説明

低融点の活性成分を含む溶融状の固体分散体、及びこれを含む経口投与用錠剤

本発明は、低融点の活性成分を含む溶融状の固体分散体及びこれを含む経口投与用錠剤に関する。融点が80℃以下の活性成分と、比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤とを含む本発明の溶融状の固体分散体は、キャッピングや付着などの現象を発生することなく、錠剤に容易に圧縮することができ、これを含む本発明の錠剤は、経口投与時、長期に亘って均一な放出速度を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点の活性成分を含み、かつ、錠剤に圧縮し易い溶融状の固体分散体、及びこれを含む経口投与用錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
低融点を有するイブプロフェン(ibuprofen)やデキシブプロフェン(dexibuprofen、S(+)-イブプロフェン)のような非ステロイド性抗炎症薬の成剤の時に、特に薬含量が高い場合、タブレット錠剤成型時に生じる熱によって、当該薬を容易に溶融して、キャッピング(capping)、及び付着(sticking)などの問題が発生する。このような問題を解決するためには比較的多量の賦形剤を使用しなければならないが、この場合、活性成分の有効血漿中濃度を得るために薬物の投与量を増やさなければならなくなるという問題がある。
【0003】
低融点の活性成分を錠剤に容易に圧縮するための多くの技術が報告されており、例えば、国際公開公報WO92/020334号、及びドイツ公開特許公報DE3,922,441号は、イブプロフェン又はデキシブプロフェンの塩を含む医薬組成物を製造する方法を開示しており、国際公開公報WO93/004676号は、イブプロフェン又はその塩、澱粉、界面活性剤、水、及び溶媒を含む懸濁液を用いてイブプロフェン凝集体からなる医薬組成物を製造する方法を開示している。
【0004】
また、国際公開公報WO95/001781号は、速放層と徐放層からなる2層錠剤を製造する技術を開示しているが、ここで、前記速放層は、イブプロフェン、とうもろこし澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチル澱粉、及びステアリン酸マグネシウムを含み、前記徐放層は、イブプロフェン、マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びコロイド状シリカを含む。
【0005】
しかし、上述した既存の方法を用いる場合にも、錠剤の圧縮成型工程で発生するキャッピング及び付着などの問題を完全に解決し得なかった。
【特許文献1】国際公開公報WO92/020334号
【特許文献2】ドイツ公開特許公報DE3,922,441号
【特許文献3】国際公開公報WO93/004676号
【特許文献4】国際公開公報WO95/001781号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、低融点の活性成分を含み、かつ、錠剤に圧縮し易い溶融状の固体分散体を提供することである。
本発明の他の目的は、前記溶融状の固体分散体を含み、長期に亘って均一な放出速度を維持することができる経口投与用錠剤を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記錠剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、融点が80℃以下の活性成分と、比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤を含む溶融状の固体分散体を提供する。
また、本発明は、前記溶融状の固体分散体を含む経口投与用の徐放性錠剤を提供する。
また、本発明は、前記溶融状の固体分散体を含む速放層と徐放層とからなる経口投与用の多層錠剤を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、
(a)融点が80℃以下の活性成分を加熱溶融させ、それに比表面積が20乃至400m2/gの薬学的に許容される吸着剤を加え、前記吸着剤に吸着されている均質な溶融状の固体分散体を製造するステップ;
(b)前記ステップ(a)で製造された溶融状の固体分散体を、冷却、乾燥、及び粉砕して顆粒を製造するステップ;及び
(c)前記ステップ(b)で製造された顆粒に放出制御剤、又は、薬学的に許容される賦形剤を加えて圧縮し、錠剤化するステップを含む経口投与用錠剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、キャッピングや付着などの現象が発生しないで、錠剤に容易に圧縮することができ、経口投与時、長期に亘って均一な活性成分の放出速度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の経口投与用錠剤は、活性成分を含有する溶融状の固体分散体及び放出制御剤を含む徐放性錠剤と、前記溶融状の固体分散体、及び薬学的に許容される賦形剤を含む速放性錠剤と、前記徐放性錠剤を構成する成分からなる徐放層及び前記速放性錠剤を構成する成分からなる速放層を含む経口投与用の多層錠剤とで構成される。
本発明の経口投与用錠剤の各構成成分を更に詳しく説明すると、以下の通りである。
【0011】
<溶融状の固体分散体>
本発明の溶融状の固体分散体は、融点が80℃以下の活性成分と比表面積が20乃至400m/gの1以上の薬学的に許容される吸着剤を含む。前記溶融状の固体分散体は、糖アルコール、水溶性高分子、油性基剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた錠剤化助剤をさらに含むことができる。この際、前記活性成分: 薬学的に許容される吸着剤:錠剤化助剤の含有比が、1:0.01〜3:1〜2の範囲になる量で用いられていることが望ましい。
【0012】
(1)活性成分
本発明の溶融状の固体分散体に用いられる活性成分は、80℃以下、望ましくは50乃至80℃の融点を有し、その例としては関節リウマチなどの治療に非常に有用な非ステロイド性抗炎症薬であるイブプロフェン(融点: 75〜77℃)、デキシブプロフェン(融点: 50〜54℃)、又は、これらの混合物などがある。
【0013】
(2)薬学的に許容される吸着剤
本発明の溶融状の固体分散体に用いられる薬学的に許容される吸着剤は、薬学分野で通常用いられるものならいずれも使用することができ、その例としては、硬質無水ケイ酸、ハイドロタルサイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸マグネシウムアルミニウム、ベントナイト、ラクトース、デキストリン、澱粉、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、微粉化した架橋ポリビニルピロリドン、又は、これらの混合物が挙げられる。
【0014】
特に、本発明では、錠剤への圧縮成型時に生じる熱による活性成分の溶融に起因するキャッピングや付着などを避けるため、比表面積が20乃至400m/g、望ましくは、100乃至300m/g、更に望ましくは、150乃至250m/gの薬学的に許容される吸着剤を用いることが好ましく、比表面積が前記範囲よりも小さい場合には、キャッピングや付着問題が依然として発生する。前記吸着剤は、活性成分:吸着剤の重量比が1:0.01〜3、望ましくは、1:0.1〜2になる量で用いられ、活性成分の加熱溶融後に添加される。
【0015】
(3)錠剤化助剤(糖アルコール、水溶性高分子、油性基剤、又は、これらの混合物)
本発明では、溶融状の固体分散体の製造後、粉砕過程で発生し得る分散体の融着を低減させることによって、顆粒の結合効率を高めるとともに、粉砕後の顆粒化を容易にするために、錠剤への圧縮前の溶融状の固体分散体が、糖アルコール、水溶性高分子、油性基剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた錠剤化助剤をさらに含むことが好ましい。この際、錠剤化助剤は、活性成分との錠剤化助剤の重量比が1:0〜2の範囲になる量で用いることが好ましい。
【0016】
本発明で使用可能な前記糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びこれらの混合物が挙げられる。前記水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられ、前記油性基剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、べヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
本発明による溶融状固体分散体は、従来の混合機、好ましくは汎用混合機又は加熱溶融押出器を用いて製造することができるが、このような汎用混合機又は過熱溶融押出器を用いる溶融状の固体分散体の製造方法は、次の通りである。
【0018】
(a)汎用混合機を用いた溶融状の固体分散体の製造
活性成分を、約60乃至100℃に予熱した汎用混合機に入れ、加熱溶融してから、均質になるように攪拌する。比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤を添加して、溶融した活性成分を吸着させ、均質な分散体になるように20乃至60分間攪拌する。この際、糖アルコール、水溶性高分子、及び油性基剤のような錠剤化助剤をさらに加え得る。その後、加熱を遮断し、常温で攪拌して得られた分散体の凝集体を集めて冷風乾燥することによって、活性成分を含有する溶融状の固体分散体を得る。得られた溶融状の固体分散体を、高速粉砕機で粉砕し、14メッシュ(1410μm)乃至20メッシュ(850μm)、望ましくは、20メッシュ(850μm)のふるいにかけて通過する顆粒を集める。
【0019】
b)加熱溶融押出器を用いた溶融状の固体分散体の製造
活性成分と、比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤とを均質に混合した後、この混合物をローディングホッパーに入れて熱スクリュー器内(hot compression screw chamber)で投入溶融させてから、押出した。得られた混合凝集機の混練機(kneader)で均質に混合してからスクリーンを通過させることによって均一サイズの溶融状の固体分散体を得る。
【0020】
この場合、活性成分の熱への露出時間が短く、均質なサイズ分布を示す溶融状の固体分散体粒を得ることができ、活性成分の投入、溶融、及びスクリーン段階を連続的な単一工程で行うことによって短時間で均質なサイズの溶融状の固体分散体を製造することができる。
【0021】
<溶融状の固体分散体を含む錠剤>
前記溶融状の固体分散体に、必要によって、適切な薬学的に許容される賦形剤を加えることによって徐放性錠剤、速放性錠剤、及び多層錠剤など、様々な形態の錠剤を製造することができ、この際、別途の冷却器を用いることなく、錠剤への圧縮成型を行う。圧縮された錠剤の硬度は、4乃至16kp、望ましくは、8乃至12kpであることが望ましい。
【0022】
(A)徐放性錠剤
本発明の徐放性錠剤は、前記溶融状の固体分散体及び放出制御剤を含み、薬学的に許容される賦形剤を更に含むことができ、溶融状の固体分散体: 放出制御剤: 薬学的に許容される賦形剤の含量比が、1:0.01〜3:0〜3、望ましくは、1:0.05〜2:0.01〜2の範囲になる量で用いられる。
【0023】
(A-1)放出制御剤
前記長期間一定の放出速度を維持するための放出制御剤は、分子量10,000乃至9,000,000のポリエチレンオキシド、分子量1,000乃至4,000,000のヒドロキシプロピルメチルセルロース、分子量2,000乃至2,000,000のヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、メチルセルロース及びその誘導体、及びポビドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれ、前期溶融状の固体分散体及び放出制御剤の重量比は、1:0.01〜3、望ましくは、1:0.05〜2の範囲になる量で用いられる。
【0024】
(A-2)薬学的に許容される賦形剤
本発明では、適切な錠剤の投与形態及び硬度維持のため、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。
本発明で用いられる賦形剤としては、薬学分野で通常用いられるものならいずれも使用でき、代表的な例としては、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、メタクリル酸カルシウム−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアルコール、ラクトース、微結晶セルロース及びセルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、シクロデキストリン及びデキストリン誘導体、アルファー化澱粉及びその誘導体、コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、又は、硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0025】
本発明で溶融状の固体分散体と薬学的に許容される賦形剤の重量比は、1:0〜3、望ましくは、1:0.01〜2の範囲になる量で用いられる。
【0026】
(B)速放性錠剤
本発明の速放性錠剤は、前記溶融状の固体分散体と、上述した薬学的に許容される賦形剤とを含み、溶融状の固体分散体と薬学的に許容される賦形剤の重量比は、1:0.05〜3、望ましくは、1:0.1〜2の範囲の量で用いられる。
【0027】
(C)多層錠剤
本発明による多層錠剤は、前記徐放性錠剤を構成する成分で徐放層を形成し、前記速放性錠剤を構成する成分で速放層を形成することによって、活性成分の放出を調節可能にする。
速放層と徐放層とからなる2層錠剤を製造する場合は、前記速放層を1次打錠した後、その上に前記徐放層を充填し、2次打錠を実施することにより、多層錠剤を製造することができる。この際、必ずしも、速放層の打錠後に徐放層の打錠が行われなければならない必要はなく、徐放層の打錠を先ず行い、それからその上に速放層の顆粒を充填して打錠することも可能である。また、速放層及び徐放層をそれぞれ順次又は逆順で充填して打錠することもできる。
また、本発明の多層錠剤は、速放層と徐放層とからなる3層錠剤の形態に製造することができる。
【0028】
本発明による同一な活性成分を含む速放層と徐放層とからなる多層錠剤は、溶出液として人工腸液(大韓薬典第8改正、崩解試験第2液、pH6.8)900mlを用い、1分当たり100回転(つまり100rpm)のパドル法(大韓薬典第8改正、溶出試験第2法)で溶出試験を行う際、速放層の活性成分は、溶出試験の開始後、1時間以内に85%以上放出され、徐放層の活性成分は、溶出試験の開始の1時間後に1乃至30%、5時間後に30乃至70%、12時間後に85%以上順次に放出されることが望ましい。
【0029】
また、徐放層の賦形剤の種類及び量を制御することによって、徐放層又は徐放性錠剤の活性成分の溶出持続時間を延長することができ、この際、前記と同様な方法で溶出試験を行うと、多層錠剤の速放層の活性成分は溶出試験の開始後、1時間以内に85%以上放出され、徐放層の活性成分は溶出試験の開始の1時間後に1乃至30%、6時間後に30乃至70%、12時間後に60乃至90%、24時間以後に85%以上放出されることが望ましい。
【0030】
このように迅速に放出された活性成分は、血漿での濃度が最小有効治療濃度に速やかに到逹することになり、一方、遅延放出された活性成分は、有効血漿濃度を所定時間の間持続的に維持することができる。従って、本発明による薬学的に有用な錠剤は、錠剤の押出成型時に発生するキャッピングや付着などの問題がないので、大量生産に有用である。
以下、本発明を下記の実施例に更に詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範囲がこれらに限定されることではない。
【0031】
<溶融状の固体分散体の製造>
実施例1
万能混合機(VERSATILE MIXER(250DM-rrs)、DALTON社製)を約60℃に予熱した後、デキシブプロフェン300gを投入して溶融させた後、均質に攪拌した。それに比表面積が200±25m/gの硬質無水ケイ酸60gを徐々に添加した後、約45分間攪拌して均質に分散されるようにした(表1参照)。均質な分散がなされてから、攪拌しながら常温に冷却させて固形デキシブプロフェン分散体の凝集体を製造した。得られた凝集体を冷風(30℃)で約2時間冷却させ、高速粉砕機で粉砕した後、20メッシュ(850μm)ふるいにかけて溶融状の固体分散体を製造した。
【0032】
実施例2
比表面積が200±25m/gの硬質無水ケイ酸110gを使用したことを除き、実施例1と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。
【0033】
実施例3
比表面積が300±25m/gの硬質無水ケイ酸110gを使用したことを除き、実施例1と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。
【0034】
実施例4
汎用混合機を約95℃に予熱した後、デキシブプロフェン300g、及びキシリトール50gを入れて溶融させたことを除き、実施例1と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。比表面積が200±25m/gの硬質無水ケイ酸60gを徐々に加えてから、約45分間攪拌して均質に分散させた。以後、実施例1と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。
【0035】
実施例5
実施例4のキシリトール50gの代わり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20gを使用したことを除き、実施例4と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。
【表1】

【0036】
<速放性錠剤の製造>
実施例6
表2の組成に従って、実施例3で得た溶融状の固体分散体205mg(デキシブプロフェン含量: 1錠当たり150mg)、及び薬学的に許容される賦形剤として、ラクトース10mg、微結晶セルロース49.7mg、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム3.8mg、及び硬質無水ケイ酸5.1mgを60分間1次混合し、滑沢剤としてタルク11.4mgを加えて、5分間混合した後、硬度約8乃至12kpに圧縮して長方形の速放性錠剤を製造した。
【0037】
実施例7乃至10
表2の組成による成分を使用したことを除き、実施例6と同様な方法で溶融状の固体分散体を製造した。
【表2】

【0038】
試験例1: 速放性錠剤の溶出試験
実施例6乃至10で製造された速放性錠剤を用いて、韓国食品医薬品安全庁(AFDA)、経口用医薬品の溶出規格設定ガイドラインの徐放性薬物の設定方法に基づく下記の条件で溶出試験を実施した。
<試験条件>
検体: 実施例6乃至10の速放性錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH6.8人工腸液、900ml、37±0.5℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法(パドル法)、50rpm
【表3】

【0039】
前記の表3及び図1に示したように、実施例6乃至10で製造された速放性錠剤はいずれも、溶出開始後の30分内に85%以上と早い溶出率を示すので、本発明の溶融状の固体分散体を活性成分として使用した速放性錠剤は、迅速な薬効を具現することができる。

実施例11: 徐放性錠剤の製造
表4の組成に従って溶融状の固体分散体及び放出制御剤を1次混合後、滑沢剤を加えて混合したことを除き、実施例6と同様な方法で徐放性錠剤を製造した。
【表4】

試験例2: 徐放性錠剤の溶出試験
実施例11で製造された徐放性錠剤を用いて、下記の条件で溶出試験を行い、その結果を、表5、及び図2に示した。
<試験条件>
検体: 実施例11の徐放性錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH6.8人工腸液、900ml、37±0.5 ℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法 (パドル法)、100rpm
表5
【表5】

【0040】
前記表5、及び図2に示したように、実施例11で製造された徐放性錠剤は、12時間に亘って、徐放性部分の活性成分が徐々に溶出された。
【0041】
実施例12及び13: 速放層及び徐放層とからなる2層錠剤の製造(1)
表6の組成に従って速放層の成分を混合して、硬度約2乃至3kpになるように1次打錠した後、その上に徐放層を充填して硬度約8乃至12kpになるように2次打錠を行うことによって、2層錠剤を製造した。
【表6】

【0042】
試験例3: 2層錠剤の溶出試験(1)
実施例12及び13で製造された2層錠剤を用いて、下記の条件で溶出試験を行い、その結果を下記の表7及び図2に示した。
<試験条件>
検体: 実施例12及び13の2層錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH6.8人工腸液、900ml、37±0.5 ℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法 (パドル法)、100rpm
表7
【表7】

【0043】
前記の表7及び図2に示したように、実施例12及び13で製造された2層錠剤共に、活性成分の量に関わらず、速放部の活性成分が全て溶出され、その後、12時間の間、徐放部の活性成分が徐々に溶出された。

試験例4: 2層錠剤のパドル回転数別の溶出試験(1)
実施例12の2層錠剤を用いて、下記の溶出条件で溶出試験を実施し、その結果を下記の表8、及び図3に示した。
<試験条件>
検体: 実施例12の2層錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH6.8人工腸液、900ml、37±0.5℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法 (パドル法)、 50、100及び150rpm
表8
【表8】

【0044】
前記の表8及び図3に示したように、回転数別の溶出試験の結果、回転速度に関わらず、初期1時間の間の早い溶出で迅速な薬効を発現することができ、以後、徐々に溶出が行われ、持続的な薬効を示すのに適合な安定した放出パターンを示した。
【0045】
実施例14乃至16: 2層錠剤の製造(2)
下記の表9の組成による徐放層成分を、硬度約2乃至3kpになるように1次打錠した後、その上に速放層の成分を充填して、硬度約8乃至12kpになるように2次打錠を行い、2層錠剤を製造した。
【表9】

【0046】
試験例5: 2層錠剤の溶出試験(2)
実施例14乃至16で製造された2層錠剤を用いて、下記の試験条件で溶出試験を行い、その結果を、下記の表10及び図4に示した。
<試験条件>
検体: 実施例14乃至16の2層錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH6.8 人工腸液、900ml、37±0.5℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法 (パドル法)、100rpm
表10
【表10】

【0047】
前記の表10及び図4に示したように、活性成分の重量に関わらず、1時間内に速放層の活性成分が全て溶出され、その後、12乃至24時間の間、徐放部の活性成分が持続的に溶出された。
【0048】
試験例6: 2層錠剤のパドル回転数別の溶出試験(2)
実施例16の2層錠剤を用いて、下記の溶出条件で溶出試験を実施し、その結果を下記の表11及び図5に示した。
<試験条件>
検体: 実施例16の2層錠剤
溶出試験液: 大韓薬典崩解試験第2液、pH 6.8人工腸液、900ml、37±0.5℃
溶出方法: 大韓薬典溶出試験第2法 (パドル法)、50、100及び150rpm
【0049】
表11
【表11】

【0050】
前記の表11及び図5に示したように、回転数別の溶出試験の結果、初期1時間の間の早い溶出で迅速な薬効を発現することができ、以後、徐々に溶出が行われ、持続的な薬効を示すのに適合な安定した放出パターンを示した。
【0051】
従って、以上の溶出結果から分かるように、速放部の活性成分は、1時間内に速かに溶出されて早く有効血漿濃度に到逹し、迅速な薬効を発現することができる。徐放性部分の活性成分は、12乃至24時間の間、徐々に溶出されるので、これにより、所望する時間の間、持続的な血漿中の薬物濃度を維持することができる。
【0052】
以上本発明を、特定の実施様態に関連して説明したが、添付の請求範囲により定義される本発明の範疇内で当該分野の熟練者は、本発明を多様に変形及び変化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例6乃至実施例10で製造された速放性錠剤の溶出試験結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例11で製造された徐放性錠剤、及び実施例12及び実施例13で製造された速放層と徐放層とからなる2層錠剤の溶出試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例12で製造された錠剤のパドル回転数による溶出試験結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例14乃至実施例16で製造された速放層と徐放層とからなる2層錠剤の溶出試験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例16で製造された錠剤のパドル回転数による溶出試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が80℃以下の活性成分と、比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤とを含むことを特徴とする溶融状の固体分散体。
【請求項2】
前記活性成分及び前記薬学的に許容される吸着剤が、1:0.01乃至1:3の重量比で含まれることを特徴とする請求項1に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項3】
前記融点が80℃以下の活性成分が、イブプロフェン(ibuprofen)、デキシブプロフェン(S(+)-ibuprofen)又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項4】
糖アルコール、水溶性高分子、油性基剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた錠剤化助剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項5】
前記活性成分及び前記錠剤化助剤が、1:0乃至1:2の重量比で含まれることを特徴とする請求項4に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項6】
前記薬学的に許容される吸着剤が、硬質無水ケイ酸、ハイドロタルサイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸マグネシウムアルミニウム、ベントナイト、ラクトース、デキストリン、澱粉、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、微粉化した架橋ポリビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項7】
前記糖アルコールが、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項8】
前記水溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項9】
前記油性基剤が、蔗糖脂肪酸エステル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の溶融状の固体分散体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の溶融状の固体分散体を含むことを特徴とする経口投与用錠剤。
【請求項11】
前記経口投与用錠剤が、前記溶融状の固体分散体と前記活性成分を徐々に放出させる放出制御剤とを含む徐放性錠剤であることを特徴とする請求項10に記載の経口投与用錠剤。
【請求項12】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の経口投与用錠剤。
【請求項13】
前記溶融状の固体分散体、前記放出制御剤、及び前記薬学的に許容される賦形剤が、1:0.01〜3:0〜3の重量比で含まれることを特徴とする請求項12に記載の経口投与用錠剤。
【請求項14】
前記経口投与用錠剤が、前記溶融状の固体分散体及び前記薬学的に許容される賦形剤を含む速放層と、前記溶融状の固体分散体及び前記放出制御剤を含む徐放層とからなる多層錠剤であることを特徴とする請求項10に記載の経口投与用錠剤。
【請求項15】
前記放出制御剤が、分子量10,000乃至9,000,000のポリエチレンオキシド、分子量1,000乃至4,000,000のヒドロキシプロピルメチルセルロース、分子量2,000乃至2,000,000のヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、メチルセルロース及びその誘導体、並びにポビドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれることを特徴とする請求項11又は14に記載の経口投与用錠剤。
【請求項16】
前記徐放層が、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の経口投与用錠剤。
【請求項17】
前記薬学的に許容される賦形剤が、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、メタクリル酸カルシウム−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアルコール、ラクトース、微結晶セルロース及びセルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、シクロデキストリン及びデキストリン誘導体、アルファー化澱粉及びその誘導体、コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、及び硬化ヒマシ油からなる群から選ばれることを特徴とする請求項12、請求項14、及び請求項16のいずれか一項に記載の経口投与用錠剤。
【請求項18】
前記速放層が、前記溶融状の固体分散体及び前記薬学的に許容される賦形剤を1: 0.05乃至1:3の重量比で含むことを特徴とする請求項14に記載の経口投与用錠剤。
【請求項19】
前記徐放層が、前記溶融状の固体分散体、前記放出制御剤、及び前記薬学的に許容される賦形剤を1:0.01〜3:0〜3の重量比で含むことを特徴とする請求項16に記載の経口投与用錠剤。
【請求項20】
(a)融点が80℃以下の活性成分を加熱溶融させ、それに比表面積が20乃至400m/gの薬学的に許容される吸着剤を加えて均質な溶融状の固体分散体を製造するステップ、
(b)前記ステップ(a)で製造された溶融状の固体分散体を冷却、乾燥、及び粉砕して顆粒を得るステップ、及び
(c)前記ステップ(b)で製造された顆粒に、放出制御剤、又は、薬学的に許容される賦形剤を加え、圧縮して錠剤化するステップとを含むことを特徴とする請求項10に記載の経口投与用錠剤を製造する方法。
【請求項21】
前記ステップ(a)で薬学的に許容される吸着剤を加える際、糖アルコール、水溶性高分子、油性基剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた錠剤化助剤をさらに加えることを特徴とする請求項20に記載の経口投与用錠剤の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−519326(P2009−519326A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545503(P2008−545503)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005526
【国際公開番号】WO2007/069874
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】