説明

低VOCシラノール添加剤およびその製造方法

繊維セメント適用においてセルロース繊維を処理するなど、広範囲のシラン処理操作のための低VOCシラノール添加剤を提供する。シラノール添加剤は、触媒存在下、シランを加水分解することにより作製してから、加水分解反応により遊離されるアルコールなどのVOCを実質的に全て除去して、低VOCおよび/または実質的にアルコールを含まないシラノール添加剤を生成することにより作製する。低VOCシラノール添加剤は、製造施設においてVOC放出を増加させることなく、種々の工業的プロセスに使用できる。該シラノール添加剤は、従来の多くのシラン処理プロセスにおいてシランを加水分解するために必要とされる反応時間をなくすために、処理表面に直接適用することができる。該シラノール添加剤を、処理基材を含有する溶液に添加するか、または表面処理として直接適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にシラン処理操作に関し、詳しくは種々の工業用用途で使用される低VOCシラノール添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シランは一般に、ある所望の性質を材料に付与するために、種々の材料に対する処理剤として使用されている。シラン化合物は、広範囲にわたってカップリング剤として使用されており、有機ポリマーとガラスまたは金属などの無機基材との間の接着を増強させる。シランはまた、強化ポリマー系に使用されるシリカなどの無機添加剤の表面を処理するために使用される。シランの他の商業用途としては、繊維用抗菌処理剤として織物産業、表面化学、インク調合剤、およびシリコーンゴムの製造における使用が挙げられる。シランはまた、コーティングガラス繊維およびガラス表面または架橋ポリエチレンパイプに使用されており、ポリマーの耐高温性および耐化学薬品性を改善させる。参照として本明細書に組み込む米国特許第6,676,745号に記載されているように、ある種の形態のシランはまた、繊維の耐水性を増加させるためにセルロース繊維のサイズ剤として使用できる。
【0003】
多くのこれらの適用において、シランの加水分解は、シランと種々の材料との間で相互作用を生じるのに必要とされることが一般に認められている。典型的なシラン処理プロセスにおいて、シランを混合物に添加し、加水分解して、1以上のSi−OH基を含有する化合物であるシラノールを形成する。このシラノールは、処理表面に直接結合するか、または自己縮合反応させてシロキサン(Si−O−Si)結合を含有する化合物を得ることができる。しかしながら、シラン加水分解プロセスは、シランの低反応性のため緩慢となることがあり、加水分解されるシランの量は、種々の処理条件により影響を受けることがある。さらに、シラン加水分解反応は、典型的にアルコールなどの1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を遊離するので、現場の適切な放出管理を必要とする。その結果、大規模な工業的シラン処理プロセスの効率と有効性は、主としてシラン加水分解時にシラノールが形成される量および割合が変化すること、VOC副産物の過剰な放出が懸念されることによって最適とはならないことが多い。
【0004】
シランがセルロース繊維用サイズ剤として繊維スラリーに添加されるある種の製造適用において、大量のシランが加水分解されず、十分迅速にセルロース繊維と反応できず、機械流出液中に未反応シランを損失することとなり、その処理プロセスの効率を減少させる。さらにシランを工業規模の水溶液と混合する場合、大量のVOC副産物がシランの加水分解中に遊離し、このような副産物の放出は現場で適切に管理する必要があり、そのためシラン処理プロセスが複雑になり、費用がかかる。
【0005】
前述のことから、種々の工業適用に関してより効率的で有効かつ環境にやさしい大規模シラン処理プロセスの必要性があることがわかる。最後に、シランからシラノールの形成により生じるVOC副産物の管理と取扱いにおいて、より効率的でコスト効果の高い方法が特に必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明の好ましい実施形態は、低VOC含量を有するシラノール添加剤を製造する方法を提供する。この方法は、シラン含有化合物および触媒を用意すること;予め決められた量のシラン含有化合物および触媒の各々を混合容器に移すこと;混合容器中で、シラン含有化合物および触媒を水と混合すること;予め決められた処理条件下で、触媒を用いてシラン含有化合物を加水分解することにより、シラノールおよび1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む混合物を形成すること、低VOCシラノール添加剤を形成するように該溶液から少なくとも相当部分のVOCを除去することを含む。一実施形態において、この方法は、該シラノール添加剤を容器に移すことをさらに含む。
【0007】
一実施形態において、低VOCシラノール添加剤は約90重量%以上のシラノールを含む。別の実施形態において、混合物のVOCの少なくとも相当部分の除去は、混合物中のVOCの約50重量%以上を除去することを含む。除去されるVOCは、アルコール、アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。一実施形態において、除去されるVOCは、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、それらの知られた異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、ワイプ膜分離器が混合物からVOCを除去するのに用いられる。混合物は、約1 lb/分以上の流速で、また減圧下で約40〜60℃の温度でワイプ膜分離器に導入され、また該分離器は約0.5m〜10mの表面積を有することが好ましい。除去されたVOCは、現場外の廃棄用廃棄物容器に入れることが好ましい。
【0008】
ある実施形態において、シラン含有化合物は、n−オクチルエトキシシラン、n−オクチルメトキシシラン、シラン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、ハロゲン化オルガノシラン、カルボキシル化オルガノシラン、エポキシアルコキシシラン、シリコーンエマルジョン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、触媒は、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、加水分解反応時間が、触媒を用いない同じ加水分解反応の反応時間の約5分の1になるように、触媒はシランの加水分解を促進させる。別の実施形態において、シラン含有化合物中のシランの約5%以下が、混合物中で加水分解されないままであるように、触媒はシランの加水分解を促進させる。さらに別の実施形態において、シラン含有化合物および触媒の供給は、別々のバルク保存容器内で該化合物および触媒を回分することを含む。さらに別の実施形態において、個々の保存容器から混合容器にシラン含有化合物および触媒を直接移すことができるように、シラン含有化合物および触媒のための保存容器を、混合容器とラインで接続する。混合容器に移される、予め決められた量のシラン含有化合物は、混合容器中のシラン含有化合物、触媒および水の全重量の約0.1重量%〜75重量%であることが好ましい。混合容器に移される、予め決められた量の触媒が、混合容器中のシラン含有化合物、触媒および水の全重量の約0.01重量%〜20重量%であることが好ましい。
【0009】
ある実施形態において、この方法は、基材を処理するプロセスなど、低VOCシラノール添加剤を処理プロセスに加えることをさらに含む。一実施形態において、低VOCシラノール溶液は、繊維セメント製造、織物製造、印画紙製造、ビルディング製品製造、インク製造、鉱物材料加工および改質、並びに感圧テープ接着剤製造からなる群から選択される製造プロセスにおける添加剤として使用できる。低VOCシラノール添加剤は、繊維の疎水性を増加させるためにセルロース繊維を処理するプロセスに添加できる。したがって、低VOCシラノール添加剤は、限定はしないが、布、織物、製紙、板紙、木材、木材複合材料、およびセルロース含有セメント系複合体など、セルロース含有材料に対するサイズ剤または疎水性剤としての有用性があると思われる。低VOCシラノール添加剤を、無機基材処理プロセスに加えて、基材をさらに疎水性にするために基材の外面および/または内面(例えば、空隙または細孔)などの基材の1以上の特性を改質できる。低VOCシラノール添加剤はまた、抗菌剤を繊維に適用するために織物繊維を処理するプロセスに加えることができる。低VOCシラノール添加剤を、感圧接着剤を製造するプロセスに加えることができる。低VOCシラノール添加剤はまた、繊維を処理するための繊維セメントスラリーおよび該スラリー中のセメントおよび粉砕シリカなどの他の成分に加えて、繊維セメント物品をさらに耐水性にすることができる。
【0010】
別の態様において、本発明の好ましい実施形態は、低VOC含量を有するシラノール溶液を製造する方法を提供する。この方法は、シラン含有化合物および触媒を用意すること;予め決められた量のシラン含有化合物および触媒の各々を混合タンクに移すこと;機械的ミキサーを用いて混合タンク中で、シラン含有化合物および触媒を水と一緒に混合させること;触媒を用いてシラン含有化合物を加水分解することにより、シラノールおよび1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む混合物を形成することを含む。混合物は、約1ガロン以上の容量を有することが好ましい。この方法は、更に低VOCシラノール溶液を形成するために混合物から少なくとも相当部分のVOCを除去すること、および低VOCシラノール溶液を処理プロセスに添加することを含む。一実施形態において、混合タンクは55ガロンタンクである。別の実施形態において、混合物からエタノールを除去するために分離器を用いる。さらに別の実施形態において、シラン含有化合物および触媒は、別々の保存タンクで回分される。シラノールおよびVOCを含む混合物を、予め選択された率で分離器に移すことができるような様式で、混合タンクが分離器と相互連結されることが好ましい。VOCは、分離器により除去され、廃棄用保存容器に保存されることが好ましい。一実施形態において、除去されたVOCを、分離器から廃棄用保存容器に直接移すことができるように、分離器は廃棄用保存容器と流体連絡する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明の好ましい実施形態は、繊維強化セメント複合材料の製造方法を提供する。この方法は、実質的にVOCを含まないシラノール添加剤を供給すること;該シラノール添加剤を、セルロース繊維を含む繊維セメントスラリーに加え、該シラノール添加剤は、繊維の疎水性を増加させる様式で繊維を処理すること;該繊維セメントスラリーを、予め選択された形状およびサイズの繊維セメント製品へ形成すること;繊維セメント製品を硬化させて繊維セメント複合材料を形成すること、を含む。一実施形態において、シラノール添加剤は、セルロース繊維の乾燥重量の約5重量%である。別の態様において、親水性官能基が、セルロース繊維表面上のヒドロキシル基に結合し、疎水性官能基が、それから水を撥水するように、シラノール添加剤中のシラノールは、親水性官能基と疎水性官能基を有する。幾つかの実施形態において、予め選択された形状およびサイズの繊維セメント製品は、ハシェック(Hatschek)プロセスにより形成される。一定の他の実施形態において、繊維セメント製品は、押出しプロセス、成形プロセスまたは鋳造プロセスによって形成される。
【0012】
さらに別の態様において、本発明の好ましい実施形態は、表面の撥水性を増加させるために親水性表面を処理する方法を提供する。この方法は、シラノールを含む溶液を用意すること、およびシラノールが表面上の親水性官能基と反応して、親水性官能基を連合させ疎水性を増した親水性表面を生じるような条件下で、表面に該溶液を適用することを含む。一実施形態において、その親水性表面には、セルロース繊維の表面が含まれる。別の実施形態において、シラノール溶液は、シランと水を反応させてシラノールとエタノールを含む水溶液を形成し、該水溶液から少なくとも相当部分のエタノールを除去することによって用意される。
【0013】
さらに別の態様において、本発明の好ましい実施形態は、約50重量%を超えるシラノールを含む溶液が用意される。一実施形態において、該溶液は、疎水性官能基と親水性官能基とを含有するシラノール化合物を含み、該親水性基は、表面がより疎水性になるように親水性表面に結合して作用する。一実施形態において、該溶液は水溶液である。別の実施形態において、該溶液は、実質的にアルコールを含まない。さらに別の実施形態において、該溶液は、5重量%以下のシランを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、種々の工業適用に使用できる低VOC含量を有するシラノール添加剤を提供する。図1は、好ましい一実施形態の低VOCシラノール添加剤を製造するための好ましいプロセス100を図式的に示すフローチャートである。図1に示されるように、プロセス100は、シラノール添加剤を形成するために必要とされる原材料を用意することを含むステップ110により開始する。一実施形態において、ステップ110は、別々の保存容器内でシラン含有化合物、触媒および水を回分することを含む。ある実施形態においては、シラン含有化合物および触媒を、別のバルク保存用タンクに移す。他の実施形態において、それらは、製造開始時からの元の容器に維持される。
【0015】
シラン含有化合物としては、限定はしないが、n−オクチルエトキシシラン、n−オクチルメトキシシラン、シラン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、ハロゲン化オルガノシラン、カルボキシル化オルガノシラン、エポキシアルコキシシラン、シリコーンエマルジョン、およびそれらの混合物が挙げられる。触媒は、シランと水との間の加水分解反応を触媒できる酸または塩基でよい。触媒としては、限定はしないが、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、および水酸化カルシウムが挙げられる。水は、新鮮な水道水または脱イオン水であることが好ましい。
【0016】
図1に示されるように、プロセス100は、シランと水との間の加水分解反応を実施するためにデザインされて予め決められた処理条件下で、予め決められた量のシラン含有化合物、触媒および水を混合することを含むステップ120に続く。シラノールおよびエタノール、メタノール、または他のアルコールなど、1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む水性混合物を形成するためにシランを加水分解することが好ましい。一実施形態において、反応開始混合物は、約0.1重量%〜75重量%、好ましくは約20重量%〜70重量%、より好ましくは約50重量%のシラン含有化合物;約0.01重量%〜70重量%、好ましくは約0.1重量%〜5重量%、より好ましくは約0.5重量%の触媒;および約25重量%〜90重量%、より好ましくは約50重量%の水を含む。別の実施形態において、シラン含有化合物、触媒および水は、温度が、約20℃から150℃の間、好ましくは約70℃から90℃の間、より好ましくは80℃で;圧が、約10気圧以下、好ましくは約0気圧〜3気圧、より好ましくは約1気圧で;約10〜1,000分間、好ましくは約300〜600分間、より好ましくは約480分間、ブレーズミキサー中で一緒に混合する。
【0017】
図1に示されたプロセス100のステップ130において、ステップ120のシラン加水分解により形成されたVOC副産物を混合物から除去する。VOC副産物としては、限定はしないが、メタノールまたはエタノールなどのアルコールが挙げられる。一実施形態において、VOC副産物は、デカンタ、エバポレータ、蒸留装置、フラッシュエバポレータ、遠心分離器などを用いることにより混合物から除去され、また分離される。一実施形態において、約0.5m〜10mまたはそれ以上の壁面積を有するワイプフィルム分離器が使用される。シラノールおよびVOC副産物を含む混合物は、約1lb/分の流速で、分離器のジャケット温度が約80℃〜180℃である場合、約50℃〜60℃の温度でワイプフィルムエバポレータまたは分離器に導入される。一実施形態において、分離器の壁は、約0.5mの面積を有し、ブレードは、壁から混合物を拭い去るために約20rpmの速度で壁を一定に回転させる。分離器中の反応混合物の滞留時間は、約5秒から60秒であることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、VOC副産物は、エタノールなど、主としてアルコールである。アルコールは、分離機のフィルムから蒸発させ、約50〜300ミリバールの減圧で除去する。反応混合物からの全アルコールの除去は、好ましくは、混合物中に元から存在したアルコールの50重量%を超える量、より好ましくは約90重量%〜99.9重量%である。続いて残りの実質的にアルコールを含まないシラノール溶液を、約0.7lb/分の流速で分離機の底から取り出す。一実施形態において、シラノール溶液は、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約1重量%未満のVOC含量を有する。別の実施形態において、シラノール溶液は、約50重量%を超えるシラノールを有する。
【0019】
さらに図1に示されるように、プロセス100は、保存容器中に実質的にアルコールを含まない、および/または低VOCのシラノール溶液を保存することを含むステップ140に続く。一実施形態において、低VOCシラノール溶液は、バッチ保存用タンクに1週間まで保存できる。別の実施形態において、低VOCシラノール溶液は、より小型の個々の容器に詰められる。ステップ150において、シラノール溶液は、添加剤として種々の製造過程で加えられる。
【0020】
ある実施形態において、低VOC含量を有するシラノール溶液は、シラノールが繊維の疎水性を改善するサイズ剤として作用するセルロース繊維処理プロセスで添加剤として使用される。低VOCシラノール添加剤はまた、セルロース繊維の処理においてヒドロパルパー、未加工ストックチェスト、または精製ストックチェストでの繊維に適用できる。低VOCシラノール添加剤はまた、他の成分と共に回分でき、処理または改変セルロース繊維および他の成分を含むことができる。さらに、低VOCシラノール添加剤はまた、未硬化シート形態でもオートクレーブされてもよい成形繊維セメント製品をコーティングするために使用できる。
【0021】
他のある実施形態において、低VOCおよび/または低アルコール含量を有するシラノール添加剤は、繊維セメント調合剤に加えられる。シラノール添加剤は、好ましくは調合剤中の繊維の約0.05重量%から10重量%の間、より好ましくは約5重量%である。シラノール添加剤は、好ましくは全調合剤の約0.01重量%から2重量%の間、より好ましくは約0.3重量%である。繊維セメント技術において、シラノール添加剤は、限定はしないが、ハシェック、押出し、マッザ(mazza)、鋳造、ツインワイヤ、および長網形成などのプロセスに使用できる。シラノール添加剤は、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、配向性ボード(OSB)、または他の木材複合体などの他の繊維および木材技術における添加剤としても使用できる。シラノール添加剤は、コンクリート、レンガおよび他のビルディング/建築材に関連する調合剤中の添加剤としても使用できる。低VOCシランはまた、限定はしないが、砂、粉砕シリカ、クレイ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、パーライト、火山灰、ボトムアッシュ、フライアッシュ、高炉スラグ、珪藻土、非晶質シリカ、もみ殻灰、ガラス、セラミックスおよびそれらの混合物、またはセメント複合体またはプラスチックにおける充填剤として使用されるのが知られている他のケイ酸塩もしくはアルミノケイ酸塩鉱物など、無機性鉱物原材料を改変するために使用できる。
【0022】
図2は、シラン処理プロセスからVOC放出を実質的に減少させるように、種々の工業的シラン処理操作に使用できる低VOCシラノール添加剤を製造するのに設計されたシステム200を図式的に示している。図2に示されるように、システム200は一般に、シラン化合物を保存するように構成された第1の保存用タンク202、触媒を保存するように構成された第2の保存用タンク204、および水保存用タンクまたは外部水源に直接接続された配管でもよい水源206が含まれる。システム200は、シラン化合物、触媒、水を受け、シランを加水分解するために予め決められた条件下で、これら成分を混合するように構成された混合用タンク208をさらに含む。一実施形態において、機械ミキサー210は、混合プロセスを促進し、制御するために混合タンク208に取り付けられている。好ましくは、混合タンク208は、シラン化合物および触媒を、予め決められた速度および量で混合タンク208に移すことができる導管212でシラン保存用タンク202と触媒保存用タンク204とに流体連絡されている。ある実施形態では、種々のフローメーターおよびバルブが、移動プロセスを促進させ、制御するために導管212に接続されている。
【0023】
また図2に示されているように、システム200は、混合タンク内でシランの加水分解から生じるアルコールなどのVOCを除去し、分離するように構成されている分離器214をさらに含む。分離器214は、混合タンク208、廃棄物処分用タンク216、および製造物保存用タンク218と流体連絡される。一実施形態において、混合タンク208内での加水分解反応が完了したら、シラノールおよびエタノールを含む混合物を分離器214に移す。分離器214は、混合物からエタノールを除去するように設計されている。エタノールを、現場外の廃棄のために廃棄物保存用タンク216に移すことが好ましい。エタノールおよび/または他のVOCは、製造施設でのVOC放出量を実質的に減少させるために密閉容器内で捕捉されることが有利である。生成した低VOCシラノール溶液を、種々の製造プロセスに使用するために分離器214から保存容器218に移す。一定の実施形態において、水源206はまた、水を加えるか、または使用前にシラノール溶液を希釈するために製造物保存用タンク218と流体連絡させることができる。
【0024】
システム200では、低VOCシラノール溶液をバッチで調製し、その後の使用のために保存できると好都合である。装置およびプロセスは、バッチまたは連続プロセスで大容量の低VOCシラノールを製造するために設定されるような製造規模とされる。一実施形態において、シラン保存用タンクは、約55ガロンの容量を有し、触媒保存用タンクは、約1ガロンの容量を有し、混合用タンクは、約50ガロンの容量を有し、廃棄物保存用タンクおよびシラノール製造物用タンクは、それぞれ約55ガロンの容量を有する。シラノール添加剤は、10ガロンから40ガロンの容量の範囲でバッチ内で製造できるが、より大容量の低VOCシラノールは、本明細書に開示されたプロセスを規模アップすることにより製造できる。さらに、除去されたVOCは密閉容器内に捕捉され、これらは、現場外処分され、VOC構成成分(典型的には、アミンまたはエタノール、メタノール、プロピルアルコール、ブタノールまたはそれらの異性体などのアルコール)を再生するために再処理され、または燃料として燃焼される。この様式でのVOC放出の捕捉により、商業規模でのシラン使用による環境への影響を大いに減じ、あるプロセスを地域の大気保全規制に対し良好に適応させることができる。
【0025】
図3は、代表的なシラン加水分解反応300を示しており、一実施形態のシラン化合物302が、酸または塩基触媒306の存在下、水304と反応してシラノール308およびエタノールなどの1種以上のアルコール310を形成する。図3に示されるように、シラン化合物302は、4個から12個の範囲の炭素、好ましくは8個の炭素の炭化水素鎖(R)に結合したシリコン原子を含む。幾つかの実施形態において、炭化水素鎖(R)は、それに結合した1以上の疎水性官能基を有する。シラン化合物はまた、各々が1個から4個の炭素を有する炭素鎖を含む3つの加水分解可能な基(R)を含む。加水分解可能な基は、加水分解され、セルロース繊維上のヒドロキシル基などのように、基材上の親水性基への結合に適する−OHなどの親水性官能基を形成するよう構成される。一実施形態において、長鎖炭素(R)は、一般に疎水性であり、親水性官能基(OH)が基材に一旦結合したら、基材からの水の撥水を補助する。
【0026】
図4は、繊維セメント製品を製造するプロセス400を図式的に示すフローチャートであり、好ましい実施形態の低VOCシラノール添加剤は、製品に加えられたセルロース繊維を処理するために使用され、製品の水透過性を減少させる。図4に示されるように、プロセス400は、繊維に疎水性を付与するためにセルロース繊維を、低VOCシラノール添加剤で処理するステップ410から開始する。シラノールは、−OHなどの親水性官能基が、繊維表面上のヒドロキシル基に直接結合して連結する一方、疎水性官能基が、繊維表面から水を撥水させるような疎水性官能基と親水性官能基とを有することが好ましい。一実施形態において、シラノール添加剤は、該添加剤をスラリーに直接添加することにより繊維セメントスラリー混合物中のセルロース繊維に適用する。シラノール添加剤の用量は変えられる。一実施形態において、この用量は、オーブンで乾燥したセルロース繊維の約0.01重量%から50重量%の範囲以内である。より好ましくは、この用量は繊維重量の約1重量%から10重量%の間である。さらに好ましくは、この用量は繊維重量の約1重量%から5重量%の間である。プロセス400は、シラノール添加剤により処理されたセルロース繊維を含有する混合物を未硬化形状品に形成するステップ420に続く。未硬化の成形品は、ハシェック機、押出しプロセスなどを用いて形成できる。未硬化の成形品は引き続いて、ステップ430において硬化繊維セメント品に形成する。繊維が低VOCシラノール添加剤で処理された繊維セメント品の製造法についてのある実施形態は、マークレイの米国特許第6,676,745号に開示されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0027】
表1は、シラノール添加剤もしくは従来のシランで処理された繊維、または未処理の繊維が加えられている繊維セメント品の所定の物性の比較を示している。表1に示されるように、シラノール添加剤もしくはシランで処理された繊維セメント品は、処理していない繊維が加えられた同じ製品と比較して、水透過性、ウィッキング、および水分移動の有意な減少を示す。また、シラノール処理繊維が加えられたサンプルは、シラン処理繊維が加えられた同じ繊維セメント品と比較して、より大きな凍結融解MOE保持率を示すことが表1に示されている。
【0028】
【表1】



【0029】
シランは、種々の表面処理適用のための添加剤として通常使用されている。シラン処理プロセスは一般に、水中でシランを加水分解して、1以上のSi−OH基を含有する化合物であるシラノールを形成することを含む。シラン加水分解反応は、副産物としてエタノールなどのVOCを遊離することが知られている。シラン処理プロセスからのVOC放出は、一般的な環境懸念事項であり、適切に制御し、管理しなければならない。典型的には、現場でのVOCを適切に処分するためのシラン処理操作には、特別な認可と装置を得なければならない。本発明の好ましい実施形態は、VOC放出が製造現場での懸念事項でなくなるように種々の工業的シラン処理プロセスに使用できる低VOCシラノール添加剤を提供する。さらに、従来のシラン処理プロセスにおいては、シランを溶液に添加し、加水分解してから、基材表面と反応させる。シラン加水分解は比較的反応速度が遅いことから、大量のシランがしばしば未反応のままであり、不良な製造効率およびロスを生じる。これは、ハシェックプロセスまたはフォードリニア(Fourdrinier)プロセスなどのスラリー脱水プロセスを用いて製造されるセルロース繊維を含有する繊維セメント製品または他の複合体の製造において特に問題となる。好ましい実施形態のシラノール添加剤を水性スラリーに添加して、スラリー中の有機および無機充填剤、繊維、セメント、または他の材料と直接反応させることができると有利である。これは、シラン加水分解反応が既に完了したシラン処理プロセスをスピードアップし、その効率を改善する。
【0030】
上記のシラノール添加剤および製造方法の好ましい実施形態は、限定はしないが、ビルディング製品、コンクリート、織物、インク、塗料、コーティング剤、製紙、接着剤、パルプおよび製紙繊維、植物繊維、木材、木材複合製品の製造など、広範囲な産業への適用性を有する。上記に示された実施形態は、本発明の一定の好ましい実施形態の例として提供される。当業者により本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変化および変更がここに示された実施形態から可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好ましい一実施形態の低VOCシラノール添加剤を製造するための好ましい方法を図式的に示すフローチャートである。
【図2】図1の低VOCシラノール添加剤を製造するシステムの図解例である。
【図3】代表的なシラン加水分解反応を例示する図式である。
【図4】繊維セメント製品の製造において低VOCシラノール添加剤を加える方法を模式的に示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン含有化合物および触媒を用意すること;
予め決められた量のシラン含有化合物および触媒の各々を混合容器に移すこと;
混合容器中で、シラン含有化合物および触媒を水と混合させること;
予め決められた処理条件下で、触媒を用いてシラン含有化合物を加水分解することにより、シラノールおよび1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む混合物を形成すること;および
低VOCシラノール添加剤を形成するために前記混合物から少なくとも相当部分のVOCを除去すること、を含む低VOC含量を有するシラノール添加剤を製造する方法。
【請求項2】
製造プロセスにおいて低VOCシラノール添加剤を用いることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低VOCシラノール添加剤が、約90重量%以上のシラノールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物から少なくとも相当部分のVOCを除去することが、前記混合物中の約50重量%以上のVOCを除去することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
VOCが、アルコール類、アミン類、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
シラン含有化合物が、n−オクチルエトキシシラン、n−オクチルメトキシシラン、シラン類、アルコキシシラン類、アルキルアルコキシシラン類、ハロゲン化オルガノシラン類、カルボキシル化オルガノシラン類、エポキシアルコキシシラン、シリコーンエマルジョン、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
加水分解の反応時間が触媒を用いない同じ加水分解反応の反応時間の約5分の1になるように、触媒はシランの加水分解を促進させる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シラン含有化合物中のシランの約5%以下が混合物中で加水分解されないままであるように、触媒がシランの加水分解を促進させる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シラン含有化合物および触媒を供給することが、別々のバルク保存容器内で前記化合物および触媒を回分することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物からのVOCの除去が、前記混合物からVOCを除去するために、ワイプ膜分離器を用いることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、約1lb/分以上の流速、減圧下、約40〜60℃の温度でワイプ膜分離器に導入され、前記分離器は約0.5m2〜10m2の表面積を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
繊維セメント製造、パルプおよび製紙製造、織物製造、印画紙製造、ビルディング製品製造、インク製造、鉱物材料加工および改質、並びに感圧接着剤製造からなる群から選択される製造方法における添加剤として低VOCシラノール溶液を用いることをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項14】
混合容器に移される予め決められた量のシラン含有化合物が、混合容器中のシラン含有化合物、触媒および水の全重量の約0.1重量%〜75重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
混合容器に移される予め決められた量の触媒が、混合容器中のシラン含有化合物、触媒および水の全重量の約0.01重量%〜20重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
除去されたVOCを、現場外廃棄、再生利用または燃料としての使用のために廃棄物用容器に入れる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
シラン含有化合物および前記触媒を個々の保存容器から混合容器に直接移すことができるように、シラン含有化合物および触媒のための保存容器と、混合容器とをラインで接続する請求項10に記載の方法。
【請求項18】
シラノールを含む混合物を、VOCの除去のために分離器に直接移すことができるように、混合容器と、分離器とをラインで接続する請求項11に記載の方法。
【請求項19】
低VOCシラノール添加剤をセルロース繊維を処理するプロセスに加えて、繊維の疎水性を増加させる請求項2に記載の方法。
【請求項20】
低VOCシラノール添加剤を無機基材を処理するプロセスに加えて、基材の1以上の性質を改変させる請求項2に記載の方法。
【請求項21】
低VOCシラノール添加剤を、織物繊維を処理するプロセスに加えて繊維に対する疎水性を付与する請求項2に記載の方法。
【請求項22】
低VOCシラノール添加剤を、スラリー中の繊維を処理するために、繊維セメントスラリーに加える請求項2に記載の方法。
【請求項23】
低VOCシラノール添加剤を、接着剤を製造するプロセスに加える請求項1に記載の方法。
【請求項24】
シラン含有化合物および触媒を用意すること;
予め決められた量のシラン含有化合物および触媒の各々を混合タンクに移すこと;
機械的ミキサーを用いて、混合タンク中で、シラン含有化合物および触媒を水と一緒に混合させること;
予め決められた処理条件下で、触媒を用いてシラン含有化合物を加水分解することにより、シラノールおよび1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む混合物を形成し、混合物が約1ガロンを超える容量を有すること;および
低VOCシラノール溶液を形成するために、混合物から少なくとも相当部分のVOCを除去すること、を含む低VOC含量のシラノール溶液を製造する方法。
【請求項25】
前記混合物からの少なくとも相当部分のVOCの除去が、前記混合物からアルコール性VOCを除去するために分離器を用いることを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
シラン含有化合物および触媒を用意することは、別々の保存タンク中で前記化合物および触媒を回分することを含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
シラノールおよびVOCを含む混合物が予め選択された率で分離器に移すことができるように、混合タンクと分離器とを相互連結する請求項27に記載の方法。
【請求項28】
VOCを除去し、廃棄用保存容器中に保存する請求項26に記載の方法。
【請求項29】
除去されたVOCを、前記分離器から前記容器に直接移すことができるように、前記分離器が、前記廃棄用保存容器と流体連絡している請求項29に記載の方法。
【請求項30】
実質的にアルコールを含まないシラノール添加剤を供給すること;
シラノール添加剤をセルロース繊維を含む繊維セメントスラリーに加え、ここでシラノール添加剤は、繊維の疎水性を増加させるように繊維を処理すること;
繊維セメントスラリーを、予め選択された形状およびサイズの繊維セメント製品へ形成すること;
繊維セメント複合材料を形成するために繊維セメント製品を硬化させること、を含む繊維強化セメント複合材料を製造する方法。
【請求項31】
シラノール添加剤が、セルロース繊維の乾燥重量の約0.5重量%から10重量%である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
親水性官能基はセルロース繊維表面上のヒドロキシル基に結合し、疎水性官能基はそれから水を撥水させるように、シラノール添加剤中のシラノールが、親水性官能基および疎水性官能基を有する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
予め選択された形状およびサイズの前記繊維セメント製品が、ハトシェク、フォードリニアー、マッザおよびマグナニからなる群から選択されるスラリー脱水プロセスにより形成される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
予め選択された形状およびサイズの繊維セメント製品を、押出し成形、引抜成形、共押出し成形、射出成形、ロール成形または鋳造成形からなる群から選択されるペースト形状プロセスにより形成する請求項32に記載の方法。
【請求項35】
シラノールを含む予め形成された溶液を用意し、ここで該溶液は約50重量%以上のシラノールを含むこと;
シラノールを表面上の親水性官能基と反応させて、親水性官能基を結合させ、増大した疎水性を有する親水性表面を生じさせるような条件下で、前記溶液を前記表面に適用すること、を含む表面の撥水性を増加させるために親水性表面を処理する方法。
【請求項36】
前記親水性表面が、セルロース繊維の表面を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記親水性表面が、砂、粉砕シリカ、クレイ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、パーライト、火山灰、ボトムアッシュ、フライアッシュ、高炉スラグ、珪藻土、非晶質シリカ、もみ殻灰、ガラス類、セラミックス、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩鉱物、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機材料の表面を含む請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記予め形成された溶液を供給することが、シランと水とを反応させて、シラノールおよびエタノールを含む水溶液を形成し、該水溶液からエタノールの少なくとも相当部分を除去することを含む請求項35に記載の方法。
【請求項39】
約50重量%以上のシラノールを含む溶液であって、該溶液は疎水性基および親水性基を含むシラノール化合物を含み、該親水性基は、表面をより疎水性にするために親水性表面に結合するようにされている溶液。
【請求項40】
水溶液である請求項38に記載の溶液。
【請求項41】
実質的にアルコールを含まない請求項38に記載の溶液。
【請求項42】
約25重量%以下のシランを含む請求項38に記載の溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−505892(P2008−505892A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520285(P2007−520285)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/022295
【国際公開番号】WO2006/016876
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505018256)ジェイムズ ハーディー インターナショナル ファイナンス ベスローテン フェンノートシャップ (11)
【氏名又は名称原語表記】JAMES HARDIE INTERNATIONAL FINANCE B.V.
【Fターム(参考)】