40と、を備えることを特徴とする。この墨出し装置10において、回転支軸42は、x´−y´平面の中心からずれて配されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井面に墨出しを行う自律移動型の墨出しロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この墨出しロボットは、天井面にマーキングする墨出し器を、x軸及びy軸の方向に移動させることによりx−y平面(二次元平面)内で位置決めするx−yテーブル(位置決め機構)を備えている。このため、墨出し器の位置が目標位置に接近するように、隅出しロボットを移動させた後、x−yテーブルにより、墨出し器の位置と目標位置との誤差が減少するように墨出し器の位置を補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8―1552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記墨出しロボットでは、x−yテーブルのスライダを移動させるモータ等をx−yステージの周囲に設置する必要があり、このようなスペース上の制約により、x−yテーブルにおけるスライダの移動範囲が制限される。従って、ロボット内部に、墨出し器等の位置決め対象物を移動させることができないデッドスペースが生まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位置決め機構により二次元平面内で位置決めされる位置決め対象物の、装置内での可動範囲を拡張できる位置決め装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る位置決め装置は、位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構を、前記二次元平面と交差する回転軸の周りに回転させる回転機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記位置決め装置において、前記位置決め機構は、互いに直交する二軸に沿って矩形の前記二次元平面内で、前記位置決め対象物を移動させてもよく、その場合、前記回転軸は、前記矩形の二次元平面の中心からずらして配されていてもよい。
【0008】
また、上記位置決め装置は、前記位置決め対象物の目標位置が前記二次元平面の範囲内に入るように、前記回転機構による前記位置決め機構の回転角を設定する回転角設定手段を備えてもよい。
【0009】
また、上記位置決め装置において、前記位置決め対象物は、墨出し器であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る位置決め装置によれば、位置決め機構により二次元平面内で位置決めされる位置決め対象物の、装置内での可動範囲を拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る墨出し装置を示す斜視図である。
【図2】位置調整機構を示す正面図である。
【図3】位置調整機構を示す側面図である
【図4】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図5】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図6】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図7】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図8】墨出しシステムを示す斜視図である。
【図9】PCの概略構成を示すブロック図である。
【図10】墨出しを行う現場の座標系を示す図である。
【図11】現場の座標系(x´−y´座標系)と墨出し装置の座標系(u−v座標系)との関係を示す図である。
【図12】u−v座標系とx´‐y´座標系との関係を示す図である。
【図13】トータルステーションにより墨出し装置の原点O´を計測してから、スタンプ部で地面にマークを押印するまでの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、自律走行型の墨出し装置10を示す斜視図である。この図に示すように、墨出し装置10は、杭芯の打設位置を示すマークを地面に押印するスタンプ機構12と、水平方向の位置調整を可能にスタンプ機構12を支持する位置調整機構20と、位置調整機構20を支持するフレーム50と、フレーム50の底部に配された走行機構60と、フレーム50の上部に支持された一対の計測プリズム70A、70Bとを備えている。
【0013】
スタンプ機構12は、上記マークが刻印されインクが充填されたスタンプ部14と、スタンプ部14を昇降させる昇降機構16とを備えている。昇降機構16は、スランプ部14を鉛直方向(図中z方向)に移動可能に支持するレール16Rと、スタンプ部14をレール16Rに沿って移動させるモータ16Mとを備えている。この昇降機構16によりスタンプ部14が地面まで下降されることにより上記マークが地面に押印される。
【0014】
位置調整機構20は、スタンプ機構12を互いに直交する2方向(図中x方向及びy方向)に移動させるx−y調整機構30と、x−y調整機構30を鉛直軸周りの方向(図中θ方向)に回転させる回転角調整機構40とを備えている。x−y調整機構30は、昇降機構16をモータ駆動によりy方向に移動させるy軸ステージ32と、y軸ステージ32をモータ駆動によりx方向に移動させるx軸ステージ34とを備えている。
【0015】
y軸ステージ32は、y方向に延び、昇降機構16をy方向に移動可能に支持するレール32Rと、昇降機構16をレール32Rに沿って移動させるモータ32M(図2及び図3参照)とを備えている。また、x軸ステージ34は、x方向に延び、レール32Rをx方向に移動可能に支持するレール34Rと、レール32Rをレール34Rに沿って移動させるモータ34Mとを備えている。
【0016】
また、回転角調整機構40は、x軸ステージ34をフレーム50の中段の台板52に鉛直軸周りに回転自在に支持する回転支軸42と、回転支軸42をその軸心周りに回転させるモータ44とを備えている。回転支軸42は、フレーム50の中心を通る鉛直軸上に配されている。
【0017】
フレーム50は、x−y調整機構30の周囲に配された4本の脚部54と、4本の脚部54の上端に固定された円盤状の上記台板52と、台板52の周縁部に下端が固定された4本の脚部56と、4本の脚部54の上端に固定された円盤状の台板58とを備えている。4本の脚部54は、正方形状に配されている。また、台板52上には、上記モータ44やコントローラ18等が設置されている。また、回転支軸42は、台板52の中心に回転自在に支持されている。また、台板58上には、上記一対の計測プリズム70A、70Bが設置されている。
【0018】
走行機構60は、複数の多方向移動ホイール(例えば、オムニホイール(登録商標))62を備えている。多方向移動ホイール62は、車輪本体の円周方向に複数の樽型の小輪が取り付けられた車輪であり、車輪本体の回転により前後方向に移動し、小輪の回転により左右方向に移動できるようになっている。各多方向移動ホイール62に対応して不図示のモータが設けられており、各モータが個別に制御されることにより、走行機構60及びその上に設置されているフレーム50等の進行方向が制御される。
【0019】
一対の計測プリズム70A、70Bは、トータルステーション用のプリズム反射鏡であり、トータルステーションの本体から投射された測距測角用の光を反射してその本体へ送り返す。
【0020】
図2は、位置調整機構20を示す正面図である。また、図3は、位置調整機構20を示す側面図である。図2に示すように、回転支軸42の下端が、x軸ステージ34のレール34Rの上面に固定されている。ここで、回転支軸42の中心は、レール34Rの長手方向中央部から一方側にずれた位置に配されている。また、レール34Rの長手方向一方側にはモータ34Mが設けられている。
【0021】
また、図3に示すように、レール34Rのスライダ34Sが、レール32Rの上面に固定されている。ここで、スライダ34Sは、レール32Rの長手方向中央部から一方側にずれた位置に配されている。また、レール32Rの長手方向一方側にはモータ32Mが設けられている。
【0022】
また、レール32Rのスライダ32Sが、昇降機構16のレール16Rの上部に固定されている。ここで、スタンプ部12は、レール16Rよりもレール32Rの長手方向一方側に配されている。また、回転角調整機構40のモータ44と回転支軸42とは減速機構46を介して連結されており、回転支軸42の中心とモータ44の回転軸とは互いにはずれて配されている。
【0023】
図4から図7までは、位置調整機構20の作用を示す平面図である。図4に示すように、位置調整機構20では、回転支軸42の中心を原点O´とするx´−y´座標が設定されている。このx´−y´座標は、回転支軸42が回転することにより、図4に示す初期位置から原点O´の周りに回転する。なお、x´−y´座標のx´>0,y´>0の領域を第1象限、x´−y´座標のx´<0,y´>0の領域を第2象限、x´−y´座標のx´<0,y´<0の領域を第3象限、x´−y´座標のx´>0,y´<0の領域を第4象限という。
【0024】
x軸ステージ34のレール34Rは、x´軸上に配されている。y軸ステージ32のレール32Rは、y´軸と平行に配されており、レール34Rに沿ってx´方向に移動する。これにより、スタンプ機構12がx´方向に移動する。また、スタンプ機構12は、レール32Rに沿ってy´方向に移動する。即ち、スタンプ部14によるマークMの押印位置が、図中破線のハッチングで示すx´−y´平面A内で移動する。
【0025】
ここで、x軸ステージ34では、モータ34Mがレール34Rの長手方向一方側(図中−x´側)に配され、y軸ステージ32では、モータ32Mがレール32Rの長手方向一方側(図中−y´側)に配されている。このため、y軸ステージ32のレール32Rの−x´側への移動が制限され、スタンプ機構12の‐y´側への移動が制限される。従って、スタンプ機構12の可動範囲であるx´−y´平面Aは、第1象限側に偏り、第2から第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。
【0026】
ここで、x´−y´平面Aの中心は、第1象限に配されており、x´−y´平面Aの回転中心である回転支軸42は、x´−y´平面Aの中心に対して第3象限側にずらして配されている。このため、x´−y´平面Aの回転半径Rは、x´−y´平面Aの中心から頂点までの距離(対角線の1/2の長さ)よりも長くなる。
【0027】
図5は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から90°反時計周りに回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第2象限側に偏り、第1、第3及び第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図4に示す初期位置から反時計周り方向に回転させることにより、第1及び第2象限における上端の領域を、x´−y´平面Aに含めることができる。
【0028】
図6は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から180°反時計周り方向に回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第3象限側に偏り、第1、第2及び第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図5に示す位置から反時計周り方向に回転させることにより、第2及び第3象限における左端の領域を、x´−y´平面Aに含めることができる。
【0029】
図7は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から270°反時計周り方向に回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第4象限側に偏り、第1から第3象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図6に示す位置から反時計周り方向に回転させることにより、第3及び第4象限における下端の領域をx´−y´平面Aに含めることができる。
【0030】
そして、図4に示すように、x−y調整機構30を、図7に示す位置から反時計周り方向に回転させて初期位置に戻すことにより、第4及び第1象限における右端の領域を´−y´平面Aに含めることができる。以上、x−y調整機構30を回転支軸42の周りに回転させることにより、墨出し装置10の内部でのスタンプ機構12の可動範囲を拡張できる。
【0031】
図8は、墨出し装置10を用いた墨出しシステム100を示す斜視図である。この図に示すように、墨出しシステム100は、墨出し装置10と、レーザーレンジファインダ(以下、LRFという)110と、トータルステーション120と、墨出し装置10をコントロールするパーソナルコンピュータ(以下、PCという)130とを備えている。この墨出しシステム100では、LRF110で墨出し装置10の位置を計測しながら、その計測値に基づいて墨出し装置10を目標位置に向けて走行させる。その後、目標位置に向けて走行した墨出し装置10の位置を、トータルステーション120で計測する。そして、その計測された位置と目標位置との誤差を補正するべく、位置調整機構20を作動させる。そして、スタンプ部14を下降させてマークMを地面に押印する。以上で現場における墨出しが完了する。
【0032】
トータルステーション120は、所定位置に設置された視準器122までの距離や、計測プリズム70A、70Bまでの距離や、トータルステーション120の本体を始点として視準器122や計測プリズム70A、70Bを終点とする各ベクトルの角度等に基づいて、計測プリズム70A、70Bの位置を算出する。そして、トータルステーション120は、計測プリズム70A、70Bの位置に基づいて、墨出し装置10の原点O´の位置を算出する。
【0033】
LRF110は、レーザ距離計を鉛直軸の周りに回転させることによりレーザ光を水平方向に走査して、上記鉛直軸から被計測物の輪郭上の複数の計測点までの距離を計測する水平ラインスキャンタイプの1軸の光走査式測距装置である。レーザ光の走査とは、レーザ光の射出角度を順次変化させることにより、レーザ光で受光面を所定方向に順次なぞることである。LRF20は、所定角度(例えば、0.25°)回転される毎に光源からレーザ光を射出し、反射されたレーザ光を受光部が受光して、上記鉛直軸から被計測物の輪郭上の計測点までの距離を計測する。
【0034】
本実施形態における被計測物は、墨出し装置10の上下の台板52、58の周りにシート材を固定することにより形成された半径rの円柱体形状のターゲット112である。また、ターゲット112の円周面112Bは、レーザ光の乱反射を抑制するべく低輝度仕上げされている。これにより、LRF110の鉛直軸から円周面112B上の計測点までの距離を計測する際のノイズを低減できる。また、円周面112Bの色は、レーザ光の反射率を考慮して、黒等の暗色ではなく、白等の明色である。
【0035】
図9は、墨出しシステム100の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、PC130は、LRF110及びトータルステーション120に無線LANや通信ケーブル等により接続されている。PC130は、位置計測部140を備える。この位置計測部140は、分別部142を備える。この分別部142は、LRF110から距離情報が送信された計測点のうち、前景領域としての円周面112B上の計測点と、背景領域としての円周面112Bの周辺領域における計測点とを背景差分法により分別する。
【0036】
また、位置計測部140は、クラスタリング部144とノイズ除去部146とを備える。クラスタリング部144は、分別部142により前景領域に属すると判断された計測点に対して、最短距離法を用いてユーグリッド距離に基づいたクラスタリングを行う。また、ノイズ除去部146は、カルマンフィルタを用いて、クラスタリング部144によりクラスタリングされた多数の計測点のデータに含まれるノイズ成分を除去する。
【0037】
また、位置計測部140は、推定部148を備える。この推定部148は、一定距離法や最小二条法や最尤法等の推定手法を用いて、クラスタリング部144によりクラスタリングされノイズ除去部146によりノイズ成分を除去された多数の計測点から、ターゲット112の中心位置を推定する。なお、推定部148による中心位置の推定は、予め入力されたターゲット112の円周面112Bのプロファイルデータに基づいて行われるものである。
【0038】
PC130は、走行機構60を制御する走行制御部132を備えている。この走行制御部132は、推定部148によって推定された墨出し装置10の中心座標(原点O´)と、予め設定されている目標座標Rとに基づいて、墨出し装置10の原点O´に対する目標座標Rの方向及び距離を算出し、算出した結果に基づいて走行機構60の走行方向及び走行距離を設定する。これにより、墨出し装置10が、目標座標Rに向けて移動する。
【0039】
また、PC130は、位置調整機構20を制御する位置調整制御部134を備えている。この位置調整制御部134は、トータルステーション120により計測された墨出し装置10の原点O´の位置座標と、予め設定されている目標座標Rとに基づいて、墨出し装置10の原点O´の位置座標に対する目標座標Rの方向及び距離を算出し、算出した結果に基づいてスタンプ機構12の移動方向及び移動距離を設定する。これにより、スタンプ部14が、目標座標Rまで移動する。
【0040】
図10は、墨出しを行う現場の座標系を示す図である。この図に示すように、墨出しを行う現場について、LRF110の鉛直軸を原点Oとするx−y座標が設定されている。このため、LRF110は、x−y座標における原点Oから計測点までの距離を計測する。また、トータルステーション120は、x−y座標における墨出し装置10の原点O´の位置を計測する。
【0041】
トータルステーション120は、一対の計測プリズム70A、70Bの位置(xa,ya)、(xb,yb)を計測し、その計測値に基づいて墨出し装置10の原点O´(xo,yo)の位置を算出する。ここで、一対の計測プリズム70の位置A、B及び墨出し装置10の原点O´は、x−y座標における絶対位置であり、原点O´(xo,yo)は下記(1)(2)式で表される。
【0042】
図11は、原点をO´(xo,yo)とする現場の座標系(x´−y´座標系)と墨出し装置10の座標系(u−v座標系)との関係を示す図である。x−y座標系における目標座標R(x,y)は、移動ベクトルOO´(xo,yo)で移動させ、回転角θだけ回転させることにより、下記(3)式で示すu−v座標系における目標座標R(u,v)に同次変換することができる。
【0043】
そして、回転角θ=‐θ´を代入して上記(3)式を逆行列に変換し、上記(1)(2)式で表す値を代入することにより、u−v座標系における目標座標R(u,v)を下記(4)式のように表すことができる。
【0044】
ここで、detT=1であることから、u−v座標系における目標座標R(u,v)は、下記(5)(6)式で表すことができる。
【0045】
また、θ´は、ベクトルOA´((xa−xb)/2,(ya−yb)/2)と、ベクトルO´x´の単位ベクトルすなわちベクトルOxの単位ベクトル(1,0)とのなす角であることから、cosθ´とsinθ´とはそれぞれ下記(7)(8)式で表すことができる。但し、0≦θ´≦180°,ya−yb≧0とする。
【0046】
ここで、u<bu、u>auかつv<bv、v>bvである場合に、目標座標R(u,v)は、u−v座標系の範囲外に位置する。この場合、走行制御部132は、ベクトルO´Rから、原点O´と目標座標R(u,v)との距離と、原点O´に対する目標座標R(u,v)の方向とを算出する。そして、走行制御部132は、算出した方向に算出した距離だけ走行機構60を走行させる。これにより、目標座標R(u,v)がu−v座標系の範囲内に入る。
【0047】
一方、bu≦u≦au、かつ、bv≦v≦avである場合に、目標座標R(u,v)は、u−v座標系の範囲内に位置する。この場合、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)の象限を判定する。
【0048】
図12は、u−v座標系とx´‐y´座標系との関係を示す図である。この図に示すように、u−v座標系の第1象限は、0≦u≦auかつ0≦v≦avの領域であり、u−v座標系の第2象限は、bu≦u<0かつ0≦v≦avの領域である。また、u−v座標系の第3象限は、bu≦u≦0かつBV≦v<0の領域であり、u−v座標系の第4象限は、0<u<auかつbv≦v<0の領域である。
【0049】
位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、上述の第1〜第4象限の何れに位置するかを判定し、その判定結果に応じて、x´−y´座標系のu−v座標系に対する回転角θ“を設定する。位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第1象限に位置する場合には、回転角θ”を0°に設定する。この場合、u−v座標系とx´−y´座標系とが一致することから、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(u,v)となる。
【0050】
位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第2象限に位置する場合には、回転角θ“を90°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(−v,u)となる。また、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第3象限に位置する場合には、回転角θ”を180°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(−u,−v)となる。さらに、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第4象限に位置する場合には、回転角θ“を270°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(v,−u)となる。
【0051】
図13は、トータルステーション120により墨出し装置10の原点O´を計測してから、スタンプ部14で地面にマークMを押印するまでの処理を説明するためのフローチャートである。なお、上述したように、トータルステーション120による墨出し装置10の原点O´を計測する前に、LRF110で墨出し装置10の位置を計測しながら、その計測値に基づいて墨出し装置10を目標座標Rに向けて走行させる。
【0052】
本処理ルーチンは、トータルステーション120により原点O´の位置が計測された後に開始されてステップ1へ移行する。ステップ1では、走行制御部132が、上記(1)〜(8)式に基づいて、x−y座標系における目標座標R(x,y)を、u−v座標系における目標座標R(u,v)に同次変換する。次に、ステップ2では、走行制御部132が、目標座標R(u,v)が、u−v座標系の範囲内であるか否か、即ち、bu≦u≦auかつbv≦v≦avであるか否かを判定する。その結果、肯定判定された場合にはステップ3へ移行する一方、否定判定された場合にはステップ10へ移行する。
【0053】
ステップ10では、走行制御部132が、ベクトルO´Rから、原点O´と目標座標R(u,v)との距離と、原点O´に対する目標座標R(u,v)の方向とを算出し、算出した方向に算出した距離だけ走行機構60を走行させる。即ち、墨出し装置10を目標座標Rに向けて移動させる。そして、ステップ2へ移行する。
【0054】
ステップ3では、位置調整制御部134が、目標座標Rがu−v座標系の第1〜第4象限の何れに位置するかを判定し、その判定結果に応じて、x´−y´座標系のu−v座標系に対する回転角θ“を設定する。上述したように、目標座標R(u,v)が第1象限に位置する場合、回転角θ”は0°に設定され、目標座標R(u,v)が第2象限に位置する場合、回転角θ”は90°に設定される。また、目標座標R(u,v)が第3象限に位置する場合、回転角θ”は180°に設定され、目標座標R(u,v)が第4象限に位置する場合、回転角θ”は270°に設定される。
【0055】
次に、ステップ4では、位置調整制御部134が、x−y調整機構30を作動させ、スタンプ機構12をx´−y´平面内でx´軸方向及びy´軸方向に移動させることにより、スタンプ機構12を目標座標R(u,v)まで移動させる。次に、ステップ5では、位置調整制御部134が、昇降機構16を作動させ、スタンプ部14を地面まで下降させ、地面にマークMを押印させる。以上で処理ルーチンを終了する。
【0056】
ところで、本実施形態に係る墨出し装置10では、4本の脚部54の内側における二次元平面内で、スタンプ機構12が互いに直交する2方向へ移動するが、x軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側にモータ34M、32Mが配されていることから、スタンプ機構12のx軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側への移動が制限されている。これにより、x軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側には、スタンプ機構12をx軸ステージ34及びy軸ステージ32では移動させることができない、デットスペースが生まれる。
【0057】
しかし、図4から図7に示すように、本実施形態に係る墨出し装置10では、回転角調整機構40で、x軸ステージ34及びy軸ステージ32を、上記二次元平面を通る鉛直軸の周りに回転させることにより、スタンプ機構12を上記デッドスペースに移動させることができる。従って、スタンプ機構12の装置内での水平方向への可動範囲を拡張できる。
【0058】
また、本実施形態に係る墨出し装置10では、上記二次元平面の回転中心である回転支軸42が、該二次元平面の中心からずらして配されている。このため、該二次元平面の回転半径Rが、該二次元平面の対角線の1/2の長さよりも長くなる。従って、回転支軸42が該二次元平面の中心に配されている場合と比較して、該二次元平面の回転半径Rを拡大でき、以って、スタンプ機構12の装置内での水平方向への可動範囲を拡張できる。
【0059】
また、本実施形態に係る墨出し装置10では、位置調整制御部134が、スタンプ部14の目標位置が、墨出し装置10の座標系におけるどの象限に位置するかを判定し、当該象限が上記二次元平面に含まれるように、x−y調整機構30の回転角を設定する。これにより、スタンプ部14の目標位置が、上記二次元平面の範囲内に入るように、x−y調整機構30の回転角を自動調整できる。
【0060】
なお、本実施形態では、インクでマークMを押印するスタンプ型の墨出し器が、位置決め対象物であるマーキング形式の墨出し装置10を例にとって本発明を説明した。しかし、レーザ墨出し器が、位置決め対象物であるレーザ形式の墨出し装置や、ドリルが位置決め対象物である加工装置等の他の装置にも本発明を適用可能である。
【0061】
また、本実施形態では、二次元平面が水平であり、地面に墨出しを行う墨出し装置10を例にとって本発明を説明した。しかし、二次元平面が鉛直であり、壁面に墨出しを行う墨出し装置や、天井に墨出しを行う墨出し装置等の他の墨出し装置にも本発明を適用可能である。
【0062】
また、本実施形態では、墨出し装置10を自律走行型としたが必須ではなく、手動走行型としてもよい。さらに、墨出し装置10を目標位置まで移動させる際に、墨出し装置10の位置を計測することは必須ではなく、また、墨出し作業をシステム化することも必須ではない。
【符号の説明】
【0063】
10 墨出し装置、12 スタンプ機構、14 スタンプ部(位置決め対象物、墨出し器)、16 昇降機構、20 位置調整機構、30 x−y調整機構(位置決め機構)、32 y軸ステージ、32R レール、32M モータ、34 x軸ステージ、34R レール、34M モータ、40 回転角調整機構(回転機構)、42 回転支軸(回転軸)、44 モータ、50フレーム、52 台板、54、56 脚部、58 台板、60 走行機構、62 多方向移動ホイール、70A、70B 計測プリズム、100 墨出しシステム、110 LRF、112 ターゲット、112A 円周面、120 トータルステーション、122 視準器、130 PC、132 走行制御部、134 位置調整制御部(回転角設定手段)、140 位置計測部、142 分別部、144 クラスタリング部、146 ノイズ除去部、148 推定部、A x´‐y´平面(二次元平面、矩形の二次元平面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井面に墨出しを行う自律移動型の墨出しロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この墨出しロボットは、天井面にマーキングする墨出し器を、x軸及びy軸の方向に移動させることによりx−y平面(二次元平面)内で位置決めするx−yテーブル(位置決め機構)を備えている。このため、墨出し器の位置が目標位置に接近するように、隅出しロボットを移動させた後、x−yテーブルにより、墨出し器の位置と目標位置との誤差が減少するように墨出し器の位置を補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8―1552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記墨出しロボットでは、x−yテーブルのスライダを移動させるモータ等をx−yステージの周囲に設置する必要があり、このようなスペース上の制約により、x−yテーブルにおけるスライダの移動範囲が制限される。従って、ロボット内部に、墨出し器等の位置決め対象物を移動させることができないデッドスペースが生まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位置決め機構により二次元平面内で位置決めされる位置決め対象物の、装置内での可動範囲を拡張できる位置決め装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る位置決め装置は、位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構を、前記二次元平面と交差する回転軸の周りに回転させる回転機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記位置決め装置において、前記位置決め機構は、互いに直交する二軸に沿って矩形の前記二次元平面内で、前記位置決め対象物を移動させてもよく、その場合、前記回転軸は、前記矩形の二次元平面の中心からずらして配されていてもよい。
【0008】
また、上記位置決め装置は、前記位置決め対象物の目標位置が前記二次元平面の範囲内に入るように、前記回転機構による前記位置決め機構の回転角を設定する回転角設定手段を備えてもよい。
【0009】
また、上記位置決め装置において、前記位置決め対象物は、墨出し器であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る位置決め装置によれば、位置決め機構により二次元平面内で位置決めされる位置決め対象物の、装置内での可動範囲を拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る墨出し装置を示す斜視図である。
【図2】位置調整機構を示す正面図である。
【図3】位置調整機構を示す側面図である
【図4】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図5】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図6】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図7】位置調整機構の作用を示す平面図である。
【図8】墨出しシステムを示す斜視図である。
【図9】PCの概略構成を示すブロック図である。
【図10】墨出しを行う現場の座標系を示す図である。
【図11】現場の座標系(x´−y´座標系)と墨出し装置の座標系(u−v座標系)との関係を示す図である。
【図12】u−v座標系とx´‐y´座標系との関係を示す図である。
【図13】トータルステーションにより墨出し装置の原点O´を計測してから、スタンプ部で地面にマークを押印するまでの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、自律走行型の墨出し装置10を示す斜視図である。この図に示すように、墨出し装置10は、杭芯の打設位置を示すマークを地面に押印するスタンプ機構12と、水平方向の位置調整を可能にスタンプ機構12を支持する位置調整機構20と、位置調整機構20を支持するフレーム50と、フレーム50の底部に配された走行機構60と、フレーム50の上部に支持された一対の計測プリズム70A、70Bとを備えている。
【0013】
スタンプ機構12は、上記マークが刻印されインクが充填されたスタンプ部14と、スタンプ部14を昇降させる昇降機構16とを備えている。昇降機構16は、スランプ部14を鉛直方向(図中z方向)に移動可能に支持するレール16Rと、スタンプ部14をレール16Rに沿って移動させるモータ16Mとを備えている。この昇降機構16によりスタンプ部14が地面まで下降されることにより上記マークが地面に押印される。
【0014】
位置調整機構20は、スタンプ機構12を互いに直交する2方向(図中x方向及びy方向)に移動させるx−y調整機構30と、x−y調整機構30を鉛直軸周りの方向(図中θ方向)に回転させる回転角調整機構40とを備えている。x−y調整機構30は、昇降機構16をモータ駆動によりy方向に移動させるy軸ステージ32と、y軸ステージ32をモータ駆動によりx方向に移動させるx軸ステージ34とを備えている。
【0015】
y軸ステージ32は、y方向に延び、昇降機構16をy方向に移動可能に支持するレール32Rと、昇降機構16をレール32Rに沿って移動させるモータ32M(図2及び図3参照)とを備えている。また、x軸ステージ34は、x方向に延び、レール32Rをx方向に移動可能に支持するレール34Rと、レール32Rをレール34Rに沿って移動させるモータ34Mとを備えている。
【0016】
また、回転角調整機構40は、x軸ステージ34をフレーム50の中段の台板52に鉛直軸周りに回転自在に支持する回転支軸42と、回転支軸42をその軸心周りに回転させるモータ44とを備えている。回転支軸42は、フレーム50の中心を通る鉛直軸上に配されている。
【0017】
フレーム50は、x−y調整機構30の周囲に配された4本の脚部54と、4本の脚部54の上端に固定された円盤状の上記台板52と、台板52の周縁部に下端が固定された4本の脚部56と、4本の脚部54の上端に固定された円盤状の台板58とを備えている。4本の脚部54は、正方形状に配されている。また、台板52上には、上記モータ44やコントローラ18等が設置されている。また、回転支軸42は、台板52の中心に回転自在に支持されている。また、台板58上には、上記一対の計測プリズム70A、70Bが設置されている。
【0018】
走行機構60は、複数の多方向移動ホイール(例えば、オムニホイール(登録商標))62を備えている。多方向移動ホイール62は、車輪本体の円周方向に複数の樽型の小輪が取り付けられた車輪であり、車輪本体の回転により前後方向に移動し、小輪の回転により左右方向に移動できるようになっている。各多方向移動ホイール62に対応して不図示のモータが設けられており、各モータが個別に制御されることにより、走行機構60及びその上に設置されているフレーム50等の進行方向が制御される。
【0019】
一対の計測プリズム70A、70Bは、トータルステーション用のプリズム反射鏡であり、トータルステーションの本体から投射された測距測角用の光を反射してその本体へ送り返す。
【0020】
図2は、位置調整機構20を示す正面図である。また、図3は、位置調整機構20を示す側面図である。図2に示すように、回転支軸42の下端が、x軸ステージ34のレール34Rの上面に固定されている。ここで、回転支軸42の中心は、レール34Rの長手方向中央部から一方側にずれた位置に配されている。また、レール34Rの長手方向一方側にはモータ34Mが設けられている。
【0021】
また、図3に示すように、レール34Rのスライダ34Sが、レール32Rの上面に固定されている。ここで、スライダ34Sは、レール32Rの長手方向中央部から一方側にずれた位置に配されている。また、レール32Rの長手方向一方側にはモータ32Mが設けられている。
【0022】
また、レール32Rのスライダ32Sが、昇降機構16のレール16Rの上部に固定されている。ここで、スタンプ部12は、レール16Rよりもレール32Rの長手方向一方側に配されている。また、回転角調整機構40のモータ44と回転支軸42とは減速機構46を介して連結されており、回転支軸42の中心とモータ44の回転軸とは互いにはずれて配されている。
【0023】
図4から図7までは、位置調整機構20の作用を示す平面図である。図4に示すように、位置調整機構20では、回転支軸42の中心を原点O´とするx´−y´座標が設定されている。このx´−y´座標は、回転支軸42が回転することにより、図4に示す初期位置から原点O´の周りに回転する。なお、x´−y´座標のx´>0,y´>0の領域を第1象限、x´−y´座標のx´<0,y´>0の領域を第2象限、x´−y´座標のx´<0,y´<0の領域を第3象限、x´−y´座標のx´>0,y´<0の領域を第4象限という。
【0024】
x軸ステージ34のレール34Rは、x´軸上に配されている。y軸ステージ32のレール32Rは、y´軸と平行に配されており、レール34Rに沿ってx´方向に移動する。これにより、スタンプ機構12がx´方向に移動する。また、スタンプ機構12は、レール32Rに沿ってy´方向に移動する。即ち、スタンプ部14によるマークMの押印位置が、図中破線のハッチングで示すx´−y´平面A内で移動する。
【0025】
ここで、x軸ステージ34では、モータ34Mがレール34Rの長手方向一方側(図中−x´側)に配され、y軸ステージ32では、モータ32Mがレール32Rの長手方向一方側(図中−y´側)に配されている。このため、y軸ステージ32のレール32Rの−x´側への移動が制限され、スタンプ機構12の‐y´側への移動が制限される。従って、スタンプ機構12の可動範囲であるx´−y´平面Aは、第1象限側に偏り、第2から第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。
【0026】
ここで、x´−y´平面Aの中心は、第1象限に配されており、x´−y´平面Aの回転中心である回転支軸42は、x´−y´平面Aの中心に対して第3象限側にずらして配されている。このため、x´−y´平面Aの回転半径Rは、x´−y´平面Aの中心から頂点までの距離(対角線の1/2の長さ)よりも長くなる。
【0027】
図5は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から90°反時計周りに回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第2象限側に偏り、第1、第3及び第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図4に示す初期位置から反時計周り方向に回転させることにより、第1及び第2象限における上端の領域を、x´−y´平面Aに含めることができる。
【0028】
図6は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から180°反時計周り方向に回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第3象限側に偏り、第1、第2及び第4象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図5に示す位置から反時計周り方向に回転させることにより、第2及び第3象限における左端の領域を、x´−y´平面Aに含めることができる。
【0029】
図7は、x−y調整機構30を図4に示す初期位置から270°反時計周り方向に回転させた状態を示している。この図に示すように、x´−y´平面Aは、第4象限側に偏り、第1から第3象限では、x´−y´平面Aに含まれない範囲が広くなる。ここで、x´−y´平面Aを図6に示す位置から反時計周り方向に回転させることにより、第3及び第4象限における下端の領域をx´−y´平面Aに含めることができる。
【0030】
そして、図4に示すように、x−y調整機構30を、図7に示す位置から反時計周り方向に回転させて初期位置に戻すことにより、第4及び第1象限における右端の領域を´−y´平面Aに含めることができる。以上、x−y調整機構30を回転支軸42の周りに回転させることにより、墨出し装置10の内部でのスタンプ機構12の可動範囲を拡張できる。
【0031】
図8は、墨出し装置10を用いた墨出しシステム100を示す斜視図である。この図に示すように、墨出しシステム100は、墨出し装置10と、レーザーレンジファインダ(以下、LRFという)110と、トータルステーション120と、墨出し装置10をコントロールするパーソナルコンピュータ(以下、PCという)130とを備えている。この墨出しシステム100では、LRF110で墨出し装置10の位置を計測しながら、その計測値に基づいて墨出し装置10を目標位置に向けて走行させる。その後、目標位置に向けて走行した墨出し装置10の位置を、トータルステーション120で計測する。そして、その計測された位置と目標位置との誤差を補正するべく、位置調整機構20を作動させる。そして、スタンプ部14を下降させてマークMを地面に押印する。以上で現場における墨出しが完了する。
【0032】
トータルステーション120は、所定位置に設置された視準器122までの距離や、計測プリズム70A、70Bまでの距離や、トータルステーション120の本体を始点として視準器122や計測プリズム70A、70Bを終点とする各ベクトルの角度等に基づいて、計測プリズム70A、70Bの位置を算出する。そして、トータルステーション120は、計測プリズム70A、70Bの位置に基づいて、墨出し装置10の原点O´の位置を算出する。
【0033】
LRF110は、レーザ距離計を鉛直軸の周りに回転させることによりレーザ光を水平方向に走査して、上記鉛直軸から被計測物の輪郭上の複数の計測点までの距離を計測する水平ラインスキャンタイプの1軸の光走査式測距装置である。レーザ光の走査とは、レーザ光の射出角度を順次変化させることにより、レーザ光で受光面を所定方向に順次なぞることである。LRF20は、所定角度(例えば、0.25°)回転される毎に光源からレーザ光を射出し、反射されたレーザ光を受光部が受光して、上記鉛直軸から被計測物の輪郭上の計測点までの距離を計測する。
【0034】
本実施形態における被計測物は、墨出し装置10の上下の台板52、58の周りにシート材を固定することにより形成された半径rの円柱体形状のターゲット112である。また、ターゲット112の円周面112Bは、レーザ光の乱反射を抑制するべく低輝度仕上げされている。これにより、LRF110の鉛直軸から円周面112B上の計測点までの距離を計測する際のノイズを低減できる。また、円周面112Bの色は、レーザ光の反射率を考慮して、黒等の暗色ではなく、白等の明色である。
【0035】
図9は、墨出しシステム100の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、PC130は、LRF110及びトータルステーション120に無線LANや通信ケーブル等により接続されている。PC130は、位置計測部140を備える。この位置計測部140は、分別部142を備える。この分別部142は、LRF110から距離情報が送信された計測点のうち、前景領域としての円周面112B上の計測点と、背景領域としての円周面112Bの周辺領域における計測点とを背景差分法により分別する。
【0036】
また、位置計測部140は、クラスタリング部144とノイズ除去部146とを備える。クラスタリング部144は、分別部142により前景領域に属すると判断された計測点に対して、最短距離法を用いてユーグリッド距離に基づいたクラスタリングを行う。また、ノイズ除去部146は、カルマンフィルタを用いて、クラスタリング部144によりクラスタリングされた多数の計測点のデータに含まれるノイズ成分を除去する。
【0037】
また、位置計測部140は、推定部148を備える。この推定部148は、一定距離法や最小二条法や最尤法等の推定手法を用いて、クラスタリング部144によりクラスタリングされノイズ除去部146によりノイズ成分を除去された多数の計測点から、ターゲット112の中心位置を推定する。なお、推定部148による中心位置の推定は、予め入力されたターゲット112の円周面112Bのプロファイルデータに基づいて行われるものである。
【0038】
PC130は、走行機構60を制御する走行制御部132を備えている。この走行制御部132は、推定部148によって推定された墨出し装置10の中心座標(原点O´)と、予め設定されている目標座標Rとに基づいて、墨出し装置10の原点O´に対する目標座標Rの方向及び距離を算出し、算出した結果に基づいて走行機構60の走行方向及び走行距離を設定する。これにより、墨出し装置10が、目標座標Rに向けて移動する。
【0039】
また、PC130は、位置調整機構20を制御する位置調整制御部134を備えている。この位置調整制御部134は、トータルステーション120により計測された墨出し装置10の原点O´の位置座標と、予め設定されている目標座標Rとに基づいて、墨出し装置10の原点O´の位置座標に対する目標座標Rの方向及び距離を算出し、算出した結果に基づいてスタンプ機構12の移動方向及び移動距離を設定する。これにより、スタンプ部14が、目標座標Rまで移動する。
【0040】
図10は、墨出しを行う現場の座標系を示す図である。この図に示すように、墨出しを行う現場について、LRF110の鉛直軸を原点Oとするx−y座標が設定されている。このため、LRF110は、x−y座標における原点Oから計測点までの距離を計測する。また、トータルステーション120は、x−y座標における墨出し装置10の原点O´の位置を計測する。
【0041】
トータルステーション120は、一対の計測プリズム70A、70Bの位置(xa,ya)、(xb,yb)を計測し、その計測値に基づいて墨出し装置10の原点O´(xo,yo)の位置を算出する。ここで、一対の計測プリズム70の位置A、B及び墨出し装置10の原点O´は、x−y座標における絶対位置であり、原点O´(xo,yo)は下記(1)(2)式で表される。
【0042】
図11は、原点をO´(xo,yo)とする現場の座標系(x´−y´座標系)と墨出し装置10の座標系(u−v座標系)との関係を示す図である。x−y座標系における目標座標R(x,y)は、移動ベクトルOO´(xo,yo)で移動させ、回転角θだけ回転させることにより、下記(3)式で示すu−v座標系における目標座標R(u,v)に同次変換することができる。
【0043】
そして、回転角θ=‐θ´を代入して上記(3)式を逆行列に変換し、上記(1)(2)式で表す値を代入することにより、u−v座標系における目標座標R(u,v)を下記(4)式のように表すことができる。
【0044】
ここで、detT=1であることから、u−v座標系における目標座標R(u,v)は、下記(5)(6)式で表すことができる。
【0045】
また、θ´は、ベクトルOA´((xa−xb)/2,(ya−yb)/2)と、ベクトルO´x´の単位ベクトルすなわちベクトルOxの単位ベクトル(1,0)とのなす角であることから、cosθ´とsinθ´とはそれぞれ下記(7)(8)式で表すことができる。但し、0≦θ´≦180°,ya−yb≧0とする。
【0046】
ここで、u<bu、u>auかつv<bv、v>bvである場合に、目標座標R(u,v)は、u−v座標系の範囲外に位置する。この場合、走行制御部132は、ベクトルO´Rから、原点O´と目標座標R(u,v)との距離と、原点O´に対する目標座標R(u,v)の方向とを算出する。そして、走行制御部132は、算出した方向に算出した距離だけ走行機構60を走行させる。これにより、目標座標R(u,v)がu−v座標系の範囲内に入る。
【0047】
一方、bu≦u≦au、かつ、bv≦v≦avである場合に、目標座標R(u,v)は、u−v座標系の範囲内に位置する。この場合、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)の象限を判定する。
【0048】
図12は、u−v座標系とx´‐y´座標系との関係を示す図である。この図に示すように、u−v座標系の第1象限は、0≦u≦auかつ0≦v≦avの領域であり、u−v座標系の第2象限は、bu≦u<0かつ0≦v≦avの領域である。また、u−v座標系の第3象限は、bu≦u≦0かつBV≦v<0の領域であり、u−v座標系の第4象限は、0<u<auかつbv≦v<0の領域である。
【0049】
位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、上述の第1〜第4象限の何れに位置するかを判定し、その判定結果に応じて、x´−y´座標系のu−v座標系に対する回転角θ“を設定する。位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第1象限に位置する場合には、回転角θ”を0°に設定する。この場合、u−v座標系とx´−y´座標系とが一致することから、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(u,v)となる。
【0050】
位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第2象限に位置する場合には、回転角θ“を90°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(−v,u)となる。また、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第3象限に位置する場合には、回転角θ”を180°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(−u,−v)となる。さらに、位置調整制御部134は、目標座標R(u,v)が、第4象限に位置する場合には、回転角θ“を270°に設定する。この場合、スタンプ部14のx´−y´座標系における座標(x´,y´)は(v,−u)となる。
【0051】
図13は、トータルステーション120により墨出し装置10の原点O´を計測してから、スタンプ部14で地面にマークMを押印するまでの処理を説明するためのフローチャートである。なお、上述したように、トータルステーション120による墨出し装置10の原点O´を計測する前に、LRF110で墨出し装置10の位置を計測しながら、その計測値に基づいて墨出し装置10を目標座標Rに向けて走行させる。
【0052】
本処理ルーチンは、トータルステーション120により原点O´の位置が計測された後に開始されてステップ1へ移行する。ステップ1では、走行制御部132が、上記(1)〜(8)式に基づいて、x−y座標系における目標座標R(x,y)を、u−v座標系における目標座標R(u,v)に同次変換する。次に、ステップ2では、走行制御部132が、目標座標R(u,v)が、u−v座標系の範囲内であるか否か、即ち、bu≦u≦auかつbv≦v≦avであるか否かを判定する。その結果、肯定判定された場合にはステップ3へ移行する一方、否定判定された場合にはステップ10へ移行する。
【0053】
ステップ10では、走行制御部132が、ベクトルO´Rから、原点O´と目標座標R(u,v)との距離と、原点O´に対する目標座標R(u,v)の方向とを算出し、算出した方向に算出した距離だけ走行機構60を走行させる。即ち、墨出し装置10を目標座標Rに向けて移動させる。そして、ステップ2へ移行する。
【0054】
ステップ3では、位置調整制御部134が、目標座標Rがu−v座標系の第1〜第4象限の何れに位置するかを判定し、その判定結果に応じて、x´−y´座標系のu−v座標系に対する回転角θ“を設定する。上述したように、目標座標R(u,v)が第1象限に位置する場合、回転角θ”は0°に設定され、目標座標R(u,v)が第2象限に位置する場合、回転角θ”は90°に設定される。また、目標座標R(u,v)が第3象限に位置する場合、回転角θ”は180°に設定され、目標座標R(u,v)が第4象限に位置する場合、回転角θ”は270°に設定される。
【0055】
次に、ステップ4では、位置調整制御部134が、x−y調整機構30を作動させ、スタンプ機構12をx´−y´平面内でx´軸方向及びy´軸方向に移動させることにより、スタンプ機構12を目標座標R(u,v)まで移動させる。次に、ステップ5では、位置調整制御部134が、昇降機構16を作動させ、スタンプ部14を地面まで下降させ、地面にマークMを押印させる。以上で処理ルーチンを終了する。
【0056】
ところで、本実施形態に係る墨出し装置10では、4本の脚部54の内側における二次元平面内で、スタンプ機構12が互いに直交する2方向へ移動するが、x軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側にモータ34M、32Mが配されていることから、スタンプ機構12のx軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側への移動が制限されている。これにより、x軸ステージ34及びy軸ステージ32の長手方向一方側には、スタンプ機構12をx軸ステージ34及びy軸ステージ32では移動させることができない、デットスペースが生まれる。
【0057】
しかし、図4から図7に示すように、本実施形態に係る墨出し装置10では、回転角調整機構40で、x軸ステージ34及びy軸ステージ32を、上記二次元平面を通る鉛直軸の周りに回転させることにより、スタンプ機構12を上記デッドスペースに移動させることができる。従って、スタンプ機構12の装置内での水平方向への可動範囲を拡張できる。
【0058】
また、本実施形態に係る墨出し装置10では、上記二次元平面の回転中心である回転支軸42が、該二次元平面の中心からずらして配されている。このため、該二次元平面の回転半径Rが、該二次元平面の対角線の1/2の長さよりも長くなる。従って、回転支軸42が該二次元平面の中心に配されている場合と比較して、該二次元平面の回転半径Rを拡大でき、以って、スタンプ機構12の装置内での水平方向への可動範囲を拡張できる。
【0059】
また、本実施形態に係る墨出し装置10では、位置調整制御部134が、スタンプ部14の目標位置が、墨出し装置10の座標系におけるどの象限に位置するかを判定し、当該象限が上記二次元平面に含まれるように、x−y調整機構30の回転角を設定する。これにより、スタンプ部14の目標位置が、上記二次元平面の範囲内に入るように、x−y調整機構30の回転角を自動調整できる。
【0060】
なお、本実施形態では、インクでマークMを押印するスタンプ型の墨出し器が、位置決め対象物であるマーキング形式の墨出し装置10を例にとって本発明を説明した。しかし、レーザ墨出し器が、位置決め対象物であるレーザ形式の墨出し装置や、ドリルが位置決め対象物である加工装置等の他の装置にも本発明を適用可能である。
【0061】
また、本実施形態では、二次元平面が水平であり、地面に墨出しを行う墨出し装置10を例にとって本発明を説明した。しかし、二次元平面が鉛直であり、壁面に墨出しを行う墨出し装置や、天井に墨出しを行う墨出し装置等の他の墨出し装置にも本発明を適用可能である。
【0062】
また、本実施形態では、墨出し装置10を自律走行型としたが必須ではなく、手動走行型としてもよい。さらに、墨出し装置10を目標位置まで移動させる際に、墨出し装置10の位置を計測することは必須ではなく、また、墨出し作業をシステム化することも必須ではない。
【符号の説明】
【0063】
10 墨出し装置、12 スタンプ機構、14 スタンプ部(位置決め対象物、墨出し器)、16 昇降機構、20 位置調整機構、30 x−y調整機構(位置決め機構)、32 y軸ステージ、32R レール、32M モータ、34 x軸ステージ、34R レール、34M モータ、40 回転角調整機構(回転機構)、42 回転支軸(回転軸)、44 モータ、50フレーム、52 台板、54、56 脚部、58 台板、60 走行機構、62 多方向移動ホイール、70A、70B 計測プリズム、100 墨出しシステム、110 LRF、112 ターゲット、112A 円周面、120 トータルステーション、122 視準器、130 PC、132 走行制御部、134 位置調整制御部(回転角設定手段)、140 位置計測部、142 分別部、144 クラスタリング部、146 ノイズ除去部、148 推定部、A x´‐y´平面(二次元平面、矩形の二次元平面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構を、前記二次元平面と交差する回転軸の周りに回転させる回転機構と、を備えることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、互いに直交する二軸に沿って矩形の前記二次元平面内で、前記位置決め対象物を移動させ、
前記回転軸は、前記矩形の二次元平面の中心からずらして配されていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記位置決め対象物の目標位置が前記二次元平面の範囲内に入るように、前記回転機構による前記位置決め機構の回転角を設定する回転角設定手段を備える請求項1又は請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決め対象物は、墨出し器であることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の位置決め装置。
【請求項1】
位置決め対象物を二次元平面内で位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構を、前記二次元平面と交差する回転軸の周りに回転させる回転機構と、を備えることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、互いに直交する二軸に沿って矩形の前記二次元平面内で、前記位置決め対象物を移動させ、
前記回転軸は、前記矩形の二次元平面の中心からずらして配されていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記位置決め対象物の目標位置が前記二次元平面の範囲内に入るように、前記回転機構による前記位置決め機構の回転角を設定する回転角設定手段を備える請求項1又は請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決め対象物は、墨出し器であることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の位置決め装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−37287(P2012−37287A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175683(P2010−175683)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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