説明

低下した粘度を有するタンパク質/カチオン性ポリマー組成物

本発明は、タンパク質成分、アゼチジニウムで官能基化されたポリマー成分および粘度調整成分を含む接着剤組成物を開示する。好ましいタンパク質は大豆タンパク質であり、粘度調整成分は好ましくは亜硫化物塩の還元剤、チオール、またはこれらの組合せである。本発明は、高い固形分濃度で、低い粘度の接着剤処方を提供する。本発明は、基材および本発明の接着剤組成物を含む複合体、ならびに複合体を作製する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低下した粘度、および改善した粘度安定性を有する、タンパク質-ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質をベースとする接着剤は、世に知られている最も古い接着剤の一つである。タンパク質を含有する大豆粉(soy flour)から誘導される接着剤は、1920年代の間に、初めて一般的に使用される状態になった(米国特許第1813387号、第1724695号および第1994050号)。接着剤における使用に好適な大豆粉は、大豆からいくらかまたはほとんどの油を除去し、続けて非常に細かい大豆粉にすりつぶされる、残りの大豆の粗い粉末(soy meal)を得ることによって得られており、今でも得られている。典型的には、粉砕された大豆から主要な非極性油を抽出するためにヘキサンが使用されるが、押出/抽出方法も油の除去に好適な方法である。得られた大豆粉は、その後アルカリ剤で変性され(つまり、タンパク質の二次、三次および/または四次構造が、結合可能な追加の極性官能基に触れさせるため、置換され)、ある程度、加水分解されて(つまり共有結合が破壊されて)乾燥条件下での木材の結合のための接着剤が得られる。しかしながら、これらの初期の大豆の接着剤は、弱い耐水性を示し、これらの使用はインテリア用途に厳しく制限されている。産業において、低減されたホルムアルデヒドの放出を有するなどの、より環境に優しい製品を製造する要求が存在する。
【0003】
最近、アミン-エピクロロヒドリンポリマー(AEポリマー)が、木製品のための接着剤として、タンパク質と組み合わせて使用されてきた(米国特許第7060798号および第7252735号、米国特許出願第2008/0021187号および第2008/0050602号)。
【0004】
この接着剤の系の課題の1つは、扱いやすい粘度を有する処方を開発することである。高い粘度の系は、扱うのが難しい。これらはポンプ能力が低く、接着剤を広げるのが難しく、均一に広げられた基材上の接着剤の層を得るのが難しい。高い粘度の系は、資本コストの高い進行性キャビティポンプ(progressive cavity pump)を必要とするかもしれず、高いトルクを扱うために設計された攪拌機を有する、特殊な混合および貯蔵タンクを必要とし得る。ロールコーターを使用して接着剤を塗布しようとする場合、高い粘度は前縁/後縁の問題をもたらし得る。この問題の解決には、全体的に新しいロールコーターを必要とするか、または同様に高価な特別に設計されたロールを必要とする、大きな直径のロールを必要とする。ロールコーティングの問題に取り組むことに加えて、低い粘度の処方は、接着剤をスプレーし、および/または高い固形分レベルで使用することができる。接着剤処方をスプレーすることで、パーティクルボード(PB)、配向性ストランドボード(OSB)、チップボード、フレークボード、高密度ファイバーボードおよび中密度ファイバーボードなどの用途において使用することができる。より高い固形分は、結合の品質およびタックにおいて改善を提供することができ、接着剤中の低減された水の量により、低いレベルの水分を有する木製品を提供することができる。高い固形分レベルは、これらの処方の低い含水量が、加熱および圧力条件下の木質複合材の製造における蒸気のオフガスの結果としての「ブロー(blows)」の傾向を低減するという点においても望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1813387号
【特許文献2】米国特許第1724695号
【特許文献3】米国特許第1994050号
【特許文献4】米国特許第7060798号
【特許文献5】米国特許第7252735号
【特許文献6】米国特許出願第2008/0021187号
【特許文献7】米国特許出願第2008/0050602号
【特許文献8】米国特許第3607860号
【特許文献9】米国特許第3635726号
【特許文献10】米国特許第4038431号
【特許文献11】米国特許第4214009号
【特許文献12】米国特許第4349576号
【特許文献13】米国特許第4608265号
【特許文献14】欧州特許出願EP 0969056A1号
【特許文献15】米国特許第3227615号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】U. Kalapathy、N.S. Hettiarachchy、D. Myers、K.C. Rhee、JOACS、73(8)、p 1063
【非特許文献2】H. H. Espy “Alkaline-Curing Polymeric Amine-Epichlorohydrin Resins” in Wet Strength Resins and Their Application、L. Chan、Ed.、p. 29、TAPPI Press、Atlanta GA (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘度を低下させる添加剤が非常に望まれている。しかしながら、粘度調整剤は、接着特性を悪化させ得る。無機塩またはいくつかの酵素の使用は、大きく粘度を低下させるが、これら両方の使用はしばしば悪化した接着性能をもたらす。亜硫酸塩およびチオールなどの求核である試薬の使用は、AE樹脂と好ましく反応し、性能の悪化を導くかもしれないため、困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンパク質成分、アゼチジニウムで官能基化されたポリマー成分および粘度調整成分を含む接着剤組成物に関する。本発明は、基材および本発明の接着剤組成物を含む複合体、ならびに複合体を製造する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、タンパク質成分、アゼチジニウムで官能基化されたポリマー成分および粘度調整成分を含む接着剤組成物に関する。
【0010】
驚くべきことに、硫黄ベースの低下剤から選択される粘度調整成分の含有が、接着強度を保つ一方、十分に粘度を低下させることをもたらし、十分な商業的に有利な便益を提供することが発見された。粘度を低下させることに加えて、これらの処方は経時で優れた粘度安定性を示す。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態は、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムまたは重亜硫酸ナトリウムを含む、アゼチジニウムで官能基化されたポリマー/大豆接着剤処方を提供する。
【0012】
タンパク質/ポリマー接着剤組成物の粘度は、全固形分レベルおよびpHに比例する。高い固形分レベルは、これらの処方の低い含水量が、加熱および圧力条件下の木質複合材の製造における蒸気のオフガスの結果としての「ブロー」の傾向を低減するという点においても望ましい。高い接着剤の固形分含有量は、より結合可能な固形分を基材に塗布することを含むことにより、改善された結合をもたらすことができる。接着剤処方における低い含水量(高い全固形分)は、木質複合材の製造のための温度および硬化時間を低減することができ、これらの両方は経済的な節約を提供する。最終製品の最終含水量は、合板および工学的木質フローリング(engineered wood Flooring、EWF)のための、広葉樹合板&単板協会規格/アメリカ規格協会ANSI /HPVA EF 2002標準により、重要となり得る。木製品の最終含水量は、固形分/塗布される接着剤の量によって大きく制御される。より高い固形分の接着剤は、時として改善された結合およびタックを提供する。
【0013】
現在の分野におけるAE/大豆処方では、所望の加工条件および結合特性を達成するための粘度で、固形分含有量とpHとのバランスをとることがしばしば困難である。本発明は、木質複合材製造者の要求を満たす、AE/大豆接着剤調製における自由度を大きくすることができる。
【0014】
本発明の接着剤は、経時で不変な粘度を示し、より長いポット寿命、より優れた接着特性の制御を可能にし、非常に優れた輸送の制御および所望の基材に対する接着剤組成物の塗布を提供する。
【0015】
タンパク質ベースの接着剤は、当分野においてよく知られている。本発明における使用のために好適なタンパク質には、カゼイン、血液の粗い粉末、羽毛の粗い粉末、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、グルテン、小麦グルテン(小麦タンパク質)、ホエータンパク質、ゼイン(トウモロコシタンパク質)、ナタネの粗い粉末、ヒマワリの粗い粉末および大豆タンパク質が含まれる。好ましくは、タンパク質は植物ベースのタンパク質である。
【0016】
大豆は、本発明のためのタンパク質の特に有用な供給源である。大豆は、大豆タンパク質の分離物、大豆の濃縮物、大豆粉、大豆の粗い粉末またはトーストされた大豆(toasted soy)の形態で使用することができる。接着剤における使用に好適な大豆粉は、大豆からいくらかまたはほとんどの油を除去し、続けて非常に細かい大豆粉にすりつぶされる、残りの大豆の粗い粉末を得ることによって得られる。典型的には、粉砕された大豆から主要な非極性油を抽出するためにヘキサンが使用されるが、押出/抽出方法も油の除去に好適な方法である。抽出された大豆フレーク中の残留ヘキサンは、典型的には2つの方法のうちの1つによって除去される: デソルベンタイザートースター(desolventiser toaster、DT)プロセス、またはフラッシュデソルベンタイザーシステム(flash desolventiser system、FDS)を使用することによる。DTプロセスの使用は、FDSプロセス(約70℃の最高温度; 1〜60秒の滞留時間)より、大豆の厳しい熱処理(約120℃の最高温度; 45〜70分の滞留時間)をもたらす。DTプロセスはより暗色の製品をもたらし、典型的には大豆の粗い粉末またはトーストされた大豆として表される。これらの用語は、DT法によって加工された大豆製品を表すために、同じ意味で使用される。
【0017】
大豆製品のタンパク質部分の水中に溶解または分散する能力は、タンパク質分散性指数(Protein Dispersibility Index、PDI)試験によって測定される。この試験は、以下に記載する通りである: 「この試験のために、大豆のサンプルをすりつぶし、水と特定の割合で混合し、特定の時間(10分間)規定の速度(7500rpm)でブレンドする。すりつぶした大豆および抽出物の窒素含有量を、燃焼法を使用して決定する。PDI値は、元の大豆の窒素含有量で抽出物の窒素含有量を割った商である」、2008年7月27日にアクセスしたIllinois Crop Improvement Association Inc.のウェブサイト(http://www.ilcrop.com/ipglab/soybtest/soybdesc.htm)。
【0018】
DTで加工された大豆製品のタンパク質部分は、より低いPDI値によって示される通り、FDS法によって加工された大豆製品よりも、水中の低い相溶性/分散性を有する。大豆の粗い粉末(トーストされた大豆)は、典型的には20以下のPDI値を有し、一方、FDSで加工された大豆製品は、20から90の範囲のPDI値を有する。
【0019】
大豆タンパク質は、一般的に、加工された大豆フレークを100〜200メッシュにすりつぶすことによって、大豆粉の形態(約50質量%のタンパク質、乾燥基準)で得られる。大豆粉をさらに精製し(通常、相溶性の炭水化物の溶媒抽出による)、乾燥基準で約65質量%のタンパク質を含む大豆タンパク質濃縮物を得ることができる。脱脂した大豆をさらに精製して大豆タンパク質の分離物(SPI)を生成することができ、これは乾燥基準で少なくとも約85質量%のタンパク質含有量を有する。
【0020】
タンパク質は、相溶性、分散性および/または反応性を改善するために前処理または変性されてもよい。大豆タンパク質は、製造されたまま使用してもよく、さらに変性して性能の向上を提供してもよい。その全体の内容を参照により本明細書に援用する米国特許第7060798号は、タンパク質を変性する方法およびその接着剤への組み込みを教示する。変性されたタンパク質または変性された大豆粉は、本発明で使用することができると意図される。
【0021】
タンパク質中のジスルフィド結合を開裂する還元剤の使用はよく知られており、この反応に影響する亜硫酸塩または重亜硫酸塩試薬の使用はよく研究されてきた。粘度、流動特性および大豆タンパク質の加工性を調整するための亜硫酸塩または重亜硫酸塩還元剤の使用は、植物タンパク質を変性して、肉または日用品の類似物として使用するための質感のよいタンパク質を準備する分野において、特によく知られている(米国特許第3607860号、米国特許第3635726号、米国特許第4038431号、米国特許第4214009号、米国特許第4349576号、米国特許第4608265号)。木材の接着剤としての、大豆タンパク質の分離物と組み合わせての亜硫酸塩の使用もよく知られており、大きく粘度を低下させることが示されてきた(U. Kalapathy、N.S. Hettiarachchy、D. Myers、K.C. Rhee、JOACS、73(8)、p 1063)。
【0022】
還元剤でタンパク質を処理することは、他の用途においてよく知られている。欧州特許出願EP 0969056A1号は、タンパク質および架橋剤から調製されたコーティングを記載しており、タンパク質は還元剤で変性されている。この発明において使用された架橋剤は、とりわけエピクロロヒドリンで変性されたポリアミン、エピクロロヒドリンで変性されたポリアミド、エピクロロヒドリンで変性されたポリアミドアミンまたはエピクロロヒドリンで変性されたアミンを含有する骨格のポリマーである。
【0023】
本発明における使用のための好ましい大豆の一種は、大豆粉、好ましくは20またはより高いPDIのものである。
【0024】
本発明のアゼチジニウムで官能基化されたポリマー成分は、典型的には第一級アミン、第二級アミンを含む水溶性物質であり、これらはエピクロロヒドリンで官能基化され、その後環化されてアゼチジニウム官能基を形成する。エピクロロヒドリンで官能基化され、本発明において使用されるいくつかのポリマーは、ポリアミドアミン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、キトサン、およびアミン-エピクロロヒドリンポリマーである。
【0025】
本発明のための好ましいアゼチジニウムで官能基化されたポリマーの一つは、アミン-エピクロロヒドリンポリマーである。特に有用なこのようなポリマーの一つは、Hercules Incorporated、Wilmington、DEから入手可能なHercules CA1400である。アミン-エピクロロヒドリンポリマー(AEポリマー)は、主に紙製品のための湿潤強化剤(wet-strengthening agent)としての使用のために、当分野においてよく知られている。
【0026】
ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンポリマー(PAEポリマー)は、アミン-エピクロロヒドリンポリマー(AEポリマー)の一種である。これらのポリマーは、骨格中の反応性アゼチジニウム官能基およびアミド官能基の存在によって特徴付けられる。これらの熱硬化性物質は、反応性架橋部分としてのアゼチジニウム官能基による。この発明における使用のために特によく適合するPAEポリマーの一種は、米国特許出願第2008/0050602号に開示されている。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、アゼチジニウムで官能基化されたポリマーは、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンポリマーである。
【0028】
AEポリマーは、約10%から約50%の範囲の固形分含有量の水性溶液として製造される。
【0029】
AEポリマーとタンパク質の組合せに基づく接着剤が、かなり最近開発されている。米国特許第7252735号は、乾燥重量基準で、PAEポリマーに対するタンパク質の比が1:1から約1000:1、より詳しくは約1:1から約100:1の範囲のPAEポリマーおよび大豆タンパク質の使用を開示している。これらの接着剤は、大豆タンパク質のみに基づく接着剤と比較して、湿潤条件下で大きく改善された接着特性を備える。これらの接着剤の別の有益な特徴は、これらはホルムアルデヒドを加えず、したがってこれらで作られた木製品においてホルムアルデヒドの放出に寄与しないことである。
【0030】
タンパク質組成物における還元剤の使用はよく知られており、接着剤としてのタンパク質と組み合わせてのAEポリマーの使用は知られているが、AEポリマーを含有する接着剤組成物中の亜硫酸塩または重亜硫酸塩などの還元剤の組合せは、当業者にとって必ずしも合理的な組成物ではない。これは、亜硫酸塩および重亜硫酸塩などの還元剤がAEポリマーのアゼチジニウム官能基と反応することができ、架橋剤として効果がない状態にするからである。この反応は、製紙用途におけるAE湿潤強度樹脂性能への亜硫酸イオンの分解の影響に関するものとして、Espyによって開示された(H. H. Espy “Alkaline-Curing Polymeric Amine-Epichlorohydrin Resins” in Wet Strength Resins and Their Application、L. Chan、Ed.、p. 29、TAPPI Press、Atlanta GA (1994))。アゼチジニウム官能基との亜硫酸イオンの反応は、化学反応式1において示されている。
【0031】
【化1】

【0032】
このような反応の証拠は、実施例63〜66を通して示されている。これらの実験において、SBSをPAE樹脂に加え、NMRスペクトロスコピーを使用して、室温において、経時で官能基をモニターした。表15に示された結果は、中性またはそれより高いpHにおける官能基は、迅速に少なくとも20%まで還元されることを示した。これは、本発明において概説された範囲内を含むSBSレベルを使用して行われた。PAE樹脂は、重亜硫酸塩還元後のパーマネント状態における毛髪を架橋する点で効果的であることが知られているが(米国特許第3227615号)、PAEおよび重亜硫酸ナトリウムの前もって調製された溶液は、この目的には許容されない。パーマネントされた毛髪をセットする、毛髪のタンパク質との架橋を必要とする処方を形成するよりむしろ、この組合せは一時的な毛髪のセッティングのためのみに好適なイオン結合する処方が得られる。この理由により、重亜硫酸ナトリウムとタンパク質の溶液が耐水性の接着剤組成物をもたらすことは予想されない。さらにこの点を詳しく述べると、アゼチジニウム官能基と重亜硫酸塩の知られている反応は、これらの2種が熱硬化性ポリマーとして働くことができない物質をもたらすか、または熱硬化性接着剤として使用する場合、あまり優れない特性を有する。
【0033】
驚くべきことに、大豆粉、PAEポリマーおよびメタ重亜硫酸ナトリウムの組合せは、優れた湿潤および乾燥強度特性を有する安定な接着剤組成物を提供し、合板のためのANSI/HPVA HP-1-2004-4.6 3-サイクル浸漬試験に合格することができることが分かった。
【0034】
本発明の粘度調整成分は、接着剤組成物に、改善された粘度特性などの有益な特性を与える。粘度調整成分は、亜硫酸塩、重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩であり得る。粘度調整剤は、無機還元剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸リチウム、重亜硫酸アンモニウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸リチウムまたはメタ重亜硫酸アンモニウムから選択することもできる。粘度調整剤は、有機還元剤、例えばチオール、およびアルデヒドの重亜硫酸塩付加物を含むものでもあり得る。好適なチオールには、これに制限されないが、システイン、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、およびジチオエリトリトールが含まれる。好適なチオールのいくつかの分類には、アルキルチオール、例えばメタンチオール、エタンチオール、1-プロパンチオール、1-ブタンチオール、1-ペンタンチオール、1-オクタンチオール、2-プロパンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、またはアリルメルカプタン; ジチオール、例えばエタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,5-ヘキサンジチオール、ジチオトレイトール、またはジチオエリトリトール; ヒドロキシチオール、例えば2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-1-プロパノールまたは3-メルカプト-2-ブタノール; およびチオエーテル、例えば1-メルカプトエチルエーテルが含まれる。
【0035】
本発明は、同様の固形分含有量を有する先行技術と比較して、低い粘度の値および改善された粘度の安定性を有する組成物を提供する。これらの特性は亜硫酸塩およびチオールから構成される還元剤を含むことによって達成される。特に有効な添加剤の一つは、重亜硫酸ナトリウム/メタ重亜硫酸ナトリウム(SBS)である。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態は、20以上のタンパク質分散性指数(PDI)を有する大豆粉と、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンポリマー(PAEポリマー)と、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウムとを含む。より好ましい実施形態は、70以上のPDIを有する大豆粉と、PAEポリマーと、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウムとを含む。最も好ましい実施形態は、80以上のPDIを有する大豆粉と、PAEポリマーと、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウムとを含む。
【0037】
本発明の別の実施形態は、尿素で変性した大豆粉分散体中の粘度調整添加剤の使用である。尿素で変性した大豆分散体は、米国特許出願第2008/0021187号に記載されている。粘度調整剤の使用は、粘度調整剤の使用なしで達成されたものより、これらの組成物においてより低い粘度を提供し、より高い固形分値を有する安定な分散体を調製することを可能にする。
【0038】
(本発明の組成物の調製および使用)
本発明の組成物は、水性媒体中で成分を組合せ、よく混合することによって調製される。粘度調整剤(亜硫酸塩の還元剤、チオール)は、混合プロセスの任意の時点で加えることができる。粘度調整剤を加える時点は、使用するタンパク質の特定の種類に依存してもよい。典型的には、混合/添加プロセスの間の粘度の低下を促進するため、タンパク質の前に加えることが望ましい。全ての処方の成分が加えられた後、これらは全体的に混合されて均一な物質を生成する。さらなる材料、例えば非水性希釈剤または溶剤、消泡剤、界面活性剤およびpH調整のために使用される酸あるいは塩基を、処方に加えることができる。本発明者らは、接着剤の安定性がpHに非常に依存することが分かった。7.0より大きいpH値において、接着剤の安定性は問題になる。最初の粘度は十分に低下されているが、7を超えるpH値において、数時間の間に劇的に粘度が増加し得る。本発明の組成物の粘度は、約4.5から7.5未満、より好ましくは約5から7未満、最も好ましくは約5.5から約6.5の範囲である。より低いpH値はより優れた粘度安定性を提供するが、pHが低すぎると接着性能が低下する。
【0039】
組成物のアゼチジニウムで官能基化されたポリマーに対するタンパク質の比は、乾燥質量に基づいて、1:1から約1000:1、好ましくは約1:1から約100:1、より好ましくは1:1から約15:1、最も好ましくは1.5:1から7:1の間で変化し得る。
【0040】
組成物の粘度調整成分は、約0.001質量%の組成物のタンパク質成分から約10質量%の組成物のタンパク質成分を含む(100000部のタンパク質に対して1部の調整剤から10部のタンパク質に対して1部の調整剤)。好ましくは、粘度調整成分は、組成物のタンパク質成分の質量に基づいて、約0.025質量%から約5.0質量%含み得る。より好ましくは、粘度調整成分は、組成物のタンパク質成分の質量に基づいて、約0.025質量%から約3.0質量%含み得る。
【0041】
組成物の全固形分含有量は、5%から75%、より好ましくは25%から65%、最も好ましくは30%と60%の間の範囲であり得る。好ましい一実施形態において、組成物の固形分含有量は25%より大きく、別の好ましい実施形態において、固形分含有量は30%より大きい。
【0042】
組成物の粘度は、成分の比率および全固形分に依存する。粘度の制約は、最終的に装置に依存する。つまり、高い粘度の物質はより強力かつよりコストの高いミキサー、ポンプおよび加工装置を必要とする。好ましい粘度は200000cps(センチポアズ)未満、より好ましくは150000未満、さらにより好ましくは100000未満である。粘度は1000から200000cps、より好ましくは2000から100000cps、最も好ましくは2000から50000cpsの間の範囲であり得る。
【0043】
本発明の別の実施形態は、工業用の木製品および他の複合体物質を製造するためのこれらの組成物の塗布である。組成物は、様々な方法、例えばローラーコーティング、ナイフコーティング、押出、カーテンコーティング、フォームコーターおよびスプレーコーターによって塗布することができ、この1つの例は、回転するディスクによる樹脂の塗布である。異なる等級および種類の塗布で要求は変化するが、これらの塗布技術を使用する場合、特に接着剤処方をスプレーするために、より低い粘度はたいてい便益がある。
【0044】
リグノセルロース基材に加えて、接着剤組成物を、ガラスウール、ガラスファイバーおよび他の無機物質などの基材に使用することができる。接着剤組成物を、リグノセルロースと無機基材との組合せで使用することもできる。
【実施例】
【0045】
実施例1〜4: 様々な粘度調整剤の影響
PAE/大豆接着剤処方を、重亜硫酸ナトリウム「SBS」なし、全大豆質量に基づいて0.5%質量の重亜硫酸ナトリウム、および大豆質量に基づいて0.5質量%のNaClで作製した(表1)。重亜硫酸ナトリウムはAldrich Chemical Co.、Milwaukee WIから入手し、>99%の純度を有し、塩化ナトリウムはJ.T. Baker、Phillipsburg、NJから入手し、>99%の純度であった。全ての処方を蒸留水(23g)、20%の固形分含有量のKymene(登録商標) 624 PAEポリマー(11.25g、Hercules Incorporated.、Wilmington DEから入手可能)を組み合わせて調製し、プロペラタイプの混合ブレードを装備したオーバーヘッド攪拌機(overhead stirrer)で、2分間900rpmで混合した。その後、Prolia(登録商標) 100/90の大豆粉(15.75g、Cargill Inc.、Minneapolis、MNから入手可能)の量を攪拌された混合物に加え、攪拌を5分間900rpmで続けた。この時点で、(もしあれば)添加剤を加え、さらに3分間混合し、水酸化ナトリウムの50%水性溶液を使用して最終的にpHを約7.0に調整した。その後、処方の粘度を測定し、経時でモニターした。
【0046】
粘度を、実施例1〜4において、1.5rpmにおけるスピンドル#4を使用して、Brookfield LV DV-E粘度計で測定した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0047】
これらのデータは、重亜硫酸ナトリウムを加えることによって、PAE/大豆接着剤の粘度が十分に低下することを示す。この効果は、大豆の質量に基づいて0.5質量%の塩化ナトリウムを加えた比較例によって提供されたいずれの粘度調整よりも非常に強い。実際、塩化ナトリウムを加えた影響はわずかである。この粘度への影響は、重亜硫酸ナトリウムをPAEポリマーが存在しない大豆粉に加えた場合に見られる粘度プロファイルとは顕著に対照的である。塩化ナトリウムの場合において、粘度は対照サンプルよりも大きく低下し、経時で低下し続ける。いくつかの時点において、粘度が低下し続けるにつれて、接着性能の低下が予想される。PAEポリマーの存在下において、亜硫酸塩と大豆粉との組合せは、対照的に、最初に粘度の低下を示し、さらにわずかな粘度の低下を示したが、PAEを加えないサンプルで見られたほど劇的ではない。この予測できない経時の粘度の不変性は、接着特性を良好に制御することができ、非常に優れた輸送の制御および所望の基材への接着組成物の塗布を提供するという点において、これらの接着剤処方の最終使用者に便益がある。つまり、大豆粉、PAE樹脂および重亜硫酸ナトリウムの組合せは、経時で安定なより低い粘度を有する製品を提供する。対照処方は経時で増加する高い粘度を有し、一方、大豆粉/重亜硫酸ナトリウムは低下した粘度を示すが、この製品の粘度は経時で継続的に低下する。低下した粘度の特性および粘度の安定性は、大豆ベースの接着剤を使用する製造者にとって、大きな利点である。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例5〜10: 様々な粘度調整剤の影響
作製されたPAE/大豆接着剤処方は、添加剤なしで、重亜硫酸ナトリウムの量を変化させ、システインの量を変化させ、1つのレベルのAlcalase(登録商標)酵素で作製した(表2)。重亜硫酸ナトリウムはAldrich Chemical Co.、Milwaukee WIから入手し、>99%の純度を有していた。L-システインはAldrich Chemical Co.、Milwaukee WIから入手し、>97%の純度を有していた。Alcalase(登録商標) 2.4LはNovozymes、Franklinton、NCからであった。全ての処方を蒸留水(23g)、Kymene(登録商標) 624(11.25g、Hercules Incorporated.、Wilmington DEから入手可能)を組み合わせて調製し、プロペラタイプの混合ブレードを装備したオーバーヘッド攪拌機で、2分間900rpmで混合した。この時点で、(もしあれば)添加剤を加えた。添加剤の割合は、100%活性として処理されたAlcalase(登録商標)を有する大豆の質量に基づいている。その後、Prolia(登録商標) 100/90の大豆粉(15.75g、Cargill Inc.、Minneapolis、MNから入手可能)の量を攪拌された混合物に加え、攪拌を5分間900rpmで続けた。水酸化ナトリウムの50%水性溶液を使用して最終的にpHを約7.0に調整した。その後、前の実施例に記載した通りに処方の粘度を測定した。
【0050】
【表2】

【0051】
データは、無機および有機の両方の還元剤がベースの接着剤の粘度を低下させる点で効果的であることを示す。添加剤のレベルの増加は、粘度を低下させるさらなる効果を有する。標準のAlcalase(登録商標)酵素も接着剤の粘度を低下させる点で効果的である。
【0052】
実施例5〜10からの接着剤を、Adhesive Evaluation System Inc.、Corvallis、ORからの自動結合評価システム(ABES)を使用して試験した。サンプルを、0.5cm重ねた基材として、カエデのベニアを使用して試験した。乾燥した接着剤のサンプルを、2分間120℃でプレスし、5秒間強制空気で冷却し、冷却工程後すぐにせん断強度を試験した。湿潤した接着剤サンプルは、すぐに試験する代わりに、ABESユニットから取り外し、水中に1時間浸漬し、その後ABESユニットを交換して、湿っている間に試験されること以外は同一であった。それぞれの接着剤に対して試験した乾燥および湿潤接着剤の結果を、表2に示し、かつ図2に示す。プロットは、1を足したまたは引いた標準偏差を表すエラーバーと一緒に5つのサンプルの平均を示す。
【0053】
引張せん断の結果は、どちらの還元剤の使用も湿潤/乾燥の引張りに十分な効果を有さないことを示す。しかし、Alcalase(登録商標)酵素は、接着剤に十分に不利な効果を有し、湿潤引張り強度に33パーセントの低下をもたらした。
【0054】
実施例11〜16: 大豆粉のタイプ
【0055】
【表3】

【0056】
これらのサンプルは全て、Hercules Incorporated、Wilmington DEから入手可能であり、20%の固形分含有量を有するCA1000 PAEポリマー、およびAldrich Chemical Company、Milwaukee WIから、>99%の純度で得られる重亜硫酸ナトリウムを使用して調製した。この研究において使用した大豆粉は、両方ともCargill Inc.、Minneapolis MNから入手可能な、Prolia(登録商標) 100/90の脱脂した大豆粉およびProlia(登録商標) 200/20の脱脂した大豆粉、ならびにArcher-Daniels Midland (ADM)、Decatur ILから入手可能なKaysoy(登録商標)のトーストされた大豆粉であった。処方を、バッチの質量に基づいて、64質量%の水、20%の固形分含有量を有する22.5質量%のCA1000 PAEポリマーおよび31.5質量%の大豆ならびに0.5質量%のメタ重亜硫酸ナトリウムの処方で作製した。処方の詳細およびこれらの特性を表3に示す。これらの成分を、水、重亜硫酸ナトリウム、CA1000、大豆の順番で加えた。サンプルの粘度を、表3に示したスピンドル/rpmの組合せを使用して前の実施例に記載した通りに測定した。
【0057】
実施例17から24: 粘度低下のための亜硫酸ナトリウムの使用
一連の大豆粉/PAE樹脂接着剤の処方を、粘度低下剤として亜硫酸ナトリウムを使用して調製した。これらの処方を、600mLのステンレス鋼のビーカー中で、129.1gの水、0.42gのAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および102.4gの20%の固形分含有量を有するHercules CA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を混合することによって調製した。その後、亜硫酸ナトリウム(98+%、ACS Reagent、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を加え、混合物を亜硫酸ナトリウムが溶解するまで(約1〜2分)攪拌した。これらの実施例において使用した亜硫酸ナトリウムの量を表4に示す。その後、108.0gの量のProlia 200/90の大豆粉を攪拌された混合物に加え、8分間1000rpmで攪拌した。その後、pHを25%のNaOHで7.2に調整した。様々な時間におけるこれらの処方の粘度を表4に示す。粘度の値を、表4に示したrpm値で#6スピンドルを使用して、Brookfield RV粘度計で測定した。粘度のサンプルは、全て読み取る前に30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0058】
【表4】

【0059】
これらの結果は、亜硫酸ナトリウムのレベルの増加が、より低い粘度レベルをもたらすことを示す。しかしながら、亜硫酸ナトリウムを加えて調製した処方は、対照サンプルよりも優れた粘度安定性をいつも示すわけではない。実施例18、19、20および21は、十分に低い初期の粘度を有したにもかかわらず、4時間で対照サンプルより全て高い粘度を有した。
【0060】
実施例25〜30: 粘度安定性へのpHの影響
一連の大豆/PAEポリマー接着剤処方を、粘度安定性へのpHの影響を調べるために調製した。サンプル25および26を、固形分含有量36%で調製した。600mLのステンレス鋼のビーカーに、83.77gの水、0.28gのAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および65.00gの20%の固形分含有量を有するHercules CA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を加えた。これらの成分をよく混合した後、メタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を加え、その後、混合物をメタ重亜硫酸ナトリウムが溶解するまで(約1〜2分)攪拌した。これらの実施例において使用したメタ重亜硫酸ナトリウムの量を表5に示す。その後、68.42gの量のProlia 200/90の大豆粉(Cargill Inc.、Minneapolis MN)を攪拌された混合物に加え、8分間1000rpmで攪拌した。実施例25のpHを7.2および実施例26のpHを6.5に調整するために、25%のNaOH溶液を使用した。実施例27および28を、処方において77.68gの水を使用した以外は、同様の方法で調製した。25%のNaOHで、実施例27はpHを7.2に調整し、実施例28はpHを6.5に調整した。実施例29および30を、処方において71.92gの水を使用した以外は、同様の方法で調製した。25%のNaOHで、実施例29はpHを7.2に調整し、実施例30はpHを6.5に調整した。様々な時間におけるこれらの処方の粘度を表5に示す。粘度の値を、#6スピンドルを使用して、Brookfield RV粘度計で測定した。粘度のサンプルは、全て読み取る前に30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0061】
【表5】

【0062】
予想した通り、粘度は固形分レベルが増加するにつれて増加した。しかしながら、非常に驚くべきことに、SMBSで調整された接着剤処方は、pH7.2と比較してpH6.5において非常に優れた粘度安定性を有した。pH7.2のサンプルは、数時間後に100000を超える粘度の値を有したが、一方、pH6.5のサンプルの粘度の値は、全て数時間後に100000を下回っていた。
【0063】
実施例31〜33: パネルを作製するために使用された、SMBSレベルを変化させた接着剤処方
【0064】
SMBSで調整された大豆/PAEポリマー処方を、SMBSレベルを変化させて調製した。600mLのステンレス鋼のビーカーに、実施例31のために137.24gの水、実施例32のために138.8gの水、および実施例33のために140.39gの水を加えた。その後、それぞれの処方に0.44gの量のAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および104.76gの20%の固形分含有量を有するHercules CA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を加えた。これらの成分をよく混合した後、メタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を加え、混合物を亜硫酸ナトリウムが溶解するまで(約1〜2分)攪拌した。これらの実施例において使用した重亜硫酸ナトリウムの量を表6に示す。その後、115.79gの量のProlia 200/90の大豆粉(Cargill Inc.、Minneapolis MN)を攪拌された混合物に加え、8分間1000rpmで攪拌した。pHを6に調整するために、25%のNaOH溶液を使用した。粘度を、表5に示したスピンドル/rpmの組合せを使用して、Brookfield RV粘度計を使用して測定した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0065】
これらの処方を、3層のポプラの合板パネルを調製するために使用した。パネルは、12”×12”の寸法を有した。接着剤の塗布速度は、20〜22g/ft2であった。これらのパネルを製造する際に、密着組み立て時間(closed assembly time)または冷却プレス時間(cold pressing time)はかからなかった。パネルを、実施例31a、32aおよび33aは225°F(107℃)で、実施例31b、32bおよび33bは235°F(113℃)で、3分間150psiでホットプレスした。パネルを試験の前に、74°F/50%RHの部屋中に48時間の条件に保った。パネルは、ANSI/HPVA HP-1-2004-4.6手順を使用して、3-サイクルの浸漬性能を試験した。3-サイクルの浸漬試験を、条件ごとに4つの試験片を使用して行った。せん断接着結合強度を、ASTM D-906手順を使用して測定した。乾燥せん断値は4つの試験サンプルの平均であり、湿潤せん断値は6つのサンプルの平均である。
【0066】
【表6】

【0067】
この研究のために、パネルの製造条件(密着組み立て時間なし、冷却プレスなし、比較的低い温度および短いプレス時間)を選択して、試験処方間の優れた差別化を提供した。これらの結果は、SMBSのレベルが接着特性に非常に十分な効果を有することができることを示す。実施例31(最も低いレベルのSMBS)の接着剤で作製したパネルは、3サイクル浸漬試験で0%の合格スコアを有さない唯一のパネルであった。湿潤せん断強度はSMBSレベルに反比例し、最も高いレベルのSMBSはほとんど湿潤強度をもたらさなかった。硬化温度を高くすることは、パネルの特性を改善した。高い温度および長いプレス時間でさえ、特性をさらに改善しなかった。大豆に対するPAEポリマーの比を増加させることも、密着組み立ておよび冷却プレス工程を含むと同様、パネルの特性を改善した。これらの実施例は、最適な接着性能、特に湿潤強度が最小のレベルのメタ重亜硫酸ナトリウムの粘度調整添加剤を使用した場合に達成されることを例示する。
【0068】
実施例34: 比較例
実施例34(SMBSなし)を、600mLのステンレス鋼のビーカーに、104.68gの水、0.25gのAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および90.74gの20%の固形分含有量を有するHercules CA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を混合し、約2分間よく混合することによって調製した。その後、54.58gの量のProlia 200/90の大豆粉(Cargill Inc.、Minneapolis MN)を攪拌された混合物に加え、8分間1000rpmで攪拌した。pHを、2.2gの50%のNaOH溶液を使用して、5.24から7.19に調整した。この接着剤処方の粘度は、20rpmにおいて#7スピンドルを使用してRV粘度計で測定して、25200cPだった。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0069】
実施例35: SMBSで調整した大豆/PAEポリマー処方
SMBSで調整した大豆/PAEポリマー接着剤処方を、類似の粘度を有するSMBSを含まない大豆/PAEポリマー接着剤処方(実施例34)と比較した。実施例35を、600mLのステンレス鋼のビーカーに、64.50gの水、0.25gのAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および115.05gの20%の固形分含有量を有するHercules CA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を混合し、約2分間よく混合することによって調製した。1.25gの量のメタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を加え、ビーカーの含有物を2分間攪拌した。その後、69.20gの量のProlia 200/90の大豆粉(Cargill Inc.、Minneapolis MN)を攪拌された混合物に加え、8分間1000rpmで攪拌した。pHを、3.4gの50%のNaOH溶液を使用して、5.16から6.98に調整した。この接着剤処方の粘度は、20rpmにおいて#7スピンドルを使用してRV粘度計で測定して、18800cPだった。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0070】
実施例34および35の処方を、3層のカエデおよびポプラの合板パネルを調製するために使用した。パネルは、12”×12”の寸法を有した。接着剤の塗布速度は、20〜22g/ft2であった。密着組み立て時間は10分間であり、パネルを5分間100psiで冷却プレスした。パネルを、250°Fで、4分間150psiでホットプレスした。パネルを試験の前に、74°F/50%RHの部屋中に48時間の条件に保った。パネルは、ANSI/HPVA HP-1-2004-4.6手順を使用して、3-サイクルの浸漬性能を試験した。3-サイクルの浸漬試験を、条件ごとに4つの試験片を使用して行った。せん断接着結合強度を、ASTM D-906手順を使用して測定した。乾燥せん断値は4つの試験サンプルの平均であり、湿潤せん断値は6つのサンプルの平均である。これらで作製された処方およびパネルの特性を、表7に示す。
【0071】
【表7】

【0072】
接着剤処方におけるSMBSの使用は、固形分を28%から36%に増加させることができ、一方、低い粘度を有することができる。パネル試験の結果は、SMBSで調整された処方は、SMBSを加えない同様のPAE/大豆接着剤処方と同等またはより優れた結果を示している。
【0073】
実施例36: 時間を変化させて作製したパネル(接着剤の経時の影響)
大豆/PAE/SMBS処方を、600mLのステンレス鋼のビーカーに、116.11gの水、0.45gのAdvantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および207.08gの20%の固形分含有量を有するCA1920A PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を加え、約2分間よく混合することによって調製した。124.56gの量のProlia 200/90の大豆粉をビーカーの含有物に加え、混合物を8分間1000rpmで攪拌した。この時点で、2.25gのメタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)をビーカーに加え、混合物をさらに2分間1000rpmで攪拌した。その後、混合物のpHを、5.90gの50%のNaOHを使用して、5.18から7.00に調整した。この接着剤調製物は、6rpmにおいて#4スピンドルを使用してLV Brookfield粘度計で測定して、27500cPの粘度を有した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0074】
3層のポプラおよびカエデのパネルを、この実施例36の接着剤で、接着剤を作製した後の時間を変化させて作製した。第一のセットのパネルを接着剤の調製後すぐに作製し、第二のセットのパネルを接着剤の調製の3時間後に作製した。21〜22g/ft2の広がり速度を、パネルの調製において使用した。パネルを、10分間の密着組み立て時間、5分間の100psiでの冷却プレス、および4分間の250°F、150psiでのホットプレスを使用して作製した。パネルを試験の前に、74°F/50%RHの部屋中に48時間の条件に保った。パネルは、ANSI/HPVA HP-1-2004-4.6手順を使用して、3-サイクルの浸漬性能を試験した。3-サイクルの浸漬試験を、条件ごとに4つの試験片を使用して行った。せん断接着結合強度を、ASTM D-906手順を使用して測定した。乾燥せん断値は4つの試験サンプルの平均であり、湿潤せん断値は6つのサンプルの平均である。これらで作製された処方およびパネルの特性を、表8に示す。
【0075】
【表8】

【0076】
これらの実施例は、新鮮なSMBSで調整された接着剤または3時間経過後の接着剤で作製されたパネルで、測定されたパネルの特性のいずれにおいても、十分な差異がないことを示す。これは、重亜硫酸塩のアゼチジニウムとの反応が、これらの条件で接着性能を乱さないことを示す。
【0077】
実施例37〜44: SMBSを有するおよび有さないで、PAEポリマーレベルを変化させた処方
一連の接着剤処方を、SMBSを加える、または加えないで、PAEポリマーのレベルを変化させて調製した(SMBSを含まない処方は比較例)。これらの処方において使用した添加剤の量を、表9に示す。これらの処方を、600mLのステンレス鋼のビーカーに、水、Advantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および20%の固形分含有量を有するCA1000 PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)を加え、約2分間よく混合することによって調製した。Prolia 100/90の大豆粉(Cargill、Minneapolis MN)をビーカーの含有物に加え、混合物を8分間1000rpmで攪拌した。この時点で、メタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を示されたビーカーに加え、混合物をさらに2分間1000rpmで攪拌した。その後、混合物のpHを、石灰(酸化カルシウム、CaO)で8に調整した。
【0078】
【表9】

【0079】
これらの接着剤処方の特性を表10に示す。接着剤処方の粘度を、表10に示したスピンドル/rpmの組合せを使用してLV粘度計を使用して測定した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。
【0080】
これらの接着剤処方を、3層のポプラの合板パネルを調製するために使用した。接着剤を、ポプラの層に対して20〜22g/ft2のレベルで塗布した。10分間密着組み立て時間を、5分間の100psiでの冷却プレスと一緒に使用した。パネルを、250°Fで、4分間150psiでプレスした。パネルを試験の前に、74°F/50%RHの部屋中に48時間の条件に保った。パネルは、ANSI/HPVA HP-1-2004-4.6手順を使用して、3-サイクルの浸漬性能を試験した。3-サイクルの浸漬試験を、条件ごとに4つの試験片を使用して行った。せん断接着結合強度を、ASTM D-906手順を使用して測定した。乾燥せん断値は4つの試験サンプルの平均であり、湿潤せん断値は6つのサンプルの平均である。これらで作製された処方およびパネルの特性を、表10に示す。
【0081】
【表10】

【0082】
これらの結果は、接着剤処方におけるSMBSの使用は、十分な粘度の低下を提供することを示す。湿潤せん断強度の値は、接着剤処方におけるSMBSの存在下で、10から20%低下したことを示す。しかしながら、湿潤強度は、最も低い12.5%のPAE/大豆レベル以外の全ての場合において、3サイクルの浸漬試験に合格するに十分であった。結果はまた、湿潤せん断強度は、PAE/大豆レベルを増加させることによって増加することを示す。
【0083】
実施例45〜48: pH値を変化させた、SMBSで調整した処方
【0084】
一連のSMBSで調整した大豆/PAEポリマー接着剤処方を、pH値の範囲を変化させて調製した。これらの処方において使用した添加剤の量を、表11に示す。処方を、600mLのステンレス鋼のビーカーに、水、Advantage 357 Defoamer(Hercules Incorporated、Wilmington DE)および20%の固形分含有量を有するCA1920 PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)およびメタ重亜硫酸ナトリウム(>99%、ReagentPlus、Aldrich Chemical、Milwaukee WI)を加え、2分間よく混合することによって調製した。Prolia 200/70の大豆粉(Cargill、Minneapolis MN)をビーカーの含有物に加え、混合物を8分間1000rpmで攪拌した。この時点で、pHを適切な酸または塩基を使用して調整し、あるいは実施例47の場合にはpH調整を行わなかった。
【0085】
【表11】

【0086】
接着剤処方の粘度を、10rpmにおいて#6スピンドルを使用して、RV粘度計を使用して測定した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。3層のオークの合板パネルを、これらの実施例を使用して調製した。接着剤を、ポプラの層に対して20〜22g/ft2のレベルで塗布した。これらのパネルは、密着組み立て時間および冷却プレスなしの条件で調製した。パネルを、250°Fで、3分間150psiでプレスした。パネルを試験の前に、74°F/50%RHの部屋中に48時間の条件に保った。パネルは、ANSI/HPVA HP-1-2004-4.6手順を使用して、3-サイクルの浸漬性能を試験した。3-サイクルの浸漬試験を、条件ごとに4つの試験片を使用して行った。せん断接着結合強度を、ASTM D-906手順を使用して測定した。乾燥せん断値は4つの試験サンプルの平均であり、湿潤せん断値は6つのサンプルの平均である。これらで作製された処方およびパネルの特性を、表12に示す。
【0087】
【表12】

【0088】
試験処方間で優れた差異を提供するため、パネルの作製条件(密着組み立て時間なし、冷却プレスなしおよび短いプレス時間)を、この研究のために選択した。これらの結果は、pHが接着剤特性に非常に大きな影響を有することができることを示している。5未満のpH値を有する2つの接着剤処方は、3サイクル浸漬試験で0%の合格スコアを有した。pHが3.98のサンプル(実施例45)は、非常に低い湿潤せん断スコアを有した。pH値が5を超える接着剤処方(実施例47、pH = 5.43、pH調整剤なし、および実施例48、pH 6.96)は、3サイクル浸漬試験で100%の合格スコアであることが分かり、湿潤接着値は115psiであった。5.0より大きいおよび5.0未満の性能の差異は、サンプル47および48(pH > 5)がサンプル45および46(pH < 5)より4倍高いレベルのSMBSを有することを考えると、非常に顕著である。大豆に対するPAEポリマーの比を増加させることは、密着組み立て時間および冷却プレスを含む場合と同様、パネルの特性を改善させた。
【0089】
実施例49〜56: 粘度調整剤で調製された大豆分散体
表11において示された一連の大豆分散体を、SBSまたはシステインを使用して作製した。これらの大豆分散体は、SBSなしで作製された分散体より、近い等価粘度において、より高い固形分を達成することができる。これらの処方を、500mlの4首丸底フラスコに、水および添加剤、重亜硫酸ナトリウム(Aldrich Chemical Company、Milwaukee WIから入手、>99%の純度)またはシステイン(Aldrich Chemical Company、Milwaukee WIから入手、>97%の純度)のどちらかを加えることによって作製した。添加剤の割合は、大豆粉の重量に基づいている。溶液を、オーバーヘッド攪拌機を使用して混合し、大豆粉(Prolia(登録商標) 200/20の脱脂された大豆粉、Cargill Inc.、Minneapolis、MNから入手可能)を2分間の間に加えた。その後、混合物を85℃に加熱し、30分間保った。その後、尿素(Aldrich Chemical Company、Milwaukee WIから入手可能、>98%の純度)を加え、分散体を室温まで冷却した。
【0090】
粘度を、20rpmにおいて#4スピンドルを使用してBrookfield LV DV-E粘度計で測定した。サンプルを、粘度測定のすぐ前に手によって30秒間激しく攪拌してサンプルのせん断履歴を均一とした。これらの処方の特性を表13に示す。
【0091】
【表13】

【0092】
結果は、SBSまたはシステインのどちらかの使用が、分散体の固形分が45%から最大60%TSまで上がり、等価粘度を保ったままで、粘度を低下させることができることを示す。代わりには、固形分が55%まで上がると添加剤なしの45%よりも低い粘度を達成することができる。前の実施例で示した通り、より高い添加剤の重量は、一定の固形分レベルにおいて、より大きい粘度の低下を与える。
【0093】
実施例57〜62: パーティクルボードを製造するための大豆分散体の使用
一連の大豆/尿素分散体を、実施例49および50と同様の方法で調製した。1.2、1.3および1.4の尿素に対する大豆の比を利用し、1つの対照サンプルおよび1つのSMBSで調整されたサンプルをそれぞれの大豆:尿素の比で調製した。これらの分散体を、表14に概要を示すパーティクルボード(PB)処方を調製するために使用した。CA1300 PAEポリマーを、硬化剤として使用した。重亜硫酸塩で調整された処方の粘度の値は、5から7パーセント大きい固形分含有量を有するにも係わらず、比較例よりわずかに高いのみであった。PBパネルを調製するために、表面のみの提供で使用した。PBサンプルを、170℃の温度で5分間のプレスサイクルを使用して調製した。
【0094】
【表14】

【0095】
パーティクルボードのパネルを、試験パネルから選んだいくつかのサンプルを使用して、破壊係数(MOR)を試験した。MOR値を、44ポンド/ft3(PCF)の密度で規格化した。結果を表14に示す。比較例と重亜硫酸塩で調整した処方のMOR値において、十分な差異は存在しなかった。
【0096】
実施例63 & 64: 重亜硫酸塩の存在下でのアゼチジニウム官能基の安定性
35gの20%の固形分含有量を有するCA 1000 PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)に、0.45gのメタ重亜硫酸ナトリウム(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)を加えた。サンプルのpHを、25%のNaOHを使用して、7.7(実施例63)および6.0(実施例64)に調整した。その後、サンプルをD2O中で5%湿潤ベースに希釈し、NMRで分析した。調製されたサンプルの同じNMRを3時間、1時間ごとに再実行した。結果を表15に示し、7.7のpHのアゼチジニウム濃度は迅速に14%まで低下するが、一方6のpHのサンプルは、同じ時間の枠組みで3%しか低下しないことを示す。
【0097】
実施例65 & 66: 重亜硫酸塩の存在下でのアゼチジニウム官能基の安定性
3.125gの20%の固形分含有量を有するCA 1920 PAEポリマー(Hercules Incorporated、Wilmington DE)の溶液および6.875gの水に、0.037gのメタ重亜硫酸ナトリウム(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)を加えた。pHを、25%のNaOHを使用して、7(実施例65)および5(実施例66)に調整した。その後、サンプルをD2O中で5%湿潤ベースに希釈し、NMRで分析した。調製されたサンプルの同じNMRを3時間、1時間ごとに再実行した。結果を再び表15に示し、高いpH、この場合7のpHのアゼチジニウムは、重亜硫酸ナトリウムが溶液中に存在する場合、不安定であることを示す。サンプルを分析する時間までに、pHが7のサンプルは、pHが5のサンプルより8%を超えるアゼチジニウムを損失した。3時間の最後までに、pHが7のサンプルは、SBSによって影響を受けていないことが明らかなpHが5のサンプルと比較して、12〜13%のアゼチジニウムを損失した。
【0098】
以下の手順を、実施例における全てのNMR測定のために使用した。
【0099】
サンプル調製:
(1) 〜50mgの5ccのバイアル内の受け取ったままのPAE樹脂を計量する。
(2) 〜1ccのD2O(#2溶液)を同じバイアルに加える。
(3) ボルテックスミキサー(vortex mixer)を使用して、バイアルの含有物を混合する。
(4) バイアルの含有物を、ガラスピペットを使用して、5mmのNMRチューブ内に移動する。
【0100】
1H NMRスペクトルを、逆の5mmのプローブを装備したBRUKER Avanceスペクトロメーターを使用して取得する。400MHz(Avance 400)または500MHz(Avance 500)の1H NMRの操作周波数が、データ収集に十分である。適切な信号の電子的統合は、以下のアルキル化成分のモル濃度を提供する: ポリマーのアミノクロロヒドリン(ACH)、およびアゼチジニウムイオン(AZE)。これらそれぞれの濃度を計算するために、積分値(integral value)を(1)プロトン成分に入れなければならない。例えば、1.72〜1.25ppmのスペクトル領域は、ジエチレントリアミン-アジペート骨格のアジペート部分からの4つ(4)のプロトンを表し、したがっては積分値4で割られる。この値は、アルキル化化学種の計算のための、ポリマーの共通の分母(PCD)として使用される。これらの化学種の化学シフトは、以下で提供される(1.5ppmのアジペート分野の参照を使用して)。それぞれのアルキル化生成物の対応する積分値は、計算の分子において使用され、以下の例で表される:
- 4.85〜4.52ppmにおけるAZEの信号は3つのプロトンを表し、したがって、3の割り算の係数が得られ; AZEの積分 ÷ 3 ÷ PCD = AZEのモル分率
- 68〜69ppmにおけるACHの信号が2つのAZEのプロトンおよび1つのACHのプロトンを表し; ACHの積分 - (AZEの信号 ÷ 3 x 2) ÷ PCD = ACHのモル分率
【0101】
以下のスペクトルのパラメータが、Bruker Avance 400のPAE-エピクロロヒドリン樹脂の1H NMR分析のための標準の実験条件である:
温度 55℃
共鳴周波数 400 MHz
#収集したデータ数 32K
収集時間 2秒
掃引幅 8278 Hz
スキャン数 32
緩和遅延(Relaxation Delay) 8秒
パルスチップ角 90°
パルスプログラム* zgpr(presaturation)
処理されたスペクトルのサイズ 32K
アポディゼーション機能 指数(Exponential)
ラインの広がり 0.3 Hz
【0102】
水抑制パルスパワーレベルは、80〜85dB-60ワット1Hトランスミッタである。余剰出力は、信号-USE “SOFT” PULSE近傍に漸近するだろう。
【0103】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) タンパク質成分、
b) アゼチジニウムで官能基化されたポリマー、および
c) 亜硫酸塩の還元剤、チオール、およびこれらの組合せからなる群から選択される、1つまたは複数の粘度調整成分
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
前記アゼチジニウムで官能基化されたポリマーがアミン-エピクロロヒドリンポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アゼチジニウムで官能基化されたポリマーがポリアミドアミン-エピクロロヒドリンポリマー(PAEポリマー)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質成分が大豆タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アゼチジニウムで官能基化されたポリマーがPAEポリマーである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記粘度調整成分が重亜硫酸ナトリウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記粘度調整成分が重亜硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
粘度調整添加剤の量が、100000部のタンパク質に対して1部の調整剤から10部のタンパク質に対して1部の調整剤の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物のpHが4.5から7.5の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のpHが4.5から7.5の間である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物のpHが5から7の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の固形分含有量が25%より大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の固形分含有量が30%より大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の粘度が150000cP未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の粘度が150000cP未満であり、固形分含有量が25%より大きい、請求項13に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−502140(P2012−502140A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526170(P2011−526170)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/055755
【国際公開番号】WO2010/028062
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】