説明

低い重合応力を有するラジカル重合性マクロ環状樹脂組成物

少なくとも1つの重合性基、例えば(メタ)アクリレートを有するマクロ環状オリゴマーの組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合に際しての低い収縮および低い収縮応力によって特徴付けられる、ラジカル重合性マクロ環状化合物および組成物に関する。かかる低収縮および低応力樹脂は、広い範囲の用途を、特に、硬化材料内の寸法安定性および収縮応力が全体的な性能にとって決定的に重要な意味を持つマイクロエレクトロニクス、特殊コーティング、および修復歯科において、見出す可能性がある。
【背景技術】
【0002】
硬化性材料の重合収縮とは、重合または硬化中の寸法収縮のことである。重合中の共有結合の形成は、分子が自由でファンデルワールス距離にあるときよりもそれら分子を互いに近づけるからである。一方、重合応力の起源は、硬化中の拘束された重合または収縮に由来する。したがって、これは重合収縮に関連するだけではなく、重合動力学にも依存する。
【0003】
分子量の増加に伴って、ポリマー鎖の移動性が制限され、拡散が律速因子となることは周知である。加えて、架橋系におけるかかる制限された移動性は、直鎖系の場合と比較してより早く現れると思われ、このことは追加の反応が重合応力の増加に導くことを意味する。応力の発生と増大を抑制するためのさまざまな方法がある。
1.重合速度を低下させる。
・安定ラジカルのような特別な速度抑制剤を導入すること。
・セグメント重合技法と同様に、重合した領域で増大した応力が隣接する未重合領域へ移されて開放されることが可能な、複数の異なる重合領域を創り出すこと。
・複数の異なる重合基を使用すること。
・早い段階におけるその反応性を制限するために、寸法の大きいマクロモノマーを使用すること。
2.変換を減少する。
・マクロ環状体、デンドリマー、または超分岐体のような2次元または3次元構造をあらかじめ作製すること。
3.許容しうる力学的性質を提供するために架橋密度を制限すること。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の歯科修復組成物における重合収縮および重合応力を軽減させるためには、上記の手法のすべてを考慮に入れる。しかし、本発明においては、目的は、フリーラジカル重合によって3次元ネットワークに変換されるであろうマクロ環状オリゴマーを製造する一般的方法を提供することである。
【0005】
米国特許第4644053号は、マクロ単環状化合物を合成する方法を開示した。次いで、カーボネート、エステル、アミド、エーテル、イミド、スルフィド、等を含む種々のマクロ環状オリゴマーが調製されてきた。しかし、これらのマクロ環状体を変換させて高分子量のポリマーにするためには、高温の開環反応が関与させられなければならない。
【0006】
米国特許第5047261号は、メタクリレートと急速共重合させるための5員環カーボネート基を含有する組成物を開示した。
【0007】
米国特許第5792821号は、メタクリレートがシクロデキストリン(CD)に結合した重合性シクロデキストリンを開示した。
【0008】
米国特許第5962703号は、ノルボルネニルまたはノルボルナジエニル基を有する官能性2環式メタクリレートを開示した。
【0009】
米国特許第6043361号は、重合性環状アリルスルフィドが低収縮材料用に使用されることを開示した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔アプローチ〕
マクロ環状オリゴマーは、カーボネート、エステル、シロキサン、ホスホネート、等の結合を与えてマクロ環状オリゴマーをもたらす、反応性でありかつフリーラジカル重合性の前駆物質と種々のカップリング剤との間の縮合によって、擬高希釈条件下において調製される。メタクリレート基の早すぎる重合を回避するためには、カップリングモノマーとの環化のための穏やかな反応を確保するために縮合基は通常活性化されなければならない。
【0011】
BisGMAは、広く使用される歯科用樹脂であり、2つのラジカル重合性基すなわちメタクリレート基および2つのヒドロキシル基を包含している。これがBisGMAを重合性マクロ環状オリゴマーの理想的な候補にしているが、BisGMA異性体の存在が、この方法を複雑にする。スキームIに示すように、カルボニルジイミダゾール(CDI、1)が、BisGMA(2)中の第二級アルコールと選択的に反応して活性化されたBisGMAすなわちDIZ−BisGMA(3)を与えるために使用された。これは単離され、DIZ−BisGMAの化学構造がFITRおよびNMRで完全に明らかにされた。実際に、Courtlaulds、EnglandのDavisらの最近の報告によれば、CDIおよびその中間体は、明確に規定されたさまざまな分子配列の制御された形成の間に、第一級、第二級、第三級の同種の基に対して驚くほど特異性を示すことができた[1〜5]。本発明者らの着想は、同じCDIの化学を採用することおよび2つの第二級ヒドロキシル基を活性化することである。さらに、活性化された前駆物質DIZ−BisGMAを、スキームIIに示すように、いくつかの第一級ジオール1,10−デカンジオールと擬高希釈条件下において反応させた。両方の反応剤は、環状生成物の有利な形成を確実にするためにゆっくり正確に制御された添加によって、高希釈条件にある系中へ同時に投入された。生成物C10−CYCBGM(5)は、典型的な高希釈条件(0.001M)よりもはるかに高い最終濃度0.02Mで蓄積されるので、それ故にこの方法は擬高希釈法と呼ばれる。イミダゾールは、前駆物質および環化ステップの両方から生成されるので、DIZ−BisGMAの直接分離なしで連続法が首尾よく開発された。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合性基、例えば(メタ)アクリレートを有するマクロ環状オリゴマーの組成物。
【請求項2】
前記重合性マクロ環状オリゴマーが、擬高希釈条件において活性前駆物質から出発して調製された、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性前駆物質が、液体および/または結晶性固体でありうる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記前駆物質そのものが重合性である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
第一級ジオール、第二級アミンまたは二塩基酸などのさまざまなカップリング剤が使用されうる、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記部分が、脂肪族または芳香族またはその両方でありうる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記マクロ環状体が、活性化カップリング剤と縮合性重合性前駆体から調製されうる、請求項2に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−502781(P2008−502781A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516695(P2007−516695)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021179
【国際公開番号】WO2005/123008
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】