説明

低極性液体中で透明ゲルを処方するのに有用な重合化脂肪酸のエステル末端ポリアミド

【課題】ある程度のゲル様または自己支持性コンシステンシーが望まれる個人用手入れ用品および他の物品の処方物を提供すること。
【解決手段】低分子量のエステル末端ポリアミドが液体炭化水素とブレンドされ、ゲルコンシステンシーを有する透明組成物を形成し得る。エステル末端ポリアミドは、その当量の少なくとも50%が重合化脂肪酸由来である「x」当量のジカルボン酸と、「y」当量のエチレンジアミンのようなジアミンと、少なくとも4個の炭素原子を有する「z」当量のモノアルコールとを反応させることにより調製される。反応混合物の化学量論は、0.9≦{x/(y+z)}≦1.1および0.1≦{z/(y+z)}≦0.7である。反応物はそれらが反応平衡に達するまで加熱される。ゲルは、約5〜50%のエステル末端ポリアミドを含有し、残りは純粋な炭化水素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はゲル化剤、および詳細には炭化水素のような低極性液体のゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般に、個人用手入れ用品は、キャリア処方物中に1種以上の活性成分を含有する。活性成分(単数または複数)が製品の最終的な性能を決定する一方、キャリア処方物も製品の商業的成功に対して同じく重要である。キャリア(「基材」とも呼ばれる)のレオロジーは、製品の流動性を大きく左右し、そして流動性が、消費者が製品を利用または使用する様式を大きく左右する。
【0003】
例えば、アルミニウムクロロハイドレートおよびアルミニウム-ジルコニウム-テトラクロロハイドレックス-Glyは、防臭剤および制汗剤製品の活性成分として一般に使用されるような金属塩である。消費者は防臭剤をスティック形態から付与することを好むことを示している。従って、スティック形態防臭剤中のキャリアは比較的固い物質でなければならず、そしてステアリルアルコールのようなワックス状脂肪酸アルコールがそれらの製品中のキャリアとして使用されてきた。別の例として、リップスティック中の活性成分は着色料である。リップスティックはスティック状防臭剤ほど固い必要はないが、しかし、もちろん室温で未使用時にその形を維持しなければならない。ワックスおよび油のブレンドは、リップスティックのキャリアとしてよく適したコンシステンシーを提供することが知られている。最後の例として、シャンプーは望ましくは水よりも高い粘性を有し、そしてシャンプー中の活性成分(単数または複数)が十分に高い粘性を有していない場合に、いくぶん粘性なキャリア材料が望ましくはシャンプー処方物中に含まれる。
【0004】
上記の実施例から、個人用手入れ用品の処方物は、首尾良く個人用手入れ用品を処方するために、種々のレオロジー特性を有する材料の入手のしやすさに依存することがわかる。ゲル様特性を有する材料は、それらが未使用時にはその形を維持するが擦り付けられる際に流れるという特性において、しばしば個人用手入れ用品に対して望ましい。
【0005】
透明(すなわち透明な)キャリアは、着色料が活性成分である個人用手入れ用品を開発する処方者によって必要とされる。なぜなら、透明キャリアは、もしあったとしても、(不透過なキャリアとは反対に)着色料の発色を最小限にしか阻害しないからである。しかしながら、近年、消費者の透明個人用手入れ用品(防臭剤およびシャンプーなど)に対する好みが増加していることが示されている。従って、種々の個人用手入れ用品に必要なレオロジー特性を提供し得、そして特に処方物にゲル様特性を与え得る透明材料の需要が増加している。
【0006】
重合化脂肪酸とジアミンとから調製されたポリアミド樹脂は、個人用手入れ用品のために開発された処方物においてゲル化剤として機能することが報告されている。例えば、特許文献1は、ポリアミド樹脂化合物と低級脂肪族アルコールおよびいわゆる「ポリアミド溶媒」とから形成された透明なリップスティック組成物に関する。同様に、特許文献2は、ゲルまたはスティック状防臭剤の形成に関するものであり、ここで組成物はポリアミドゲル化剤および1価または多価アルコールを含む溶媒系を含有する。従って、先行技術は特定のポリアミドをアルコールと調合し、それによりゲルを形成することを認識していた。
【0007】
特定の修飾ポリアミド樹脂(例えば、部分的にアミド化されているがエステル化されたカルボキシル基を有するポリアミド)は、アルキド樹脂または乾性油を含有するコーティング組成物に、高いゲル強度および著しいチキソトロピー性を与えることが報告されている。Goetzeらの特許文献3を参照のこと。しかしながら、Goetzeらの修飾ポリアミド樹脂は、個人用手入れ用品においてゲル化剤として有用であることも、純粋な炭化水素がビヒクルとして使用される場合に有用なゲル化剤であることも開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,148,125号明細書
【特許文献2】米国特許第5,500,209号明細書
【特許文献3】米国特許第3,141,767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
望ましくは、純粋な炭化水素が透過性でありそして比較的高価ではないことから、それが個人用手入れ用品処方物に含まれる。純粋な炭化水素はまた、広範な種々の粘性およびグレードで入手可能である。しかしながら、純粋な炭化水素はしばしば、キャリアにおいて望ましいとされるレオロジー特性を有さない(例えば、純粋な炭化水素は天然にゲル様特性を表さない)。炭化水素が個人的手入れ用処方物中に存在する場合、製品にゲル様コンステンシーが望まれる場合には典型的にアルコールもまた存在する。当該分野において、純粋な炭化水素と合わせられてゲル様特性を有する透明材料を提供し得る物質が必要とされる。本発明はこれおよび本明細書中で記載される関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、以下の式(1)のエステル末端ポリアミド(ETPA)を含む樹脂組成物に関する:
【0011】
【化3】

ここで、n は、エステル基がエステルおよびアミド基の総数の10%〜50%を構成するような、繰り返し単位の数を示す;各場所のR1は独立して、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキル基またはアルケニル基から選択される;各場所のR2は独立してC4〜42の炭化水素基から選択されるが、ただし、少なくとも50%のR2基が30〜42個の炭素原子を有する;各場所のR3は独立して、水素原子に加えて少なくとも2個の炭素を含み、そして必要に応じて1つ以上の酸素原子および窒素原子を含有する有機基から選択される;そして各場所のR3aは独立して、水素、C1〜10アルキル、ならびにR3およびR3aがともに結合されるN原子がR3a-N-R3によって一部定義されるヘテロ環式構造の部分であるようなR3または別のR3aへの直接結合から選択され、少なくとも50%のR3a基が水素である。好ましくは、樹脂組成物は、エステル末端ポリアミドおよびジエステルの全体において、エステルおよびアミド基の合計に対するエステル基の比が0.1〜0.7であるように、n=0の式(1)を有するジエステルをさらに含む。好ましくは、樹脂組成物は反応平衡にある。
【0012】
本発明の別の局面は、エステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物の調製方法である。この方法は二酸またはそれらの反応性等価物由来のx当量のカルボン酸と、ジアミン由来のy当量のアミンと、モノアルコールまたはそれらの反応性等価物由来のz当量のヒドロキシルとを反応させる工程を含む。カルボン酸当量の少なくとも約50%は重合化脂肪酸由来であり、そしてモノアルコールは樹脂を形成するために使用される実質的に唯一の単官能性反応物である。モノアルコールは、少なくとも4個の炭素原子を有し、0.9≦{x/(y+z)}≦1.1、0.1≦{z/(y+z)}≦0.7である。本発明はまた、本発明の方法により調製された樹脂組成物を含む。
【0013】
本発明のさらなる局面は、低極性液体および少なくとも1種の上記で記載される樹脂組成物、すなわち式(1)のエステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物:
【0014】
【化4】

ここで、n、R1、R2、およびR3は、上記で記述されている、または二酸またはそれらの反応性等価物由来のx当量のカルボン酸と、ジアミン由来のy当量のアミンと、モノアルコールまたはそれらの反応性等価物由来のz当量のヒドロキシルとを反応させる方法により調製した樹脂組成物を含む組成物である。
【0015】
本発明の別の局面は透明、または半透明ゲルを調製するための方法である。この方法は、低極性の液体を樹脂組成物と合わせる工程を含み、ここで樹脂組成物は、上記で記載されたETPAを含むか、または上記で記載された方法により調製されている。
【0016】
本発明は、さらに以下を提供する:
項目1.以下の式(1)のエステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物:
【0017】
【化5】

ここで、
n は、エステル基がエステルおよびアミド基の総数の10%〜50%を構成するような、繰り返し単位の数を示し;
各場所のR1は独立して、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキル基またはアルケニル基から選択され;
各場所のR2は独立してC4〜42の炭化水素基から選択されるが、ただし、少なくとも50%のR2基が30〜42個の炭素原子を有し;
各場所のR3は独立して、水素原子に加えて少なくとも2個の炭素原子を含み、そして必要に応じて1つ以上の酸素原子および窒素原子を含有する有機基から選択され;そして
各場所のR3aは独立して、水素、C1〜10アルキル、ならびにR3およびR3aがともに結合されるN原子がR3a-N-R3によって一部定義されるヘテロ環式構造の部分であるようなR3または別のR3aへの直接結合から選択され、少なくとも50%のR3a基が水素である。
項目2.エステル基が前記エステルおよびアミド基の総数の20%〜35%を構成する、項目1に記載の組成物。
項目3.nが1〜5の整数である、項目1に記載の組成物。
項目4.R1がC12〜22アルキル基である、項目1に記載の組成物。
項目5.R2が、カルボン酸基が除去されている重合化脂肪酸の構造を有するC30〜42炭化水素基である、項目1に記載の組成物。
項目6.1%〜50%の間のR2基がC4〜19炭化水素基である、項目1に記載の組成物。
項目7.R3がC2〜36炭化水素基であり、R3aが水素である、項目1に記載の組成物。
項目8.R3aが水素であり、R3基の少なくとも1%がポリアルキレンオキシドである、項目1に記載の組成物。
項目9.-N(R3a)-R3-N(R3a)-基の少なくとも1%が独立して、ポリアルキレンアミン、
【0018】
【化6】

から選択され、ここでRcがC1〜3アルキル基である、項目1に記載の組成物。
項目10.式(1)を有するジエステルをさらに含む項目1に記載の組成物であって、ここでn=0であり、従ってエステル末端ポリアミドおよびジエステル全体におけるエステルおよびアミド基の合計に対するエステル基の比が0.1〜0.7である、組成物。
項目11.反応平衡にある、項目10に記載の組成物。
項目12.エステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物を調製するための方法であって、該方法は二酸またはそれらの反応性等価物由来のx当量のカルボン酸と、ジアミン由来のy当量のアミンと、モノアルコールまたはそれらの反応性等価物由来のz当量のヒドロキシルとを反応させる工程を含み、ここで該カルボン酸当量の少なくとも約50%は重合化脂肪酸由来であり、モノアルコールは該樹脂を形成するために使用される実質的に唯一の単官能性反応物であり、該モノアルコールは、少なくとも4個の炭素原子を有し、0.9≦{x/(y+z)}≦1.1、および0.1≦{z/(y+z)}≦0.7である、方法。
項目13.二酸、ジアミン、およびモノアルコールを含む反応混合物が反応して前記樹脂を生成する、項目12に記載の方法。
項目14.本質的に、二酸由来のx当量のカルボン酸と、ジアミン由来のy当量のアミンと、モノアルコール由来のz当量のヒドロキシルからなる反応混合物が加熱されて前記樹脂を生成する、項目12に記載の方法。
項目15.カルボン酸の全ての当量が重合化脂肪酸に由来する、項目12に記載の方法。項目16.前記カルボン酸の当量の1%〜50%が式HOOC-R2-COOHの二酸に由来し、ここでR2がC4〜19炭化水素基である、項目12に記載の方法。
項目17.前記ジアミンが式H2N-R3-NH2を有し、そしてR3がC2〜36炭化水素基である、項目12に記載の方法。
項目18.前記アミン当量の少なくとも50%が式H2N-R3-NH2のジアミンによって寄与され、ここでR3がC2〜36炭化水素基であり、そして該アミン当量の少なくとも1%が、
【0019】
【化7】

から選択される1種以上のジアミンによって寄与され、ここでR3は、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンアミン、および式
【0020】
【化8】

から選択され、ここでRcはC1〜3アルキル基である、項目12に記載の方法。
項目19.前記モノアルコールが式R1-OHを有し、R1がC12〜22炭化水素基である、項目12に記載の方法。
項目20.x/(y+z)が実質的に1に等しい、項目12に記載の方法。
項目21.0.2≦{z/(y+z)}≦0.5である、項目12に記載の方法。
項目22.項目12〜21のいずれかに記載の方法によって調製される樹脂組成物。
項目23.低極性液体と、(a)項目1〜11のいずれかに記載の組成物、および(b)項目12〜21のいずれかに記載の方法によって調製される組成物から選択される少なくとも1種の樹脂とを含む組成物。
項目24.透明または半透明である、項目23に記載の組成物。
項目25.自己支持ゲルである、項目23に記載の組成物。
項目26.離漿を示さない、項目23に記載の組成物。
項目27.樹脂および低極性液体の全重量を基準にして、少なくとも約5重量%〜約50重量%未満の樹脂を有する、項目23に記載の組成物。
項目28.前記低極性液体が炭化水素を含む、項目23に記載の組成物。
項目29.前記炭化水素が油である、項目28に記載の組成物。
項目30.低極性液体を、項目1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物または項目12〜22のいずれかに記載の方法によって調製される樹脂組成物と合わせる工程を含む、透明または半透明ゲルを調製するための方法。
項目31.前記低極性液体が炭化水素である、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明のゲル化炭化水素のレオロジーにおける温度の効果を図形的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、エステル末端ポリアミド(ETPA)、および全部または一部、エステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物(本明細書中以下、単に「樹脂」とする)を調製する方法に関する。ETPA(「ETPA樹脂」)を含む樹脂は、炭化水素および他の液体のゲル化剤として有用であり、ここで得られるゲルは、例えば、ろうそく、化粧用処方物、およびゲル様特性から利益を受け得る他の製品において有用な成分である。
【0023】
本明細書で使用される、ETPAは式(1)の分子を示し、ここで、n、R1、 R2、およびR3
は、本明細書中後で定義される。
【0024】
【化9】

典型的には、本発明の樹脂組成物は、分子中に存在するアミド対の数によって特徴づけられ得るETPA分子の混合物を含有する(すなわち、樹脂の一部分は単一のアミド対を有するETPA分子からなり得るが、一方樹脂の別の部分は2個のアミド対を有するETPA分子からなり得る、など)。樹脂中のアミド対の分配(それにより0個、1個、2個、または3個などのアミド対を有するETPAからなる樹脂の割合を意味する)は、出発物質の化学量論に大
部分依存する。反応物の化学量論と樹脂の特性との間の関連性は以下でより十分に議論される。
【0025】
従って、本発明は式(1)のエステル末端ポリアミドに関する:
【0026】
【化10】

ここで、n は、エステル基がエステルおよびアミド基の総数の10%〜50%を構成するような、繰り返し単位の数を示す;各場所のR1は独立して、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキル基またはアルケニル基から選択される;各場所のR2は独立してC4〜42の炭化水素基から選択されるが、ただし、少なくとも50%のR2基が30〜42個の炭素原子を有する;各場所のR3は独立して、水素原子に加えて少なくとも2個の炭素を含み、そして必要に応じて1つ以上の酸素原子および窒素原子を含有する有機基から選択される;そして各場所のR3aは独立して、水素、C1〜10アルキル、ならびにR3およびR3aがともに結合されるN原子がR3a-N-R3によって一部定義されるヘテロ環式構造の部分であるようなR3または別のR3aへの直接結合から選択され、少なくとも50%のR3a基が水素である。簡便のために、R1、R2、R3などは、本明細書中で「基」として表されるが、しかしこれらは同じくラジカル(R1)およびジラジカル(R2およびR3)として表され得る。
【0027】
式(1)から分かり得るように、本発明のエステル末端ポリアミドはエステル基、すなわち-C(=O)O-基(これは全く同じように-OC(=O)-基として書かれ得る)を、一連のアミド基、すなわち-N(R3a)C(=O)-基(これは全く同じように-C(=O)N(R3a)-基として書かれ得る)の両端に有する。文字「n」はETPA分子中に存在する繰り返し単位の数を示し、そして0より大きい整数である。本発明によれば、nは1でもよく、その場合ETPAは同じ量のエステルおよびアミド基を含有する、すなわちエステル基がETPA分子中のエステルおよびアミド基の総数の50%を構成する。好ましくは、ETPA分子は相対的に低分子量であり、従ってnは好ましくは1〜約10、そしてより好ましくは1〜約5である。ETPA分子がそのような低分子量を有するため、それらは全く同じようにエステル末端オリゴアミドとして表され得る。いずれの場合においても、別の見方で眺めると、エステル基は、エステルおよびアミド基の総数の約10%〜約50%、好ましくは約15%〜約40%、そしてより好ましくは約20%〜約35%を構成する。本発明はまた、種々のnの値を有するETPA分子の混合物に関する。
【0028】
式(1)のR1基は少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基である。アルキル基が好適であるが、1〜3個の、および好ましくは1個の不飽和結合部位を有するアルケニル基もまた適切である。ETPA分子が、R1が4個以下の炭素原子を有するように作成されている場合、ETPA分子は純粋な炭化水素、特に純粋な脂肪族炭化水素のゲル化剤として非常に劣っている。しかしながら、R1基の炭素原子の数が4よりも増やされ、そして好ましくは少なくとも約10個の炭素原子を有する、より好ましくは少なくとも約12個の炭素原子を有する場合、ETPA分子およびそれらのブレンドは、脂肪族炭化水素の優れたゲル化剤であることが驚くべきことに見出された。R1基の炭素原子の数の上限は特に重大ではないが、しかしながら好ましくはR1基は、約24個以下の炭素原子を、そしてより好ましくは22個以下の炭素原子を有する。約16〜22個の炭素原子を有するR1基が特に好ましい。どの場所のR1の本質も、他のどの場所のR1の本質と独立している。
【0029】
式(1)のR2基は4〜42個の炭素原子を含有する炭化水素である。好適なR2基は30〜42個の炭素原子を含有し(すなわちC30〜42基であり)、そして実際、本発明のETPA分子またはETPA分子の混合物中、R2基の少なくとも50%が30〜42個の炭素原子を有する。そのようなR2基は、ETPA分子が、ダイマー酸としても知られる重合化脂肪酸から調製されている場合、容易にETPA分子中に導入される。重合化脂肪酸は、典型的には構造の混合物であり、ここでそれぞれのダイマー酸は飽和、不飽和、環式、非環式などであり得る。従って、R2基の構造の詳細な特徴付けは容易に入手できない。しかしながら、脂肪酸の重合の良い記述が、例えば、米国特許第3,157,681号、およびNavalStores- Production, Chemistry and Utilization、D.F.Zinkel および J.Russel(編)、Pulp.Chem.Assoc. Inc.、1989、第23章に見い出され得る。
【0030】
重合化脂肪酸を形成するために使用される代表的な不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを含む。木材のパルプ化プロセスの副生成物として得られる長鎖不飽和脂肪酸を含有する混合物である、トール油脂肪酸は、本発明において有用な重合化脂肪酸を調製するために好適である。トール油脂肪酸は長鎖脂肪酸の好適な供給源であるが、あるいはまた、重合化脂肪酸は他の供給源(例えば、大豆またはカノラ(canola))由来の不飽和脂肪酸の重合化により調製され得る。従って、30〜42個の炭素原子を含有するR2基は、カルボン酸基の除去の後、ダイマーまたはトリマー酸の構造を有すると記載され得る(以下に見られるように、ダイマー酸のカルボン酸基は反応してETPA分子のアミドおよび/またはエステル基を形成し得る)。
【0031】
本発明のETPA分子は少なくとも50%のC30〜42基をR2基として含有するが、好ましくはR2基全体で少なくとも75%はC30〜42基からなり、そしてより好ましくは少なくとも90%はC30〜42基からなる。R2基が全てC30〜42である、ETPA分子およびETPA分子の混合物が、本発明の好適な実施態様である。
【0032】
しかしながら、ETPA分子は、30個より少ない炭素原子を有するR2基もまた含有し得る。例えば、本発明のETPA分子は、約4〜19個、好ましくは約4〜12個、そしてより好ましくは約4〜8個の炭素原子を有するR2基を1つ以上含有し得る。炭素原子は直線状、分枝鎖状、または環式状に配置され、そして不飽和が任意の2個の炭素原子間に存在し得る。従って、R2は脂肪族または芳香族であり得る。存在する場合、これらの低炭素数R2基は好ましくは完全に炭素および水素から形成される(すなわち炭化水素である)。好ましくは、そのような低炭素数R2基はR2基の50%未満を構成する;しかしながら、存在する場合、R2基の総数の約1%〜約50%を、そして好ましくは約5%〜約35%を構成する。各場所のR2の本質は、他のどの場所のR2の本質とも独立している。
【0033】
式(1)の-N(R3a)-R3-N(R3a)-基は2つのカルボニル(C=O)基と連結している。本発明の好適な実施態様において、ETPA分子のすべてのR3a基は水素であり、従ってR3は単独で式-N(R3a)-R3-N(R3a)-に示される2個の窒素原子に結合する。この場合、R3基は少なくとも2個の炭素原子、および、必要に応じて酸素および/または窒素原子、さらに炭素、酸素および窒素原子のその他の満たされていない空位を完全にするために必要な水素原子を含有する。好適な実施態様において、R3は2〜約36個の炭素原子を有する、好ましくは2〜約12個の炭素原子を有する、そしてより好ましくは2〜約8個の炭素原子を有する炭化水素基である。炭素原子は直線状、分枝鎖状、または環式状に配置され、そして不飽和が任意の2個の炭素原子間に存在し得る。従って、R3は脂肪族または芳香族構造を含有し得る。各場所のR3およびR3aの本質は、他のどの場所のそれらの本質とも独立している。
【0034】
R3基は、炭素および水素原子に加えて、酸素および/または窒素原子を含有し得る。代表的な酸素原子含有R3基は、ポリアルキレンオキシド、すなわちアルキレン基および酸素原子を交互に有する基である。実際、R3基の酸素化は好ましくはエーテル基として存在する。代表的なポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー(ランダムまたはブロックのいずれか)を含むが、これらに限定されない。そのような酸素化R3基は、JeffamineTMジアミン(Texaco、Inc.、Houston、TX)の使用により、本発明のETPA分子内に容易に導入される。これらの材料は広範な範囲の分子量で入手可能である。R3基のいくつか(すなわち、少なくとも約1%)は酸素原子を含有し得るが、好ましくは、より少ない数のR3基(すなわち、50%より少ない)が酸素を含有し、そしてより好ましくは、R3基の約20%未満が酸素を含有する。酸素含有R3基の存在は、ETPAの軟化点を低下させる傾向がある。
【0035】
存在する場合、R3基の窒素原子は、好ましくは第二級または第三級アミンとして存在する。第二級アミン基を有する典型的な窒素原子含有R3基は、ポリアルキレンアミン、すなわちアルキレン基およびアミン基を交互に含有する基であり、時々、ポリアルキレンポリアミンとして示される。アルキレン基は、好ましくは低級アルキレン基、例えばメチレン、エチレン(すなわち、-CH2CH2-)、プロピレンなどである。典型的なポリアルキレンアミンは、式-NH-(CH2CH2NH)mCH2CH2-NH-により表され得、ここでmは1〜約5の整数である。
【0036】
しかしながら、窒素原子含有R3基の窒素原子は、代替的に(または付加的に)第三級窒素原子として存在し得る(例えば、以下の式のヘテロ環中に存在し得る:
【0037】
【化11】

ここで、RcはC1〜3アルキル基である)。
【0038】
上記で記載した窒素原子含有R3基において、R3aは水素であった。しかしながら、R3aは水素に制限される必要はない。事実、R3aはC1〜10アルキル基、好ましくはC1〜5アルキル基、そしてより好ましくはC1〜3アルキル基であり得る。さらに、R3およびR3a、または2個のR3a基は、一緒にヘテロ環式構造(例えば、以下のようなピペラジン構造)を形成し得る。
【0039】
【化12】

この場合、2個のR3a基は、一緒になって2個の窒素原子の間にエチレン架橋を形成するものとしてみなされ得、一方、R3もまたエチレン架橋である。
【0040】
本発明はまた、上記のようなETPA分子を含む組成物(「樹脂」)を提供する。そのような樹脂は式(1)のETPA分子に加えて、例えばETPA形成反応中に形成される副生成物を含む。式(1)のETPA分子は、例えば、クロマトグラフィーまたは蒸留を使用して、そのような副生成物から精製され得るが、副生成物は、典型的には微量であるかまたは樹脂に望まれる性質を分け与えており、従って式(1)のETPA分子から分離される必要はない。
【0041】
以下に記載されるように、アルコール、アミン、およびカルボン酸は、本発明のETPA分子および樹脂を形成するための出発材料として好適である。好ましくは、これらの出発材料は好ましくは化学量論的に、そして得られる樹脂の酸価が25未満、より好ましくは15未満、そしてより好ましくは10未満であり、一方アミン数が好ましくは10未満、より好ましくは5未満、そしてなおより好ましくは1未満であるような反応条件下で、一緒に反応させられる。樹脂の軟化点は、好ましくは室温より高く、より好ましくは約50℃〜約150℃であり、そしてなおより好ましくは約80℃〜約130℃である。
【0042】
以下に記載されるような反応剤およびETPA形成反応の化学量論が適切に選択される場合、式(1)のある材料(ここでn=0、すなわちジエステル)が形成され得る。本発明の好適な実施態様において、式(1)の材料(ここでn=0)はETPA樹脂中に存在する。本発明の好適な樹脂は、樹脂中に存在する式(1)の分子(ここでnは0であり得る)の全体のアミドおよびエステル基を基準にして、50%〜70%のエステル基を含有する。そのような樹脂はまた、別々の反応系で、上記で記載されるETPA(n=0の材料をほとんどまたは全く有さない)を調製し、次いで式(1)のジエステル(n=0のみ、アミド基を有さない)を調製し、そして2つの材料を一緒に混合することにより、生産され得た。
【0043】
本発明により、モノアルコール、重合化脂肪酸を含む二酸(diacid)、およびジアミンが、反応してETPA樹脂を精製し得る。好ましくは、樹脂は、樹脂の性質に何らかの有意な変化を提供しない(すなわち、本発明のETPA樹脂が実質的に反応平衡にある)さらなる反応時間において特徴づけられる。必要な反応剤の各々(モノアルコール、二酸、およびジアミン)は、ここで順番に記載され、続いて本発明のETPA樹脂の調製のための任意の反応剤および例示的な反応条件が考察される。
【0044】
モノアルコールは、式R1-OHにより表され、ここでR1は少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素基である。従って、モノアルコールはまた、一価アルコールとしても記載され得る。R1は、好ましくはC10〜36炭化水素であり、より好ましくはC12〜24炭化水素、さらにより好ましくはC16〜22炭化水素であり、そしてなおさらに好ましくはC18炭化水素である。本明細書中で使用されるように、用語C10〜36は、少なくとも10個の、しかし36個
以下の炭素原子を有する炭化水素基を示し、そして同様な用語が類似の意味を有する。炭化水素基の炭素原子は、直線状、分枝鎖状、または環式状で配置され得、そしてこの基は飽和または不飽和であり得る。しかしながら、好ましくは、R1は直線状で末端の炭素原子に位置するヒドロキシル基を持つ、すなわちモノアルコールは第一級モノアルコールである。従って、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール(セチルアルコール)、1-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、1-エイコサノール(アラキジルアルコール)、および1-ドコサノール(ベヘニルアルコール)が、本発明の樹脂を調製するために好適なモノアルコールであり、ここで括弧内の名称は、これらのモノアルコールがそれにより知られている一般名または慣用名である。モノアルコールは飽和アルキル基で例示されているが、モノアルコールはまた、代替的にアルケニル基、すなわち少なくとも任意の二個の隣接する炭素原子間に不飽和を有するアルキル基を含有し得る。これらのアルコールの1種または混合物が、本発明の樹脂を調製するために使用され得る。
【0045】
本発明に適した別のモノアルコール反応剤は、いわゆるゲルベアルコール(Guerbet alcohol)と呼ばれるものである。ゲルベアルコールは一般式H-C(Ra)(Rb)-CH2-OHを有し、ここでRaおよびRbは、同じであるかまたは異なり得、そして好ましくはC6〜12炭化水素基を表し得る。ゲルベアルコールのさらなる議論は、例えば「DictionaryForAuxiliaries For Pharmacy, Cosmetics And Related Fields,」 H. P. Fiedler、第3版、1989、EditioCantorAulendorfに見いだされ得る。24個の炭素原子を有する2-ヘキサデシルオクタデカノールが、本発明において使用に好適なゲルベアルコールである。
【0046】
R1が炭化水素であるため、モノアルコールは、本発明の樹脂を調製するために用いる反応条件下(後で議論される)で単官能性(monofunctional)反応剤である。さらに、好適な反応条件下で、R1-OHは、本発明の樹脂を形成するために使用される唯一の単官能性反応剤である。従って、ETPA樹脂を調製するのに有用な反応剤の混合物は、好ましくはモノカルボン酸(すなわち、単一のカルボン酸基を含有する有機分子)および/またはモノアミン(すなわち、単一のアミン酸基を含有する有機分子)を含有しない。
【0047】
二酸は、式HOOC-R2-COOHによって表され、それによりジカルボン酸、二塩基酸、または二塩基性カルボン酸としても示され得る。R2は炭化水素基であり、ここでその炭素原子は、直線状、分枝鎖状、または環式状で配置され得、そしてこの基は飽和または不飽和であり得る。本発明の1つの実施態様において、二酸は重合化脂肪酸のみである。
【0048】
本発明の樹脂を形成するために使用されるような重合化脂肪酸は、周知のかつ商業的に昔からあるものであり、従って非常に詳細に記載される必要はない。重合化脂肪酸は、典型的には、長鎖不飽和脂肪酸(例えば、C18モノカルボン酸)を、脂肪酸が重合化するために、クレー触媒の存在下約200〜250℃まで加熱することによって形成される。生成物は、典型的にはダイマー酸(すなわち、脂肪酸の二量化により形成されたC36ジカルボン酸)、およびトリマー酸(すなわち、脂肪酸の三量化により形成されたC54トリカルボン酸)を含む。重合化脂肪酸は、典型的には、構造の混合物であり、ここで個々のダイマー酸は、飽和、不飽和、環式、非環式などであり得る。脂肪酸の重合化のより詳細な議論は、例えば、米国特許第3,157,681号、およびNavalStores- Production, Chemistry and Utilization、D.F.Zinkel および J.Russel(編)、Pulp.Chem.Assoc. Inc.、1989、第23章に見い出され得る。
【0049】
脂肪酸の重合化が典型的にはトリマー酸よりも非常に多くダイマー酸を形成するので、当業者は、しばしば重合化脂肪酸を、いくらかのトリマー酸およびより高重合化生成物がダイマー酸とともに存在し得るとしても、ダイマー酸として示し得る。重合化脂肪酸が、重合化脂肪酸の総重量を基準にして、約10重量%未満のトリマー酸を含有し、そしてダイマー酸が少なくとも約90重量%の重合化脂肪酸を構成することが好ましい。さらに好ましくは、ダイマー酸が本質的に全ての重合化脂肪酸を構成する。
【0050】
重合化脂肪酸を形成するために使用される典型的な不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを含む。木材のパルプ化プロセスの副生成物として得られる長鎖不飽和脂肪酸を含有する混合物である、トール油脂肪酸は、本発明において有用な重合化脂肪酸を調製するために好適である。トール油脂肪酸は長鎖脂肪酸の好適な供給源であるが、重合化脂肪酸は代替的に他の供給源(例えば、大豆またはカノラ)由来の不飽和脂肪酸の重合化により調製され得る。本発明において有用な重合化脂肪酸は、約180〜約200のオーダーで酸価を持つ液体である。
【0051】
本発明の重合化脂肪酸は、本発明の樹脂形成反応において使用される前に水素化され得る。水素化は、本発明の樹脂にわずかにより高い融点を提供し、ならびにより大きな酸化安定性および色彩安定性の樹脂を提供する傾向がある。水素化重合化脂肪酸は、より薄い色彩の樹脂を提供する傾向があり、そして本発明の実施において使用するのに好適な重合化脂肪酸である。
【0052】
重合化脂肪酸、ダイマー酸、およびその水素化体は、多数の市販品から得られる。例えば、Union Camp Corporation (Wayne、NJ)は、UNIDYME(登録商標)の登録商標で重合化脂肪酸を販売している。
【0053】
本発明の別の実施態様において、ETPA樹脂を調製するために使用される二酸は重合化脂肪酸および「共二酸(co-diacid)」の混合物であり、ここで用語共二酸は、重合化脂肪酸を除く任意の式HOOC-R2-COOHの二酸(ここでR2は、上記で定義されている)を単に示す。例示的な共二酸は、いわゆる式HOOC-R2-COOHの「直線状」の二酸であり、ここでR2は、直線状C4〜12の炭化水素基であり、そしてより好ましくは直線状C6〜8の炭化水素基である。本発明に適した直線状二酸は、1,6-ヘキサン二酸(アジピン酸)、1,7-ヘプタン二酸(ピメリン酸)、1,8-オクタン二酸(スベリン酸)、1,9-ノナン二酸(アゼライン酸)、1,10-デカン二酸(セバシン酸)、1,11-ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸(1,10-デカンジカルボン酸)、1,13-トリデカン二酸(ブラシル酸)、および1,14-テトラデカン二酸(1,12-ドデカンジカルボン酸)を含む。
【0054】
本発明において使用するための別の例示的な共二酸は、アクリル酸またはメタクリル酸(または、引き続き加水分解工程により酸を形成する、それらのエステル)と、不飽和脂肪酸との反応生成物である。例えば、この型のC21二酸が、アクリル酸のC18不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)との反応により形成され得、ここでエン反応(ene-reaction)はおそらく反応剤間で起こっている。例示的なC21二酸は、WestvacoCorporation、ChemicalDivision、Charleston Heights、South Carolinaから、その製品番号1550として市販されている。
【0055】
芳香族二酸が、共二酸として使用され得る。本明細書中で使用される「芳香族二酸」は、2つのカルボン酸基(-COOH)またはその反応性等価物(例えば、酸塩化物(-COCl)またはエステル(-COOR))、および少なくとも1つの芳香環(「Ar」)を有する分子である。フタル酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸)は、例示的な芳香族二酸である。芳香族二酸は、HOOC-CH2-Ar-CH2-COOHなどにおけるような、芳香環に結合した脂肪族炭素を含有し得る。芳香族二酸は2つの芳香環を含有し得、これらは1つ以上の炭素結合を介して一緒になり得る(例えば、カルボン酸置換を有するビフェニル)か、またはこれらは縮合し得る(例えば、カルボン酸で置換したナフタレン)。
【0056】
ジアミン反応剤は2個のアミン基を有し、これらは両方とも好ましくは第一級アミンであり、そして式HN(R3a)-R3-N(R3a)Hによって表される。R3aは、好ましくは水素であるが、またアルキル基でもあり得るか、またはR3もしくは別のR3aと一緒になってヘテロ環式構造を形成し得る。R3aが水素ではなく、そして/またはR3が水素ではないジアミンは、本明細書で共ジアミン(co-diamine)と示され得る。存在する場合、共ジアミンは、好ましくはジアミンに比較してより少ない量で使用される。R3は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素基であり得、ここで炭素原子は、直線状、分枝鎖状、または環式状で配置され得、そしてこの基は飽和であるかまたは不飽和を含有し得る。従って、R3は脂肪族または芳香族であり得る。好適なR3炭化水素基は2〜36個の炭素原子を有し、より好適なR3炭化水素基は2〜12個の炭素原子を有し、そしてなおより好適な炭化水素基は2〜6個の炭素原子を有する。
【0057】
炭化水素R3基を有する例示的なジアミン(これらは市販されている)は、以下を含むが制限されない;エチレンジアミン(EDA)、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノペンタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミン、HMDAとしてもまた知られている)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ジアミノフェナントレン(9,10-を含む、すべての異性体)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,7-ジアミノフルオレン、フェニレンジアミン(1,2;1,3および/または1,4異性体)、アダマンタンジアミン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,8-ジアミノ-p-メンタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン(1,5;1,8;および2,3を含む、すべての異性体)、および4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン。
【0058】
適切な芳香族ジアミン(これにより2つの反応性の、好ましくは第一級のアミン基(-NH2)および少なくともひとつの芳香環(「Ar」)を有する分子を意味する)は、キシレンジアミンおよびナフタレンジアミン(すべての異性体)を含む。
【0059】
ジアミンのR3基は、ポリアルキレンオキシド基の形態で酸素原子を含有し、その場合において、ジアミンは、共ジアミンとして示され得る。例示的なポリアルキレンオキシド性共ジアミンは、JEFFAMINETMジアミン、すなわちポリエーテルジアミンとしてもまた知られているポリ(アルキレンオキシ)ジアミン(Texaco、Inc.、Houston、TXより)を含むが、制限されない。好適なポリアルキレンオキシド含有共ジアミンは、JEFFAMINE(登録商標)EDおよびDシリーズのジアミンである。エーテル含有R3基は、樹脂の融点を望ましくない程度まで降下させる傾向があるので、好適ではない。しかしながら、多量の炭化水素ベースのジアミンとともにある少量のポリアルキレンオキシドベースのジアミンは、本発明における使用によく適している。一般に、ジアミン反応剤は上記で記載されるような純粋なジアミンまたはそのようなジアミンの混合物であり得る。
【0060】
ジアミンのR3基は、窒素原子を含有し得、ここでそれらの窒素原子は好ましくは第二級または第三級窒素原子である。典型的な第二級窒素原子を有する窒素原子含有R3基は、ポリアルキレンアミン、すなわちアルキレン基およびアミン基(すなわち、-NH-)を交互に含有する基である。アルキレン基は、好ましくはエチレン(すなわち、-CH2CH2-)で有り、そしてポリアルキレンアミンは、式NH2-(CH2CH2NH)mCH2CH2NH2により表され得る(ここで、mは1〜5の整数である)。ジエチレントリアミン(DETA)およびトリエチレンテトラアミン(TETA)が代表的な例である。ジアミンが第二級アミンの場合に加えて2つの第一級アミンを含有する場合、EPTA形成反応は、第一級アミンが(第二級アミンに優先して)二酸成分と反応するように、好ましくは相対的に低い温度で行われる。
【0061】
しかしながら、窒素含有R3基の窒素原子はまた、第三級窒素原子としても存在し得る(例えば、それらは以下の式のヘテロ環に存在し得る:
【0062】
【化13】

ここでRcはC1〜3アルキル基である)。ビス(アミノエチル)-N,N’-ピペラジンおよびビス(アミノプロピル)-N,N’-ピペラジンが、これらのR3基をETPA分子へ導入するために使用され得、そしてこれらが本発明によるそのような共ジアミンである。さらに、共ジアミンは1つの第一級アミン基および1つの第二級アミン基を有し得る(例えば、N-エチルエチレンジアミン、または1-(2-アミノエチル)ピペラジン)。一般に、第二級アミンを有するアミン化合物はいかなる程度においても反応混合物中に存在しないことが好ましい。なぜならそれらがエステル末端ポリアミド中に組み込まれることにより、エステル末端ポリアミドのゲル化能力の劣化を招く傾向があるからである。
【0063】
一般に、ジアミン反応剤は、式 HN(R3a)-R3-NH(R3a) を有し得、ここでR3aは好ましくは水素であるが、しかしまた、C1〜10アルキル、好ましくはC1〜5アルキル、そしてより好ましくはC1〜3アルキルでもあり得る。さらに、R3aは、R3または別のR3a基と一緒になってヘテロ環式構造を形成し得る。例えば、ピペラジンが共ジアミンとして使用される場合、HN(R3a)-R3-NH(R3a)構造中の2つのR3a基は一緒になってエチレン架橋を形成している。
【0064】
二酸および/またはジアミンの反応性等価物が、本発明において使用され得る。例えば、ジエステルは二酸の一部またはすべてと置換され得、ここで「ジエステル」は、二酸のヒドロキシル含有分子でのエステル化生成物を示す。しかしながら、そのようなジエステルは、ヒドロキシル含有分子が反応容器から容易に除去され得、引き続きモノアルコールおよび/またはジアミン(両方とも本明細書中で定義される)がジエステルと反応し得るように、好ましくは、相対的に揮発性のヒドロキシル含有分子から調製される。低級アルキルジエステル、例えば、本明細書中で定義されるような二酸およびC1〜4の一価(monohydic)アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール)のエステル化または脱エステル化生成物が、本発明のETPA樹脂形成反応において二酸の一部またはすべての代わりに使用され得る。二酸の酸ハロゲン化物も同様に、二酸の一部またはすべての代わりに使用され得るが、しかしながら、そのような材料は二酸と比較して代表的に非常に高価であり、そして取り扱いにくく、従って二酸が好適である。同様に、モノアルコールが、本発明のETPA樹脂形成反応に用いられる前に、揮発性酸(例えば、酢酸)でエステル化され得る。そのような反応性等価物がこの反応において用いられ得るが、そのような等価物は望ましくない活性基を反応容器中に導入するために、その存在が好適ではない。
【0065】
本発明の樹脂の調製において、上記で記載した反応剤は任意の順序で合わせられ得る。好ましくは、反応剤は単に一緒に混合され、そして本質的に完了した反応を達成するために十分な時間と温度で加熱され、それにより本発明の樹脂を形成する。本明細書中で使用される用語「完了した反応」および「反応平衡」は、本質的に同じ意味を有し、すなわち、生成樹脂のさらなる加熱が生成樹脂の性能特性においてどのような認識可能な変化ももたらさないことである。ここでもっとも関連のある性能特性は、液体炭化水素(上記で記述されおよび以下でさらに議論される)と合わされる際に、透明なフィルム状のゲルを形成する生成樹脂の能力である。
【0066】
従って、ETPA樹脂は1工程手順により形成され得、ここでモノアルコール、二酸(共二酸を含む)、およびジアミン(共ジアミンを含む)のすべてが合わされ、次いで約200〜250℃で数時間、代表的には2〜8時間加熱される。1つ以上の反応剤が室温で固体であり得るので、各成分をわずかに上昇させた温度で合わせ、次いで、モノアルコール、二酸、およびジアミンの間で反応を引き起こすのに十分な温度で反応混合物を加熱する前に均一な混合物を形成することが簡便であり得る。
【0067】
その代わりに、あまり好ましくはないが、反応剤の2つを合わせ、そして一緒に反応させ、次いで第3の反応剤を加えて、続けてさらに加熱して、所望の生成物を得る。反応の進行は、生成混合物の酸および/またはアミンの数の定期的な測定により、簡便に観測され得る。1つの実施例として、二酸はポリアミドを形成するようにジアミンと反応され得、次いでこの中間体ポリアミドがモノアルコールと反応してエステル末端ポリアミドを形成し得る。または、二酸はモノアルコールと反応してそれによりジエステルを形成し得、そしてこのジエステルがジアミンと反応してそれによりエステル末端ポリアミドを形成し得る。生成樹脂の成分が好ましくは反応平衡にあるため(アミド転移反応およびエステル転移反応により)、反応剤が好適に合わせられる順序はETPA樹脂の性質において大きく影響しない。
【0068】
カルボン酸とアミン基との間のアミド形成および/またはカルボン酸とヒドロキシル基との間のエステル形成を促進し得る任意の触媒が、上記で記載される反応混合物中に存在し得る。従って、リン酸のような鉱酸、または酸化ジブチルスズのようなスズ塩が、反応の間存在し得る。さらに、アミド形成およびエステル形成に際して水が生成してくるので反応混合物から水を除去することが好ましい。これは、反応混合物を減圧化に維持することにより好適に達成される。
【0069】
本発明によるエステル末端ポリアミドを調製するために、反応剤の化学量論を制御することは重要である。反応剤の化学量論に関する以下の議論において、用語「当量」および「当量%」は、当該分野で用いられるようなそれらの標準的な意味を有するものとしてみなされ、使用される。しかしながら、さらに明瞭にするために、当量が、分子の1モル量中に存在する反応基の数(1モルのジカルボン酸(例えばセバシン酸)は2当量のカルボン酸を有し、一方1モルのモノアルコールは1当量のヒドロキシルを有するように)を示すことを注記する。さらに、二酸が2個の反応基(両方ともカルボン酸)のみを有し、モノアルコールが1個の反応基(ヒドロキシル基)のみを有し、そしてジアミンが2個の反応基(好ましくは両方とも第一級アミン)のみを有し、そしてこれらが好ましくは、必要ではないが、反応混合物中に存在する唯一の反応材料であることが、強調される。
【0070】
本発明に従って、カルボン酸の当量が、モノアルコール由来のヒドロキシルおよびジアミン由来のアミンの合わせた当量と、実質的に等しいことが好ましい。言い換えるならば、ETPA樹脂を形成するために使用される反応混合物がx当量のカルボン酸と、y当量のアミンと、z当量のヒドロキシルとを有する場合、0.9≦{x/(y+z)}≦1.1であり、そして好ましくは{x/(y+z)}は実質的に1.0である。これらの条件下で、実質的に全てのカルボン酸基が、実質的に全てのヒドロキシルおよびアミン基と反応し、その結果最終生成物はごくわずかの未反応のカルボン酸、ヒドロキシル、またはアミン基を含有する。言い換えるならば、本発明の樹脂の酸およびアミンの数はそれぞれ好ましくは約25より少なく、より好ましくは約15より少なく、そしてより好ましくは約10より少なく、そしてなおより好ましくは約5より少ない。
【0071】
共二酸がETPA樹脂を調製するために用いられる場合、共二酸は好ましくは、反応混合物中に存在するカルボン酸の当量の約50%以下で寄与する。別の方法で記述すると、共二酸は、反応混合物中の酸の当量の0〜50当量%で寄与する。好ましくは、共二酸は、反応混合物中の酸の当量の0〜30当量%で寄与し、そしてより好ましくは反応混合物中の酸の当量の0〜10当量%で寄与する。
【0072】
共ジアミンがETPA樹脂を調製するために用いられる場合、共ジアミンは反応混合物中に存在する。別の方法で記述すると、共ジアミンは、反応混合物中のアミン等価物の当量の0〜50当量%で寄与する。好ましくは、共ジアミンは、反応混合物中のアミン等価物の当量の0〜30当量%で寄与し、そしてより好ましくは反応混合物中のアミン等価物の当量の0〜10当量%で寄与する。
【0073】
本発明の樹脂を調製するために、樹脂形成反応において使用されるヒドロキシルおよびアミンの相対当量を制御することが重要である。従って、ヒドロキシル基は、本発明のエステル末端ポリアミド含有樹脂を調製するために用いられるヒドロキシルおよびアミンの総当量の約10〜70%で寄与する。別の方法で記述すると、0.1≦{z/(y+z)}≦0.7であり、ここでyおよびzは上記で定義されている。好適な実施態様において、0.2≦{z/(y+z)}≦0.5であり、一方さらに好適な実施態様において、0.25≦{z/(y+z)}≦0.4である。
【0074】
反応剤の化学量論は、ETPA樹脂の組成物に重要な影響を有する。例えば、モノアルコールの量を増加させて作成したETPA樹脂はより少ない平均分子量を有する傾向がある。言い換えると、単官能性反応剤がより多く使用されるほど、樹脂の平均ETPA分子のアミド対の数が減少する傾向がある。事実、70当量%のモノアルコールが用いられる場合、樹脂中のETPA分子の大部分は1つまたは2つのアミド対のみを有する。一方で、使用されるモノアルコールが少なくなるほど、得られる樹脂中のETPAの平均分子量は増加する。一般に、樹脂中のETPAの平均分子量が増加すると樹脂の融点および溶融粘性が上がる傾向があり、これはETPA樹脂が低極性液体と合わせられた場合により強固なゲルを提供する傾向を有する。
【0075】
上記で記述されるように、本明細書中で記載されるエステル末端ポリアミドは室温で液体炭化水素(ならびに他の液体)とゲルを形成するのに有用であり、従って好ましくは室温より高い軟化点を有する。「ゲル」の明確な定義は与えることが容易ではないが、しかし全部でないにしても大部分の研究者が「ゲル」を認識する。一般に、ゲルは液体またはペーストよりも粘性が高く、そして静置される場合その形状を保持する、すなわち自己支持する。しかしながら、ゲルはスティックまたはワックスほどには固くあるいは頑丈ではない。ゲルはワックス様固体よりもより容易に浸透し、ここで「固い」ゲルは「柔らかい」ゲルよりも総体的に浸透により抵抗を有する。
【0076】
Almdaleら(Polymer Gels and Networks、第1巻、第5号(1993))は、ゲルとしての系を定義する2つの基準を列挙している:(1)ゲルは2つ以上の成分からなり、その1つは液体であってかなりの量で存在する;および(2)ゲルは固体または固体様である軟材料である。この後者の必要条件は、レオロジー測定を通してより正確に記載され得る。代表的に、ゲルは貯蔵弾性率G’(w)(これはより高い周波数(1〜100ラジアン/秒の次数で)におい
て明白なプラトーを示す)、および損失弾性率G”(w)(これはプラトー領域において貯蔵弾性率よりもかなり小さい)を保有する。厳密な意味で、用語「ゲル」は低周波数でG”(w)
の値よりも高いG’(w)値を有する系に適用される。本発明による組成物の多くは上記の定義の一方または両方によるゲルである。ゲルは、その降伏値が重力により課せられる剪断応力よりも大きい場合に、自立(free-standing)または自己支持である。
【0077】
レオロジーパラメーター、例えば貯蔵弾性率G’(w)は、平行板レオメータを用いる角周波数の関数として測定され得る。例えば、そのようなパラメーターは、1%歪みおよび6.3ラジアン/秒で、25〜85℃の温度掃引にわたり、0.5cmのステンレス鋼板および2.3mmの試料ギャップ(gap)を用いるRheometricsDynamicAnalyzer モデル70を使用して生成され得る。本発明によるゲルのレオロジー的挙動(rheological behavior)の特徴付けは、上記で記述のRheometrics装置および条件を使用してなされた。ゲルは、本明細書中に記述される実施例3により調製された。図1により示されるように、この組成物において、弾性率(G’)は室温で損失弾性率(G”)の5〜10倍大きく、従って、ゲル構造が存在することを実証する。ゲルが加熱される場合、ゲルは少なくとも約50℃までは明らかなゲル様特性を保持する。しかしながら、ゲルがさらに加熱され、そしてエステル末端ポリアミド樹脂の融点に達する場合、損失弾性率は最終的に貯蔵弾性率と等しくなり(すなわちtanδ=1)、そして組成物はそのゲル様特性を失う(図1のデータの外挿にもとづいて、約65〜70℃の温度で)。
【0078】
本発明の商業的に望ましい局面は、ゲルが(必ずしも必要ではないが)本質的に透明であり得ることである。従って、ゲルは望ましくは、着色料ならびに他の成分と合わせられてリップスティックおよび他の化粧用品を形成する。透明なゲルの、これらの用途における利点は、ゲルがリップスティックまたは化粧品に望ましくない色を、もしあるとしてもほとんど与えないことである。ゲルは、アルミニウムジルコニウム塩ならびに他の成分と合わせられて無色の腋下防臭剤/制汗剤を形成し得る(これは近年非常に馴染み深いものである)。本発明のゲルはまた、他の個人用手入れ用品、例えば化粧品(目のメーキャップ、リップスティック、ファンデーションメーキャップ、コスチュームメーキャップ)、ならびにベビーオイル、化粧落とし、入浴油、皮膚保湿剤、日焼け手入れ用品、リップクリーム、無水ハンドクリーナー、治療用軟膏、エスニック頭髪手入れ用品、香水、コロン、および座薬において有用である。さらに、ゲルは家庭用品(例えば、自動車用ワックス/つや出し剤、ろうそく、家具用つや出し剤、金属洗浄剤/つや出し剤、家庭用洗浄剤、ペンキ剥離剤、および殺虫剤キャリアー)において使用され得る。
【0079】
ゲルはまた、工業製品(燃料(例えば、スターノー(sterno)、ライター)、便器リング、潤滑油/グリース、ワイヤロープ潤滑油、継ぎ目およびケーブルの充填剤、はんだ用融剤、緩衝用化合物、クレヨンおよびマーカー、模型用粘土、錆止め剤、印刷用インク、保護用/除去可能コーティング、およびジェットインク)においても使用され得る。例えば、本発明のETPA樹脂でゲル化された炭化水素は、例えばキャンプおよびハイキングにおいて使用される調理装置の熱源として使用され得る。そのような組成物は傾いた時にも流れず、従って流動性の材料から作製された類似の製品よりも安全かつきれいであり得る。
【0080】
そのような材料を調製するための処方は当該分野で周知である。例えば、米国特許第3,615,289号および同第3,645,705号は、ろうそくの処方を記載している。米国特許第3,148,125号および同第5,538,718号は、リップスティックおよび他の化粧用スティックの処方を記載している。米国特許第4,275,054号、第4,937,069号、第5,069,897号、第5,102,656号、および同第5,500,209号はそれぞれ、防臭剤および/または制汗剤の処方を記載している。これらの米国特許のそれぞれが本明細書中で参考として全体的に援用される。
【0081】
本発明のETPA樹脂は、ETPA樹脂を上記に列挙されているような市販品の他の成分と調合することにより、市販品中に組み込まれ得る。典型的に、ETPA樹脂は組成物の総重量を基準にして、組成物の約1%〜約50%の濃度で存在し得る。組成物中に存在しているETPA樹脂の量を最適化することは日常的な事であり、そして実際その量は、実際の製品および製品の所望のコンシステンシーに依存して変化する。一般に、処方物中により多くのETPA樹脂が使用されるほど、製品はより明白なゲル特性を表現する。
【0082】
従って、本発明の別の局面は、上記で記載されるエステル末端ポリアミドを含む成分と非水性液体、好ましくは低極性液体との間に形成されるゲルである。好ましい低極性液体は炭化水素であり、好ましい炭化水素は溶媒および油である。溶媒および油は、溶媒がヒトの皮膚にこすり伸ばされたときに、脱脂が生じて乾燥および刺激をもたらすことで識別され得る。しかしながら、脱脂は、油がヒトの皮膚にこすり伸ばされたときには生じない。油は、大部分の個人的手入れ用処方物において、溶媒よりも好ましく、従って本発明のゲルを形成する上で好ましい。好ましくは、炭化水素は比較的大きな数の炭素原子、例えば10〜30個の炭素原子を有し、従って、揮発性の炭化水素ではない。
【0083】
好適な油は鉱油(時として薬油としても示される)である。鉱油は、内部潤滑油としてならびに膏薬および軟膏の製造のために薬用で使用される、高精製の無色無味無臭の石油(すなわち、石油/祖油の処理により生じる)である。そのような鉱油は実質的に全ての揮発性炭化水素がそれから除去されているように、そして実質的に全ての不飽和結合が除去される(例えば芳香族基が完全に飽和した類似化合物に還元されている)ために水素化されている(水素処理されているとも呼ばれる)ように、高精製されている。本発明のゲルを調製するために好適な鉱油は、いわゆる「白色」鉱油である。これは無色透明(すなわち、無色かつ透明)であり、そして一般に人の皮膚との接触にたいして安全であるとして認められている。鉱油はまた、その粘性によって特徴づけられ得、ここで軽鉱油は重鉱油よりも相対的に粘性が低く、そしてこれらの用語は、米国薬局方、第22版、899頁(1990)においてより詳細に定義される。任意の鉱油が、本発明においてゲルを形成するために使用され得る。
【0084】
本発明において使用され得る他の炭化水素は、直線状飽和炭化水素(例えば、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなど)を含む比較的低分子量の炭化水素を含む。デカヒドロナフタレン(DECALIN)のような環式炭化水素、燃料グレードの炭化水素、PermethylCorporationのPERMETHYLおよびExxonCorp.のISOPARのような分岐鎖炭化水素、ならびにWitco(Greenwich、CT)の製品PD-23のような炭化水素の混合物もまた、本発明のゲルを調製するのに使用され得る。そのような炭化水素、特に飽和炭化水素油は、本発明のゲルの調製に適切な液体である。なぜなら、そのような炭化水素はしばしば、芳香族、ケトンおよび他の官能基を含有する液体よりも皮膚への刺激が少ないからである。
【0085】
適切な低極性液体の別のクラスは、エステル、特に脂肪酸のエステルである。そのようなエステルは単官能性エステル(すなわち単一のエステル部分を有する)であり得るか、または多官能性エステル(すなわち1つ以上のエステル基を有する)であり得る。適切なエステルは、C1〜24のモノアルコールのC1〜22のモノカルボン酸との反応生成物(ここで、炭素原子は直線状、分枝鎖状、および/または環式状で配置され、そして不飽和結合が必要に応じて炭素原子間に存在し得る)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、エステルは少なくとも約18個の炭素原子を有する。例として以下を含むが、これらに限定されない:イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸n-プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸n-プロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサコサニル、パルミチン酸オクタコサニル、パルミチン酸トリアコンタニル、パルミチン酸ジトリアコンタニル(dotriacontanyl)、パルミチン酸テトラトリアコンタニル、ステアリン酸ヘキサコサニル、ステアリン酸オクタコサニル、ステアリン酸トリアコンタニル、ステアリン酸ジトリアコンタニル(dotriacontanyl)、およびステアリン酸テトラトリアコンタニルの様な脂肪酸のエステル;サリチル酸エステル、例えばサリチル酸オクチルのようなC1〜10サリチル酸エステル、ならびに安息香酸C12〜15アルキル、安息香酸イソステアリル、および安息香酸ベンジルを含む安息香酸エステル。
【0086】
適切なエステルは、リップスティックおよびメーキャップの処方物の化粧品産業において通常用いられているもの、例えば上記の脂肪酸エステルであり、そしてしばしば「化粧用エステル」として記載される。他の化粧用エステルは、脂肪酸のグリセロールエステルおびプロピレングリコールエステル(いわゆるポリグリセロール脂肪酸エステルおよびトリグリセリドを含む)を含む。化粧用エステルの例として、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコール(400)モノラウレート、ヒマシ油、トリグリセリルジイソステアレートおよびラウリルラクテートを含むが、これらに限定されない。従って、液体は、1つより多いエステル、ヒドロキシルおよびエーテル官能部分を有し得る。例えば、C10〜15アルキルラクテートが、本発明のゲルにおいて使用され得る。さらに、エステル化ポリオール(C1〜22モノカルボン酸と反応したエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドのポリマーおよび/またはコポリマーなど)が有用である。C1〜22モノカルボン酸の炭素原子は、直線状、分枝鎖状、および/または環式状で配置され得、そして不飽和結合が炭素原子間に存在してもよい。好適なエステルはアルコールと脂肪酸との反応生成物であり、ここでアルコールは、C1〜10一価アルコール、C2〜10二価アルコール、およびにC3〜10三価アルコールから選択され、そして脂肪酸はC8〜24脂肪酸から選択される。
【0087】
本発明のゲルは、好ましくは実質的な量のモノアルコール(すなわち、単一のヒドロキシルであり、かつ唯一の官能基であるヒドロキシルを有する一価アルコール)を含有しない。従って、本発明のゲルは、好ましくは25重量%未満、より好ましくは10重量%未満、そしてなおより好ましくは5重量%未満のモノアルコールを含有する。ETPA樹脂は、ヒドロキシル含有化合物の非存在下で、ゲル炭化水素であり得ることが、本発明の驚くべき利点である。
【0088】
本発明のゲルは、好ましくは、それが室温でずれの不在下においてその形状を保持するように、自己支持である。また、本発明のゲルは好ましくは、透明または半透明である。用語、透明、半透明、および透明度は、その通常の辞書の定義を有するものとみなされる;従って、透明なゲルは容易にその背後にある物体を見ることが可能である。対照的に、半透明のゲルは、光線が透過することが可能であるが、光線が散乱されるために、半透明のスティックの背後にある物体を明瞭に見ることが難しくなる。本明細書中で使用されるように、ゲルは、400〜800nmの範囲内の任意の波長の、1cm厚さのサンプルを通しての光線の最大透過率が少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%である場合に、透明または清澄である(例えば、欧州特許公開公報第291,334A4を参照のこと)。ゲルは、そのような光線のサンプルを通しての最大透過率が2%〜35%未満の間である場合に、半透明である。透過率は、上述の厚さのサンプルを分光光度計(Bausch&Lomb Spectronic 88 分光光度計のような、可視スペクトルを測定範囲に含むもの)の光線中に設置することにより測定され得る。
【0089】
本発明のゲルは、好ましくは離漿(syneresis)を示さない。McGraw-Hill 科学および技術用語辞典(第3版)において定義されるように、離漿は、液体のゲルからの自発的な分離、またはゲルの縮小によるコロイド状懸濁液である。典型的には、離漿は液体のゲルからの分離として観測され(そして時として「ブリーディング」として示され)、その場合、離漿を示しているゲルの表面に沿って湿気が見られる。商業的な観点から、離漿は典型的な望ましくない性質であり、本発明のゲルは望ましいことにそして驚くべき事に離漿を示さない。
【0090】
本発明のゲルを調製するために、エステル末端ポリアミド樹脂が液体と合わせられる。2つの成分は、樹脂が液体に完全に溶解するまで、上昇する温度(例えば、約80〜150℃まで)に供される。溶液がより低い温度で調製され得る場合、より低い温度が使用されてもよい。冷却すると、混合物は本発明のゲルを形成する。好ましくは、液体は上記で記載されたような低極性液体であり、そしてより好ましくは液体は炭化水素である。液体は、1種より多い成分を含有し得る(例えば、炭化水素ならびにエステル含有材料)。いずれの場合にしろ、エステル末端ポリアミドは、ETPA+溶媒の混合物中のETPAの重量%が約5〜50%であるように、そして好ましくは約10〜45%であるように、液体と合わせられる。そのようなゲルは、エステル末端ポリアミドおよび液体ならびに混合物中のETPAの濃度の正味の本質に依存して、透明、半透明、または不透過であり得る。
【0091】
本発明のゲルは、当該分野で周知の技術により個人用手入れ用品中に処方され得る。ゲルは、個人用手入れ用品(少数の例を挙げれば、キレート剤、着色料、乳化剤、増量剤、硬化促進剤、香料、強化剤、水およびワックスなど)中に簡便に組み込まれる成分と合わせられ得る。そのような添加物はまた、例えば以下の文書中に記載されており、これらは全て本明細書中でその全体において参考として援用される;Bartonの米国特許第3,255,082号、Elsnauの同第4,049,792号、Rubinoらの同第4,137,306号、およびHooperらの同第4,279,658号。
【0092】
個人用手入れ用品は、製品の種々の成分を上昇する温度で混合し、次いでゲル化(固形化)組成物を形成するために冷却されることにより、本発明のETPA樹脂から調製され得る。望ましくは、任意の揮発性成分は、成分の揮発化を制限するように、混合の比較的遅い段階で混合物に添加される。好ましくは、液体およびETPAゲル化剤は、混合され、そしてETPAを液体に完全に溶解するように加熱される(例えば、80℃〜150℃)。活性成分(例えば、活性制汗剤)は、ETPAが完全に溶解した後に添加され得、次いで混合が行われる。混合は冷却中も続けられ得、冷却段階の間に着色料または他の成分が添加される。
【0093】
以下の実施例は、本発明の例示の意味において示され、本発明に対する制限として解釈されるべきではない。
【0094】
以下の実施例において、軟化点は、Mettler Instruments CorporationのモデルFP83HT Dropping Point Cellを使用して、1.5℃/分の加熱速度で測定した。粘性測定は、BrookfieldEngineeringLaboratories、Inc.のモデルRVTDデジタル粘度計を使用して行われ、そしてセンチポアズ(cP)で記録される。ゲル透明度および硬度はともに定性的に判断された。
【0095】
以下の合成例において、他に記載されない限り、化学物質は全て試薬グレードであり、Aldrich Chemical Co. (Milmaukee、WI)などを含む販売供給会社から得た。UnidymeTM14
重合化脂肪酸は、UnionCamp Corp. (Wayne、NJ)から入手可能なダイマー酸である。EmpolTM1008重合化脂肪酸は、Henkelcorporation,Ambler, PAから入手可能なダイマー酸である。PripolTM 1008重合化脂肪酸は、UnichemaNorthAmerica(CHicago、IL)から入手可能なダイマー酸である。HarchemexTM(Union Camp Co.、Wayne、NJ)アルコールは、C14/C16直線状アルコールの60/40調合物である。
【実施例】
【0096】
実施例1
C14-C16直線状アルコール由来のETPA
この実施例は、透明で柔らかいゲルが、14個および16個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールの調合から合成されるETPAで作製され得る事を示す。
【0097】
表1に示される成分をその量で反応容器に投入し、そして窒素雰囲気下200〜220℃で2時間加熱した。得られるETPAは、表2に要約されるように、68.5℃の軟化点、および130℃で44センチポアズの粘性を有した。
【0098】
表1
直線状C14/C16アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0099】
【化14】

このETPAをテトラデカンと合わせ(20重量%のETPA/80重量%のテトラデカン)、そしてETPAがテトラデカンに溶解するまで加熱した。室温まで冷却すると、この溶液は表2に要約される、柔らかい透明なゲルを形成した。
【0100】
実施例2
C22直線状アルコール由来のETPA
この実施例は、透明で柔らかいゲルが、22個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールから合成されるETPAで作製され得る事を示す。
【0101】
ETPAを調製するために使用する出発物質は表3に示され(identify)、そして得られるETPAの性質は、表2に与えられる。樹脂およびゲルを、実施例1に記載される様式で作製した。
【0102】
表3
直線状C22アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0103】
【化15】

実施例3
C18直線状アルコール由来のETPA
この実施例は、透明で柔らかいゲルが、18個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールから合成されるETPAで作製され得る事を示す。
【0104】
表4に示される反応剤を使用して、二酸およびアルコールを室温で反応容器に投入し、混合物を窒素雰囲気下80℃で加熱し、ジアミンを加え、220℃まで加熱し、220℃で1時間保持し、そして最後に減圧下(8〜10mbar)220℃で2時間保持することによりETPAを合成した。表2に要約されるように、ETPAは、85.7℃の軟化点、および190℃で27cpの粘性を有した。
【0105】
表4
直線状C18アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0106】
【化16】

ゲルを、実施例1に記載される手順によりこのETPAから形成した。表2で特徴づけられるように、このゲルは透明で硬かった。
【0107】
実施例4
C24分岐鎖アルコール由来のETPA
この実施例は、透明で硬いゲルが、24個の炭素のサイズの鎖を有する分岐枝状のアルコールから合成されるETPAで作製され得る事を示す。
【0108】
表5に示される反応剤を使用して、実施例3に記載される手順によりETPAを合成した。得られるETPA樹脂は、85.2℃の軟化点、および190℃で20cpの粘性を有した。
【0109】
表5
分岐状C24アルコール末端ポリアミドを形成するための反応剤
【0110】
【化17】

ゲルを、実施例1に記載される手順によりこのETPAから調製した。表2で特徴づけられるように、このゲルは透明で硬かった。
【0111】
実施例5
C10直線状アルコール由来のETPA
この実施例は、10個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールからETPAが作製される場合、テトラデカン中に不透明なゲルが形成される事を示す。
【0112】
表6に示される反応剤を使用して、実施例3に記載される様式でETPAを合成した。表2に要約されるように、ETPAは、93.2℃の軟化点、および190℃で29cpの粘性を有した。
【0113】
表6
直線状C10アルコール末端ポリアミドを形成するための反応剤
【0114】
【化18】

実施例1に記載される手順により、このETPAをテトラデカンと合わせて、ゲルを形成した。表2に要約されるように、このゲルは不透明で硬かった。
【0115】
実施例6
中程度のC直線状アルコール末端のETPA
この実施例は、4個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールから作製されたETPAが使用される場合、テトラデカン中に不透明なゲルが形成される事を示す。
【0116】
1つの例外を除いて、表7に示される反応剤を使用して、実施例3に記載される様式でETPAを合成した。しかしながら、この実施例において、減圧段階の前に過剰のブタノールを処方物に加え、それにより酸価を10〜15に減少させた。表2に要約されるように、ゲルは、86.3℃の軟化点、および190℃で35cpの粘性を有した。
【0117】
表7
直線状Cアルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0118】
【化19】

ゲルを、実施例1に記載されるようにこのETPAから形成した。このゲルは不透明で柔らかく、そして望ましくない離漿(すなわち、テトラデカンのゲルからの「ブリージング」)を示した。
【0119】
実施例7
高程度のC直線状アルコール末端化由来のETPA
この実施例は、比較的高い濃度(50%当量)で4個の炭素鎖の長さを有する直線状のアルコールから作製されたETPAが使用される場合、テトラデカン中透明なゲルが形成される事を示す。
【0120】
実施例6に記載される様式で、酸価を10〜15に減少させるために、再び減圧段階の前に過剰のブタノールを使用してETPAを合成した。このETPAを形成するために使用される反応剤を表8に示す。生成ETPAは、77.2℃の軟化点、および190℃で15cpの粘性を有した。
【0121】
表8
直線状Cアルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0122】
【化20】

実施例1に記載される手順により、このETPAを使用して、ゲルを作製した。このゲルは透明で硬かった(表2を参照のこと)。
【0123】
実施例8
低程度のC18直線状アルコール末端化由来のETPA
この実施例は、ETPAにおいて使用され得る、そしてそれによる透過性のゲルをなお得ることができるアルコール濃度の下限があることを示す。この限界未満では、不透明なゲルが生成する。
【0124】
表9に示される反応剤を使用して、実施例3の手順によりETPAを合成した。ETPAは、90.4℃の軟化点、および190℃で47cpの粘性を有している。
【0125】
表9
直線状C18アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0126】
【化21】

実施例1に略述される手順によりこのETPAからゲルを形成した。表2に要約されるように、このゲルは硬かったが不透明であった。
【0127】
実施例9
非常に高程度のC24分岐鎖アルコール末端化由来のETPA
この実施例は、ETPA形成において使用され得る、そして硬いゲルをなお得ることができるアルコール濃度の上限があることを示す。この限界より上では、テトラデカン中極度に柔らかいゲルが形成される。
【0128】
表10に示される反応剤を使用して、実施例1のようにETPAを合成した。ETPAは、非常に柔らかく室温以下の融点を有した。130℃でのETPAの粘性は、20.5cpであった。
【0129】
表10
分岐枝状C24アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0130】
【化22】

実施例1に記載されるようにこのETPAからゲルを調製した。表2に要約されるように、このゲルは透明であったが非常に柔らかかった。
【0131】
実施例10
共二酸およびC18直線状アルコール由来のETPA
この実施例は、透明度を維持しながらゲルの硬度を増加させるために、共二酸がETPA処方物に添加され得ることを示す。
【0132】
加熱する前に共二酸を投入して、実施例3のようにETPAを合成した。表11に列挙される反応剤を使用してこのETPAを形成した。生成物は、133.5℃の軟化点、および190℃で26cpの粘性を有した。
【0133】
表11
10%セバシン酸とともに直線状C18アルコール末端ポリアミドを形成するために使用した反応剤
【0134】
【化23】

実施例1の手順を使用して、このETPAからゲルを調製した。表2に要約されるように、このゲルは透明であり硬かった。
【0135】
表2
種々のサイズおよび濃度のアルコールから作製されたETPAの物性およびゲル特性
【0136】
【化24】

実施例11
アルコール鎖の長さのゲル透明度における効果
この実施例は、アルコール末端ポリアミドを調製するために使用されるアルコールの鎖の長さが、そのポリアミドから作製されるゲルの透明度に影響を及ぼすことを示す。この実施例はさらに、炭化水素媒体中のゲル化剤の濃度が、ゲルの透明度に影響を及ぼすことを示す。
【0137】
実施例6(C直鎖状アルコール)、実施例5(C10直鎖状アルコール)、および実施例3(C18直鎖状アルコール)のアルコール末端ポリアミドを、ETPAおよびテトラデカンの総重量
を基準にして10〜30重量%の範囲の濃度で、熱テトラデカンに溶解した。冷却の際、生成するゲルは透明度について評価され、表12に示されるような結果であった。
【0138】
表12
ゲル化剤の濃度およびゲル化剤を調製するために使用したアルコールの鎖の長さの関数としてのゲルの透明度
【0139】
【化25】

表12のデータは、どのETPAも10重量%の固体において透明なゲルを形成しないことを示している。テトラデカンを用いる15重量%および20重量%のゲル化剤において、ステアリルアルコール末端ポリアミドのみが、透明なゲルを形成する。
【0140】
実施例12
炭化水素のゲルの硬度および透明度における効果
実施例11のETPAがデカリン中でゲルを形成するために使用された場合、ゲルは改善された透明度を示したが、しかしながらより柔らかい傾向を有した。実施例11に記載される透明度の挙動は、テトラデカンをイソオクタンで、またはPD23(Witco、Corp.、Greenwich、CTの炭化水素調合物)で置き換える場合にも本質的に再現される。イソオクタンにおいて、ゲルは、デカリンが使用される場合に比較してより硬いが、しかしながら、テトラデカンが使用される場合よりも柔らかい傾向を有する。
【0141】
実施例13
炭化水素溶媒をゲル化するために使用されるETPA組成物
この実施例はPD23炭化水素中透明で硬いゲルを調製するためにETPAがどのように使用され得るかを示し、ここでPD23は40℃で2.6cStの粘度および230°Fの引火点を有する、Witco(Greenwich、CT)により作製された石油蒸留物である。PD23炭化水素は、家具つや出し剤、家庭用洗浄剤、液体ロウソク、およびハンドクリーナーのような家庭用品において使用される。
【0142】
ゲルを、実施例3により作製されたETPAから調製した。ゲルを、20%(重量で)のETPAをPD23中、ETPAが溶解するまで加熱することにより作製した。溶液を冷却し、そして透明で硬いゲルを形成した。
【0143】
実施例14
KLEAROL炭化水素を用いるETPAゲル
この実施例は、実施例3におけるように調製されるETPAが低粘度の白色鉱油をゲル化するためにどのように使用され得るかを示す。使用された鉱油は、40℃で7〜10cStの粘度および310°Fの引火点を有するKleaor(登録商標)(Witco、Corp.、Greenwich、CT)であった。Klearol(登録商標)鉱油は、クレンジングクリーム、ハンドクレンザー、コスチュームメーキャップ、リップスティック、および頭髪手入れ用品のような個人的手入れ用品に使用される。20%の固体でETPAでにゲル化した場合、ゲルは透明でそして硬かった。
【0144】
実施例15
KAYDOL炭化水素を用いるETPAゲル
この実施例は、実施例3におけるように調製されるETPAが高粘度の白色鉱油をゲル化するためにどのように使用され得るかを示す。使用された鉱油はKaydol(登録商標)であり、これは40℃で64〜70cStの粘度および430°Fの引火点を有し、そしてWitco、Corp.から入手可能である。Kaydol(登録商標)鉱油は、入浴油、日焼け油、保湿クリーム、およびファンデーションメーキャップに使用される。30%の固体でETPAでゲル化した場合、ゲルは透明でそして硬かった。
【0145】
実施例16
単官能化エステル溶媒を用いるETPAゲル
この実施例は、実施例3におけるように調製されるETPAが単官能化エステルをゲル化するためにどのように使用され得るかを示す。エステルは、Fintex(ElmwoodPark、NJ)により作製されたFinsolv(登録商標)TNと呼ばれるC12〜15アルキルベンソエートであった。10%の固体でETPAでゲル化した場合、ゲルは透明でそして硬かった。
【0146】
実施例17
単官能化エステル溶媒を用いるETPAゲル
この実施例は、実施例3におけるように調製されるETPAが単官能化エステルをゲル化するためにどのように使用され得るかを示す。エステルは、イソプロピルイソステアレート(UnimateIPIS、UnionCamp(Wayen、NJ)製)であった。20%の固体でETPAでゲル化した場合、ゲルは透明でそして硬かった。
【0147】
実施例18
多官能化エステル溶媒を用いるETPAゲル
この実施例は、多官能化エステルが実施例3におけるように調製されるETPAでゲル化され得ることを示す。エステルは、ヒマシ油であった。20%の固体でETPAと合わせた場合、透明で硬いゲルが形成された。
【0148】
実施例19
テルペン炭化水素溶媒を用いるETPAゲル
この実施例は、テルペン炭化水素溶媒がETPAでゲル化され得ることを示す。ETPAは、実施例8の手順を用いて調製された。得られるETPAを20%の固体でリモネンと合わて、透明で堅固なゲルを形成した。
【0149】
実施例20
比較例
この比較例において、ETPAを、まずEmpol 1008水素化二量体(Henkel Corp. Ambler、PA)およびEDAからポリアミドを合成し、アミン数3および軟化点115℃を有するポリアミドを得ることにより作製した。100gのこのポリアミドを66gのEmpol1008とともに、230℃で50分間、窒素下で加熱した。混合物を110℃まで冷却し、そして30gのエタノールおよび2mlのHClを加えた。混合物を還流条件下加熱して温度が230℃に達した。酸価が30未満になるまで、定期的に酸価を確認し、そしてエタノールを加えた(110℃で)。230℃で、0.5時間混合物を減圧下に保ち、そしてETPAを注いだ。得られたETPAは25の酸価および80℃の軟化点を有する。
【0150】
このETPAを20%テトラデカンと合わせ、そしてETPAが溶解するまで加熱した。冷却すると、不透明な柔らかいゲルを形成し、これは離漿を示した。
【0151】
実施例21
比較例
この比較例は実施例20を繰り返すが、しかしながら、エステル化をはるかに低い温度で行った。実施例20に記載されるポリアミド(軟化点=115℃)を、実施例20の割合と同じ割合のEmpol1008とともに、230℃で50分間、加熱還流した。次いで、この混合物を25℃まで冷却し、そして実施例20の割合と同じ割合でエタノールおよびHClを加えた。混合物を80〜85℃で8時間加熱還流し、そして過剰のエタノールを窒素流下100℃で除去した。得られた生成物は17の酸価および83℃の軟化点を有した。次いで、20%レベルでこの材料をテトラデカン中溶解するまで加熱した。混合物の冷却後、不透明な柔らかいゲルが形成され、これは離漿を示した。
【0152】
実施例22
比較例
この比較例は、実施例21で作製されたETPAが、亜麻仁油(アルキド塗料の成分)を濃縮し得ることを示す。10%レベルで実施例21で作製されたETPAを亜麻仁油中溶解するまで加熱した。冷却すると、不透明な濃縮された生成物を形成した。
【0153】
実施例23
この実施例は、本発明の方法により作製されたETPAが、亜麻仁油を濃縮することを示す。10%レベルで、実施例3で作製されたETPAを亜麻仁油中溶解するまで加熱した。冷却すると、不透明な濃縮された生成物を形成した。
【0154】
実施例24
この実施例は、ETPAが、活性成分を含む油ベースの混合物をゲル化するために使用され得ることを示す。10gの実施例8で調製されたETPAを、ETPAが溶解するまで、15gのサリチル酸メチル、4gのメントール(活性成分)、および21gのKAYDOL(白色鉱油)中、加熱した。溶液を冷却して、透明な堅固なゲルを形成した。
【0155】
実施例25
ロウソク調製
この実施例は、ETPA樹脂が透明なロウソクを作製するために使用され得ることを実証する。ロウソクを、60部のDRAKEOL7鉱油(Penreco(ペンゾオイル製品会社の部門、KarnsCity、PA)より)および40部の実施例8で調製したETPAを合わせ、そして合わせたものを、透明で見た目に均一な溶液が得られるまで約110℃で加熱することにより調製した。次いで、熱混合物を灯心を有する底の浅い皿に流し込む。冷却すると、透明な自立性(freestanding)ロウソクを形成する。このロウソクは灯されるときに煙を発生せず、そして燃えた後に変色を示さなかった。
【0156】
樹脂または反応混合物が特定の成分または材料を含むまたは含有するものとして記載される、本明細書全体を通じて、本発明の樹脂または反応混合物がまた、列挙された成分または材料から本質的に構成されるか、または構成されるということが、本発明者によって意図される。従って、本開示全体を通じて、任意の本発明の記載の組成物(樹脂または反応混合物)が列挙された成分または材料から本質的に構成され得るか、または構成され得
る。
【0157】
上記で記載される実施態様の変更が、その広範な発明の概念から逸脱することなくなされ得ることが、当業者により認識される。従って、本発明が、開示された特定の実施態様に限定されるのではなく、添付される請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲内で改変を包括することを意図することが、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の方法により樹脂組成物を調製するための方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120856(P2009−120856A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58711(P2009−58711)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願2007−114875(P2007−114875)の分割
【原出願日】平成9年10月17日(1997.10.17)
【出願人】(504293447)インターナショナル・ペーパー・カンパニー (15)
【Fターム(参考)】