説明

低温で油を溶解する方法

本発明は、溶剤の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は低温で油を溶解する方法に関する。本発明はまた、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−36mfc)と1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)とを基剤とする新規な組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤の分野に関する。本発明は、さらに詳しくは、低温で油を溶解する方法に関する。本発明の別の主題は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)を基剤とする新規な組成物である。
【背景技術】
【0002】
国際公開第WO00/56833号パンフレットには、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)又はノナフルオロメトキシブタンとから本質的になる共沸様二成分組成物が記載されている。また、この国際公開パンフレットには、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)又はノナフルオロメトキシブタンと、トランス−1,2−ジクロロエチレン(t−DCE)、臭化n−プロピル、アセトン、メタノール、エタノール又はイソプロパノールとから本質的になる三成分及び四成分共沸様混合物も開示されている。
【0003】
国際公開第WO00/56833号パンフレットの実施例4及び5には、周囲温度でのある種の組成物の油溶性の試験が開示されている。従って、31重量%の43−10meeと、31重量%の365mfcと、38重量%のt−DCEとを含有する組成物が、鉱油を用いて評価され(表4)、また33重量%の43−10meeと、28重量%の365mfcと、39重量%のt−DCEをと含有する組成物がDC−200シリコーン油を用いて評価された(表5)。
【0004】
しかし、この国際公開パンフレットの三成分組成物は、例えば医療分野又はこの他の分野におけるような低い温度で動作することを必要とする用途では効果がない。
【0005】
従って、本出願人は、低温で油を溶解する方法を開発した。
【0006】
本発明の第一の主題は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)と、トランス−1,2−ジクロロエチレン(t−DCE)と、1から10重量%の2から4個の炭素原子を含むアルコールとを含有してなる組成物を使用することを特徴とする低温で油を溶解する方法である。
【0007】
本発明の方法は、温度が10℃未満の温度で実施することが好ましい。また、0から8℃の間の温度も好ましい。3から6℃の間の温度を選択することが都合がよい。
【0008】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロブタンとからなる二成分混合物40から69重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン30から50重量%と、2から4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物を使用することが好ましい。
【0009】
HFC−365mfcとHFC−43−10meeとの二成分混合物45から64重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン35から45重量%と、2から4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物を使用することが都合がよい。
【0010】
組成物中に存在するアルコールの量は、1から5重量%の間にあることが都合がよい。
【0011】
エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、二級−ブタノール(sec−ブタノール)又はtert−ブタノールが適切であり得る。イソプロパノール又はsec−ブタノールを使用することが好ましい。sec−ブタノールが都合よくは好ましい。
【0012】
1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタンは、二成分混合物の少なくとも17重量%に相当することが好ましい。
【0013】
本発明の方法は、鉱油又はシリコーン油に適している。この方法は、支持体、例えば台所用品の表面への油の均一な被着(deposition)に適用できる。この方法は、医療グレードのシリコーン油の被着、特に医療機器、例えば注射針又はカテーテルの表面への被着に非常に特に適している。これは、シリコーン油が、患者の皮膚への注射針の挿入に関連した痛みを和らげることを目的とした皮下医療注射器用の潤滑剤として使用されるからである。
【0014】
本発明の方法は、種々様々な固体表面(金属部品、ガラス、プラスチック、複合材料)の洗浄、脱脂及び乾燥に適している。本発明の方法は、印刷回路の製造においてはんだ接合部の品質を向上させるために使用される物質の残部を除去するのにも用いることができる。この除去操作は、当該技術において「脱フラックス」という用語で表される。
【0015】
本発明の第二の主題は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)と、トランス−1,2−ジクロロエチレン(t−DCE)と、4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物である。
【0016】
本発明の第二の主題の特に好ましい組成物は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロブタンとからなる二成分混合物40から69重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン30から50重量%と、4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる。
【0017】
HFC−365mfcとHFC−43−10meeとの二成分混合物45から64重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン35から45重量%と、4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物が都合よくは好ましい。
【0018】
組成物中に存在するアルコールの量は、1から5重量%の間にあることが都合がよい。
【0019】
sec−ブタノールをアルコールとして選択することが都合がよい。
【0020】
1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタンは、二成分混合物の少なくとも17重量%に相当することが好ましい。
【0021】
第二の主題の組成物は、産業において種々様々な固体表面(金属部品、ガラス、プラスチック、複合材料)の洗浄、脱脂及び乾燥に使用することができる。本発明の組成物は、印刷回路の製造においてはんだ接合部の品質を向上させるために使用された物質の残部を除去するのにも用いることができる。この除去操作は、当該技術において「脱フラックス」という用語で表される。
【0022】
さらにまた、本発明の組成物は、ポリウレタンフォーム用の発泡剤として、エアゾール噴射剤として、熱媒として、繊維製品用のドライクリーニング剤として又は冷凍、冷却装置の洗浄剤として使用することができる。
【0023】
(実施例)
(実験の部)
【実施例1】
【0024】
シリコーン油の溶解試験の説明
クロンプトン社〔Crompton Corporation(米国、グリニッチ)〕製のシリコーン油Crompton L9000−1000を使用する。これは、周囲温度(22℃)で0.97の密度、200℃よりも高い沸点及び132℃の引火点(ペンスキー・マルテンス密閉カップ法)を有する透明液体ヒドロキシポリジメチルシロキサンである。
【0025】
混合物を周囲温度で、すなわち22℃で調製する。
【0026】
このようにして、365mfcと43−10meeとを基剤とする組成物(試験すべき組成物)18mlとシリコーン油1.94gとを50mlフラスコに導入する、すなわち10容量%溶液を調製する。この混合物を次いで手で5分間攪拌する。
【0027】
このようにして調製した混合物の一部を、周囲温度(22℃)で24時間放置する。混合物の別の部分を低温(6℃)で7日間放置する。
【0028】
種々の温度での保存期間後に、混合物の外観を綿密に観察する。混合物が透明で、澄んだ、均質な単一層であり及び安定である場合に、周囲温度又は6℃で溶解性があるとみなす。
【0029】
次の組成物を調製した:
組成物A:HFC−365mfc 80重量%とHFC−43−10mee20重量%
組成物B:HFC−365mfc 48重量%とHFC−43−10mee12重量%とトランス−1,2−ジクロロエチレン40重量%
組成物C:HFC−365mfc 44重量%と、HFC−43−10mee11重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン40重量%と、sec−ブタノール5重量%
【0030】
【表1】

【実施例2】
【0031】
燃焼性試験の説明
組成物の燃焼性の評価のために、この引火点を、ASTM D3828標準法、すなわちセタフラッシュ密閉カップ法に従って測定した。引火点は、液体がこの表面で点火源の作用下に空気中で可燃性であるが活性化エネルギーを取り除いた場合に火炎を持続することがない混合物を形成するのに十分な量で蒸気を放出する最低温度である。
【0032】
組成物のそれぞれについて、信頼できる結果を得るために、測定は5回繰り返した。
【0033】
【表2】

【実施例3】
【0034】
蒸発速度の測定についての説明
1辺当たり4cmの長さを有し及び1cm当たり30本のワイヤを有するステンレス鋼の正方形の形状のスクリーンを使用する。緻密な網目を有するこの種のスクリーンは、浸漬後に溶剤の良好な保持を可能にする。
【0035】
スクリーンを、周囲温度に保持した試験組成物80mlを入れた100mlビーカーに、制御され及び安定な換気で浸漬する。
【0036】
完全に浸漬されたスクリーンを試験組成物から引き上げたときに、蒸発速度を測定するストップウォッチを作動させる。時間と共に移動する組成物の挙動を観察することによって、蒸発の終わり(蒸発の終わりの時点で、この挙動が消失する)を決定する。約15回の測定を行い、これらの平均値を以下の表に示す。
【0037】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)と、トランス−1,2−ジクロロエチレン(t−DCE)と、1から10重量%の2から4個の炭素原子を含有するアルコールとを含有してなる組成物を使用することを特徴とする、低温で油を溶解する方法。
【請求項2】
温度が10℃未満、好ましくは0から8℃の間、都合よくは3から6℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロブタンとからなる二成分混合物40から69重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン30から50重量%と、2から4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物を使用することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
HFC−365mfcとHFC−43−10meeとの二成分混合物45から64重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン35から45重量%と、2から4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなる組成物を使用することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)と、トランス−1,2−ジクロロエチレン(t−DCE)と、1から10重量%の4個の炭素原子を含有するアルコールとを含有してなる組成物。
【請求項6】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロブタンとからなる二成分混合物40から69重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン30から50重量%と、4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
HFC−365mfcとHFC−43−10meeとの二成分混合物45から64重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン35から45重量%と、4個の炭素原子を含有するアルコール1から10重量%とを含有してなることを特徴とする、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
アルコールがsec−ブタノールであることを特徴とする、請求項5から7に記載の組成物。
【請求項9】
クリーニング、脱脂又は乾燥工業において使用されるか、又はポリウレタンフォーム用の発泡剤として、エアゾール噴射剤として又は熱媒として使用されることを特徴とする、請求項5から8に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−508385(P2008−508385A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523105(P2007−523105)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001827
【国際公開番号】WO2006/024728
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】