説明

低アウトガス性の光または電子ビーム硬化性ゴム状ポリマーを含む装置

光または電子ビーム硬化性重合性組成物、およびその調製並びにそのような硬化材料を含有する装置が開示されている。この組成物は、光または電子ビーム硬化性末端基または側基を含有する、炭素−炭素二重結合および三重結合を完全に含まないまたは実質的に含まない、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系材料、低アウトガス性光開始剤、随意的な粘度調節成分および随意的な充填剤を含有する。この組成物は、可視光、紫外線または電子ビーム硬化性である。この組成物は、低モジュラスの低アウトガス性ポリマー材料に硬化する。この組成物は、接着剤、シーラントまたはレンズポッティング材料として使用できる。この組成物は、深紫外線または真空紫外線を伴うリソグラフィー器具および他の光学装置に、特に、248nm,193nmおよび157nmリソグラフィー器具のためのレンズポッティング材料として、並びに高フルエンス照射の使用を伴う他の光学装置に使用するのに理想的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、可視光または電子ビーム硬化性のゴム状材料、その調製および硬化材料を含む装置に関する。本発明は、特に、硬化後に、揮発性有機物質のアウトガスの発生が非常に低い、紫外線、可視光または電子ビーム硬化性のゴム状材料、並びにその調製および硬化材料を含む装置に関する。本発明は、例えば、接着剤、シーラント、またはレンズポッティング材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
接着剤を用いて材料を互いに接合する必要のある用途が数多くあり、その接着剤が、硬化後にどのような揮発性有機物質も放出することは望ましくない。硬化後に揮発性有機物質を放出するプロセスは、しばしばアウトガス発生またはオフガス発生と呼ばれる。そのような用途の例は、アウトガス化合物が、包装された食品に変な風味を与え得る食品包装の分野にある。光学および光通信学の分野において、アウトガス化合物は光学表面上に凝縮し、光の透過に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
多くの接着剤またはレンズポッティング用途に関して、熱膨張係数の異なる材料(基板)を互いに接合する必要がある。これらの用途において、接着またはポッティング材料は、温度が変化するに連れて、2枚の異なる基板の膨張と収縮を見込み、それでもまだ2枚の基板の互いの接着を維持しなければならない。これには、柔軟で低モジュラスの低Tgゴム状材料を使用する必要がある。柔軟で従順なゴム状固体に硬化し、それでもまだ硬化後に低アウトガス性である材料を配合することは非常に難しい。このことは、硬化材料が、優れた熱、酸化および加水分解安定性を有していなければならない場合、特に当てはまる。
【0004】
多くの室温加硫(RTV)型シリコーン材料は、良好な熱、酸化および加水分解安定性を有する、柔軟で従順なゴム状固体に硬化するが、それでも、硬化後に許容できない量の揮発性物質を放出する。RTVシリコーンのアウトガス生成物は、通常、低分子量の、環状のこともある、シロキサンである。これらの材料は、表面に凝縮した場合に、その表面張力が非常に低いために、除去するのが難しいので、特に問題である。それらの生成物による光学表面の汚染は、高フルエンス照射および/または短波長照射が用いられる光学装置において、RTVシリコーンが接着剤またはレンズポッティング材料として用いられる場合に、特に懸念となる。そのような表面汚染は、非常に望ましくなく、半導体産業において用いられている検査システム、例えば、リソグラフィー検査システムなどの、精密光学システムにおいて避けるべきである。
【0005】
しばしば考えられる他の材料は、ポリサルファイド、ポリウレタン、およびポリブタジエン、ポリイソプレンなどの炭化水素ゴムである。これらの製品は、ゴム状物質が、30年ほども長いかもしれない全寿命に亘り、ゴム状のままでいなければならない用途にとって、十分な熱、酸化および加水分解安定性を有していない。そのような用途は、30年の寿命をシミュレーションするために、材料に、最低で500時間に亘り、長ければ2000時間ほどに亘り、85℃および85%相対湿度の条件への曝露のような様々な加速老化試験を行う。
【0006】
材料が、紫外線または可視光または電子ビームなどの化学線で硬化可能であることも有益である。これにより、材料を液体として塗布することができ、次いで、光学アライメント、または他の位置調節を行うことができる。被接着面が最適位置にあるときに、化学線をオンにして、材料を迅速に(数秒または数分以内)かつ最小量の熱で硬化させることができる。このプロセスでは、被接着面の精巧なアライメントが維持される。
【0007】
接着剤からのアウトガス生成物を排除または緩和するために、技術的解決策が提案されてきた。これらの例としては、接着剤からのアウトガス材料を、問題にはならない区域に排除することのできる新規のジョイント設計が挙げられる(特許文献1および2)。別の場合において、接着材料の表面は、可能性のあるアウトガス生成物を封じ込める不浸透性無機層により被覆される(特許文献3)。他の方法は、装置の最終組立ての前に、可能性のあるアウトガス生成物を除去するための、硬化した接着剤の熱処理および/または真空処理を含む。これらの方法の全てには、本当にアウトガス発生の少ない接着剤、シーラント、またはポッティング化合物が利用できたら不必要な余計な工程が必要である。
【0008】
H.カワカミ等による特許文献4には、半導体搭載回路基板およびそれを備えた装置のための接着剤組成物が記載されている。この組成物は、揮発性成分をそれほど含まないBステージ状態の接着剤フイルムを形成する。しかしながら、この組成物は、紫外線硬化性ではなく、MEK溶剤を含有しており、硬化するのに熱を必要とし、硬化すると硬質の柔軟ではない熱硬化ポリマーになるビスフェノールAエポキシおよびフェノール樹脂に基づくものである。
【0009】
E.A.ボルター(Boulter)等は、彼らの使用温度の高いポリエーテルアミド熱硬化樹脂からの揮発性物質の放出がゼロであると主張している。これらの材料は、紫外線硬化性ではなく、177℃での1時間と、それに続く225℃での後硬化の硬化スケジュールを必要とする。最終的な硬化後特性は、硬化後のビスフェノールAタイプのエポキシのものに似ている。非特許文献1を参照のこと。
【0010】
I.タナカ等による特許文献5には、クリーンルームに有用なフロアシートを製造するために低アウトガス性接着剤を使用することが記載されている。その接着剤は、二成分型エポキシ樹脂−ポリアミドアミン部類のものである。そのような材料は、二液の混合(余計な製造工程)を必要とし、光硬化性ではなく、硬化すると、低Tgゴムではないポリマーを形成する。
【0011】
K.フクダ等による特許文献6には、ガスの揮発がなく、良好なヒートシール適性および接着強さを主張する、コンピュータのハードディスクドライブ用のシーラント組成物が記載されている。G.M.バンヘーレン(Vanhaeren)等による特許文献7には、揮発性物質を形成せずに柔軟な耐熱性ボンドを提供する、ポリオールおよびブロックイソシアネートを含有する架橋性ホットメルト接着剤が記載されている。しかしながら、上述した材料の両方とも、ホットメルトとして施さなければならず、それに伴う高温は、多くの光学装置に要求される精巧なアライメントに悪影響を及ぼすであろう。
【0012】
R.C.ベンソン(Benson)等およびC.T.ムーニー(Mooney)等は、エポキシまたはポリイミド系のダイ取付接着剤の硬化中および後硬化処理後に放出される揮発性有機種の測定を調査した。同様の研究が、マイクロ電子機器のための接着剤について、R.C.ベンソン等により行われた。これらの配合物は、光硬化性ではなく、硬化しても、その用途に要求される柔軟なゴムタイプのポリマーにはならない。非特許文献2を参照のこと。非特許文献3も参照のこと。非特許文献4も参照のこと。
【0013】
R.レオニ(Leoni)は、揮発性有機化合物の放出が非常に少ない接着剤を記載している。そのような接着剤は、床の敷物、タイル、カーペット、ビニールシートなどを対象とした高粘着性の触圧接着剤である。これらの材料は、光硬化性ではなく、その永久的な粘着性のために、この用途には適していない。非特許文献5を参照のこと。
【0014】
J.クジンスキー(Kuczynski)は、紫外線硬化性接着剤からのアウトガス発生を除去する可能性を研究した。そのようなアウトガス生成物は薄膜磁気ディスクを腐食することが示された。腐食性種の揮発性は、可塑剤の濃度により線形に変動した接着剤のガラス転移温度に依存した。熱重量分析により、アウトガス発生は、ポリカプロラクトン系可塑剤の濃度が低下した接着剤において大幅に減少したことが判明した。非特許文献6を参照のこと。現行の用途に関して、低Tgおよび低アウトガス性を同時に有することが望ましい。また、ポリカプロラクトン系の材料は、その固有の加水分解不安定性のために望ましくない。
【0015】
最後に、Y.アライおよびT.ネモトによる特許文献8には、電子装置のための、生成する揮発性ガスの量が低下した光硬化性封止組成物が記載されている。そのような組成物は、ポリプロピレングリコール延長ビスフェノールA、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびフェノキシエチルアクリレートから合成された高分子量(約50,000)のウレタン(メタ)アクリレートに基づく。そのような組成物は、本発明の優れた熱および酸化安定性も、固有の高い疎水性も持たないであろう。
【特許文献1】特開2001−155855号公報
【特許文献2】特開2002−106719号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2001/028062号明細書
【特許文献4】特開2002−146230号公報
【特許文献5】特開2001−165737号公報
【特許文献6】特開2001−57065号公報
【特許文献7】欧州特許第302620号明細書
【特許文献8】特開2001−163931号公報
【非特許文献1】E.A.Boulter, M.Cohen, M.L.Devinev. Proceedings of the Electrical/Electronics Insulation Conference (1997),23rd,249-53
【非特許文献2】R.C.Benson, T.E.Phillips, N.DeHaas, Proc.-Electron.Compon.Conf. (1989), 39th,301-08
【非特許文献3】R.C.Benson, T.E.Phillips, N.DeHaas, M.Bonneau, Int.SAMPE Electron, Conf. (1990), 4 (Electorn), Mater.-Our Future, 267-81
【非特許文献4】C.T.Mooney, J.C.Bolger, Natl.SAMPE Symp.Exhib., [Proc], (1984), 29th (Technol.Vectors), 639-50
【非特許文献5】R.Leoni; FATIPEC Congress (2000), 25th(Vol.1), 253-265
【非特許文献6】J.Kuczynski, J.of Adhesion (1996), 56(1-4), 107-119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
依然として、光または電子ビーム硬化性であり、硬化した際に、特に光学分野に使用するのに適した低Tg、低モジュラスおよび低ガス放出速度を有する材料を形成する接着剤材料が真に必要とされている。また、依然として、そのような硬化した接着剤材料を含む装置、特に光学装置が真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の発明者は、
(i) 炭素−炭素二重結合および三重結合が完全にないまたは実質的にない、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系ゴム材料に基づく光または電子ビーム硬化性材料成分、
(ii) 室温で実質的に揮発性がなく、化学線への曝露後に、室温で揮発性が最小のまたはない光化学反応の生成物を生成する光開始剤/光増感剤成分、
(iii) 単独重合可能であるか、または(i)の光または電子ビーム硬化性材料成分と共重合できる、随意的な粘度調節成分、および
(iv) 随意的な不活性充填剤、
の混合物、ブレンドおよび/または反応生成物から実質的になる組成物を発明した。
【0018】
本願の発明者等は、低ガス放出速度および低モジュラスを有する組成物を製造する方法であって、
(A) 光および/または電子ビーム硬化性である末端基および/または側基を有する、炭素−炭素二重結合および三重結合が完全にないまたは実質的にない、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系ゴム材料(i)を提供し、
(B) 材料(i)を、室温で実質的に揮発性がなく、化学線への曝露後に、室温で揮発性が最小のまたはない光化学反応の生成物を生成する光開始剤/光増感剤(ii)、単独重合可能であるか、または材料(i)と共重合できる、随意的な粘度調節成分(iii)、および随意的な不活性充填剤(iv)と混合し、
(C) 工程(B)から得られた混合物を、可視光、紫外線または電子ビームにより硬化させて、低ガス放出速度および低モジュラスを有を有する組成物を形成する、
各工程を有してなる方法も発明した。
【0019】
本発明の方法のある実施の形態によれば、工程(A)は、
(A1) 反応性末端基および/または側基を有する、炭素−炭素二重結合および三重結合が完全にないまたは実質的にない、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系ゴム材料(i’)を提供し、
(A2) ゴム材料(i’)の反応性末端基および/または側基を、光および/または電子ビーム重合性基を有する試薬と反応させることによって、ゴム材料(i’)に光および/または電子ビーム重合性末端基および/または側基を導入することにより、ゴム材料(i’)を材料(i)に改質する、
各工程を含む。
【0020】
本発明の組成物において、(i)の光または電子ビーム硬化性材料成分は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンプロピレンゴムおよびその組合せからなる群より選択される官能化材料であり、この材料は、完全に水素化されているかまたは実質的に完全に水素化されており、炭素−炭素二重結合および三重結合がないまたは実質的にないことが好ましい。(i)の光または電子ビーム硬化性材料成分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、マレイミド、チオアクリレート、チオメタクリレート、ビニルスルフィド、イタコネート、クロトネート、スチレンおよびN−ビニルアミド、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、オキセタン、エピスルフィド、ビニルエーテル、プロピレンエーテル、アリルエーテル、およびそれらの相溶性混合物および/または組合せから選択される重合性末端基または側基少なくとも1つにより官能化されていることが好ましい。(i)の光または電子ビーム硬化性材料成分は、アクリレート、メタクリレートおよびエポキシから選択される重合性末端基または側基少なくとも1つにより官能化されていることが最も好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、化学線または電子ビームへの曝露後に、非常に少量のアウトガスまたは揮発性有機物質しか放出しない柔軟なゴム状ポリマーに硬化する。そのような材料は、接着剤、シーラント、またはレンズポッティング材料として有用である。そのような硬化材料は、本発明の主題の一部を構成する。その硬化材料は、低モジュラスおよび25℃以下の低Tgを有することが好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、接着剤またはシーラントとして使用できる。そのような使用は、接着剤が低アウトガス性であことが要求される用途において有益である。例えば、本発明の組成物は、クリーンルームに使用できる。本発明の組成物は、レンズおよび光学装置に使用される他の光学部材、特に、例えば、以下に限られないが、248nmまたはそれ未満の波長を持つ紫外線の使用を含む、深紫外線および真空紫外線フォトリソグラフィーにおいて用いられるものなどの、材料から発生したアウトガス種に敏感で影響を受けやすい部材を含有する装置に使用されることが好ましい。この組成物は、そのような短波長での高エネルギー照射に曝露されたときにさえ、低アウトガス性であるために、レンズポッティング材料として、248nm,193nmおよび157nmフォトリソグラフィーに関する使用のために特に有益である。この組成物は、任意の波長、例えば、以下に限られないが、約365nmでの高フルエンス照射の使用を含む光学装置における使用にも特に有益である。
【0023】
したがって、本発明のある態様は、接着剤またはシーラントとして上述した本発明の物質の硬化組成物を含む装置である。この装置は光学装置であることが有利である。この光学装置はレンズアセンブリまたはレンズ素子を含んでよい。この光学装置は光学ガラスを含むことが好ましい。その装置は、リソグラフィー装置、リソグラフィー検査装置などの半導体検査装置、エタロン、またはレーザ発生器であることが有利であろう。この装置は、例えば、以下に限られないが、赤外線、近赤外線、可視光、紫外線、深紫外線および真空紫外線を含む、任意の波長での電磁照射線に関連して使用してよい。その装置は、好ましくは500nm未満、より好ましくは400nm未満、さらにより好ましくは300nm未満の照射線に関連して使用される。この装置は、例えば、約10W/cm2より高い、高フルエンスを持つ照射線に関して使用されることが好ましい。その装置は、約250nm未満の深紫外線または真空紫外線の使用を含むリソグラフィー装置であることが有利である。その装置は、157nmほど短い、およびさらに短い波長を有する照射線に関連して使用できる。物質の硬化組成物は、本発明の装置においてレンズポッティング材料として使用されることが有利である。そのレンズは、例えば、ドープされたまたは未ドープの高純度溶融シリカ、または必要に応じて反射防止コーティングが被覆された結晶質CaF2から製造されてよい。本発明の装置は、使用中に光路のパージを最小しかまたは全く必要としないことが有利である。
【0024】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明白であるか、または記載された説明および特許請求の範囲、並びに添付の図面に示されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0025】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することが意図されているのが理解されよう。
【0026】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、この明細書に包含され、その一部を構成する。
【0027】
本発明の組成物は、第1成分として、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系ゴムに基づく光または電子ビーム(EB)硬化性材料を含有する。このゴムは、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンプロピレンゴム(EPR)、およびそれらの組合せなどに基づいて差し支えない。そのようなゴムの炭化水素鎖は、炭素−炭素二重結合または三重結合が完全にまたは実質的に完全にないものでなくてはならない。通常は、これは、ゴム主鎖の水素化により行われる。水素化ゴム材料は、ゴム分子を重合性にする基により官能化される。そのような重合は、化学線または電子ビームの存在下で生じなければならない。その重合を開始するのに、光開始剤/光増感剤が必要であるかもしれない。ここに用いられているように、「光開始剤/光増感剤」という用語は、一種類以上の光開始剤および随意的な一種類以上の光増感剤を含む、光または電子ビーム重合のための光開始剤系を意味する。水素化ゴム上の重合性基は、末端基または側基であってよい。その基は、フリーラジカル重合性またはカチオン重合性であってよい。フリーラジカル重合性基の例としては、以下に限られないが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、マレイミド、チオアクリレート、チオメタクリレート、ビニルスルフィド、イタコネート、クロトネート、スチレン、およびN−ビニルアミドなどが挙げられる。カチオン重合性基の例としては、以下に限られないが、エポキシ、オキセタン、エピスルフィド、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテルなどが挙げられる。チオール官能基も、よく知られたチオレン光重合におけるように、組成物中のエン官能性材料と化学量論的に釣り合っていれば、特に有用である。好ましい官能基はエポキシ、アクリレート、およびメタクリレートである。
【0028】
水素化ゴムは、ヒドロキシル基、アミノ基、またはチオール基により最初に官能化されていれば、過剰のジ−またはトリイソシアネート官能性化合物と最初に反応して、対応するウレタン、尿素、またはチオウレタン化合物を形成できる。次いで、その材料は、この材料を、フリーラジカルまたはカチオン重合性基(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテルなど)も有するヒドロキシル官能性分子と反応させることによって、末端をキャップすることができる。水素化ゴムのこのタイプの官能化により、水素化されたゴム主鎖を有し、フリーラジカルまたはカチオン重合性官能基により端部がキャップされたウレタン、尿素、またはチオウレタン材料が得られる。
【0029】
官能化された水素化ゴム材料は、所望の用途にとって許容される粘度の液体であれば、適切な非揮発性光開始剤/光増感剤と直接混合し、光硬化させることができる。粘度調節が必要な場合、どのような共重合性または同時に重合性の成分を用いてもよい。この成分は、水素化ゴム材料と相溶性でなければならない。この成分は、組成物が硬化されているときまたは使用されているときに、紫外線に曝露された場合、有害な量の揮発性有機化合物を生成してはならない。
【0030】
電子ビームを用いて重合を開始する場合、光開始剤は、カチオン重合が望ましい場合、光開始剤が必要なだけである。紫外線または可視光の光硬化について、光開始剤/光増感剤が必要である。光開始剤/光増感剤成分は、非揮発性であり、揮発性である光化学反応による生成物を生じてはならない。市販のフリーラジカル光開始剤の例としては、以下に限られないが、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)から入手できる、Cyracure 6974、Cyracure 6976、Cyracure 6990およびCyracure 6992;ランベルティ社(Lamberti S.p.A)から入手できる、Esacure KIP150、Esacure KIP75LTおよびEsacure 1001;チバ・ガイギー・ケミカルス社(Ciba Geigy Chemicals Corp.)から入手できるIrgacure 819,369,784、CGI 113,124,403および754;カイテック・ケミカル社(Chitec Chemical Co.)から入手できるChivacure 3482;アルバーマーレ社(Albermarle Corp.)から入手できるITX、LTX、MEABおよびIPPBP;アセト社(Aceto Corp.)から入手できるBMDS、CTX、CPTX、DETX、およびPDAが挙げられる。適切なカチオン性光開始剤は、以下に限られないが、ローディア社(Rhodia Inc.)から入手できるRhodorsil 2074、サートマー社(Sartomer Co.)から入手できるSarcat CD−1012、ゼネラル・エレクトリック社(General Electric Co.)から入手できるUV9380C、UV9385C、UV9390C、およびUV9392Cが挙げられる。精製形態または希釈形態の、以下の化合物、その混合物および相溶性の組合せを、本発明における光開始剤として都合よく使用してよい:
・ オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、
・ トリプロピレングリコールジアクリレート(25%TPGDA)中に希釈された、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、
・ 1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルホニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、
・ ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、
・ 2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノ−フェニル)−1−ブタノン、
・ ビスη5−(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロル−1−イル)フェニル)チタン、
・ ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、
・ 2−オキセパノン、ホモポリマー、2−[[4−[2−メチル−2−(4−モルホリニル)−1−オキソプロピル]フェニル]チオ]エチルエステル、
・ 2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンの混合物、
・ 1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、2−エチルヘキシルエステル、
・ 4,4’−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、
・ 4,4’−ビス(イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、
・ 4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、
・ 2−クロロ−チオキサントン、
・ 1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、
・ 2,4−ジエチルチオキサントン、
・ ポリ[オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)]、α−[4−(ジメチルアミノ)ベンゾイル−ω−ブトキシ]、
・ 2,2’−ビス−(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−2’−H−<1,2’>ビイミダゾリル、
・ (トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
・ [4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
・ ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、イソプロピルチオキサントン、およびC12+C14アルキルグリシジルエーテルの混合物、
・ ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびC12+C14アルキルグリシジルエーテルの混合物、
・ フェニル−4−オクチルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
・ トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物、および
・ トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩の混合物。
【0031】
所望であれば、以下の光増感剤を、本発明の組成物中に同様に用いてよい:
・ ペリレン、
・ アントラセン、
・ 1,2−ベンズアントラセン、
・ 9−n−ブトキシアントラセン、
・ 9,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、
・ 9,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、
・ 9,10−ジエトキシアントラセン、
・ アントロン、
・ ピレン、
・ 2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、
・ 2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、
・ ジフェニルアントラセン、
・ 9,10−ジメチルアントラセン、
・ 1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン、
・ 1,3−ジフェニルイソベンゾフラン、
・ N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン、および
・ N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン。
【0032】
フリーラジカル重合性材料をカチオン硬化性材料とブレンドし、次いで、化学線に曝露して、両方の材料を同時に硬化させることも可能である。
【0033】
他のシーラントおよび接着剤と同様に、本発明の組成物に、様々な不活性充填剤、特に無機充填剤を使用して差し支えない。これらの充填剤は、硬化生成物の物理的性質を改善するために、また未硬化材料のレオロジーを改質するために、組成物に加えてよい。それら充填剤は、強化用であってもなくても差し支えない。強化充填剤は、硬化したポリマーマトリクスと強力に相互作用できる表面部分を含んでもよい。強化充填剤は、硬化した接着剤の強度およびモジュラスを増加させるように機能してもよい。当然のことながら、強化充填剤は、未硬化組成物の粘度を変更してもよい。そのような効果の程度は、充填剤の装填量、粒径、形状、および表面の化学的性質などの要因に依存する。そのような充填剤の非限定的例として、アルミナ、クリストバライト、水酸化アルミニウム、タルク、長石、炭酸カルシウム、マイカ、クレイ、ウォラストナイト、ネフェリン・サイヤナイト、シリカなどが挙げられる。不活性無機充填剤としてシリカを使用することが好ましい。これらの充填剤は、紫外線硬化が使用される場合、組成物の紫外線硬化を著しく阻害しないように、硬化用紫外線に対してできるだけ透明なものである。カチオン硬化配合物の場合、充填剤は、酸性硬化を阻害しないように、非アルカリ性であるべきである。フリーラジカル硬化系について、充填剤のpHはそれほど重要ではない。使用される充填剤の量は、全組成物の0〜90質量%、好ましくは0〜75質量%、より好ましくは0〜50質量%であって差し支えない。充填剤の粒径は、125μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは10μm未満であるべきである。
【0034】
本発明の組成物は、可視光、紫外線または電子ビームにより硬化することができる。当業者は、バルク材料に対して特定の組成を有する配合物を完全に硬化させるために、適切な設備および硬化時間を選択できる。例えば、365nmでの紫外線硬化を使用する場合、組成物は、2時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、最も好ましくは15分以内で完全に硬化されることが都合よい。硬化プロセスは室温で行うことができる。一般に、硬化プロセスはそれほど熱を発せず、未硬化組成物が施された後に行うことができる。これらの利点のために、本発明の接着剤組成物は、高温に敏感な精密装置の素子を取り付けるために特に適したものとなる。
【0035】
本発明の組成物の硬化生成物は、25から10,000psi(1.7×105から6.8×107Pa)、好ましくは50から5,000psi(3.4×105から3.4×107Pa)、より好ましくは100から2,500psi(6.8×105から1.7×107Pa)に及ぶ低モジュラスを有することが都合よい。
【0036】
本発明の接着剤組成物は、適切に硬化されている際に、太陽光または一般的な照明条件に曝露されたときに、室温で、低アウトガス性材料である。したがって、その相応しい用途は、クリーンルームおよび低アウトガス性が好ましいまたは要求される環境においてである。
【0037】
意外なことに、本出願の発明者等は、本発明の硬化後の接着剤組成物が、長期間に亘り157nmほど短い波長の高エネルギー紫外線に直接曝露されたときに、アウトガスを実質的に発生せず、発生した比較的少量のアウトガス材料は、リソグラフィーレンズの表面を汚染する傾向がないことを発見した。これは、高分子炭化水素中の化学結合は、高エネルギーの紫外線フォトンにさらされると壊れる傾向にあるという一般的な知識に反している。本出願の発明者等は、高フルエンス照射に使用したときでさえも、波長にかかわらず、本発明の硬化した接着材料は、それほどアウトガスを発生せず、多くの光学装置および光学系に要求される清浄な光学表面を汚染するように移行する傾向がないことを発見した。
【0038】
先に述べたように、193nmおよび157nmなど、特に157nmの、深紫外線および真空紫外線フォトリソグラフィーにおいて用いられるレンズにおいて、レンズ表面が汚染されると、リソグラフィー照明照射線の透過が減少することがあり、それゆえ、そのような汚染は非常に望ましくない。室温硬化性シリコーンシーラントは、アウトガス性、移行、およびレンズ表面を汚染する強い傾向のために悪評が高く、それゆえ、これらの場面では直接使用できない。高フルエンスでは、約365nmなどの比較的長い波長でさえも、RTVシリコーンゴム・レンズポッティング用材料としての従来のレンズポッティング用材料は、移行し、レンズ表面を汚染する傾向にあることが報告されてきた。RTVシリコーンゴム・レンズポッティング用材料は、比較的低フルエンスの照射が含まれるときに、365nmなどの比較的長い波長の用途で許容されるとみなされているが、高フルエンスでの悪化した移行および汚染のために、それらの材料はそれほど望ましくない。これは、半導体検査システムなどの高精度システムにとって特に当てはまる。そのような移行と汚染の問題のために、光路をよくパージする必要がある。さらに、RTVシリコーンゴム材料の移行、それゆえの157nmなでの短波長でのレンズ表面の汚染のために、それらの材料は、ごく小さなフルエンスの照射が含まれる用途に使用するのさえ、適さなくなる。本出願の目的に関して、「高フルエンス」は、10W/cm2より高いフルエンスを意味する。
【0039】
本発明の適切に硬化された接着剤組成物は低アウトガス性であり、発生したアウトガス種はレンズ表面を汚染する傾向になく、適切な硬化した接着剤組成物は、157nmの紫外線などの高フルエンスおよび/または短波長に直接曝露されたときでさえも、レンズ表面を汚染するように移行する傾向にないので、この組成物は、清浄な表面を要求する全ての装置、とりわけ、光学装置、特に、248nmまたはそれより短い深紫外線および真空紫外線などの短波長でのリソグラフィー装置に使用するのに理想的である。本発明の接着剤組成物は、これらの装置の様々な部材を取り付け、接合するのに用いてもよい。特に、本発明の組成物は、レンズ素子をそれらのハウジングにしっかりと固定するためのレンズポッティング材料として使用するのが非常に有利である。それらのレンズは、ドープされたまたは未ドープの、高純度溶融シリカ、CaF2または他の材料から製造されてよい。レンズ表面を、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ガドリニウム、フッ化トリウム、フッ化ランタン、フッ化イットリウム、フッ化ネオジム、フッ化ジスプロシウム、フッ化アルミニウムナトリウム、アルミナ、シリカ、フッ素含有シリカ、ハフニア、酸化スカンジウム、酸化トリウム、ジルコニア、イットリアなどの反射防止コーティングで被覆してもよい。本発明の接着剤組成物は、レンズポッティング材料として使用する場合、例えば、レンズ素子を注意深くアライメントする前または後に、硬化前にレンズ素子またはレンズハウジングの所望の位置に施すことができる。続いて、接着剤組成物を短期間に亘り硬化用の可視光または紫外線または電子ビームに曝露し、それによって、レンズ素子をハウジングに取り付け、固定する。本発明の物質の硬化組成物を含むそのような装置、特にリソグラフィー装置は、本発明のある態様を構成する。
【0040】
したがって、本発明の装置は、接着剤またはシーラントとして前述した本発明の物質の硬化組成物を含む。その装置は光学装置であることが有利である。この光学装置はレンズアセンブリまたはレンズ素子を含んでよい。その装置は、リソグラフィー装置、リソグラフィー検査装置、エタロン、レーザ発生器などであることが有利であろう。その装置は、例えば、以下に限られないが、赤外線、近赤外線、可視光、紫外線、深紫外線および真空紫外線を含む、任意の波長の電磁照射線に関して使用してよい。その装置は、好ましくは500nmより短い、より好ましくは400nm未満の、さらにより好ましくは300nm未満の照射線に関して使用される。その装置は、高フルエンス、例えば、好ましくは10W/cm2を超える、より好ましくは50W/cm2を超える、さらにより好ましくは100W/cm2を超える、最も好ましくは200W/cm2を超えるフルエンスを有する照射線に関して使用される。ある半導体検査システムでは200W/cm2より高いフルエンスが使用される。そのようなシステムは、本発明の装置である、またはこの装置を含むことが非常に望ましい。本発明の装置は、約250nmより短い深紫外線および真空紫外線の使用を含むリソグラフィー装置であることが有利である。その装置は、157nmほど低いまたはそれより短い波長を有する照射線に関して使用することができる。物質の硬化組成物を、本発明の装置におけるレンズポッティング材料として使用することが有利である。レンズは、例えば、ドープされたまたは未ドープの高純度溶融シリカ、または必要に応じて反射防止コーティングが被覆された結晶質CaF2から製造されてよい。本発明の装置は、使用中に、光路のパージを最小にしかまたはまったく必要としないことが有利である。
【0041】
本発明の装置は、光学装置である場合、少なくとも反射または屈折光学素子を備えていてよい。反射素子は、金属または非金属材料から作製された反射表面を備えてもよい。屈折光学素子が含まれる場合、この素子は一般に、装置に関連して用いられる照射線に対して透明なガラスまたは結晶質材料を含む。ガラス材料は、例えば、以下に限られないが、ホウケイ酸ガラス、ドープされたまたは未ドープの溶融シリカガラスなどを含む、i線、g線、248および193nmリソグラフィーに使用するための一般的なガラス材料を含んでよい。光学結晶質材料の例としては、以下に限られないが、CaF2、MgF2の結晶、偏光結晶など、並びに透明なガラスセラミック材料が挙げられる。
【0042】
本発明を、説明目的のためだけであり、特許請求の範囲に記載された本発明をいかようにも限定するようには解釈されるべきではない以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0043】
具体例1(本発明)
紫外線硬化性組成物を、以下の成分を以下の質量パーセントで混合することによって調製した:
88.00% Kraton Liquid Polymer L-207
10.00% 1,12−ドデカンジオールジメタクリレート
0.75% Rhodorsil Photoinitiator 2074
1.00% ランベルティ社からのEsacure KIP 150
0.25% イソプロピルチオキサントン
【0044】
Kraton Liquid Polymer L−207は、一端に主なヒドロキシル官能基を、他端にエポキシ化イソプレン官能基を有する水素化ポリブタジエンポリマーからなる、クラトン・ポリマーズ社(Kraton Polymers)からのヘテロテレケリックポリマーである。1,12−ドデカンジオールジメタクリレートは、ローム・アメリカ社(Rohm America)からのMhromoner BM−721である。Rhodorsil Photoinitiator 2074は、ローディア社(Rhodia Inc.)から入手できる(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。Esacure KIP 150は、ランベルティ社から入手できるオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン]である。イソプロピルチオキサントンはアルバーマーレ社(Albermarle Corp.)から入手できる。
【0045】
粘性の液体混合物を、6ミル(1.52×10-2mm)のBirdアプリケータを用いてガラス板に塗布した。このガラス板を、紫外線に対して透明な蓋および窒素入口を備えたアルミニウムパージボックスに入れた。このボックスを1分間に亘り窒素でパージした。次いで、パージボックスの直接上10インチ(25cm)に位置する紫外線(キセノン・モデルRC−500B)をオンにした。連続的に窒素でパージしながら、試料を10分間に亘り紫外線(約3000mJ/cm2)に曝露した。室温で4日後、厚さ6ミル(1.52×10-2mm)のフイルムをガラスから除去し、UV Gerstel熱脱着/GCMSを用いて、アウトガス発生について試験した。この技法について、25mgから30mgのフイルム試料を、空の7.0インチ(18cm)長×6.0mm外径のガラスカートリッジ内に入れ、25℃でアウトガス発生させた。25℃で熱的に脱着されたVOCを、一定の15.0ml/分のヘリウムパージを用いて、60.0分間に亘り低温収集した。発生したアウトガス揮発性物質は、以下の設備条件のGCMSを用いて特定した。
【0046】
GCMS設備条件:
設備:ヒューレット・パッカード5989Bガスクロマトグラフ質量分析計
同伴ガス:ヘリウム 流量2.00ml/分
タンク圧:50psi(3.4×105Pa)
TDS圧力ゲージ:9.5psi(6.6×104Pa)
カラム:30M×0.23mm内径、0.5μmフイルム、DB−XLB温度最高350℃、溶融シリカ毛管
温度プログラム:5分間50℃に保持、10℃/分の割合で300℃まで昇温し、5分間保持
注入経路:Gerstl TDS熱脱着ユニット
検出器:質量分析検出器−電子衝撃イオン化モード
検出温度:250℃
注入温度:275℃
線源:200℃
四重極:100℃
走査範囲:質量45から質量450
MS ON 0.0分
運転時間:35.0分
サンプリングレート:1.0A/D試料2
走査/秒:0.7
ノイズ閾値:100
【0047】
具体例2(比較例)
一連の市販の接着剤をそれらの供給業者により推奨されたように硬化させ、具体例1に記載したのと同じ過程にしたがって、それらのガス放出速度について試験した。そのアウトガスの結果を、具体例1の硬化組成物のガス放出速度と比較した。その比較結果が以下の表Iに列記されている。
【表1】

【0048】
意外なことに、発生したアウトガスVOCの総量は、市販の接着剤全てに関するよりも、具体例1の組成物に関するほうが、著しく少ない。
【0049】
具体例3(比較例)
別の試験において、市販の室温加硫(RTV)シリコーンゴムを評価した。RTVシリコーン材料は、一般に、低アウトガス性のゴム状材料として知られている(ASTM法D6411を参照のこと)。この材料は、以後SiRTVと称され、NASA Reference Publication 1061 "Outgassing Data for Selecting Spacecraft Materials"に、1%以下の総質量損失(TML)および0.10%以下の収集揮発性凝縮性物質(CVCM)を有する成形化合物として挙げられている。この材料を、供給業者により推奨されたように硬化させた。硬化材料を、異なる期間に亘り室温で貯蔵し、次いで、上述したようにアウトガス発生について試験した。SiRTVの試験結果が以下の表IIに列記されている。
【表2】

【0050】
SiRTVは7日後に、具体例1の組成物が4日後に発生したよりも多い総量でアウトガスVOCを発生したことに留意すべきである。また、SiRTVに関して発生したアウトガスVOCのレベルは、硬化してから24日後まで、具体例1のレベルよりも低下しない。SiRTVは光硬化性ではなく、完全に硬化するのに室温で7日間かかり、一方で、具体例1の組成物は、紫外線により室温で10分で完全に硬化することを留意するのも重要である。
【0051】
具体例4(本発明)
この具体例の組成物は、この液体材料をもっと見易くし、硬化前のポッティング化合物の流動をより容易にモニタできるように、具体例1の組成物に顔料を加えられることを示している。以下の組成は質量パーセントで表されている。
【0052】
87.92% Kraton Liquid Polymer L-207
10.00% 1,12−ドデカンジオールジメタクリレート
0.75% Rhodorsil 2074
1.00% Esacure KIP 150
0.25% イソプロピルチオキサントン
0.08% 9R445(ペン・カラー社(Penn Color Inc.)からのTMTPAペースト中の24%の有機赤顔料)(TMTPA=トリメチロールプロパントリアクリレート)
【0053】
この組成物は、157nmの光に曝露した際のアウトガス発生について試験するために、ステンレス鋼製のハウジングに3つのCaF2レンズ素子をポッティングするために用いた。1つのポッティングされたレンズ素子の断面が図1に示されている。図1において、101はステレンス鋼製のレンズハウジングであり、103はCaF2レンズ素子であり、105はレンズポッティング材料である。同様にポッティングされた3つのレンズ素子を積み重ねて、レンズアセンブリを形成した。積層体における最後の素子は、図2に示されているように、表面にポッティング材料の層107(5ミルすなわち1.25×10-2mm厚)が塗布されている。
【0054】
最後の素子のポッティング材料層107は、ポッティングの前にその素子に塗布した。この接着剤層は、15分間に亘り不活性雰囲気(N2パージ)中で硬化させた。この素子のリフレクタハウジングの底からの距離は約9〜10インチ(23から25cm)であった。接着剤層は、80mW/cm2の紫外線硬化均一面線源を用いて硬化させた。ピークの硬化波長は365nmであった。
【0055】
ポッティングを行うときに、各素子をハウジング内に配置し、接着剤(ポッティング材料)を塗布した。このポッティング材料は、2回の15分サイクルに亘り不活性雰囲気(N2パージ)中で硬化させた。セルの反射器ハウジングの底からの距離は、約9〜10インチ(23から35cm)であった。この接着剤は、80mW/cm2の紫外線硬化均一面線源を用いて硬化させた。ピーク硬化波長は365nmであった。このデータは、紫外線源(Adacモデル名:Curezone 2)の製造業者から得た。強度は、反射器ハウジングの底から約2インチ(5cm)のところで測定した。ポッティングされた素子を6時間に亘り窒素パージ雰囲気に置いた。パージ後、セルを、最低で8時間に亘り真空下に置いた。最初の硬化を完了してから24時間後に、第2の硬化を行った。この硬化は、キセノンパルス紫外線源を用いて不活性雰囲気(N2パージ)中で行った。このキセノンユニットは、10パルス毎秒で照射するように構成した。このパルスの強度により、確実に、接着剤を全厚に亘り照射した。硬化時間は、反射器ハウジングの底から約5.5インチ(14cm)の距離で、10分間であった。製造業者により測定されたこの紫外線源の強度は、反射器ハウジングの底から約1.25インチ(3.18cm)の距離で1811W/cm2(ピーク出力)であった。セルを、最低で8時間に亘り真空下に配置し、その後、6から8時間のパージサイクルを行った。ポッティングされた素子を、157nmの曝露の前に、8時間の最終パージサイクルの雰囲気に置いた。
【0056】
次いで、3つのポッティングされたレンズ素子を図3に示したような積層体に組み立てた。157nmのレーザ光源の方向と、三番目のレンズ素子上のポッティング化合物層が、直接157nmの光路にあることに留意されたい。図3において、レンズ素子のチャンバ301および303は、それぞれ、「ビフォーウィンドウ(Before Window)」および「アフターウィンドウ(After Window)」と呼ばれる。
【0057】
図4は、パージガス入口ポート401,403およびガス排気ポート405,407を備えた組立セルの外観を示している。401および405は、それぞれ、ビフォーウィンドウ301のガス入口ポートおよび排気ポートであり、403および407は、それぞれ、アフターウィンドウ303のガス入口ポートおよび排気ポートである。それゆえ、各チャンバ301および303は、N2パージに関して、独立した入口ポートと排気ポートを有する。
【0058】
試験システムの構成の概略図が図5に示されている。この図において、501は、積層されたレンズ素子505が中に配置されているパージボックスである。503は、スポットサイズを制御し、157nmのレーザが適切に動作していることを確実にするために用いられる、蛍光視野絞りである。507および509は、それぞれ、ビフォーウィンドウ排気ポート405およびアフターウィンドウ排気ポート407に連結した排気管である。トラップ511および513は、パージ排気ガスをサンプリングするために、それぞれ、排気管507および509に取り付けられている。図6は、パージプロセスと試験プロセスをさらに説明するための、積層されたレンズ素子の断面図である。157nmの照射線に曝露した際に、第1と第2のレンズ素子の表面601および603は、ToF−SIMS(飛行時間−二次イオン質量分析)を使用することによって、レンズポッティング材料のアウトガス発生により生じた表面汚染について分析される。
【0059】
次いで、組立セルを15psi(1.0×105Pa)で窒素によりパージした。各チャンバからのパージガスを、約0.5リットル毎分で48時間に亘りサンプリングした。レーザは、100Hzの繰返し率を有するように構成されていた。レーザガスが新しいときは、セルでのフルエンスは0.06mJ/cm2であった。典型的なガス充填は、パルスエネルギーが減衰する前に、約750分または4500000パルスに亘り継続するであろう。一回のガス充填に亘る積算されたエネルギーは、約180J/cm2であった。典型的なエネルギー減衰曲線が図7に示されている。各試料を48時間に亘り動作させ、各試料についてのほぼ同じ間隔でのその期間中に4回充填を行った。
【0060】
この実験構成のビフォーウィンドウおよびアフターウィンドウからの雰囲気をサンプリングするために、Carbotrap 300多床吸着剤樹脂トラップ511および513を用いた(図5参照)。吸着剤樹脂トラップは、各チャンバの排気ポートに組み立て、ガスが吸着剤を通過するときに、セルの雰囲気からの揮発性有機化合物(VOC)をトラップに収集した。吸着剤樹脂トラップは、1/4インチ(0.63cm)のSwagelok接続金具を介して、セルの排気ポートに直接連結した。樹脂床によりボックス排気流にあまりに多くの制限が課せられたので、正確な流動を達成するために、外部の真空ポンプが必要であった。実験の雰囲気は、48時間に亘り0.5リットル/分の流量でサンプリングした。
【0061】
吸着剤樹脂トラップの試料は、Gerstel熱脱着/GCMSを用いて動作させた。VOCは、一定の15.0ml/分のヘリウムパージで15.0分間に亘り325℃で吸着剤樹脂から熱的に脱着させた。発生したアウトガスVOCを低温捕捉し、GCMS(ガスクロマトグラフィー質量分析)を用いて同定した。この技法の検出限界は、720リットルの試料容積に基づいて約500ppt(1兆分の1)であった(カラムに400ng)。
【0062】
157nmの光への48時間に亘る曝露後のアウトガス生成物の総VOC濃度が、以下の表IIIに示されている。
【表3】

【0063】
最小量のアウトガス生成物を有する必要があることに加え、アウトガス生成物の種類も重要である。具体例4の配合物に関する、アウトガス生成物およびそれらの濃度が以下の表IVに示されている。
【表4】

【0064】
本発明のこの具体例のレンズポッティング材料に関して、蘂手の試料のレンズ表面601および603のToF−SIMS分析は、多量のCa+2イオン信号を示し、部分的な表面の汚染を示唆した。表面の汚染種としては、取扱い、包装、清浄ではない環境からのシリコーン;脂肪族および芳香族の炭化水素;フタレート;ナトリウム;硫黄化合物;ヨウ素;および塩素が挙げられる。ヨウ素は、接着剤配合物に用いられる陽イオン光開始剤Rhodorsil 2074の結果のようである。さらに、この化合物と他の微量の添加剤から、様々な芳香族炭化水素の信号が生じ得たであろう。接着剤の主成分である、メタクリレートやエポキシゴムの存在は著しくは検出されなかった。ヨウ素含有光開始剤は、レンズ表面に吸着された最も主要なアウトガス発生種であったようである。ホウ素は超微量レベルで存在したが、それがB含有開始剤から発生したアウトガスであることを判定するのは難しい。接着剤自体はどのようなシリコーンも含有していなかったが、これらの試料にシリコーンが低レベルで検出された。この観察は、様々な汚染物がCaF2表面上に吸着する傾向を示している。シリコーンの汚染は、その表面にしつこく結合し、それに関連して除去するのが難しいために、避けることが強く推奨される。
【0065】
具体例5(比較例)
この具体例において、前出の具体例3において記載した室温加硫シリコーンゴムのSiRTVを用いてCaF2レンズをポッティングし、SiRTVに関して、レンズをポッティングした後、SiRTVを、任意のさらになる作業の前に周囲温度(70°F(約21℃))で10日間に亘り硬化させたことを除いて、前出の具体例4にしたがうのと同じ方法、設備および工程を用いて、157nm照射線に曝露した際のアウトガス発生について、このSiRTVを試験した。157nmの曝露は、11日目に開始した。発生したオフガスVOCのデータを得た。総VOC濃度のデータは表IIIに報告されている。SiRTVからのVOCは、シクロシロキサンヘキサメチル−シクロトリシロキサン(D−3)からヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D−8)までであったことが分かった。最高濃度の3種類のシクロシロキサンは、デカメチルシクロペンタシロキサン(D−5、約13%)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D−6、約40%)、およびテトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D−7、約25%)であった。相対的なシロキサン濃度プロファイルは、全体の濃度が違うだけで、各試料について同様であった。ピーク同定と関連する保持時間が以下の表Vに列記されている。
【表5】

【0066】
これらのシロキサン材料はレンズポッティングにとって特に問題である。さらに、157nmの光への長期間の曝露で、シロキサンは、レンズ表面と反応して、レンズ機能に悪影響を与える永久的な層を形成し得る化合物に分解し得ることが分かった。
【0067】
アウトガス発生を測定することに加え、CaF2レンズ表面601および603のToF−SIMS表面分析を行った。その結果は以下のとおりである。
【0068】
SiRTVに関して、このシリコーン系のポッティング化合物を用いて取り付けられた全ての試料を、CaF2レンズ試料自体からのCa信号がほぼ完全になくなる程度まで、シリコーンで被覆した。それらのスペクトルは、シリコーンまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)からの主要なイオン信号を示している。CaおよびFのイオン信号は、微量レベルでしか検出されなかった。ToF−SIMSスペクトルは実質的に最も外側の単分子層が起源であるので、この観察は、シリコーンがその表面を完全に被覆したことを意味する。シリコーンはよく知られた有用な材料であるが、急速に広がり、除去が困難であると悪名高い非常に一般的な汚染物質でもある。シリコーンは、重合して、シロキサン網状構造を形成し得る。さらに、シリコーンは、Ca−O−Siなどの共有結合の様式で、CaF2と結合し得る。CaF2表面に主に移行すると仮定すると、この化合物は、CaF2レンズポッティング材料として使用するのには非常に望ましくない。
【0069】
一般的な可塑剤であり、どこにでもある汚染物のフタレートも全ての試料に検出された。フタレートは、高分子包装材料から、および環境への曝露から生じたものであろう。
【0070】
取扱いおよび汚染からのナトリウムも微量レベルで検出された。
【0071】
要約し、具体例4と比較すると、シリコーン系の接着剤であるSiTRVは、著しいアウトガス発生の原因であり、レンズ表面を完全に被包する。これとは反対に、具体例4の炭化水素系のレンズポッティング材料は、ほとんどアウトガスを発生しない。後者の主要な種は、ヨウ素を含有する芳香族光開始剤の光反応生成物である。シリコーン汚染は、後者の場合でさえ発生し、レンズアセンブリを調製するための清浄な条件の必要性が強調される。他の汚染物の例としては、Na、様々な炭化水素、およびおそらく環境からの微量レベルのフタレートが挙げられる。
【0072】
具体例6(本発明)
以下の質量パーセントの以下の材料を混合することによって、レンズポッティング材料を調製した。
【0073】
98.92% カリフォルニア州、サンディエゴ所在のデザイナー・モレキュル社(Designer Molecules Inc.)からのFM003−53水素化ゴムジアクリレート
0.50% ニューヨーク州、タリータウン所在のチバ・ガイギー社からのIrgacure 369
0.25% イソプロピルチオキサントン
0.25% ニューヨーク州、レイクサクセス所在のアセト社からのSpeedure PDA
0.08% 9R445(ペン・カラー社(Penn Color Inc.)からのTMTPAペースト中の24%の有機赤顔料)
Speed PDA=ポリ[オキシ(メチル−1,2−エチレンジイル),α−(4−ジメチルアミノ)ベンゾイル−ω−ブトキシ−]
Irgacure 369=2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン
【0074】
この組成物および具体例4の組成物を1cm×2cm×2mm深さのガラス成形型中に注ぎ入れた。この成形型を、紫外線に対して透明な(高純度溶融シリカ)蓋を有する箱に入れ、窒素をパージした。試料を、10パルス/秒および5.5インチ(14cm)の高さで、キセノンモデルRC740紫外線ランプにより硬化させた。別の試料を、以下の表VIに列記された各曝露時間に亘り硬化させた。熱脱着/GCMSを用いて、アウトガス発生を評価した。
【表6】

【0075】
Gerstel熱脱着/GCMSを用いて、試料をきちっと動作させた。80mgから100mgのフイルム試料を、空の7.0インチ(18cm)長×6.0mmの外径のガラスカートリッジ内に入れ、25℃でアウトガス発生させた。25℃で熱的に脱着されたVOCを、一定の15.0ml/分のヘリウムパージを用いて、60.0分間に亘り低温で収集した。発生したアウトガス揮発物質を、GCMSを用いて同定した。総質量損失のデータを得て、表VIに報告した。発生したアウトガスの量が、これらの総質量損失データにより示されている。
【0076】
64.0分間に亘り紫外線曝露した後の総アウトガス生成物は、具体例4および6の組成物の両方についてほぼ同じであることに留意されたい。総質量損失パーセントデータから、具体例4の組成物について、16分より長い硬化時間では、発生したアウトガスの量が著しく変わらず、その組成物は、16分の紫外線曝露後に完全に硬化したことを意味している。しかしながら、具体例6の組成物については、64分未満の硬化時間では、硬化時間が長いほど、総アウトガス発生量が低くなるという一般的な傾向がある。
【0077】
具体例7(本発明)
50.00% Kraton L-207
16.00% DD-36ダイマージオール(ニュージャージー州、ニューアーク所在のジャーケム・インダストリーズ社(Jarchem Inductries))
30.00% TJFS20シリカ粉末(フロリダ州、ゲインズビル所在のフォーエフ・インターナショナル社(4F International Co.,))
4.00% Kraton L-207中のCyracure 6974の5%分散体(Cyracure 6974は、ダウ・ケミカル社からの炭酸プロピレン中の混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの50%溶液である)
【0078】
この組成物(質量パーセントで上に示された)を、10ミル(2.54×10-2mm)厚のシム上にある6ミル(1.52×10-2mm)のBirdアプリケータを用いて、4インチ(10cm)の直径のシリコンウェハー上に塗布して、約16ミル(4.06×10-2mm)厚の層を得た。この被覆シリコンウェハーを、紫外線に対して透明な(高純度溶融シリカ)蓋を備えた箱に入れ、窒素でパージした。10パルス/秒、5.5インチ(14cm)の高さで30分間に亘りキセノンモデルRC740紫外線ランプにより試料を硬化させた。48時間に亘りデシケータ中に貯蔵した後、試料を、約12分間に亘り200Hzで約51μJ/cm2のパルスのフルエンスで約7.5J/cm2について157nmの照射線に曝露した。ヘッドスペースにある蒸気を収集した。発生したアウトガス生成物は:
82%の単純な飽和アルカン
16%の官能化アルカン(ほとんどがアルケンで、いくつかがアルコール)
2%の芳香族化合物(ベンゼンのみ)
【0079】
ケイ素、ヨウ素、または硫黄化合物は全く検出されず、炭化水素のみが検出された。検出された上位のいくつかの化合物が、全体のパーセントとしてのその信号(濃度ではない)と共に以下に列記されている。
【0080】
ペンタン 24.711
ブタン 23.246
ヘキサン 7.893
ペンタナル,3−メチル− 5.475
ヘプタン 4.265
ブタン,2−メチル− 4.251
オクタン 3.016
1−ヘプタン 2.915
ベンゼン 2.288
ヘキサン,3−メチル− 1.815
ペンタン,3−メチル− 1.744
トリデカン 1.419
シス−1−ブチル−2−メチルシクロプロパン 1.374
ノナン 1.322
ヘキサン,2,4−ジメチル− 1.298
ウンデカン,6−メチル− 1.11
【0081】
この具体例は、不活性無機充填剤を、低アウトガス性を達成しながら、本発明の接着剤組成物に加えられることを示している。
【0082】
具体例8(本発明)
58.00% Kraton L-207
8.00% DD-36ダイマージオール
30.00% TJFS05シリカ粉末
4.00% Kraton L-207中のCyracure 6974の5%分散体
上記組成物(質量%)を具体例4におけるように紫外線硬化させた。次いで、この試料に、真空寒中中のアウトガス発生からの収集揮発性凝縮性材料および総質量損失に関するASTM−E−595−93(1999)標準試験法を行った。その結果は、上記紫外線硬化組成物が、この試験の仕様の3つ全てに合格することを示している。
【表7】

【0083】
本発明の範囲および精神から逸脱せずに、本発明の様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかである。それゆえ、本発明は、この本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に含まれるという条件で、包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のレンズポッティング用ポリマー材料がポッティングされたレンズ素子の断面図
【図2】本発明のレンズポッティング用ポリマー材料の層がレンズの一方の面に塗布されている、本発明のポリマー材料がポッティングされたレンズ素子の断面図
【図3】本発明のレンズポッティング用ポリマー材料がポッティングされた3つの積層レンズ素子の断面図
【図4】図3に示された本発明のレンズポッティング用ポリマー材料がポッティングされた3つの積層レンズ素子の斜視図
【図5】図3および4に示された積層レンズ素子を用いた本発明のレンズポッティング用ポリマー材料のアウトガス発生を試験するために構成された装置の概略図
【図6】アウトガス発生の試験中の、本発明のレンズポッティング用ポリマー材料がポッティングされた図5に示された積層レンズ素子の断面図
【図7】図5に示された本発明のレンズポッティング用ポリマー材料のアウトガス発生を試験するために構成された装置に用いられる157nmレーザ源の典型的なエネルギー減衰曲線を示すグラフ
【符号の説明】
【0085】
101 ハウジング
103 レンズ素子
105 レンズポッティング材料
301,303 レンズチャンバ
401,403 パージガス入口ポート
405,407 ガス排気ポート
501 パージボックス
505 積層レンズ素子
507,509 排気管
511,513 トラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 炭素−炭素二重結合および三重結合が完全にないまたは実質的にない、完全にまたは実質的に完全に水素化された炭化水素系ゴム材料に基づく光または電子ビーム硬化性材料成分、
(ii) 室温で実質的に揮発性がなく、化学線への曝露後に、室温で揮発性が最小のまたはない光化学反応の生成物を生成する光開始剤/光増感剤成分、
(iii) 単独重合可能であるか、または(i)の前記光または電子ビーム硬化性材料成分と共重合できる、随意的な粘度調節成分、および
(iv) 随意的な不活性充填剤、
の混合物、ブレンドまたは反応生成物から実質的になる、低ガス放出速度を有する光または電子ビーム硬化組成物を接着剤またはシーラント材料として含む、高フルエンスの電磁照射線に関して使用することのできる光学装置。
【請求項2】
(i)の前記光または電子ビーム硬化性材料成分が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンプロピレンゴムおよびその組合せからなる群より選択される官能化材料であり、該材料は、完全に水素化されているかまたは実質的に完全に水素化されており、炭素−炭素二重結合および三重結合が完全にまたは実質的に完全にないことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
(i)の前記光または電子ビーム硬化性材料成分が、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、マレイミド、チオアクリレート、チオメタクリレート、ビニルスルフィド、イタコネート、クロトネート、スチレンおよびN−ビニルアミド、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、オキセタン、エピスルフィド、ビニルエーテル、プロピレンエーテル、アリルエーテル、およびそれらの相溶性混合物および/または組合せから選択される重合性末端基または側基少なくとも1つにより官能化されていることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
(i)の前記光または電子ビーム硬化性材料成分が、アクリレート、メタクリレートおよびエポキシから選択される重合性末端基または側基少なくとも1つにより官能化されていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記組成物中の光開始剤/光増感剤成分が、精製および/または希釈形態における以下の化合物および/または混合物:
・ オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、
・ トリプロピレングリコールジアクリレート(25%TPGDA)中に希釈された、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、
・ 1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルホニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、
・ ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、
・ 2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノ−フェニル)−1−ブタノン、
・ ビスη5−(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロル−1−イル)フェニル)チタン、
・ ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、
・ 2−オキセパノン、ホモポリマー、2−[[4−[2−メチル−2−(4−モルホリニル)−1−オキソプロピル]フェニル]チオ]エチルエステル、
・ 2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンの混合物、
・ 1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、2−エチルヘキシルエステル、
・ 4,4’−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、
・ 4,4’−ビス(イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、
・ 4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、
・ 2−クロロ−チオキサントン、
・ 1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、
・ 2,4−ジエチルチオキサントン、
・ ポリ[オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)]、α−[4−(ジメチルアミノ)ベンゾイル−ω−ブトキシ]、
・ 2,2’−ビス−(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−2’−H−<1,2’>ビイミダゾリル、
・ (トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
・ [4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
・ ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、イソプロピルチオキサントン、およびC12+C14アルキルグリシジルエーテルの混合物、
・ ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびC12+C14アルキルグリシジルエーテルの混合物、
・ フェニル−4−オクチルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
・ トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物、
・ トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩の混合物、
・ ペリレン、
・ アントラセン、
・ 1,2−ベンズアントラセン、
・ 9−n−ブトキシアントラセン、
・ 9,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、
・ 9,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、
・ 9,10−ジエトキシアントラセン、
・ アントロン、
・ ピレン、
・ 2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、
・ 2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、
・ ジフェニルアントラセン、
・ 9,10−ジメチルアントラセン、
・ 1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン、
・ 1,3−ジフェニルイソベンゾフラン、
・ N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン、および
・ N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン、
から選択されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記組成物中の前記不活性充填剤が、アルミナ、クリストバライト、水酸化アルミニウム、タルク、長石、炭酸カルシウム、マイカ、クレイ、ウォラストナイト、ネフェリン・サイヤナイト、シリカ、並びにそれらの相溶性混合物および組合せからなる群より選択される無機充填剤であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記硬化組成物が25から10,000psi(1.7×105から6.8×107Pa)に及ぶ低モジュラスを有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記硬化組成物が25℃以下のTgを有することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
500nm未満の波長を有する電磁照射線に関して使用されることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の装置。
【請求項10】
深紫外線および/または真空紫外線の使用を含むリソグラフィー装置であることを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記リソグラフィー装置に用いられる照射線の波長が約157nm以下であることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記装置がレンズ材料を含み、該レンズ材料が、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ガドリニウム、フッ化トリウム、フッ化ランタン、フッ化イットリウム、フッ化ネオジム、フッ化ジスプロシウム、フッ化アルミニウムナトリウム、アルミナ、シリカ、フッ素含有シリカ、ハフニア、酸化スカンジウム、酸化トリウム、ジルコニア、イットリアおよびそれらの相溶性の組合せからなる群より選択される反射防止コーティングにより必要に応じて被覆された、ドープされたまたは未ドープの高純度溶融シリカまたは結晶質CaF2であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記光学装置の光路のパージが最小しかまたは全く必要とされないことを特徴とする請求項12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−522016(P2008−522016A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544516(P2007−544516)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/043501
【国際公開番号】WO2006/060592
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】