低酸素誘導性因子に関連した病状を治療するためのメルファレンのN−オキシドと誘導体
【解決手段】 本発明は、N−オキシド及びその誘導体である化合物に関するものであり、また、HIF関連疾患を治療するためのそれらの使用にも関する。これらの化合物は以下のように設計された一般的な化合式を有しており、HIFに関連した様々な疾患を治療するために使用される、化学式(I)においてRはアルキル、アリル、アラキル(arakyl)、或いは例えばCH3OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2−、C6H5OCH2CH2−、C6H5CH2−、CH3(CH2)3OCH2CH2Cl−などのそれらの誘導体、若しくは化学式(II)、(III)、及び(IV)のいずれか1つである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−オキシド及びその誘導体の化合物、組成物、及び処方に関するものであり、特に低酸素誘導性因子の阻害剤としてのそれらの効果により、病状を治療するのに有用であるN−オキシド及びその誘導体に関するものである。本発明は、治療を必要としている患者を、そのような化合物、組成物、及び処方を含む薬学的な処方で治療する方法を含む。本発明の特に有用な観点は、VEGFに関連した疾患に影響を与えるVEGF形成を阻害する、本発明の化合物、組成物、及び処方の能力である。
【背景技術】
【0002】
クロランブシル誘導体は、以前、米国特許番号第5,602,278号(‘278特許)に記載されており、開示された全体の内容はこの参照により本明細書に組み込まれる。この‘278特許は、低酸素環境下でのクロランブシルとそのN−オキシド誘導体の使用方法を記載しており、より具体的には、そのような反応性条件を作るヒドララジンとの組み合わせにおけるクロランブシルに関して記載している。しかしながら、低酸素誘導性因子と関連した一連の疾患の治療における腫瘍状態の複雑さとN−オキシド誘導体の価値は、‘278特許では十分に評価されていなかった。
【0003】
多数の人が、この因子が低酸素腫瘍細胞に対する選択的な毒性を提供するかどうかを決定するために、クロランブシルのN−オキシド誘導体の研究を行った。いくつかの研究では、この誘導体は低酸素下で選択的な毒にはならないため、クロランブシルのN−オキシドは抗腫瘍因子としては無効であると報告された。他の研究では、クロランブシルのN−オキシドは、クロランブシルの価値を超える低酸素選択性の増強を示さないと報告された。しかしながら、‘278特許はクロランブシルとその転位産物は、低酸素環境を作るヒドララジンとともに投与した場合、効果的であったことを実証した。
【0004】
本発明は、本発明の化合物を含む薬学的な処方に関するものである。前記処方は、そのような化合物の1若しくはそれ以上とともに、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバント、或いは様々な病状を治療するのに有用である別の化合物の1若しくはそれ以上も有するものである。
【0005】
本発明は、そのような化合物の使用を有する治療の方法も含む。前記方法は、その様な化合物とともに、他の治療方法を用いる工程も有するものである。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0006】
本発明の1観点は、N−オキシド及びその誘導体である窒素マスタード化合物に関連するものである。これらの化合物は、以下に記載した一般式を有し、様々な目的に対して用いられる。
【0007】
【化4】
【0008】
ここにおいて、Rはアルキル、アリル、アラルキル、若しくは例えばCH3OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2−、C6H5OCH2CH2−、C6H5CH2−、CH3(CH2)3OCH2CH2CH2−、若しくは以下のいずれか1つ、
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
【化7】
【0012】
などのそれらの誘導体である。
【0013】
本発明は、上記の化合物の塩類にも関するものである。前記塩類は、上記に記載した式を一般的に有し、前記塩類は、HCL、アセテート、TFA、トシレート、若しくはピクリン酸塩のいずれかであり、ここにおいてRは上述したものである。
【0014】
本発明の別の観点としては、HIF、特にHIF−1αを阻害することによる疾患の治療である。本発明の化合物、組成物、若しくは処方で治療される疾患のごくわずかは、血管新生(angiogenesis)若しくは新血管形成(neovascularization)に関連した疾患を含む。治療されるHIFに関連した疾患は、脈絡及び網膜新血管形成、年齢関連性黄斑変性症、関節疾患、炎症、神経変性疾患、及び虚血性再灌流(neperfusion)損傷を含む。
【0015】
本発明の別の観点は、そのような化合物を含む薬学的組成物に関するものである。前記組成物は、そのような化合物の1若しくはそれ以上とともに、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバント、若しくは様々な病状を治療するのに有用な別の化合物の1若しくはそれ以上も有するものである。
【0016】
本発明は、そのような化合物の使用を有する医療方法を含む。前記方法は、そのような化合物の使用とともに、他の医療方法も有するものである。
【0017】
‘278特許は、in vitroとin vivoのクロランブシルのN−オキシド誘導体(CHLN−O)と、クロランブシルのヒドロキシルアミン誘導体のN−オキシド誘導体(CHL−HD)の結果を記載していた。両方の化合物は、低酸素下で酵素の減少を伴ったより大きな毒性を有していた。その様な生物学的活性は、他の報告された結果を考慮しても、それらの分子構造を考慮しても、予想外であった。さらに、CHLN−NとCHL−HDの両方は、安定であり、最小in vivo毒性を生産した。この驚くべきin vitroとin vivo活性と最小in vivo毒性は、図1に示された一般的な式の化合物が低酸素腫瘍細胞を治療するための薬学的な処方に有用であることを示していた。しかしながら、腫瘍の比較的小さな部分は、ある所定時間、低酸素状況下にある。さらに、報告された唯一のin vivoデータは、クロランブシル誘導性4[p−(N−2−クロロエトキシ N−2 クロロエチルアミノ)フェニル]ブタン酸に関連していた。さらに、そこで議論されていたクロランブシル誘導体の、HIF、血管新生、解糖、赤血球新生(enthropoiesis)、アポトーシス、VEGF若しくはHIFに対する影響はほとんど理解されていなかった。
【0018】
低酸素の領域がある固形腫瘍は、最も攻撃的で治療が困難な腫瘍であるとして長く認識されていた。低酸素に対する細胞性反応は、解糖の増加、アポトーシスの阻害、及び血管新生と転移の増加を含み、これは、HIF−1αとHIF−1βサブユニットのヘテロ二量体である、低酸素誘導性因子−1(HIF−1)転写因子を通じて仲介される。HIF−1αのレベルはHIF−1の活性を制御すると示され、ヒト腫瘍の範囲で過剰発現しているので、HIF−1αは化学療法の魅力的な標的である。
【0019】
PX−478(S−2−アミノ−3−[4’−N,N,−bis(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)、若しくはメルファランN−オキシド、及びそれらの誘導体は、HIF−1αタンパク質の低酸素誘導性増加を著しく減少するが、HIF−1βには影響を及ぼさず、HIF−1トランス活性化を阻害し、ヒト乳癌MCF−7細胞とヒト大腸癌HT−29細胞の両方における血管内皮増殖因子(VEGF)と誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)などの下流標的遺伝子の発現を減少する。HIF−1αの分解を制御する活性フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質(pVHL)が欠損している、ヒト腎臓細胞癌(RCC4細胞)、及び活性pVHLが再導入されたRCC4/VHL細胞は、PX−478がpVHL経路非依存的に働くことを示すために使用された。従って、PX−478は、HIF−1経路の第1の特異的な阻害剤の1つであり、HIF阻害因子の有望な新しい種類である。
【0020】
HIF−1は、酸素制御HIF−1α若しくはHIF−2αと、恒常的に発現したHIF−1βとのヘテロ二量体であり、それは解糖、赤血球形成、アポトーシス耐性、及び血管新生促進に関与する広範囲の遺伝子の転写を活性化する。
【0021】
HIF−1の活性は、HIF−1αとHIF−2αサブユニットのレベルで主に制御されているように見える。酸素依存性分解ドメイン(ODD)における特異的プロリン残基(ヒトHIF−1αにおけるPro564及びPro402)がプロリル4−ヒドロキシラーゼ(水酸化酵素)ファミリーによってヒドロキシル化されている場合、正常酸素圧条件下のHIF−1αとHIF−2αのレベルは非常に低く維持されている。これは、フォン・ヒッペル・リンドウ(pVHL)タンパク質がHIF−1αのODDに結合することを可能にし、それはHIF−1αをユビキチン化し、最終的にはそのプロテオソーム分解を生じさせるE3ユビキチンリガーゼを活性化する複合体の補充をもたらすものである。プロリル4−ヒドロキシラーゼは、O2、Fe2+、及び2−オキソグルタル酸若しくはアスコルビン酸に対して絶対条件を示す。従って、低酸素下(<5%酸素)では、プロリルヒドロキシラーゼは阻害され、HIF−1αタンパク質のレベルは増加し、恒常的に発現したHIF−1βサブユニットを結合し複合体を形成し、次にHIF−1応答性遺伝子のプロモーター領域中の低酸素反応性因子(HRE)DNA配列に結合し、それらの転写を活性化する。
【0022】
腫瘍抑制因子p53を含む他の経路でもHIF−1α分解を制御し、この腫瘍因子p53はHIF−1αに結合し、別のE3ユビキチンリガーゼであるMDM2の補充による両方のタンパク質の分解を生じる。分子シャペロンである熱ショックタンパク質−90(HSP90)阻害剤ゲルダナマイシン(geldanamycin)は、HIF−1αタンパク質の低酸素誘導性増加を阻害するため、HSP90タンパク質はHIF−1α分解に関わっている可能性がある。
【0023】
とりわけ、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子2、インターロイキン1β、腫瘍壊死因子α、トランスフォーミング成長因子β1、及び血小板由来成長因子を含む増殖因子及びサイトカインは、正常酸素圧条件下でHIF−1αのレベルを安定化及び増加することができる。これらの因子は、正確なメカニズムはまだ明らかではないが、例えばマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)やフォスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)/Akt経路などの共通の細胞キナーゼ経路を介してHIF−1αを安定化する。さらに、タンパク質安定化のみでは正常酸素圧条件下でHIF−1を活性化するためには不十分である。完全な活性化は、(PI3K/AKT経路を介した)翻訳後タンパク質リン酸化、HSP90によって仲介される核輸送、HIF−1βとの二量体化、DNA結合、及び例えばCreb結合タンパク質(CBP)/p300(ヒトHIF−1αのAsn803上のアスパラギニルヒドロキシル化によって仲介される)、SRC−1及びTIF2などの転写性補助因子(co−factor)の補充、を必要とする。HIF−1αとpVHLと相互作用する転写リプレッサーであるFIH(HIF−1阻害因子)も最近記載されていた。しかしながら、転写後タンパク質リン酸化と活性化は、HIF−1αが安定化され、細胞内で適切なレベルを達成した場合にのみ生じることができる。多くの研究により、レドックス依存性過程がHIF−1複合体の安定化と活性化の両方に関連していることが示唆された。我々は最近、小レドックスタンパク質チオレドキシン−1が、HIF−1αタンパク質レベルを増加し、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生の増加、さらには血管新生の増加を導くことを報告した。レドックス不活性変異チオレドキシン−1は、HIF−1αタンパク質、VEGF、及び血管新生を減少した。さらに文献1を通じて、因子−1(文献1)がSRC−1、TIF2及びCBP/p300の補充を増強したと示され、減少したチオレドキシンは低酸素細胞の核へ転座し、HIF−1αへのレドックスシグナルを伝達するというモデルが提案された。
【0024】
HIF−1αタンパク質は、広範囲にわたるヒト原発性腫瘍に見られるが、正常組織においては非常に低いレベルである。HIF−1αの癌に対する重要性は、HIF−1αレベルの上昇を導くVHL遺伝子の両対立遺伝子の機能損失と共に、腎臓細胞癌、クロム親和性細胞腫、及び中枢神経系のヘミングリア芽腫(hemingioblastoma)などの腫瘍が高確率で発生することよって示されている。また、散発性腎臓細胞癌のほとんどのケースは、VHL遺伝子機能の早期損失と、HIF−1αレベルの増加と関連している。腎臓癌に由来する無傷VHL遺伝子を細胞へ再導入すると、HIF−1αは正常酸素圧レベルまで回復し、腫瘍形成能が減少する。HIF−1αレベルはまた、変異を有する癌細胞を増加し、若しくはPTENを欠落させる。いくつかの腫瘍で発現したHIF−2αも、マクロファージに関連した骨髄及び腫瘍において見出される。
【0025】
低酸素に対する腫瘍の成長反応の調節におけるHIF−1αの役割に起因して、それは抗腫瘍薬剤の開発において重要な標的となっている。米国特許第5,602,278号には、PX−478(S−2−アミノ−3−[4’−N,N−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)が、低酸素環境下で選択的に活性化される潜在的な因子として記載されている。しかし、4[p−(N−2−クロロエトキシN−2クロロエチルアミノ)フェニル]ブタン酸は、還元性環境(例えば、還元酵素の存在下)において選択的に低酸素細胞を殺すことが示されていた。我々は、還元酵素の非存在下でのその抗腫瘍作用に起因する、HIF−1αに対するPX−478の影響とその下流標的を研究した。我々は、PX−478処理はHIF−1αタンパク質の減少(in vitro及びin vivoの両方)、及びその後に続くHIF−1複合体のトランス活性化を減少し、チオレドキシン還元酵素の阻害を介していると思われる下流標的のレベルの減少を導くことを示した。我々の研究によって、PX−478の活性は、VHL経路から独立していることも示された。これらの研究は、HIFのPX−478阻害が還元酵素を必要としないことを示していた。従って、PX−478は、HIF経路の最初の阻害剤の1つであり、有望な新しい抗腫瘍因子であることを意味している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
方法
細胞培養、及び低酸素処理
MCF−7ヒト乳癌細胞、及びHT−29大腸癌細胞は、the American Tissue Type Collectionから入手した。ヒト腎臓細胞癌RCC4細胞、及び野生型フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)遺伝子を形質移入したRCC4/VHLは、Dr.Peter Ratcliffeから入手した。細胞は、37℃で、湿度95%、空気5%のCO2インキュベーターにおいて、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に10%ウシ胎児血清、1mg/ml G418(RCC4及びRCC4/VHL細胞には適している)を添加した培地で培養した。低酸素にさらすために、培養フラスコを様々な時間、37℃で、5%CO2/74%N2/21%アルゴンを含有する混合ガスと共に湿度チェンバー内でインキュベートした。酸素レベルは、酸素センサー(製品番号:Ox110、Biospherix、レッドフィールド、ニューヨーク州)を用いてガス層において1%に保った。実験の最後で、細胞は氷冷リン酸緩衝液pH7.5(PBS)で2回洗浄した。VEGFレベルを測定するために、各フラスコからの1ml培養液を処理後取り除き、−80℃で貯蔵した。
【0027】
細胞増殖及び生存アッセイ
増殖阻害アッセイは、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)アッセイを用いて以前記載されたように実行した。低酸素条件下での分析のため、プレートを薬剤存在下で1%酸素で16時間インキュベートし、次に20%酸素で72時間の残りの時間、インキュベートした。
【0028】
VEGF ELISA
約107細胞は、200μlの溶解バッファー(150mM NaCl、50mM Trisバッファー(pH7.5)、1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、2μg/ml アプロチニン、2μg/ml ロイペプチン、0.1mM バナジン酸ナトリウム、1% NP40、及び0.2% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))で1時間4℃で溶解した。溶解液は遠心分離(15分、4℃、10,000xg)し、上清を回収した。20μlの一定分量をタンパク質濃度の分析のために除去し、前記溶解液は必要になるまで−80℃で貯蔵した。細胞溶解液中のVEGFは、pg(VEGFタンパク質)/mg(総タンパク質)として表し、回収された培養液中のVEGFは、pg(VEGFタンパク質)/mg(同じフラスコからの細胞中で測定された総細胞タンパク質)で表した。細胞溶解液におけるヒトVEGFと、培養液に分泌されたVEGFの量は、製造元取り扱い説明書に従って、VEGF165及びVEGF121アイソフォームを測定するELISAキット(ヒトVEGF−ELISA;R&D Systems,ミネアポリス、ミネソタ州)を用いて決定した。血しょう中のマウスVEGFの量は、製造元取り扱い説明書に従って、マウスVEGF165及びVEGF121アイソフォームを測定するELISAキット(マウスVEGF−ELISA;R&D Systems)を用いて決定した。
【0029】
免疫ブロッティング法
核及び細胞質抽出物は、製造元取り扱い説明書に従って、NE−PER(登録商標)Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagentsを用いて調整した。ウェスタンブロッティング法は、マウス抗ヒトHIF−1α(1μg/ml);マウス抗ヒトHIF−1β(1μg/ml);マウス抗ヒトiNOS(5μg/ml);及びヤギ抗ヒトlamin A(0.5μg/ml)を用いて、以前記載したように実行した。抗マウス、若しくは抗ヤギ西洋ワサビペルオキシダーゼ−共役二次抗体は1:5000の希釈率で用い、化学発光によって検出され、ブロットはImageQuantソフトウェアを用いて定量した。
【0030】
HIF−1α mRNA測定
Trizol抽出法を用いて調製された15μg総RNAは、1.5%アガロース−ホルムアルデヒドゲルを用いた電気泳動によって分離され、ナイロンメンブレンに転写した。RNAは、Stratalinker UV クロスリンカーを用いてメンブレンにクロスリンク(架橋結合)した。ヒトHIF−1αに対する完全長プローブ(ランダムプライマー標識システム(Random Primers DNA Labeling System)を用いて[α−32P]dCTPでラベルされている)は、ULTRAhyb ハイブリダイゼーションバッファーを用いてメンブレンにハイブリダイズし、製造元プロトコールに従って洗浄工程を行った。ブロットはMD Storm 860ホスフォイメージャーを用いて画像化し、ImageQuantソフトウェアを用いて定量化した。18S rRNAに対する完全長cDNAプローブは、添加対照として用いた。
【0031】
低酸素反応性因子レポーターアッセイ
ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)からの低酸素反応性因子(HRE)を含むpGL3ホタルルシフェラーゼ レポータープラスミドは、Dr.Ian Stratfordより寄贈された。プラスミドDNAは商業用キットを用いて調整した。空pGL3対照プラスミド、及び形質移入(トランスフェクション)効率に対する対象で用いられたプラスミドを含むpRL−CMV ウミシイタケルシフェラーゼは、Promegaから入手した。細胞は、製造元取扱説明書に従って、LipoTAXI mammalian transfection reagent(ほ乳類形質移入試薬:Stratagene、テキサス州)を用いて、5μgのHIF−1レポータープラスミド、若しくはpGL3対照プラスミド、及び0.025μgのpRL−CMV ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(形質移入効率のための対照として)で形質移入した。24時間後、細胞を以前に記載したように低酸素にさらした。ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性は、製造元取扱説明書に従って、Dual−Luciferase Reporter Assay System(デュアルルシフェラーゼレポートアッセイ系)を用いて測定した。
【0032】
免疫染色化学
MFC−7及びMiaPaCa細胞(0.2mlマトリゲル中に107)をscidマウスの横腹に注入した。腫瘍が0.5gに到達した時、マウス(1グループに4匹)を100mg/kg PX−478若しくは溶媒対照を(腹腔内注入によって)処理した。4時間後、1mlの血液を各マウスから採取し、マウスは屠殺し、腫瘍を除去し、4%ホルムアルデヒド/PBSで固定し、パラフィンで包埋した。切片を、自動化免疫染色装置システムを用いてHIF−1α(10μg/ml)若しくはVEGF(7μg/ml)に対する抗体で染色した。HIF−1α染色の強度は、SimplePCIプログラムを用いて測定した。
【0033】
チオレドキシン還元酵素アッセイ
総細胞溶解液は、VEGF ELISAで記載したように調整した。チオレドキシン還元酵素活性は、Berggenら(1999年)が記載したように測定した。簡潔には、0.2mlの一定分量の新鮮アデノシン2’,5’−二リン酸共役アガロースビーズ(ADPアガロース)(Sigma)を、0.2mlの一定分量の上清と1時間、4℃で混合し、内因性チオレドキシンと他の小分子量還元剤を除去した。前記ビーズは次に、2x1mlの、0.1M NaClで1000xgの再遠心分離によって洗浄し、チオレドキシン還元酵素は、0.5mlの1.0M KCLで溶出した。チオレドキシン還元酵素活性は次に、基質として5μM ヒトリコンビナントチオレドキシン、及び最終電子受容体として酸化型インシュリンを用いて、339nmでNADPHの酸化として測定した。活性は、上清タンパク質のミリグラム当たり、1分間に酸化されるナノモルNADPHとして表した。
【0034】
免疫組織化学
ヒト乳癌MCF−7細胞(1マウス当たりマトリゲル中に107細胞)を、エストロゲンペレットを移植されたscidマウスの横腹に皮下的に注入した。腫瘍は0.5gまで成長した。次にマウスの腹腔内に、溶媒単独、若しくは120mg/kg PX−478を入れた。4時間後、腫瘍を切除し、ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。切片は、自動化免疫染色装置システムを用いて、HIF−1α(10μg/mg;Transduction Labs)、若しくはVEGF(7μg/ml)に対する抗体で染色した。染色は、SimplePCI分析ソフトウェアを用いて定量化した。
【0035】
考察
PX−478は低酸素及び正常酸素圧で阻害作用を示す
ヒト乳癌MCF−7細胞及びヒト大腸癌HT−29細胞は、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)条件下、様々な濃度のPX−278で、16時間処理した。次に細胞を薬剤を含まない温かい培地で3回洗浄し、72時間の残りの時間インキュベートした。次にMTTアッセイを行って、増殖阻害作用を決定した。データは、二組ずつ3回の実験から平均±SEで表した。PX−478は、低酸素(1%酸素)及び正常酸素圧(20%酸素)条件下で増殖阻害作用を示し(p=<0.01)、正常酸素圧条件下での増殖阻害作用に対して低酸素条件下の増殖阻害作用の比は、MCF−7で1.25、HT−20細胞で1.2であった。以下の表1は、これらの結果を示している;
【0036】
【表1】
【0037】
PX−478はHIF−1αタンパク質を阻害する
HIF−1αは、低酸素に対する細胞性反応の重要な調節要素である。従って我々は、PX−478のHIF−1αタンパク質レベルに対する影響を検討した。図2Aに示したように、PC−3前立腺癌細胞、MCF−7乳癌細胞、及びHT−29大腸癌細胞をPX−478存在下、低酸素(1%酸素)に16時間さらした。細胞核抽出物を調製し、HIF−1αタンパク質のレベルをウェスタンブロッティング法を用いて測定した。図2に示したように結果は、添加対照としてのlamin Aを含む典型的なウェスタンブロットを示した。図2において、MCF−7ヒト乳癌細胞及びHT−29ヒト大腸癌細胞は、PX−478存在下で正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)で16時間処理した。細胞核抽出物を調製し、HIF−1αとHIF−1βタンパク質のレベルをウェスタンブロッティング法を用いて測定した。ブロットは3回の実験の代表である。Lamin Aは、添加対照として用いた。データは、3回の実験の平均±S.E.で表し、(●)はPC−3前立腺癌細胞、(○)はMFC−7乳癌細胞、及び(▼)はHT−29ヒト大腸癌細胞を示している。図2Aに示されたように、PX−478は、ヒト乳癌細胞MCF−7(図2Aに示した)及びヒト大腸癌細胞HT−29(図2Bに示した)における低酸素(1%酸素)誘導性HIF−1αタンパク質を阻害し、各細胞のIC50値はそれぞれ3.5±2.0、及び17.8±5μMである。HIF−1αタンパク質レベルは、以前に報告されたように、正常酸素圧(20%酸素)下においては非常に低かったので、影響は見られなかった。しかしながら、正常酸素圧において検出可能なレベルのHIF−1αタンパク質を示したヒト膵臓癌PC−3細胞において、IC50値は2.5±1.2μMであった(図示せず)。この細胞株では、低酸素条件下でも同程度のIC50値が得られた(2.1±2.0μM)。
【0038】
図3A及び3Bに示したように、PX−478は、あらゆる細胞株において、HIF−1β(図3A及び3B)若しくはHIF−1α mRNAレベル(図示せず)に対して影響を及ぼさなかった。
【0039】
PX−478は低酸素誘導性HIF−1トランス活性化を阻害する
HIF−1トランス活性化は、PGKからのHREの複数コピーの制御下で、ルシフェラーゼをコンストラクト発現している一過性形質移入細胞によって測定した。図4Aは、MCF−7ヒト乳癌細胞、及び図4Bは、HT−29ヒト大腸癌(B)細胞を図示しており、各細胞は、様々な濃度のPX−478の存在下、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)で16時間処理した。次にHIF−1トランス活性化は、PGKからのHREのいくつかのコピーの制御下で、コンストラクト発現しているホタルルシフェラーゼを用いて測定した。ウミシイタケルシフェラーゼは、形質移入効率の対照として同時形質移入した。データは、3回の実験の平均±SEで表した。*は、同条件下において、未処理対照から有意な変化があったことを示している(p=<0.001)。図4Bで示したように、HT−29細胞は、図4Aに示されたようなMCF−7細胞と比較して、HIF−1のトランス活性化の有意な増加が見られた(MCF−7細胞が10.1±1.9倍に対して、HT−29細胞13.9±1.5倍である)(p=<0.001)。しかしながら、PX−478は、10μM及び25μMのPX−478で16時間処理した後、両方の細胞株における低酸素誘導性のHIF−1トランス活性化を有意に減少した(p=<0.001)。低酸素誘導性トランス活性化の阻害に対するIC50値は、MCF−7細胞では20.5±1.4μM、HT−29細胞では23.1±1.8μMであった。HIF−1トランス活性化は、正常酸素圧下では非常に低く、両細胞株をPX−478で処理しても影響がなかった。
【0040】
PX−478は低酸素誘導性VEGF産生を阻害する
図5A及び5Bにそれぞれ示したように、MCF−7ヒト乳癌細胞及びHT−29ヒト大腸癌細胞を、PX−478存在下で、正常酸素圧(20%酸素:黒符号)若しくは低酸素(1%酸素:白符号)で16時間処理した。次に、丸で表示された細胞溶解液中のVEGFレベル、若しくは三角で表示された培養液中のVEGFレベルをELISAを用いて測定した。データは、3回の実験の平均±SEで表した。*は、同条件下(正常酸素圧、若しくは低酸素)で未処理対照から有意な差があることを示している(p=<0.001)。PX−478は、10μM PX−478で16時間処理した後、MCF−7細胞(図5A)及びHT−29細胞(図5B)の両方における低酸素誘導性VEGFタンパク質レベルを有意に減少した(p=<0.01)。IC50値は、MCF−7細胞及びHT−29細胞において、細胞溶解液中のVEGFに対してはそれぞれ17.1±4.0μM及び13.5±4.0μM、培養液中に分泌されたVEGFに対してはそれぞれ3.8±2.0μM及び11.5±2.5μMであった。培養液中に分泌されたVEGFのレベルは、MCF−7細胞において、10μM PX−478で処理した後、正常酸素圧レベルまで減少した。しかしながら、MCF−7細胞の細胞溶解液中のVEGFレベルだけでなく、HT−29の細胞溶解液と培養液中に分泌されたVEGFレベルは、25μM PX−478で処理した後も正常酸素圧レベルにまで戻らなかった。興味深いことに、PX−478は、両細胞株の正常酸素圧におけるVEGFレベルには影響を及ぼさなかった。
【0041】
HIF−1αタンパク質はPX−478除去後4時間まで阻害され続ける
PX−478で細胞を処理した後、どのくらいの時間でHIF−1αタンパク質が阻害され続けるかを検討するために、図6に示したように、MCF−7細胞をPX−478で16時間処理し、次に薬剤を洗い流し、HIF−1αの回復を測定した。MCF−7ヒト乳癌細胞を16時間低酸素(1%酸素、H)にさらし、次に25μM PX−478に最大4時間まで処理した。細胞核抽出物は表示された時間で調製し、HIF−1αタンパク質のレベルを測定するためにウェスタンブロッティング法を行った。正常酸素圧(20%酸素、N)下で16時間処理した後のHIF−1αタンパク質のレベルも対照として示した。HIF−1αタンパク質レベルは薬剤の除去から4時間以内に処理前レベルにまで回復した。
【0042】
PX−478はHIF−1αタンパク質をin vivoで阻害する
MCF−7細胞をscidマウスの横腹で異種移植片として増殖した。異種移植片が0.3gに到達した時、マウスを溶媒対照若しくは100mg/kg PX−478(図7A及び7Bにそれぞれ図示した)で処理した。4時間後、腫瘍を除去し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋し、HIF−1αタンパク質のレベルを免疫組織化学法を用いて測定した(A及びB)。(C)HIF−1α染色強度は、Simple PCIソフトウェアを用いて定量化した。*は、対照から有意な差があることを示している(p=<0.01)。データは、平均±SEで表した。図7A及び7Bに示したように、scidマウスの横腹で異種移植片として増殖したMCF−7細胞の処理によって、PX−478処理の4時間後、HIF−1αタンパク質のレベルが有意に減少した(p=<0.005)ことが示された。PX−478処理細胞中の局在化における染色残存核、及びHIF−1αのレベルは、図7Cに示された未処理対照と比較してPX−478処理マウスにおいて50%減少していた。
【0043】
PX−478はVHL非依存性経路を介してHIF−1αを阻害する
図8において、ヒト腎臓癌RCC4細胞及びRCC4/VHL細胞を、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)条件下で、様々な濃度のPX−478で16時間処理した。図8Aは、HIF−1αタンパク質レベルを核抽出物中で測定した結果を示している。Lamin Aは添加対照として用いた。図8Bは、PGKからのHREの複数コピーの制御下で、コントラクト発現しているルシフェラーゼを用いてHIF−1トランス活性化を測定した結果を示している。ウミシイタケルシフェラーゼを形質移入効率を正確にするために同時形質移入した。データは、平均±SEで表した。*は、同条件下の未処理サンプルから有意な差があることを示している(p=<0.01)。VHL遺伝子を欠いたヒト腎臓癌細胞(RCC4)、及びVHL遺伝子が置換されているRCC4/VHL細胞は、PX−478によるHIF−1αの阻害メカニズムを検討するために用いた。RCC4細胞は、正常酸素圧下でも高レベルのHIF−1αタンパク質を発現しており、一方、RCC4/VHL細胞は、図8Aに示したように、正常酸素圧下で低レベルのHIF−1αタンパク質を発現していた。PX−478は、正常酸素圧(IC50=5.1±2.0μM)及び低酸素(IC50=16.9±1.9μM)の両方の条件下で、RCC4細胞中のHIF−1αタンパク質を阻害し、これはPX−478がVHL経路に非依存的にHIF−1αを減少することを示唆している。PX−478は、RCC4/VHL細胞中の低酸素誘導性HIF−1αも阻害し、IC50値は18.1±4.0μMであった。
【0044】
図8Bに示したように正常酸素圧、及び低酸素の両方の条件下でRCC4細胞中のHIF−1のトランス活性化も有意に阻害され、IC50値はそれぞれ12.5±2.5μM、及び10.1±1.2μMであり、これはPX−478がVHL経路とは非依存的に働くことを確証するものである。RCC4/VHL細胞は、低酸素誘導性HIF−1トランス活性の阻害に対してIC50値は13.5±1.3μMであったが、MCF−7細胞及びHT−29細胞と同様に、PX−478に対して同様な反応を示した。また、PX−478は、非常に低レベルではあるが、正常酸素圧におけるトランス活性化には影響を及ぼさなかった。
【0045】
PX−478はチオレドキシン還元酵素を阻害する
我々の以前の研究によって、チオレドキシンを介したレドックスシグナル伝達の阻害は、HIF−1αタンパク質レベルを減少し、HIF−1下流標的であるVEGF及びiNOSのレベルの減少を導くHIF−1トランス活性化を減少することが可能であると示された。従って我々は、0若しくは10μM PX−478の存在下で、正常酸素圧(20%酸素、N)若しくは低酸素(1%酸素、H)で16時間さらしたHT−29細胞における、チオレドキシン還元酵素活性に対するPX−478の影響を検討した。細胞を溶解し、チオレドキシン還元酵素活性を測定した。*は、正常酸素条件下の未処理対照から有意な差があることを示している。BLDは以下のアッセイの検出限界を表示している。データは、二組ずつ少なくとも2回の実験から平均±SEで表した。10μM PX−478でのMFC−7細胞の処理は、正常酸素圧においてチオレドキシン還元酵素活性を40%も有意に減少した(p=<0.001)。低酸素でも同程度までチオレドキシン還元酵素活性を有意に減少したが、チオレドキシン還元酵素活性は、低酸素条件下での10μM PX−478での処理の後、アッセイの検出限界以下まで減少した。
【0046】
低酸素誘導性因子−1(HIF−1)は、腫瘍の発展と進行において主要な役割を担っていると言える。理論に縛られることは望まないが、なぜならHIF−1は、有害な環境下で、及び放射線療法や化学療法などに反応して、細胞の生存を可能にするために重要な役割を担っているタンパク質産物をコード化している、40以上の標的遺伝子の発現を調節しているからである。これらは、腫瘍血管新生で必須であるVEGF、腫瘍細胞生存を促進するインシュリン様成長因子2(IGF2)、グルコース輸送体1及び2、及びアルドラーゼA及びC、ヘキソキナーゼ1及び3、ラクターゼ、デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)A及びPGKなどの解糖系酵素をコード化している遺伝子を含む。多くのヒト腫瘍では、腫瘍内低酸素、及び重要な発癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子に影響を及ぼす遺伝的変化を原因としてHIF−1αタンパク質の過剰発現が見られた。また、HIF−1αの過剰発現は、治療の失敗と死亡率に相関している。しかしながら、HIF−1活性の損失は、腫瘍成長、血管新生、及び異種移植片のエネルギー代謝において非常にマイナスの影響を及ぼす。従って、HIF−1の阻害は正常細胞を超えて腫瘍細胞の選択的な死滅を導くことが可能であるので、HIF−1の阻害は癌治療法に対して有望な新規アプローチとなることを意味している。
【0047】
我々は、PX−478が、正常酸素圧条件下でより、低酸素条件下の細胞増殖を有意な程度で阻害することを示した。低酸素は一般的に放射線療法及び化学療法の両方に対して抵抗性を引き起こすので、これは重要な発見である。従って我々は、HIF経路に対するPX−478の影響を検討した。PX−478は、HIF−1αタンパク質を阻害し、その結果HIF−1トランス活性化、及び下流標的遺伝子VEGFの発現の減少を導いた。PX−478はさらに、毒性のない投与量でin vivoにおいてHIF−1αを減少した。興味深いことに、この阻害作用は、HIF−1α安定化を制御しているとして最もよく研究されているVHL経路とは非依存的に生じることが示された。腎臓癌の80%以上がVHLの不活性化変異、若しくはVHLの完全欠損を示しているので、これは重要な発見である。しかしながら、P53腫瘍抑制経路、及びPI3KやMAPK経路を介した腫瘍シグナル伝達を含む多数の他の要素が、HIF−1αタンパク質に影響を及ぼすことが示されていた。
【0048】
興味深いことに、最近のいくつかの研究によって、VHL非依存的な方法によるHIF−1経路の間接的な阻害が報告された。これらは、LY294002を用いたPI3Kの阻害、ゲルダナマイシン(geldanamycin)を用いた分子シャペロンHSP90の阻害、及びPX−12やプレウロチン(pleurotin)によるレドックスシグナル伝達の阻害を含む。実は、チオレドキシン還元酵素活性は、本研究において、HIF−1α阻害とよく相関したPX−478の濃度で著しく減少されることが示された。
【0049】
チオレドキシン還元酵素は、レドックスタンパク質チオレドキシン(Trx−1)のNADPH依存性還元を触媒するセレノシステイン含有フラボタンパク質である。従って、チオレドキシンの活性はチオレドキシン還元酵素に依存している。Trx−1の過剰発現は、活動的な腫瘍成長、アポトーシスの阻害、及び最近の研究よりHIF−1経路を介した血管新生の増加、と連結していた。そのレドックス活性を介して、Trx−1は、例えばアポトーシスシグナル調節キナーゼ−1(ASK−1)、及びプロテインキナーゼC、α、δ、ε、ζなどの酵素の活性を制御しており、DNA結合、及びNF−κB、グルココルチコイド受容体、p53を含む転写因子のトランス活性化活性を増加する。ヒトTrx−1を形質移入したマウスWEHI7.2リンパ腫細胞は免疫不全scidマウスにおいて、ベクターのみを形質移入した細胞を比較して、より素早く増殖し、自発的な薬剤誘導性アポトーシスをあまりしない腫瘍を形成した。レドックス不活性変異Trx−1は、優性阻害(ドミナントネガティブ)として働き、ヒト乳癌MCF−7細胞及びWEHI7.2細胞の増殖を阻害する。多くの癌においてTrx−1発現が増加している。より最近では、増加したTrx−1レベルは、胃癌における減少したアポトーシスと患者の生存率に、及び非小細胞肺癌における減少した患者生存率に相関していた。
【0050】
しかしながら、Trx−1シグナル伝達がHIF−1経路にどのように影響を及ぼすかという正確なメカニズムは、未だ明確ではない。以前の研究では、Trx−1が、二重作用DNA修復エンドヌクレアーゼ及びレドックス制御タンパク質であるレドックス−因子−1(Ref‐1)を介したHIF−1トランス活性と同様に、HIF−1αタンパク質安定性にも影響を及ぼすと示唆された。Trx−1は、Ref−1を直接還元し、転写コアクチベーター複合体Creb結合タンパク質(CBP)/p300の、HIF−1αのC末端トランス活性化ドメインへの結合を促進し、HIF−1トランス活性化の増加を導く。しかしながら、このプロセスの阻害は、少なくとも部分的には説明できたが、本研究で観察されたHIF−1αトランス活性化の阻害に対する、Trx−1の阻害で見られたHIF−1αタンパク質レベルの減少を説明はしていない。
【0051】
最近の研究によって、Trx−1は、腫瘍抑制タンパク質PTENに結合及び阻害し、AKTを介したPI3K経路の活性化を導くことが示された。PI3K/AKT経路は、HIFの安定化及び活性化に関与している、及びPI3K阻害剤LY294002もVHL非依存的な方法でHIF−1αタンパク質を減少する、という発見の観点から、Trx−1は、この経路を介してHIF−1αに影響を及ぼすことが可能である。しかし最近の研究によって、これは細胞タイプ依存性であり、HIF活性化の下流に若しくはパラレルな経路に位置していると示唆された。我々は最近この可能性を検討している。
【0052】
要約すると、我々は、PX−478が、低酸素誘導性HIF−1αタンパク質、HIF−1トランス活性化、及び下流標的VEGFの発現を阻害する新規抗癌因子であることを示した。阻害作用は薬剤除去後4時間まで続いた。PX−478は、VHL非依存的な方法で、恐らくチオレドキシン還元酵素の阻害を介して働く。PX−478はin vivoでHIF−1αタンパク質も減少した。従って、PX−478は正常細胞を超えてがん細胞の選択的な死滅を導く可能性がある有望な抗癌因子であることを意味している。
【0053】
最近、いくつかの薬剤はHIF−1複合体を間接的に阻害することが報告された。上述したように、HSP90阻害剤ゲルダナマイシンは、pVHL非依存性メカニズムによってHIF−1αタンパク質を阻害することが報告された。高処理スクリーニングアプローチを用いて、多くのカンプトテシン類縁体が、HIF−1αタンパク質とトランス活性化の阻害剤として同定された。しかし、これらの化合物が、特異的なHIF−1阻害剤というよりはむしろトポイソメラーゼI阻害を介した一般的な転写を単純に阻害するかどうかは明らかではない。DX−2−1(カルボマイシン誘導体)も、同じスクリーニングを用いて同定されたが、HIF−1を加えた多数の転写因子に影響を及ぼすと知られている。我々は、HIF−1αタンパク質、HIF−1トランス活性化、及びin vitroでの低酸素誘導性VEGF産生とin vivoでの低酸素誘導性HIF−1αタンパク質産生の阻害剤として、チオレドキシン−1レドックスシステムの2つの阻害剤であるPX−12及びプレウロチン(pleurotin)も同定した。
【0054】
PX−478は、Panc−1ヒト膵臓癌(図10に示した)、MCF−7ヒト乳癌細胞(図11に示した)、ヒト前立腺癌(図12に示した)、及びHT−29大腸癌細胞(図13に示した)に対して影響を及ぼした。
【0055】
図14は、HT−29腫瘍異種移植片HIF−1αに対するPX−478の影響を説明したものである。
【0056】
図15は、血漿VEGFレベルに対するPX−478の影響を説明したものである。
本発明は、このような化合物を含む薬学的組成物にも関するものである。前記組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバンド、若しくは治療を必要とする患者を治療するために有用である別の化合物の1若しくはそれ以上と共に、このような化合物の1若しくはそれ以上を有するものである。適切な組成物は、静脈内注入として投与された前記化合物の1若しくはそれ以上を含む緩衝溶液も含む。本発明は、このような化合物の使用を有する医学的な治療方法を含む。前記方法は、放射線療法若しくは化学療法などの、特定な疾患を治療するために有用な他の治療方法と共にこのような化合物を用いる工程も有している。
【0057】
好ましい実施例を詳細に記載したが、添付した特許請求の範囲の本質若しくは範囲から逸脱することなく、様々な変更がこれらの実施例に対してなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下に続く図面の簡単な説明と本発明の詳細な説明によって、本発明の様々な観点と用途が当業者に明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明による化合物を図示したものである。
【図1A】図1Aは、PX−478 N−オキシド及びPX−478 N−オキシド塩酸塩の化学構造を図示したものである。
【図2】図2は、HIF−1αタンパク質レベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図3】図3は、HIF−1α及びHIF−1βタンパク質レベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図4A】図4は、HIF−1トランス活性化に対するPX−478の影響を図示したものであり、図4Aは、MC−7ヒト乳癌におけるHIF−1トランス活性化を図示したものである。
【図4B】図4は、HIF−1トランス活性化に対するPX−478の影響を図示したものであり、図4Bは、HT−29ヒト大腸癌におけるトランス活性化を図示したものである。
【図5】図5は、VEGFに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図6】図6は、阻害後のHIF−1αタンパク質の回復を図示したものである。
【図7】図7は、in vivoにおけるPX−478の影響を図示したものである。
【図8A】図8は、PX−478の影響に対するVHLの影響を図示したものであり、図8Aは、核抽出物におけるHIF−1αタンパク質レベルを図示したものである。
【図8B】図8は、PX−478の影響に対するVHLの影響を図示したものであり、図8Bは、PGKからのHREの複数コピーの制御下でのHIF−1トランス活性化を図示したものである。
【図9】図9は、チオレドキシン還元酵素に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図10】図10は、Panc−1ヒト膵臓癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図11】図11は、MCF−7ヒト乳癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図12】図12は、PC−3ヒト前立腺癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図13】図13は、HT−29大腸癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図14】図14は、HT−29腫瘍異種移植片のHIF−1αに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図15】図15は、血漿VEGFレベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−オキシド及びその誘導体の化合物、組成物、及び処方に関するものであり、特に低酸素誘導性因子の阻害剤としてのそれらの効果により、病状を治療するのに有用であるN−オキシド及びその誘導体に関するものである。本発明は、治療を必要としている患者を、そのような化合物、組成物、及び処方を含む薬学的な処方で治療する方法を含む。本発明の特に有用な観点は、VEGFに関連した疾患に影響を与えるVEGF形成を阻害する、本発明の化合物、組成物、及び処方の能力である。
【背景技術】
【0002】
クロランブシル誘導体は、以前、米国特許番号第5,602,278号(‘278特許)に記載されており、開示された全体の内容はこの参照により本明細書に組み込まれる。この‘278特許は、低酸素環境下でのクロランブシルとそのN−オキシド誘導体の使用方法を記載しており、より具体的には、そのような反応性条件を作るヒドララジンとの組み合わせにおけるクロランブシルに関して記載している。しかしながら、低酸素誘導性因子と関連した一連の疾患の治療における腫瘍状態の複雑さとN−オキシド誘導体の価値は、‘278特許では十分に評価されていなかった。
【0003】
多数の人が、この因子が低酸素腫瘍細胞に対する選択的な毒性を提供するかどうかを決定するために、クロランブシルのN−オキシド誘導体の研究を行った。いくつかの研究では、この誘導体は低酸素下で選択的な毒にはならないため、クロランブシルのN−オキシドは抗腫瘍因子としては無効であると報告された。他の研究では、クロランブシルのN−オキシドは、クロランブシルの価値を超える低酸素選択性の増強を示さないと報告された。しかしながら、‘278特許はクロランブシルとその転位産物は、低酸素環境を作るヒドララジンとともに投与した場合、効果的であったことを実証した。
【0004】
本発明は、本発明の化合物を含む薬学的な処方に関するものである。前記処方は、そのような化合物の1若しくはそれ以上とともに、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバント、或いは様々な病状を治療するのに有用である別の化合物の1若しくはそれ以上も有するものである。
【0005】
本発明は、そのような化合物の使用を有する治療の方法も含む。前記方法は、その様な化合物とともに、他の治療方法を用いる工程も有するものである。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0006】
本発明の1観点は、N−オキシド及びその誘導体である窒素マスタード化合物に関連するものである。これらの化合物は、以下に記載した一般式を有し、様々な目的に対して用いられる。
【0007】
【化4】
【0008】
ここにおいて、Rはアルキル、アリル、アラルキル、若しくは例えばCH3OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2−、C6H5OCH2CH2−、C6H5CH2−、CH3(CH2)3OCH2CH2CH2−、若しくは以下のいずれか1つ、
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
【化7】
【0012】
などのそれらの誘導体である。
【0013】
本発明は、上記の化合物の塩類にも関するものである。前記塩類は、上記に記載した式を一般的に有し、前記塩類は、HCL、アセテート、TFA、トシレート、若しくはピクリン酸塩のいずれかであり、ここにおいてRは上述したものである。
【0014】
本発明の別の観点としては、HIF、特にHIF−1αを阻害することによる疾患の治療である。本発明の化合物、組成物、若しくは処方で治療される疾患のごくわずかは、血管新生(angiogenesis)若しくは新血管形成(neovascularization)に関連した疾患を含む。治療されるHIFに関連した疾患は、脈絡及び網膜新血管形成、年齢関連性黄斑変性症、関節疾患、炎症、神経変性疾患、及び虚血性再灌流(neperfusion)損傷を含む。
【0015】
本発明の別の観点は、そのような化合物を含む薬学的組成物に関するものである。前記組成物は、そのような化合物の1若しくはそれ以上とともに、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバント、若しくは様々な病状を治療するのに有用な別の化合物の1若しくはそれ以上も有するものである。
【0016】
本発明は、そのような化合物の使用を有する医療方法を含む。前記方法は、そのような化合物の使用とともに、他の医療方法も有するものである。
【0017】
‘278特許は、in vitroとin vivoのクロランブシルのN−オキシド誘導体(CHLN−O)と、クロランブシルのヒドロキシルアミン誘導体のN−オキシド誘導体(CHL−HD)の結果を記載していた。両方の化合物は、低酸素下で酵素の減少を伴ったより大きな毒性を有していた。その様な生物学的活性は、他の報告された結果を考慮しても、それらの分子構造を考慮しても、予想外であった。さらに、CHLN−NとCHL−HDの両方は、安定であり、最小in vivo毒性を生産した。この驚くべきin vitroとin vivo活性と最小in vivo毒性は、図1に示された一般的な式の化合物が低酸素腫瘍細胞を治療するための薬学的な処方に有用であることを示していた。しかしながら、腫瘍の比較的小さな部分は、ある所定時間、低酸素状況下にある。さらに、報告された唯一のin vivoデータは、クロランブシル誘導性4[p−(N−2−クロロエトキシ N−2 クロロエチルアミノ)フェニル]ブタン酸に関連していた。さらに、そこで議論されていたクロランブシル誘導体の、HIF、血管新生、解糖、赤血球新生(enthropoiesis)、アポトーシス、VEGF若しくはHIFに対する影響はほとんど理解されていなかった。
【0018】
低酸素の領域がある固形腫瘍は、最も攻撃的で治療が困難な腫瘍であるとして長く認識されていた。低酸素に対する細胞性反応は、解糖の増加、アポトーシスの阻害、及び血管新生と転移の増加を含み、これは、HIF−1αとHIF−1βサブユニットのヘテロ二量体である、低酸素誘導性因子−1(HIF−1)転写因子を通じて仲介される。HIF−1αのレベルはHIF−1の活性を制御すると示され、ヒト腫瘍の範囲で過剰発現しているので、HIF−1αは化学療法の魅力的な標的である。
【0019】
PX−478(S−2−アミノ−3−[4’−N,N,−bis(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)、若しくはメルファランN−オキシド、及びそれらの誘導体は、HIF−1αタンパク質の低酸素誘導性増加を著しく減少するが、HIF−1βには影響を及ぼさず、HIF−1トランス活性化を阻害し、ヒト乳癌MCF−7細胞とヒト大腸癌HT−29細胞の両方における血管内皮増殖因子(VEGF)と誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)などの下流標的遺伝子の発現を減少する。HIF−1αの分解を制御する活性フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質(pVHL)が欠損している、ヒト腎臓細胞癌(RCC4細胞)、及び活性pVHLが再導入されたRCC4/VHL細胞は、PX−478がpVHL経路非依存的に働くことを示すために使用された。従って、PX−478は、HIF−1経路の第1の特異的な阻害剤の1つであり、HIF阻害因子の有望な新しい種類である。
【0020】
HIF−1は、酸素制御HIF−1α若しくはHIF−2αと、恒常的に発現したHIF−1βとのヘテロ二量体であり、それは解糖、赤血球形成、アポトーシス耐性、及び血管新生促進に関与する広範囲の遺伝子の転写を活性化する。
【0021】
HIF−1の活性は、HIF−1αとHIF−2αサブユニットのレベルで主に制御されているように見える。酸素依存性分解ドメイン(ODD)における特異的プロリン残基(ヒトHIF−1αにおけるPro564及びPro402)がプロリル4−ヒドロキシラーゼ(水酸化酵素)ファミリーによってヒドロキシル化されている場合、正常酸素圧条件下のHIF−1αとHIF−2αのレベルは非常に低く維持されている。これは、フォン・ヒッペル・リンドウ(pVHL)タンパク質がHIF−1αのODDに結合することを可能にし、それはHIF−1αをユビキチン化し、最終的にはそのプロテオソーム分解を生じさせるE3ユビキチンリガーゼを活性化する複合体の補充をもたらすものである。プロリル4−ヒドロキシラーゼは、O2、Fe2+、及び2−オキソグルタル酸若しくはアスコルビン酸に対して絶対条件を示す。従って、低酸素下(<5%酸素)では、プロリルヒドロキシラーゼは阻害され、HIF−1αタンパク質のレベルは増加し、恒常的に発現したHIF−1βサブユニットを結合し複合体を形成し、次にHIF−1応答性遺伝子のプロモーター領域中の低酸素反応性因子(HRE)DNA配列に結合し、それらの転写を活性化する。
【0022】
腫瘍抑制因子p53を含む他の経路でもHIF−1α分解を制御し、この腫瘍因子p53はHIF−1αに結合し、別のE3ユビキチンリガーゼであるMDM2の補充による両方のタンパク質の分解を生じる。分子シャペロンである熱ショックタンパク質−90(HSP90)阻害剤ゲルダナマイシン(geldanamycin)は、HIF−1αタンパク質の低酸素誘導性増加を阻害するため、HSP90タンパク質はHIF−1α分解に関わっている可能性がある。
【0023】
とりわけ、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子2、インターロイキン1β、腫瘍壊死因子α、トランスフォーミング成長因子β1、及び血小板由来成長因子を含む増殖因子及びサイトカインは、正常酸素圧条件下でHIF−1αのレベルを安定化及び増加することができる。これらの因子は、正確なメカニズムはまだ明らかではないが、例えばマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)やフォスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)/Akt経路などの共通の細胞キナーゼ経路を介してHIF−1αを安定化する。さらに、タンパク質安定化のみでは正常酸素圧条件下でHIF−1を活性化するためには不十分である。完全な活性化は、(PI3K/AKT経路を介した)翻訳後タンパク質リン酸化、HSP90によって仲介される核輸送、HIF−1βとの二量体化、DNA結合、及び例えばCreb結合タンパク質(CBP)/p300(ヒトHIF−1αのAsn803上のアスパラギニルヒドロキシル化によって仲介される)、SRC−1及びTIF2などの転写性補助因子(co−factor)の補充、を必要とする。HIF−1αとpVHLと相互作用する転写リプレッサーであるFIH(HIF−1阻害因子)も最近記載されていた。しかしながら、転写後タンパク質リン酸化と活性化は、HIF−1αが安定化され、細胞内で適切なレベルを達成した場合にのみ生じることができる。多くの研究により、レドックス依存性過程がHIF−1複合体の安定化と活性化の両方に関連していることが示唆された。我々は最近、小レドックスタンパク質チオレドキシン−1が、HIF−1αタンパク質レベルを増加し、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生の増加、さらには血管新生の増加を導くことを報告した。レドックス不活性変異チオレドキシン−1は、HIF−1αタンパク質、VEGF、及び血管新生を減少した。さらに文献1を通じて、因子−1(文献1)がSRC−1、TIF2及びCBP/p300の補充を増強したと示され、減少したチオレドキシンは低酸素細胞の核へ転座し、HIF−1αへのレドックスシグナルを伝達するというモデルが提案された。
【0024】
HIF−1αタンパク質は、広範囲にわたるヒト原発性腫瘍に見られるが、正常組織においては非常に低いレベルである。HIF−1αの癌に対する重要性は、HIF−1αレベルの上昇を導くVHL遺伝子の両対立遺伝子の機能損失と共に、腎臓細胞癌、クロム親和性細胞腫、及び中枢神経系のヘミングリア芽腫(hemingioblastoma)などの腫瘍が高確率で発生することよって示されている。また、散発性腎臓細胞癌のほとんどのケースは、VHL遺伝子機能の早期損失と、HIF−1αレベルの増加と関連している。腎臓癌に由来する無傷VHL遺伝子を細胞へ再導入すると、HIF−1αは正常酸素圧レベルまで回復し、腫瘍形成能が減少する。HIF−1αレベルはまた、変異を有する癌細胞を増加し、若しくはPTENを欠落させる。いくつかの腫瘍で発現したHIF−2αも、マクロファージに関連した骨髄及び腫瘍において見出される。
【0025】
低酸素に対する腫瘍の成長反応の調節におけるHIF−1αの役割に起因して、それは抗腫瘍薬剤の開発において重要な標的となっている。米国特許第5,602,278号には、PX−478(S−2−アミノ−3−[4’−N,N−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)が、低酸素環境下で選択的に活性化される潜在的な因子として記載されている。しかし、4[p−(N−2−クロロエトキシN−2クロロエチルアミノ)フェニル]ブタン酸は、還元性環境(例えば、還元酵素の存在下)において選択的に低酸素細胞を殺すことが示されていた。我々は、還元酵素の非存在下でのその抗腫瘍作用に起因する、HIF−1αに対するPX−478の影響とその下流標的を研究した。我々は、PX−478処理はHIF−1αタンパク質の減少(in vitro及びin vivoの両方)、及びその後に続くHIF−1複合体のトランス活性化を減少し、チオレドキシン還元酵素の阻害を介していると思われる下流標的のレベルの減少を導くことを示した。我々の研究によって、PX−478の活性は、VHL経路から独立していることも示された。これらの研究は、HIFのPX−478阻害が還元酵素を必要としないことを示していた。従って、PX−478は、HIF経路の最初の阻害剤の1つであり、有望な新しい抗腫瘍因子であることを意味している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
方法
細胞培養、及び低酸素処理
MCF−7ヒト乳癌細胞、及びHT−29大腸癌細胞は、the American Tissue Type Collectionから入手した。ヒト腎臓細胞癌RCC4細胞、及び野生型フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)遺伝子を形質移入したRCC4/VHLは、Dr.Peter Ratcliffeから入手した。細胞は、37℃で、湿度95%、空気5%のCO2インキュベーターにおいて、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に10%ウシ胎児血清、1mg/ml G418(RCC4及びRCC4/VHL細胞には適している)を添加した培地で培養した。低酸素にさらすために、培養フラスコを様々な時間、37℃で、5%CO2/74%N2/21%アルゴンを含有する混合ガスと共に湿度チェンバー内でインキュベートした。酸素レベルは、酸素センサー(製品番号:Ox110、Biospherix、レッドフィールド、ニューヨーク州)を用いてガス層において1%に保った。実験の最後で、細胞は氷冷リン酸緩衝液pH7.5(PBS)で2回洗浄した。VEGFレベルを測定するために、各フラスコからの1ml培養液を処理後取り除き、−80℃で貯蔵した。
【0027】
細胞増殖及び生存アッセイ
増殖阻害アッセイは、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)アッセイを用いて以前記載されたように実行した。低酸素条件下での分析のため、プレートを薬剤存在下で1%酸素で16時間インキュベートし、次に20%酸素で72時間の残りの時間、インキュベートした。
【0028】
VEGF ELISA
約107細胞は、200μlの溶解バッファー(150mM NaCl、50mM Trisバッファー(pH7.5)、1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、2μg/ml アプロチニン、2μg/ml ロイペプチン、0.1mM バナジン酸ナトリウム、1% NP40、及び0.2% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))で1時間4℃で溶解した。溶解液は遠心分離(15分、4℃、10,000xg)し、上清を回収した。20μlの一定分量をタンパク質濃度の分析のために除去し、前記溶解液は必要になるまで−80℃で貯蔵した。細胞溶解液中のVEGFは、pg(VEGFタンパク質)/mg(総タンパク質)として表し、回収された培養液中のVEGFは、pg(VEGFタンパク質)/mg(同じフラスコからの細胞中で測定された総細胞タンパク質)で表した。細胞溶解液におけるヒトVEGFと、培養液に分泌されたVEGFの量は、製造元取り扱い説明書に従って、VEGF165及びVEGF121アイソフォームを測定するELISAキット(ヒトVEGF−ELISA;R&D Systems,ミネアポリス、ミネソタ州)を用いて決定した。血しょう中のマウスVEGFの量は、製造元取り扱い説明書に従って、マウスVEGF165及びVEGF121アイソフォームを測定するELISAキット(マウスVEGF−ELISA;R&D Systems)を用いて決定した。
【0029】
免疫ブロッティング法
核及び細胞質抽出物は、製造元取り扱い説明書に従って、NE−PER(登録商標)Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagentsを用いて調整した。ウェスタンブロッティング法は、マウス抗ヒトHIF−1α(1μg/ml);マウス抗ヒトHIF−1β(1μg/ml);マウス抗ヒトiNOS(5μg/ml);及びヤギ抗ヒトlamin A(0.5μg/ml)を用いて、以前記載したように実行した。抗マウス、若しくは抗ヤギ西洋ワサビペルオキシダーゼ−共役二次抗体は1:5000の希釈率で用い、化学発光によって検出され、ブロットはImageQuantソフトウェアを用いて定量した。
【0030】
HIF−1α mRNA測定
Trizol抽出法を用いて調製された15μg総RNAは、1.5%アガロース−ホルムアルデヒドゲルを用いた電気泳動によって分離され、ナイロンメンブレンに転写した。RNAは、Stratalinker UV クロスリンカーを用いてメンブレンにクロスリンク(架橋結合)した。ヒトHIF−1αに対する完全長プローブ(ランダムプライマー標識システム(Random Primers DNA Labeling System)を用いて[α−32P]dCTPでラベルされている)は、ULTRAhyb ハイブリダイゼーションバッファーを用いてメンブレンにハイブリダイズし、製造元プロトコールに従って洗浄工程を行った。ブロットはMD Storm 860ホスフォイメージャーを用いて画像化し、ImageQuantソフトウェアを用いて定量化した。18S rRNAに対する完全長cDNAプローブは、添加対照として用いた。
【0031】
低酸素反応性因子レポーターアッセイ
ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)からの低酸素反応性因子(HRE)を含むpGL3ホタルルシフェラーゼ レポータープラスミドは、Dr.Ian Stratfordより寄贈された。プラスミドDNAは商業用キットを用いて調整した。空pGL3対照プラスミド、及び形質移入(トランスフェクション)効率に対する対象で用いられたプラスミドを含むpRL−CMV ウミシイタケルシフェラーゼは、Promegaから入手した。細胞は、製造元取扱説明書に従って、LipoTAXI mammalian transfection reagent(ほ乳類形質移入試薬:Stratagene、テキサス州)を用いて、5μgのHIF−1レポータープラスミド、若しくはpGL3対照プラスミド、及び0.025μgのpRL−CMV ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(形質移入効率のための対照として)で形質移入した。24時間後、細胞を以前に記載したように低酸素にさらした。ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性は、製造元取扱説明書に従って、Dual−Luciferase Reporter Assay System(デュアルルシフェラーゼレポートアッセイ系)を用いて測定した。
【0032】
免疫染色化学
MFC−7及びMiaPaCa細胞(0.2mlマトリゲル中に107)をscidマウスの横腹に注入した。腫瘍が0.5gに到達した時、マウス(1グループに4匹)を100mg/kg PX−478若しくは溶媒対照を(腹腔内注入によって)処理した。4時間後、1mlの血液を各マウスから採取し、マウスは屠殺し、腫瘍を除去し、4%ホルムアルデヒド/PBSで固定し、パラフィンで包埋した。切片を、自動化免疫染色装置システムを用いてHIF−1α(10μg/ml)若しくはVEGF(7μg/ml)に対する抗体で染色した。HIF−1α染色の強度は、SimplePCIプログラムを用いて測定した。
【0033】
チオレドキシン還元酵素アッセイ
総細胞溶解液は、VEGF ELISAで記載したように調整した。チオレドキシン還元酵素活性は、Berggenら(1999年)が記載したように測定した。簡潔には、0.2mlの一定分量の新鮮アデノシン2’,5’−二リン酸共役アガロースビーズ(ADPアガロース)(Sigma)を、0.2mlの一定分量の上清と1時間、4℃で混合し、内因性チオレドキシンと他の小分子量還元剤を除去した。前記ビーズは次に、2x1mlの、0.1M NaClで1000xgの再遠心分離によって洗浄し、チオレドキシン還元酵素は、0.5mlの1.0M KCLで溶出した。チオレドキシン還元酵素活性は次に、基質として5μM ヒトリコンビナントチオレドキシン、及び最終電子受容体として酸化型インシュリンを用いて、339nmでNADPHの酸化として測定した。活性は、上清タンパク質のミリグラム当たり、1分間に酸化されるナノモルNADPHとして表した。
【0034】
免疫組織化学
ヒト乳癌MCF−7細胞(1マウス当たりマトリゲル中に107細胞)を、エストロゲンペレットを移植されたscidマウスの横腹に皮下的に注入した。腫瘍は0.5gまで成長した。次にマウスの腹腔内に、溶媒単独、若しくは120mg/kg PX−478を入れた。4時間後、腫瘍を切除し、ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。切片は、自動化免疫染色装置システムを用いて、HIF−1α(10μg/mg;Transduction Labs)、若しくはVEGF(7μg/ml)に対する抗体で染色した。染色は、SimplePCI分析ソフトウェアを用いて定量化した。
【0035】
考察
PX−478は低酸素及び正常酸素圧で阻害作用を示す
ヒト乳癌MCF−7細胞及びヒト大腸癌HT−29細胞は、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)条件下、様々な濃度のPX−278で、16時間処理した。次に細胞を薬剤を含まない温かい培地で3回洗浄し、72時間の残りの時間インキュベートした。次にMTTアッセイを行って、増殖阻害作用を決定した。データは、二組ずつ3回の実験から平均±SEで表した。PX−478は、低酸素(1%酸素)及び正常酸素圧(20%酸素)条件下で増殖阻害作用を示し(p=<0.01)、正常酸素圧条件下での増殖阻害作用に対して低酸素条件下の増殖阻害作用の比は、MCF−7で1.25、HT−20細胞で1.2であった。以下の表1は、これらの結果を示している;
【0036】
【表1】
【0037】
PX−478はHIF−1αタンパク質を阻害する
HIF−1αは、低酸素に対する細胞性反応の重要な調節要素である。従って我々は、PX−478のHIF−1αタンパク質レベルに対する影響を検討した。図2Aに示したように、PC−3前立腺癌細胞、MCF−7乳癌細胞、及びHT−29大腸癌細胞をPX−478存在下、低酸素(1%酸素)に16時間さらした。細胞核抽出物を調製し、HIF−1αタンパク質のレベルをウェスタンブロッティング法を用いて測定した。図2に示したように結果は、添加対照としてのlamin Aを含む典型的なウェスタンブロットを示した。図2において、MCF−7ヒト乳癌細胞及びHT−29ヒト大腸癌細胞は、PX−478存在下で正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)で16時間処理した。細胞核抽出物を調製し、HIF−1αとHIF−1βタンパク質のレベルをウェスタンブロッティング法を用いて測定した。ブロットは3回の実験の代表である。Lamin Aは、添加対照として用いた。データは、3回の実験の平均±S.E.で表し、(●)はPC−3前立腺癌細胞、(○)はMFC−7乳癌細胞、及び(▼)はHT−29ヒト大腸癌細胞を示している。図2Aに示されたように、PX−478は、ヒト乳癌細胞MCF−7(図2Aに示した)及びヒト大腸癌細胞HT−29(図2Bに示した)における低酸素(1%酸素)誘導性HIF−1αタンパク質を阻害し、各細胞のIC50値はそれぞれ3.5±2.0、及び17.8±5μMである。HIF−1αタンパク質レベルは、以前に報告されたように、正常酸素圧(20%酸素)下においては非常に低かったので、影響は見られなかった。しかしながら、正常酸素圧において検出可能なレベルのHIF−1αタンパク質を示したヒト膵臓癌PC−3細胞において、IC50値は2.5±1.2μMであった(図示せず)。この細胞株では、低酸素条件下でも同程度のIC50値が得られた(2.1±2.0μM)。
【0038】
図3A及び3Bに示したように、PX−478は、あらゆる細胞株において、HIF−1β(図3A及び3B)若しくはHIF−1α mRNAレベル(図示せず)に対して影響を及ぼさなかった。
【0039】
PX−478は低酸素誘導性HIF−1トランス活性化を阻害する
HIF−1トランス活性化は、PGKからのHREの複数コピーの制御下で、ルシフェラーゼをコンストラクト発現している一過性形質移入細胞によって測定した。図4Aは、MCF−7ヒト乳癌細胞、及び図4Bは、HT−29ヒト大腸癌(B)細胞を図示しており、各細胞は、様々な濃度のPX−478の存在下、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)で16時間処理した。次にHIF−1トランス活性化は、PGKからのHREのいくつかのコピーの制御下で、コンストラクト発現しているホタルルシフェラーゼを用いて測定した。ウミシイタケルシフェラーゼは、形質移入効率の対照として同時形質移入した。データは、3回の実験の平均±SEで表した。*は、同条件下において、未処理対照から有意な変化があったことを示している(p=<0.001)。図4Bで示したように、HT−29細胞は、図4Aに示されたようなMCF−7細胞と比較して、HIF−1のトランス活性化の有意な増加が見られた(MCF−7細胞が10.1±1.9倍に対して、HT−29細胞13.9±1.5倍である)(p=<0.001)。しかしながら、PX−478は、10μM及び25μMのPX−478で16時間処理した後、両方の細胞株における低酸素誘導性のHIF−1トランス活性化を有意に減少した(p=<0.001)。低酸素誘導性トランス活性化の阻害に対するIC50値は、MCF−7細胞では20.5±1.4μM、HT−29細胞では23.1±1.8μMであった。HIF−1トランス活性化は、正常酸素圧下では非常に低く、両細胞株をPX−478で処理しても影響がなかった。
【0040】
PX−478は低酸素誘導性VEGF産生を阻害する
図5A及び5Bにそれぞれ示したように、MCF−7ヒト乳癌細胞及びHT−29ヒト大腸癌細胞を、PX−478存在下で、正常酸素圧(20%酸素:黒符号)若しくは低酸素(1%酸素:白符号)で16時間処理した。次に、丸で表示された細胞溶解液中のVEGFレベル、若しくは三角で表示された培養液中のVEGFレベルをELISAを用いて測定した。データは、3回の実験の平均±SEで表した。*は、同条件下(正常酸素圧、若しくは低酸素)で未処理対照から有意な差があることを示している(p=<0.001)。PX−478は、10μM PX−478で16時間処理した後、MCF−7細胞(図5A)及びHT−29細胞(図5B)の両方における低酸素誘導性VEGFタンパク質レベルを有意に減少した(p=<0.01)。IC50値は、MCF−7細胞及びHT−29細胞において、細胞溶解液中のVEGFに対してはそれぞれ17.1±4.0μM及び13.5±4.0μM、培養液中に分泌されたVEGFに対してはそれぞれ3.8±2.0μM及び11.5±2.5μMであった。培養液中に分泌されたVEGFのレベルは、MCF−7細胞において、10μM PX−478で処理した後、正常酸素圧レベルまで減少した。しかしながら、MCF−7細胞の細胞溶解液中のVEGFレベルだけでなく、HT−29の細胞溶解液と培養液中に分泌されたVEGFレベルは、25μM PX−478で処理した後も正常酸素圧レベルにまで戻らなかった。興味深いことに、PX−478は、両細胞株の正常酸素圧におけるVEGFレベルには影響を及ぼさなかった。
【0041】
HIF−1αタンパク質はPX−478除去後4時間まで阻害され続ける
PX−478で細胞を処理した後、どのくらいの時間でHIF−1αタンパク質が阻害され続けるかを検討するために、図6に示したように、MCF−7細胞をPX−478で16時間処理し、次に薬剤を洗い流し、HIF−1αの回復を測定した。MCF−7ヒト乳癌細胞を16時間低酸素(1%酸素、H)にさらし、次に25μM PX−478に最大4時間まで処理した。細胞核抽出物は表示された時間で調製し、HIF−1αタンパク質のレベルを測定するためにウェスタンブロッティング法を行った。正常酸素圧(20%酸素、N)下で16時間処理した後のHIF−1αタンパク質のレベルも対照として示した。HIF−1αタンパク質レベルは薬剤の除去から4時間以内に処理前レベルにまで回復した。
【0042】
PX−478はHIF−1αタンパク質をin vivoで阻害する
MCF−7細胞をscidマウスの横腹で異種移植片として増殖した。異種移植片が0.3gに到達した時、マウスを溶媒対照若しくは100mg/kg PX−478(図7A及び7Bにそれぞれ図示した)で処理した。4時間後、腫瘍を除去し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋し、HIF−1αタンパク質のレベルを免疫組織化学法を用いて測定した(A及びB)。(C)HIF−1α染色強度は、Simple PCIソフトウェアを用いて定量化した。*は、対照から有意な差があることを示している(p=<0.01)。データは、平均±SEで表した。図7A及び7Bに示したように、scidマウスの横腹で異種移植片として増殖したMCF−7細胞の処理によって、PX−478処理の4時間後、HIF−1αタンパク質のレベルが有意に減少した(p=<0.005)ことが示された。PX−478処理細胞中の局在化における染色残存核、及びHIF−1αのレベルは、図7Cに示された未処理対照と比較してPX−478処理マウスにおいて50%減少していた。
【0043】
PX−478はVHL非依存性経路を介してHIF−1αを阻害する
図8において、ヒト腎臓癌RCC4細胞及びRCC4/VHL細胞を、正常酸素圧(20%酸素)若しくは低酸素(1%酸素)条件下で、様々な濃度のPX−478で16時間処理した。図8Aは、HIF−1αタンパク質レベルを核抽出物中で測定した結果を示している。Lamin Aは添加対照として用いた。図8Bは、PGKからのHREの複数コピーの制御下で、コントラクト発現しているルシフェラーゼを用いてHIF−1トランス活性化を測定した結果を示している。ウミシイタケルシフェラーゼを形質移入効率を正確にするために同時形質移入した。データは、平均±SEで表した。*は、同条件下の未処理サンプルから有意な差があることを示している(p=<0.01)。VHL遺伝子を欠いたヒト腎臓癌細胞(RCC4)、及びVHL遺伝子が置換されているRCC4/VHL細胞は、PX−478によるHIF−1αの阻害メカニズムを検討するために用いた。RCC4細胞は、正常酸素圧下でも高レベルのHIF−1αタンパク質を発現しており、一方、RCC4/VHL細胞は、図8Aに示したように、正常酸素圧下で低レベルのHIF−1αタンパク質を発現していた。PX−478は、正常酸素圧(IC50=5.1±2.0μM)及び低酸素(IC50=16.9±1.9μM)の両方の条件下で、RCC4細胞中のHIF−1αタンパク質を阻害し、これはPX−478がVHL経路に非依存的にHIF−1αを減少することを示唆している。PX−478は、RCC4/VHL細胞中の低酸素誘導性HIF−1αも阻害し、IC50値は18.1±4.0μMであった。
【0044】
図8Bに示したように正常酸素圧、及び低酸素の両方の条件下でRCC4細胞中のHIF−1のトランス活性化も有意に阻害され、IC50値はそれぞれ12.5±2.5μM、及び10.1±1.2μMであり、これはPX−478がVHL経路とは非依存的に働くことを確証するものである。RCC4/VHL細胞は、低酸素誘導性HIF−1トランス活性の阻害に対してIC50値は13.5±1.3μMであったが、MCF−7細胞及びHT−29細胞と同様に、PX−478に対して同様な反応を示した。また、PX−478は、非常に低レベルではあるが、正常酸素圧におけるトランス活性化には影響を及ぼさなかった。
【0045】
PX−478はチオレドキシン還元酵素を阻害する
我々の以前の研究によって、チオレドキシンを介したレドックスシグナル伝達の阻害は、HIF−1αタンパク質レベルを減少し、HIF−1下流標的であるVEGF及びiNOSのレベルの減少を導くHIF−1トランス活性化を減少することが可能であると示された。従って我々は、0若しくは10μM PX−478の存在下で、正常酸素圧(20%酸素、N)若しくは低酸素(1%酸素、H)で16時間さらしたHT−29細胞における、チオレドキシン還元酵素活性に対するPX−478の影響を検討した。細胞を溶解し、チオレドキシン還元酵素活性を測定した。*は、正常酸素条件下の未処理対照から有意な差があることを示している。BLDは以下のアッセイの検出限界を表示している。データは、二組ずつ少なくとも2回の実験から平均±SEで表した。10μM PX−478でのMFC−7細胞の処理は、正常酸素圧においてチオレドキシン還元酵素活性を40%も有意に減少した(p=<0.001)。低酸素でも同程度までチオレドキシン還元酵素活性を有意に減少したが、チオレドキシン還元酵素活性は、低酸素条件下での10μM PX−478での処理の後、アッセイの検出限界以下まで減少した。
【0046】
低酸素誘導性因子−1(HIF−1)は、腫瘍の発展と進行において主要な役割を担っていると言える。理論に縛られることは望まないが、なぜならHIF−1は、有害な環境下で、及び放射線療法や化学療法などに反応して、細胞の生存を可能にするために重要な役割を担っているタンパク質産物をコード化している、40以上の標的遺伝子の発現を調節しているからである。これらは、腫瘍血管新生で必須であるVEGF、腫瘍細胞生存を促進するインシュリン様成長因子2(IGF2)、グルコース輸送体1及び2、及びアルドラーゼA及びC、ヘキソキナーゼ1及び3、ラクターゼ、デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)A及びPGKなどの解糖系酵素をコード化している遺伝子を含む。多くのヒト腫瘍では、腫瘍内低酸素、及び重要な発癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子に影響を及ぼす遺伝的変化を原因としてHIF−1αタンパク質の過剰発現が見られた。また、HIF−1αの過剰発現は、治療の失敗と死亡率に相関している。しかしながら、HIF−1活性の損失は、腫瘍成長、血管新生、及び異種移植片のエネルギー代謝において非常にマイナスの影響を及ぼす。従って、HIF−1の阻害は正常細胞を超えて腫瘍細胞の選択的な死滅を導くことが可能であるので、HIF−1の阻害は癌治療法に対して有望な新規アプローチとなることを意味している。
【0047】
我々は、PX−478が、正常酸素圧条件下でより、低酸素条件下の細胞増殖を有意な程度で阻害することを示した。低酸素は一般的に放射線療法及び化学療法の両方に対して抵抗性を引き起こすので、これは重要な発見である。従って我々は、HIF経路に対するPX−478の影響を検討した。PX−478は、HIF−1αタンパク質を阻害し、その結果HIF−1トランス活性化、及び下流標的遺伝子VEGFの発現の減少を導いた。PX−478はさらに、毒性のない投与量でin vivoにおいてHIF−1αを減少した。興味深いことに、この阻害作用は、HIF−1α安定化を制御しているとして最もよく研究されているVHL経路とは非依存的に生じることが示された。腎臓癌の80%以上がVHLの不活性化変異、若しくはVHLの完全欠損を示しているので、これは重要な発見である。しかしながら、P53腫瘍抑制経路、及びPI3KやMAPK経路を介した腫瘍シグナル伝達を含む多数の他の要素が、HIF−1αタンパク質に影響を及ぼすことが示されていた。
【0048】
興味深いことに、最近のいくつかの研究によって、VHL非依存的な方法によるHIF−1経路の間接的な阻害が報告された。これらは、LY294002を用いたPI3Kの阻害、ゲルダナマイシン(geldanamycin)を用いた分子シャペロンHSP90の阻害、及びPX−12やプレウロチン(pleurotin)によるレドックスシグナル伝達の阻害を含む。実は、チオレドキシン還元酵素活性は、本研究において、HIF−1α阻害とよく相関したPX−478の濃度で著しく減少されることが示された。
【0049】
チオレドキシン還元酵素は、レドックスタンパク質チオレドキシン(Trx−1)のNADPH依存性還元を触媒するセレノシステイン含有フラボタンパク質である。従って、チオレドキシンの活性はチオレドキシン還元酵素に依存している。Trx−1の過剰発現は、活動的な腫瘍成長、アポトーシスの阻害、及び最近の研究よりHIF−1経路を介した血管新生の増加、と連結していた。そのレドックス活性を介して、Trx−1は、例えばアポトーシスシグナル調節キナーゼ−1(ASK−1)、及びプロテインキナーゼC、α、δ、ε、ζなどの酵素の活性を制御しており、DNA結合、及びNF−κB、グルココルチコイド受容体、p53を含む転写因子のトランス活性化活性を増加する。ヒトTrx−1を形質移入したマウスWEHI7.2リンパ腫細胞は免疫不全scidマウスにおいて、ベクターのみを形質移入した細胞を比較して、より素早く増殖し、自発的な薬剤誘導性アポトーシスをあまりしない腫瘍を形成した。レドックス不活性変異Trx−1は、優性阻害(ドミナントネガティブ)として働き、ヒト乳癌MCF−7細胞及びWEHI7.2細胞の増殖を阻害する。多くの癌においてTrx−1発現が増加している。より最近では、増加したTrx−1レベルは、胃癌における減少したアポトーシスと患者の生存率に、及び非小細胞肺癌における減少した患者生存率に相関していた。
【0050】
しかしながら、Trx−1シグナル伝達がHIF−1経路にどのように影響を及ぼすかという正確なメカニズムは、未だ明確ではない。以前の研究では、Trx−1が、二重作用DNA修復エンドヌクレアーゼ及びレドックス制御タンパク質であるレドックス−因子−1(Ref‐1)を介したHIF−1トランス活性と同様に、HIF−1αタンパク質安定性にも影響を及ぼすと示唆された。Trx−1は、Ref−1を直接還元し、転写コアクチベーター複合体Creb結合タンパク質(CBP)/p300の、HIF−1αのC末端トランス活性化ドメインへの結合を促進し、HIF−1トランス活性化の増加を導く。しかしながら、このプロセスの阻害は、少なくとも部分的には説明できたが、本研究で観察されたHIF−1αトランス活性化の阻害に対する、Trx−1の阻害で見られたHIF−1αタンパク質レベルの減少を説明はしていない。
【0051】
最近の研究によって、Trx−1は、腫瘍抑制タンパク質PTENに結合及び阻害し、AKTを介したPI3K経路の活性化を導くことが示された。PI3K/AKT経路は、HIFの安定化及び活性化に関与している、及びPI3K阻害剤LY294002もVHL非依存的な方法でHIF−1αタンパク質を減少する、という発見の観点から、Trx−1は、この経路を介してHIF−1αに影響を及ぼすことが可能である。しかし最近の研究によって、これは細胞タイプ依存性であり、HIF活性化の下流に若しくはパラレルな経路に位置していると示唆された。我々は最近この可能性を検討している。
【0052】
要約すると、我々は、PX−478が、低酸素誘導性HIF−1αタンパク質、HIF−1トランス活性化、及び下流標的VEGFの発現を阻害する新規抗癌因子であることを示した。阻害作用は薬剤除去後4時間まで続いた。PX−478は、VHL非依存的な方法で、恐らくチオレドキシン還元酵素の阻害を介して働く。PX−478はin vivoでHIF−1αタンパク質も減少した。従って、PX−478は正常細胞を超えてがん細胞の選択的な死滅を導く可能性がある有望な抗癌因子であることを意味している。
【0053】
最近、いくつかの薬剤はHIF−1複合体を間接的に阻害することが報告された。上述したように、HSP90阻害剤ゲルダナマイシンは、pVHL非依存性メカニズムによってHIF−1αタンパク質を阻害することが報告された。高処理スクリーニングアプローチを用いて、多くのカンプトテシン類縁体が、HIF−1αタンパク質とトランス活性化の阻害剤として同定された。しかし、これらの化合物が、特異的なHIF−1阻害剤というよりはむしろトポイソメラーゼI阻害を介した一般的な転写を単純に阻害するかどうかは明らかではない。DX−2−1(カルボマイシン誘導体)も、同じスクリーニングを用いて同定されたが、HIF−1を加えた多数の転写因子に影響を及ぼすと知られている。我々は、HIF−1αタンパク質、HIF−1トランス活性化、及びin vitroでの低酸素誘導性VEGF産生とin vivoでの低酸素誘導性HIF−1αタンパク質産生の阻害剤として、チオレドキシン−1レドックスシステムの2つの阻害剤であるPX−12及びプレウロチン(pleurotin)も同定した。
【0054】
PX−478は、Panc−1ヒト膵臓癌(図10に示した)、MCF−7ヒト乳癌細胞(図11に示した)、ヒト前立腺癌(図12に示した)、及びHT−29大腸癌細胞(図13に示した)に対して影響を及ぼした。
【0055】
図14は、HT−29腫瘍異種移植片HIF−1αに対するPX−478の影響を説明したものである。
【0056】
図15は、血漿VEGFレベルに対するPX−478の影響を説明したものである。
本発明は、このような化合物を含む薬学的組成物にも関するものである。前記組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、水溶液、アジュバンド、若しくは治療を必要とする患者を治療するために有用である別の化合物の1若しくはそれ以上と共に、このような化合物の1若しくはそれ以上を有するものである。適切な組成物は、静脈内注入として投与された前記化合物の1若しくはそれ以上を含む緩衝溶液も含む。本発明は、このような化合物の使用を有する医学的な治療方法を含む。前記方法は、放射線療法若しくは化学療法などの、特定な疾患を治療するために有用な他の治療方法と共にこのような化合物を用いる工程も有している。
【0057】
好ましい実施例を詳細に記載したが、添付した特許請求の範囲の本質若しくは範囲から逸脱することなく、様々な変更がこれらの実施例に対してなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下に続く図面の簡単な説明と本発明の詳細な説明によって、本発明の様々な観点と用途が当業者に明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明による化合物を図示したものである。
【図1A】図1Aは、PX−478 N−オキシド及びPX−478 N−オキシド塩酸塩の化学構造を図示したものである。
【図2】図2は、HIF−1αタンパク質レベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図3】図3は、HIF−1α及びHIF−1βタンパク質レベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図4A】図4は、HIF−1トランス活性化に対するPX−478の影響を図示したものであり、図4Aは、MC−7ヒト乳癌におけるHIF−1トランス活性化を図示したものである。
【図4B】図4は、HIF−1トランス活性化に対するPX−478の影響を図示したものであり、図4Bは、HT−29ヒト大腸癌におけるトランス活性化を図示したものである。
【図5】図5は、VEGFに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図6】図6は、阻害後のHIF−1αタンパク質の回復を図示したものである。
【図7】図7は、in vivoにおけるPX−478の影響を図示したものである。
【図8A】図8は、PX−478の影響に対するVHLの影響を図示したものであり、図8Aは、核抽出物におけるHIF−1αタンパク質レベルを図示したものである。
【図8B】図8は、PX−478の影響に対するVHLの影響を図示したものであり、図8Bは、PGKからのHREの複数コピーの制御下でのHIF−1トランス活性化を図示したものである。
【図9】図9は、チオレドキシン還元酵素に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図10】図10は、Panc−1ヒト膵臓癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図11】図11は、MCF−7ヒト乳癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図12】図12は、PC−3ヒト前立腺癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図13】図13は、HT−29大腸癌に対するPX−478の影響を図示したものである。
【図14】図14は、HT−29腫瘍異種移植片のHIF−1αに対するPX−478の影響を図示したものである。
【図15】図15は、血漿VEGFレベルに対するPX−478の影響を図示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式を有する化合物、及び薬学的に許容可能な担体若しくは希釈剤を有する薬学的組成物であって、前記化合物は:
【化1】
であり;
ここで、
Rはアルキル、アリル、若しくはそれらの誘導体である化合物、若しくは、
【化2】
のいずれかである、薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1の薬学的組成物において、
前記化合物は、化学式
【化3】
を有するものである。
【請求項3】
別の医薬品に加えた請求項1若しくは2の薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2の薬学的組成物において、
前記化合物は、名称(S−2−アミノ−3−[4’−N,N,−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)である。
【請求項5】
HIF−1αを阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項6】
血管新生増殖を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項7】
VEGF形成を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項8】
腫瘍形成を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項9】
正常酸素圧若しくは低酸素条件下で細胞を治療するための薬物の製造用の請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項1】
以下の化学式を有する化合物、及び薬学的に許容可能な担体若しくは希釈剤を有する薬学的組成物であって、前記化合物は:
【化1】
であり;
ここで、
Rはアルキル、アリル、若しくはそれらの誘導体である化合物、若しくは、
【化2】
のいずれかである、薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1の薬学的組成物において、
前記化合物は、化学式
【化3】
を有するものである。
【請求項3】
別の医薬品に加えた請求項1若しくは2の薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2の薬学的組成物において、
前記化合物は、名称(S−2−アミノ−3−[4’−N,N,−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシドジヒドロクロライド)である。
【請求項5】
HIF−1αを阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項6】
血管新生増殖を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項7】
VEGF形成を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項8】
腫瘍形成を阻害するための薬物を製造するための請求項1若しくは2の化合物の使用。
【請求項9】
正常酸素圧若しくは低酸素条件下で細胞を治療するための薬物の製造用の請求項1若しくは2の化合物の使用。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2006−508124(P2006−508124A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551738(P2004−551738)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035226
【国際公開番号】WO2004/043359
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505165033)プロルックス ファーマシューティカルズ コーポレーション (1)
【出願人】(505167532)アリゾナ ボード オブ リージェンツ、アクティング オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035226
【国際公開番号】WO2004/043359
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505165033)プロルックス ファーマシューティカルズ コーポレーション (1)
【出願人】(505167532)アリゾナ ボード オブ リージェンツ、アクティング オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (2)
【Fターム(参考)】
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