説明

低ヘーズおよび良好な加工性を有する透明な熱可塑性ポリウレタン、その製造方法およびその使用

【課題】良好な加工性で10%未満のASTM D−1003ヘーズ値を有する光安定性熱可塑性ポリウレタン及びその使用。
【解決手段】該ポリウレタンは、(a)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含むジイソシアネート成分、(b)10:1〜1:4の鎖延長剤(b1)と鎖延長剤(b2)のモル比で1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン(b1)及び2個のOH基の間に2又は3個の炭素原子鎖長を有するジオール類から選択される1以上の鎖延長剤(b2)からなる鎖延長成分、及び(c)450〜10000g/molの数平均分子量と1.8〜3.0のツェレビチノフ活性水素原子の平均数を有する1以上のポリオール成分を反応させることを含む方法によって製造され、成分(a)中のイソシアネート基と成分(b)及び(c)中のイソシアネート反応性基の比は0.9:1〜1.1:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、その良好なエラストマー特性および熱可塑的な加工性のため工業的に非常に重要である。例えば、Kunststoff Handbuch(G.Becker、D.Braun)、第7巻、「Polyurethane」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Verlag、1983年には、TPUの製造、特性および用途の概説が記載されている。
【背景技術】
【0002】
TPUは主に、直鎖状ポリオール(マクロジオール)、例えばポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカーボネートジオールなど、有機ジイソシアネートおよび短鎖状、主に二官能性のアルコール(鎖延長剤)から製造される。これらは連続的または不連続的に製造され得る。最も良く知られた製造方法は、ベルトプロセス(例えば英国特許公開第GB1057018号)および押出機プロセス(例えば独国特許公開第1964834号)である(これらのそれぞれの全内容を参照によって本明細書に組み入れる)。
【0003】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーは、段階的に(プレポリマー計量法)または一段階における全成分の同時反応(ワンショット計量法)によって製造され得る。
【0004】
脂肪族の光安定性透明物質の使用においては、H12−MDIに基づく物質が主に用いられるが、これは硬化挙動が不十分であるという欠点を有する。従って、ジイソシアネートとして例えばHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のような他の物質に基づく脂肪族の光安定性透明TPUは望ましいが、これらのTPUはこのような用途には曇りすぎている。
【0005】
国際特許出願公開第WO02/050151号(その全内容を参照して本明細書に組み入れる)には、エチレンオキシドポリオール、または混合鎖延長によるエチレンオキシド−プロピレンオキシドポリオールに基づく透明TPUが記載され、鎖延長成分はエチレングリコール、ジエチレングリコールまたは1,3−プロパンジオールからなる群から選択される。実施例においては、光安定性ではない芳香族イソシアネートに基づくTPUだけが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第1057018号明細書
【特許文献2】独国特許第1964834号明細書
【特許文献3】国際公開第02/050151号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Becker、D.Braun、Kunststoff Handbuch、第7巻、「Polyurethane」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Verlag、1983年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、概して、良好な工業的加工性に加えてASTM D 1003による10%未満のヘーズを有する、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく光安定性で透明な熱可塑性ポリウレタン成形材料、およびその使用に関する。
【0009】
本発明の種々の実施態様による1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく熱可塑性光安定性ポリウレタン(TPU)は、ASTM D−1003による10%未満のヘーズ値を有し、その一方で、良好な工業的加工性を同時に示す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明には、
a)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−HDI)、および必要に応じて、1,6−HDIと異なる他の脂肪族ジイソシアネート、
b)b1)1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、および
b2)2個のOH基の間の鎖中に2または3個の炭素原子を有するジオールからなる少なくとも1つの鎖延長剤
からなる鎖延長成分であって、鎖延長剤b1)と鎖延長剤b2)のモル比が10:1〜1:4である鎖延長成分、
c)450〜10000g/molの数平均分子量および少なくとも1.8乃至多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子を有する少なくとも1つのポリオール成分から、必要に応じて、
d)触媒
の存在下に、および
e)熱可塑性ポリウレタンを基準として0.1〜10重量%の光安定剤、
f)必要に応じて、添加剤および/または補助物質、
g)必要に応じて、連鎖停止剤
を添加して得られる、ASTM D 1003による10%未満のヘーズを有する光安定性熱可塑性ポリウレタンが含まれ、成分a)中におけるイソシアネート基の数と成分b)、c)および必要に応じてg)中におけるイソシアネートに反応性である基の数の比は0.9:1〜1.1:1である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のある実施態様には、10%未満のASTM D−1003ヘーズ値を有する光安定性熱可塑性ポリウレタンが含まれ、該ポリウレタンは、
(a)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでなるジイソシアネート成分、
(b)(b1)1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、および
(b2)2個のOH基の間に2または3個の炭素原子鎖長を有するジオール類からなる群から選択される少なくとも1つの鎖延長剤
からなる、鎖延長剤(b1)と鎖延長剤(b2)のモル比が10:1〜1:4の鎖延長成分、および
(c)450〜10000g/molの数平均分子量および少なくとも1.8乃至多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子の平均数を有する少なくとも1つのポリオール成分
を反応させることを含んでなる方法によって製造され、成分(a)におけるイソシアネート基と成分(b)および(c)におけるイソシアネート反応性基の比は0.9:1〜1.1:1である。
【0012】
本発明の他の実施態様には、本発明によるポリウレタンを含んでなる光安定性透明成形品が含まれる。
【0013】
本発明の他の実施態様には光安定性透明成形品の製造方法が含まれ、該方法は(i)請求項1に記載のポリウレタンを供給する工程、および(ii)該ポリウレタンを射出成形し、および/または押出す工程を含んでなる。
【0014】
本明細書において、単数形の用語「1つの(a)」および「その(the)」は、言葉および/または内容が特に示さない限り同義であって、「1以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲において「1つの鎖延長成分(a chain extension component)」と称することは、単一の鎖延長成分または1より多い鎖延長成分を指称し得る。従って、全ての数値は、特記しない限り、単語「約」によって修飾されると理解される。
【0015】
主成分としての1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに加えて、第2成分(30mol%まで)として以下の脂肪族ジイソシアネートを有機ジイソシアネートa)として用いることができる:エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートおよび相当する異性体混合物など。1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを好ましく用いる。上記のジイソシアネートは、単独でまたは互いの混合物の形態で用いてよい。これらは15mol%(全ジイソシアネート成分を基準とする)までのポリイソシアネートと共に用いてもよいが、多くとも熱可塑的になお加工可能な生成物を生成する量でポリイソシアネートを添加してよい。
【0016】
2個のOH基の間に2または3個の炭素原子を有するジオール[HO−(−C(R’)(R’’)−)−2または3OH、(式中、R’およびR’’は、互いに独立して、1〜6個のC原子を有するアルキル基である)]は、鎖延長剤b2)として用いられ、好ましくは、1,2−エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2,−ジメチル−1,3,−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールまたはこれらの混合物からなる群に由来し、鎖延長剤b1)と鎖延長剤b2)とのモル比は10:1〜1:4である。
【0017】
平均少なくとも1.8〜多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子および450〜10000の数平均分子量Mを有する成分を成分c)として用いる。
【0018】
特に、2または3個、好ましくは2個のヒドロキシル基を有する化合物、特に450〜6000の数平均分子量Mを有するもの、特に好ましくは600〜4500の数平均分子量を有するものは好適であり、ヒドロキシル基を有するポリエステル、ポリエーテルおよびポリカーボネートは特に好適である。製造の結果、ポリオールは少量の非直鎖状化合物を含有することが多い。従って、表現「実質的に直鎖状のポリオール」を用いることが多い。ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールまたはこれらの混合物は好適である。
【0019】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有する1以上のアルキレンオキシドと、結合した2個の活性水素原子を含有するスターター分子とを反応させることによって製造することができる。例えば、アルキレンオキシドとして以下のものを挙げることができる:エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシド。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物を好ましく用いる。アルキレンオキシドは、単独で、交互に順々に、または混合物として用いてよい。例えば、以下のものがスターター分子として考慮される:水、アミノアルコール、例えばN−アルキル−ジエタノールアミン、例えばN−メチル−ジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールなど。必要に応じてスターター分子の混合物を用いてもよい。適当なポリエーテルジオールは、さらに、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物である。二官能性ポリエーテルに基づく0〜30重量%の量での三官能性ポリエーテルを用いてもよいが、多くとも熱可塑的になお加工可能な生成物を生成するような量である。実質的に直鎖状のポリエーテルジオールは450〜6000の数平均分子量Mを好ましく有する。これらは、単独で、および互いに混合物の形態で用いてよい。
【0020】
適当なポリエステルジオールは、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多価アルコールから製造してよい。例えば、以下のものはジカルボン酸として考慮される:脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸など、または芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸など。ジカルボン酸は、単独で、または混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用してよい。ジカルボン酸の代わりに、相当するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、無水カルボン酸またはカルボン酸塩化物などを使用することは、場合により、ポリエステルジオールの製造に有利であり得る。多価アルコールの例は、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールである。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独で、または互いの混合物の状態で用いてよい。カルボン酸と上記のジオール、特に炭素数4〜6個を有するもの、例えば1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールなどとのエステル、ω−ヒドキシカプロン酸のようなω−ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物、またはラクトン、例えば必要に応じて置換されたω−カプロラクトンの重合生成物はさらに適当である。エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンはポリエステルジオールとして好適に用いられる。ポリエステルジオールは450〜10000の平均分子量Mを有し、単独でまたは互いの混合物の形態で用いてよい。
【0021】
いわゆる連鎖停止剤としてイソシアネートと反応させる単官能性化合物g)は、TPUを基準として最大2重量%の量で用いてよい。例えば、モノアミン、例えばブチルアミンおよびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンまたはシクロヘキシルアミンなど、モノアルコール、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルなどは適当である。
【0022】
ツェレビチノフ活性化合物の相対量は、イソシアネート基の合計とツェレビチノフ活性水素原子の合計の比が0.9:1〜1.1:1になるように好ましく選択される。
【0023】
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、TPUの全量を基準として、好ましくは10重量%までの従来の補助物質および添加剤を補助物質および添加剤f)として含有してよい。典型的な補助物質および添加剤は、潤滑剤および離型剤、例えば脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミドおよびシリコーン化合物、粘着防止剤、抑制剤、加水分解、熱および変色に対する安定剤、染料、顔料、無機および/または有機の充填剤、可塑剤、静真菌的活性および静菌的活性の物質およびこれらの混合物である。
【0024】
上記の補助物質および添加剤についてのさらなる情報は、専門文献、例えばJ.H.SaundersおよびK.C.Frischによるモノグラフ「High Polymers」、第XVI巻、ポリウレタン、第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers、1962年および1964年、R.GachterおよびH.Mullerによる「Taschenbuch fuer Kunststoff−Additive」(Hanser Verlag、ミュンヘン、1990年)またはDE−A2901774に見出し得る。
【0025】
TPUに組み入れることができる他の添加剤は、熱可塑性プラスチック、例えばエチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、および他のTPUである。
【0026】
紫外線安定剤、抗酸化剤および/またはHALS化合物は、好ましくは、光安定剤e)として用いられる。さらなる情報は、専門文献に見出され得、例えば「Plastics Additives Handbook」、2001年、第5版、Carl Hanser Verlag、ミュンヘンに記載されている。
【0027】
適当な触媒d)は、先行技術から既知の通常の第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど、および特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、ビスマス化合物、鉄化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のジアルキル錫塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレートなどである。好適な触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物、錫化合物、ジルコン化合物およびビスマス化合物である。本発明によるTPU中の触媒の全量は通常、TPUの全量を基準として0〜5重量%、好ましくは0〜2重量%である。
【0028】
補助物質および添加剤の添加は、製造工程中に、および/またはTPUへさらにコンパウンドする際に実施してよい。
【0029】
本発明によるTPUは、射出成形法または押出法、例えばフィルム押出法などに好ましく用いられる。
【0030】
本発明によるTPUは、光安定性の透明成形品を製造するために好ましく用いられる。
【0031】
本発明を、以下の非制限的実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
以下の略称を用いる:
〔PE 225B〕
=2250g/molの分子量を有するポリエステルジオール;Bayer MaterialScience AGの製品
〔A 2220 N〕
Acclaim(登録商標) 2220N;M=2250g/molの分子量を有するポリエーテルジオール(CおよびCアルキレン単位の混合エーテル);Bayer MaterialScience AGの製品
〔T2000〕
Terathane(登録商標) 2000;M=2000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフラン;Invista Incの製品
〔T1000〕
Terathane(登録商標) 1000;M=1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフラン;Invista Incの製品
〔De C2201〕
Desmophen(登録商標) C2201;2000g/molの分子量Mを有する1,6−ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール;Bayer MaterialScience AGの製品
〔AD 2055〕
Baycoll(登録商標) AD 2055;2000g/molの分子量Mを有するポリ(ネオペンチルグリコール−1,6−ヘキサンジオール)アジペート;Bayer MaterialScience AGの製品
〔HDI〕
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
〔HDO〕
1,6−ヘキサンジオール
〔BDO〕
1,4−ブタンジオール
〔PDO〕
1,3−プロパンジオール
〔1,2−PDO〕
1,2−プロパンジオール
〔HQEE〕
1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン
〔EG〕
エチレングリコール
〔NPG〕
ネオペンチルグリコール
〔Irganox(登録商標) 1010〕
Ciba Specialty Chemicals GmbHの酸化防止剤
〔Tinuvin(登録商標) 234〕
Ciba Specialty Chemicals GmbHのベンゾトリアゾールに基づく光安定剤
〔DBTL〕
ジブチル錫ジラウレート
【0033】
実施例(本発明および参考/比較):
TPUの製造の概要:
ポリオール(c)1モルと鎖延長剤(b1)xモルおよび鎖延長剤(b2)yモルとの混合物、および0.5重量%Irganox(登録商標) 1010(全TPUを基準とする)および60ppmDBTL(ポリオールの量を基準とする)を、1分あたり500回転(rpm)の速度でのブレードスターラーを用いて撹拌しながら130℃に加熱し、次いで(1+x+y)モルのHDIを添加した。次いでできるだけ最大の粘度に上昇するまで撹拌し、次いでTPUを注ぎ出した。該物質を30分間80℃で熱的に再処理し、次いで造粒した。正確なレシピ((b1)、x、(b2)およびyについての情報)を表1に示す。
【0034】
ヘーズは、研磨された金型で製造した2mm厚射出成形シートについてASTM D 1003に従って計測した。該値も表1に示す。
【0035】
加工性は、射出成形機で製造した射出成形シートについて定性的に評価した。その結果、射出成形シートの離型性および表面品質は顕著であった。
【0036】
【表1】

【0037】
1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオールまたはこれらの混合物を参考例1〜4に用いた。良好な加工性を実際には達成したが、ヘーズ値は明らかに10%を越えた。
【0038】
1,3−プロパンジオール、1,2−エチレングリコールまたはこれらの混合物を参考例5〜7に用いた。低ヘーズ値を実際に達成したが、加工性は非常に悪いかまたは加工することさえできなかった。
【0039】
HQEE単独または少量のHQEEとPDOのいずれかを参考例8〜10に用いた。参考例8においては、加工性は実際に良好であったが、ヘーズは11%であった。参考例9および10においては、PDOの量が比較的多いと非常に加工性の悪い材料となり、その結果、ヘーズを計測することはできなかった。
【0040】
HQEEとPDO、EG、NPGまたは1,2−PDOとの組み合わせを本発明による実施例11〜16に用いた。ヘーズは10%未満であり、良好な加工性を達成した。
【0041】
参考例17に鎖延長剤としてのBDOと組み合わせたHQEEの使用を示す。良好な加工性を達成したが、15%でのヘーズ値は明らかに非常に高かった。
【0042】
本発明による実施例18および19に、HQEEとPDOとの組み合わせとポリオールとしてのポリカーボネートジオールまたはC−3/C−2エーテルの使用を示す。良好な加工性ならびに所望の低ヘーズ値をいずれも達成した。
【0043】
参考例20は、出願WO02/050151の実施例11に対応し、EGとのHQEEおよびポリオールとしてのC−3/C−2エーテルおよびジイソシアネートとしてのMDIの使用を示す。加工性は実際には良好であったが、67%でのヘーズ値は明らかに非常に高かった。
【0044】
広範な本発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に対して変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲内での変更に及ぶことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%未満のASTM D−1003ヘーズ値を有する光安定性熱可塑性ポリウレタンであって、
(a)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでなるジイソシアネート成分、
(b)(b1)1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、および
(b2)2個のOH基の間に2または3個の炭素原子鎖長を有するジオール類からなる群から選択される少なくとも1つの鎖延長剤
からなる、鎖延長剤(b1)と鎖延長剤(b2)のモル比が10:1〜1:4の鎖延長成分、および
(c)450〜10000g/molの数平均分子量および少なくとも1.8乃至多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子の平均数を有する少なくとも1つのポリオール成分
を反応させることを含む方法によって製造され、成分(a)におけるイソシアネート基と成分(b)および(c)におけるイソシアネート反応性基の比が0.9:1〜1.1:1である、ポリウレタン。
【請求項2】
前記方法は、(a)、(b)および(c)を、触媒(d);ポリウレタンを基準として0.1〜10重量%の量の光安定剤(e);添加剤および補助物質(f);および連鎖停止剤(g)からなる群から選択される1以上のさらなる成分の存在下に反応させることを含んでなる、請求項1に記載の光安定性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリオール成分は450〜6000g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載の光安定性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリオール成分は600〜4500g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載の光安定性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
ジイソシアネート成分は30mol%までの第2の脂肪族ジイソシアネートをさらに含んでなる、請求項1に記載の光安定性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記少なくとも1つの鎖延長剤(b2)は、1,2−エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールおよびこれらの混合物からなる群から選択される1以上のジオールを含んでなる、請求項1に記載の光安定性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
10%未満のASTM D−1003ヘーズ値を有する光安定性熱可塑性ポリウレタンであって、
(a)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび30mol%までの第2の脂肪族ジイソシアネートを含んでなるジイソシアネート成分、
(b)(b1)1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、および
(b2)1,2−エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの鎖延長剤
からなる、鎖延長剤(b1)と鎖延長剤(b2)のモル比が10:1〜1:4の鎖延長成分、および
(c)600〜4500g/molの数平均分子量および少なくとも1.8乃至多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子の平均数を有する少なくとも1つのポリオール成分
を反応させることを含む方法によって製造され、成分(a)におけるイソシアネート基と成分(b)および(c)におけるイソシアネート反応性基の比が0.9:1〜1.1:1である、ポリウレタン。
【請求項8】
請求項1に記載のポリウレタンを含んでなる、光安定性透明成形品。
【請求項9】
請求項7に記載のポリウレタンを含んでなる、光安定性透明成形品。
【請求項10】
光安定性透明成形品の製造方法であって、
(i)請求項1に記載のポリウレタンを供給する工程、および
(ii)該ポリウレタンを射出成形する工程
を含んでなる方法。
【請求項11】
光安定性透明成形品の製造方法であって、
(i)請求項1に記載のポリウレタンを供給する工程、および
(ii)該ポリウレタンを押出す工程
を含んでなる方法。
【請求項12】
光安定性透明成形品の製造方法であって、
(i)請求項7に記載のポリウレタンを供給する工程、および
(ii)該ポリウレタンを射出成形する工程
を含んでなる方法。
【請求項13】
光安定性透明成形品の製造方法であって、
(i)請求項7に記載のポリウレタンを供給する工程、および
(ii)該ポリウレタンを押出す工程
を含んでなる方法。

【公開番号】特開2009−173931(P2009−173931A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−12988(P2009−12988)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】