説明

低糖質あん類及びその製造方法

【課題】糖質の摂取を効果的に低減することができ、食味も良好なあん類及びその製造方法を提供する。
【解決手段】おからもしくは粉末おからに、小豆の煮汁もしくは濃縮液、乳化剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料、糖アルコールを加え、炊きあげを行わず、材料を先ず混合し、これを袋もしくは容器に密封し、高温殺菌機もしくは熱湯殺菌機を用いて80〜100℃で5〜30分加熱して品温を80〜110℃に加温して殺菌した後冷却する。更にカルシウムを添加することが食味の改善のために効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質の摂取を効果的に低減することができ、食味も良好なあん類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米、小麦などの糖質を主成分としたデンプン食品の摂取を極力抑えることで肥満や糖尿病や高脂血症などの生活習慣病を予防することが知られている。
糖質の含有量を抑制した食品として、ふすまを利用した糖質を実質含まないパン様食品素材およびこれを用いたパン様食品(特許文献1)が知られている。
一方、あんの原料としては、小豆、いんげん豆、そら豆、イエロビンズ等が用いられているが、原料入手が容易で価格も安くかつ安定している大豆を用いようとする研究が進んでおり、大豆の加工品であるおからを使用してあん類を作ること(特許文献2)が知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のパン様食品素材やパン様食品においては、食事としてのパン、軽食としてのドーナツ、マフィンなどの焼き菓子については実現できるが、肥満や糖尿病患者、糖尿病予備軍の健常者においては間食の欲求が多く、特許文献1によっては間食の欲求を満たし、且つ糖質の摂取を抑えるという目的を十分に実現できるものではない。
また、特許文献2においては、砂糖およびソルビトールを含有するものであり、糖質を制限する技術ではなく、また、その製法によって作り上げたあん類が苦味を有するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3977409号公報
【0005】
【特許文献2】特許第3414274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前述した問題点を鑑み提案するものであり、おからおよび粉末おからのうち少なくとも一種を主成分として、糖質の低減と、その苦味を解消し食味の良好なあん類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一般的なあん類の製造方法である炊きあげを行わず、材料を加熱せずに先ず混合し、しかる後加熱殺菌をすることを特徴とする。
【0008】
更に具体的には、本発明の低糖質あん類は、おからもしくは粉末おからに、小豆の煮汁もしくは濃縮液、乳化剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料、糖アルコールを加え、材料を先ず混合し、これを袋もしくは容器に密封し、高温殺菌機もしくは熱湯殺菌機を用いて80〜100℃で5〜30分加熱して品温を80〜110℃に加温して殺菌した後冷却することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の低糖質あん類においては一般的なあん類の製造方法である炊きあげを行わず、材料を先ず混合し、袋もしくは容器に密封して加熱することにより、苦味の発生を極力低減することが可能となったものである。
本発明の低糖質あん類は食感や風味に優れ、これを活用した食感や風味のよいパン、焼き菓子、和菓子、洋菓子が得られる。
基本的に糖質を含有しないため、糖質制限食としての栄養的特徴があり、間食用の食品において低糖質を実現でき、間食の欲求を満たしつつ、糖尿病を始めとした肥満、高脂血症などの生活習慣病を予防する食品に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において主要素材としておからもしくは粉末おからを使用することにより糖質の低減を効果的に、且つ安定的に安価に実現することができる。
【0011】
本発明においては、更に小豆の煮汁もしくは小豆の濃縮液を添加することにより小豆の風味を効果的に付与することができる。
本発明に用いる小豆の煮汁は、小豆を煮出した際に残った煮汁を80〜100℃で30〜60分加熱して水分を0〜90%としたものが好ましい。
【0012】
本発明に使用する乳化剤はシュガーエステル、グリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも1種とすることで、求めるあん類の性状を安定して実現するのに好適である。
【0013】
本発明に使用する高甘味度甘味料はスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチンのうち、少なくとも1種とすることで、求めるあん類に適した甘味を実現できる。
【0014】
本発明に使用する糖アルコールはエリスリトール、キシリトール、ソルビトールのうち、少なくとも1種とし、求めるあん類の甘味の実現と性状の安定に好適である。
【0015】
更には、本発明の低糖質あん類に乳又は卵のたんぱく質、もしくはそれらのたんぱく質加工品を少なくとも1種を添加すると、たんぱく質による劣化の抑制効果により、劣化による苦味の発生を抑え、良好な味を持続させることを期待できる。
【0016】
更には、本発明の低糖質あん類に乳、卵殻又は魚介に由来するカルシウムのうち少なくとも1種を添加すると、カルシウムのマスキング効果によりわずかに残存する苦味を改善し、旨味を向上させることができ、更にはカルシウムの摂取による効果を期待できる。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例および比較例をあげ、この発明の効果を具体的に説明する。
比較例1(常法による小豆あん)
小豆生あん500gと上白糖500gをレオニーダーに入れ、ゆっくり攪拌して均一にし、加熱をしながら、90℃で20分間攪拌した。さらに、ソルビトール50gを少しずつ加えて、90℃30分間攪拌し続けた。得られたあん類のブリックスは65度であった。
【0018】
比較例2
市販おから500gと上白糖500gをレオニーダーに入れ、ゆっくり攪拌して均一にし、小豆煮汁を6000g加え均一にし、加熱をしながら、90℃で30分間攪拌した。得られたあん類のブリックスは67度であった。
【0019】
比較例3
小豆煮汁6000gを鍋に入れ、加熱しながら攪拌し、100℃で30分間攪拌しながら煮詰め、小豆エキスを得た。市販おから500gと上白糖500gをミキサーに入れ、あらかじめ煮詰めておいた小豆エキスを加え、均一になるまで攪拌し、袋に入れて袋詰めし、100℃20分加熱殺菌した。
【0020】
比較例4
市販おから250gに食物繊維250gをレオニーダーに入れ、ゆっくり攪拌して均一にし、あらかじめ合わせておいたスクラロースとエリスリトールとの混合物50gとミルクカルシウム5g加え均一にした。さらに、小豆の煮汁を6000g加え、加熱しながら90℃30分間攪拌した。得られたあん類のブリックスは65度であった。
【0021】
実施例
小豆煮汁6000gを鍋に入れ、加熱しながら攪拌し、100℃で30分間攪拌しながら煮詰め、小豆エキスを得た。市販おから100gに食物繊維250gをミキサーに入れ、ゆっくり攪拌して均一にし、あらかじめ合わせておいたスクラロースとエリスリトールとの混合物50gとミルクカルシウム5g加え均一にした。そこに、上述の小豆エキスを加え、均一に混ぜ合わせ、袋に入れて袋詰めし、100℃20分加熱殺菌した。
【0022】
評価
比較例1〜4、及び実施例で製造したあん類を食感、色調、風味、苦味の各項目について評価を行った。
評価は、パネラー15名により食感、色調、風味、苦味の4項目を以下の4段階で評価し平均で判定した。評点基準は以下のとおりである。
非常に良い商品価値あり…4点
良い商品価値あり…3点
商品価値なし…2点
非常に悪い…1点
前記評点基準によるパネラーの平均値を表1にて数値で示した。
【0023】
【表1】

【0024】
以上の結果より、実施例による本発明品は、食感、風味、苦味において、比較例2〜4より優位にあることが分かった。
一般的なあん類に近く、目標とする苦味においては、はっきりとした優位性があることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おからもしくは粉末おからに、小豆の煮汁もしくはその濃縮液、乳化剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料、糖アルコールを加え、炊きあげを行わず、材料を先ず混合し、これを80〜100℃で5〜30分加熱して品温を80〜110℃に加熱殺菌した後冷却してなる砂糖を含有しない低糖質あん類。
【請求項2】
乳又は卵のたんぱく質もしくはそれらのたんぱく質加工品を添加してなる請求項1記載の低糖質あん類。
【請求項3】
乳又は卵殻、もしくは魚介に由来するカルシウムを添加してなる請求項1乃至2に記載の低糖質あん類。
【請求項4】
おからもしくは粉末おからに、小豆の煮汁もしくはその濃縮液、乳化剤、増粘多糖類、高甘味度甘味料、糖アルコールを加え、炊きあげを行わず、材料を先ず混合し、これを袋もしくは容器に密封し、高温殺菌機もしくは熱湯殺菌機により80〜100℃で5〜30分加熱して品温を80〜110℃に加熱殺菌した後冷却することを特徴とする砂糖を含有しない低糖質あん類の製造方法。

【公開番号】特開2011−182754(P2011−182754A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54043(P2010−54043)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390032023)リボン食品株式会社 (2)
【Fターム(参考)】