説明

低脂肪油中水型エマルジョン

本発明は、油または脂肪または1つ以上の油および脂肪の混合物と、水および水相中に存在するアミロマルターゼ処理済みデンプンとを含む油中水型エマルジョンに関する。この生成物は、ベーキングマーガリンとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、低脂肪油中水型エマルジョンの生産、およびベーカリー製品特にパフドペストリーを生産するためのその使用に関する。
【0002】
[背景技術]
クロワッサン、デニッシュおよびその他のタイプのパフドペストリーは、甘いものであれ風味あるものであれ、最もおいしく繊細なペストリー品目であるとみなされている。そのフワッとしたクリスピー感のあるテクスチャは、ドウ、脂肪および水の独特の組合せ、積層プロセスそして当然のことながら焼成プロセスから得られる。他に類をみないことから、所望の製品を作るために上述の品目に対する高い需要が存在する。脂肪構成成分として従来より選択されてきたのは、酪農バターである。一代替案として、硬化植物油から誘導された脂肪が開発されてきた。両方の脂肪タイプ共、大量の固体分すなわち大きな飽和脂肪酸分量を含有する。その上、パフドペストリー中には、所望のテクスチャを得るため大量の脂肪が使用されている。こうして、エンドユーザーすなわち消費者にとっての一連の問題が発生する。最終製品には高い脂肪分量と同時に高い飽和脂肪分量が含まれる。脂肪分の高い製品は、カロリー値が高く、これは肥満の進行に結びつく。飽和脂肪は、不飽和脂肪酸に比べて不健康であると考えられている。食べ物中の高レベルの飽和脂肪は、心臓血管の健康に関わる疾病に関連する。
【0003】
しかしながら、全脂肪の低減は、ベーキングマーガリン全般、そして特に積層用マーガリンにとって重要である稠度および可塑性の低下につながる。
【0004】
相対的飽和脂肪酸含有量(脂肪相のみの一部としての飽和脂肪酸の百分率)のさらなる低減は、不可避的に、稠度および可塑性のさらなる低下につながる。
【0005】
ペストリー用の低脂肪ショートニングについては、日本国特開2004−008147号公報中で以前に記述されている。この特許においては、脂肪の一部が、ワキシーデンプンをベースとする低DEマルトデキストリンと水とで作られたゲルによって置換されている。この手法にはいくつかの欠点が隠されている。第一に、低DEマルトデキストリンゲルの融点が低いことから、ペストリーの生産を低温で行なわれなくてはならない。第2の欠点は膨化(puffing)にある。低DEデキストリンゲルは低温で融解し、このため不均等な膨化が引き起こされるかもしれず、さらには嵩(rise)が減少する可能性がある。
【0006】
その上、この解決法により脂肪の量は低減されるものの必ずしも飽和脂肪酸レベルのさらに一層の低減を導くことができたわけではなかった。最終的に、これを正しく応用するためには、6〜60%という比較的高レベルのマルトデキストリンが必要とされる。
【0007】
[発明の概要]
本発明は、油または脂肪または1つ以上の油および脂肪の混合物と、水および水相中に存在するアミロマルターゼ処理済みデンプンとを含む、油中水型エマルジョンを開示している。
【0008】
さらに本発明は、油または脂肪または1つ以上の油および脂肪の混合物および、水および水相中に1〜12重量%、より好ましくは3〜10重量%で存在するアミロマルターゼ処理済みデンプンを含む油中水型エマルジョン中のアミロマルターゼ処理済みデンプンならびに油中水型エマルジョン中でのアミロマルターゼ処理済みデンプンの使用に関する。好ましくは、油中水型エマルジョンは15〜80重量%、より好ましくは20〜80重量%、さらに一層好ましくは35〜70重量%そして最も好ましくは40〜70重量%の間の脂肪含有量を有する。
【0009】
本発明の油中水型エマルジョンは、アミロマルターゼ処理済みデンプン無しで調製されたベーキングマーガリンよりも低い飽和脂肪酸(SAFA)含有量を有するマーガリンまたはスプレッド、好ましくはベーキングマーガリンを調製するために使用されると有利である。スプレッドはパンの上にまたはトッピングとして使用可能である。
【0010】
さらに本発明は、ペストリーまたはベークド製品、好ましくは回転式成形プロセスを通して調製されたパフペストリーまたはケーキまたはクッキーの調製における本発明の油中水型エマルジョンの使用を含むペストリーまたはベークド製品の調製のためのプロセスに関する。
【0011】
本発明に係るペストリーまたはベークド製品は、アミロマルターゼ処理済みデンプンを含まないショートニングを使用したペストリーまたはベーキング製品に比べて低減された脂肪含有量を含む。
【0012】
[発明の詳細な説明]
本明細書で用いられるパフドペストリー(puffed pastry)はパフペストリー(puff pastry)と同義語である。
【0013】
本特許の目的は、こうして現在市販されるショートニングに比べ合計組成内に含まれる飽和脂肪酸も同様に少ない油中水型エマルジョンを提供することにある。本特許の別の目的は、例えば市販の油中水型エマルジョンのようなアミロマルターゼ処理済みデンプンを含まない油中水型エマルジョンに比べて、本発明の油中水型エマルジョンの脂肪含有量さえも低減することにある。例えば、本発明の油中水型エマルジョンの飽和脂肪酸を、現在市場に出ているショートニング中で使用されているようなアミロマルターゼ処理済みデンプンを含まない油中水型エマルジョンの飽和脂肪酸含有量に比べて低減することもさらなる目的である。市販のベーキングマーガリン中の典型的な飽和脂肪酸レベルは、合計生成物に対して40〜60重量%の範囲内にある。今や、40重量%未満、さらには30重量%またさらには20重量%の飽和脂肪を有するベーキングマーガリンを得ることができる。
【0014】
本発明の油中水型エマルジョンを用いて調製された最終(ベーカリー)製品は、脂肪分の高い等価物と同じように繊細で美味である。
【0015】
油中水型エマルジョンの一例としては、半固体(20℃で)脂肪を含み食品調製物、特にベークド製品の中で使用され、(ショートブレッドのように)「さくさく感のある(short)」すなわち砕けやすいテクスチャを促進することからそう呼ばれている(含水)ショートニングがある。「ショートニング」という用語は、さらに広義で、ベーキングのために用いられ20℃で固体である油または脂肪、例えばバター、ラードまたはマーガリンを含むあらゆるエマルジョンに適用されるものとして使用することができるが、レシピ中に使用される際、好ましくは、室温で固体である硬化植物油を意味する。本明細書中においてショートニングは、含水ショートニングを意味する。この用語は、長年にわたり使用されてきているものの、現在ではショートニングが小麦ベースのドウ内において長いタンパク質(グルテン)ストランドの形成を阻害することによって作用するということがわかっている。ドウの構造および化学が完全に理解されたのが比較的最近のことであるため、複数の用語における類似性は全くの偶然である(http://en.wikipedia.org/wiki/Shorteningも参照されたい)。
【0016】
脂肪または油相とは別に、このショートニングは水相を含む。本発明では、ショートニングは水相を含む。したがって、ショートニングは油中水型エマルジョンである。
【0017】
ショートニングおよびマーガリンは、本明細書において互換的に用いられている。全ての場合において、それは、油相中に小さな液滴の形で分散された20〜80重量%の水を伴う油相連続生成物を表わすように意図されている。したがって、本発明の油中水型エマルジョンは20〜80重量%の水を含む。
【0018】
数多くのベーキングプロセスにおいて、可塑性および稠度に関して具体的な必要条件を有するマーガリンが使用される。これらには、ケーキおよびクリーミング用のマーガリン、クッキーおよびショートブレッド用の汎用マーガリンおよびパフペストリー向けの積層用マーガリンが含まれる。この順序で、生成物の典型的稠度は増加する。
【0019】
パフドペストリーは、積層化(lamination)として知られているプロセスにより製造される。ドウ(イーストを含むまたは含まない)は圧延され、脂肪と共に層状化(layerd)され、折畳まれ、再び圧延されさらに折畳まれ圧延等々される。こうして、焼成時点で所望のフワフワした最終製品を結果としてもたらす、ドウと脂肪の層の多様体が導かれる。周知の例としては、クロワッサン、デニッシュ、フィロ、リンゴのシュトルーデル、カスロールカバー(casserole covers)、ミートペストリー、フルーツパイなどがある。
【0020】
層状化されたドウを作るための数多くのプロセスが記述されてきた。これらには、伝統的なドウ調製およびそれに後続する引伸ばし(sheeting)および折り畳み、そして押伸ばし(extrusion)ならびに後続する折り畳みが含まれる。あるいは、フレーキーペストリープロセスが存在し、この場合ショートニングをより小さい細片に切断し、ドウの中に混合し、その後引伸ばしおよび折畳みが続く。このプロセスのあらゆる変形形態が本発明の一部を成すという点が指摘される。
【0021】
前述した通り、脂肪構成成分に対する高い需要が存在する。焼成時の融解特性、脂肪とドウが加工され得る温度、最終製品の味が、生産者にとって重要な項目に含まれる。
【0022】
パフペストリー用のマーガリンは、引伸ばし中に優れた可塑性を示し、かなりの稠度を有していなければならない。従来のベーキングマーガリンにおいて、この稠度は、加工中に使用される温度、一般的には室温(20℃)で高レベルの固体脂肪を含有する脂肪配合物を用いて、少なくとも80重量%の油/脂肪を含む生成物において得られる。或る一定の温度における固体脂肪含有量は、例えば、AOCS方法Cd16−81(99)によって記述されたブルッカー(Brucher)によるMinispec NMRベンチトップ分光光度計によって、時間−領域NMRによって測定される(www.aocs.orgを参照されたい)。比較的高レベルの固体脂肪を得るために、これらの生成物は、飽和脂肪酸と共に比較的高レベルのトリグリセリドを含有している。飽和脂肪酸(SAFA)含有量は、脂肪配合物の個々の構成成分の飽和脂肪酸レベルに基づいている。このレベルは通常、特定の脂肪または油の供給業者によって提供される。この飽和脂肪酸レベルは、AOCS方法Ce1−62(97)によって記述された脂肪酸メチルエステル(FAME)方法を用いて、GLCにより決定され得る(www.aocs.orgを参照されたい)。
【0023】
水相は、連続油相中に小滴の形で存在する。一般的ベーキングマーガリンの水相は親水コロイドを含まない。脂肪レベルの減少時点で、水相が、生成物に対して追加の稠度を加える必要がある。これは、親水コロイド例えばゼラチンまたはガムベースの親水コロイド例えばカラギーナン、アルギネートまたはペクチンを水相に加えることによって得ることができる。これらは稠度を増加させるものの、結果として得られたベークド製品のテクスチャは粗悪になり、ガム質で充分に膨らまないかまたは発酵しない可能性がある。同様に、ベークド製品の積層、フレーク状態および膨張は、これらの親水コロイドの使用により低下する。ケーキも同様にこのような親水コロイドにより極端に堅くガム質になり、したがってテクスチャは感覚的に許容できないものとなる。
【0024】
意外にも、アミロマルターゼ処理済みデンプンを含む低脂肪、低飽和脂肪酸ベーキング(またはベーカリー)マーガリンを製造すると、脂肪分の多い標準飽和脂肪酸含有量の等価物と同じ特性をもつベーキングマーガリンが生み出されることが今回発見された。
【0025】
本発明は、適切な硬化、または半硬化または無硬化油または脂肪配合物およびアミロマルターゼ処理済みデンプンを含む水相から調製される低脂肪ショートニングを提供する。したがって、本発明の油中水型エマルジョンは、油または脂肪または1つ以上の油または脂肪の混合物、および水を含む。
【0026】
その他の低脂肪ベーカリーマーガリン組成物とは対照的に、この組成物は、積層用マーガリンとして、積層プロセス中に薄いドウ層を分離するより優れた能力を有し、したがって、これらの層はベーキングプロセス中互いに粘着しない。こうして、別々のドウ層のグルテン層間のリンクの形成が阻害される。
【0027】
アミロマルターゼ処理済みデンプンの生産については、欧州特許第0932444 B1号明細書の中に記載されている。アミロース含有デンプンが、アルファ−1−4、アルファ−1−4グルコシルトランスフェラーゼ(アミロマルターゼまたはEC2.4.1.25)により鎖延長型アミロペクチンへと転換される。アミロマルターゼの典型的かつ適切な活性は、それらが2つのグルコース単位の間のアルファ−1−4結合を破断させてその後新規のアルファ−1−4結合を作ることができるということにある。最終的にアミロースはアミロペクチンに再度付着されて、所望の生成物を結果としてもたらす。したがって、アミロースから分割されたさらに小さな細片/オリゴ糖がアミロペクチン分岐の末端基に再度付着され、結果として所望の生成物すなわち延長型アミロペクチンをもたらす。欧州特許第0932441 B1号明細書に係るアミロマルターゼ処理済みデンプンは、環状グルカンのような環状構造を全くまたは本質的に全く有さず、むしろ非環状アミロペクチンを含む非環状構造を有する。本発明にしたがって使用されるアミロマルターゼ処理済みデンプンは、有利にも環状グルカンのような環状構造を全くまたは本質的に全く有さず、むしろ非環状(延長型)アミロペクチンを含む非環状構造を有する。米国特許第5686132号明細書では、D酵素によるデンプンの処理によって環状グルカンが生産される。ただし、酵素量が高く反応時間が長い場合にのみ、これらの環状グルカンが形成される。現在使用されているアミロマルターゼ処理済みデンプンは、米国特許第5686132号明細書中に記載された方法を用いて決定されるように、少なくとも99%、好ましくは100%の非環状構造部分を有する。
【0028】
生成物は、水中において低濃度で熱可逆性ゲルを形成する。本発明の目的は、低脂肪パフドペストリーを調製するために使用可能であるさまざまな性質のショートニングにおいて脂肪置換物として役立つための適切な特性を有するデンプンゲルを提供することにある。本発明は、以上で記述されているようにアミロマルターゼ処理済みデンプンを含むデンプン組成物を提供する。本発明に係る組成物としての使用に適したデンプンは、例えば、トウモロコシ、小麦粉、大麦、米、ライ小麦、米、キビ、タピオカ、クズウコン、バナナ、ジャガイモ、サツマイモデンプン、または高アミロースデンプン例えばアミロメイズ、しわエンドウ豆デンプン、緑豆デンプンから選択される。高アミロースデンプンは、高アミロースコーンまたはエンドウ豆などのような穀物デンプン由来の天然に発生する変異体から、またはアミロースを優先的に産出するように修飾されたジャガイモなどの遺伝子組換え植物変種から誘導されてよい。あるいは、アミロマルターゼ処理済みデンプンは、モチトウモロコシ、ワキシー大麦、ワキシー小麦、もち米、アミロペクチンジャガイモ、アミロペクチンタピオカ、アミロペクチンサツマイモまたはアミロペクチンバナナデンプンのようなアミロペクチン富有デンプンとアミロース含有デンプンの配合物から誘導され得る。アミロペクチンデンプンは、アミロペクチンを選択的に産出する植物、例えばワキシーシリアルまたはアミロースを含まないジャガイモ変異および/または遺伝子組換え植物変種例えばアミロペクチンを選択的に産出するように修飾されたジャガイモおよびタピオカから誘導されてよい。
【0029】
デンプンの化学的または物理的修飾が本発明に含まれるということが理解される。
【0030】
欧州特許第0932444号明細書には、アルファ1−4、アルファ1−4グルコシルトランスフェラーゼ(アミロマルターゼまたはEC2.4.1.25)の生産ならびにデンプンに対するアルファ1−4、アルファ1−4グルコシルトランスフェラーゼ(アミロマルターゼまたはEC2.4.1.25)の作用が記載されている。「アルファ1−4、アルファ1−4グルコシルトランスフェラーゼ」および「アミロマルターゼ」は、この本文中で互換的に使用されている。この酵素は、デンプンを分解しないが、アミロースをアミロペクチン上に再付着させる。結果として得られた生成物は、3%(w/w)超の水溶液でゲルを形成する。これらのゲルは、事実上粒子状物質であるものの、通常ゴムおよびその他の親水コロイドに関連するテクスチュアを有し、酸またはアミラーゼ分解されたまたは脱分岐生成物のゲルとは異なっている。アミロマルターゼ処理済みデンプンのゲルは、およそ60℃で熱可逆性を有する。「アミロマルターゼ処理済みデンプン」、「アミロマルトース転換デンプン」および「アミロマルトース修飾デンプン」は、この本文中で互換的に使用され、このデンプンがアミロマルターゼ活性によって修飾されていることを意味する。好ましくは、酵素的転換(または修飾または処理)には、転換が60〜75℃で行なわれる場合、粘度の低減手段が後続する可能性がある。所望の粘度低減が達成された後、転換を中断することができる(欧州特許第0932444号明細書を参照されたい)。
【0031】
アミロマルターゼ処理済みデンプンの生産例が欧州特許第0932444号明細書中に記載されている。アミロマルターゼ処理済みデンプンは、ジャガイモデンプンの水中懸濁液(19〜20%w/w)から調製可能である。この懸濁液は、デンプンを溶解させるために150〜160℃でジェット調理される。生成物は、70℃まで真空下で冷却される。フラッシュ冷却が、好ましい選択肢である。例えば6NのHSOを用いてpHが調整される。次に、アミロマルターゼ(2ATU/gのデンプン)が添加される。溶液は70℃で2〜20時間攪拌された。次に、溶液は短時間、例えば1〜20秒間、130℃でジェット調理され、例えばCompact型スプレードライヤ(Anhydro、Denmark)などを用いて噴霧乾燥される。
【0032】
低脂肪ショートニングは、適切な硬化、半硬化、または無硬化油または脂肪配合物および水相から調製される。油は、ヤシ、カノーラ、コーン、オリーブ、ヒマワリ、大豆、ベニバナなどに由来するものであり得る。脂肪は、乳化されて油中水型エマルジョンを形成する。あるいは、油相は、バターまたはバター画分から、または植物由来の脂肪および油ならびに動物由来の脂肪および油の混合により誘導され得る。当業者であれば、具体的なSAFAレベルおよび融解挙動を有する脂肪配合物の組成方法を知っている。水相は、水中のアミロマルターゼ処理済みデンプン溶液で構成されている。水中のアミロマルターゼ処理済みデンプンの濃度は1〜12%(w/w、水相に基づいて計算されたもの)の間、好ましくは3〜10%(w/w)の間にある。全組成物中の水相の量(水相中のその他の成分を含む)は、20〜80%の間、好ましくは30〜70%の間にある。水相のpH値は、1〜5の間、より好ましくは3〜5の間にある。比較的低いpH値は、乳酸またはクエン酸などの通常の食品用酸の使用によって、または緩衝液系によって得ることができる。
【0033】
本発明に関係する効果について次のような理論が提供される。しかしながら、本発明は、この理論の正確さに左右されるものではない。アミロマルターゼ処理済みデンプンは水相に対し多大な構造を追加するため、水滴は生成物の全体的な見かけの稠度に強く貢献すると考えられている。このようにして、それは、マーガリンまたはスプレッド中の高飽和度脂肪酸を含有するトリグリセリドで構成された脂肪結晶のテクスチュア化の役目を部分的に引き継ぐことができる。
【0034】
油中水型エマルジョンを調製するために、別々の油および水相が調製され、これらの相は配合され、合わせて油相連続プレミックスへと乳化される。その後、この温かいプレミックスは、一連のスクレープ表面熱交換器(高いせん断の下での冷却)およびピン攪拌機または攪拌型晶析装置を通して加工され、通常はプロセスの最後で静止管(resting tube)の中を通されてから包装される。あるいは、アミロマルターゼ処理済みデンプンは、水相が添加される前に油相中に分散され得る。次に、水相がプレミックス内に分散された後、類似のプロセスを使用してマーガリンを得ることができる。あるいは、水相連続プレミックスを得るように水相と油相を混合することによって、低脂肪スプレッドを得ることができる。その後、この温かいプレミックスは、一連のスクレープ表面熱交換器およびピン攪拌機または攪拌型晶析装置を通して加工され、このプロセスの間に生成物相は油中水型エマルジョンへと反転する。最後に生成物はタブ型容器または包装紙の中に包装される。
【0035】
油相は一般に、脂肪または油に加えて、脂溶性の構成成分例えば着色剤、ビタミン、乳化剤および/または結晶修飾剤を含んでいてよい。典型的な乳化剤は、モノおよびジグリセリド、レシチンおよび/またはリゾレシチンである。水相は、水溶性香味料およびビタミン、ならびにその他の水溶性および分散性材料例えばタンパク質、保存料および塩を含んでいてよい。水相は、さらに、その他のバイオポリマー例えばタンパク質、例えば乳タンパク質または植物性タンパク質またはゼラチン、未加工デンプン、物理的加工デンプンまたは酵素的加工デンプンまたは化学的加工デンプンまたはマルトデキストリン、または、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、カラギーナンまたはペクチンのような親水コロイド、またはそれらの混合物をも含んでいてよい。
【0036】
積層されたベークド製品の調製のためのプロセスは、水と小麦粉および少量の構成成分例えば脂肪(ショートニングまたはマーガリン)そして任意にはイースト、塩、砂糖、酵素などで構成されたドウのシート上に圧延すべきショートニングを適用することから成る。次に被覆されたシートは折り畳まれ、その後さらに数回被覆され折り畳まれる。このプロセスは、職人、特に伝統的なパン職人および工業的パン類販売製造業者には周知のものである。結果として得られた生成物は、直接焼成できるかまたは一般的にはまず寝かせておくことのできる多層ドウである。あるいは、それを冷却または冷凍してその後焼成するか、または半焼成して(たとえば制御された環境内または冷凍状態で)貯蔵して後で焼成することも可能である。
【0037】
ケーキの調製のためのプロセスは、例えば低脂肪低SAFAショートニングを卵、砂糖、小麦粉、発酵剤および少量の構成成分と組合せ、これをバッター生地の中に混合することから成っていてよい。ベーキングパンにこのバッター生地が満たされオーブン内で焼成される。
【0038】
以下の実施例が本発明を実証する。
【0039】
[実施例]
[概論]
1アミロマルターゼ単位(ATU)は、試験の検定条件下で毎分1μmolのグルコースを産出するアミロマルターゼの量として定義される。
【0040】
[検定]
アミロマルターゼがpH6.50、70℃でマルトリオースと共にインキュベートされ、基質からグルコースを放出する。塩酸を添加することによりインキュベーションを停止させる。放出されたグルコースの量は、アミロマルターゼ活性の尺度であり、340nmの波長でSelectra分析装置上でグルコース試験検定(NADH構成)を用いて検査される。
【0041】
[実施例1]
[低脂肪パフドペストリー製品の調製]
積層用マーガリン生成物を、ココナッツ、パームステアリン、パーム油および/またはヒマワリ油を含む油と脂肪の配合物から製造した。3つの生成物の組成は、表1に記されている。すなわち、80%前後の脂肪および標準SAFAレベルをもつ基準生成物1つと、(同様に合計脂肪組成との関係において)低減されたSAFAレベルを同じく有するもの1つを含めた、AMTデンプンを含有する60%前後の脂肪と水相を有する2つの被験生成物である。SAFAレベルは、具体的な油の公知の個別SAFAレベルから計算される。
【0042】
油および脂肪を70℃で配合し、部分飽和したモノグリセリド、ビタミンAおよびDのミックス、およびベータカロテンを添加した。塩、クエン酸、EDTAおよび実験生成物中では水中のアミロマルターゼ処理済みデンプンを別途組合せることによって、水相を製造した。油相をプレミックスタンクに運び、攪拌しながら水相をゆっくりと添加した。これを次に一連のスクレープ表面熱交換器およびピン攪拌機ならびに静止管を通して加工し、その後タブ型容器内に収集した。生成物を、さらに使用するまで18℃で貯蔵した。
【0043】
光散乱により、水滴サイズ(D[4.3])を測定した(German Institute for Food research、DIL、Quachenbrueck、Germanyにより実施された、非極性溶媒中での分散を通したMalvern Master SizerX、ISO13220−1方法)。
【0044】
生成物は、加工および貯蔵の後、優れた稠度および可塑性を示した。
【0045】
【表1】



【0046】
[焼成試験]
小麦粉1000グラム、マーガリン150グラム(基準または生成物1または2)、塩10グラムおよび水550グラムからドウを捏ね、捏ね上げの後15分間寝かせた。
【0047】
その後、ドウをラミネータによって1層に圧延し、マーガリン(室温)を1層に圧延し、ドウ層の上面に置いた。マーガリン層が等しい厚みのドウで完全に被覆されるような形でマーガリン層のまわりにドウを折り畳んだ。これをその後ラミネータの中で圧延して、厚みおよそ1cmの積層品にし、4℃で30分間寝かせた。その後、(およそ)300または144層のいずれかのドウが得られるように、それを折り畳み、引伸ばした。各々の折畳みおよび引伸ばしの間に、ドウを4℃で30分間寝かせた。
【0048】
この要領で、表1に言及した3つのマーガリン全てを、(およそ)300層および144層の両方の層の合計6個の積層ドウに変えた。マーガリンは、積層用と同様ドウ層内にも使用された。
【0049】
各々のドウから10×10cmの6個の正方形を切り取り、各正方形の中央からさらに小さい正方形を切り取った。これらの正方形を秤量し、200℃でオーブン(典型)内で20分間焼成した。焼成後に内部正方形を取り出した。
【0050】
冷却後、高さ、幅および重量を、各ドウから取り出した6個の正方形について測定した。高さ、幅収縮および重量損失の平均値が、下表2に記されている。
【0051】
【表2】



【0052】
積層ベークド製品を垂直に切断した。製品全体の写真を撮影し、画像解析のため断面をC−セルによりデジタル記録した。製品全体ならびに断面の均等性を肉眼で査定した。
【0053】
表2中の結果から、多数の層を有する製品の内部では、標準SAFA低脂肪マーガリンは、基準と同じ膨張および基準より低い収縮を提供するという結論を下すことができる。低SAFA低脂肪マーガリンは、さらに少ない収縮を提供し、わずかに膨張が少なく、およそ同量の水損失を有していた。
【0054】
層数が比較的少ない製品においては、実験的生成物は、基準に比べてわずかに大きく膨張した製品を提供した。収縮は、両方の実験的生成物について著しく少なかった。そしてここでも、第2の実験的生成物(低SAFA、低脂肪)の重量損失は、基準生成物に匹敵するものであった。実験的マーガリンで作られたベークド製品についてのセル(cell)数は、より多いものであった。
【0055】
結論:低脂肪マーガリンおよびアミロマルターゼ処理済みマーガリンで作られたパフペストリーは、一部のパラメータに関して基準と同じ位に優れ、他のいくつかのパラメータについては基準よりもさらに優れていた。SAFAが低減された低脂肪マーガリンは、或る面では標準SAFA低脂肪マーガリンと同様に優れ、その他の面ではさらに優れてさえいた。
【0056】
[実施例2]
[低脂肪回転型成形機製品の調製]
回転型成形機マーガリン生成物は、パームステアリン、パーム油、菜種油および/またはヒマワリ油または分別ナシ油を含む油および脂肪の配合物から作られた。2つの生成物、すなわち80%前後の脂肪および標準SAFAレベルを有する基準生成物、および60%前後の脂肪、(同じく合計脂肪組成との関係において)低減したSAFAレベルおよびAMTデンプンを含有する水相を有する被験生成物の組成が、表3に記されている。SAFAレベルは、具体的な油の公知の個別SAFAレベルから計算される。
【0057】
油および脂肪を70℃で配合し、部分飽和したモノグリセリド、ビタミンAおよびDのミックス、およびベータカロテンを添加した。塩、クエン酸、EDTAおよび実験生成物中では水中のアミロマルターゼ処理済みデンプンを別途組合せることによって、水相を製造した。油相をプレミックスタンクに運び、攪拌しながら水相をゆっくりと添加した。これを次に一連のスクレープ表面熱交換器およびピン攪拌機ならびに静止管を通して加工し、その後タブ型容器内に収集した。生成物を、さらに使用するまで18℃で貯蔵した。
【0058】
生成物は、処理および貯蔵の後、優れた稠度および可塑性を示した。
【0059】
【表3】



【0060】
[焼成試験]
マーガリン(基準または生成物1)295グラム、砂糖270グラム、かんきつ類香味料10グラム、塩1.5グラム、小麦粉450グラムおよびベーキングパウダー少々から、ドウを捏ねた。
【0061】
捏ね上げの後、ドウを30分間寝かせた。
【0062】
その後、ドウをスクレーパで細片に切断し、回転型成型機を通して導き、ドウの円形片に成型した。これらの生成物をベーキングシート上に置き、および20分の焼成時間で180℃にセットした中温オーブン内で、焼成した。
【0063】
冷却後、焼成物の高さ、幅および重さを測定した。
【0064】
【表4】



【0065】
構造、風味および脆性について、経験豊かなパン職人団による官能審査がベークド製品に対して行なわれた。製品全体ならびに断面の均等性は、肉眼で査定された。全てのパラメータは同じものと判断された。
【0066】
表4中の結果から、製品内で、標準脂肪/標準SAFAのマーガリンおよび低脂肪/低SAFAが同じ焼成結果を示すという結論を下すことができる。低SAFA、低脂肪のマーガリンは同じ収縮を示しさえした。結論:低脂肪および低SAFAの組成物から作られた最終ベークド製品は、加工パラメータを変更することなく基準組成と同じ最終結果を示した。
【0067】
[実施例3]
[低脂肪、低SAFAケーキ製品の調製]
ケーキマーガリン生成物を、ココナッツ、パームステアリン、パーム油、ヒマワリ油、菜種油、部分硬化パーム油、パーム核油およびパームオレインの配合物から製造した。2つの生成物、すなわち75%前後の脂肪および標準SAFAレベルを有する基準生成物、および60%よりわずかに低い脂肪、(同じく合計脂肪組成との関係において)低減したSAFAレベルおよびAMTデンプンを含有する水相を有する被験生成物の組成が、表5に記されている。SAFAレベルは、具体的な油の個々の公知のSAFAレベルから計算される。
【0068】
油および脂肪を70℃で配合し、部分飽和したモノグリセリド、ビタミンAおよびDのミックス、およびベータカロテンを添加した。塩、クエン酸、EDTAおよび実験生成物中では水中のアミロマルターゼ処理済みデンプンを別途組合せることによって、水相を製造した。油相をプレミックスタンクに運び、攪拌しながら水相をゆっくりと添加した。これを次に一連のスクレープ表面熱交換器およびピン攪拌機ならびに静止管を通して加工し、その後タブ型容器内に収集した。生成物を、さらに使用するまで18℃で貯蔵した。
【0069】
生成物は、処理および貯蔵の後、優れた稠度および可塑性を示した。
【0070】
【表5】



【0071】
[ケーキ焼成試験]
ケーキミックス1100グラム、卵500グラムおよびマーガリン500グラムから、バッター生地を作った(基準または生成物1)。
【0072】
0.92〜0.98グラム/lの密度に達するまで、ホバートミキサー内でおよそ2分間、バッター生地を泡立てた。
【0073】
その後、ベーキングトレイ内にバッター生地を注ぎ、オーブン内において170℃の温度で1時間焼成した。
【0074】
冷却後、ケーキの高さおよび水活性を測定した。
【0075】
【表6】



【0076】
構造および風味について、経験豊かなパン職人団による官能審査がベークド製品に対し行なわれた。製品全体ならびに断面の均等性は、肉眼で査定された。いずれかのマーガリン組成で製造されたケーキに明らかな差異は全く見られず、審査団により比較して好まれたのは被験生成物で作られたケーキの舌触りだけであった。
【0077】
表6中の結果から、製品内で、標準脂肪/標準SAFAの組成物および低脂肪/低SAFAの組成物が同じ焼成結果を示したという結論を下すことができる。低脂肪/低SAFAの組成物から作られたケーキは、より優れた舌触りさえ示した。
【0078】
結論:低脂肪および低SAFAの組成物から作られた最終ケーキ製品は、加工パラメータを変更することなく基準と同じ最終結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油または脂肪または1つ以上の油および脂肪の混合物と、水および水相中に存在するアミロマルターゼ処理済みデンプンとを含む、油中水型エマルジョン。
【請求項2】
合計生成物に対し40重量%未満、より好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸レベルを有する、請求項1に記載の油中水型エマルジョン。
【請求項3】
油または脂肪または1つ以上の油および脂肪の混合物、水および水相中に存在するアミロマルターゼ処理済みデンプンを含む油中水型エマルジョン中でのアミロマルターゼ処理済みデンプンの使用において、好ましくは1〜12重量%のアミロマルターゼ処理済みデンプン、より好ましくは3〜10重量%のアミロマルターゼ処理済みデンプンが水相中に存在している使用。
【請求項4】
前記油中水型エマルジョンが、15〜80重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜70重量%そして最も好ましくは40〜70重量%の間の脂肪含有量を有する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アミロマルターゼ処理済みデンプン無しで調製されたベーキングマーガリンよりも低い飽和脂肪酸(SAFA)含有量を有するマーガリン、好ましくはベーキングマーガリンを調製するための、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記マーガリンが、合計生成物に対し40重量%未満、より好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸レベルを有する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ペストリーまたはベークド製品、好ましくは回転式成形プロセスを通して調製されるパフペストリーまたはケーキまたはクッキーの調製における請求項1に記載の油中水型エマルジョンの使用を含むペストリーまたはベークド製品の調製プロセス。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスによって得られ、アミロマルターゼ処理済みデンプンを含まない油中水型エマルジョンが用いられるペストリーまたはベーキング製品に比べて低減された脂肪含有量を含む、ペストリーまたはベークド製品。

【公表番号】特表2011−516090(P2011−516090A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504441(P2011−504441)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054443
【国際公開番号】WO2009/101215
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】