説明

低温の選択的肌焼き工程

【課題】クロム含有のニッケル又は鉄を基礎にした合金から製造された製品の形態にあり、カーバイドの形成を伴わずに製品の全面積より少ない表面領域上を選択的に肌焼きされる新規の製品を提供すること。
【解決手段】低温の浸炭により、選択的に肌焼きされた鋼製品は、クロム包含のニッケル又は鉄を基礎にした合金(例えば、ステンレス鋼)から製造された本体を含み、その本体の第1の部分は第1の硬度特徴を有し、本体の第2の部分は第2の硬度特徴を有し、第2の部分は本体全体より小さく、実質的にカーバイドを含まない。低温浸炭による選択的肌焼きの一方法は、浸炭される予定の製品の表面領域上に炭素遮蔽マスクを適用すること、浸炭されるこれらの表面領域を活性化すること、カーバイドが容易に形成する温度より低い温度で、活性化された表面領域中に炭素を拡散させること、及び炭素遮蔽マスクを除去すること、の段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は例えば管接合フェルールのような、ステンレス鋼及びその他の合金の製品の加工法に関する。より具体的には、本発明は、実質的にカーバイド(carbides)の形成を伴わずにこれらの製品を選択的肌焼きする工程に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
周知のように、ステンレス鋼は数々の部品及び集成体に一般に使用されている。一例は管の末端を接合するための流体接合体の一部として使用されるフェルールである。ステンレス鋼が使用されなければならない程度は適用により変動するであろう。例えば半導体及び生物工学の分野における幾つかの、高度に純粋なシステムにおいては、例えば316Lのような、より低い炭素のステンレス鋼が一般に使用される。ステンレス鋼のための数々の化学物質が使用され、そしてステンレス鋼以外では、その他のクロム含有のニッケル又は鉄を基礎にした合金が知られ、使用されている。
【0003】
幾つかのステンレス鋼合金の一つの利点は、それらが、他の鋼合金材料よりも硬度が比較的低い点である。フェルールのような、幾つかの適用における結果として、ステンレス鋼の製品又は部品には、一般にそして本明細書で、肌焼きと称される硬化表面が提供される。肌焼きの考えは、その表面を基礎金属合金より硬くするために、炭素又はその他の成分を増加することによりその部分の表面に材料の比較的薄い層を変換することである。本明細書は炭素の増加による製品の肌焼きに関連する。従って、製品は製品表面に標準となる化学物質の基礎金属の柔軟性を伴わずに、ステンレス鋼の所望の成形適性をそのまま(in bulk)で保持する。
【0004】
ステンレス鋼合金の部品は一般に浸炭として知られた工程により肌焼きされる。浸炭は製品の表面中に炭素原子が拡散される工程である。フェルールのような幾つかの適用においては、本明細書では選択的肌焼きと称される、フェルールのある部分又は領域のみを肌焼きすることが望ましい。既知の選択的肌焼き工程は高温で実施される。しかし、約1000°F(538℃)を越える高温(ステンレス鋼合金に対して)で実施される肌焼き工程は硬化された表面でカーバイドの形成を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、クロム含有のニッケル又は鉄を基礎にした合金から製造された製品の形態にあり、カーバイドの形成を伴わずに製品の全面積より少ない表面領域上を選択的に肌焼きされる新規の製品を提供することが望まれる。カーバイドの形成を促進しない低温における選択的肌焼きの浸炭工程を提供することが発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
発明の一態様に従うと、ニッケル又は鉄を基礎にしたクロム含有合金を含んでなる物体を特徴としてもつ製品が提供され、物体の第1の部分は、第1の硬度特徴をもち、そして物体の第2の部分は第2の硬度特徴をもち、第2の部分は物体全体より小さく、実質的にカーバイドを含まない。
【0007】
本発明はまた、一態様において、製品の選択された表面部分に炭素遮蔽マスクを配置すること、製品の非マスク表面部分を活性化すること、及び実質的にカーバイドを含まないままで、製品の非マスク部分を浸炭すること、の段階を含む、選択的に肌焼きされた製品を製造する方法を想定している。本発明は更に、このような工程により製造された製品を想定している。
【0008】
本発明の数々のアスペクト及び利点は、付記の図面を考慮して好ましい態様の次の説明から、当業者には明白であろう。
【0009】
本発明は幾つかの部品の物理的形態及び部品の配列を採ることができ、その好ましい態様及び方法は本明細書において詳細に説明され、本明細書の一部を形成している付記の図面で示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】通常のフェルールの縦断面の立面図である。
【図2A】低温浸炭を使用する選択的肌焼き工程を図面で示している。
【図2B】低温浸炭を使用する選択的肌焼き工程を図面で示している。
【図2C】低温浸炭を使用する選択的肌焼き工程を図面で示している。
【図2D】低温浸炭を使用する選択的肌焼き工程を図面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(好ましい態様の詳細な説明)
図1には、通常のフェルール10が示されている。このフェルール10は本発明とともに使用することができる無数の多数の製品及び部品の一例に過ぎない。発明は本明細書では、316タイプのステンレス鋼のフェルールについて説明されているが、これらの説明は例示的本質を意図され、制約的意味で解釈してはならない。本発明は肌焼きされることができるクロム含有のニッケル又は鉄を基礎にした合金から製造されたあらゆる部品又は製品に用途を見いだす。
【0012】
更に、本明細書においては、好ましい態様は特に、ステンレス鋼合金から製造された製品について説明されているが、これらの説明は例示的な本質のもので、制約的意味で解釈してはならない。本発明は、幾つかの例を挙げると、それらに制約はされないが、合金316、合金316L及び合金304ステンレス鋼、合金600、合金C−276及び合金20Cbを含む、数々の種類のクロム含有の鉄又はニッケルを基礎にした合金化学物質に適用できる。
【0013】
フェルール10は図1において、部分的断面図のみで示されている。この具体的なフェルールは2個フェルールシステムの一部として使用される後方フェルールである。これらのフェルール及び、フェルールの幾何構造を含むフェルールシステムは周知で、それらの明細全体が引用により本明細書に完全に取り込まれている、米国特許第4,915,427号及び3,103,373号に詳細に説明されている。
【0014】
フェルール10はテーパーされたノーズ部分12、中央の本体14及び後部の駆動表面16を特徴としてもつ。管接合体において、後部駆動表面16は、前方のフェルール(図示されていない)の後方カムロックの口部(camming mouth)中にフェルール10のノーズを軸方向に駆動するナットの壁と噛み合う。この動作により、なかでも、フェルール10のノーズ部分12が半径方向に内側に駆動させられて、管の末端を把持する。図1に示されたフェルール10の幾何構造は、例示的本質のものであり、具体的なフェルールシステムに応じて実質的に変動するであろう。フェルール10はまた、1個のフェルールのシステム中でも使用することができ、その場合は、ノーズ部分12が前方の接合素子のカムロック口部中に駆動されるであろう。
【0015】
フェルール10に対して一般的な、しかし専用ではない材料は316ステンレス鋼合金である。フェルールを管の末端の増強されたグリップ中に駆動することができるために、幾つかの適用において、フェルール10を肌焼きすることが望ましい。更に、幾つかの適用においては、フェルール10の一部のみを肌焼きすることも望ましい。例えば、ノーズ部分12が選択的に肌焼きされる場合は、多くの場合、フェルールシステムの全体的性能が改善される可能性がある。
【0016】
本明細書で使用される肌焼きは、フェルール10のために使用される基礎金属に比較して表面硬度を増加させるために、フェルール10の表面に比較的薄い浸炭層を提供することを意味する。浸炭はフェルール10を肌焼きするための好ましい方法であり、本発明の一アスペクトに従うと、全体部分より小さい、選択された領域上にフェルール10の選択的肌焼きを可能にする新規の浸炭工程が使用される。しかし、全体部分を肌焼きすることが所望される場合にも、本発明の浸炭工程を使用することはできる。
【0017】
浸炭は一般に、炭素原子が溶体中で基礎合金中に拡散される工程である。炭素原子をステンレス鋼中に拡散させるためには、酸化クロム層を除去しなければならない。この段階は、一般に、活性化又は脱不動態化として知られている。酸化物の層は炭素原子に実質的なバリヤーを提供するので、表面を活性化しなければならない。一旦活性化させると、表面を、高温における拡散により浸炭させることができる。
【0018】
拡散工程は、例えば1000°F(538℃)を越える(ステンレス鋼合金に対して)高温で浸炭を実施することにより促進させることができる。しかし、このような高温の拡散は炭素/クロム分子であるカーバイドを容易に、早急に生成する可能性がある。カーバイドは場合によっては、基礎合金のクロムを還元させる傾向がある。
【0019】
カーバイドの形成を抑制又は実質的に排斥するために、本発明は、カーバイド形成促進温度より低い温度で実施される選択的肌焼きのための浸炭工程を想定している。例えば316ステンレス鋼のような数々のクロム含有合金に対して、1000°F(538℃)を越える浸炭温度では、カーバイドが容易に形成する傾向がある。従って、本発明の選択的肌焼き工程はステンレス鋼合金に対しては、約1000°F(538℃)より低い温度で実施される。浸炭が起こる期間もまたカーバイドの形成に影響を与える。1000°F(538℃)より低い温度においても、基礎金属が十分長い期間、炭素源にさらされると、カーバイドを形成することができる。発明のもう一つのアスペクトに従うと、浸炭はカーバイド形成促進温度より下で、カーバイドを形成させるよりも短い期間、実施される。従って、発明は選択的肌焼き工程の期間中、カーバイドの形成を実質的に抑制する時間−温度プロファイルを想定している。
【0020】
このような時間−温度プロファイルの一例として、カーバイドは1時間以内の早さで、1000°F(538℃)を越える温度で316ステンレス鋼において容易に形成する。しかし、この温度より下、例えば800〜950°F(427〜510℃)の範囲では、特に、より低温の範囲では、カーバイドは約1週間以上に至るまで形成しないであろう。これは一例に過ぎず、カーバイド形成を抑制するためのあらゆる具体的な浸炭工程に使用された具体的な時間−温度プロファイルは、必ずしもそれらに制約はされないが、浸炭温度及び基礎金属の合金化学を含む数々のファクターに左右されるであろう。
【0021】
図2A〜2Dは代表的な方法で(そして部分的断面図で)、ステンレス鋼製品、本例ではフェルールの選択的肌焼きのための、発明に従う好ましい浸炭工程の種々の段階を表す。その工程の概括的段階は、1)浸炭されない予定の製品の表面領域上に炭素遮蔽マスクを適用すること、2)浸炭される表面領域を活性化すること、3)活性化された表面領域に炭素を拡散させること、及び4)炭素遮蔽マスクを取り除くこと、である。段階1)は少なくとも2種類の方法で実施することができ、第1は全体の部分にマスクを適用し、次に浸炭される表面領域に重なる部分を除去する(例えばエッチングにより)こと、そして第2は炭素遮蔽マスクを選択的にのみ適用すること、である。
【0022】
図2Aにおいては、製品10は全表面領域に炭素遮蔽マスク20を適用されている。図2A〜2Dにおいては、様々な層のそれぞれの厚さのような相対的ディメンションは表示及び説明の明瞭性及び容易性のために著しく誇張されていることに注意することが重要である。
【0023】
本態様においては、炭素遮蔽マスク20は、あらゆる適切な方法、この場合には電気メッキにより製品に適用することができる銅から形成されている。
【0024】
図2Bにおいては、次の段階の結果が示されている。銅のマスク20の部分、本例ではノーズ領域22が例えば化学エッチングなどにより除去されて、基礎金属を露出した。エッチング工程はあらゆる数の方法で実施することができる。図示された例では、ノーズ部分22は容易にアクセスされ、銅はノーズ部分22を硝酸浴中に単に浸漬することによりエッチングすることができる。当該酸は部品10の基礎金属を攻撃せずに銅を除去する。
【0025】
銅が選択的に除去され、製品10が再度大気中に置かれるとすぐに、露出された非マスク部分22は不動態化又は不活性化され、酸化クロム層を形成する。この不動態化は実質的に大気への露出に伴って瞬時であり、あらゆるステンレス鋼で起こる。非マスク領域22上に形成する不動態化酸化物層は炭素遮蔽層である。非マスクのノーズ部分22を浸炭するためには非マスク領域22を活性化させる必要がある。
【0026】
図2Cにおいては、鉄の層又はプレート24が製品10上に電気メッキされた、次の段階が示されている。鉄のプレート24は銅のマスク20及び非マスク領域22の両方に適用される。鉄の層24は例えば、通常の電気メッキ工程により適用される。
【0027】
鉄の層24は幾つかの重要な機能を果す。第1にメッキ工程が非マスク領域22を活性化させる。更なる活性化段階を必要としない。銅の層もまた下にある基礎金属を活性化するが、銅が炭素忌避層又は遮蔽物であるので、この利点は、浸炭期間中に使用することはできないことに注目される。第2に、鉄は下にある基礎金属に炭素原子を容易に通過させることが発見された。言い換えれば、鉄は炭素遮蔽層ではなく、むしろ本質的に炭素に透過性である。更に、銅の層22に重なる鉄は銅に対する遮蔽シールド又はマスクとして働く。
【0028】
発明の一態様において、炭素原子は製品10を一酸化炭素(CO)ガスにさらすことにより製品10中に拡散される。炭素原子は、鉄の層24を通して非マスクの低炭素基礎金属領域22中に容易に拡散する。拡散に対する温度はカーバイドの容易な形成を抑制するためには1000°F(538℃)より下に維持される。炭素原子は鉄の層24を通って、基礎金属を含む固溶体中に拡散する。発明の本アスペクトに従うと、気体の浸炭を許す選択的肌焼き工程が提供されている。本態様においては、浸炭ガス混合物は1000°F(538℃)未満、例えば800°F(427℃)ないし980°F(527℃)の範囲の温度で、1気圧において、一酸化炭素及び窒素を含む。拡散工程は製品中に拡散される炭素の量に応じてこれらのより低い拡散温度で、2週間位までの長さかかる可能性がある。
【0029】
当業者は、拡散速度が温度に依存するので、拡散時間が炭素硬化表面の深度を決定するであろうことを理解するであろう。時間もまた、カーバイドの温度依存性の形成に関連しているので、使用されている具体的な合金に対してカーバイドの形成を阻止する時間−温度プロファイルを使用して、所望の焼き肌の深度を達成するためには、浸炭拡散工程を制御するべきである。例えば、カーバイドの形成は時間と温度の関数であるので、深い焼き肌が所望される場合には、カーバイドの形成を阻止するために、時間が経過するに従って拡散工程期間に温度を低下させることが必要かも知れない。拡散温度が低いほど、カーバイド形成を伴わずに、拡散工程がより長く継続することができる。その欠点は、所望の拡散深度に到達するためにかかる可能性がある追加時間である。しかし、多数の場合、カーバイドが容易に形成する温度より下、例えば316ステンレス鋼に対しては1000°F(538℃)より下に浸炭温度を維持することにより、製品はカーバイドの形成を伴わずに、十分な深度に肌焼きさせることができる。
【0030】
図2Dは浸炭後の最終結果を示している。炭素原子が非マスク部分22、この場合はフェルールのノーズ中に拡散された後に、製品の残りの部分より硬い、製品10の選択的肌焼き部分30が形成された。硬化部分30の相対的厚さは、図では、明瞭化のために誇張されており、実際的には、例えば0.001ないし0.003インチ(0.0254ないし0.0762mm)以下だけの可能性がある。浸炭部分の厚さは最終製品の所望の機械的特性及び機能的条件に左右されるであろう。
【0031】
図2Dにおいては、拡散工程が完了後に、鉄の層24及び銅マスク20が例えばエッチングにより除去された。これらの層の除去は製品10の不動態化を許して、肌焼きノーズ12の表面領域を含む酸化クロム層を提供する。
【0032】
好ましい工程に対する様々な代替工程が、当業者に容易に明白であろう。例えば、再度電気メッキにより適用される、銀を含む、銅以外の他の金属を炭素マスクのために使用することができる。幾つかの適用においては、金もまた適したマスク金属の可能性がある。その他の金属もまた、適した炭素遮蔽マスク体として働く。
【0033】
前記の好ましい工程において、浸炭は例えば、0.5ないし100%の一酸化炭素、残りは窒素を含む、1気圧の窒素ガス混合物により実施することができる。浸炭拡散はカーバイド形成を伴わずに、800〜980°F(427〜527℃)の温度プロファイル範囲で約2週間にわたり起こる可能性がある。
【0034】
選択的肌焼きのための代替的工程は次のようである。第1に、炭素遮蔽マスクを肌焼きされない予定の領域上に、製品上に配置する。この段階は本明細書中で製品に銅マスクを適用するために前記に説明されたものと同様にすることができる。非マスク部分を活性化させるために、製品を、炭素遮蔽マスクの攻撃及び移動を最少にするか又は許容できる程度に制約する時間歴の間、1気圧で高温で、塩化水素(HCl)及び窒素のようなハロゲン化水素ガス混合物にさらす。HClは例えば銅マスクを攻撃するであろう。時間とともに、銅は製品から移動する傾向があり、HClガスにより運び去られるであろう。しかし、HClは非常に有効な活性化ガスであるので、活性化時間は短いであろう。従って、製品をHClガスにさらす時間は銅マスク体の喪失を抑制するのに十分短時間に維持しなければならない。十分な活性化時間を許すことが要求される場合は、より厚い銅マスクを適用することもできる。適した代表的温度−時間プロファイルは、1気圧で、残りは窒素を伴って17〜100%の塩化水素の活性化ガス混合物を使用して、約1時間、600〜650°F(315〜343℃)である。その他の活性化ガスは、それに制約はされないが、フッ化水素(HF)であり、選択された活性化ガスは一部、使用される時間−温度プロファイルを決定するであろう。これらの代替的活性化工程は、活性化−浸炭室が、浸炭される部品の次のバッチが加工される前に、銅の痕跡をこすり落とす必要があるであろうため、余り好ましくはない。
【0035】
製品をガスにさらすことを伴う本明細書に説明された様々な工程は、当業者には周知のように、ピット炉(pit furnace)のような、通常の、一般に入手できる装置により実施することができる。
【0036】
代替的工程において、活性化段階が完了後に、活性化ガスはガス室から追い出されるが、活性化された製品の表面は大気にさらさない、さもないと、製品は即座に再不動態化されるであろう。活性化ガスは浸炭ガス混合物と室内で置き換わる。本例では、浸炭は1気圧において、一酸化炭素、水素及び窒素のガス混合物を使用して実施される。本例においては、鉄の層なしでは、一酸化炭素ガスは活性化領域を再不動態化させる傾向をもつであろうため、水素を浸炭ガス混合物に添加する。代表的ガス混合物は、1気圧において、0.5〜60容量%の一酸化炭素及び10〜50容量%の水素、残りは窒素である。再度、浸炭拡散は時間−温度プロファイル内で、そして特に、約1週間(再度、時間のパラメーターは要求される浸炭深度に応じて変動するであろう)、基礎金属合金において、カーバイドの容易な形成を許すか又は促進するであろう温度より下の温度で(例えばステンレス鋼合金に対しては1000°F(538℃)より下、例えば750〜950°F(399〜510℃)の範囲)で実施される。
【0037】
浸炭後に、本明細書の最初の方で記載されたように、銅のマスクを除去し、製品は大気にさらされると不動態化される。
【0038】
発明は好ましい態様に関して説明されてきた。本明細書を読み、理解すると、他の人々に、修正及び変更が明らかに浮かぶであろう。それらが付記の請求項又はそれらの同等物の範囲内に入る限り、それらすべての修正及び変更を含むことが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下の製品、方法などが提供される:
(項目1) 金属合金を含んでなる物体、
第1の硬度特徴をもつ前記物体の第1の部分、及び
第2の硬度特徴をもつ前記物体の第2の部分を含み、
前記第2の部分が物体全体より小さく、実質的にカーバイドを含まない製品。
(項目2) 前記物体が、実質的にカーバイドを含まない、浸炭表面領域を含んでなる前記第2の部分と、概括的に均質なクロム含有合金を含んでなる、項目1の製品。
(項目3) 前記第2の部分が、物体の選択された部位に浸炭領域として形成される、項目1の製品。
(項目4) 前記合金がクロム含有の鉄又はニッケルを基礎にした合金を含んでなる、項目1の製品。
(項目5) 前記合金がステンレス鋼を含んでなる、項目4の製品。
(項目6) 前記第2の部分が、前記第1の部分より硬い部分を製造するための、前記物体の選択された領域上の炭素含浸表面を含んでなる、項目1の製品。
(項目7) 前記第2の部分が実質的にカーバイドを含まない、項目6の製品。
(項目8) 前記物体がフェルールである項目1の製品。
(項目9) クロム含有合金を含んでなる物体、
第1の硬度特徴をもつ前記物体の第1の部分、及び
物体全体よりも小さい、前記物体の第2の部分を含み、前記第2の部分が前記第1の部分に比較して炭素硬化され、実質的にカーバイドを含まない製品。
(項目10) 前記合金がクロム含有の鉄又はニッケルを基礎にした合金を含んでなる、項目9の製品。
(項目11) 前記第2の部分が、物体の選択された部分上の浸炭領域を含んでなる、項目9の製品。
(項目12) クロム含有製品を選択的に浸炭するための方法であって、
製品の選択された表面部分上に炭素遮蔽マスクを配置すること、
製品の非マスク表面部分を活性化すること、及び
実質的にカーバイドを含まない製品の前記非マスク部分を浸炭すること、
を含んでなる方法。
(項目13) 前記マスクを配置する前記段階が、
製品全体上に炭素遮蔽材料を配置すること、及び
前記遮蔽材料の部分を選択的に除去すること、
の段階を含んでなる、項目12の方法。
(項目14) 材料を配置する前記段階が、製品の表面に銅プレートを適用することを含んでなる、項目13の方法。
(項目15) 前記銅プレートが選択的に除去される、項目14の方法。
(項目16) 前記活性化段階が少なくとも前記非マスク領域上で製品上に金属を電気メッキすることを含んでなる、項目12の方法。
(項目17) 前記金属が製品全体上に適用された鉄プレートを含んでなる、項目16の方法。
(項目18) 前記活性化段階が、高温でハロゲン化水素ガスに前記非マスク部分をさらすことを含んでなる、項目12の方法。
(項目19) 前記浸炭段階が、カーバイドが容易に形成する温度より下の高温で、水素含有浸炭ガスに、前記活性化部分をさらすことを含んでなる、項目18の方法。
(項目20) 前記浸炭段階が、カーバイドが容易に形成する温度より下の高温の浸炭ガスに前記活性化部分をさらすことを含んでなる、項目12の方法。
(項目21) 前記マスクが、銅を電気メッキすることにより適用され、前記活性化が電気メッキされた鉄により実施される、項目12の方法。
(項目22) 前記浸炭段階が、ステンレス鋼合金に対して約1000°F(538℃)を越えない選択された温度範囲で、選択された温度範囲におけるカーバイドの形成に要されるよりも短い時間、約1大気圧で一酸化炭素及び窒素のガス混合物により実施される項目12の方法。
(項目23) 次の工程、
製品の選択された表面部分上に炭素遮蔽マスクを配置すること、
製品の非マスク表面部分を活性化すること、
カーバイドの形成を実質的に抑制する時間−温度プロファイルを使用して、製品の前記非マスク部分を浸炭すること、
により製造された製品。
(項目24) 前記浸炭段階後に、前記マスクを除去する段階を含んでなる、項目23の工程。
(項目25) 前記浸炭段階後に、前記マスクを除去する段階を含んでなる、項目12の方法。
(項目26) 炭素遮蔽マスクを配置する段階が、製品の選択された部分を銅で電気メッキする段階を含んでなる、項目12の方法。
(項目27) 前記浸炭段階が、カーバイドの形成を実質的に抑制する時間−温度プロファイルを使用して実施される、項目12の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2010−168661(P2010−168661A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52391(P2010−52391)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【分割の表示】特願2000−565205(P2000−565205)の分割
【原出願日】平成11年8月12日(1999.8.12)
【出願人】(500120266)スウエイジロク・カンパニー (30)
【Fターム(参考)】