説明

低熱伝導率を持つ発泡性ビニル芳香族ポリマーの、懸濁液中での重合による製造方法

水性懸濁液中での重合により、発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズを製造する方法が提供され、該方法は、800℃を越える温度にて活性なパーオキサイド開始剤系、発泡剤の存在下で、かつ一般式:R1CONHCH2-CH2NHCOR2 (I)を持つアミド、30質量%を越える臭素含有率を持つ、ブロム化添加剤を含む難燃剤系の存在下で、水性懸濁液中で少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを重合する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱伝導率を持つ発泡性ビニル芳香族ポリマーの、懸濁液中での重合による製造方法に関するものである。
より詳しくは、本発明は、発泡性ビニル芳香族ポリマーの、懸濁液中での重合による製造方法およびこのようにして得られるビニル芳香族ポリマーを主成分とし、また低い密度および改善された絶縁能力を持つ発泡製品を与えることのできる、発泡性組成物に関するものである。
より一層詳しくは、本発明は、また5〜50g/Lなる範囲、好ましくは10〜25g/Lなる範囲の密度を有し、25〜50mW/mKなる範囲、好ましくは30〜45mW/mKなる範囲の熱伝導率によって表される、優れた断熱性を持つ、ビニル芳香族ポリマーの発泡製品にも係り、該発泡製品の熱伝導率は、一般的に、平均して、普通に市場に供されている従来の材料、例えばポリメリヨーロッパ(Polimeri Europa) S.p.A.のエクスティール(EXTIR) A-5000から得た同等な発泡製品の熱伝導率よりも10%以上も低い。これらの発泡製品は、太陽の輻射線に暴露することにより誘発される変形に対して安定である。
本明細書において述べられている全ての条件は、特に述べられていない場合には、好ましい条件であると考えるべきである。
【背景技術】
【0002】
発泡性ビニル芳香族ポリマーおよびその中でも特に発泡性ポリスチレン(EPS)は、公知の製品であって、従前より長い間に渡り、様々な応用領域において採用することのできる発泡製品を製造する目的で使用されており、該応用領域の中で最も重要なものの一つは、断熱材である。
これらの発泡製品は、先ず、閉じられた環境内で発泡性流体、例えばペンタンまたはヘキサン等の脂肪族炭化水素で含浸させたポリマービーズを膨潤させ、次いで金型内に収容された該膨潤粒子を、圧力および温度の同時的作用によって成形することによって得られる。該粒子の膨潤は、一般に蒸気または他のガスと共に、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも僅かに高い温度に維持することによって行われる。
【0003】
既に述べた如く、発泡ポリスチレンの特別な応用領域の一つは、建築工業における断熱材であり、該建築工業において、該断熱材は、一般に平坦なシートの形状で使用される。該平坦な発泡ポリスチレンシートは、通常約25-30g/Lなる範囲の密度にて使用されるが、その理由は、該ポリマーの熱伝導率がこの密度範囲内で最小値を持つからである。技術的に可能であったとしても、密度を上記範囲以下とすることは、有利なことではない。というのは、このことが、該シートの熱伝導率の劇的な増大を引起し、そのため該シートの厚みを増すことによりこれを補償する必要があるからである。
【0004】
この欠点を解消する目的で、公開されたUS特許出願:US2008/0300328等に記載されているように、少量(0.01-0.0001質量%なる範囲)の低分子量ポリエチレンワックスを、該重合処方物に添加することが示唆されている。該発泡ポリスチレンの熱伝導率は実際のところ低下され、例えば14g/Lなる密度において37.4mW/mKなる値に達しているが、同一密度において、基準のEPSは約39-40mW/mKなる範囲の熱伝導率を有している。この結果は、14g/Lなる密度となるように発泡された該EPS製品の大きなセル径(約230-240μm)のおかげで得られたものであるが、セル径は、最終-製品の機械的諸特性を損なうものである。実際に、10%変形時における圧縮応力は、標準的なEPSの75KPaから55KPaまで低下してしまう。
【0005】
不透熱性物質、例えばグラファイト、カーボンブラックまたはアルミニウム等を、該ポリマーに充填することも公知である。不透熱性物質は、実際のところ放射性熱流と相互作用することができ、その透過率を減じ、また該不透熱性物質が含まれる、該発泡材料の絶縁性を高める。このように、20g/Lよりも一層低い密度を有し、高い絶縁能力を有し、しかも厚みの増大により補償する必要のある絶縁性の低下を示すことのない、断熱性物品の製造が可能となる。
不透熱性物質、特にグラファイトおよび/またはカーボンブラックが充填された発泡ポリスチレン製の断熱性物品は、短期間であっても、太陽光照射に暴露した場合に、容易に変形するという欠点を持つ。というのは、該物品を構成する該発泡粒子が、圧潰する傾向を示すからである。
【発明の概要】
【0006】
本特許出願人は、今や上記諸欠点を示すことなしに、即ち、約120-130μmなる範囲の、最適のセル径を持つために、例えば密度17g/Lにおいて約34-36mW/mKなる範囲の熱伝導率を持ち、また密度14g/Lにおいて75KPaなる値、即ち殆ど基準のEPSの持つ値と等価な、10%変形時における圧縮応力を持つ物品(例えば、シート)を与えることのできる、難燃性発泡性ポリスチレンを製造し得ることを見出した。これらシートの熱伝導率は、不透熱性物質で変性したEPSの値と実質的に等価である。起り得る不利益は、該シートにおける厚みを穏やかに増大させることにより補償し得る。
【0007】
この結果は、当分野における熟練者には公知のように、一般的に、通常EPS樹脂を難燃性とするために使用される臭素を主成分とする難燃剤系が、生成されたビーズ中に、懸濁系の水を取込む傾向を持つという事実のために、極めて驚くべきことと考えることができる。公知のように、水は造核能力を有し、また小径のセルを含むセル含有構造を有する発泡物品、即ちシートの形成に寄与し、また結果として該物品は、低い断熱能力を持つ。本発明は、一方で、この傾向を覆す。その上、得られるこのシートは、変形を引起すことなしに、太陽の輻射線に対して暴露状態に維持することを可能とする。
【0008】
従って、本発明の目的の一つは、水性懸濁液中での重合によって、低い熱伝導率を持つ発泡物品の製造を可能とする、難燃性発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズを製造するための方法を提供することにあり、該方法は、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、例えばスチレンまたは25質量%までのα-メチルスチレンを含むスチレン混合物を、その重合の前、その重合中またはその重合の後に添加される、80℃を越える温度にて活性な、パーオキサイド開始剤系、発泡剤の存在下で、かつ以下の化合物:
・以下の一般式(I)で表されるアミド:
R1CONHCH2-CH2NHCOR2 (I)
ここで、R1およびR2は、同一または異なっていてもよく、(イソ)アルキル基:CH3(CH2)n(ここで、nは10〜20なる範囲、好ましくは16〜18なる範囲内にある)、C6-C12芳香族またはC7-C25アルキル芳香族基を表す、および
・30質量%よりも高い臭素含有率を持つブロム化添加剤を含む難燃剤系、
の存在下で重合する工程を含む。
【0009】
本発明によれば、該懸濁重合において、上記一般式(I)で表される該アミドは、上記モノマー基剤の質量基準で、5〜5,000ppmなる範囲、好ましくは10〜500ppmなる範囲の量にて添加される。好ましい生成物は、N,N'-エチレン-ビスステアラミドである。
凝塊物の生成を減じるための、該ビニル芳香族モノマーの重合系に対するアミドの添加は、例えば米国特許第3,339,097号により公知である。しかし、これらのポリマーは、臭素化された添加剤を含んでおらず、またその添加は、問題を引起す恐れがある。その理由は、該モノマーの添加が、その幾分か、即ち16〜95%のポリマーへの転化を伴って、行われることになるからであり、早期のその添加は、水によるエマルションの生成に導き、これに対して遅過ぎるその添加は、該アミドの所定の効果を損なうからである。
【0010】
小さなセルを得るために、難燃性添加剤を添加することなしに、同様にビニル芳香族モノマーの重合系にアミドを添加することも、米国特許第3,960,787号から公知である。
驚いたことに、他方において、難燃性ポリマーへのアミドの添加は、大きなセルを生成し、従って改善された絶縁能力をもたらすが、この効果は、公知技術の特許に記載されている効果とは全く逆である。
本発明の説明および特許請求の範囲において使用する用語「ビニルモノマー」とは、本質的に以下の一般式(II)で表される物質を意味する:
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは0または1〜5なる範囲内の整数であり、またYはハロゲン原子、例えば塩素原子または臭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を持つアルキル基またはアルコキシ基である。
上に規定した一般式を持つビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-クロロスチレン、ブロモ-スチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン等である。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンである。
【0013】
上記一般式(II)を持つビニル芳香族モノマーは、単独でまたは50質量%までの他の共重合性モノマーと該ビニル芳香族モノマーとの混合物として使用することができる。該共重合性モノマーの例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1-C4アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリル、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸等である。好ましい共重合性モノマーは、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートである。
該ビニル芳香族ポリマーマトリックス内に取込むことのできる任意の発泡剤を、本発明の目的とする上記方法において使用することができる。発泡剤の典型例は、脂肪族炭化水素、フレオン(Freon)、二酸化炭素、アルコール、例えばエチルアルコール等である。
【0014】
該発泡剤は、3〜6個の炭素原子を含む脂肪族または環式脂肪族炭化水素、例えばn-ペンタン、イソ-ペンタン、シクロペンタンまたはこれらの混合物;1〜3個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素のハロゲン化誘導体、例えばジクロロジフルオロメタン、1,2,2-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン;二酸化炭素;およびエチルアルコールから選択することができる。
該発泡剤は、上記モノマー基剤に対して、1〜10質量%なる範囲の量で、好ましくは上記重合段階において、あるいはその後に再-懸濁技術によって添加される。特に、後者の技術は、以下のような諸段階を含む:
・添加物、例えば難燃剤系の存在下で、水性懸濁液中で、該モノマーを重合する段階;
・このようにして得られたビーズを分離する段階;
・該ビーズを水に再懸濁し、かつ該ビーズが球形の形状となるまで加熱する段階;
・該懸濁液に上記発泡剤を添加し、かつ該ビーズが該発泡剤で含浸されるまで、これら2つを接触状態に保つ段階;および
・該ビーズを再度分離する段階。
【0015】
本発明の目的とするこの工程中に、該水性懸濁液に、公知の添加剤、例えば顔料、安定剤、造核剤、難燃剤系、帯電防止剤、離型剤等を添加することができる。特に、該モノマー基剤を基準として、0.1〜3質量%なる範囲の量、好ましくは0.4〜2.2質量%なる範囲の量の、少なくとも30質量%、好ましくは50〜90質量%なる範囲の臭素を含有する、自消性ブロム化添加剤、および該モノマー基剤を基準として、0〜1質量%なる範囲、好ましくは0.01〜0.4質量%なる範囲の量の、以下において説明されるような、少なくとも一つのC-CまたはC-O-O-Cなる熱的に不安定な結合を含む相乗性物質を含有する、難燃剤系を添加することができる。
【0016】
本発明にとって特に適した難燃剤は、例えばC6-C18の、ブロム化された脂肪族、環式脂肪族、芳香族化合物、例えばヘキサブロモシクロドデカン(EBCD)、ペンタブロモモノクロロシクロヘキサンおよびペンタブロモフェニルアリルエーテル、ビステトラブロモビスフェノール-Aアリルエーテル(これは、ケムツラ(Chemtura)社による「ケムツラ(Chemtura) BE51として」市場において公知である)等である。本発明において使用できる相乗性物質は、ジクミルパーオキサイド(DCP)、クメンヒドロパーオキサイド、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキシノナン等である。
【0017】
本説明および特許請求の範囲において使用する用語「ビーズ」とは、本質的に懸濁液中での製造方法によって得られる、上記ビニル芳香族ポリマーの形状を意味する。あるいはまた、この方法は、上記難燃剤系および/または他の添加剤の、前に定義した如き上記ビニル芳香族モノマーおよび該モノマー混合物の水性懸濁液中への溶解/分散;これに続く当分野における熟練者には公知の可能な重合添加剤の存在下での重合を含み、ここで該重合添加剤としては、特に該懸濁液の安定剤、連鎖移動剤、発泡補助薬剤、造核剤、可塑剤等を含む。このようにして得た「ビーズ」は、発泡前およびその後の両者において、実質的に球状の形態を持つ。
これらのビーズは、懸濁剤として、リン酸三カルシウムまたはピロリン酸マグネシウム等のリン酸の無機塩を使用した、水性懸濁液中での重合により製造される。これら塩は、既に微細に分割された状態で、あるいは例えば、ピロリン酸ナトリウムと硫酸マグネシウムとの反応によってその場で合成された状態で、該重合混合物に添加することができる。
【0018】
該無機塩については、米国特許第3,631,014号に記載されているように、アニオン性界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはそのプリカーサ、例えばナトリウムメタビスルフィットによって、該無機塩の懸濁作用を促進することができる。
該重合は、また有機懸濁剤、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の存在下で行うこともできる。
この懸濁液中での重合法において、該重合反応は、一般に開始剤系により誘発される。該開始剤系は、通常2種のパーオキサイドを含み、その第一のパーオキサイドは、85-95℃にて1時間なる半減期を持ち(例えば、ジベンゾイルパーオキサイド)またその第二のパーオキサイドは、110-120℃において1時間なる半減期を持つ(その例は、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートおよびt-ブチルパーベンゾエートである)。
【0019】
この重合の終了時点において得られるビニル芳香族ポリマーは、50,000〜300,000なる範囲、好ましくは70,000〜250,000なる範囲の平均分子量Mwを持つ。一般に、水性溶液中での発泡性ビニル芳香族系ポリマーを製造するための手順に関する、またはより一般的には懸濁重合に関する更なる詳細は、ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス、レビューインマクロモレキュラーケミストリー&フィジックス(Journal of Macromolecular Science, Review in Macromolecular Chemistry and Physics), C31 (263), 215-299 (1991)に見出すことができる。
【0020】
該懸濁液の安定性を改善するために、水に懸濁すべき該試薬混合物(ビニル芳香族モノマー基剤と可能な添加物)の粘度を高めることができ、これは、水にビニル芳香族ポリマーを、該モノマー基剤を基準として計算して、1〜30質量%なる範囲、好ましくは5〜20質量%なる範囲の濃度まで溶解することにより可能となる。この溶液は、先に述べた濃度に達するまで、予め製造したポリマー(例えば、新たなポリマーまたは前の重合および/または発泡操作由来の廃製品)を、該試薬混合物中に溶解するか、あるいは該モノマーまたはモノマー混合物を予備的に塊状重合し、引続き、可能ならば残りの添加物の存在下で、水性懸濁液中にて所定の重合を継続することによって得ることができる。
該重合の終了時点において、発泡性ポリマーの実質的に球形のビーズが得られ、該ビーズの平均径は、0.2〜2mmなる範囲、好ましくは1〜1.5mmなる範囲にある。
【0021】
次いで、これらのビーズを該重合反応器から取出し、かつ米国特許第5,041,465号に記載されているように、ノニオン性界面活性剤あるいはまた酸により、連続的またはバッチ式様式で洗浄する。次に、該ポリマービーズを、30〜60℃なる範囲の温度の加熱空気で、熱的に処理することができる。
該重合の終了時点において、得られた該発泡性ビーズは予備処理に付され、該予備処理は、一般的に公知の発泡性組成物に適用されるものであり、また本質的に以下の諸工程からなっている:
1. アミン、エトキシル化第三アルキルアミン、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドコポリマー等から選択される液状帯電防止剤による、該ビーズの被覆工程、ここで該薬剤は、以下に述べる被膜を接着するのに使用され、また懸濁液中で調製された該ビーズのスクリーニングを容易にする;
2. 該ビーズに被膜を適用する工程、ここでこの被膜は、グリセリン(または他のアルコール)と脂肪酸とのモノ-、ジ-およびトリ-エステルと金属ステアレート、例えば亜鉛および/またはマグネシウムステアレートとの混合物から本質的になる。
【0022】
本発明の更なる目的は、低密度発泡製品を提供することのできる、また改善された絶縁能力を持つ、ビニル芳香族物質を主成分とするビーズ製の、発泡性組成物を提供することにあり、該発泡性組成物は以下の成分を含み、先に記載した、水性懸濁液中での製法により得ることができる:
a. 50-100質量%なる範囲の量の1種またはそれ以上のビニル芳香族モノマー、例えばスチレンまたはこれと25質量%までの量のα-メチルスチレンとの混合物、および0-50質量%なる範囲の量の少なくとも1種の共重合性モノマーを重合することにより得られるマトリックス;
b. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算した量として、1-10質量%なる範囲の量の発泡剤;
c. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算した量として、0.1-3質量%なる範囲、好ましくは0.4-2.2質量%なる範囲の量の自消性ブロム化添加剤;
d. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算した量として、0-1質量%なる範囲、好ましくは0.01-0.4質量%なる範囲の量の、少なくとも一つの熱に対して不安定なC-O-O-CまたはC-C結合を含む、成分(c)に対する相乗剤;および
e. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算した量として、5-5,000ppm(質量基準)なる範囲、好ましくは10-500ppmなる範囲の量の、前記一般式(I)で表されるアミド。
【実施例】
【0023】
本発明およびその態様の、より一層良好な理解のために、幾つかの例示的かつ非-限定的な実施例を以下に与える。
実施例1:
150質量部の水、0.2質量部のピロリン酸ナトリウム、97質量部のスチレン、3質量部のα-メチルスチレン、0.30質量部のジベンゾイルパーオキサイド、0.25質量部のt-ブチルパーベンゾエート、0.70質量部のヘキサブロモシクロドデカン:アルベマール(Albemarle)社により市販されているサイテックス(Saytex) HP 900、0.2質量部のジクミルパーオキサイドおよび0.002質量部の、ソギス(Sogis)社により商品名ワキソ(Waxo)の下に市販されている、N,N'-エチレン-ビスステアラミドワックスからなる混合物を、閉じられかつ攪拌されている容器に投入する。
【0024】
90℃にて約2時間後に、4質量部の10%ポリビニルピロリドン溶液を添加する。この混合物を、依然として攪拌しつつ、更に2時間100℃にて加熱し、7質量部の、n-ヘキサンとi-ペンタンとの70/30混合物を添加し、得られたこの混合物を、更に120℃にて4時間加熱し、次いで1時間以内に65℃まで冷却し、該反応容器に、10℃の水流を、0.4MPa(4bar)なる圧力にて射出して、最終温度を30℃とする。
引続き、このようにして製造した発泡性ポリマーのビーズを回収し、0.05%のノニオン性界面活性剤、即ちハンツマン(Huntsman)社によりエンピラン(Empilan) 2638なる商品名の下で市販されている、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドと縮合させた脂肪アルコールからなる界面活性剤を含有する脱イオン水で洗浄する。得られた顆粒を、次に0.02%のノニオン性界面活性剤、即ちダウ(Dow)社により市販されている、グリセリン基剤にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを縮合させた製品[ボラノール(Voranol) CP4755]からなる界面活性剤を添加した加温空気流で乾燥させ、スクリーニングして、1〜1.5mmなる範囲の径を持つ画分を分離する。
【0025】
この画分は40%を占め、30%が0.5〜1mmなる範囲の粒径を持つ画分であり、15%が0.2〜0.5mmなる範囲の粒径を持つ画分であり、15%が1.5〜3mmなる範囲の粒径を持つ大粒子画分である。
次に、上記の1〜1.5mmなる範囲の径を持つ画分に、0.2%のグリセリルモノステアレートおよび0.1%のステアリン酸亜鉛を添加する。
得られた生成物を、二種の密度、即ち14および17g/Lなる密度を与えるように、100℃なる温度にて、蒸気で予備的に発泡させ、1日間に渡り熟成させ、次いでブロック(1040×1030×550mmなる寸法を持つ)の成型のために使用する。17g/Lなる密度を与えるように発泡させたビーズのセル径は、120-130μmなる範囲の値であった。
【0026】
次いで、該ブロックを裁断して、平坦なシートを調製し、該シートについて熱伝導率および10%変形時における圧縮応力を測定する。70℃のオーブン内で5日間滞留させた後に測定された熱伝導率は、密度14g/Lにおいて36.5mW/mKであり、また密度17g/Lにおいて34mW/mKであった。密度14g/Lにおいて測定された10%変形時における圧縮応力は、75KPaであった。規制基準DIN 4102に従う防火性テストを行うために、テストサンプルをシートから採取した。これらのテストサンプルは、このテストに合格した。
実施例2:
実施例1で使用したワキソワックスの量を0.01質量部に増やして、実施例1を繰返す。熱伝導率および防火性テストを含む他の全ての特性は、不変であった。
【0027】
比較例1:
実施例1で使用したワキソワックスを、0.002質量部のポリエチレンワックスに変えた以外は、実施例1を繰返した。該ポリエチレンワックスは、低分子量(<5,000g/モル)および113℃なる融点を持つものである。本比較例の生成物の熱伝導率は、その防火性テスト(合格)と同様に、実施例1のもの(密度14g/Lにおいて37mW/mK)に匹敵するものであることが明らかとなった。密度14g/Lにおいて測定された10%変形時における圧縮応力は、低い(60KPa)ことが明らかにされ、得られる発砲ビーズのセル径は、実際に220-230μmなる範囲にあった。
【0028】
比較例2:
ヘキサブロモシクロドデカンを添加することなしに、実施例1を繰返した。次いで、このようにして製造した発泡性ポリマービーズを回収し、実施例1におけると同様な処理に付した。その熱伝導率は、密度14g/Lにおいて41mW/mKであることが明らかとなった。密度14g/Lにおいて測定された10%変形時における圧縮応力は、80KPaであることが明らかとなり、該発泡ビーズのセル径は、90-100μmなる範囲の値であった。規制基準DIN 4102に従う防火性テストを行うためのテストサンプルは、シートから採取した。これらのテストサンプルは、このテストに合格しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低熱伝導性を持つ発泡製品を製造することのできる、難燃性で発泡性のビニル芳香族ポリマーのビーズを、水性懸濁重合により製造する方法であって、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、例えばスチレンまたは25質量%までのα-メチルスチレンを含むスチレン混合物を、該重合の前、該重合中または該重合の後に添加される、80℃を越える温度にて活性なパーオキサイド開始剤系、発泡剤の存在下で、かつ以下の化合物:
・以下の一般式(I)で表されるアミド:
R1CONHCH2-CH2NHCOR2 (I)
ここで、R1およびR2は、同一または異なっていてもよく、(イソ)アルキル基:CH3(CH2)n(ここで、nは10〜20なる範囲、好ましくは16〜18なる範囲内にある)、C6-C12芳香族またはC7-C25アルキル芳香族基を表す、および
・30質量%よりも高い臭素含有率を持つブロム化添加剤を含む難燃剤系、
の存在下で重合する工程を含むことを特徴とする、前記ビーズの製造方法。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される前記アミドが、前記モノマー基剤の質量に対して、5〜5,000ppmなる範囲の量で添加される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アミドがN,N'-エチレン-ビスステアラミドである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記発泡剤が、3〜6個の炭素原子を含む脂肪族または環式脂肪族炭化水素;1〜3個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素のハロゲン化誘導体;二酸化炭素;およびエチルアルコールからなる群から選択される、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発泡剤が、前記モノマー基剤の質量に対して、1〜10質量%なる範囲の量で使用される、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記難燃剤系が、30質量%よりも高い臭素含有率を持つ脂肪族、環式脂肪族、ブロム化芳香族化合物を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記難燃剤系が、0.1〜3質量%なる範囲の量で使用される、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記難燃剤系が、少なくとも1種のC-CまたはC-O-O-Cなる熱的に不安定な結合を含む相乗性の薬剤を含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記相乗性の薬剤が、0〜1質量%なる範囲の量で使用される、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
低密度および改善された絶縁能力を持つ発泡製品を与えることのできる、ビニル-芳香族化合物を主成分とするビーズの形状にある発泡性組成物であって、以下の成分:
a. 50-100質量%なる範囲の量の1種またはそれ以上のビニル芳香族モノマーおよび0-50質量%なる範囲の量の少なくとも1種の共重合性モノマーを重合することにより得られるマトリックス;
b. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算された量として、1-10質量%なる範囲の量の発泡剤;
c. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算された量として、0.1-3質量%なる範囲の量の自消性ブロム化添加剤;
d. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算された量として、0.1質量%なる量の、少なくとも1種のC-CまたはC-O-O-Cなる熱的に不安定な結合を含む、前記添加剤(c)に対する相乗性の薬剤;および
e. 該ポリマーマトリックス(a)に対して計算された量として、質量基準で5-5,000ppmなる範囲の量の、前記一般式(I)で表されるアミドを含み、
請求項1〜9の何れか1項に記載の水性懸濁液中で行われる方法によって得ることができるものであることを特徴とする、前記発泡性組成物。
【請求項11】
請求項10記載の組成を持つ、ビニル芳香族化合物を主成分とするビーズを、発泡させ、かつ焼結させることにより得られるものであることを特徴とする、発泡製品。

【公表番号】特表2013−503959(P2013−503959A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528461(P2012−528461)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001983
【国際公開番号】WO2011/027196
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(508128303)ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ (24)
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
【Fターム(参考)】