説明

低温切除システム及び方法

食道の対象組織を治療する医療装置(10)は、カテーテル(18)と、バルーン(16)と、冷媒搬送装置(20)とを備える。カテーテルは、末端部(38)と、冷媒搬送内腔(22)とを有する。末端部には、バルーンが設けられるとともに、冷媒搬送装置が連結されている。冷媒搬送装置は、冷媒搬送内腔が開口する隔室と、バルーン内部(30)に流体連結される冷媒搬送開口部(65)と、隔室と冷媒搬送開口部に流体連結される流通路(59)とを有する。冷媒(24)は、冷媒搬送内腔から隔室内へ入り、流通路、冷媒搬送開口部を介してバルーン内部に搬送可能であり、バルーンを拡張した冷却状態にして、このバルーンが食道の対象組織に押し付けられて、これを冷却するようになっている。本医療装置は、バルーンにおける漏出を検出する手段を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食道の対象組織を治療する医療装置および当該医療装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体には、食道や結腸などの内腔が存在しており、これらは、異形成性や腫瘍性となる可能性がある成分を持つことがある。しばしば、これらの好ましくない組織は除去または破壊することが望ましい。組織の除去及び/または切除が望ましい場合の1つにバレット食道があり、これは、しばしば胃食道逆流症(GERD)を伴う食道の前ガン性状態である。GERDは内科的に抑制できるが、バレット食道は、いったんGERDが緩和されると自発的に消滅はしない。しかしながら、バレット食道が切除されると、正常な食道ライニングを回復させることができるため、食道ガンを発症するリスクが低くなる。
【0003】
この状態の切除のために、様々な技術の評価が行われてきた。これらの技術には、光線力学治療、食道のライニングの内視鏡切除や、アルゴンプラズマ凝固法(APC)、高周波(RF)及び液体窒素の直接噴霧による低温法などの種々のエネルギー源を利用した切除がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バレット食道の切除のための上に挙げたすべての技術には、「利便性」において欠点がある。光線力学治療は、治療後数ヶ月間、患者を日光に対して過敏にさせ、手続き的合併症の確率が高い。機械的な切除法は、熟練を要し、状態を100%除去することはできない可能性がある。APCなどの切除技術は、一度に小さい領域しか治療できず、切除深さの制御が難しい。現在のRF切除技術では、治療用カテーテルの正確なサイズ合わせが必要であり、施術する医師用に別のコンソールが必要になる。液体窒素の直接噴霧は、熟練を要し、施術者に依存するところが非常に大きい。このシステムもまた、別のコンソールが必要であり、液体窒素の一定供給が必要である。
【0005】
本発明は、現在のテクノロジーの多くの限界と取り組むものである。本発明は、バレット食道の治療に特に有益であるが、主に非定型組織の低温切除によって、他の食道組織の治療にも有効となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
食道の対象組織を治療する医療装置の一例は、カテーテル、バルーン及び冷媒搬送装置を備える。カテーテルは、基端部、末端部、及び冷媒搬送内腔を有する。カテーテルはまた、長手方向に延びるカテーテル軸芯を形成する。バルーンは、末端部に設けられている。バルーンはまた、バルーン内部を形成するバルーン内面を備えている。冷媒搬送装置は、末端部に連結される。冷媒搬送装置は、冷媒搬送内腔が開口する隔室と、バルーン内部に流体連結された冷媒搬送開口部と、隔室と冷媒搬送開口部に流体連結された流通路とを有する。冷媒は、冷媒搬送内腔から隔室内へ入り、流通路から、冷媒搬送開口部を通って、バルーン内部に搬送され、バルーンを拡張した冷却状態にして、このバルーンが食道の対象組織に押し付けられて、これを冷却するようになっている。
【0007】
いくつかの例では、バルーンは、少なくとも冷媒搬送開口部を有する冷媒搬送装置の部分を外囲している。また、医療装置が、バルーンの漏出を検出する手段を備えている例もある。流通路が、カテーテル軸芯とほぼ平行で、これを外囲する長さを有する環状流路であるものもある。
【0008】
いくつかの例では、冷媒搬送装置は、冷媒搬送開口部が形成される偏流器チューブと、この偏流器チューブを少なくとも部分的に外囲する軸方向に位置決め可能な導流スリーブを有している。(1)冷媒搬送開口部と(2)導流スリーブの少なくとも一方は、カテーテル軸芯の周囲に少なくとも部分的に伸びて、変化する回転方向及び軸方向位置をもつ経路に沿う縁部を備えている。偏流器スリーブは、冷媒の搬送をバルーン内部に振り分けるべく、冷媒搬送開口部の全部あるいは一部を覆うように位置している。
【0009】
食道の対象組織を治療する医療装置の別の例は、カテーテルと、バルーンと、冷媒搬送装置とを備える。カテーテルは、開放した内部、末端部、排出内腔、及び冷媒搬送内腔を備えた本体シャフトを有している。末端部の外径は、本体シャフトよりも小さい。バルーンは、大径の本体部と、その基端部に小径の軸部を有している。小径の軸部は、カテーテルの末端部に設けられている。バルーンは、バルーン内部を形成する内面を有している。冷媒搬送装置は末端部に連結されている。冷媒搬送装置は、冷媒搬送内腔が開口する隔室と、この隔室に流体連結され、バルーン内部に開口する冷媒搬送開口部を有している。冷媒は、冷媒搬送内腔から隔室内へ入り、冷媒搬送開口部を通って、バルーン内部に搬送され、バルーンを拡張した冷却状態にして、このバルーンが食道の対象組織に押し付けられて、これを冷却するようになっている。
【0010】
対象組織治療温度内で食道の対象組織を低温治療する医療装置を製造する方法の一例は以下の通りである。対象組織を低温切除するために、対象組織治療温度が決定される。バルーンの材料が選択される。このバルーンの材料は、ガラス転移温度が対象組織治療温度範囲を上回り、弾性特性がガラス転移温度を上回り、伸張抵抗がガラス転移温度を下回る。選択されたバルーン材料で製造されたバルーンは、カテーテルアセンブリの末端部に設けられる。バルーンは、バルーン内部を形成する内面を有している。カテーテルアセンブリは、バルーン内部と流体連結する冷媒搬送内腔を備えるカテーテルを有している。冷媒は、冷媒搬送内腔を通ってバルーン内部に搬送され、バルーンを、バルーンの温度がガラス転移温度よりも低い、拡張した冷却状態にすることによって、バルーンが食道の対象組織を冷却する間、バルーンがさらに拡張するのを実質的に防ぐ。
【0011】
身体の切開領域内に配置可能なバルーンに用い、そのバルーンが内部を有し、膨張状態と収縮状態になる制御バルーン拡張アセンブリの一例は、排出流路装置と安全バルブアセンブリとを有している。排出流路装置は、バルーン内部と連結可能な排出流路を形成している。安全バルブアセンブリは、安全バルブと、加圧装置と、弁体とを備える。安全バルブは、排出流路に流体連結された入り口と、排出気体排気領域に流体連結された出口とを有する隔室と、入り口と出口との間に設けられた感圧密封部材とを有している。密閉部材は、この密閉部材に付与される圧力のレベルによって、入り口と出口との間を密閉する。弁体は、加圧装置を密閉部材及び排出流路に選択的に流体連結するとともに、加圧装置を密閉部材及び排出流路から流体分離する。いくつかの例では、弁体は、次の状態に配置可能な制御バルブである。第1状態は、加圧装置、感圧密閉部材、排出流路を互いに流体連結する。第2状態は、加圧装置、感圧密閉部材、排出流路を互いから流体分離する。第3状態は、加圧装置を排出流路に流体連結する。第4状態は、加圧装置を感圧密閉部材に流体連結する。
【0012】
本発明の他の特徴、局面、利点は、以下の図面の説明、詳細な説明及び請求の範囲からわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によって製造された医療装置の一例の簡素化した全体図であり、他の例の部材を点線で示している。
【図2】図1の医療装置の第1例の末端部の簡素化した拡大断面図である。
【図3】バルーン内への低速の冷媒流の効果を簡素化して表した図である。
【図4】バルーン内への高速の冷媒流の効果を簡素化して表した図である。
【図5】図1の医療装置の他の例の図2に類似した図である。
【図6】図1の医療装置のさらに別の例の図2に類似した図である。
【図6A】図6の対応する線に沿った断面図である。
【図6B】図6の対応する線に沿った断面図である。
【図6C】図6の対応する線に沿った断面図である。
【図6D】図6の一部の拡大図である。
【図7】冷媒排出噴射口の別形状を示す図6Dに類似した図である。
【図8】冷媒搬送開口部の3つの異なる形状のうちの1つを示す側面図である。
【図9】冷媒搬送開口部の3つの異なる形状のうちの1つを示す側面図である。
【図10】冷媒搬送開口部の3つの異なる形状のうちの1つを示す側面図である。
【図11】対象組織が、切除凍結温度に続く非切除凍結温度まで予冷される処置の間の一般的な温度曲線を示している。
【図12】2つの異なる冷媒シリンダを冷媒搬送チューブに選択的に接続する装置を示している。
【図13】冷媒シリンダを示し、このシリンダ内には、分割部材/破断ディスクによって分離される2つの異なる冷媒が含まれる。
【図14】冷媒をバルーン内面に接着させるために、バルーンの内面が、バルーンを変形させることによってどのように不均一になるかを示す簡素化した図である。
【図15】冷媒をバルーンの内面に対して集めるために、バルーンの内面に吸収性材料の薄膜を追加したことを示している。
【図16】冷媒が充填される間隙空間を形成する内側及び外側バルーンを示している。
【図17】バルーンに、容器の壁に対して過剰な力を作用させないよう補助する装置を示している。
【図17A】図17の制御バルブの4つの異なる位置のうちの1つを示している。
【図17B】図17の制御バルブの4つの異なる位置のうちの1つを示している。
【図17C】図17の制御バルブの4つの異なる位置のうちの1つを示している。
【図17D】図17の制御バルブの4つの異なる位置のうちの1つを示している。
【図17E】図5に類似した装置を示しているが、排出気体の流量を制限するための排出スリーブはないものである。
【図17F】出口ポートにおいてより低い圧力を作り出すことによってバルーン圧力を下げるための別の技術を示している。
【図18】過剰な径方向への拡張を制限すべくバルーンに封じ込めケージを作るために長手方向に伸びるフィラメントが用いられるバルーンの一例の断面図である。
【図19】過剰な径方向への拡張を制限すべくバルーンに封じ込めケージを作るために長手方向に伸びるフィラメントが用いられるバルーンの一例の端面図である。
【図20】補強のためにバルーンに接合された撓み性のない細片またはワイヤの使用を示す簡素化した側面図である。
【図21】補強のためにバルーンに接合された撓み性のない細片またはワイヤの使用を示す簡素化した端面図である。
【図22】バルーンに強力な接着剤を直接使用することにより補強されたバルーンの図である。
【図23】収縮状態で壁厚が可変の補強バルーンの簡素化された断面図である。
【図24】拡張状態で壁厚が可変の補強バルーンの簡素化された断面図である。
【図25】図6に類似の構造を示しているが、漏出の検出を可能にすべく、バルーンの末端部の中空本体構造内の圧力を監視するために、先端部に開口部を有する圧力検出内腔も備えている。
【図26】図25に類似の構造を示し、流量検出内腔が、バルーンの末端部と支持構造との間の接合部に形成された交差孔で終端となっており、接合部に欠陥があると内腔内の圧力が急激に変化するようになっている。
【図27】流量の低下を監視することにより漏出が検出されるよう、排出気体流に沿って設けられた熱抵抗性部材を備えた配置カテーテルの一部の側部断面図である。
【図28】流量の低下を監視することにより漏出が検出されるよう、排出気体流に沿って設けられた熱抵抗性部材を備えた配置カテーテルの一部の端部断面図である。
【図29】図5に類似の構造の側部断面図であり、冷媒搬送ノズルが、冷媒をバルーンの約180°にわたって噴霧する形状になっている。
【図30】図29の30−30線に沿った断面図である。
【図31】図29に類似の構造の簡素化した断面図であり、冷媒搬送ノズルが全周にわたって延びており、図8のように、軸芯に対して角度をもって方向づけられており、周辺への冷媒噴射の程度を選択的に変えることができるように、軸方向に位置決め可能な導流スリーブを備えた構造を示している。
【図32】図31の構造が、どのように、0°〜360°の間で変わる周辺への冷媒噴射の程度をもつことができるかを示した簡素化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、主に具体的な構造の実施例及び方法に関して、本発明を記載する。本発明は、具体的に開示した実施例及び方法に限定されるものではく、他の特徴、要件、方法及び実施例を用いて実施することができる。好適な実施例は、本発明を説明するために記載するが、請求項によって規定される範囲を限定するためのものではない。当業者は、以下の記載内容における種々の同等の改変例を認めるであろう。
【0015】
本発明の実施例によると、図1及び図2にあるように、医療装置10は、カテーテルアセンブリ12と冷媒供給器14とを備える。カテーテルアセンブリ12は、配置カテーテルまたはシャフト18に設けられた、好ましくはポリウレタンやシリコーンなどのエラストマー材料のバルーン16を有している。ある実施例では、バルーン16は、直径を15〜45mmに膨張させることができる。別の実施例では、食道の大きさの望ましい範囲をカバーするために、複数のバルーンサイズが必要となる。この実施例では、それぞれが少なくとも2mmずつ変更可能なバルーン径を有していることが望ましい。例えば、15〜45mmの全範囲をカバーするために6つの異なるサイズを展開することができ、この場合、それぞれのサイズは5mmの範囲をカバーする。バルーン長さは10〜100mmである。シャフト18は、バルーンが適切にシャフトに接合されるように、ポリウレタンなどの樹脂製であってもよい。PEBAX及びポリエチレンなどの他の適切な生体適合性を持つ材料を用いることもできる。シャフト18は、従来の診断用内視鏡と適合させるなら、一般的には8−Fr未満であり、これは、一般的に2.8mmの付属品用チャネルサイズを有している。しかし、従来の治療用内視鏡用に設計されたカテーテルに、例えば、11−Frまでの大きなシャフトサイズを用いることもできる。シャフト18は、別途図示はしていないが、冷媒の搬送に用いることができる別体の冷媒搬送チューブ22内に形成された冷媒搬送内腔を有していてもよい。搬送チューブ22は、シャフト18と同心で、これを貫通するよう図示されており、例えば0.004〜0.025インチ(0.10〜0.71mm)の内径を有している。いくつかの実施例では、搬送チューブ22の全部または一部が、シャフト18の外側を通っていてもよい。この搬送チューブ22はポリイミドなどの強化樹脂材料でできていてもよい。あるいは、搬送チューブ22は、金属製ハイポチューブであってもよい。ハイポチューブの一般的な金属は、ステンレス鋼及びニチノールである。他の実施例では、配置シャフト18そのものが、冷媒搬送内腔の少なくとも一部を形成する。
【0016】
医療装置10はまた、シャフト18の末端部38に冷媒搬送装置20を有している。図2において矢印24によって示されている亜酸化窒素またはハイドロフルオロカーボンなどの流体飽和液体/気体冷媒24が、冷媒供給器14から、シャフト18の基端部28にあるマニホルド26、搬送チューブ22内に形成される冷媒搬送内腔を通り、冷媒搬送装置20を介して、バルーン16の内部30に供給される。図1に示すように、医療装置10の冷媒供給器14の一例は、使い捨ての冷媒用シリンダ34に接続された携帯可能な流量制御装置32を有している。シリンダ34のサイズは、例えば、容量が10〜50立方センチメートルの間である。冷媒供給器14は、カテーテルアセンブリ12と一体になっていてもよいし、独立していてもよい。冷媒24は、一般的には、搬送チューブ22内で、内腔を介して、室温またはそれより高温で連続的に注入され、いくつかの実施例では、バルーン16の内部30内へ送られる。その後、冷媒は、液体から気体へ相変化するとともに、同時にバルーンを拡張させ、周囲の食道組織からエネルギーを迅速に引き出して、組織を冷却する。その後、気体は、シャフト18から排出され、排出ポート27からマニホルド26を出る。他の実施例では、冷媒供給は、望ましい搬送圧を維持するため、外部加熱を必要とする。その後、バルーン16は、図9に示すように、食道36の組織に接触するまで拡張する。
【0017】
治療対象箇所におけるバルーン16の配置及びバルーンの拡張は、直接的な内視鏡視認など、従来の技術によって監視することが好ましい。蛍光、ラマン、光散乱などの他の内視鏡分光技術も、非定型食道組織の特定に有益である。食道を傷つけるリスクを低くするために、バルーン圧は、食道にかかる有効圧が10−psig以下となるよう、最小にすべきである。バルーン圧は、主に冷媒流量に左右されるが、シャフト18の内部46、及び/または搬送チューブ22の内腔の大きさを操作することによって制御することができる。圧力はまた、図1に破線で示すように、ポート27に取り付けられた背圧レギュレータ29によっても制御することができる。バルーン16の拡張を制御する技術を以下に記載する。
【0018】
食道、特に非定型食道組織の冷却は、バルーン16における液体冷媒の蒸発によって行われるのが一般的であり、これにより、治療対象箇所において食道組織から熱を奪う。非定型組織を切除または変更するために、この組織を、凍結するまで冷却することが望ましい。一般的に、非定型組織を実質的に壊死させるためには、細胞内氷生成が必要となる。非定型食道組織において十分な細胞内氷生成を達成するための目標温度は、−25〜−100℃の間である。壊死が粘膜より深く生じた場合、食道穿孔や狭窄などの低温切除治療の望ましくない副作用が生じるため、切除深さは、食道に冷却が施される時間を規制することによって制御すればよい。一般的な粘膜深さである0.5〜2mmに基づくと、切除に要する時間は60秒以下である。
【0019】
図2は、冷媒搬送装置20を示すカテーテルアセンブリ12の第1例の末端部の断面図である。シャフト18の末端部38は、シャフト18の本体部40よりも小径である。よって、バルーン16の基端部42が末端部38の外表面に固定されて収縮状態にあるとき、シャフト18の末端部38を包囲するバルーン16の全体径は、大径の本体部40にバルーンを設けるときと較べて小さくすることができる。
【0020】
冷媒搬送装置20は、一般的には接着剤または埋め込み化合物48で、基端部がシャフト18の内部46内に固定された支持ワイヤ44を有している。支持ワイヤ44は、シャフト18の先端部50からバルーン16の内部30を通っている。支持ワイヤ44の先端部52は、スリーブ56を介して、バルーン16の末端部54に接着あるいは他の方法で固定されている。
【0021】
冷媒チューブ22は、埋め込み化合物48を貫通して、チューブ22の先端が末端シャフト部38によって形成される隔室58内に開口し、一端が埋め込み化合物48に、他端が筒状案内スリーブ60に位置している。案内スリーブ60を貫通する中央開口部は、支持ワイヤ44に対してサイズが大きくなっており、冷媒24が、隔室58から、支持ワイヤ44と案内スリーブ60との間の流通路59を通り、バルーン16の内部30内へ入ることができるようになっている。
【0022】
切除深さ制御に加えて、治療対象箇所全面にわたって均一な表面切除も必要となる。これを達成するため、拡張したバルーン16の全外表面が治療対象箇所と接触するよう使用される場合、液体冷媒は、バルーン16の全内面61に均一に施さなければならない。全体放射分布の方法の1つを図2に示している。スリーブ状の偏流器62が、一般的には接着剤によって、先端部50から距離64で、支持ワイヤ44に固定されている。偏流器62と先端部50との間の間隙が、ノズルまたは噴出口65タイプの搬送開口部を形成しており、そこを通って、冷媒24がバルーン16の内面の方へ流れる。距離64は、0.025mm〜0.51mm(0.001インチ〜0.020インチ)であるのが一般的である。これによって、冷媒24が、360°にわたって放射状に偏向され、バルーン16の全周面が冷媒24によって冷却されるようになっている。冷媒24は、シャフト18の末端部38に形成された排出孔またはポート66を介してバルーン16の内部30から出て、排出内腔として機能するシャフト18の内部46に入る。この実施例では、冷媒搬送装置20は、埋め込み化合物48、案内スリーブ60、偏流器62、及び支持ワイヤ44を有していることが一般的である。
【0023】
支持ワイヤ44と案内スリーブ60との間の間隙の断面領域を増減することによって、また、距離64を調節することによって、冷媒の速度を必要に応じて増減することができ、冷媒を、バルーンの内面に達するよう送り込む。一般的に、支持ワイヤ44とスリーブ60との間の間隙は、0.127mm(0.005インチ)以下になるであろう。この特徴は、冷媒24がバルーンの内面61に達するまでさらに流れる必要があり、主要な2つの力、つまり、図3及び4の矢印Gで示される重力、及び矢印EGFで示される排出気体の流れに伴う力から受ける影響が大きくなるためにバルーン16の直径が大きくなるので、非常に重要である。図3に示すように、液体冷媒の速度が遅すぎる場合、冷媒は、バルーン16の底面に冷媒24のプール67を形成する傾向がある。さらに、排出気体冷媒24は、液体冷媒24Aの流れを排出ポート66の方へ押す傾向がある。しかし、図4に示すように、冷媒24が高速で送られる場合は、高速冷媒24が重力と排出気体の力の両方を克服することができ、液体冷媒24Bで、バルーン16の内面61を完全に被覆する。偏流器62の偏向面63の形状は、噴霧形態を変えるべく調整可能である。
【0024】
図5は、シャフト18の末端部38が図2の実施例より短い別実施例を示している。冷媒搬送装置は、スリーブ状の偏流器62Aと、支持ワイヤ44に固定された偏流器スリーブ62Bとを備えており、これらは分離されて、その間に噴出口65を設けている。冷媒搬送チューブ22の末端部は、偏流器スリーブ62Bの内部内に固定されており、隔室58内に開口している。隔室58は偏流器スリーブ62B内に形成されている。本実施例では、冷媒24は、隔室58から噴出口65まで直接通過する。縮径排出スリーブ68が、末端部38から延出しており、そこに1つまたは複数の排出孔66を備えており、そこを介して、排出気体124が流れることができる。本実施例では、偏流器62A及び偏流器スリーブ62Bの外径は、バルーン16の基端部42が固定されているシャフト18の末端部38の内部に対して、小さくすることができる。これにより、収縮状態または褶曲状態のときのバルーン16の断面を小さくすることができる。いくつかの例では、排出気体124がシャフト18の内部46に流入できるよう、末端部38を先端部50で十分に開口させたまま、支持ワイヤ44が末端部38に直接固定されているなら、排出スリーブ68を省略することができる。
【0025】
図6及び7は、第3実施例を示しており、冷媒24をより均一に軸方向に分布するために、複数の噴出口65が用いられている。これは、長いバルーンには特に有用である。図6の実施例は、図2のそれと、別の面において異なる。搬送用アダプターチューブ70が、一般的には接着剤または埋め込み化合物72を用いて、シャフト18の末端部38内に固定されている。チューブ70の末端部は、埋め込み化合物71または他の栓構造で充填されている。搬送用アダプターチューブ70、埋め込み化合物71、及び冷媒搬送チューブ22を包囲する埋め込み化合物48が隔室58を形成している。1つまたは複数の孔74が搬送用アダプターチューブ70に形成されている。冷媒24が孔74を通って、搬送用アダプターチューブ70と偏流器スリーブ62Cの間に形成された流通路59内に流れる。その後、冷媒24は、噴出口65を介して、バルーン16の内部30内を通る。図2及び6の実施例において、隔室58と噴出口65との間で流通路59を用いることは、噴出口65への冷媒24の適切な分布、一般的には実質的に均一の分布を確実にするために有用である。従って、流通路59は、冷媒24の適切な分布のための簡単なマニホルドとして機能する。
【0026】
図6の実施例は、シャフト18の末端部38とは別体の部材である偏流器62Aと偏流器スリーブ62Cとを用いている。これにより、噴出口65が完全な360°噴霧を行うことができる。偏流器スリーブ62Cは、例えば、周方向に間隔を空けた3つに位置で、アダプターチューブ70に取り付けることができるが、実施例によっては、冷媒24の圧力によって、偏流器スリーブ62Cがアダプターチューブ70にセンタリングされるように、チューブ70上で自由浮遊していてもよい。他の例では、偏流器62A及び偏流器スリーブ62Cは、シャフト18の末端部38の延長部であってもよい。
【0027】
別の実施例では、偏流器スリーブ62Cは、隔室58の周囲を回るよう設計されていてもよい。この特徴は、冷媒噴霧の均一性を改善するために用いることができる。別の実施例では、冷媒の集中噴霧が、バルーンの内面周囲を回転する。これは、連続噴霧に較べて、治療の平均温度を上げるのに有効である。これは、大気圧で約マイナス90℃で蒸発する亜酸化窒素などの比較的「冷たい」冷媒に、大気圧で約マイナス50℃で蒸発するR−410aなどの「暖かい」冷媒の効果を模倣させるために用いることができる。
【0028】
冷媒24を完全な360°分布のために、冷媒搬送開口部、つまり噴出口65を形成する間隙は連続していなくてもよい。また、噴出口65を形成する間隙の長手方向及び軸方向の位置は一定である必要もない。例えば、図7は、噴出口65の全長にわたって変更可能な幅を示しており、また図8〜10は、ある程度の長手方向の噴霧を冷媒24に付与するために用いることができる噴出口65の3つの異なる周方向形状を示している。特に、図8の冷媒搬送開口部65は、軸芯に対して鋭角で、チューブ70の軸芯に沿って延びる楕円経路を形成している。図9では、冷媒搬送開口部65は、軸芯に対して異なる鋭角で軸芯に沿って延びる一連のほぼ直線のセグメントを持つ経路を形成しており、隣接するセグメントは反対の軸芯方向に延びている。図10は、冷媒搬送開口部65が軸芯に沿って延びる経路を形成しており、その経路が少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのほぼS字形の曲線セグメントを有している例を示している。
【0029】
間隙形成噴出口65として、連続した環状孔及び/または楕円形長孔などのさらに他の形状や構造を用いることもできる。多くの例をここに示しているが、本発明はこれらの限定されるものではない。
【0030】
これまで記載した例は、すべてほぼ360°にわたってカバーするものである。間隙形成噴出口65の範囲をより限定することにより、全周の約半分または約4分の1などの一部のみの切除が可能になる。この場合、食道のこれらの部分のみを切除することが望ましいであろう。そうするための本発明の一実施例を図29及び30に示す。この装置では、冷媒流は、冷媒搬送ノズル128を介してバルーン16の全周のどこかの部分に送られる。前述したように、大きな熱伝導は、液体冷媒がバルーン16の内面61で蒸発する場合のみに可能である。例えば、図29及び30に示すように、システムを、バルーンの内部の全周の約2分の1にのみ冷媒を噴霧するものに構成することによって、全周の約2分の1を治療するシステムを構成することができる。全周治療が望ましい場合は、ユーザは、治療を行ったあと、カテーテルを180℃回転させればよい。あるいは、ユーザは、食道の未治療部分を、後日、例えば30日後などに治療することも選択できる。これにより、食道狭窄などの望ましくない合併症を起こす可能性を低くすることができる。冷媒搬送ノズル128は、より広いまたはより狭い範囲をカバーするよう形成することができる。また、冷媒搬送ノズル128は、連続したものでなくてもよく、2つ以上のノズル部分であってもよい。さらに、2つ以上の冷媒搬送ノズル128が、軸方向に間隔を空けた位置に設けられてもよい。
【0031】
他の実施例では、本装置は、可変周囲を選択的に治療することができる。一実施例においては、図31〜31Bに示すように、冷媒搬送ノズル128は全周ノズルであるが、図8及び31Aに示すように、シャフト18の軸芯に対して角度を有するよう形成されている。導流スリーブ130の軸方向位置が、ノズル128をどの程度露出させるかを決定する。図31Aでは、ノズル128全体が露出しているが、図31Bでは、ノズルの約半分がスリーブ130によって覆われている。これにより、ユーザは、360°からほぼ噴霧なしの状態までの噴霧角度で、噴霧の程度を調整することができる。導流スリーブ130はシャフト18を貫通するワイヤに接続されており、ユーザが軸方向位置を制御できるようになっている。別の構造では、図32〜32Cに示すように、冷媒搬送ノズル128は、シャフト18に直角の全周ノズルである。導流スリーブ130Aは、その端部に、接合部136でスリーブ132の残り部分に接続されている安定リング134を残した切り欠き領域132を有している。切り欠き領域132はまた、その軸芯に対して45℃などの角度で、端面縁138を形成している。導流スリーブ132の軸方向位置は、ノズル128をどの程度露出させるかを決定する。図32及び32Aにおいては、ほぼ全ノズル128が露出しており、冷媒をほぼ全360°パターンで搬送することができる。図32Bでは、ノズル128のほとんどは、スリーブ130Aに覆われており、そのことによって、全周の約8分の1にわたって冷媒を搬送する。
【0032】
一般的に、治療時間が増えると、切除の均一性も増す。治療時間が長くなると、治療される内腔の熱伝導性のために、より均一な表面冷却が可能になり、さらに、治療時間を長くすると、バルーン内のややランダムな冷媒噴霧の性質(製造偏差や2相の冷媒流に伴う不確実性などのため)をより緩和しやすくなる。一方、治療時間が増すと、一般的に所望よりも深い効果が得られる。従って、治療時間を長くする場合、熱傷害から深層組織を保護することが望ましい。例えば、治療時間を増やすひとつの方法は、治療対象組織において細胞外水を、非致命的な温度(一般的には〜−10〜−2℃)まで予冷または予冷凍して、その後すぐに温度を落として、治療対象組織において細胞内氷形成(〜<−15℃)を誘発することである。図11は、この予冷治療の代表的な温度曲線を示している。実線85は、最急冷時のバルーン温度であり、点線87は、バルーンの最緩冷却率を示している。治療の第一段階の間に、全治療対象組織が、非切除凍結温度まで冷却される。この第一段階の持続時間は、最緩冷却のバルーン領域に接触している組織が凍結するようなものとなっている。この持続時間は一般的には「能動的に」制御されることはなく、むしろ、広範囲のカテーテルをテストし、理想的な持続時間を統計的に決定することにより、経験的に決定される。治療の第二段階の間に、バルーン温度は急激に下がり、治療対象組織に壊死を引き起こす。組織の大部分がすでに凍結しているために、壊死誘発温度に達するエネルギー要件が非常に低くなるため、この段階の間に、組織を極端に急激に冷却することができる。さらに、凍結した組織の特定熱容量(Cp)は、通常の組織のCpよりも低い。また、凍結組織の熱伝導率は通常組織のそれよりもかなり高いため、組織はより均一に冷却される。第三段階は、組織の自然解凍であるのが一般的である。
【0033】
このタイプの温度勾配を誘引するために、種々の手段を用いることができる。異なる治療対象深さを治療するためには、複数の温度プロフィールのアルゴリズムを展開することが望ましい。
【0034】
ある実施例においては、温度低下が必要なときに、バルーン圧を下げることができる。冷媒の蒸発温度はバルーン温度に直接関係しているため、この圧力低下によって、バルーン内の温度が下がる。理想的には、さらにバルーン径を限定する特徴が採用されていないなら、バルーンを1気圧以下の圧力で操作することが望ましいため、選択された冷媒は、圧力に対してかなり大きな温度変化を持つ。
【0035】
別の実施例では、様々な治療効果を生むために、複数の冷媒を用いることができる。図12の例では、2つの冷媒シリンダ34A、34Bが、バルブ35A、35Bによって冷媒搬送チューブに選択的に連結される。作動中、まず、シリンダ34Aの冷媒A(一般的にはR134a、R422b、あるいはそれに類似するもの)が、暖かい細胞外冷却/冷凍温度のために用いられる。次に、シリンダ34Bの冷媒B(一般的にはR404、R410a、あるいは亜酸化窒素)が、組織に望ましい損傷を与えるべく、細胞内氷形成を誘発するために用いられる。
【0036】
他の実施例では、2つの冷媒を1つのシリンダに入れることができる。これを行う方法の1つを図13に示す。この構造では、低温冷媒である冷媒Bが、分割部材/破断ディスク82の後ろ側のシリンダ34Cに入れられる。密封状態にするために、分割部材/破断ディスク82が圧入されていてもよいし、シリンダがスエージ加工されていてもよい。その後、シリンダは、破断ディスクが壊れるのを防止すべく十分な低温に維持される。次に、高温冷媒である冷媒Aが、シリンダ34Cに入れられ、貫入可能なシール86を備えた端部キャップ84が、シリンダの端部に圧入されているかスエージ加工されている。冷媒Aの圧力が、破断ディスク82の反対側にかかっているため、ディスクは壊れない。作動中、シリンダ34Cのシール86に穴が開けられて、冷媒Aによって初期冷却が行われる。冷媒Aが完全に消費されると、隔室のその部分の圧力が下がり、破断ディスク82が壊れる。破断ディスク82が壊れると冷媒Bがバルーン16に搬送され、治療が完了する。
【0037】
また、2つの冷媒が互いに不溶性であり、冷媒Aの液相が、冷媒Bの液相より高い濃度を有していてもよい。この場合、2つの冷媒は、分割部材/破断ディスク82なしで、シリンダに入れることができる。
【0038】
バルーン表面温度分布を改善する別の技術は、冷媒に熱伝導媒体を追加することである。これは、システムの絶対冷却力を減少させるという究極の効果を有しているが、バルーンの熱伝導係数を機能的に増加させる。例えば、シリコーンやミネラル・オイルなどの材料を、ボトル詰めの際に冷媒内に溶解させることができる。一般的に、オイルの(容量)パーセンテージは、1〜10%である。通常作動状態では(つまり、熱伝導媒体が追加されない)、冷媒は、搬送シリンダ温度とほぼ同等の温度で、搬送側からバルーン内へ出る。冷媒が搬送側を出ると、冷媒の圧力は急激に下がり、蒸発と、残りの液体冷媒の過冷却を引き起こす。過冷却された液体は、次にバルーン壁に当たって蒸発し、液体冷媒とバルーン壁との間に気体バリアを形成する。従って、液体冷媒に不揮発性要素を加えることによって、液体冷媒もまた、バルーン表面に付着しやすい熱伝導媒体を冷却するため、熱伝導性が向上するのである。
【0039】
さらに、冷媒の表面張力効果を軽減することによって、冷媒分布が助長され、冷媒がバルーンの内部でシートとして流れるようにすることができる。冷媒の表面張力は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどの界面活性剤を冷媒に添加することによって軽減することができる。場合によっては、界面活性剤を、バルーンの内面に塗布することもできる。
【0040】
表面張力効果を軽減する別の技術は、バルーン16の内面61を均一表面にならないように変更することである。図14に示す方法は、バルーン表面61を単に凸凹にするものである。こうすることによって、図14に示すように、全壁厚を変形させる。凸凹の内面61は、バルーン16の内面61のみを化学的にあるいは他の方法で処理することによって実現することができる。別の方法は、図15に示すように、内部のバルーン表面61に、吸収材88の薄膜を追加することである。つまり、吸収材88は、冷媒を吸収しやすく、冷媒をバルーン内面近傍に保持するのを助けるのである。
【0041】
別の実施例では、図16に示すように、内側バルーン及び外側バルーン16A、16Bを利用して形成される隙間空間90内に、冷媒が注入される。この空間90の容量は比較的小さいため、全容積が液体冷媒で安全に充填されることにより、均一の表面温度を作り出す。内側バルーン16Aの内部89は、低い特定の熱容量及び熱伝導率を有する空気などの流体で充填されるのが一般的である。
【0042】
治療対象箇所に沿って一定の切除を行いながら食道の元の形状を維持しつつ、過度の力が食道にかからないようバルーンの拡張を制御することが望ましい。このような場合、弾性バルーンの圧力と直径の関係を利用することが有用である。ある実施例では、図17に示すように、制御バルーン拡張アセンブリ91は、安全バルブアセンブリ93とシャフト18とを有する。シャフト18はバルーン16の内部30に流体連結されている。安全バルブアセンブリ93は、シャフト18の内部46に流体連結された隔室92を有している。安全バルブアセンブリ93はまた、シリンジ96または他のユーザー制御の加圧装置、及び制御バルブ98などのバルブ装置を備えている。隔室92の内部には、シリンジ96と流体連結した浮袋94がある。制御バルブ98は、シリンジ96から浮袋94およびシャフト18の両方への流量を制御する。冷媒搬送チューブ22はシャフト18内に設けられている。冷媒搬送チューブ22は、バルーン16まで、シャフト18と別経路をたどってもよい。例えば、チューブ22の先端は、シャフト18がバルーンに入る箇所とは反対側のバルーン16の端部から入ってもよい。シリンジ96は、空気などの気体で充填するのが一般的である。
【0043】
制御バルブ98は、図17及び17Aの第1位置に設けられており、浮袋94とバルーン16は、シリンジ96からの気体で加圧される。流量制限装置100が、制御バルブ98とシャフト18との間に設けられており、浮袋94がバルーン16よりも早い速度で膨張して、シリンジ96からの気体が隔室92の開口部101から逃げて大気環境または他の排出気体圧縮領域に入ることを防止するようになっている。直接視認下において、バルーン16は、所望の直径まで膨張される。所望の直径になると、制御バルブ98は図17Bに示す第2位置になり、バルブ98から流体が流れないようになる。搬送チューブ22から冷媒が流れ始め、バルーン16内を通った後、バルーンから出て、シャフト18の内部46に戻り、そこから隔室92内に入る。隔室92内の圧力が浮袋94の圧力を超えると、浮袋が十分に変形して、排出冷媒気体124が、浮袋を通って、隔室92の開口部101から大気中に出て、そのことにより、バルーン圧力(従ってバルーン径)を、浮袋内の圧力よりわずかに大きい圧力に規制する。治療が完了すると、制御バルブは、図17Cに示す第3位置になって、バルーン16の真空及び収縮が可能になり、排出気体124がシリンジ96内を通る。浮袋94は膨張したままであるため、バルーンは真空状態を維持することができ、シリンジ96を利用することによって完全に収縮する。これにより、内視鏡(図外)や他の配置装置からのバルーンの抜き取りが容易になる。他のタイプの加圧装置ではなく、シリンジ96を用いることの利点は、1つの装置を用いて、浮袋94を加圧することと、バルーン16の収縮を助長する吸引力を生むことの両方を行うことができるということである。別の治療が必要な場合は、制御バルブを図17Aに示す第1位置にして、再度、工程を開始することができる。望ましい場合、浮袋94は、バルブ98を図17Dに示す第4位置にすることによって、独立して膨張及び収縮させることができる。
【0044】
いくつかの例では、バルブ98は2つのバルブであってもよく、それぞれがシリンジ96に連結され、一般的には流量制限装置100を介して、一方のバルブが浮袋94に、他方のバルブがシャフト18の内部46に連結される。また、浮袋94は、異なる他のタイプの感圧密封部材であってもよい。例えば、浮袋94は、制御バルブ98に流体連結されたピストン・シリンダ構造であってもよく、隔室92内のフラッパーバルブを作動させるのに用いることができる。つまり、シャフト18の内部46内で十分な圧力が得られると、その圧力によってフラッパーバルブが十分に開き、冷媒24がフラッパーバルブを通過して、開口部101から排出される。
【0045】
撓み性が高いバルーンを備えた実施例においては、バルーンの圧力は、10−psigよりかなり低いことが必要になる。これらの場合では、排出内腔のサイズを最大にすることが必要である。
最小の圧力径(hydraulic diameter)は、バルーン16の基端部42の領域にあるのが一般的である。図17Eに示すように、この径は、単に冷媒搬送チューブ22をこの領域を通すだけで最大にすることができる。内視鏡を通るために必要な長手方向の剛性を得るために、冷媒搬送チューブ22は、一般的に、ステンレス製ハイポチューブで構成されている。あるいは、搬送チューブはポリイミドなどの樹脂であってもよいし、金属支持ワイヤはカテーテルの全長を通るものであってもよい。硬質の冷媒搬送チューブ22もまた、バルーン16の長手方向の剛性を与えるものである。
【0046】
他の場合では、バルーン圧を、シャフト18の基端部28を、手術室の吸引源に接続することによって下げることができる。あるいは、図17Fに示すように、ヴェントゥーリ真空発生装置138を装置に一体化することによって真空状態を作り出すこともできる。発生装置138は、冷媒搬送チューブ22に接続されたノズル140を有する。高圧の冷媒がノズル140から絞り出口ポート27aを流れ出る。これにより、出口ポート27aで低圧力が作り出され、排気流124がシャフト18から引かれて、出口ポート27aからシャフトを出るのを促す。
【0047】
さらに、バルーン材料のガラス転移温度(Tg)を利用することも、食道の過拡張を防止するのに有益である。例えば、バルーンが所望のサイズまで静かに膨張した後、冷媒が流れ始める。バルーンの熱質量が低いため、実質的な瞬間冷却が達成され、材料の転移温度が冷媒の蒸発温度よりも高いため、バルーンの係数が劇的に増加し、バルーンに伸張抵抗を持たせる。その結果、バルーンがさらに拡張するのを防止する。従って、通常の体温(〜37℃)で伸びやすいように低い係数のポリマーを、また、時として対象組織治療温度範囲(一般的に−15〜−90℃の範囲内)と呼ばれる目標治療切除温度で伸張抵抗を持つよう係数の高いポリマーを選択することが望ましい。この目的に合致する材料は多くあり、理想的なガラス転移温度を達成するために混合することができる。例えば、ポリウレタンのTgは、硬度(硬度計の率)によって、一般的に−10〜−50℃の範囲であり、混合物を、HFCタイプ冷媒と適合性のあるものにできる。他の可能な材料としては、低硬度PEBAX(Tg〜−60℃)、低硬度ポリエチレン(〜−100℃)、及びシリコーン(〜−130℃)がある。例えば、特定の処置に適切な対象組織治療温度は、−50℃のガラス転移温度をもつ材料が適切な選択となるよう、−30〜−60℃であってもよい。
【0048】
患者が負傷するような欠陥態様の可能性もあるので、なんらかの方法で、このようなリスクを軽減する必要があるだろう。懸念されることのひとつは漏出である。直接視認で処置が行われるため、バルーンの破裂は非常に容易に検知される可能性が高い。しかし、膨張したバルーンの末端で生じる漏出は、食道の膨張や拡張を引き起こし、その結果、漏出が発見される前に孔が空いてしまう可能性がある。このタイプの漏出の一因は、バルーン16の末端54での末端バルーン接合の欠陥である。その結果、このような不首尾なケースの防止及び軽減が有益となる。
【0049】
バルーン16を、スリーブ56のような支持構造に熱ボンドすることが好ましい。この方法によると、強度が高くなるのが一般的で、接着剤などによるボンド方法に較べると失敗が少ない。また、ポリイミドやPETなどの撓み性のない材料で接合部を補強することも、接合部の欠陥を大幅に減らすことができる。
【0050】
さらに、長手方向のコンプライアンス(つまり拡張)を減らすことも、接合部のストレスを軽減する。そうするためのひとつの方法は、図18及び19に示すように、バルーン16に、張力の大きいフィラメントまたは細片102を取り付けることである。そうすることによって、スペクトラ(Spectra)やザイロン(Zylon)などの引っ張り強度の高いポリマー繊維糸を用いることにより封じ込めケージが形成される。繊維糸は、バルーン軸補強バンド104に機械的に取り付けられる。一般的に3〜8本の繊維糸が必要になる。
【0051】
別の実施例では、図20及び21に示すように、撓み性のない細片またはワイヤ106をバルーンに取り付けることによって、バルーンを補強することができる。細片は、PETやポリイミドなどの強度の高い薄層フィルムポリマーで構成されていることが好ましい。細片は、エポキシなどの強度の高い接着剤108で取り付けることができる。
【0052】
あるいは、図22に示すように、バルーン16は、強度の高い接着剤110を塗布することによって補強することができる。この接着剤は、所望の補強を得るために、長手方向と周方向のどのような組合せでも塗布することができる。
【0053】
別の実施例では、図23及び24に示すように、バルーン16は、壁厚部分112を持つように膨らむことができる。壁厚部の位置及び方向は、バルーン16の拡張がどのように制限されるかによって調整することができる。例えば、壁厚部112は、長手方向に伸びる部分、周方向に伸びる部分、螺旋状に延びる部分、あるいはその他の形状で伸びる部分として形成することができる。長手方向に伸びる部分を製造する1つの方法は、図23に示すバルーンのベースチューブを押出し成形して、型でバルーンを膨らませることである。螺旋状に伸びる部分が望ましい場合は、ベースバルーンチューブを押出し成形器から引き抜きながら捻ればよい。あるいは、バルーンをいくつかの構成部品で製造してもよい。例えば、複数の長手方向の補強部材をベースバルーンチューブから別々に押出し成形して、その後、バルーン膨張行程の間に熱ボンドを行ってもよい。
【0054】
また、バルーンの端部42、54間の距離が、バルーンの実際の長さよりも短くなるように、バルーン16をシャフト18に取り付けることによって、長手方向のストレスを軽減することも可能である。
【0055】
さらに、図17の例のように、冷媒流の自動停止とは別に、あるいはそれに加えて、接合部の欠陥を検出することは有益である。漏出を検出するひとつの方法は、バルーンの端部の圧力を測定することである。ある実施例では、図25に示すように、圧力検出内腔116が、カテーテルアセンブリ12の全長にわたって通っており、その先端部118で開放している。基端部は密閉されており、変圧器などの図外の感圧装置と流体連通している。食道や胃への損傷を効果的に軽減するためには、1−psig未満の圧力変化を検出することが必要である。さらに、低い閾値検出圧力のため、食道の運動性や破裂による偽陽性を減らすために、フィルタリング・アルゴリズムが必要になる場合もある。あるいは、冷媒流を直接止めるために、内腔116の圧力を空気アクチュエータに接続することもできる。別の実施例では、図26に示すように、流量検出内腔116が、チューブ70に形成された交差孔120で、バルーン16の先端部54で終端となっている。バルーン16とチューブ70間の接合の欠陥で、バルーン16がチューブ70から外れてしまった場合、気体が交差孔120に搬送されて内腔116内を通る。内腔116内の急な圧力変化は、容易に検出可能である。
【0056】
漏出を検出する別の技術は、排出気体の流量を測定して、流量の急な低下があった場合には冷媒の流れを止めることである。流量検出の方法のひとつを図27及び28に示す。この構造では、低抵抗(<1000ohms、一般的には〜100ohms)の熱抵抗部材122が排出気体流124の中に載置される。熱抵抗部材122は、一般的に、図外の一般的な分圧回路の抵抗器と直列で配置される。冷媒流がいったん開始されると、その回路に電圧が付与され(<12VDC、一般的には5VDC)、熱抵抗部材122を加熱させる。熱抵抗部材122を通過した排出気体流124は、流量に比例する割合で部材122から熱を除去する。部材122の温度は、部材の電圧低下を測定することによって決定することができる。使用中、部材122の温度上昇は流量の低下を示すので、漏出の可能性がある。
【0057】
より高い正確性が要求される場合は、排出気体温度の変化による偽陽性を少なくするために、温度感知部材126を回路に追加することができる。排出気体流124の一定の長さにわたる圧力低下の測定などの他の流量測定方法も利用することができる。
【0058】
上述の記載では、上方、下方、頂部、底部、上、下、などの文言が用いられているが、これらの文言は、発明の理解を助けるために、明細書および請求の範囲において用いられるものであり、限定された意味で用いられるものではない。
【0059】
本発明は、詳細に上述した好適な実施例および例を参照することによって開示されているが、これらの例は、限定的な意味ではなく、説明的な意味において意図されたものであることが理解されるであろう。当業者は、本発明の主旨及び以下の請求の範囲内である改変や組合せが想定するであろう。
【0060】
上述したすべての特許、特許出願及び公開公報は、引用によって援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部、末端部および冷媒搬送内腔を備え、長手方向に延びるカテーテル軸芯を有するカテーテルと、
前記末端部に設けられるとともにバルーン内部を形成する内面を有するバルーンと、
前記末端部に連結されるとともに前記冷媒搬送内腔が開口する隔室、前記バルーン内部に流体連結される冷媒搬送開口部、および、前記隔室と前記冷媒搬送開口部に流体連結される流通路を有する冷媒搬送装置と、を備えた食道の対象組織を治療する医療装置であって、
冷媒が、前記冷媒搬送内腔から前記隔室内へ入り、前記流通路、前記冷媒搬送開口部を介して前記バルーン内部に搬送可能であり、前記バルーンを拡張した冷却状態にして、このバルーンが食道の対象組織に押し付けられて、これを冷却するようになっている医療装置。
【請求項2】
前記カテーテルが、カテーテル内部および前記バルーン内部と前記カテーテル内部に流体連結した排出ポートを有し、
排出気体流が、前記バルーンから前記排出ポート及び前記カテーテル内部を介して、前記カテーテルの基端部の方へ流れる請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記バルーンが、少なくとも前記冷媒搬送開口部を有する前記冷媒搬送装置の部分を外囲する請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記冷媒搬送開口部が、冷媒をほぼ360°パターンで前記バルーン内部に送る請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記冷媒搬送開口部が、冷媒を選択されたパターンで前記バルーン内部に送る請求項3に記載の医療装置。
【請求項6】
前記冷媒搬送開口部から流れる冷媒を、前記選択されたパターンで前記バルーンの内面に接触するよう十分な速度で前記冷媒搬送開口部から排出させる手段を備えた請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記冷媒搬送開口部が、180°以下のパターンで冷媒を前記バルーン内部に送る請求項3に記載の医療装置。
【請求項8】
前記冷媒搬送開口部が径方向外側に拡大する請求項1〜7の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項9】
前記バルーンにおける漏出を検出する手段を備えた請求項1〜8の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項10】
前記バルーンと前記カテーテルの基端部との間に延びる圧力検出内腔を備え、前記バルーンの外圧における漏出を指示する変化が、前記圧力検出内腔における対応する圧力変化によって検出される請求項1〜8の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項11】
前記圧力検出内腔が前記バルーンの外側領域に開口している請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記バルーンが、間に接合部を形成する前記カテーテルと前記冷媒搬送装置のいずれか一方に固定される取付け部を有し、前記圧力検出内腔が前記接合部に延出しており、前記接合部の欠陥が感知されるようになっている請求項10に記載の医療装置。
【請求項13】
前記カテーテル内部で前記排出気体流と接触する流量検出器を備え、前記排出気体流における漏出を指示する流量の変化を検出することができる請求項2に記載の医療装置。
【請求項14】
前記流通路が前記カテーテル軸芯にほぼ平行でこれを外囲する長さを有する環状流路を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項15】
前記冷媒搬送開口部が前記隔室の末端に位置することにより、冷媒が、末端方向で前記環状流路に沿って流れる請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
前記冷媒搬送装置が、搬送アダプターチューブと当該搬送アダプターチューブを外囲するスリーブとを有し、
前記隔室の一部が前記搬送アダプターチューブによって形成され、
前記環状流路が前記スリーブおよび前記搬送アダプターチューブによって形成され、
さらに前記流通路が前記搬送アダプターチューブを貫通して形成される孔を有する請求項14に記載の医療装置。
【請求項17】
前記冷媒搬送開口部が前記スリーブの基端部と末端部に位置する開口部を有する請求項16に記載の医療装置。
【請求項18】
冷媒が、基端方向および末端方向の両方において、前記環状流路を介して流れるように前記孔が位置している請求項17に記載の医療装置。
【請求項19】
前記冷媒搬送装置が、前記搬送アダプターチューブに設けられた偏流器を有しており、前記冷媒搬送開口部が前記スリーブと前記偏流器との間に形成されるとともに、前記偏流器が、前記環状流路に沿って流れる冷媒を、前記冷媒搬送開口部から径方向外側に向けるように位置するとともに構成されている請求項16に記載の医療装置。
【請求項20】
前記搬送アダプターチューブが軸芯を形成し、前記冷媒搬送開口部が、前記軸芯の全周にわたって延びている請求項19に記載の医療装置。
【請求項21】
前記冷媒搬送開口部が、前記軸芯に鋭角で前記軸芯に沿って延びる楕円経路を形成する請求項20に記載の医療装置。
【請求項22】
前記冷媒搬送開口部が、前記軸芯に対して異なる鋭角で前記軸芯に沿って延びる一連のほぼ直線のセグメントを持つ経路を形成しており、隣接する前記セグメントが反対の軸芯方向に延びている請求項20に記載の医療装置。
【請求項23】
前記冷媒搬送開口部が軸芯に沿って延びる経路を形成しており、この経路が少なくとも1つのほぼS字形の曲線セグメントを有している請求項20に記載の医療装置。
【請求項24】
前記冷媒搬送開口部が前記カテーテル軸芯の全周にわたって延びており、前記スリーブが前記搬送アダプターチューブを浮遊外囲するよう、前記冷媒搬送装置の残り部分に完全に固定されていない請求項16に記載の医療装置。
【請求項25】
前記冷媒搬送開口部が、変化する回転方向及び軸方向位置を有する経路に沿って延びている請求項24に記載の医療装置。
【請求項26】
前記冷媒搬送開口部が、前記カテーテル軸芯の少なくとも半分にわたって延びている請求項1〜25の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項27】
前記冷媒搬送装置が、前記冷媒搬送開口部が形成される偏流器チューブと、当該偏流器チューブを少なくとも部分的に外囲する軸方向に位置決め可能な導流スリーブとを有し、(1)前記冷媒搬送開口部と(2)前記導流スリーブの少なくとも一方が、前記カテーテル軸芯の周囲に少なくとも部分的に伸びて、変化する回転方向及び軸方向位置をもつ経路に沿う縁部を備えており、
前記偏流器スリーブが、冷媒の搬送を前記バルーン内部に振り分けるべく、前記冷媒搬送開口部の全部あるいは一部を覆うように位置している請求項1〜26の何れか一項に記載の医療装置。
【請求項28】
前記縁部が変化する回転方向及び軸方向位置をもつ経路に沿うように、前記冷媒搬送開口部が変化する回転方向及び軸方向位置をもつ経路に沿って延びている請求項27に記載の医療装置。
【請求項29】
前記縁部がほぼ一定の軸方向位置をもつ経路に沿うように、前記冷媒搬送開口部がほぼ一定の軸方向位置をもつ経路に沿って延びている請求項27に記載の医療装置。
【請求項30】
開放した内部、末端部、排出内腔及び冷媒搬送内腔有する本体シャフトを備え、前記末端部の外径が前記本体シャフトよりも小さいカテーテルと、
大径の本体部およびその基端部に小径の軸部を有するとともに、前記小径の軸部が前記カテーテルの末端部に設けられており、バルーン内部を形成する内面を有しているバルーンと、
前記末端部に連結されるとともに、前記冷媒搬送内腔が開口する隔室、および、当該隔室に流体連結されバルーン内部に開口する冷媒搬送開口部を備えた冷媒搬送装置と、を備えた食道の対象組織を治療する医療装置であって、
冷媒が、前記冷媒搬送内腔から前記隔室内へ入り、前記冷媒搬送開口部を介して前記バルーン内部に搬送可能であり、前記バルーンを拡張した冷却状態にして、このバルーンが食道の対象組織に押し付けられて、これを冷却するようになっている医療装置。
【請求項31】
対象組織を低温切除するための対象組織治療温度を決定することと、
前記対象組織治療温度を上回るガラス転移温度を有し、前記ガラス転移温度を上回る弾性特性を有するとともに、前記ガラス転移温度を下回る伸張抵抗を有するバルーン材料を選択することと、
前記選択されたバルーン材料で製造され、バルーン内部を形成する内面を備え、前記カテーテルアセンブリが前記バルーン内部に流体連結された冷媒搬送内腔を有するカテーテルを備えたバルーンをカテーテルアセンブリの末端部に取り付けること、を有する対象組織治療温度内で食道の対象組織を低温治療するための医療装置を製造する方法であり、
冷媒が、前記冷媒搬送内腔を通って前記バルーン内部に搬送され、前記バルーンを、前記バルーンの温度が前記ガラス転移温度よりも低い、拡張した冷却状態にすることによって、前記バルーンが食道の対象組織を冷却する間、前記バルーンがさらに拡張するのを実質的に防ぐ方法。
【請求項32】
身体の切開領域内に配置可能なバルーンに用い、前記バルーンが内部を有し、膨張状態および収縮状態になる制御バルーン拡張アセンブリであって、
バルーン内部に連結可能な排出流路を形成する排出流路装置と、
安全バルブ、加圧装置および弁体を備えた安全バルブアセンブリと、を備え、
前記安全バルブは、前記排出流路に流体連結された入口および排出気体排気領域に流体連結された出口を有する隔室と、前記入口および前記出口の間に設けられた感圧密閉部材と、を有しており、前記感圧密閉部材は、当該感圧密閉部材に付与される圧力のレベルによって前記入口および前記出口の間を密閉し、
前記弁体は、前記加圧装置を前記感圧密閉部材及び前記排出流路に選択的に流体連結するとともに、前記加圧装置を前記感圧密閉部材及び前記排出流路から流体分離するように構成されている制御バルーン拡張アセンブリ。
【請求項33】
前記弁体が、前記加圧装置、前記感圧密閉部材および前記排出流路を互いに流体連結する第1状態と、
前記加圧装置、前記感圧密閉部材および前記排出流路を互いから流体分離する第2状態と、
前記加圧装置を前記排出流路に流体連結する第3状態と、
前記加圧装置を前記感圧密閉部材に流体連結する第4状態と、に配置可能な制御バルブを有する請求項32に記載の制御バルーン拡張アセンブリ。
【請求項34】
前記感圧密閉部材が膨張可能な浮袋である請求項32に記載の制御バルーン拡張アセンブリ。
【請求項35】
前記安全バルブアセンブリが、前記弁体と前記排出流路との間に設けられた流量制限装置を有しており、前記加圧装置が、前記感圧密閉部材および前記排出流路の両方に流体連結されると、前記膨張可能な浮袋が前記バルーンよりも早い速度で膨張する請求項34に記載の制御バルーン拡張アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【公表番号】特表2012−509146(P2012−509146A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537520(P2011−537520)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064395
【国際公開番号】WO2010/059519
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511123669)シートゥー・セラピューティクス・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】