説明

低温乾燥室

【課題】本発明は、野菜、果物や木材などを30〜50℃の低温で全体を均一に遠赤外線により乾燥させる、前後、左右、上下を天然鉱石の蓄熱パネルで囲まれた低温乾燥室を提供する。
【解決手段】本発明の低温乾燥室には、蓄熱パネルが前後、左右、上下に配置され、前記蓄熱パネルは、柱3の幅で金網押え用木板14、金網15と木材羽目板16の所定間隔の空間を形成し、該空間に天然鉱石12を充填する。前記低温乾燥室の四周囲は蓄熱パネルで囲まれているので、該蓄熱パネル内の天然鉱石12が加熱され、該天然鉱石12に熱が蓄熱されると共に天然鉱石12から遠赤外線を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物や木材などを30〜50℃の低温で遠赤外線乾燥させる低温乾燥室に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に木材等を乾燥する際には、台車に積載した木材を乾燥室に搬入し、加熱機により乾燥室内を35〜60℃に昇温し、送風機により空気流を乾燥室内に導入し、除湿機により乾燥室内の水分を排出し、木材等を徐々に乾燥させている。
しかし、このような低温乾燥装置は、乾燥に時間が掛かるため、この乾燥時間を短くすることが求められていた。また、水分を排出する除湿機等を備える必要があった為、ランニングコストや設置コストが掛かるという問題があった。
【0003】
そこで、乾燥時間を短縮すると共にコストを低減する低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法が公知となっている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、台車(2)に積載した木材等の乾燥対象物(3)を乾燥室(5)に搬入し、外気を送風手段(13)によりダクト部(11)へ取り込み、加熱手段(12)で加熱して熱風とすると共にセラミック体(14)により遠赤外線を含んだ状態にして調整ダクト(8)内へ排出し、熱風を調整ダクト(8)内から仕切側面(16)及び金網(18)により振り分けて乾燥室(5)に送風し、乾燥室(5)内では熱風を循環させると共に、湿った重い空気を排出口(31)より乾燥室5の外部へ排出する低温乾燥装置(1)である。
【0004】
また、木材を乾燥させる前の生長応力を除去するために、材色をそこなわない比較的低温(60℃〜80℃)の加熱室の温度で、その熱源に熱効率の高い遠赤外線をできるだけ多く発生させることにより、2〜3日間で生長応力を除去し、コストを大幅に引き下げようとした遠赤外線増殖による木材熱処理炉が公知となっている(特許文献2を参照)。
この公知技術は、木質燃料(2)を燃焼させ、炎の上部にはロストル(4)を置き、その上に多孔質のセラミック又はそれに近い火山溶岩等(5)をのせて赤熱させることにより多くの遠赤外線が発生するようにし、その熱風は風道(6)を通って隣室遠赤外線増殖室(22)の中へ遠赤外線増殖用のセラミック又は高密度の溶岩等(23)を適度の空隙を作りながら堆積させた中を通り抜け、蓄熱と更に遠赤外線の増殖を図りながら、加熱室(27)の壁面(28)に設けられた風穴(20)に白金網又はステンレス網(21)をくぐって加熱室(27)内に充満させる構成とした遠赤外線増殖による木材熱処理炉である。
【0005】
これらいずれの公知技術は、木材の乾燥において遠赤外線を利用する遠赤外線発生源がセラミックである点では一致しているが、一個所であるため全体乾燥にむらが生じ、均一に乾燥させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334823号公報
【特許文献2】特開平7−139880号公報
【特許文献3】特開2006−132911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、野菜、果物や木材などを30〜50℃の低温で全体を均一に遠赤外線により乾燥させる、前後、左右、上下を天然鉱石の蓄熱パネルで囲まれた低温乾燥室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の低温乾燥室は、建屋内に高床式に内蔵され、床部は土間コンクリートに独立基礎を立設し、該独立基礎及び束上に受板を掛け渡し、該受板の上に天然鉱石を敷設し、さらに該天然鉱石を覆うように床板を設けて床面の蓄熱パネルを形成し、側面部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して側面の蓄熱パネルを形成し、天井部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して天井の蓄熱パネルを形成し、前記蓄熱パネルを前後、左右、上下に組み立てて低温乾燥室を形成し、該低温乾燥室内にストーブを配置したものである。
前記天然鉱石は、ゼオライトを粒状に加工したものである。
前記ストーブは、薪ストーブ又はペレットストーブである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の低温乾燥室は、建屋内に高床式に内蔵され、床部は土間コンクリートに独立基礎を立設し、該独立基礎及び束上に受板を掛け渡し、該受板の上に天然鉱石を敷設し、さらに該天然鉱石を覆うように床板を設けて床面の蓄熱パネルを形成し、側面部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して側面の蓄熱パネルを形成し、天井部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して天井の蓄熱パネルを形成し、前記蓄熱パネルを前後、左右、上下に組み立てて低温乾燥室を形成し、該低温乾燥室内にストーブを配置したため、野菜、果物や木材などを30〜50℃の低温で全体を均一に遠赤外線により乾燥させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の低温乾燥室の正面断面図である。
【図2】本発明の低温乾燥室の側面断面図である。
【図3】本発明の低温乾燥室の平面断面図である。
【図4】低温乾燥室の蓄熱パネルの拡大断面図である。
【図5】水分、熱、遠赤外線、蓄熱の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の低温乾燥室の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図1の正面断面図に示すように、土間コンクリート1に多数の柱受金具2を固設し、該柱受金具2には柱3をそれぞれ立設し、前記柱3,3間にアルミ建具4を設けて通風可能な四側壁を形成して切妻造りの屋根5をもつ建屋6を形成する。
なお、図3に示す前記建屋6の四側壁の四隅には外壁7が設けられ、図1に示す前記建屋6の天井部には複数の屋根排気ファン8が前後に設けられる。
本発明の低温乾燥室は、前記建屋6内に内蔵されるように設けられる。
【0012】
前記低温乾燥室の床部は、土間コンクリート1に独立基礎9を立設し、該独立基礎9及び束10上に受板11を掛け渡し、該受板11の上に天然鉱石12を敷設し、さらに該天然鉱石12を覆うように床板13を設けて床面の蓄熱パネルを形成する。
なお、天然鉱石12は、ゼオライトや火山溶岩等を粒状に加工して表面積を大きくし、これに限らず、遠赤外線を放射するものであればよい。
前記低温乾燥室の側面部は、金網押え用木板(杉板)14を内側に配置し、さらにその外側に金網15を設け、該金網15から所定間隔を空けて木材羽目板16を設ける。そして、前記金網15と前記木材羽目板16の隙間に天然鉱石12を充填して、側面の蓄熱パネルを形成する。
前記低温乾燥室の天井部は、金網押え用木板(杉板)14を内側に配置し、さらにその外側に金網15を設け、該金網15から所定間隔を空けて木材羽目板16を設ける。
そして、前記金網15と前記木材羽目板16の隙間に天然鉱石12を充填して、天井の蓄熱パネルを形成する。
このようにして、前記天然鉱石12の蓄熱パネルを前後、左右、上下に配置して直方体状の低温乾燥室を形成する。
【0013】
図2の側面断面図(図面では右側が前部、左側が後部)に示すように、前記低温乾燥室の後部に薪ストーブ又はペレットストーブ17を配置し、該薪ストーブ又はペレットストーブ17の周りを所定高さのコンクリートブロック18で囲い、図3の平面断面図に示すように、左側面(図面では下方側)に耐火モルタル19を介して燃料投入口20を形成する。
また、前記コンクリートブロック18の外側には断熱のためロックウール21を添設する。
番号22は、前記薪ストーブ又はペレットストーブ17の煙突であり、建屋6の屋根5を通して屋外へ排気する。
なお、薪ストーブ又はペレットストーブ17としたが、これに限らず、灯油ストーブや電気ストーブでも良い。
【0014】
前記低温乾燥室の本体部(薪ストーブ又はペレットストーブ17より右側部分)には、前述した蓄熱パネルが前後、左右、上下に配置されており、前記蓄熱パネルは、図4の拡大断面図に示すように、前記柱3の幅で壁パネル枠材33を配置して前記金網押え用木板(杉板)14、前記金網15と前記木材羽目板16の所定間隔の空間を形成し、該空間に天然鉱石12を充填する。
前記低温乾燥室の天井付近に複数の送風ファン23を設けて温風を循環させるとともに、床板13付近に複数の排気ファン24を設けて湿った空気を排気する。
また、必要に応じて前記送風ファン23の下方に送風ダクト25を配置し、熱風を床板13方向へ強制送風するようにしてもよい。
【0015】
図3の平面断面図(図面では右側が前部、左側が後部)に示すように、前記低温乾燥室の前部には、蓄熱パネルからなる材料搬入扉26を設け、床板13上に設けた材料搬入レール27を移動するトロッコ28が搬出入できるようにする。
前記低温乾燥室の天井には複数の照明器具29を設け、前記低温乾燥室の前部外側には電気設備コントロールBOX30を設ける。
【0016】
次に、本発明の低温乾燥室の操作動作を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図3に示すように、開かれた材料搬入扉26から材料搬入レール27によりトロッコ28に載せられた木材を積層した乾燥対象物31が低温乾燥室に搬入される。
この実施例では、2台のトロッコ28が搬入できる大きさの低温乾燥室が形成されている。
【0017】
前記乾燥対象物31を搬入した後、前記材料搬入扉26を閉じ、薪ストーブ又はペレットストーブ17に燃料投入口20から燃料を投入し、燃焼させて前記低温乾燥室内を30〜50℃の温度に保つ。
その際、加熱された熱風は、前記低温乾燥室の天井面へ上昇するが、空気の自然対流により循環されて一定温度に保たれる。
しかし、急速に一定温度に保つ際には、図1に示す送風ファン23を駆動して送風ダクト25を介して熱風を床板13側へ送風して強制循環を行う。
【0018】
前記低温乾燥室の四周囲は蓄熱パネルで囲まれているので、該蓄熱パネル内の天然鉱石12が加熱され、該天然鉱石12に熱が蓄熱されると共に天然鉱石12から遠赤外線を放射する。
この遠赤外線は、床、四側壁、天井から同時に放射されるので、前記乾燥対象物31全体から遠赤外線乾燥される。
【0019】
前記低温乾燥室が30〜50℃の一定温度に保たれると、図5の説明図に示すように、その熱が天然鉱石12に蓄えられ、そして前記天然鉱石12が熱及び遠赤外線を放射する。
また、前記低温乾燥室内の水分は、図4、5に示すように金網押え用木板(杉板)14から前記天然鉱石12を通過して木材羽目板16を介して前記乾燥室の床、四側壁、天井から同時に排出される。
【0020】
また、水分の多い乾燥対象物31を乾燥させる場合には、図2、3に示す前記低温乾燥室の天井近くに配置した吸気口32から外気を導入すると共に床板13近くに配置した排気ファン24により内気の排出を行う。
前記低温乾燥室は、前記建屋6内に内蔵されるので、四季の影響を受けにくく、例えば夏季にはアルミ建具4を開放して風通しを良くし、冬季には逆にアルミ建具4を閉めて保温を高め、また建屋6の天井部には屋根排気ファン8を設けているので、建屋6全体の換気を行うこともできる。
【0021】
また、図1、2に示すように、前記床板13は、独立基礎9及び束10により土間コンクリート1より高く、高床式になっており、建屋6内での通気性が優れている。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の低温乾燥室を使用して、木材を乾燥させた実施例を説明する。
秋田杉板の厚さ12mm×幅105mm×長さ3,650mmを30〜50℃で20時間低温乾燥させた時の乾燥状態を表1に示す。なお、Aは材料搬入扉側の湿度%、Bは中央部の湿度%、Cはストーブ側の湿度%を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
これによると、搬入時の水分重量が乾燥後約1/2に減少され、秋田杉板にそり、割れ等も発生していなかった。
【符号の説明】
【0025】
1 土間コンクリート
2 柱受金具
3 柱
4 アルミ建具
5 屋根
6 建屋
7 外壁
8 屋根排気ファン
9 独立基礎
10 束
11 受板
12 天然鉱石
13 床板
14 金網押え用木板(杉板)
15 金網
16 木材羽目板
17 薪ストーブ又はペレットストーブ
18 コンクリートブロック
19 耐火モルタル
20 燃料投入口
21 ロックウール
22 煙突
23 送風ファン
24 排気ファン
25 送風ダクト
26 材料搬入扉
27 材料搬入レール
28 トロッコ
29 照明器具
30 電気設備コントロールBOX
31 乾燥対象物
32 吸気口
33 壁パネル枠材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に高床式に内蔵され、床部は土間コンクリートに独立基礎を立設し、該独立基礎及び束上に受板を掛け渡し、該受板の上に天然鉱石を敷設し、さらに該天然鉱石を覆うように床板を設けて床面の蓄熱パネルを形成し、側面部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して側面の蓄熱パネルを形成し、天井部は金網押え用木板を内側に配置し、さらにその外側に金網を設け、該金網から所定間隔を空けて木材羽目板を設け、前記金網と前記木材羽目板の隙間に天然鉱石を充填して天井の蓄熱パネルを形成し、前記蓄熱パネルを前後、左右、上下に組み立てて低温乾燥室を形成し、該低温乾燥室内にストーブを配置したことを特徴とする低温乾燥室。
【請求項2】
前記天然鉱石は、ゼオライトを粒状に加工したことを特徴とする請求項1記載の低温乾燥室。
【請求項3】
前記ストーブは、薪ストーブ又はペレットストーブであることを特徴とする請求項1記載の低温乾燥室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−122624(P2012−122624A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271278(P2010−271278)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【特許番号】特許第4712120号(P4712120)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(510321365)株式会社 浪花住宅 (1)
【Fターム(参考)】