説明

低表面エネルギーポリイソシアネートおよび一成分または二成分コーティング組成物におけるそれらの使用

本発明は、i)3重量%未満のモノマージイソシアネート含量を有し、ii)ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて50当量%を超えるウレタン基含量を有し、およびiii)0.002〜50重量%の量のシロキサン基(SiO、MW44として計算)を含有し、上記パーセントは、ポリイソシアネート混合物の固形分に基づいており、およびシロキサン基は、a)少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物からのイソシアネート基と、b)炭素原子に直接結合した1個またはそれ以上のヒドロキシル基と1個またはそれ以上のシロキサン基とを含有する化合物とを反応させてウレタン基を形成させることにより組み込まれている、ポリイソシアネート混合物に関する。また、本発明は、一成分または二成分コーティング組成物におけるイソシアネート成分としての、必要に応じてブロックされた形態の、このポリイソシアネート混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン基とシロキサン基とを含有し、および所定のポリイソシアネート付加物を、ヒドロキシル基とシロキサン基とを含有する化合物と反応させることにより製造される低表面エネルギーポリイソシアネート、および一成分または二成分コーティング組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックされた形態またはブロックされていない形態のポリイソシアネート成分、およびイソシアネート反応性成分、通常高分子量ポリオールを含有するポリウレタンコーティング組成物はよく知られている。
【0003】
これらの組成物から製造されるコーティングは多くの価値ある特性を有するが、改善する必要がある1つの特性は表面品質である。例えばクレーターなどの表面欠陥を有するコーティングではなく、滑らかな表面を有するコーティングを得るためのコーティング組成物を処方することは困難であり得る。
【0004】
これらの困難性は、二成分コーティング組成物の高い表面張力に関連すると考えられている。高い表面張力によって引き起こされる別の問題は、コーティングの洗浄が困難であることである。それらの見込まれる適用分野にかかわらず、コーティングは、染み、落書きなどを被る可能性が高い。
【0005】
ポリイソシアネートの表面張力および得られるポリウレタンコーティングの表面エネルギーを低減させるために、アロファネート基を介してフッ素またはシロキサン基をポリイソシアネートに組み込むことは、米国特許5,541,281、同5,574,122、同5,576,411、同5,646,227、同5,691,439、および同5,747,629中に開示されている。これらの特許中に開示されているポリイソシアネートの不利な点は、それらが、過剰のモノマージイソシアネートをフッ素またはシロキサン基を含有する化合物と反応させることによって製造されることである。反応の終了後に、未反応のモノマージイソシアネートを、費用のかかる薄膜蒸留法によって除去しなければならない。
【0006】
同時係属米国出願第11/096,590号および同11/097,438号によれば、モノマージイソシアネートの代わりにポリイソシアネート付加物を使用することにより、アロファネート基およびシロキサン基またはフッ素を含有する低表面エネルギーポリイソシアネートを製造することによって、これらの困難性を克服することができる。同時係属出願および先に議論した特許の両方は、曇っている、またはゲル粒子を含有するポリイソシアネート混合物が得られるのを避けるために、およびこれらのポリイソシアネート混合物から外観が曇っているコーティングが得られるのを避けるために、ポリイソシアネート混合物がウレタン基よりも多くのアロファネート基を含有することが必要であることを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ウレタン基とシロキサン基とを含有し、透明溶液として得ることができ、および透明コーティングを製造するのに使用できる低表面エネルギーポリイソシアネートを提供することである。さらなる本発明の目的は、低減された表面張力を有することにより、低表面エネルギー、改善された表面、および改善された洗浄性を有し、および既知のポリウレタンコーティングの他の価値ある特性も有するコーティングの製造に適当であるポリイソシアネートを提供することである。本発明の最終の目的は、上記目的を達し、かつ、あまり複雑でないウレタン化方法により製造することができるポリイソシアネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、これらの目的は、以下に記載するウレタン基とシロキサン基とを含有し、およびポリイソシアネート付加物から製造される本発明のポリイソシアネート混合物によって達成することができる。
本発明は、
i)3重量%未満のモノマージイソシアネート含量を有し、
ii)ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて50当量%を超えるウレタン基含量を有し、および
iii)0.002〜50重量%の量のシロキサン基(SiO、MW44として計算)を含有し、
上記パーセントは、ポリイソシアネート混合物の固形分に基づいており、および
シロキサン基は、
a)少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物からのイソシアネート基と、
b)炭素原子に直接結合した1個またはそれ以上のヒドロキシル基と1個またはそれ以上のシロキサン基とを含有する化合物と
を反応させてウレタン基を形成させることにより組み込まれている、
ポリイソシアネート混合物に関する。
また、本発明は、一成分または二成分コーティング組成物におけるイソシアネート成分としての、必要に応じてブロックされた形態の、このポリイソシアネート混合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、ポリイソシアネート混合物は、少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物から製造される。これらのイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートは、独国特許DE-PS 2,616,416、欧州特許出願公開EP-OS 3,765、同EP-OS 10,589、同EP-OS 47,452、および米国特許4,288,586中に記載されるように製造することができる。イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物は、好ましくは3〜4.5、より好ましくは3〜4の平均NCO官能価、および5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%、最も好ましくは15〜25重量%のNCO含量を有する。
【0010】
ポリイソシアネート付加物を製造するための適当な脂環族基含有モノマージイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン、2,4'-ジシクロヘキシル-メタンジイソシアネート、1,3-および1,4-ビス-(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、ビス-(4-イソシアナト-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-および/または2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましくはイソホロンジイソシアネートである。
【0011】
本発明のポリイソシアネート混合物を製造するのに適当な、ヒドロキシル基とシロキサン基とを含有する適当な化合物は、炭素原子に直接結合した1個またはそれ以上(好ましくは1個または2個、より好ましくは1個)のヒドロキシル基、および1個またはそれ以上のシロキサン基、好ましくジメチルシロキサン基(-Si(CH3)2O-)の形態のシロキサン基を含有するものである。
【0012】
これらの化合物の例は、式:
HO-R1-X-[Si(R2)2O-]n-[Si(R2)2-X]m-R1-Y
〔式中、
R1は、必要に応じて不活性に置換された二価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン)またはポリオキシアルキレン基(例えばポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン基)を示し、
R2は、水素または必要に応じて不活性に置換された低級アルキル、フェニルまたはベンジル基、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルを示し、
Xは、R1基とSi原子との間の結合、例えば共有結合、-O-または-COO-を示し、
Yは、水素またはOHを示し、
mは、0または1であり、および
nは、1〜1,000、好ましくは2〜100、より好ましくは4〜15の整数である。〕
に対応するものである。
【0013】
不活性置換基は、シロキサン化合物とポリイソシアネートとの反応またはイソシアネート基のウレタン化反応に干渉しないものである。その例としては、フッ素のようなハロゲン原子が挙げられる。
【0014】
R1がオキシアルキレン基を示し、および1個のイソシアネート反応性基を含有する化合物の例は、式:
HO-(CHR3-CH2O-)o-(R4)m-[Si(R2)2O-]n-[Si(R2)2-X']m-R4-H
に対応する化合物であり、
R1がオキシアルキレン基を示し、および1個よりも多くのイソシアネート反応性基を含有する化合物の例は、式:
HO-(CHR3-CH2O-)o-(R4)m-[Si(R2)2O-]n-(CH2-CHR3-O-)p-CH2-CHR3-OH
に対応する化合物である。
上記式中、
R2、mおよびnは、上記と同義であり、
R3は、水素または1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素またはメチルを示し、
R4は、必要に応じて不活性に置換された二価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン)を示し、
X'は、R4基とSi原子との間の結合、例えば共有結合、-O-または-COO-を示し、
oは、1〜200、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜25の整数であり、
pは、0〜200、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜25の整数である。
【0015】
これらのシロキサン化合物は、適切なシロキサンを、所望のシロキサン含量を有する化合物を製造するのに十分な量のアルキレンオキシド(好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)と反応させることによって製造される。
【0016】
他の適当なシロキサン含有化合物は、直鎖状、分岐状または環状であり得、および50,000までの、好ましくは10,000までの、より好ましくは6,000までの、最も好ましくは2,000までの分子量(標準としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される数平均分子量)を有し得る。これらの化合物は、通常、5を超える、好ましくは25を超える、より好ましくは35を超えるOH価を有する。このタイプの化合物は、「Silicon Compounds」第5版(Huels America, Inc.より入手可能)中に開示されている。
【0017】
本発明のポリイソシアネート混合物を製造するために、シロキサン含有化合物とポリイソシアネート付加物との最小比は、ポリイソシアネート付加物1モル当たり、シロキサン含有化合物約0.01ミリモル、好ましくは約0.1ミリモル、より好ましくは約1ミリモルである。ポリイソシアネート付加物に対するシロキサン含有化合物の最大量は、ポリイソシアネート付加物1モル当たり、シロキサン含有化合物約500ミリモル、好ましくは約100ミリモル、より好ましくは約20ミリモルである。シロキサンの量は、得られるポリイソシアネート混合物が固形物に基づいて最小で0.002重量%、好ましくは0.02重量%、より好ましくは0.2重量%のシロキサン基(SiO、MW44として計算)、および固形物に基づいて最大で50重量%、好ましくは10重量%、より好ましくは7重量%、最も好ましくは3重量%のシロキサン基を含有するように選択される。
【0018】
ウレタン基を含有するポリイソシアネート混合物を製造するための適切な方法は既知である。ウレタン化反応は、既知のウレタン触媒(例えば有機金属塩または第三級アミン)の存在下、40〜140℃、好ましくは60〜90℃、より好ましくは70〜80℃の温度で行うことができる。反応は、反応温度を低下させることによって、触媒を除去することによって、例えば、真空を適用することによって、または触媒毒を添加することによって、終了させることができる。反応の終了後に、未反応モノマージイソシアネートを、例えば薄膜蒸発によって、除去する必要はない。なぜなら、低いモノマージイソシアネート含量を有するポリイソシアネート付加物を出発物質として使用するからである。
【0019】
ウレタン化反応は、イソシアネート基に不活性な溶媒の非存在下または存在下、好ましくは該溶媒の存在下、行うことができる。なぜなら、100%の固形物の出発物質は、固いか、または高粘性であるからである。本発明の生成物の適用分野に応じて、低沸点〜中沸点溶媒または高沸点溶媒を使用することができる。適当な溶媒としては、エステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル;ケトン、例えばアセトンまたはブタノン;芳香族化合物、例えばトルエンまたはキシレン;ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンおよびトリクロロエチレン;エーテル、例えばジイソプロピルエーテル;およびアルカン、例えばシクロヘキサン、石油エーテルまたはリグロインが挙げられる。
【0020】
本発明の方法は、例えば以下に記載するように、回分的または連続的に行うことができる。出発ポリイソシアネート付加物を、水分を排除しながら、および必要に応じて不活性ガスを用いて適当な撹拌槽または管に導入し、および必要に応じてイソシアネート基に不活性な溶媒(例えばトルエン、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテルまたはシクロヘキサン)と混合する。上記ヒドロキシル基とシロキサン基とを含有する化合物を、幾つかの実施態様にしたがって反応槽に導入する。それらは、ポリイソシアネート付加物と混合し、そして反応槽に導入することができる。また、それらは、ポリイソシアネート付加物を添加する前か、または添加した後に、好ましくは添加した後に、反応槽に別々に添加することができる。あるいは、触媒をこれらの化合物中に溶解させた後に、該溶液を反応槽に導入することができる。
【0021】
滴定、屈折率またはIR分析のような適切な方法でNCO含量を決定することによって、反応の進行を追跡する。したがって、所望のウレタン化度、好ましくは理論上のNCO含量にて、反応を終了させることができる。
【0022】
本発明にしたがって得られるポリイソシアネート混合物は、好ましくは約3〜6、より好ましくは3〜4の平均官能価;好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、最も好ましくは5〜20重量%のNCO含量;および3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満のモノマージイソシアネート含量を有する。ポリイソシアネート混合物は、好ましくは少なくとも0.0005重量%、より好ましくは少なくとも0.005重量%、最も好ましくは少なくとも0.3重量%のウレタン基含量(N、C、H、O2、MW59として計算)を有する。ウレタン基含量の上限は、好ましくは15重量%、好ましくは6重量%、最も好ましくは3重量%である。上記パーセントは、ポリイソシアネート混合物の固形分に基づいている。
【0023】
本発明の生成物は、ウレタン基とシロキサン基とを含有するポリイソシアネート混合物である。また、該生成物は、ウレタン化反応およびイソシアネート基消費の間に維持された温度に依存して、少量のアロファネート基を含有することができる。ウレタン基含量は、ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて、50%よりも大きく、より好ましくは70%よりも大きく、最も好ましくは90%よりも大きいことが好ましい。好ましくは、ポリイソシアネート混合物は、25℃で1カ月間(より好ましくは25℃で3カ月間)の保存において、安定かつ均質のままである。
【0024】
本発明の生成物は、少なくとも二つのイソシアネート反応性基を含有する化合物との反応によるポリイソシアネート重付加生成物の製造のための価値ある出発物質である。また、本発明の生成物は、湿気硬化してコーティングを形成し得る。好ましい生成物は、一成分または二成分コーティング組成物、より好ましくはポリウレタンコーティング組成物である。ポリイソシアネートがブロックされていない場合、二成分組成物が得られる。これに対して、ポリイソシアネートがブロックされている場合、一成分組成物が得られる。
【0025】
コーティング組成物に使用する前に、本発明のポリイソシアネート混合物は、既知の他のポリイソシアネート、例えば、ビウレット、イソシアヌレート、ウレタン、尿素、カルボジイミド、および/またはウレトジオン基を含有するポリイソシアネート付加物とブレンドすることができる。これらの他のポリイソシアネートとブレンドすべき本発明のポリイソシアネート混合物の量は、本発明のポリイソシアネート混合物のシロキサン含量、得られるコーティング組成物の意図された用途、およびこの用途に所望される低表面エネルギー性の程度に依存する。
【0026】
低表面エネルギー性を得るために、得られるポリイソシアネートブレンドは、固形分に基づいて最小で0.002重量%、好ましくは0.02重量%、より好ましくは0.2重量%のシロキサン基(MW44)、および固形分に基づいて最大で10重量%、好ましくは7重量%、より好ましくは3重量%のシロキサン基(MW44)を含有するべきである。また、10重量%よりも多いシロキサン基含量も低表面エネルギーコーティングを与えるのに適当であるが、より多い量を使用することによって、さらなる改善は得られない。本発明のポリイソシアネート混合物のシロキサン含量および得られるポリイソシアネートブレンドの所望のシロキサン含量を知ることによって、ポリイソシアネート混合物および他のポリイソシアネートの相対量を容易に決定することができる。
【0027】
本発明によれば、得られるブレンドが本発明のポリイソシアネート混合物に必要とされる最小のシロキサン含量を有するのであれば、本発明のポリイソシアネート混合物のいずれも、他のポリイソシアネートとブレンドすることができる。しかしながら、ブレンドされるポリイソシアネート混合物は、最小で好ましくは5重量%、より好ましくは10重量%のシロキサン含量、および最大で好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、最も好ましくは30重量%のシロキサン含量を有する。次いで、これらのいわゆる「濃縮物」を他のポリイソシアネートとブレンドしてポリイソシアネートブレンドを形成し、このブレンドを使用して低表面エネルギー性を有するコーティングを製造することができる。
【0028】
高いシロキサン含量を有する濃縮物を製造し、次いで、それらをシロキサン非含有ポリイソシアネートとブレンドすることによって、幾つかの利点が得られる。まず、1つの濃縮物を製造するだけで、多くの生成物を低表面エネルギーポリイソシアネートに変換することができる。市販のポリイソシアネートと濃縮物をブレンドすることによりそのような低表面エネルギーポリイソシアネートを形成することによって、シロキサン含有およびシロキサン非含有の両方の形態の各生成物を別々に製造する必要はない。最も高いシロキサン含量によって生じ得る不利な点の1つは、少量の出発ポリイソシアネート付加物のイソシアネート基のすべてが反応し得ることである。イソシアネート基を含有しないこれらの分子は、得られるコーティングに反応して入ることができないので、最終コーティングの特性に悪影響を与え得る。
【0029】
本発明の生成物の好ましい反応相手は、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリラクトン、ポリヒドロキシポリウレタン、ポリヒドロキシポリエポキシド、および必要に応じて低分子量の、ポリウレタンコーティング技術から既知の多価アルコールである。また、特にブロックされた形態のポリアミン、例えばポリケチミン、オキサゾリジンまたはポリアルジミンも、本発明の生成物の適当な反応相手である。また、適当であるものは、反応性希釈剤としても作用する第二級アミノ基含有ポリアスパラギン酸誘導体(アスパルテート)である。
【0030】
コーティング組成物を製造するために、ポリイソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分の量は、イソシアネート基(ブロックされた形態またはブロックされていない形態にかかわらず)とイソシアネート反応性基との当量比が約0.8〜3、好ましくは約0.9〜1.5となるように選択される。コーティング組成物は、周囲温度または高温で硬化することができる。
【0031】
硬化を促進するために、コーティング組成物は、既知のポリウレタン触媒、例えば、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルアミノシクロヘキサン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタンおよびN,N'-ジメチルピペラジン、または金属塩、例えば塩化鉄(III)、塩化亜鉛、亜鉛2-エチルカプロエート、錫(II)エチルカプロエート、ジブチル錫(IV)ジラウレートおよびモリブデングリコレートを含有し得る。
【0032】
また、本発明の生成物は、一成分湿気硬化性コーティング組成物または一成分コーティング組成物、好ましくはポリウレタンコーティング組成物の価値ある出発物質である。ここで、イソシアネート基は、既知のブロッキング剤によってブロックされた形態で使用される。ブロッキング反応は、既知の方法を使用して、好ましくは高温(例えば約40〜160℃)にて、および必要に応じて適当な触媒(例えば、上記第三級アミンまたは金属塩)の存在下、イソシアネート基を適当なブロッキング剤と反応させることによって行う。
【0033】
適当なブロッキング剤としては、モノフェノール、例えばフェノール、クレゾール、トリメチルフェノールおよびtert-ブチルフェノール;第三級アルコール、例えばtert-ブタノール、tert-アミルアルコールおよびジメチルフェニルカルビノール;エノールを容易に形成する化合物、例えばアセト酢酸エステル、アセチルアセトンおよびマロン酸誘導体(例えばマロン酸ジエチルエステル);第二級芳香族アミン、例えばN-メチルアニリン、N-メチルトルイジン、N-フェニルトルイジンおよびN-フェニルキシリジン;イミド、例えばスクシンイミド;ラクタム、例えばε-カプロラクタムおよびδ-バレロラクタム;ピラゾール、例えば3,5-ジメチルピラゾール;オキシム、例えばブタノンオキシム、メチルアミルケトオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム;メルカプタン、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、2-メルカプトベンズチアゾール、α-ナフチルメルカプタンおよびドデシルメルカプタン;およびトリアゾール、例えば1H-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
【0034】
また、本発明のポリイソシアネート混合物は、二成分水性コーティング組成物におけるポリイソシアネート成分として使用することができる。これらの組成物において有用であるために、ポリイソシアネート混合物を、外部の乳化剤とブレンドするか、または陽イオン性、陰イオン性または非イオン性基を含有する化合物と反応させることによって、親水性にすることができる。親水性化合物との反応は、シロキサン含有化合物を組み込むウレタン化反応の前または後に行うことができる。ポリイソシアネートを親水性にするための方法は、同時係属出願、米国特許5,194,487および同5,200,489(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)中に開示される。変性ポリイソシアネート混合物の低減された表面張力は、顔料の分散および基材濡れを高める。
【0035】
また、コーティング組成物は、他の添加物、例えば顔料、染料、フィラー、均展材および溶媒を含有することができる。コーティング組成物は、コーティングされる基材に、溶液状態で、またはメルトから、ペインティング、ロール塗、流し込み、噴霧のような通常の方法によって付与することができる。
【0036】
本発明のポリイソシアネート混合物を含有するコーティング組成物は、優れた乾燥時間を有し、金属性基材に驚くほどよく付着し、非常に耐光性であり、熱に対して色安定性であり、耐摩耗性に優れたコーティングを与える。それらは、高い硬さ、弾性、極めて優れた耐薬品性、高光沢、優れた耐候性、優れた耐環境腐食性および優れた顔料着色性も有する。特に、該コーティング組成物は優れた表面外観および優れた洗浄性を有する。
【0037】
本発明を下記の実施例によってさらに説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。実施例における全ての部およびパーセントは特に指定しなければ重量による。
【実施例】
【0038】
〔シロキサンアルコール0411〕
分子量約1000の、ブチルで開始しカルビノールで停止したポリジメチルシロキサンアルコール(Chisso Corp.からSilaplane FM-0411として市販)。
〔ポリイソシアネート4470〕
イソホロンジイソシアネートから製造され、イソシアネート含量11.9%、モノマージイソシアネート含量<0.50%、25℃における粘度670 mPa.s、および表面張力40 dyne/cmを有し、酢酸n-ブチル中の70%溶液としての、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(Bayer Material ScienceからDesmodur Z 4470 BAとして市販)。
〔ポリイソシアネート3300〕
1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートから製造され、イソシアネート含量21.6%、モノマージイソシアネート含量<0.30%、25℃における粘度3000 mPa.s、および表面張力46 dyne/cmを有する、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(Bayer Material ScienceからDesmodur N 3300として市販)。
〔ポリエステルポリオール670〕
酢酸n-ブチル中の80%固形分で供給され、平均当量500および25℃における粘度2550 mPa.sを有する三官能性ポリエステルポリオール(Bayer MaterialScience LLCからDesmophen 670A80として市販)。
〔液体試料の表面張力〕
ウイルヘルミー・プレート法(フレーム付スライドガラス)を使用して、表面張力を測定した。試料を、Cahn DCA 312動的接触角分析器で分析した。全ての試料を分析前に撹拌した。
〔フィルム試料の表面エネルギー〕
水およびヨウ化メチレン、極性および非極性溶媒の前進角をそれぞれ、Rame-Hartゴニオメーターを使用して測定した。極性および分散性成分を包含する全固体表面エネルギーを、Owens Wendt法によって前進角を使用して計算した。
【0039】
〔実施例1(比較):ポリイソシアネート混合物1の製造〕
機械撹拌器、冷水コンデンサー、加熱マントルおよび窒素導入口を取り付けた250 mLの三つ口丸底フラスコに、ポリイソシアネート3300(148.5 g、0.77当量)およびシロキサンアルコール0411(1.5 g、0.0015当量)を加えた。反応混合物を撹拌し、そして80℃に加熱した。80℃で5時間加熱した後、NCO含量は21.56%(これは、その理論値21.50%よりもわずかに高い)に達した。熱源を除去し、冷水/氷浴を適用した。粘度は25℃で2739 mPa.sであった。液体の表面エネルギーは23.6 dyne/cmであった。
【0040】
〔実施例2〜6:ポリイソシアネート混合物2〜6の製造〕
他のポリイソシアネート混合物を、種々のポリイソシアネート出発物質および種々の量のシロキサンアルコールを使用して実施例1にしたがって製造した。シロキサンアルコールが低表面エネルギーを与えるのに必要であることを示すために、比較例ではイソブタノールを使用した。比較例5および6は、実施例1および3と同じ当量のアルコールを使用する。実施例1〜6の詳細を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
〔実施例7〜12:湿気硬化性コーティングの製造〕
表2に示すポリイソシアネート混合物を酢酸エチルで希釈し、次いで、固形分に基づいて1重量%のジブチル錫ジラウレートを添加することによって、湿気硬化性コーティング組成物を製造した。本発明のポリイソシアネート混合物および比較のポリイソシアネート混合物から作られたフィルムを、ガラスパネル上に2、4および6ミルの湿フィルム厚さに引落した。該フィルムを周囲条件下、実験台上で一晩硬化させた。実施例7〜12の詳細を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
これらの実施例は、アロファネート基ではなくウレタン基を含有する本発明のポリイソシアネート混合物を含有する湿気硬化性コーティング組成物から透明コーティングを製造できることを示す。ただし、該ポリイソシアネート混合物は、少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されたイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物に基づくものである。本発明の要件を満たさないポリイソシアネート付加物から製造された、比較のポリイソシアネートから製造されたコーティングは曇っていた。
【0045】
〔実施例13〜14:二成分コーティング組成物の製造〕
二成分コーティング組成物を、実施例1および3からのポリイソシアネート混合物とポリエステルポリオール670とをNCO:OH当量比1.05:1.00で混合し、そしてポリイソシアネート/ポリオールブレンド100部につきジブチル錫ジラウレート(0.05 g)を添加することによって製造した。4ミルの引落しバーを使用して、コーティングをガラスパネル上に引落した。コーティングを、周囲条件下に実験台上で一晩硬化させた。実施例13〜14の詳細を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
これらの実施例は、アロファネート基ではなくウレタン基を含有する本発明のポリイソシアネート混合物を含有する二成分コーティング組成物から透明コーティングを製造できることを示す。ただし、該ポリイソシアネート混合物は、少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されたイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物に基づくものである。本発明の要件を満たさないポリイソシアネート付加物から製造された、比較のポリイソシアネートから製造されたコーティングは曇っていた。
【0048】
〔実施例15〜16:濃縮物としてのポリイソシアネート混合物2および4の使用〕
実施例2および4からのポリイソシアネート混合物(1 g)を、表4に示す未変性ポリイソシアネート(9 g)と手で混合した。得られたポリイソシアネート混合物は、低表面張力値を有した。これは、本発明のポリイソシアネート混合物が、未変性ポリイソシアネートを希釈するための濃縮物として使用できることを示している。詳細を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
これらの実施例は、本発明のポリイソシアネート混合物がシロキサン基非含有未変性ポリイソシアネートで希釈でき、および、なお低表面張力を与えることを示す。
【0051】
〔実施例17〜18:湿気硬化性コーティングの製造〕
湿気硬化性コーティングを、実施例15および16からのポリイソシアネート混合物を酢酸エチルで希釈し、次いで、固形分に基づいて1重量%のジブチル錫ジラウレートを添加することによって製造した。本発明のポリイソシアネート混合物から作られたフィルムを、4ミルの湿フィルム厚さにガラスパネル上に引落した。該コーティングを、周囲条件下に実験台上で一晩硬化させた。実施例17〜18の詳細を表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
これらの実施例は、濃縮物から製造され、およびアロファネート基ではなくウレタン基を含有する本発明のポリイソシアネート混合物を含有する湿気硬化性コーティング組成物から透明コーティングを製造できることを示す。ただし、該ポリイソシアネート混合物は、少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されたイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物に基づくものである。本発明の要件を満たさないポリイソシアネート付加物から製造された、比較のポリイソシアネートから製造されたコーティングは曇っていた。
【0054】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)3重量%未満のモノマージイソシアネート含量を有し、
ii)ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて50当量%を超えるウレタン基含量を有し、および
iii)0.002〜50重量%の量のシロキサン基(SiO、MW44として計算)を含有し、
上記パーセントは、ポリイソシアネート混合物の固形分に基づいており、および
シロキサン基は、
a)少なくとも1個の脂環族基を有するモノマージイソシアネートから製造されるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート付加物からのイソシアネート基と、
b)炭素原子に直接結合した1個またはそれ以上のヒドロキシル基と1個またはそれ以上のシロキサン基とを含有する化合物と
を反応させてウレタン基を形成させることにより組み込まれている、
ポリイソシアネート混合物。
【請求項2】
上記化合物が、炭素原子に直接結合した1個のヒドロキシル基と1個またはそれ以上のシロキサン基を含有する、請求項1に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項3】
上記モノマージイソシアネートがイソホロンジイソシアネートを含んでなる、請求項1に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項4】
上記モノマージイソシアネートがイソホロンジイソシアネートを含んでなる、請求項2に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項5】
上記ポリイソシアネート混合物が、ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて90当量%を超えるウレタン基含量を有する、請求項3に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項6】
上記ポリイソシアネート混合物が、ウレタン基とアロファネート基との総当量に基づいて90当量%を超えるウレタン基含量を有する、請求項4に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項7】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項1に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項8】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項2に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項9】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項3に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項10】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項4に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項11】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項5に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項12】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて0.2〜10重量%のシロキサン基を含有する、請求項6に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項13】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項1に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項14】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項2に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項15】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項3に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項16】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項4に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項17】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項5に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項18】
ポリイソシアネート混合物が、固形物に基づいて10〜40重量%のシロキサン基を含有する、請求項6に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項19】
請求項1に記載のポリイソシアネート混合物を含有し、必要に応じてイソシアネート基用のブロッキング剤によってブロックされ、および必要に応じてイソシアネート反応性基含有化合物を含有する、一成分または二成分コーティング組成物。

【公表番号】特表2009−503238(P2009−503238A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525111(P2008−525111)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029897
【国際公開番号】WO2007/019132
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】