説明

低温硬化性樹脂組成物、それを用いた塗膜形成方法、樹脂モルタル及び繊維強化樹脂

【課題】0℃以下の低温環境下でも短時間で硬化させることができ、低臭気であり、作業性、耐衝撃性及び耐久性に優れた低温硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の低温硬化性樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性樹脂と、
(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、
(C)コバルト金属塩と、
(D−1)下記一般式(I)で表される水酸基含有芳香族3級アミンと、
【化1】


(式中、R1は、H、CH3またはOCH3であり、R2は、ヒドロキシアルキル基であり、R3は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)
(D−2)下記一般式(II)で表される芳香族3級アミンと、
【化2】


(式中、R4は、H、CH3またはOCH3であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキル基である)
(E)有機過酸化物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温硬化性樹脂組成物、それを用いた塗膜形成方法、樹脂モルタル及び繊維強化樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
水産物、畜産物、農産品、冷凍食品などは、一般的に、冷蔵・冷凍倉庫において10℃以下の低温で保管される。この冷蔵・冷凍倉庫のような低温保管施設の床は、フォークリフトや重量機械の進入、凍害などにより損傷を受け易い上に、使用環境の厳しさからその損傷が進行し易い状況にある。
これまで、低温保管施設の床を補修するための方法がいくつか提案されているものの(例えば、特許文献1及び2を参照)、これらは施設を停止させるか或いは施設の温度を上昇させる必要があるため、保管物を他の低温保管施設に移動させなければならなかった。
【0003】
低温保管施設を停止させたり温度を上昇させたりすることなく床を補修するためには、低温環境下で使用可能な補修材料を用いる方法が考えられる。このような用途では、(メタ)アクリル樹脂が用いられることが多いが、この樹脂が主として使用している(メタ)アクリレートモノマーは臭気が強く、低温施設内の保管物に臭気が吸着するという問題がある。
そこで、低臭気であり、低温環境下で使用可能な樹脂材料として、末端または側鎖に1個以上の(メタ)アクリル基、ビニル基の少なくとも1種を有するラジカル重合可能な低臭気性モノマーまたはプレポリマーを用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。しかし、この樹脂材料は、紫外線を照射して硬化させる必要があるため、人体への悪影響が懸念されるうえに、手間が掛かり、また、大面積の床や紫外線照射し難い場所を補修する場合には、硬化の程度にばらつきが生じることがあった。
【0004】
また、低温でも硬化可能な樹脂組成物として、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリル樹脂などのラジカル重合性樹脂と、コバルト金属石鹸と、芳香族3級アミンと、脂肪族アミンとを含有するものが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。しかし、この樹脂組成物を0℃以下の低温環境下で硬化させようとすると、長時間を要するという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−182562号公報
【特許文献2】特開2000−320113号公報
【特許文献3】特開昭60−95005号公報
【特許文献4】特開2004−224819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、0℃以下の低温環境下でも短時間で硬化させることができ、低臭気であり、作業性、耐衝撃性及び耐久性に優れた低温硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)ラジカル重合性樹脂と、(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、(C)コバルト金属塩と、(D−1)下記一般式(I)で表される水酸基含有芳香族3級アミン(式中、R1は、H、CH3またはOCH3であり、R2は、ヒドロキシアルキル基であり、R3は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)と、(D−2)下記一般式(II)で表される芳香族3級アミン(式中、R4は、H、CH3またはOCH3であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキル基である)と、(E)有機過酸化物とを含有する樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、0℃以下の低温環境下でも短時間で硬化させることができ、低臭気であり、作業性、耐衝撃性及び耐久性に優れた低温硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による低温硬化性樹脂組成物を詳細に説明する。
本発明の低温硬化性樹脂組成物は、必須成分として、(A)ラジカル重合性樹脂と、(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、(C)コバルト金属塩と、(D−1)水酸基含有芳香族3級アミンと、(D−2)芳香族3級アミンことを特徴とする。
【0011】
本発明で使用する(A)成分のラジカル重合性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
【0012】
<ビニルエステル樹脂>
本発明におけるビニルエステル樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と呼ばれることもあり、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸と(必要に応じて飽和二塩基酸)のエステル化反応により得られる従来公知のものを制限なく用いることができる。このような公知のビニルエステル樹脂は、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1988年発行及び「塗料用語辞典」、色材協会編、1993年発行などに記載されている。
【0013】
ここでエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型グリシジルエーテル及びノボラック型グリシジルエーテルを挙げることができる。より具体的には、ビニルエステル樹脂の原料として、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、水素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、シクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、ノルボルナンジアルコールとエピクロルヒドリンとの反応物、テトラブロムビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、トリシクロデカンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、アリサイクリックジエポキシカーボネート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ノボラック型グリシジルエーテル、クレゾールノボラック型グリシジルエーテルなどが挙げられる。不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。飽和二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
上記原料から得られるビニルエステル樹脂の中でも、柔軟性や靭性といった硬化物の物性の観点から、ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0014】
<ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂>
本発明におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とは、(1)飽和多塩基酸及び/または不飽和多塩基酸と多価アルコールとから得られる末端カルボキシル基のポリエステルにα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸及び/または不飽和多塩基酸と多価アルコールとから得られる末端カルボキシル基のポリエステルに水酸基含有アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート、(3)飽和多塩基酸及び/または不飽和多塩基酸と多価アルコールとから得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0015】
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物とフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和多塩基酸またはその無水物が挙げられる。多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレ−トの製造に用いるエポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、グリシジルメタクリレートが代表例として挙げられる。
上記原料から得られるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の中でも、機械的強度の観点から、ビスフェノールA型ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0016】
<ウレタン(メタ)アクリレート樹脂>
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類とを反応させた後、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物及び必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーである。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類とを反応させた後、更にポリイソシアネートを反応させてもよい。
【0017】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジシソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バノックD−750、クリスボンNK(商品名;大日本インキ化学工業株式会社製)テスモジュールL(商品名;住友バイエル社製)、コロネートL(商品名;日本ポリウレタン社製)、タケネートD102(商品名;武田薬品社製)、イソネート143L(商品名;三菱化学社製)、デュラネートシリーズ(商品名;旭化成ケミカル株式会社)などが挙げられる。これらポリイソシアネートは、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、コストの観点から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0018】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料に用いられるポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。より具体的には、グリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。これら多価アルコール類は、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0020】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌルサンノジ(メタ)アクリレート、ペンタエスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリン(モノ)(メタ)アクリレート、ブレンマーシリーズ(商品名;日油株式会社製)などが挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリエリンジアリルエーテル、ペンタエスリトールトリアリルエーテルなどが挙げられる。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
<(メタ)アクリレート樹脂>
本発明に用いる(メタ)アクリレート樹脂とは、(メタ)アクリレートモノマーを単独重合または共重合したものである。
上記(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。これら(メタ)アクリレートモノマーは、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリレート樹脂としては、重合物のコストや反応性の観点から、メチルメタクリレートの単独重合体及びメチルメタクリレートを主成分とする共重合体が好ましい。
【0023】
<ラジカル重合性不飽和単量体>
本発明で使用する(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体は、樹脂の粘度を下げ、硬度、強度、耐薬品性、耐水性などを向上させるために重要である。このラジカル重合性不飽和単量体は、臭気やその他環境などに与える影響を考慮し、常圧(1atm)で140℃以上、好ましくは、140℃〜200℃の沸点を有し且つ80℃以上、好ましくは80℃〜150℃の引火点を有するものが好ましい。具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性不飽和単量体は、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、低臭気性、乾燥性及び硬化物の物性の観点から、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
また、本発明で使用する(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体は、ポリマーとしたときに10℃以上の理論ガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。理論ガラス転移温度(Tg)が10℃未満であると、耐久性が低下する場合があるため好ましくない。ポリマーの理論ガラス転移温度Tgは、村上ら著、「トボルスキー高分子の構造と物性」、東京化学同人発行、p61に記載の下記式を用いて計算することができる。
Tg={(w1/Tg1)+(w2/Tg2)+・・・+(wn/Tgn)}-1
(式中、w1、w2、・・・、wnは、各ラジカル重合性不飽和単量体の質量分率であり、Tg1、Tg2、・・・、Tgnは、各ラジカル重合性不飽和単量体をポリマーとしたときのガラス転移温度である)
上記計算に用いるポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができ、例えば、三菱レイヨン株式会社のアクリルエステルカタログ(1997年度版)や北岡協三著、「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、p168〜p169などに記載されている。
【0025】
また、本発明では、ラジカル重合性不飽和単量体の一部として、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用してもよく、公知のものが使用できる。その具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど各種グリコール類の(メタ)アクリル酸エステルや下記一般式(III)で表されるものなどがある。
【0026】
【化2】

【0027】
上記一般式(III)で表される化合物は、例えば、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製 BPE−100)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製 BPE−200)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製 BPE−500)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製 A−BPE−4)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製 A−BPE−10)として市販されている。
【0028】
また、本発明では、ラジカル重合性不飽和単量体の一部として、本発明による低温硬化性樹脂組成物のCIAQ値が30を超えない範囲で、(A)成分のラジカル重合性樹脂を溶解させるために重合性モノマーを使用してもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、スチレンのα−,o−,m−p−アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、酢酸ビニル、フタル酸ジアリルなどが挙げられる。
【0029】
なお、CIAQ(Composite Index of Air Quality)値とは、新鮮な空気を1とした時、空気中の炭化水素系化合物などの濃度の変化をにおいの度合として数値化ものであり、臭気測定機や空気清浄器の性能表示などに採用されている。そして、本発明におけるCIQA値は、低温硬化性樹脂組成物300gをポリエチレン製の500ccカップに入れ、GASTECH CO.,LTD製臭いセンサーOT−300を用いて測定された数値である。
一般的なCIAQ値の目安は、表1のように示される。
【0030】
【表1】

【0031】
(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体は、(A)成分のラジカル重合性樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部〜500質量部、更に好ましくは40質量部〜400質量部、最も好ましくは80質量部〜400質量部の割合で配合される。ラジカル重合性不飽和単量体の配合割合が、20質量部未満であると、低温硬化性樹脂組成物の粘度が高くなって低温雰囲気下での作業性、骨材への濡れ性が悪くなる場合があるため好ましくなく、一方、500質量部を超えると、硬化物の硬度や耐水性が十分に得られない場合があるため好ましくない。
【0032】
<コバルト金属塩>
本発明で使用する(C)成分のコバルト金属塩は、硬化促進剤及び乾燥性付与剤として作用するものである。コバルト金属塩としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルトなどが挙げられ、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが好ましい。
(C)成分のコバルト金属塩は、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは1質量部〜20質量部、更に好ましくは2質量部〜10質量部の割合で配合される。コバルト金属塩の配合割合が、上記範囲外であると、硬化時間の長期化や硬化不良、乾燥性不良になる場合があるため好ましくない。
【0033】
<水酸基含有芳香族3級アミン>
本発明で使用する(D−1)成分の水酸基含有芳香族3級アミンは、下記一般式(I)で表される。
【0034】
【化3】

【0035】
(式中、R1は、H、CH3またはOCH3であり、R2は、ヒドロキシアルキル基であり、R3は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は好ましくは1〜10である)
上記水酸基含有芳香族3級アミンの具体例としては、例えば、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、N−ブチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N−ブチル−N−β−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N−メチル−N−β−ヒドロキシプロピルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシプロピル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジイソプロピロール−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−アニシジンなどが挙げられる。これらの水酸基含有芳香族3級アミンは、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。水酸基含有芳香族3級アミンとしては、低温硬化性の観点から、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが好ましい。
【0036】
<芳香族3級アミン>
本発明で使用する(D−2)成分である芳香族3級アミンは、下記一般式(II)で表される。
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、R4は、H、CH3またはOCH3であり、R5及びR6は、それぞれ独立してアルキル基であり、アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は好ましくは1〜10である)
上記芳香族3級アミンの具体例としては、例えば、ジメチルアニリン、ジメチルパラトルイジンなどが挙げられる。これらの芳香族3級アミンは、一種類のみを単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。芳香族3級アミンとしては、低温硬化性の観点から、ジメチルパラトルイジンが好ましい。
【0039】
(D−1)成分の水酸基含有芳香族3級アミン及び(D−2)成分の芳香族3級アミンは、その合計量が、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜20質量部、更に好ましくは1質量部〜10質量部の割合で配合される。水酸基含有芳香族3級アミンと芳香族3級アミンとの合計の配合割合が上記範囲外であると、硬化時間の長期化や硬化不良や乾燥性不良、貯蔵安定性不良になる場合があるため好ましくない。
【0040】
また、(D−1)成分の水酸基含有芳香族3級アミンと(D−2)成分の芳香族3級アミンとの質量比は、好ましくは20:1〜1:1であり、更に好ましくは15:1〜1:1である。水酸基含有芳香族3級アミンと芳香族3級アミンとの質量比が上記範囲外であると、硬化時間の長期化や硬化不良や乾燥性不良、貯蔵安定性不良になる場合があるため好ましくない。
【0041】
<有機過酸化物>
本発明で使用する(E)成分の有機過酸化物は、コバルト金属塩やアミン類と組み合わせた時に常温ラジカル重合開始剤として作用するものである。有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられる。また、その他の公知のラジカル重合開始剤を使用してもよい。その例としては、パーオキシケタール、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものであり、またアゾ化合物も有効である。具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドなどが挙げられる。この中でも、ベンゾイルパーオキサイドが好ましいが、必要に応じて数種類の有機過酸化物を併用すること可能である。また、有機過酸化物は、溶剤等で希釈された形態のものを用いることが好ましい。
【0042】
(E)成分の有機過酸化物は、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部、更に好ましくは2質量部〜8質量部の範囲で配合される。有機過酸化物の配合割合が少な過ぎると、硬化が十分に進まない場合があるため好ましくなく、一方、多過ぎると、経済的に不利な上、硬化物の物性低下が起こる場合があるため好ましくない。
【0043】
<任意成分>
本発明の低温硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、可視光ないし近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤、重合禁止剤、ワックス類、揺変剤、補強材、骨材等を添加してもよい。
【0044】
可視光ないし近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤としては、例えば、イルガキュア1800(チバ・スペシャリティーケミカルズ製)等が挙げられる。光重合開始剤は、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜15質量部、更に好ましくは0.05質量部〜10質量部の割合で配合される。光重合開始剤の配合割合がこの範囲以外であると、表面乾燥性や硬化物の物性が低下するため好ましくない。
【0045】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリーブチルカテコール、2,6−ジ−ターシャリーブチル・4−メチルフェノンなどが挙げられる。
【0046】
ワックス類は、乾燥性を向上させる目的で配合される。ワックス類としては、公知のものを制限なく使用することができ、例えば、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンなど)、植物系ワックス(キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋など)、動物系ワックス(蜜蝋、鯨蝋など)、鉱物系ワックス(モンタンワックスなど)、合成ワックス(ポリエチレンワックス、アミドワックスなど)等を使用できる。より具体的には、融点が20℃〜80℃程度のパラフィンワックスやBYK−S−750、BYK−S−740、BYK−LP−S6665(ビックケミー(株)製)などが挙げられ、異なる融点のものを組み合わせて使用してもよい。また乾燥性を向上する目的で添加したパラフィンワックスなどの効果を有効に引き出すため、特開2002−97233号公報に記載されているような乾燥性付与剤を併用してもよい。ワックス類の配合量は、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5.0質量部である。また、パラフィンワックスの溶解性や分散性を向上させるため、溶剤を使用することができる。使用する溶剤は公知のものを使用することができ、例えば、酢酸エチルなどのアルキルエーテルアセテート類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン、ドデカンなどの炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0047】
揺変剤は、揺変性を付与する目的で配合される。揺変剤としては、例えば、無機系ではシリカパウダー(アエロジルタイプ)、マイカパウダー、炭酸カルシウムパウダー、短繊維アスベストなどがあり、有機系では水素化ひまし油など公知のものが使用できる。好ましくは、シリカ系揺変剤である。また、特にアエロジルタイプにおいてはBYK R605(ビックケミー(株)製)などの揺変助剤などを併用して使用してもよい。
【0048】
補強材としては、カーボン、セラミックス、テンレススチールなどの短繊維などが挙げられる。
【0049】
本発明の低温硬化性樹脂組成物には、骨材を配合して樹脂モルタルとしてもよい。本発明で使用する骨材としては、硅砂、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。これらの中でもコストや材料入手の観点から硅砂が好ましい。硅砂の粒度としては、0.001mm〜5mm、好ましくは0.02mm〜2mmである。粒度がこの範囲外であると、樹脂モルタルの作業性や物性が低下するため好ましくない。骨材は、(A)成分のラジカル重合性樹脂と(B)成分のラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、好ましくは50質量部〜500質量部、更に好ましくは100質量部〜400質量部の割合で配合される。
【0050】
本発明による塗膜形成方法は、上述した低温硬化性樹脂組成物を、コンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、木材、金属等の下地の上に塗布して硬化させることを特徴とする。本発明の塗膜形成方法は、0℃の低温環境下でも12時間以内に耐衝撃性や耐久性に優れた塗膜を形成することができ、また作業中は低臭気であるため、冷凍倉庫のような低温保管施設の床の補修に好適である。
また、上述した低温硬化性樹脂組成物を繊維強化材に含浸して硬化させることで繊維強化樹脂を得ることもできる。繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、アミド繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<合成例1>
攪拌機、温度計及びガス導入管を備えた反応装置に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量189のエポキシ樹脂(旭化成工業株式会社製 アラルダイトAER2603) 189g(1.0当量)及び水添ダイマー酸(コグニスジャパン製 エンポール1008) 174.3g(0.6当量)を仕込み、空気を流しながら120℃で1時間反応させ、酸価が0mgKOH/gになったところで、更にメタクリル酸 34.4g(0.4当量)及びメチルハイドロキノン 0.25gを仕込み、空気を流しながら120℃で2時間反応させ、酸価が5mgKOH/gになったところで反応を終了した。反応生成物に、パラフィンワックス115°F 0.5g、ジシクロペンテニルメタクリレート(ローム・アンド・ハース株式会社製 QM−57T) 226g及び2−メトキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製 アクリエステルMT) 151gを加え、25℃での粘度が0.25Pa・sのビニルエステル樹脂組成物(VE−1)を得た。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(ジシクロペンテニルメタクリレート及び2−メトキシエチルメタクリレート)の理論ポリマーTgを計算したところ、16.3℃であった。
【0053】
<合成例2>
攪拌機、環流冷却器、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、ビスフェノールAにプロピレンオキシドを付加したポリエーテルジオール(株式会社ADEKA製 アデカポリオールBPX−55) 792g(1モル)及び無水フタル酸 296.2g(2モル)を仕込み、常法に従い210℃で酸価が40mgKOH/gになるまで反応させた後、冷却した。更にグリシジルメタクリレート 255.6g(1.8モル)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール 0.2g及びハイドロキノン 0.015gを仕込み、空気を吹き込みながら75℃で9時間反応させ、酸価が50mgKOH/gになったところで反応を終了した。反応生成物に、パラフィンワックス115°F 0.5g、アクリロイルモルホリン(株式会社興人製 ACMO)269g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ローム・アンド・ハース株式会社製 QM−57T) 537g及び2−メトキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製 アクリエステルMT) 537gを加え、25℃での粘度が0.3Pa・sのポリエステルメタクリレート樹脂組成物(UPM−1)を得た。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(ジシクロペンテニルメタクリレート及び2−メトキシエチルメタクリレート)の理論ポリマーTgを計算したところ、32.0℃であった。
【0054】
<合成例3>
攪拌機、還流冷却管、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、ジフェニルメタンジイソシアネート 750g(3モル)、分子量2,000のポリエーテルポリオール(三井武田ケミカル株式会社製 アクトコール21−56T) 4,000g(2モル)及びジブチル錫ジラウレート 0.1gを仕込み、60℃で4時間攪拌した。その後、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート 288g(2モル)を2時間かけて滴下しながら攪拌し、滴下終了後、5時間攪拌を続けた。反応生成物に、パラフィンワックス115°F 0.5g、アクリロイルモルホリン(株式会社興人製 ACMO) 1374g、ジシクロペンテニルメタクリレート(ローム・アンド・ハース株式会社製 QM−57T) 916g、2−メトキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製 アクリエステルMT)916g、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステルTHF)1374g加え、25℃での粘度が0.5Pa.sのウレタンメタクリレート樹脂(UA−1)を得た。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート及びテトラヒドロフルフリルメタクリレート)の理論ポリマーTgを計算したところ、63.9℃であった。
【0055】
<合成例4>
攪拌機、還流冷却管、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、ジフェニルメタンジイソシアネートを3モル:750g、アクトコールP−22(三井武田ケミカル株式会社製ポリエーテルポリオール 分子量1000)2モル:2000g、ジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み、60℃で4時間攪拌した。その後、パラフィンワックス115°F 0.5部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート2モル(288g)を2時間かけて滴下しながら攪拌し、滴下終了後5時間攪拌を続けた。アクリロイルモルホリン(株式会社興人製 ACMO) 1519g、ジシクロペンテニルメタクリレート(ローム・アンド・ハース株式会社製 QM−57T) 1519g及び2−メトキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製 アクリエステルMT) 1519gを加え、25℃での粘度が0.5Pa・sのウレタンメタクリレート樹脂組成物(UA−2)を得た。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルメタクリレート及び2−メトキシエチルメタクリレート)の理論ポリマーTgを計算したところ、46.0℃であった。
【0056】
<合成例5>
攪拌機、還流冷却管、ガス導入管及び温度計を備えた容器に、ジシクロペンテニルメタクリレート(ローム・アンド・ハース株式会社製 QM−57T) 50g、ジエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトエステル2EG) 20g、2−メトキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製 アクリエステルMT) 20g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製 ダイアナールBR−77) 10g及びパラフィンワックス115°F 0.5gを仕込み、70℃で5時間攪拌した後、冷却し、25℃での粘度が0.80Pa・sの(メタ)アクリレート樹脂組成物(AS−1)を得た。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(ジシクロペンテニルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート及び2−メトキシエチルメタクリレート)の理論ポリマーTgを計算したところ、20.1℃であった。
【0057】
<合成例6>
合成例1におけるジシクロペンテニルメタクリレート(QM−57T)及び2−メトキシエチルメタクリレート(アクリエステルMT)の代わりにスチレン 377gを加える以外は、合成例1と同様の操作を行い、25℃での粘度が0.10Pa・sのビニルエステル樹脂組成物(VE−2)を得た。
なお、ポリスチレンのTgは、100℃である。
【0058】
<合成例7>
合成例3におけるアクリロイルモルホリン(ACMO)、ジシクロペンテニルメタクリレート(QM−57T)、2−メトキシエチルメタクリレート(アクリエステルMT)及びテトラヒドロフルフリルメタクリレート(ライトエステルTHF)の代わりにメチルメタクリレート 4,580gを加える以外は、合成例3と同様の操作を行い、25℃での粘度が0.3Pa・sのウレタンメタクリレート樹脂組成物(UA−3)を得た。
なお、ポリメチルメタクリレートのTgは、105℃である。
【0059】
得られた合成例1〜7の樹脂組成物を下記項目について評価した。
【0060】
[−25℃硬化性]
合成例1〜7の樹脂組成物を−25℃雰囲気中に24時間放置した後、下記表2及び3に示した配合で実施例1〜5及び比較例1〜7の硬化性樹脂組成物を調製した(なお、比較例7は、特開2004−224819号公報に記載の樹脂組成物に相当する)。調製した硬化性樹脂組成物の低温(−25℃)における硬化性を下記方法に従って評価した。
レイタンス層の脆弱部を除去したコンクリート板を−25℃雰囲気中に24週間養生した後、このコンクリート板に、先に調製した硬化性樹脂組成物を同温度条件下で1kg/m2塗布し、硬化時間を測定した。硬化時間は指触で確認し、3時間未満の硬化を◎、3時間以上6時間未満の硬化を○、6時間以上12時間未満の硬化を△、12時間以上の硬化を×とした。結果を表2及び3に示した。
【0061】
[臭気]
−25℃硬化性の評価と同様に配合した硬化性樹脂組成物をポリエチレン製の500ccカップに300g入れ、CIAQ値を測定した。測定はGASTECH CO.,LTD製臭いセンサーOT−300を用い、−25℃雰囲気下で行った。結果を表2及び3に示した。
【0062】
[引張試験]
合成例1〜7の樹脂組成物を−25℃雰囲気中に24時間放置した後、下記表2及び3に示した配合で実施例1〜5及び比較例1〜7の硬化性樹脂組成物を調製した。調製した硬化性樹脂組成物の引張強度及び引張伸び率を下記方法に従って評価した。
厚さ3mmになるようにセットしたガラス板の間に、先に調製した硬化性樹脂組成物を−25℃雰囲気下で流し込み、同温度で1週間養生後脱型し、JIS K6911に準拠する引張り試験テストピースを作製して、23℃での引張強度及び引張伸び率の測定を行った。結果を表2及び3に示した。
【0063】
[プライマー適性]
−25℃硬化性で作製した試験体を同環境下で7日間養生させた後、23℃に戻し、試験体に切り込みを入れて建研式接着試験機による接着強度測定を行い、プライマー適性を評価した。母材破壊を○、プライマーの凝集破壊を△、プライマーとコンクリートとの界面剥離を×とした。結果を表2及び3に示した。
【0064】
[FRPライニング適性]
合成例1〜7の樹脂組成物を−25℃雰囲気中に24時間放置した後、下記表2及び3に示した配合で実施例1〜5及び比較例1〜7の硬化性樹脂組成物を調製した。調製した硬化性樹脂組成物のFRPライニング適性を下記方法に従って評価した。
FRPライニングは−25℃雰囲気中で行い、マイラーフィルムを貼り付けたガラス板上に、MC−450A(日東紡製チョップドストランドマット)を3プライライニングした。硬化時間は指触で確認し、3時間未満の硬化を◎、3時間以上6時間未満の硬化を○、6時間以上12時間未満の硬化を△、12時間以上の硬化を×とした。結果を表2及び3に示した。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
次に、合成例1〜7の樹脂組成物を用いて樹脂モルタルを調製し、曲げ強度について評価した。
[樹脂モルタル曲げ強度試験]
合成例1〜7の樹脂組成物を−25℃雰囲気中に24時間放置した後、下記表4及び5に示した配合で実施例6〜10及び比較例8〜13の樹脂モルタルを調製した。
金型内に、先に調製した樹脂モルタルを−25℃雰囲気中で打設し、同温度条件下で1週間養生した後、脱型し、23℃または−25℃に1時間放置した後、同温度条件下で樹脂モルタルの曲げ試験を実施した。試験はJIS A 1184に準じ、曲げ速度は0.5mm/minで行った。結果を表4及び5に示した。
【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
以上の結果から分かるように、実施例の硬化性樹脂組成物は、0℃以下の環境下でも短時間で硬化させることができ、また低臭気であり、引張強度や引張伸び率が高いことから耐衝撃性や耐久性に優れているといえる。また、実施例の樹脂モルタルは、低温のみならず常温の曲げ強度も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性樹脂と、
(B)ラジカル重合性不飽和単量体と、
(C)コバルト金属塩と、
(D−1)下記一般式(I)で表される水酸基含有芳香族3級アミンと、
【化1】

(式中、R1は、H、CH3またはOCH3であり、R2は、ヒドロキシアルキル基であり、R3は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)
(D−2)下記一般式(II)で表される芳香族3級アミンと、
【化2】

(式中、R4は、H、CH3またはOCH3であり、R5及びR6はそれぞれ独立してアルキル基である)
(E)有機過酸化物と
を含有することを特徴とする低温硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D−1)水酸基含有芳香族3級アミンと前記(D−2)芳香族3級アミンとの合計の配合量が、前記(A)ラジカル重合性樹脂と前記(B)ラジカル重合性不飽和単量体との合計100質量部に対して、0.5質量部〜20質量部であり、且つ前記(D−1)水酸基含有芳香族3級アミンと前記(D−2)芳香族3級アミンとの質量比が20:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の低温硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)ラジカル重合性不飽和単量体が、常圧で140℃以上の沸点と80℃以上の引火点とを有し、且つポリマーとしたときに10℃以上の理論ガラス転移温度を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の低温硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
コンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、木材及び金属からなる群から選択される少なくとも1つの下地の上に、請求項1〜3の何れか一項に記載の低温硬化性樹脂組成物を塗布して硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の低温硬化性樹脂組成物に骨材を配合したことを特徴とする樹脂モルタル。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載の低温硬化性樹脂組成物を繊維強化材に含浸させ硬化したことを特徴とする繊維強化樹脂。

【公開番号】特開2009−292890(P2009−292890A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145797(P2008−145797)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】