説明

低融点薬剤含有顆粒、およびこれを用いて製造した錠剤

【課題】低融点薬剤を含有した顆粒において、適度な径の錠剤を製造するのに適したゆるみ嵩密度を有し、且つ打錠時にスティッキングも生じ難いものを提供すること。
【解決手段】イブプロフェン等の低融点薬剤100重量部、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部、デキストリン等のデンプン類25〜80重量部、および結合剤1〜15重量部を含んでなる組成物により構成されてなり、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/mlである低融点薬剤含有顆粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点薬剤を含有する顆粒、特に、錠剤を製造する際に発生するトラブルが克服され、適度な径の錠剤が製造可能な低融点薬剤含有顆粒、および該顆粒を用いて製造した錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を経口投与する場合における剤形としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等の種々のものが知られている。このうち錠剤は、取り扱い性や服用がし易く汎用されている。
【0003】
一般に、錠剤の製造は、薬剤と賦形剤、さらには結合剤、崩壊剤等の任意成分とを配合した原料粉末組成物に、水及び/又は有機溶媒を加えて造粒し、得られた顆粒を臼と杵を備えた打錠機を用いて圧縮成形することにより行われる。すなわち、打錠機には、穴(臼)が空いた回転盤が備わっており、ここに上記顆粒を、ホッパーから定量的に供給し、該穴に充填された顆粒を、上下2組のスチール棒(上杵、下杵)で圧縮することにより錠剤が製造される。
【0004】
穴(臼)は、一定の直径で作られた円筒であるため、その中に充填される顆粒の重量は重要である。充填量は、顆粒のゆるみ嵩密度に左右され、この値が小さすぎると一定重量の錠剤を製造するのに、大変直径の大きな臼が必要になり、その結果錠剤の直径が大きくなり服用性が低下する。他方、逆に、顆粒のゆるみ嵩密度が大きすぎると、直径の小さな臼を使用することになり、錠剤径も小さくなり取り扱い性が低下する。
【0005】
いずれにしても、錠剤の直径は、6〜12mm程度が一般的に推奨され、そのためには顆粒のゆるみ嵩密度は0.25〜0.80g/mlになることが大切である。この他、顆粒には、臼に自然に流れ込むための流動性、圧縮性に優れることも求められる。
【0006】
また、薬剤として、特に、イブプロフェン等の低融点のものを含有させる場合には、打錠中に杵と臼の機械的摩擦により顆粒の融解が起き、融解物が杵に付着する現象(スティッキング)も生じ易くなり、顆粒には、このスティッキングが生じ難いことも求められる。
【0007】
このような特性を備えた錠剤を得るために、薬剤の種類に応じて、種々の賦形剤が組み合わされて使用されている。例えば、乳糖やマンニトール等の糖や糖アルコール;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類等が使用されている。また、上記賦形剤としては、軽質無水珪酸、リン酸カルシウム等の無機物質を使用することも知られており、この中には、薬剤の吸着性等の良さを期待して、珪酸カルシウム等の多孔性無機物質を使用することも試みられている(例えば、参考文献1及び2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−287561号公報
【特許文献2】特開平11−302157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、多孔性無機物質は、ゆるみ嵩密度が小さいため造粒が難く、また、造粒できたとしても、この顆粒を錠剤の製造に供すると、得られる錠剤の直径が大きくなりすぎていた。例えば、ゆるみ嵩密度が0.1g/mlである多孔性の珪酸カルシウムの場合、直径10mmで深さが12mmの臼に充填すると、約90mgの重量の錠剤しか得ることができないのが普通であり、400mgの重量の錠剤を得るには、上記臼の直径を15mm以上にしなければならず、その直径が大きくなりすぎていた。
【0010】
また、該多孔性の珪酸カルシウム以外の賦形剤を用いた場合には、低融点薬剤を含有させた際に、前記スティッキングを十分に抑制できないことがほとんどであった。
【0011】
このように、低融点薬剤を含有した顆粒において、適度な径の錠剤を製造するのに適したゆるみ嵩密度を有し、且つ打錠時にスティッキングも生じ難いものは知られておらず、このような顆粒を開発することが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を続けてきた。その結果、賦形剤として特定量の多孔性の珪酸カルシウム粉末を用い、且つこれにデンプン類と結合剤とをそれぞれ特定量で併用し造粒することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、低融点薬剤100重量部、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部、デンプン類25〜80重量部、および結合剤1〜15重量部を含んでなる組成物により構成されてなり、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/mlである低融点薬剤含有顆粒である。
【0014】
また、本発明は、上記低融点薬剤含有顆粒を圧縮成形してなる錠剤も提供する。
【0015】
さらに、本発明は、低融点薬剤100重量部を有機溶液に溶解させた溶液と、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部とを混合して低融点薬剤を該珪酸カルシウムに吸着、担持させた後、当該薬剤担持珪酸カルシウムと、デンプン類25〜80重量部、結合剤1〜15重量部とを混合し、次いで、得られた原料粉末組成物を造粒して、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/mlである低融点薬剤含有顆粒を製造することを特徴とする請求項1記載の低融点薬剤含有顆粒の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の顆粒は、賦形剤として、軽質(ゆるみ嵩密度が小さい)な多孔性の珪酸カルシウムを含有しているにも関わらず、特定量のデンプン類と結合剤とが配合されていることにより、適度なゆるみ嵩密度を有し、流動性、圧縮性にも優れ、錠剤製造に極めて適したものになっている。
【0017】
また、含有している薬剤が低融点であるにも関わらず、スティッキング等の打錠障害が生じ難い。
【0018】
したがって、本発明の顆粒を用いれば、服用し易い6〜12mmの直径を有し、且つ200〜450mg、好適には300〜450mgの適切な重量を有する、低融点薬剤を含有した錠剤を、表面性状が平滑な状態で長期間安定的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、低融点薬剤とは、融点が120℃以下であり、常温(20℃)で固体の薬剤をいう。スティッキング現象が激しく生じ、本発明の効果が顕著に発揮されることから、融点が100℃以下のものが好ましい。
【0020】
このような低融点薬剤を具体的に例示すると、エトスクミド、エピリゾール、カルモフール、グルテシイミド、グアイフェネシン、ケトプロフェン、コレカルシフェロール、ジスルフィラム、トリメタジオン、フルジアゼパム、塩酸マプロチリン、イブプロフェン、フルラゼパム、ペルフェナジン、ユビデカレノン、塩酸オクスプレノロール、酒石酸メトプロノール等が挙げられる。このうち、イブプロフェンは
薬剤の有効となる量が大きいこと、すなわち1錠中への投入量が多いことや、スティッキングを起こし易いことなどより最適である。
【0021】
本発明の顆粒では、賦形剤として、多孔性の珪酸カルシウムを使用する。こうした多孔性の珪酸カルシウムとしては、平均粒径が18〜32μmであり、見掛比重が7〜15g/lであり、吸油量が300〜600ml/100gであるものが好ましい。このような性状を有する珪酸カルシウム粉末は、次の化学式
2CaO・3SiO・mSiO・nH
(式中、1<m<2、2<n<3である。)
を有し、電子顕微鏡で観察して花弁状結晶構造を有するジャイロライト型珪酸カルシウム粉末が挙げられ、具体的には商品名「フローライト」(株式会社トクヤマ製)として市販されている。
【0022】
上記多孔性の珪酸カルシウムの配合量は、低融点薬剤100重量部に対して35〜100重量部、好ましくは50〜75重量部である。ここで、多孔性の珪酸カルシウムの配合量が、低融点薬剤100重量部に対して100重量部より多い場合、製造される顆粒がゆるみ嵩密度の小さいものになり、一定重量の錠剤を製造しようとすると錠剤の直径が大きくなりすぎる。他方、この多孔性の珪酸カルシウムの配合量が35重量部より少ない場合、製造される顆粒がゆるみ嵩密度の大きいものになり、錠剤の直径が小さくなって取り扱い性が低下し、さらに、打錠時のスティッキング防止効果も十分でなくなる。
【0023】
本発明において、上記低融点薬剤と多孔性の珪酸カルシウムとは、さらに、デンプン類と結合剤と混合されて造粒される。前記したとおり賦刑剤として該多孔性の珪酸カルシウムのみを用いても軽質であり、且つ造粒することは困難であるが、このようにデンプン類、結合剤と混合すると造粒可能になり、適切なゆるみ嵩密度、粒度分布を有する顆粒を得ることができる。このような原料粉末組成で製造することにより、得られる顆粒は、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/ml、より好ましくは0.35〜0.55g/mlになる。さらに、この顆粒を圧縮成型することにより、使用する患者にとって服用し易い適度な直径、一般には6〜10mmの直径であり、かつ適切な重量、一般には200〜450mg、より好適には300〜450mgの重量を有する錠剤を得ることが可能になる。
【0024】
なお、本発明においてゆるみ嵩密度とは、一般的に、被測定顆粒を、一定容積の容器中に空洞をつくることなく、また容器に振動等の外力を加えずに均一に投入してその時の重量を測定し、重量を容器容積で除した値を求めることによって測定した値をいう。こうしたゆるみ嵩密度は、定量カップを用いる方法により求められた。この方法は、疎充填状態でのみかけ嵩密度を測定するもので、一定容量の円柱状カップに、やや多めの試料粉体を注ぎ込み、へらですりきって重量を測定するものである。疎充填状態を作る方法としては、支持台に設置した漏斗から流し込む方法を用いればよい。
【0025】
使用するデンプン類は、公知のものが特に制限なく使用でき、例えばコムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、タピオカデンプンなどが使用でき、さらにこれらのデンプン類を酵素分解、酸分解、アルカリ分解またはこれらを組み合わせた分解処理により得られたデキストリン等が挙げられる。このうち造粒性の向上効果が最も顕著であることから、デキストリンを使用するのがより好ましい。
【0026】
デキストリンとしては、マルトデキストリン、アクロデキストリン、エリスロデキストリン、アミロデキストリンのいずれも使用できるが、好ましくはマルトデキストリンである。これらデキストリンの見掛け比重は、比較的軽質のものであっても造粒時には圧縮されるため、軽デキストリンと呼ばれるものまでをも含めた広い範囲から採択可能である。
【0027】
本発明において、デンプン類の配合量は、低融点薬剤100重量部に対して25〜80重量部、好ましくは30〜60重量部である。ここで、デンプン類の配合量が、低融点薬剤100重量部に対して80重量部より多い場合、製造される顆粒中に含まれる量が多くなり、相対的に珪酸カルシウム量が減り、製造も困難になると同時にスティッキング現象も抑制できなくなるため好ましくない。他方、このデンプン類の配合量が25重量部より少ない場合、造粒がうまくできなくなり、目標のゆるみ嵩密度をもった顆粒を得ることができない。
【0028】
結合剤としては、公知のものが特に制限なく使用でき、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。このうち少量で結合性に富むことからセルロース類が好ましく、特に、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0029】
本発明において、結合剤の配合量は、低融点薬剤100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部である。結合剤の配合量が、上記範囲にあることにより、良好な造粒を行うことができ、適切なゆるみ嵩密度、粒度分布を有する顆粒を得ることができる。
【0030】
その他、本発明の顆粒には、得られる顆粒のゆるみ嵩密度が前記規定する範囲内から外れない範囲で、他の賦形剤や、錠剤製造に使用されている任意添加剤、具体的には、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤等を配合しても良い。特に、崩壊剤として、架橋ポリビニルピロリドン(例えば商品名 KollidonCL、PolyplasdonXL)を用いるのが、水の吸収速度が大きいため好ましい。これら崩壊剤の配合量は、低融点薬剤100重量部に対して10〜100重量部、より好ましくは20〜80重量部であるのが好ましい。
【0031】
以上の組成からなる本発明の顆粒の製造方法は、特に制限されるものではなく、低融点薬剤100重量部、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部、デンプン類25〜80重量部、および結合剤1〜10重量部とを含む原料粉末組成物を得、これを造粒すれば良い。このとき、低融点薬剤の少なくとも一部は、多孔性の珪酸カルシウムに吸着、担持されていると推察されるが、この担持をより高め、低融点薬剤と多孔性珪酸カルシウムへ均一に分散させる観点から、これら両者は、先に、低融点薬剤を有機溶液に溶解させた溶液と、多孔性の珪酸カルシウムとを混合させ薬剤担持珪酸カルシウムとしてから用いるのがより好ましい。
【0032】
低融点薬剤を溶解させるのに使用する有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられ、このうちエタノールが好ましい。また、上記有機溶媒と共に少量の水を混合して用いても良い。
【0033】
低融点薬剤を溶解させた有機溶媒と、多孔性の珪酸カルシウム粉末との混合は、如何なる容器中で実施しても良いが、通常は、混合機や後述する造粒工程で使用する攪拌造粒機等を使用して、攪拌下で実施するのが好ましい。該低融点薬剤を溶解させた有機溶媒の使用量は、少なすぎると薬剤の均一な吸着が行われず、多すぎると湿潤化するので、低融点薬剤100重量部に対して50〜100重量部であるのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた薬剤担持珪酸カルシウム粉末において有機溶媒は、この段階で乾燥して除去しても良いが、造粒化後に行う乾燥工程で除去するのが効率的である。
【0035】
上記原料粉末組成物の造粒は、一定量の水及び/又は有機溶媒の存在下で行う。造粒方法は、噴霧造粒、攪拌造粒の何れでも可能であるが、好ましくは攪拌造粒が良い。攪拌造粒機は、具体的には様々な形態のものがあり、容器の上部からの回転アームによるもの、容器の底部にある回転翼によるもの、さらに、これに異方向の攪拌を加えるもの等がある。特に、商品名「バーチカルグラニュレーター」(株式会社パウレック製)が好適である。
【0036】
造粒に使用する水及び/又は有機溶媒の量は、原料粉末組成物の重量に対して0.75〜1.5倍量である。
【0037】
本発明において、このようにして得られた顆粒は、乾燥し、含有される水や有機溶媒が除去される。乾燥温度は、主に、含有される低融点薬剤の融点などを考慮して適宜選択することができるが、好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜75℃、さらに好ましくは30〜60℃である。乾燥した顆粒は整粒を行うのが好ましい。製造する顆粒の平均粒径は、特に制限されるものではないが、1.15mmの篩を備え付けた整粒機を用い整粒したときの50%平均粒径(粒度分布のなかで中央に存在する粒子の直径をいう)が100μm〜400μm、好ましくは125μm〜300μmであるのが、錠剤化のし易さ等から好ましい。
【0038】
本発明の顆粒を用いて錠剤を製造する場合は、通常は滑沢剤を加え圧縮成形すれば良い。使用する打錠機などは、公知のものが何ら制限なく使用できる。
【0039】
このように製造した錠剤には、フィルムコーティングまたは糖衣コーティングを施すコーティング工程を適宜に設けてもよい。
【0040】
なお、本発明の顆粒は、上記のように錠剤に成型するだけでなく、カプセルに充填してカプセル剤として使用しても有用である。この場合も、カプセルへの充填装置は公知のものが何ら制限なく使用可能である。
【0041】
実施例
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0042】
なお、本発明において、顆粒のゆるみ嵩密度の値は、以下の方法により測定した。
・ゆるみ嵩密度の測定
ゆるみ嵩密度は、定量カップを用いる方法により求められた。この方法は、疎充填状態でのみかけ嵩密度を測定するもので、一定容量の円柱状カップに、やや多めの試料粉体を注ぎ込み、へらですりきって重量を測定するものである。疎充填状態を作る方法として、支持台に設置した漏斗から流し込む方法が採用された。
【0043】
ゆるみ嵩密度(g/ml)=測定重量(g)/使用した容器容積(ml)
実施例1
商品名「バーチカルグラニュレーター」(株式会社パウレック製)に、平均粒径が20〜30μmであり、見掛比重が8〜12g/lであるジャイロライト型の多孔性珪酸カルシウム粉末(商品名「フローライトRE」 株式会社トクヤマ製)66重量部を投入した。次いで、イブプロフェン100重量部をエタノール70重量部に溶解させ、これを添加して23〜25℃下でブレード200rpm、クロススクリュー3000rpmの回転条件で5分間攪拌して、上記珪酸カルシウム粉末に吸着、担持させて薬剤担持珪酸カルシウム粉末とした。
【0044】
さらに、マルトデキストリン(見掛け比重525g/l)45重量部、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース5.5重量部、崩壊剤として架橋ポリビニルピロリドン(商品名「KollidonCL」)40重量部と水280重量部とを投入し、ブレード200rpm、クロススクリュー3000rpmの回転条件で20分間攪拌造粒した。その後、50℃で8時間、その後60℃で1時間乾燥した。乾燥後、得られた顆粒は、1.15mmの篩を備え付けた整粒機(コーミル:フロイント社製)を用い整粒したとき、50%平均粒径が225μmであり、ゆるみ嵩密度が0.43g/mlであった。
【0045】
この顆粒にステアリン酸マグネシウム1.5重量部を混合した後、直径10mm、深さ12.5mmの臼を有する打錠機により打錠圧600kgで直径10mmの錠剤を圧縮成形した。得られた錠剤の重量は400mgであった。打錠工程は、25rpmの打錠速度で6時間を連続的に製造したが、スティッキング現象等の打錠障害は全く観察されなかった。
【0046】
実施例2〜4,比較例1〜5
実施例1において、イブプロフェン100重量部に対して配合する多孔性の珪酸カルシウム、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を表1のようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして顆粒を製造し、さらにその顆粒を用いて錠剤を製造した。
【0047】
得られた顆粒のゆるみ嵩密度、およびこの顆粒を用いて製造した錠剤の重量および打錠時のスティッキング発生状態を表1にそれぞれ示した。
【0048】
【表1】

【0049】
比較例6
実施例1において、デキストリンに代えて結晶セルロースを45重量部を用いる以外は、実施例1と同様に実施して顆粒を製造した。得られた顆粒は、平均粒径が75μmであり、ゆるみ嵩密度が0.25g/mlであった。
【0050】
この顆粒を用いて実施例1と同様にして錠剤を臼直径10mm、深さ12.5mmで圧縮成形した。得られた錠剤の重量は280mgであり、目的の重量(実施例1の錠剤の重量400mgよりも著しく小さい重量)をもつ錠剤が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低融点薬剤100重量部、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部、デンプン類25〜80重量部、および結合剤1〜15重量部を含んでなる組成物により構成されてなり、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/mlである低融点薬剤含有顆粒。
【請求項2】
低融点薬剤がイブプロフェンである請求項1記載の低融点薬剤含有顆粒。
【請求項3】
低融点薬剤の少なくとも一部が、多孔性の珪酸カルシウムに吸着、担持されてなる請求項1または請求項2記載の低融点薬剤含有顆粒。
【請求項4】
デンプン類がデキストリンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の低融点薬剤含有顆粒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の低融点薬剤含有顆粒を圧縮成形してなる錠剤。
【請求項6】
低融点薬剤100重量部を有機溶液に溶解させた溶液と、多孔性の珪酸カルシウム35〜100重量部とを混合して低融点薬剤を該珪酸カルシウムに吸着、担持させた後、当該薬剤担持珪酸カルシウムと、デンプン類25〜80重量部、結合剤1〜15重量部とを混合し、次いで、得られた原料粉末組成物を造粒して、ゆるみ嵩密度が0.25〜0.80g/mlである低融点薬剤含有顆粒を製造することを特徴とする請求項1記載の低融点薬剤含有顆粒の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の製造方法に従って低融点薬剤含有顆粒を製造した後、得られた低融点薬剤含有顆粒を圧縮成形することを特徴とする請求項4記載の錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−131575(P2006−131575A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324234(P2004−324234)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(592173984)木村産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】