説明

低光沢性熱可塑樹脂組成物

a)約30〜80重量%のポリカーボネートと、b)約5〜50重量%のポリエステルと、c)約2〜25重量%の耐衝撃性改良剤と、d)低光沢化に有効な量の、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤とを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年5月23日に出願された米国仮特許出願番号第60/683826号についての優先権を主張し、参照によりそのすべてを本願明細書に援用する。
【0002】
産業における金属および他材料製品は、永年にわたって、プラスチックに置き換わりつつある。この傾向は特に自動車部品に関して明らかである。デザイナおよびエンジニアは、構造設計におけるプラスチックの軽量性と柔軟性のおかげで、プラスチック採用へ向けて大きなモチベーションを抱くようになってきた。プラスチックの採用が検討されてきた領域の一つは、成形部品に対する塗装の廃止が望まれている分野である。しかし、低光沢性の外表面を持つ塗装外観もまた望まれている。ほとんどのプラスチック材料は成形されると、高光沢性表面を有する。成形部品に要求される構造的、機械的、および寸法的特性や耐薬品性などの特性を維持しながら、低光沢を実現することは困難である。もちろん、そのように要求される成形部品は自動車部品に限定されるものではなく、機械装置ハウジング、装置、消費財あるいは電子装置、アウトドア車両や装置、およびその他の、機械的強度と低光沢が必要な部品に採用される。
【0003】
我々は、目的とする用途での要件を満たす低光沢性成形部品が得られる材料設計に成功した。塗装品と外観は同じだが、特に高温環境下での性能と良好な機械的特性の点において、プラスチックでの利点を実現させることができた。特定の複数の成分からなるプラスチック組成物が用いられる。特定の添加剤も光沢をさらに低下させる。成形条件によっても光沢を低下させることができる。我々は、特定の組成物から成形された成形品を、特定の条件下で加熱することで光沢を低下させることにも成功した。研磨金型を用いた成形でも、これらの有意な光沢低下は達成される。実質的に均一な低光沢から完全に均一な低光沢までを成形部品表面で実現できる。この組成物は成形も容易であり、粘度は成形部品の要求に応じて変えることができる。
例えば、特に成形品が大型および/または複雑な場合には、271℃でISO11443に準拠したキャピラリー式レオメータ測定で、約500Pa・s未満の粘度が実現できる。
【特許文献1】米国特許第2999835号公報
【特許文献2】米国特許第3038365号公報
【特許文献3】米国特許第3334154号公報
【特許文献4】米国特許第4131575号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明では、ある組成物は、
a.組成物に対して約30〜約80重量%のポリカーボネート(PC)と、
b.組成物中にポリブチレンテレフタレートが存在するときは、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート以外の他のポリエステルの少なくとも1つと共存するようになされた、約5〜約50重量%のポリエステル成分と、
c.組成物に対して約2〜約25重量%の耐衝撃性改良剤と、
d.低光沢化に有効な量の、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤とを含む。
【0005】
成形条件でも、光沢を低下させることができる。良好な色調と低光沢均一性とを同時に達成することは難しい。この組成物は、高温での良好な寸法安定性と良好な機械的特性を維持しながら、これらの目標を実現する。比較的低粘度が実現され、これは特に、自動車用途で見られるような大型で複雑な部品を成形する場合に望ましい。
【0006】
さらに、少なくとも1つの芳香族ポリカーボネートと少なくとも1つのポリエステルを含む組成物の成形品の光沢を低下させる方法は、例えばエポキシシランまたはメタクリル酸グリシジル改質ポリオレフィンなどの、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤を、光沢低下に有効な量、前記組成物に添加するステップを含む。
【0007】
さらに、組成物中のポリブチレンテレフタレート(PBT)の量を少なくすることによって光沢は低減される。
【0008】
さらに、組成物中のポリエチレンテレフタレート(PET)の量を増やすことによって、光沢は低減される。
【0009】
さらに、少なくとも5重量%の多官能基添加剤が組成物中成分と反応するa、b、cおよびdからなる組成物である。
【0010】
さらに、前記組成物中の成分a、b、cおよびdは反応条件下で結合するプロセスである。
【0011】
本発明は、ポリカーボネートとポリエステルを含み、予想外の低光沢性を有する成形組成物が製造できるとの注目すべき発見に基づいている。これらの組成物から作られた物も、予想外の低光沢を示すことができる。これらの組成物から作られた物は、非常に有用な物理的および熱的特性を示すことができる。
【0012】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も包含する。
【0013】
「適宜な」あるいは「適宜に」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合と事象が起こらなかった場合の両方を包含する。
【0014】
「少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤」とは、例えばエポキシ官能基や反応部位を持つシランなどの、少なくとも3つの反応部位を持つ化合物を指す。
【0015】
芳香族ポリカーボネートが本発明の組成物に使用される。それらの芳香族ポリカーボネートは通常、二価フェノールをカーボネート前駆体と反応させて調整される。そのような芳香族カーボネート重合体の製造に用いられる二価フェノールには、単核あるいは多核の芳香族化合物があり、官能基として2つのヒドロキシラジカルを含んでおり、それそれが芳香核の炭素原子に直接結合している。代表的な二価フェノールは次のとおりである。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ヒドロキノン;レゾルシノール;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;2,4’−(ジヒドロキシジフェニル)メタン;ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;フルオレンビスフェノール、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;2,2−ジヒドロキシジフェニル;2,6−ジヒドロキシナフタレン;ビス(4−ヒドロキシジフェニル)スルホン;ビス(3,5−ジエチルー4−ヒドロキシフェニル)スルホン;2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;5’−クロロ−2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;ビス−(4ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル4,4−ジヒドロキシ−2,5−ジフェニルエーテルなどである。
【0016】
上記のポリカーボネート調整に使用される他の二価フェノールは、米国特許第2,999,835号;同第3,038,365号;同第3,334,154号;および同第4,131,575号に開示されている.
【0017】
芳香族ポリカーボネートは既知のプロセスによって製造できる。例えば上記のように、二価フェノールをホスゲンなどのカーボネート前駆体と反応させる方法などである。この方法は、上記に引用の文献や米国特許第4,123,436号に記載の方法、あるいは、米国特許3,153,008号に開示されているプロセス、その他当業者に周知のプロセスなどのエステル交換反応に基づく。
【0018】
さらに、本発明のポリカーボネート混合物の調整において、ホモポリマではなくカーボネート共重合体あるいはインターポリマの使用が望ましい場合は、2つ以上の異なった二価フェノールか、あるいは、グリコール、またはヒドロキシ末端ポリエステルあるいは酸末端ポリエステル、あるいは二塩基酸を有する二価フェノールの共重合体を使用することができる。米国特許第4,001,184号に開示されているような分枝鎖ポリカーボネートも使用できる。直鎖ポリカーボネートと分枝鎖ポリカーボネートとの混合物も使用できる。さらに、上記の任意の材料からなる混合物を用いて本発明を実施し、前記の芳香族ポリカーボネートを提供することができる。
【0019】
芳香族カーボネートの1つとしては、例えば、ゼネラルエレクトリック社からLEXAN(登録商標)の名前で商品化されている、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)とホスゲンとから誘導されるホモポリマなどがある。
【0020】
分枝鎖ポリカーボネートは、重合反応中に分岐剤を添加して調整される。これらの分岐剤は周知であり、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物、ハロホルミル基およびそれらの混合物のうち少なくとも3つの官能基を含む多官能基有機化合物を含む。具体的には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸トリクロリド、トリスp−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(l,3,5−トリス((p―ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4−(4−(l,l−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α、αジメチル−ベンジル)フェノール)、4ークロロホルミル無水フタル酸、トリメシン酸およびベンゾフェノンテトラカルボキシ酸を包含する。分岐剤は、約0.05−2.0重量%のレベルで添加することができる。分枝鎖ポリカーボネートを製造するための分岐剤および方法は、米国特許第3,635,895号、同第4,001,184号、おび同第4,204,047号に記載されている.
【0021】
コポリエステルカーボネートも、ポリカーボネートに含まれる。こうした材料は、原料中に二基酸を加えて重合体中にカーボネート結合とエステル結合を作ることによって調整される。例えば、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が使用できる。テレフタル酸とイソフタル酸が、通常のビスフェノールAとカーボネート前駆体と同様に、レゾルシノールと共に存在するときには、ポリカーボネート内にブロック・ポリアリレート(エステル)が形成される(例えば米国特許第6,583,256B2号参照)。
【0022】
上記のポリカーボネートの好適な分子量(Mw)は、溶媒としてメチレンジクロライドを用いて25℃で測定し、ポリスチレン標準に対して、約25,000g/mol〜約75,000g/molの範囲である。高流動性が望まれる混合物の場合には、好適な分子量は約28,000g/mol〜60,000g/molであり、より好適には約35,000g/mol〜45,000g/molの範囲である。本出願における分子量はすべて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定されている。
【0023】
組成物中の芳香族ポリカーボネート量は、組成物に対して約30〜80重量%であり、好ましくは約45〜約75重量%である。
【0024】
適切なポリエステルは、下記構造式の構造単位を含んでいる。
【0025】
【化1】

【0026】
式中、Rはそれぞれ独立に二価脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、あるいはポリオキシアルキレンラジカル、あるいはそれらの混合であり、Aはそれぞれ独立に二価脂肪族ラジカル、脂環式ラジカル、芳香族ラジカル、あるいはそれらの混合物である。上記の構造式を含む適切なポリエステルとしては、ポリ(アルキレン・ジカルボキシレート)、液晶ポリエステルおよびポリエステル共重合体などがある。分枝鎖ポリエステルの使用も可能であり、例えば3つ以上の水酸基を有するグリコール、あるいは三官能基または多官能基カルボン酸が用いられる。更に、組成物の最終用途に応じて、種々の濃度のポリエステル酸末端基と水酸末端基を有していることが望ましい場合もある。
【0027】
ラジカルは、例えばC2−10アルキレンラジカル、C6−12脂環式ラジカル、C6−20芳香族ラジカル、あるいはアルキレン基が約2から6の数の炭素原子、ほとんどの場合では2または4の数の炭素原子を含むポリオキシアルキレンラジカルであってもよい。上記構造式におけるAラジカルは、p−フェニレンかm−フェニレン、あるいは脂環式、またはそれらの混合物であることが多い。この分類のポリエステルは、ポリ(アルキレンテレフタレート)を含む。そのようなポリエステルは、下記特許に示されるように当分野では周知である。下記特許は参照によって本明細書に援用される。米国特許2,465,319号;同2,720,502号;同2,727,881号;同2,822,348号;同3,047,539号;同3,671,487号;同3,953,394号;および同4,128,526号。
【0028】
ジカルボキシレート残基Aで表される芳香族ジカルボン酸には、イソフタル酸またはテレフタル酸、l,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’ビス安息香酸およびそれらの混合物などがある。1,4−1,5−または2,6−ナフタレンジカルボン酸などの縮合環を含む酸も含まれる。好適なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸あるいはそれらの混合物である。
【0029】
特に適切なポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリ(l,4−ブチレンテレフタレート)(「PBT」)、ポリ(エチレンナフタノエート)(「PEN」)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(「PBN」)、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(「PCT」)、シクロヘキサンジメタノール変性ポリ(エチレンテレフタレート、またポリシクロヘキシレンジメチレンエチレンテレフタレートとしても既知)(「PETG」および「PCTG」)、およびポリプロピレンテレフタレート(「PPT」)とそれらの混合物である。
【0030】
PBTが組成物中に存在する場合は、ポリブチレンテレフタレートはPBTではない少なくとも1つの他のポリエステルと共に使用される。この実施形態では、PBT対非PBTポリエステルの適切な重量比は、9:1から1:9まで変えることができる。ある実施形態では、このポリエステル成分はPBTを含まない。上記の数値範囲は、本明細書で開示する他の数値範囲と同様に、連続的であり、最小値と最大値の間のすべての値を包含するものとして理解される。
【0031】
コポリエステルを形成する脂肪酸および/または脂肪族多価アルコールから誘導される単位の、例えば約0.5〜約25重量%といった少量の上記ポリエステルについても、ここで考察する。脂肪族多価アルコールは、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、あるいはポリ(ブチレングリコール)などのグリコール類を含む。そのようなポリエステルは、例えば米国特許第2,465,319号や同第3,047,539号に従って製造できる。
【0032】
本発明の組成物に利用される耐衝撃性改良剤は、コアシェル、グラフトまたは非グラフト特質を持つ改良剤か、もしくは混合マトリックスの中で微視的に観察される分離相として存在する他の任意の衝撃性改良剤である。これらの耐衝撃性改良剤は、添加剤を何も加えなくても樹脂組成物の光沢を低減させる。そのような耐衝撃性改良剤には、これに限定されないが、複数のモノマの共重合による重合体と同様にホモポリマも含まれる。
【0033】
そのような耐衝撃性改良剤としてはABS樹脂があり、特に、例えばクロンプトン社(Crompton Co.)のBlendex ABS樹脂などのブタジエン含有量の多いABS樹脂や、ノベオン・スペシャルティ・ケミカル社(Noveon Specialty Chemical)のHycar reactive liquid polymersなどのゴムを含有するブタジエンスチレンやニトリルなどがある。メチルメタクリレートブタジエンスチレンも同様に使用される。METABLEN S2001のような耐衝撃性改良剤含有のシリコーンは、三菱レーヨン社、東京(日本)から販売されている。さらに、アルケマ社(Arkema)から販売されているLOTADER(登録商標)AX8900などの耐衝撃性改良剤もある。樹脂は、エチレンおよびグリシジルメタクリレート(GMA)の単位を含むコポリマあるいはターポリマである。LOTADER(登録商標)樹脂のさらなる利点は、屋外暴露あるいは促進「耐候性試験」後も変色しないことである。
【0034】
代表的なABS耐衝撃性改良剤は、米国公開特許第2004/0059079Al号(名称:Enhanced Polymerization Process、公開日:2004年3月25日)に記載されている。この公開特許の段落23〜68は参照により本明細書に援用される。好適なABS耐衝撃性改良剤は、Blendex362などのゴム含有量の多い改良剤であり、同品はポリブタジエンを62%含有し、Blendex338はポリブタジエンを70%含有する。
【0035】
その他の好適な耐衝撃性改良剤としては、ロームアンドハース社(Rohm and Haas社)など数社から販売されているMBSタイプの改良剤や、LOTADERタイプの改良剤、および2つ以上の改良剤を組合せたものなどがある。
【0036】
特定の添加剤は、成形された組成物の光沢を低下させることができる。この添加剤は、多官能基(3つ以上の反応基)剤である。それらの官能基の少なくとも1つはエポキシ基である。第2の官能基は、エポキシ基でなければ、水酸基、イソシアネート基、シラン基、グリシジルメタクリレート変性ポリオレフィンなどである。光沢低下添加剤の例としては、同じくエポキシ基を持つトリ−メトキシシランあるいはトリ―エトキシシランなどの分子があり、例えば、GE社からCoatOSil1770として販売されているβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランがある。他の例としては、GE社からSilquest A−186として販売されているβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、同じくGE社からSilquest Y−15589として販売されている3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランがあるが、好適なものは、Coat−O−Sil1770などの分子中にエポキシ基を含むものである。
【0037】
さらに好適な光沢低下剤の例としてはLOTADER(登録商標)樹脂がある。この樹脂は、上述の耐衝撃性改良特性に加えて、有効な光沢低下剤である。重合体中には複数のエポキシ官能基が存在する。
【0038】
各成分の量は重要であり、その材料量が光沢に影響する。芳香族PCは、組成物に対して約30〜約80重量%の範囲であり、好適には約45〜約75重量%である。ポリエステル含有量は、組成物に対して約5〜約50重量%であるが、最低量は約10重量%であることがより望ましい。成形用途としては、一般に約45重量%以下である。低粘度と高い耐薬品性が要求される場合は、要求される最終特性を達成するには、十分なポリエステルが必要である。耐衝撃性改良剤は、組成物に対して約2〜約25重量%、好適には約4〜約20重量%である。ベースの樹脂組成物の光沢以下の光沢は、最小量の光沢低下剤を添加することによってもたらされる。光沢低下剤の最小量は、組成物に対して約0.1重量%である。LOTADER(登録商標)樹脂などの重合体が組成物中に存在する場合は、最小量は約0.5重量%が望ましい。エポキシシランなどの化合物が組成物中にある場合は、光沢低下剤の量は一般に約5重量%以下である。LOTADER(登録商標)樹脂は耐衝撃性改良と光沢低下の2つの特性を有するが、このLOTADER樹脂などのエポキシ化された官能基を有する高分子が組成物中に存在する時は、その量は一般に約25重量%以下である。
【0039】
本発明の成形材料は一般に、適切な量のポリカーボネート成分と、ポリエステル成分と、耐衝撃性改良剤、および少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤を、適切な条件下で押出機(あるいは機能的に等価な混合装置)内で混合することにより作られる。前記のポリカーボネート成分、ポリエステル成分、耐衝撃性改良剤および多官能基添加剤は、同時に混合しても別々に混合してもよい、あるいは、2つあるいは3つの成分を組合せてもよい。押出し法では、押出機に1回以上通すことを包含する。
【0040】
従って本発明は、2つまたは3つの成分を、組成物の残り成分と反応する前に、別に混合するときに生じる反応生成物を包含する実施形態を含む。
例えばある実施形態では、本発明は、
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤、および
(ii)例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートの反応生成物を含む組成物を包含する。
別の実施形態では、本発明は、
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤、および
(ii)ポリブチレンテレフタレートの反応生成物である組成物を包含する。
別の実施形態では、本発明は、
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤、および
(ii)少なくとも1つの酸末端基を有するポリエステルの反応生成物を含む組成物を包含する。最初に存在していた少なくとも約5重量%の光沢低下剤は、通常、ポリエステルおよび/または耐衝撃性改良剤などの組成物成分と反応する。
【0041】
通常の成形条件で成形されたこの組成物の成形部品は、研磨金型の場合でも、他の組成物よりも著しく低い光沢を示し、実際に要求される低光沢性となる。
【0042】
本発明の組成物を用いた成形部品は、自動車部品、消費財電子装置、動力工具ハウジング、レクリエーショナルビークル部品、造園および農場使用用電力設備、通信設備、健康器具などの物品を包含する。
【0043】
本発明の組成物を用いた最も好適な成形部品は、大表面積を有する射出成形部品、および/または、通常の使用では、日光などの直接光源で水平白色蛍光あるいは冷白色蛍光に見える部品である。これらの光源はUV成分を含むために、色と光沢の一貫性がより重要になる。
【0044】
これらの成形部品の例としては、計器パネル、水平または垂直ボディパネルなどの車両部品がある。さらに、例えばベゼル、ノブ、ラジオパネル、ヒーターコントロールパネル、外装ハウジング、ホイールウェルトリム、スポイラーなどの、他の小型の車両トリム部品も好適である。低光沢および良好な機械的特性が有用な他の成形部品(物品)としては、消費財または電子装置、電動工具、個人健康器具などの非自動車部品や、オートバイ、カート、トラックなどの運搬用車両などがある。組成物が低光沢性になるにつれて、成形部品は、塗装による低光沢性部品に非常に似た外観を実現する。したがって、この組成物から成形された部品は、そのような外観を実現するための塗装を必要としない。このような非塗装部品は、同様の成形プロセスで作られた比較可能なデザインの部品と比較して、実質的にコスト削減になる。
【0045】
これらの組成物の差異化点の1つは、成形部品の外表面全面にわたって光沢、特に低光沢が均一、もしくは少なくとも実質的に均一なことである。均一性については通常、熟練観察者によって視覚的に測定される。熟練観察者が成形部品の外表面を観察しても、実質的に他よりも明るいあるいは鈍い部分が見られない。また、光沢のばらつきは光沢計で検出される。
【0046】
一般に、PET量が増えれば光沢は低下する。耐衝撃性改良剤の量が増えるにつれて光沢は低下する。PC量が増えるにつれて光沢は上がる。PBT量が減るにつれて、一般に光沢は低下する。興味深いのは、PET量が増えると表面光沢は低下し、PBT量が減っても表面光沢は低下することである。
【0047】
このように、本発明の組成物は広くは、低光沢化に有効な量の、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤(以後「光沢低下剤」とも呼ぶ)を含む。「低光沢化に有効な量」とは広くは、光沢計(例えばBYK Gardner社のmicro−TRI−gloss gloss meter)を用いて任意の角度、例えば60°で測定し、光沢を少なくとも約3%低下させるのに十分な量を指す。別の実施形態では、「低光沢化に有効な量」とは、光沢を少なくとも約5%、あるいは少なくとも約10%未満、または少なくとも約15%未満低下させるのに十分な量を指す。別の実施形態では、「低光沢化に有効な量」とは、光沢を少なくとも約20%低下させる光沢低下剤の量を指す。光沢低下の程度は、製造されるプラスチック物品の初期光沢に依存する。光沢は光沢単位で測定される。
【0048】
少なくとも3%の光沢低下によって実現される物品の光沢度の絶対値は、希望する応用製品によって変わる。ある実施形態では、仕様上限値は、例えば自動車計器パネルなどの自動車内・外装部品など、テクスチャ表面を有する部品を任意の角度で測定して、5光沢単位に設定できるが、これについてはさらに以下で議論する。この例では、平滑部品、研磨部品、あるいはテクスチャ部品で任意の角度で測定した5光沢単位未満の光沢は低光沢と考えられる。応用製品によって、他の仕様上限値に設定することも可能である。
【0049】
光沢は、成形部品表面の最終粗さと相関関係にある。表面粗さは、成形金型の表面粗さの転写か、あるいは組成物自体の特性、もしくはそれらの組合せによって与えられる。また、金型の表面粗さと組成物の元々の特徴とを組み合わせて、非常に低光沢の成形品を製造することができる。本出願明細書に記載のデータ例は、金型研磨面に対して成形された部品について測定したものである。
【0050】
本発明の組成物は、同じ応用分野の競合品に対して明らかに利点を有している。例えば、熱可塑性ポリオレフィンは良好な色調と良好な低光沢性を持っている。しかしながら、熱特性と機械的特性は落ちる。この組成物は、良好な色調と低光沢のみならず、良好な熱的および機械的特性をも有する。熱計測例としては、熱変形温度(HDT)と貯蔵弾性率とを含む。機械的特性としては、引張弾性率、曲げ弾性率、衝撃強度などを含む。成形部品表面の塗装ではなく、種々の顔料を添加して希望色を得ることができる。光沢、特に低光沢は、成形部品表面上で均一か、もしくは少なくとも実質的に均一である。
【0051】
金型の表面が粗くても研磨面であっても低光沢にすることができる。組成物それ自体で低光沢性表面を提供できるが、他の手段でも低光沢にすることができる。上記の通り、エポキシシランなどの添加剤が使用でき、あるいは成形部品のアニーリングによっても光沢を低下できる。光沢低下に効果的な添加剤の一例としては、GE社から販売されているCoat−O−Sil 1770(登録商標)のようなエポキシシランがある。エポキシおよび/またはシラン/シロキサンに関係した他の多機能添加剤も使用できる。組成物成分以外の他の手段も光沢低下に利用できる。成形部品表面をある時間、例えば最低約2分間、比較的中温度に維持することによっても、有意に光沢低下させることができる。成形後に成形部品を例えば85〜90℃のような温度にある時間、例えば少なくとも約5分間維持することによって、有意に光沢低下させることができる。
【0052】
ある実施形態では本発明は、
(a)約30〜80重量%のポリカーボネート成分と、
(b)組成物中にポリブチレンテレフタレートが存在するときは、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート以外の他のポリエステルの少なくとも1つと共存するようになされた、約5〜約50重量%のポリエステル成分と、
(c)約2〜約25重量%の耐衝撃性改良剤と、低光沢化に有効な量の、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤とを含む組成物から成形された物品の加熱に関係する光沢低下方法に関する。物品を加熱することによって得られる更なる光沢低下は、少なくとも約25%以上である。ある実施形態では、光沢低下は少なくとも約25%、あるいは少なくとも約25〜約50%以上である。物品を120分未満、例えば30分未満加熱することによって、予想外に光沢を低下させることができる。
【0053】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、部およびパーセントは、そうでないことが表示されない限りは、重量で示す。
【実施例】
【0054】
以下はこれらの実施例を実施するための種々の実施例と手順である。
基準/手続き
【0055】
金型表面仕上げ―本出願明細書で用いられる「研磨面」とは、SPI−Alに研磨された金型表面を指す。この仕上げは通常、#3ダイヤモンドバフ研磨で達成される。この方法で調整された金型表面の表面粗さパラメーター(Ra)は、0〜1ナノメートルの範囲を達成する。
【0056】
混合方法−すべての材料を二軸式押出し機を用い、直径27mmまたは40mmのライン上で製造した。通常の混合方法以外の方法は用いていない。全ての固形原料を固体、不溶状態で押出機に供給した。原料は個々のフィーダに供給してもよく、あるいはブレンドの一部として供給しても良い。液状添加剤を処方の一部として使用する時は、ブレンドに添加後、ブレンドフィーダーに供給した。これらの実験では、液体のポンプ作業は行わなかった。押出しの間、使用したスクリュー回転数とマスター送り速度では、材料に過度の特定の機械的エネルギを与えることはなかった。これらの実験では、混合は、結果を変えるほどの重大なパラメータではないと考えられた。
【0057】
成形中の操作手順―1つあるいは2つの部品用雌型を持つ小型の金型インサートを使用して、85−トン・バンドーン(Van Dorn)プレス機で部品を成形した。液温度と金型温度を変えて部品を製造した。液温度は約274〜302℃の範囲で変更した。金型冷却器の水温設定は、約32〜約100℃の範囲で変更した。各実験の詳細は以下のとおりである。
【0058】
乾燥処理手順―いくつかの試験片は、85℃のオーブン中に5分、10分、あるいは15分などのように短時間放置した後に評価した。成形後の初期20°光沢が約20光沢単位より大きい時は、この乾燥処理によって、多くの試験片の光沢が1桁低下した。これは成形材料に依存した。研磨面の代表的な20°光沢単位値は、80単位から8単位以下に低下した。テクスチャ表面や点描模様表面では、この効果はあるものの顕著ではなかった。この研究では、85℃未満の温度での評価は行わなかった。PBTを含まない成形組成物などでは、光沢値が20°で光沢単位5未満となり、成形後の乾燥処理を必要とせずに、そのレベルの光沢を達成した。
【0059】
レスポンス測定―光沢測定は、BYKガードナマイクロTRI携帯光沢計(BYK Gardner mcro−TRI−gloss portable gloss meter)を使用し、2×3インチの成形片について測定した。金型表面はSPI Al仕上げに研磨した。光沢度計は、ASTM D 523およびISO 2813に準拠して測定できる。各測定に先立って、光沢度計の較正を、メーター貯蔵ケースに備わっている黒較正標準を用いて行った。入射角20°、60°および85°の3レベルで較正を行った。入射角は、測定器の感度が最大限になるように選択した。研磨面に対しては、入射角は20°または60°にできる。テクスチャあるいは点描模様表面に対しては、入射角は60°または85°にできる。これは、表面粗さと入射角度間の既知の関係と変わらない。
【0060】
表面粗さが増すにつれて光沢が低下するという一般的な傾向から、表面粗さが大きい場合には、十分な計測器感度を得るために入射角を大きくすることが必要になることが予測される。あまりにも小さい角度を選ぶと、その計測器では小さな光沢変化が測定できないことになってしまう。これに関連して、表面粗さが小さい場合は、小さな光沢変化に対して計器を感度良くするために、より小さな入射角を用いる必要がある。光沢が0光沢単位に近付くにつれて、光沢度計では、どんな角度に設定しても、光沢変更を識別することができなくなる。
【0061】
光沢目標と仕様―自動車用計器パネルのようなテクスチャ表面を有する部品が入射角60°で測定される場合は、仕様上限を5光沢単位に設定できることがある。この例では、5光沢単位未満の光沢測定は低光沢と考えられる。この同じ部品を低光沢塗料で塗装すると、光沢は2光沢単位から3光沢単位の範囲であることが多い。したがって、このテクスチャ表面での光沢目標値は、入射角60°で約2.5光沢単位となる。研磨表面あるいはテクスチャ表面の光沢を低下させることにより、成形部品間の光沢と色調の一貫性が全面的に認識されるようになる。
【0062】
成形組成物/結果
実施例1―14−耐衝撃性改良剤、ポリエステルおよびエポキシシランが光沢と粘度に及ぼす影響。実施例1−3
【0063】
【表1】

【0064】
上記の実施例(No.1〜14)および下記の実施例(No.15〜17)において、以下の記述および定義は、各成形組成物中の原料に当てはまる。PCは、ゼネラルエレクトリック社のLEXANポリカーボネートML8199である。PETは、インビスタ(Invista)社のポリエチレンテレフタレート8396である。PBTは、ゼネラルエレクトリック社のポリブチレンテレフタレート195である。ABS1はアクリロニトリルブタジエンスチレン重合体であり、クランプトン(Crompton)社のBlendex 362である。メタブレン(METABLEN)は三菱レーヨン(Mitsubishi Rayon)社のメタブレン(METABLEN)S2001である。ABS2はアクリロニトリルブタジエンスチレン重合体であり、クランプトン(Crompton)社のブレンデキス(Blendex)338である。CS1770は、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランであり、ゼネラルエレクトリック社のCoat−O−Sil 1770である。「添加剤」とは、重合体の処方に用いられる典型的な熱安定剤および顔料である。酸とは、ポリカーボネートとポリエステルのエステル交換反応を防ぐために、触媒クエンチ剤として添加される45%亜リン酸水溶液である。クエンチ剤の他の例としては、リン酸、遷移金属リン酸塩、およびその他の非酸性種などがある。クエンチ剤の有効量は文献で周知である。タルクは、ポリエステル樹脂の造核剤として添加される、スペシャルティミネラルズ(Specialty Minerals)社のウルトラタルク(Ultratalc)609である。それぞれの成形組成物に対する測定レスポンスは以下の通りである。粘度はISO11443標準法に準拠した(加熱溶融温度271℃、せん断速度640S−1)溶融粘度を指す。光沢は、携帯型BYK Gardner micro gloss meterを用いて20°と60°で測定した。
【0065】
これらのデータ解釈は、粘度と光沢目標の両方を考えながら行わなければならない。ビジネス上有用な成形組成物は、低光沢と低粘度とを同時に有する組成物である場合が多い。実施例1、2および3は、様々な耐衝撃性改良剤の光沢と粘度に対する効果を示す。実施例4、5および6は、光沢低下剤を除いたときの影響を示す。実施例7および8は、PBT含有組成物が、添加剤によって光沢を実質的に低下させることを示す。実施例9および10は、光沢低下剤の増量効果を示す。実施例10は、実質的に低光沢ながら高粘度を示す。実施例10の粘度のために、この組成物は、車両用計器パネルなどの大型部品の射出成形には適さない。しかし、実施例10の組成物で成形される小型あるいは複雑でない部品であれば、極めて低光沢であることの利点を有する。実施例11および12は、耐衝撃性改良剤の増量効果、特に光沢に及ぼす効果を示す。実施例13および14は、低光沢性実現のために使用される他のABS耐衝撃性改良剤を示す。
【0066】
実施例15、16および17―エポキシシランCoat−O−Sil 1770と、組成物を異なる時間で加熱した後のある成形組成物の成形後乾燥処理の効果。
【0067】
成形組成物15、16および17を押出し成形した。これらの成形組成物は、Coat−O−Sil 1770の量だけが異なる。Coat−O−Sil 1770が0%から1.0%に増加するにつれてPC含有量は下がって、組成物トータルは100%に維持される。PBT、PETおよびABS1は表1と同じである。
【0068】
PC2は、表1のPC1より分子量の大きいビスフェノールAポリカーボネートである。他のすべての点でPC2とPC1は類似である。押出し後色片を成形し、研磨面の光沢を20°で測定した。その後、これらのチップを85℃のオーブン中に時間を変えて放置した。最短放置時間は15分、最長放置時間は120分とした。
【0069】
表2のデータが示すように、初期光沢値、最終光沢値ともに、Coat−O−Sil 1770の添加につれて低下している。低下度合いは、Coat−O−Silの添加量に依存している。さらに、乾燥処理に伴う低下率もCoat−O−Sil 1770レベルとともに変化している。これらのデータはさらに、PBTとPETの両方を含む成形組成物は、ABSの添加量が少なくても、成形後の乾燥処理によって低光沢面が実現できることも示している。
【0070】
表2―本文で議論したされた成形組成物15、16および17の成分/光沢測定値
【0071】
【表2】

【0072】
実施例18〜20―同一の処方で試剤の違いによる光沢への影響を評価した。これらの処方では光沢添加剤の種類だけを変えている。
【0073】
表3の添加剤はすべて0.5重量%レベル存在するように処方した。
【0074】
表3―異なる光沢添加剤を持つサンプルにおける20°光沢測定
【0075】
【表3】

【0076】
表3のデータは、多官能基添加剤は、二官能基添加剤あるいは単官能基添加剤に比べて、有意に光沢を低下させることを示している。さらにそのデータは、単官能基添加剤は、対照サンプル(添加剤なし)に比べて有意に高い光沢を与えることを示している。光沢単位の測定は平滑表面(Al)部分で行った。
【0077】
表4―LOTADER AX8900樹脂含有組成物の実施例
【0078】
【表4】

【0079】
表4の実施例で用いられたLOTADERは、80重量%のBPAポリカーボネートと、エチレン、GMAおよびアクリル酸メチルのターポリマであるLOTADER AX8900樹脂を20wt%含有するブレンド品である。
【0080】
表4の実施例18の結果は、LOTADERだけを含有する成形組成物は、より低い光沢を提供するが耐衝撃性が比較的低いことを示す。LOTADER含有組成物にMBSを添加すると、表4の実施例19の結果から、表1の実施例5の結果と比較して、MBS耐衝撃性改良剤が存在していれば、LOTADERは明らかに光沢低下に影響することがわかる。
【0081】
表4の実施例20の結果から、0.5重量%のCoat−O−Sil 1770をさらに添加しても、試験した処方においてはそれ以上の光沢低下は起こさないことが分かる。
【0082】
実施例21(比較例)
この実施例では、次の組成物(この組成物に唯一存在するポリエステルはポリブチレンテレフタレートである)の光沢特性を評価した点を除いて、実施例1の手順に従った。この組成物はゼネラルエレクトリック社のプラスチック部門から、VALOXの商標名で数年前から販売されている。
【0083】
上記の「光沢目標と仕様」は、5光沢単位未満の光沢は低光沢と考えられたこの実施例のために選択された。テストされたサンプルはAl(すなわち平滑)表面で成形された。表5に組成物の成分を示す。
【0084】
【表5】

【0085】
表5からわかるように、唯一存在するポリエステルがポリブチレンテレフタレートであるポリエステル含有処方は、入射角20°で63光沢単位、および入射角60°で93光沢単位の表面を有し、光沢単位5未満の低光沢仕様より有意に大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a)約30〜80重量%のポリカーボネート成分と、
b)組成物中にポリブチレンテレフタレートが存在するときは、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート以外の他のポリエステルの少なくとも1つと共存するようになされた、約5〜約50重量%のポリエステル成分と、
c)約2〜約25重量%の耐衝撃性改良剤と、
d)低光沢化に有効な量の、少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤とを含む組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネートは約45〜75重量%、前記ポリエステルは約10〜約45重量%、および前記耐衝撃性改良剤は約4〜約20重量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多官能基添加剤は、少なくとも約0.1重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記多官能基添加剤は、約5.0重量%未満の量で存在する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の粘度は、271℃でISO11443に準拠したキャピラリー式レオメータ測定で約500Pa・s未満である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多官能基添加剤は、エポキシ基およびシラン基を持つ請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記多官能基添加剤は、2つのエポキシ基を持つ請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1の組成物から成形された部品であって、前記部品は未塗装であり、光沢度計を用いて20°入射角で測定された時に、約5光沢単位未満の光沢を有する研磨面を有し、前記光沢は前記部品表面上で実質的に均一な部品。
【請求項9】
請求項1の組成物から成形された部品であって、前記部品は未塗装であり、成形後に高温下に少なくとも約2分間保持されることにより初期光沢より少なくとも約80%低減する研磨面を有し、前記光沢は前記部品表面上で少なくとも実質的に均一な部品。
【請求項10】
請求項1の組成物から成形された部品であって、前記部品は未塗装であり、光沢計を用いた入射角60°の測定で、約10光沢単位未満の光沢を有するテクスチャ表面を有し、光沢は前記部品表面上で少なくとも実質的に均一な部品。
【請求項11】
請求項1の組成物から成形された部品であって、前記部品は光沢計を用いた入射角60°の測定で、約3光沢単位未満の光沢を有し、光沢は前記部品表面上で少なくとも実質的に均一な部品。
【請求項12】
前記部品はテクスチャ表面を有する請求項11に記載の部品。
【請求項13】
前記耐衝撃性改良剤はスチレン−アクリロニトリルグラフトポリブタジエンである請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記耐衝撃性改良剤はスチレン−アクリロニトリルグラフトポリブタジエンであり、前記グラフトポリブタジエンはさらに、グラフトの一部としてメタクリル酸メチルも含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記耐衝撃性改良剤はメチルメタクリレートブタジエンスチレンである請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記耐衝撃性改良剤はメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルおよびジメチルシロキサンの共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記多官能基添加剤は、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン)である請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1の組成物から成形された車両用計器パネル。
【請求項19】
成形部品は車両用計器パネルである請求項5に記載の組成物。
【請求項20】
成形部品は車両用計器パネルである請求項6に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1の組成物から成形された車両用トリム部品。
【請求項22】
前記成形部品は車両用内装あるいは外装トリム部品である請求項5に記載の組成物。
【請求項23】
前記成形部品は車両用トリム部品である請求項6に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの芳香族ポリカーボネートと少なくとも1つのポリエステルを有する組成物から成形される物品の光沢を低下させる方法であって、前記組成物に低光沢化に有効な量のエポキシシランを添加するステップを含む方法。
【請求項25】
前記組成物の粘度は、271℃でISO11443に準拠したキャピラリー式レオメータで測定されて、約500Pa・s未満である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
成形部品は前記エポキシシランが存在すると、少なくとも約20%低下する光沢を持つ請求項24に記載の方法。
【請求項27】
成形部品は前記エポキシシランが存在すると、少なくとも約20%低下する光沢を持つ請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記光沢低下は成形部品の研磨面で生じる請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記光沢低下は成形部品のテクスチャ表面で生じる請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記エポキシシランはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランである請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記20°で測定された光沢は約7光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記60°で測定された光沢はテクスチャ表面で約7光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記20°で測定された光沢は約5光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項34】
テクスチャ表面上で測定された前記60°光沢は約5光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項35】
20°で測定された光沢は約3光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項36】
テクスチャ表面上で測定された60°光沢は、約3光沢単位未満である請求項24に記載の方法。
【請求項37】
クエンチ剤が存在する請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記クエンチ剤は亜リン酸である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記クエンチ剤はリン酸である請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記多官能基添加剤は重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記重合体はメタクリル酸グリシジル(GMA)含有重合体である請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記重合体は共重合体あるいはターポリマである請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記重合体はオレフィンモノマから誘導される繰り返し単位も含む請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記モノマはエチレンである請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
前記耐衝撃性改良剤はメチルメタクリレートブタジエンスチレンである請求項1に記載の組成物。
【請求項47】
前記光沢低下剤はポリオレフィンを含むメタクリル酸グリシジルである請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであり、前記耐衝撃性改良剤はメチルメタクリレートブタジエンスチレンである請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記ポリエチレンテレフタレートの量は増加される請求項1の組成物の光沢低下方法。
【請求項50】
20%以上の光沢低下レベルが増量したポリエチレンテレフタレートを通して達成される請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ポリブチレンテレフタレートが前記組成物中に存在し、前記ポリブチレンテレフタレート量は低減される請求項1の組成物の光沢低下方法。
【請求項52】
20%以上の光沢低下レベルがポリブチレンテレフタレートの低減を通して達成される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記多官能基添加剤の少なくとも約5重量%が前記組成物の成分と反応する請求項1に記載の組成物。
【請求項54】
請求項1のa、b、cおよびdが反応的な条件下で反応するプロセス。
【請求項55】
前記多官能基添加剤はポリオレフィン樹脂を含むメタクリル酸グリシジルである請求項1の組成物の光沢低下方法。
【請求項56】
前記光沢はポリオレフィンを含むメタクリル酸グリシジルのない組成物と比較して、少なくとも20%低下する請求項55に記載の方法。
【請求項57】
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤と、
(ii)ポリエチレンテレフタレートとの、反応生成物を含む組成物。
【請求項58】
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤と、
(ii)ポリブチレンテレフタレートとの、反応生成物を含む組成物。
【請求項59】
(i)少なくとも1つのエポキシ基を含む多官能基添加剤と、
(ii)少なくとも1つの酸末端基を有するポリエステルとの、反応生成物を含む組成物。
【請求項60】
前記添加剤はエポキシシランであり、前記エポキシ基は脂環式環に結合していない請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
請求項1の組成物から成形された自動車用内装部品。
【請求項62】
請求項1の組成物から成形された物品を加熱するステップを含んで、前記成形物品の前記光沢をさらに低下させる光沢低下方法。
【請求項63】
前記物品は30分未満の間、加熱される請求項62に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540803(P2008−540803A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512334(P2008−512334)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017611
【国際公開番号】WO2006/127245
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】