説明

低温液化ガス貯蔵設備

【課題】低温液化ガス貯蔵設備において、気化ガス配管における断熱対策を施す範囲の増大を抑制しつつ、気化ガスの吸引口から液化ガスを吸い込むことを防止する。
【解決手段】気化ガス配管4aが、気化ガスを吸引すると共にクールダウンリング3cよりも上方に配置される吸引口4cと、吸引口4cが設けられると共にタンク2内部にて当該タンク2の屋根部2dに沿って配設されるタンク内部配管部位4dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガス貯蔵設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスを低温にて貯蔵する貯蔵設備では、タンク内で発生した気化ガス(ボイルオフガス)を圧縮する設備が設けられている。
圧縮された気化ガスは、液化ガスの排出ラインに圧送されたり、再度液化されてタンク内に返送されたりする。この結果、低温液化ガス貯蔵設備では、気化ガスによるタンクの内圧上昇を防止すると共に、気化ガスの有効利用を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−168398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低温液化ガス貯蔵設備としては、稼働中であっても低温に冷却された液化ガスを循環させて配管等の冷却を行い、この循環させた液化ガスをタンクの上部に配置されたクールダウンリングの開口から下方に向けて散布する構成を有するものがある。
このように、タンクの上部にクールダウンリングが配置されかつ稼働中であっても当該クールダウンリングの開口から液化ガスの散布が行われている場合には、気化ガスを吸引する吸引口がクールダウンリングよりも下方に位置すると、散布された液化ガスの一部が吸引口から吸い込まれてしまう。
気化ガスの吸引口から液化ガスが吸い込まれると、吸い込まれた液化ガスが気化ガス配管を塞ぎ、気化ガスの吸引が困難となる。
【0005】
このような気化ガスの吸引口からの液化ガスの吸い込みを防止するためには、気化ガス配管をタンクの頂上部分からタンク内に挿し込み、吸引口をクールダウンリングよりも上方に配置することが考えられる。
しかしながら、一般的に、気化ガス配管をタンクの頂上部分からタンク内に挿し込む場合には、タンク外部における気化ガス配管の配設距離が長くなる。
【0006】
気化ガス配管をタンクの外部において配設する場合には、配管の内部と外部との温度差が大きいため、温度差に起因する変位量を吸収するための配管ループを設けたり、配管に断熱材を巻きつけたりする等の断熱対策を施す必要がある。
このため、上述のように気化ガス配管をタンクの頂上部分からタンク内に挿し込む場合には、断熱対策を施す範囲が長くなり、気化ガス配管のコストの増大を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、低温液化ガス貯蔵設備において、気化ガス配管における断熱対策を施す範囲の増大を抑制しつつ、気化ガスの吸引口から液化ガスを吸い込むことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、低温液化ガスを貯留するタンクと、当該タンク内部の上部に配置されると共に上記低温液化ガスを下方に向けて噴霧することによって上記タンクを冷却するクールダウンリングと、上記タンクにて発生した気化ガスを吸引して上記タンクの外部に案内する気化ガス配管とを備える低温液化ガス貯蔵設備であって、上記気化ガス配管が、上記気化ガスを吸引すると共に上記クールダウンリングよりも上方に配置される吸引口と、上記吸引口が設けられると共に上記タンク内部にて当該タンクの屋根部に沿って配設されるタンク内部配管部位とを備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記気化ガス配管が、上記屋根部の肩部より上記タンクの内部に進入しているという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記気化ガス配管の上記吸引口が、下方に向けて開口しているという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記気化ガス配管の上記タンク内部配管部位の途中部位にドレインホールを有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気化ガス配管に設けられる吸引口がクールダウンリングよりも上方に配置されている。
このため、クールダウンリングより下方に向けて散布される液化ガスが吸引口に吸い込まれることを防止することができる。
【0014】
また、本発明によれば、気化ガス配管は、吸引口が設けられると共にタンク内部に配置されるタンク内部配管部位を有している。
つまり、本発明においては、タンク内部配管部位に相当する気化ガス配管の一部がタンク内部に配設されている。
タンク内部に配設されるタンク内部配管部位に対しては、気化ガス配管の内部温度と外気温との温度差がないため、断熱対策を施す必要がない。
このように、本発明によれば、気化ガス配管が断熱対策を施さなくても良い部位を備えており、吸引口をクールダウンリングよりも上方に配置する場合であっても、気化ガス配管における断熱対策を施す範囲の増大を抑制することができる。
【0015】
したがって、本発明によれば、低温液化ガス貯蔵設備において、気化ガス配管における断熱対策を施す範囲の増大を抑制しつつ、気化ガスの吸引口から液化ガスを吸い込むことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における低温液化ガス貯蔵設備の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の領域Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る低温液化ガス貯蔵設備の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
(本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備の構成)
図1は、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1の概略構成を模式的に示す断面図である。
本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1は、LNGやLPG等の液化ガスXを低温で貯蔵するためのものであり、図1に示すように、タンク2と、クールダウン装置3と、気化ガス回収装置4とを備えている。
【0019】
タンク2は、液化ガスXを貯留するものであり、液化ガスXが直接貯留される内槽2aと、内槽2aを囲う外槽2bとを備えている。
なお、本実施形態においては、内槽2aは屋根部2a1を含んで全体が金属によって形成されており、外槽2bは屋根部2b1が金属で形成されると共に他の部位(側壁や底部)はコンクリートによって形成されている。
また、内槽2aと外槽2bとの間には断熱材2cが配設されており、これによってタンク2は、外部から液化ガスXに対して熱の伝達を低減させる構造としている。
【0020】
クールダウン装置3は、タンク2等の冷却を行うものである。
【0021】
このクールダウン装置3は、図1に示すように、タンク2に貯留された液化ガスXの一部をタンク2から取り出して圧送するポンプ3aと、液化ガスXをタンク2の外部にて案内する液化ガス配管3bと、タンク2に返送される液化ガスXをタンク2の上部から下方に向けて散布するクールダウンリング3cとを備えている。
【0022】
ここで、図2を参照して、クールダウンリング3cについて説明する。
図2(a)は図1の領域Aの拡大図であり、図2(b)は図2(a)の上面図である。なお、図2(b)においては、説明の便宜上、タンク2の屋根部2d(内槽2aは屋根部2a1及び外槽2bは屋根部2b1)を省略して図示している。
【0023】
そして、クールダウンリング3cは、図2に示すように、液化ガス配管3bの一部として内槽2aの上部に配置されており、下部に設けられたノズル開口3dから下方に向けて液化ガスXを噴霧することによって内槽2aの全体に液化ガスXを散布する。
【0024】
なお、クールダウンリング3cは、内部配管3e(液化ガス配管3bの一部)と接続されており、当該内部配管3eを介して液化ガスXが供給される。また、内部配管3eは、タンク2の屋根部2dの肩部よりタンク2の内部に進入し、タンク2の内部において屋根部2dの内壁面に沿って配設されている。
【0025】
図1に戻り、気化ガス回収装置4は、タンク2内で液化ガスXが蒸発することによって発生する気化ガスを回収するものであり、タンク2にて発生した気化ガスを吸引してタンク2の外部に案内する気化ガス配管4aと、気化ガス配管4aを介して吸引された気化ガスを圧縮する圧縮機4bとを備えている。
【0026】
ここで、図2を参照して気化ガス配管4aについて説明する。
気化ガス配管4aは、図2(a)に示すように、気化ガスを吸引すると共にクールダウンリング3cよりも上方に配置される吸引口4cと、当該吸引口4cが設けられると共にタンク2内部にて屋根部2dに沿って配設されるタンク内部配管部位4dとを備えている。
【0027】
吸引口4cは、水平に延在するタンク内部配管部位4dの開口端によって形成されている。
なお、本実施形態においては、タンク内部配管部位4dの端部は、切断面が下方に向くように切断されている。このため、吸引口4cは、図2(a)に示すように、下方に向けて開口している。
【0028】
また、本実施形態においては、気化ガス配管4aがタンク2の屋根部2dの肩部よりタンク2の内部に進入している。そして、タンク2の内部への侵入箇所から吸引口4cに至るまでの領域がタンク内部配管部位4dとされている。
このタンク内部配管部位4dは、タンク2の内部に配設されると共に気化ガスを案内するものであることから、内部と外部との温度差がなく、熱膨張によって変位することがない。このため、タンク内部配管部位4dに対しては断熱対策を施す必要がなく、タンク内部配管部位4dは、断熱材が巻かれることなく、かつ、タンク2の内部への侵入箇所と吸引口4cとを屋根部2dに沿う最短距離で結ぶにように直線状に形状設定されている。
なお、気化ガス配管4aのうち、タンク2の外部に配設される部位に対しては、不図示の断熱対策が施されている。
【0029】
また、気化ガス配管4aのタンク2の内部への侵入箇所は、吸引口4cよりも低い位置となっている。このため、タンク内部配管部位4dは、図2(a)に示すように、吸引口4cよりも低い位置まで配設されている。
そして、本実施形態においては、タンク内部配管部位4dの最も低い部位(タンク内部配管部位の途中部位)にドレインホール4eが設けられている。
【0030】
このドレインホール4eは、気化ガスが気化ガス配管4a内に液化ガスがたまらないようにしている。
なお、ドレインホール4eは、タンク内部配管部位4dの最も低い部位に設けられている。このため、ドレインホール4eから気化ガス配管4aの外部に排出された液化ガスは、タンク2内に貯留される液化ガスXに落下することとなる。
【0031】
(本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備の動作)
以上のように構成された本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1では、クールダウン装置3によって、タンク2等が冷却される。
具体的には、ポンプ3aによって、液化ガス配管3b内を液化ガスが流れる。液化ガス配管3b内を流れる液化ガスは、内部配管3e及びクールダウンリング3cに供給されてタンク2の上部から下方に向けて噴霧される。
【0032】
一方で、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、気化ガス回収装置4によって、タンク2内で発生した気化ガスが回収される。
具体的には、圧縮機4bが駆動されると、気化ガス配管4aに設けられた吸引口4cから気化ガスが吸い込まれる。吸引口4cから吸い込まれた気化ガスは、気化ガス配管4aによって放出される。例えば不図示の配管を介して、液化ガスの排出ラインに供給される。
【0033】
(本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備の効果)
以上のような本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、気化ガス配管4aに設けられる吸引口4cがクールダウンリング3cよりも上方に配置されている。
このため、クールダウンリング3cより下方に向けて散布される液化ガスが吸引口4cに吸い込まれることを防止することができる。
また、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1によれば、気化ガス配管4aは、吸引口4cが設けられると共にタンク2内部に配置されるタンク内部配管部位4dを有している。
つまり、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、タンク内部配管部位4dに相当する気化ガス配管4aの一部がタンク2内部に配設されている。
タンク2内部に配設されるタンク内部配管部位4dに対しては、気化ガス配管4aの内部温度と外気温との温度差がないため、断熱対策を施す必要がない。
このように、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1によれば、気化ガス配管4aが断熱対策を施さなくても良い部位を備えており、吸引口4cをクールダウンリング3cよりも上方に配置する場合であっても、気化ガス配管4aにおける断熱対策を施す範囲の増大を抑制することができる。
したがって、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1によれば、気化ガス配管4aにおける断熱対策を施す範囲の増大を抑制しつつ、吸引口4cから液化ガスを吸い込むことを防止することが可能となる。
【0034】
次に、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、気化ガス配管4aが、タンク2の屋根部2dの肩部よりタンク2の内部に進入している。
このため、タンク内部配管部位4dを長く確保することができ、気化ガス配管4aにおける断熱対策を施す範囲の増大をより抑制することができる。
【0035】
次に、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、気化ガス配管4aの吸引口4cが、下方に向けて開口している。
タンク2に貯留された液化ガスXが蒸発することによって発生する気化ガスは、液化ガスXから上方に向かう。このため、吸引口4cを下方に向けて開口することによって、気化ガスが吸引口4cに入り込みやすくなる。この結果、気化ガス配管4aの圧力損失を低減することができる。
【0036】
次に、本実施形態の低温液化ガス貯蔵設備1においては、タンク内部配管部位4dの途中部位にドレインホール4eが設けられている。
このため、気化ガス配管4a内に液化ガスが詰まることを防止することができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、タンク内部配管部位4dの端部を切断することによって得られる開口端を吸引口4cとする構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、吸引口4cの形状や数は変更可能である。例えば、タンク内部配管部位4dに複数の貫通孔を形成し、当該貫通孔を吸引口とする構成を採用することもできる。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、外槽2bの屋根部2b1が金属によって形成されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、外槽2bの屋根部がコンクリートによって形成されている構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1……低温液化ガス貯蔵設備、2……タンク、2a……内槽、2b……外槽、2c……断熱材、2d……屋根部、3……クールダウン装置、3a……ポンプ、3b……液化ガス配管、3c……クールダウンリング、3d……ノズル開口、3e……内部配管、4……気化ガス回収装置、4a……気化ガス配管、4b……圧縮機、4c……吸引口、4d……タンク内部配管部位、4e……ドレインホール、X……液化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留するタンクと、当該タンク内部の上部に配置されると共に前記低温液化ガスを下方に向けて噴霧することによって前記タンクを冷却するクールダウンリングと、前記タンクにて発生した気化ガスを吸引して前記タンクの外部に案内する気化ガス配管とを備える低温液化ガス貯蔵設備であって、
前記気化ガス配管は、
前記気化ガスを吸引すると共に前記クールダウンリングよりも上方に配置される吸引口と、
前記吸引口が設けられると共に前記タンク内部にて当該タンクの屋根部に沿って配設されるタンク内部配管部位と
を備えることを特徴とする低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項2】
前記気化ガス配管が、前記タンクの屋根部の肩部より前記タンクの内部に進入していることを特徴とする請求項1記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項3】
前記気化ガス配管の前記吸引口が、下方に向けて開口していることを特徴とする請求項1または2記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項4】
前記気化ガス配管の前記タンク内部配管部位の途中部位にドレインホールを有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の低温液化ガス貯蔵設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241720(P2012−241720A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108721(P2011−108721)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】