説明

体内のブドウ糖または脂肪酸の代謝に関する高処理量測定のための重水素化ブドウ糖または脂肪の耐性試験

1種または複数の糖および/または脂肪酸の代謝を決定するための方法と、その使用が提供される。そのような使用は、グリコーゲン合成および解糖の速度を決定することを含み、これらの速度は、糖尿病および循環器疾患の上昇した危険性を予測するための早期マーカーであると信じられている。他の使用は、糖および/または脂肪酸代謝に影響を与える薬物のスクリーニングのための方法を含む。方法は、薬物を望ましいまたは望ましくない(有毒な)特性に少なくとも部分的に特徴づけるために有用である。発明の方法を使って少なくとも部分的に特徴づけられた薬物は、前臨床検査および臨床試用においてさらに研究開発が進められる。そのような薬物は、肥満、糖尿病、循環器疾患および他の代謝の障害の治療に有用であることが判明するかもしれない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖および脂肪酸の代謝の分野に関する。特に、ヒト対象を含む生物体における1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定するための方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2002年11月4日に出願された米国仮出願第60/423964号に基づく優先権を主張し、ここにその全体が参照によって組み入れられている。
【0003】
栄養素の使用は、肥満、インシュリン抵抗性/真性糖尿病、高脂血症やその他を含む多くの疾患に重要である。摂取された脂肪を貯蔵する傾向に対する食餌性の脂肪を酸化する能力は、例えば、食餌性脂肪誘発性肥満の罹患性の中心的な決定要因であると考えられている。同様に、食餌性のブドウ糖を貯蔵または酸化する能力は、インシュリン抵抗性およびブドウ糖不耐性/糖尿病において鍵となる要素である。しかしながら、生物体の体内での栄養素の運命を評価するためのツールは、立ち遅れている。現在入手可能なツールには、多くの限界がある。
【0004】
経口耐糖能試験(OGTT)は、医学的研究や臨床医学において組織のインシュリン感受性を評価するために広く使用されている。OGTTの原理は、組織による血液からのブドウ糖の取り込みは、内因的に産生されるブドウ糖の組織から血液への放出の抑制とともに、血流からの外因性ブドウ糖負荷のクリアランス速度に反映されるというものである。しかしながら、このアプローチは不完全であり、投与されたブドウ糖の特異的な代謝的運命または結果については何の情報も得られない。結果として、耐糖能異常の背後にある機構について、何の情報も得られない。OGTTは、実際の臨床で広く使用されてはいるが、有用性の限定されたものである。
【0005】
脂肪耐性試験は、OGTTと同様の基礎および同様の限界を有している。脂肪耐性試験は、組織による血液からの脂肪酸の取り込みを測定する。このアプローチも、不完全であり、投与された脂肪の特異的な代謝的運命または結果について何の情報も与えない。結果として、脂肪耐性異常の背後にある機構について、何の情報も得られない。脂肪耐性試験は、多くの場合、高脂血症を評定する文脈において血液からの食餌性脂肪のクリアランスを評価するために使用されてきた。脂肪耐性試験は、高脂肪誘発性肥満に対する感受性を評価するために役立つものではない。
【0006】
間接的な熱量決定(IC)、または呼吸に基づく燃料酸化の測定は、全身の研究に有用である。しかしながら、ICは、高価であり、小動物研究には複雑な設備が要求される。また、ICは、組織内の個々の燃料の運命に関わるさらなる詳細を明らかにすることなく、全身における燃料の正味の酸化を明らかにするだけである。
【0007】
インシュリン/ブドウ糖クランプおよび他の集中的なアプローチは、その労働集中的な性質のために、実際の臨床や汎用薬物スクリーニング/発見における実際的な有用性が限定されているものである。用いられる手順(例えば、高速での静脈内ブドウ糖注入)は、これらの栄養素の正常な生理学的摂取を模倣していないので、生理的な関連性は不確かなことが多い。
【0008】
最も直接的なアプローチは、同位体の手法を使用することによるものである。しかしながら、これらの手法は非常に問題が多い。13Cまたは14C標識ブドウ糖または脂肪酸の13CO2または14CO2への酸化は、組織酸化のマーカーとして用いられてきた(1-3)。ここに引用した参照文献は、請求の範囲の前の明細書の末尾に掲載した。このアプローチの重大な弱点は以前に議論されている(4)。手短に言えば、標識CO2の回収は、13CO2または14CO2の再使用/交換経路に起因して、非常に変動的で不確実なCO2の組織産生の指標である。組織で酸化的に生成される標識CO2の収率は、20%もの低さになることもあれば、80%もの高さになることもある(1〜4)。
【0009】
心血管疾患の最も一般的な危険因子設定は、個人が肥満、高血圧症、高脂血症およびブドウ糖不耐性または糖尿病の組み合わせを示すいわゆる症候群Xあるいは複数危険因子症候群である(15)。この症候群は、いまや、インシュリン抵抗性によって病理学的に結びつけられていると広く信じられており、ブドウ糖代謝へのインシュリンの効果に対する組織の感受性が標準よりも低いとして定義される(15)。
【0010】
組織インシュリン抵抗性の主要な成因は、インシュリン曝露に応答した骨格筋および脂肪組織のブドウ糖の取り込みおよび代謝の効率および速度が損なわれることにある。組織ブドウ糖代謝の1つの成因は、グリコーゲンの貯蔵であり、組織におけるブドウ糖代謝の主な別経路は、解糖代謝であり、酸化または他の運命へと繋がる(図2と3)。貯蔵(非酸化的)および解糖の(酸化的)経路の両方が、骨格筋のようなインシュリン抵抗性の組織において損なわれる(15)。
【0011】
インシュリン抵抗性症候群は非常に一般的であり、実際、現代の西洋人において最も一般的な医学的な異常であるので、インシュリン抵抗性を診断しモニタリングするための信頼できる臨床検査試験は、長いあいだ非常に高い優先事項であり続けている。様々なコメンテータが、インシュリン抵抗性の臨床マーカーは「現代の糖尿病および循環器疾患の分野における聖杯」であろうと述べている(C. Kahn, M.D., Director of Scientific Sessions,米国糖尿病協会, 2003年10月)。インシュリン抵抗性に対してある臨床検査が使用できることは、患者診療に影響を与えるだけでなく、特異的にインシュリン抵抗性を治療するための薬物を開発することを可能にするであろう。
【0012】
残念ながら、現在の臨床検査試験には、インシュリン抵抗性の信頼できる測定値はない。血清インシュリン濃度は、アッセイごとに非常に変動しやすく、インシュリンに対する組織感受性と同様にインシュリンクリアランスによっても影響される。血中トリグリセリド濃度、空腹時ブドウ糖濃度、経口ブドウ糖耐性、肥満度指数、ウエスト-ヒップ比などのような他の測定値は、臨床的なインシュリン感受性(インシュリン-ブドウ糖クランプ手法などの労働集約的な研究検査で測定されたもの、参照15を参照のこと)との相関に乏しい。
【0013】
したがって、組織による糖代謝、特に、ブドウ糖負荷のグリコーゲン貯蔵および/または解糖、を定量するための手法は、医療や薬物の試験に大きな意味を持つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの要求を満たすために、本発明は、1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定する方法と、診断や試験における当該方法の使用と、1種または複数の糖および脂肪酸の代謝を決定するためのキットを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの形式において、ここに開示された発明は、インシュリン抵抗性の信頼できる測定値を示し、個体における組織インシュリン感受性または抵抗性を明らかにする。ここに開示される方法の使用は、(危険因子介入についての決定のための)患者の診断上の分類や、(チアゾリジンドンやメトホルミンなどの)インシュリン感受性を改善しインシュリン抵抗性を低減することを意図した治療の臨床モニタリングや、(薬物効果の指標または生物マーカーとしての)インシュリン抵抗性を治療するための新しい薬剤の臨床開発を可能にする。
【0016】
1つの変形では、本発明は、個体における1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定する方法であって、(a)1種または複数の2H標識糖または2H標識脂肪酸の1種または複数の組成物を個体に投与することと、(b)1種または複数の体組織または体液を1回または複数回にわたって個体から得ることと、(c)個体における糖または脂肪酸代謝を決定するために2H標識糖または2H標識脂肪酸からの2Hの水への取り込みを検出することとを含む方法に向けられる。
【0017】
もう1つの変形では、1種または複数の組成物は、2H標識ブドウ糖を含む。もう1つの変形では、1種または複数の組成物は、[6,6-2H2]ブドウ糖、[1-2H1]ブドウ糖、[3-2H1]ブドウ糖、[2-2H1]ブドウ糖、[5-2H1]ブドウ糖または[1,2,3,4,5,6-2H7]ブドウ糖を含む。
【0018】
もう1つの変形では、1種または複数の組成物は、経口、経胃管、腹腔内、静脈内、皮下投与される。別の変形では、1種または複数の組成物は、経口的に投与される。
【0019】
もう1つの変形では、個体は哺乳動物である。別の変形では、哺乳動物は、ヒト、齧歯類、霊長類、ハムスター、モルモット、イヌおよびブタから選ばれる。また別の変形では、哺乳動物はヒトである。
【0020】
もう1つの変形では、1種または複数の体組織または体液は、血液、尿、唾液および涙から選ばれる。別の変形では、1種または複数の体組織または体液は、肝臓、筋肉、脂肪、腸、脳および膵臓から選ばれる。
【0021】
さらにもう一つ変形では、水は部分的に精製されていてもよい。別の変形では、水は単離されていてもよい。
【0022】
もう1つの変形では、方法は、ブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAのような化学組成物の1種または複数種への2Hの取り込みを測定する追加のステップを含む。別の変形では、化学組成物はブドウ糖である。また別の変形では、方法は、内因性のブドウ糖産生を測定する追加のステップを含む。もう1つの変形では、方法は、投与された糖に対する組織グリコーゲンに貯蔵された標識ブドウ糖の割合を測定する追加のステップを含む。さらにもう一つ変形では、方法は、解糖を受けている投与2Hブドウ糖の割合を測定する追加のステップを含む。
【0023】
もう1つの変形では、化学組成物はグリコーゲンである。
【0024】
もう1つの変形では、化学組成物はグリセロール-トリグリセリドである。さらにもう一つ変形では、方法は、新たなトリグリセリド合成を計算する追加のステップを含む。
【0025】
もう1つの変形では、化学組成物はトリグリセリド脂肪酸である。他の別の変形では、方法は、新たな脂肪酸合成を計算する追加のステップを含む。
【0026】
もう1つの変形では、方法は、投与された標識脂肪酸に対する組織に貯蔵された標識脂肪酸の割合を計算する追加のステップを含む。別の変形では、方法は、脂肪酸酸化を受けている投与された標識脂肪酸の割合を計算する追加のステップを含む。
【0027】
もう1つの変形では、化学組成物はタンパク質である。
【0028】
さらにもう1つの変形では、化学組成物はDNAである。別の変形では、方法は、DNA合成の速度を計算する追加のステップを含む。
【0029】
もう1つの変形では、個体において糖または脂肪酸代謝を決定する方法は、水への2Hの取り込みの速度を計算することをさらに含む。もう1つの変形では、方法は、ブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAのような化学組成物の1種または複数種への2Hの取り込みの速度を計算することさらに含む。また任意選択で、水形成と化学組成物形成の速度の両方をモニターしてもよい。
【0030】
もう1つの変形では、水は、ガスクロマトグラフィー/質量分析法、液体クロマトグラフィー-質量分析法、ガスクロマトグラフィー-熱分解-同位体比/質量分析法、またはガスクロマトグラフィー-燃焼-同位体比/質量分析法、サイクロイド質量分析法、フーリエ変換-同位体比(IR)-分光法、近IRレーザー分光法、または同位体比質量分析法によって検出してもよい。
【0031】
さらに別の変形では、検出ステップは、水107部中1部の2Hを検出することによって遂行してもよい。
【0032】
もう1つの側面では、本発明は、糖および脂肪酸の代謝を決定するために本発明の方法をさらに使用することを含む。1つの変形では、1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定する前に個体に薬剤を導入し、その後、個体への効果を同定する。もう1つの変形では、代謝決定は、FDAやその他の規制当局の薬物の承認のための代用マーカーとして使用される。さらにもう1つの変形では、代謝決定は、患者の臨床管理のために使用される。また別の変形では、代謝決定は、個体におけるインシュリン抵抗性/真性糖尿病の危険性がある個体を診断、予知または同定することを含む。もう1つの変形では、代謝決定は、高脂肪食誘発性肥満の危険性がある個体を診断または同定することを含む。さらにもう1つの変形では、代謝決定は、インシュリン抵抗性/真性糖尿病または高脂肪食誘発性肥満を防止するまたは後退させるための介入の効果をモニタリングすることを含む。もう1つの変形では、代謝決定は、消耗性障害、低血糖症またはグリコーゲン蓄積症を診断することまたは治療することを含む。
【0033】
本発明はまた、個体の糖または脂肪酸代謝に対する効果を持つものとして同定されかつブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAのような同位体比を変えた分子である薬剤を対象とする。
【0034】
本発明はまた、個体における糖の代謝を決定するためのキットを対象とする。キットは、1種または複数の標識糖と、キットの使用のための説明書とを含んでもよい。キットは、個体における糖代謝を決定するために有用である。キットはさらに、水を単離するための化学化合物をさらに含んでもよい。キットはまた、ブドウ糖、グリコーゲン、タンパク質またはDNAを単離するための化学化合物を含んでもよい。キットはまた、標識ブドウ糖を投与するためのツールを含んでもよい。キットはさらに、個体から試料を採取するための器具を含んでもよい。
【0035】
本発明はさらに、本発明の方法によって効果が少なくとも部分的に同定された薬剤を対象とする。
【0036】
本発明はさらに、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAから選ばれる同位体比を変えた分子を対象とする。
【0037】
本発明はさらに、本発明の方法によって少なくとも部分的に同定される1種または複数の薬剤を製造する方法を対象とする。
【0038】
本発明はさらに、本発明の方法から得られるデータを含む情報格納装置を対象とする。装置は、印刷されたレポートまたはコンピューターであってもよい。印刷されたレポートは、紙、プラスチックまたはマイクロフィッシュに印刷されていてもよい。装置はコンピューターディスクでもよい。コンピューターディスクは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスクおよび磁気ディスクから選ばれてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
2H標識糖および脂肪酸の代謝を決定するための方法をここに説明する。この方法は、医学的診断および生物学的研究の分野において多数の使用法がある。
【0040】
I.一般的な手法
本発明の実施は、他に断りがない限り、従来の手法、すなわち、分子生物学(組換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学、タンパク質動力学および質量分光法の手法を用いるが、これらは当技術分野の技能の範囲内である。そのような手法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版 (Sambrookら、1989年)、Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編、1984年);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編、1998年)、Academic Press;Animal Cell Culture (R.I. Freshney編、1987年);Introduction to Cell and Tissue Culture ( J.P. MatherとP.E. Roberts、1998年)、Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle、J.B. GriffithsおよびD.G. Newell編、1993〜8年)、J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. MillerとM.P. Calos編、1987年);Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubelら編、1987年);PCR: The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994年);Current Protocols in Immunology (J.E. Coliganら編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology
(Wiley and Sons、1999年);およびMass isotopomer distribution analysis at eight years: theoretical, analytic and experimental considerations by Hellerstein and Neese (Am J Physiol 276 (Endocrinol Metab. 39) E1146〜E1162、1999年)などの文献に詳しく説明されている。さらに、他に断りのない限り、商業的に入手可能なアッセイキットおよび試薬を用いた手順は、一般的に製造者規定のプロトコルにしたがって使用する。
【0041】
II.定義
他に定義しない限り、ここに使用されている全ての技術用語、表記法および他の科学的用語法は、この発明が関連する分野の技能を有する者が通常に理解する意味を持つことを意図している。ある場合には、通常に理解されている意味を持つ用語が、明確さのためおよび/または容易な参照のためにここに定義されるが、そのような定義をここに含めることは、当分野において一般に理解されていることとの実質的な差異を表していると必ずしも理解されべきものではない。ここに説明または参照される手法や手順は、一般的によく理解されており、従来の方法論で当業者によって通常に用いられている。例えば、HellersteinとNeeseによるMass isotopomer distribution analysis at eight years: theoretical, analytic and experimental considerations (Am J Physiol 276 (Endocrinol Metab. 39) E1146〜E1162頁、1999年)であり、参照によってここに組み入れられる。必要に応じて、商業的に入手可能なキットおよび試薬の使用を伴う手順は、他に断らない限り、一般に製造者規定のプロトコルおよび/またはパラメータにしたがって実行される。
【0042】
「代謝」は、「代謝的運命」および「代謝的結果」と交換可能に使用され、一般に、糖および脂肪酸の生合成、崩壊、変換、酸化、および/または還元を指す。
【0043】
「同位体」は、同じ数の陽子を有し、それ故に同じ元素であるが、異なる数の中性子を有する原子(例えば、水素(H)対重水素(D))を指す。Dは、当分野で通常に行われるように、2Hとも表す。
【0044】
「同位体分子種」は、CH3NH2、CH3NHDおよびCH2DNH2のように、同一の元素組成を持っているが、同位体的な置換のために構成的および/または立体化学的に異性体である同位体的異性体または種を指す。
【0045】
「アイソトポローグ」は、同一の元素的および化学的組成を持っているが、同位体内容において異なる同位体の同族体または分子種(例えば、上記例においてはCH3NH2とCH3NHD)を指す。アイソトポローグは、それらの同位体的組成によって定義され、従って各アイソトポローグは、単一の厳密な質量を持っているが、単一の構造は持っていないかもしれない。1つのアイソトポローグは、普通は、分子上の同位体の場所が異なる同位体分子種の一群として括られる(例えば、CH3NHDとCH2DNH2は同じアイソトポローグであるが、異なる同位体分子種である)。
【0046】
「質量同位体分子種」は、同位体組成よりもむしろ名目上の質量に基づいて分けた同位体的異性体の一群を指す。質量同位体分子種は、アイソトポローグと違って、異なる同位体的組成の分子を含むこともある(例えば、CH3NHD、13CH3NH2、CH315NH2は、同じ質量同位体分子種のものであるが、異なるアイソトポローグである)。実際上の意味では、質量同位体分子種は、質量分析計では分解できないアイソトポローグの一群である。このことは、四極子質量分析計にとっては、質量同位体分子種が、ある1つの名目上の質量を共有するアイソトポローグの群であることを意味する。すなわち、アイソトポローグであるCH3NH2とCH3NHDは、名目上の質量において異なり、異なる質量同位体分子種として識別されるが、アイソトポローグであるCH3NHD、CH2DNH213CH3NH2およびCH315NH2は、全て同じ名目上の質量のものであり、それ故に同じ質量同位体分子種である。各質量同位体分子種は、従って、典型的には二つ以上のアイソトポローグからなり、二つ以上の厳密な質量を持つ。全ての個々のアイソトポローグは、四極子質量分析計を使って分解できず、そして、より高い質量分解能が得られる質量分析計を使っても分解できないかもしれないので、質量分析データからの計算は、アイソトポローグよりもむしろ質量同位体分子種の存在度に対して行われねばならない。したがって、アイソトポローグと質量同位体分子種との区別は実際の場では有用である。質量が最低の質量同位体分子種をM0として表し、これは、大半の有機物分子では、12C、1H、16O、14Nなどを全て含有する種である。他の質量同位体分子種は、それらの質量によりM0から識別される(M1、M2など)。ある与えられた質量同位体分子種において、その分子内での同位体の場所または位置は、特定されておらず、ばらつくこともある(すなわち、「位置的な同位体分子種」は識別されない)。
【0047】
「質量同位体分子種パターン」は、分子の質量同位体分子種の存在度のヒストグラムを指す。1つの実施形態では、このパターンは、全ての存在度を最も豊富な質量同位体分子種のそれに正規化した相対存在度百分率として表され、最も豊富な同位体分子種は100%であるといわれる。もう1つの実施形態では、確率分析を伴う使用形態が存在度比率または割合であり、すなわち、それぞれの種が全体の存在度に寄与する比率が使用される(下記を参照のこと)。同位体パターンという用語は、質量同位体分子種パターンの代わりに使うこともある。ただし技術的には、前者の用語は、元素における同位体の存在度パターンにのみ適用されるものである。
【0048】
「個体」は、哺乳動物を含みさらにはヒトを含む脊椎動物を指す。
【0049】
「生物学的試料」は、個体から得られる多様な試料を含む。この定義は、血液、および侵襲性が最小または非侵襲性のアプローチ(例えば、蓄尿、採血、針吸引や、他の危険、不快感または困難度が最小の手順)による採取によって個体からアクセス可能な他の生物的由来の液体試料を含む。この定義はまた、試料獲得後に、試薬による処理、可溶化、あるいは、タンパク質やポリヌクレオチドのような成分の濃縮のような、いかなる様式でも操作された試料も含む。「生物学的試料」という用語はまた、血清、血漿、他の生体液あるいは組織試料などの臨床の試料を含み、さらに培養中の細胞、細胞上清および細胞溶解を含む。
【0050】
「生体液」は、尿、血液、血清、羊水、間質液、浮腫液、唾液、涙液、炎症性浸出物、滑液、膿瘍、蓄膿または他の感染液、脳脊髄、汗、肺分泌物(痰)、精液、糞便、胆汁、腸分泌物、結膜液、涙、膣液、便または他の体液を含むが、それらに限定されない。
【0051】
「糖」は、単糖、または単糖残基からなる多糖を指す。単糖の例は、ブドウ糖(D-ブドウ糖とL-ブドウ糖の両方)、マンノース、フルクトースガラクトースや、グルコロン酸、グルコサミンのような糖誘導体を含むが、それらに限定されない。多糖の例は、スクロース、マルトースおよびラクトースのような二糖、およびグリコーゲンのようなより長鎖の糖を含むが、それらに限定されない。
【0052】
「標識糖」は、1つまたは複数の2H同位体を取り込んだ糖を指す。
【0053】
「標識脂肪酸」は、1つまたは複数の2H同位体を取り込んだ脂肪酸を指す。「重水素化水」は、1つまたは複数の2H同位体を取り込んだ水を指す。「標識ブドウ糖」は、1つまたは複数の2H同位体で標識ブドウ糖を指す。標識ブドウ糖あるいは2H標識ブドウ糖の具体例は、[6,6-2H2]ブドウ糖、[1-2H1]ブドウ糖および[1,2,3,4,5,6-2H7]ブドウ糖を含む。
【0054】
「部分的に精製する」は、ある混合物の1種または複数の成分を他の成分から取り除く方法を指す。例えば、「1種または複数のタンパク質またはペプチドを部分的に精製する」は、1種または複数のタンパク質またはペプチドを1種または複数のタンパク質またはペプチドまたは他の化合物の混合物から取り除くことを指す。もう1つの例として、「水を部分的に精製する」は、高分子、高分子の類、または塩のような分子の一または複数を水から取り除くことを指す。
【0055】
「単離する」は、化合物の混合物から1つの化合物を分離することを指す。例えば、「1種または複数のタンパク質またはペプチドを単離する」は、1つのタンパク質またはペプチドを1種または複数のタンパク質またはペプチドまたは他の化合物の混合物から分離することを指す。「水を単離する」は、水からトレースレベルを超える付加的化合物を全て取り除くことを指す。
【0056】
「薬剤」、「医薬品」、「薬理学的薬剤」および「医薬」は、交換可能に使用され、全ての化学的実体物、公知の薬物または療法、承認された薬物または療法、生物学的試剤(例えば、遺伝子配列、ポリまたはモノクローナル抗体、サイトカインおよびホルモン)を指す。薬剤は、例えば、The Merck Index第13版(米国の出版物、Whitehouse Station, N.J., USA)に開示されている全ての化学化合物や組成物を含むが、それらに限定されない。この文献は、その全体がここに参照によって組み入れられる。
【0057】
「同位体比を変えた」は、自然界で最も一般的に見られる分布とは異なる同位分布の元素または分子の明確な取り込みによって生じる元素または分子の状態を指し、自然界には比較的少ない同位体が過剰に(濃縮されて)存在しているかまたは欠乏して(消耗されて)いるかを問わない。
【0058】
薬物の発見および開発の文脈において「少なくとも部分的に同定された」は、ある薬剤について少なくとも1つの臨床関連薬理学的特性が、本発明の方法を1種または複数使用して同定されたことを意味する。この特性は、例えば、疾患過程に寄与する代謝経路を経た分子流速度を増加または減少させること、ある疾患に関連する代謝経路の活性を変える信号伝達経路または細胞表面レセプターを変えること、ある酵素などの活性を阻害することのような、望ましいものでもよい。或いは、薬剤の薬理学的な特性は、例えば、1種または複数の有毒な効果の産出ような、望ましくないものでもよい。当業者によく知られている薬剤の望ましいおよび望ましくない特性は多くあり、それぞれの特性は開発中の特定の薬剤および標的疾患の文脈において考慮される。もちろん、例えば、薬物開発経路において特別に重大な判断点を支持するために十分な数個の特性が同定された(望ましいまたは望ましくないまたはその両方)場合、薬剤が少なくとも部分的にという以上で同定される。そのような重大事項は、in vitroからin vivoへの移行のための前臨床判断、前IND申請する/しないの判断、フェーズIからフェーズIIへの移行、フェーズIIからフェーズIIIへの移行、NDA申請、FDAの販売承認を含むが、それらに限定されない。従って、「少なくとも部分的に」同定されたとは、創薬/薬剤開発過程において薬剤を評価するのに有用な1種または複数の薬理学的特性の同定を含む。薬理学者または医師または他の研究者は、ある薬剤に関して同定された望ましいおよび望ましくない特性の全てまたは一部を評価して、治療指数を確立する。これは、当技術分野でよく知られている手順を使って遂行してもよい。
【0059】
本発明の文脈において「薬剤を製造する」は、薬剤製品を作ることのために使用される当業者によく知られている手段を全て含む。製造工程は、医薬化学合成(すなわち、合成有機化学)、コンビナトリアルケミストリーや、ハイブリドーマモノクローナル抗体産生、組換えDNA技術のような生物工学的方法、および当業者によく知られている他の手法を含むが、それらに限定されない。そのような製品は、治療用途のために販売される最終的な薬剤、治療用途のために販売される組合わせ製品の成分、または最終薬剤製品の開発において使用されるいかなる中間製品であってもよく、組み合わせ製品の一部としてであるか単体製品としてであるかを問わない。
【0060】
「上昇した危険性」は、ここでは「増加した危険性」と交換可能に使用され、測定可能なバックグラウンドレベルを超えた、1種または複数の危険要因の存在または欠如に基づいた症状または疾患を獲得する個体の危険度の増加を意味する。
【0061】
ここで使用されている「危険因子」は、疾患または障害に関連した外部または内部の因子を意味する。危険因子は、直接的であれ間接的であれ、因果関係の側面を反映してもよいが、そのように限定されてはいない。危険因子は、疾患または障害の発生との関連性を持っていてもよく、それに対して予測的(すなわち、疾患のマーカー)であってもよいが、疾患または障害の背後にある病理学の指標であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0062】
III.本発明の方法
体内における糖および脂肪酸のような代謝物の代謝を決定するための非侵襲性の試験は、臨床診断および生物医学的研究のための多大な有用性を持っている。我々はここに、ヒトを含む生物体において糖および脂肪酸の処理経路および代謝的結果の簡易かつ安価で高処理量の測定を可能にする方法を開示する。ここで使用されているように、「代謝」、「代謝的運命」および「代謝的結果」は、交換可能に使用され、一般に、投与時の糖または脂肪酸の生合成、崩壊、変換、酸化および/または還元を指す。試験では、1種または複数の同位体標識糖または標識脂肪酸を個体に投与し、その後に体組織または体液への標識の放出を検出して個体内での1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定することによって糖および脂肪酸の代謝を決定することを行う。1つの実施形態において、試験では、ヒト対象または実験動物への重水素標識ブドウ糖または脂肪酸の投与と、その後の重水素の体内水への放出の測定とを行う。体組織または体液に含有される化学組成物内での標識濃縮の高感受性測定は、このアプローチによる高い感受性と正確性を可能にする。
【0063】
ここに開示される試験は、薬物発見ツール(例えば、組織ブドウ糖または脂肪酸の使用経路を変える薬物および遺伝子を同定するための)として、および薬物のFDA承認のための代用バイオマーカー(例えば、組織のインシュリン感受性または脂肪酸化に影響を与える試剤)として、および患者の臨床管理のための診断的方策として、有用性を持っている。当該方法は、インシュリン抵抗性または真性糖尿病の危険性を診断または同定してもよい。当該方法はまた、食餌誘発性肥満、または食餌誘発性肥満を獲得する危険性を同定することに使用されてもよい。当該方法はさらに、消耗性疾患および障害を診断または治療することに使用されてもよい。さらに、当該方法は、低血糖症または高血糖症を同定することに使用されてもよい。加えて、当該方法は、グリコーゲン貯蔵糖尿病を診断または治療することに使用されてもよい。ブドウ糖(Dブドウ糖)の全消失量と解糖の形成(下述する)とを測定することによって、グリコーゲン合成の速度および/または合成(すなわち、形成)されたグリコーゲンの濃度(すなわち、量)が決定できる。グリコーゲン合成の速度および/または形成されたグリコーゲンの量がわかれば、例えば、臨床医は、グリコーゲン蓄積症の治療においてまたは(例えば、前糖尿病個体において)組織インシュリン感受性を向上させることを意図した薬剤の効力を評価することが可能になる。一方、グリコーゲン合成の速度および/または形成されたグリコーゲンの量がわかれば、臨床医は、グリコーゲン蓄積症をより正確に診断または予知することが可能になる。加えて、グリコーゲン合成の速度および/または形成されたグリコーゲンの量は、II型糖尿病のようなインシュリン抵抗性障害または心血管の疾患を発症する上昇した危険性の早期マーカーとして十分に受け入れられたものである。
【0064】
ここに開示される発明は、OGTTまたは脂肪耐性試験の簡易さに、重水素追跡の精密さ、正確さ、および代謝性特異性を組み合わせている。糖または脂肪酸などの投与された化合物の特異的C-H結合に付いた標識された2Hを分けることによって、生物体における栄養素の特異的な代謝的運命を明らかにすることができ、高処理量で安価な様式にてモニターすることができる。
【0065】
個体における糖または脂肪酸を含有する組成物の代謝を決定する方法
i)標識代謝物の個体への投与
a.糖を含有する組成物
糖を含有する組成物は、単糖、多糖、または単糖または多糖に共有結合的に結合した他の化合物を含んでもよい。
【0066】
2H標識糖は、単糖または単糖残基のポリマーとして個体に投与してもよい。標識単糖は、商業的に容易に得られる(例えば、Cambridge Isotopes、マサチューセッツ州)。
【0067】
2H標識糖を含有する組成物は相対的に低い量を投与する必要がある。量は、ミリグラムのオーダーで、101 mg、102 mg、103 mg、104 mg、105 mgまたは106 mgでよい。2H標識糖の濃縮は、ヒトにおいておよび動物において毒性の形跡が全くない状態で数週間または数ヶ月のあいだ維持される。商業的に入手可能な標識単糖がより低コストであることや、少量を投与すればよいことから、濃縮物の維持が低費用で可能になる。
【0068】
1つの特定の変形では、標識糖はブドウ糖である。図2は、2H標識ブドウ糖の運命を示す。ブドウ糖は、解糖およびクエン酸回路によって代謝される。解糖が、ブドウ糖のC-H結合からほとんどのH原子を放出させ、クエン酸回路を介した酸化が、確実に全てのH原子をH2Oに放出させる。別の変形では、標識ブドウ糖は、[6,6-2H2]ブドウ糖、[1-2H1]ブドウ糖および[1,2,3,4,5,6-2H7]ブドウ糖でもよい。
【0069】
もう1つの変形では、標識糖は、フルクトースまたはガラクトースでもよい。フルクトースは、フルクトース1-ホスフェート経路を介して、そして二次的にヘキソキナーゼによるフルクトース6-ホスフェートへのリン酸化によって代謝される。ガラクトースは、ガラクトース-ブドウ糖相互変換経路を介して代謝される。
【0070】
他のいかなる糖も、開示された方法で使用してもよい。他の単糖は、三炭糖、五炭糖、六炭糖およびさらに高次の単糖を含むが、それらに限定されない。単糖はさらに、アルドースおよびケトースを含むが、それらに限定されない。
【0071】
もう1つの変形では、多糖を含有する組成物を投与してもよい。ポリマーは単糖から形成されてもよい。例えば、多糖である標識グリコーゲンは、ブドウ糖残基から形成される。もう1つの変形では、標識多糖を投与してもよい。別の変形としては、標識糖のモノマーを、スクロース(ブドウ糖α-(1,2)-フルクトース)、ラクトース(ガラクトースβ-(1,4)-ブドウ糖)、マルトース(ブドウ糖α-(1,4)-ブドウ糖)、デンプン(ブドウ糖ポリマー)、または他のポリマーの成分として投与してもよい。
【0072】
もう1つの変形では、標識糖は、経口、経胃管、腹腔内、動脈内および静脈内を含む血管内に、皮下、または他の身体的経路で投与されてもよい。特に、糖は、個体に経口的に、任意選択で食物または飲み物の一部として投与してもよい。「投与する」または「投与」によって、標識糖を個体の表面または内部へ導入するいかなる方法をも意味している。
【0073】
個体は哺乳動物でもよい。1つの実施形態では、個体は実験用哺乳動物でもよい。もう1つの実施形態では、個体は、齧歯類、霊長類、ハムスター、モルモット、イヌまたはブタでもよい。さらにもう1つの実施形態では、個体はヒトでもよい。
【0074】
b.標識脂肪酸
2H標識脂肪酸を含有する化合物の代謝を決定することもこの発明に含まれる。
【0075】
2H標識脂肪酸は、脂肪、または標識脂肪酸を含有する他の化合物として個体に投与してもよい。2H標識脂肪酸は、商業的に容易に得られる。標識脂肪酸は相対的に低い量を投与する必要がある。量は、ミリグラムのオーダーで、101 mg、102 mg、103 mg、104 mg、105 mgまたは106 mgでよい。脂肪酸濃縮、特に2Hによるものは、ヒトにおいておよび動物において毒性の形跡が全くない状態で数週間または数ヶ月のあいだ維持される。商業的に入手可能な標識脂肪酸がより低コストであることや、少量を投与すればよいことから、濃縮物の維持が低費用で可能になる。
【0076】
図1は、細胞内において脂肪酸のβ酸化(代謝)の間の2H標識脂肪酸の運命を示す。β-酸化は、水素原子を脂肪のC-H結合から体のH2Oへ放出させる。β酸化中に全てのH原子が2H脂肪酸から放出され、一旦β酸化が脂肪酸に対して始まると、過程は完了まで行われる。標識脂肪酸、特に2H脂肪酸の標識水、特に2H2Oへの放出は、正確に脂肪酸化を反映する。標識脂肪酸の適度な量の投与は、標識水素または酸素の水への放出を測定するのに十分である。特に、2H脂肪酸の適度な量の投与は、重水素化水(すなわち、2H2O)への2Hの放出を測定するのに十分である。
【0077】
標識脂肪酸または脂肪酸残基は相対的に低い量を投与する必要がある。量は、ミリグラムのオーダーで、101 mg、102 mg、103 mg、104 mg、105 mgまたは106 mgでよい。2H標識脂肪酸濃縮は、ヒトにおいておよび動物において毒性の形跡が全くない状態で数週間または数ヶ月のあいだ維持される。商業的に入手可能な標識脂肪酸および脂肪酸残基がより低費用であることや、少量を投与すればよいことから、濃縮物の維持が低費用で可能になる。
【0078】
もう1つの変形では、標識脂肪酸は、経口的に、または胃管栄養法によって、または腹腔内的に、または動脈内的および静脈内的を含む血管内的に、または皮下的に、または他の身体的ルートで投与されてもよい。特に、標識脂肪酸は、個体に経口的に、任意選択で食物または飲み物の一部として投与してもよい。「投与する」または「投与」によって、標識脂肪酸を個体の表面または内部へ導入するいかなる方法をも意味している。
【0079】
個体は哺乳動物でもよい。1つの実施形態では、個体は実験用哺乳動物でもよい。もう1つの実施形態では、個体は、齧歯類、霊長類、ハムスター、モルモット、イヌまたはブタでもよい。さらにもう1つの実施形態では、個体はヒトでもよい。
【0080】
(ii)前記個体から1種または複数の体組織または体液の取得
生物学的試料は、個体の体組織または体液から得る。生物学的試料を得る具体的方法は、当分野においてよく知られている。体液は、尿、血液、血清、羊水、髄液、結膜液、唾液、涙、膣液、便、糞便、精液および汗を含むが、それらに限定されない。液は、当分野において知られている標準的な医学的手順によって単離されてもよい。身体的な組織は、肝臓、筋肉、脂肪、腸、脳および膵臓を含むが、それらに限定されない。
【0081】
1つの変形では、水は部分的に精製されていてもよい。もう1つの変形では、水は単離されていてもよい。
【0082】
もう1つの変形では、1種または複数の体組織または体液は、ある期間の後に得てもよい。別の変形では、1種または複数の体組織または体液は、複数回にわたって得てもよい。
【0083】
iii)2Hの水への取り込みを検出する
a.質量分析法
同位体標識、または代替として、標識化学組成物は、質量分析法、特にガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)のような多様な方法で決定してもよい。標識同位体の化学組成物への取り込みは、直接的に測定してもよい。或いは、標識同位体の取り込みは、化学組成物の1種または複数の加水分解または分解産物への標識同位体の取り込みを測定することによって決定してもよい。加水分解または分解産物は、任意選択で、先に説明したように、いかなる知られている分離方法による部分的な精製または単離の後で測定してもよい。
【0084】
質量分析計は、試料の成分を高速移動気体状イオンに変換し、それらを質量電荷比に基づいて分離する。イオンまたはイオン断片の同位体またはアイソトポローグの分布は、このように、1種または複数の化学組成物、または化学物質、または生化学的分解産物における同位体濃縮を測定することに使用してもよい。
【0085】
一般に、質量分析計は、イオン化手段と質量アナライザーとを含む。いくつかの異なる型式の質量アナライザーが当分野において知られている。これらは、扇形磁場アナライザー、静電気アナライザー、四極子計、イオントラップ、飛行時間質量アナライザー、フーリエ変換アナライザーを含むが、それらに限定されない。加えて、二つ以上の質量アナライザーを連結して(MS/MS)、まず前駆体イオンを分離し、それから気相断片イオンを分離し測定してもよい。
【0086】
質量分析計はまた、いくつかの異なるイオン化方法を含んでもよい。これらは、電子インパクト、化学イオン化および電界イオン化のような気相イオン化源や、電界脱離、高速原子衝撃、マトリックス補助レーザー脱離/イオン化および表面増強レーザー脱離/イオン化のような脱離源を含むが、それらに限定されない。
【0087】
加えて、質量分析計は、ガスクロマトグラフィー(GC)および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のような分離手段に連結してもよい。ガスクロマトグラフィー質量分光決定(GC/MS)において、ガスクロマトグラフからのキャピラリーカラムを、任意選択でジェットセパレーターを使って質量分析計に直接に連結する。このような使用では、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムが試料成分を試料気体混合物から分離し、分離した成分をイオン化して、質量分析計で化学的に分析する。
【0088】
多様な質量分析計、および分離技術と質量分析計との組み合わせが、本発明の使用のために考えられ、これらは、ガスクロマトグラフィー/質量分析法、液体クロマトグラフィー質量分析法、ガスクロマトグラフィー熱分解同位体比/質量分析法、またはガスクロマトグラフィー燃焼-位体比/質量分析法、サイクロイド質量分析法、フーリエ変換同位体比(IR)分光法、近IRレーザー分光法、または同位体比質量分析法を含むが、それらに限定されない。
【0089】
b.代謝
非常に少量の標識水を検出してもよい。1つの実施形態では、103分の1の標識水を同定してもよい。もう1つの実施形態では、104分の1の標識水を同定してもよい。もう1つの実施形態では、105分の1の標識水を同定してもよい。もう1つの実施形態では、106分の1の標識水を同定してもよい。もう1つの実施形態では、107分の1の標識水を同定してもよい。
【0090】
1.糖代謝後の水の検出
糖摂取の結果を測定する方法は、糖代謝産物を測定することによって遂行してもよい。標識糖を含有する適量の化合物を投与すると、糖を含む燃料の酸化による代謝水産生の速度は、比較的高レベルの標識水を得るのに十分になる。
【0091】
代替として、標識ブドウ糖を重合することで、標識グリコーゲンを形成し、これを測定してもよい。
【0092】
2.脂肪酸代謝後の水の検出
脂肪酸摂取の結果を測定する方法は、脂肪酸代謝産物を測定することによって遂行してもよい。脂肪酸残基を含有する化合物または標識脂肪酸を適量投与すると、脂肪酸酸化(代謝)による代謝水産生の速度は、比較的高レベルの標識水、特に2H2O、を得るのに十分になる。
【0093】
図3は、重水素2H標識脂肪酸を使った脂肪酸代謝経路を図示する。個体によって摂取された脂肪酸は、組織へ運ばれ、場合により、トリアシルグリセロールとして貯蔵され、またはβ酸化によって水に変換される。標識水は、その後、血流に戻され、体液に取り込まれることもある。
【0094】
標識水は、その後、検出して、標識の取り込み程度を決定してもよい。
【0095】
iv)1種または複数の化学組成物に取り込まれた2Hを測定する追加のステップ
本発明はまた、水に加えて、1種または複数の化学組成物に取り込まれた2Hを測定する追加のステップも意図する。標識ブドウ糖または標識脂肪酸のどちらかの代謝によって生成される標識水の取り込みは、有機体における他の合成および貯蔵経路を測定するために使用することができる(図1と2)。これらの経路は、タンパク質合成、脂質合成(トリグリセリド合成およびコレステロール生合成)、新たな脂肪合成(新生脂質生合成)、およびDNA合成(細胞増殖)を含む。これら補足的測定(図3)の追加は、2H脂肪酸または2Hブドウ糖標識戦略にさらなる情報をもたらす。
【0096】
当分野において知られている標準的な生化学的方法を使って、生物学的試料から1種または複数の化学組成物を、任意選択では部分的に精製または単離された状態で得てもよい。化学組成物は、ブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質、およびDNAを含むが、それらに限定されない。任意選択で、組成物の断片を得てもよい。生物学的試料抽出の頻度は、様々な因子に依存して変わりうる。そのような因子は、試験される化学組成物の性質、試料抽出の容易さ、そして、モニタリングが治療に応答する場合には治療に使用される薬物の半減期を含むが、それらに限定されない。
【0097】
1つの変形では、1種または複数の化学組成物は、ブドウ糖でもよい。別の変形では、経口的に投与した標識糖、特に2Hブドウ糖、の血漿ブドウ糖負荷における希釈は、内因性のブドウ糖産生(EGP、図3)を明らかにする。このアプローチの使用によって、体内のブドウ糖使用および合成経路についてかなりの情報が得られる。図3は、糖代謝経路を特に重水素標識ブドウ糖について図示する。個体によって摂取されたブドウ糖は、組織へ運ばれ、場合により、グリコーゲンとして貯蔵され、または解糖とクエン酸回路を介して水と二酸化炭素に変換される。標識水、特に2H2Oは、その後、血流に戻され、体液内へ、その後、生合成産物内へ取り込まれることもある。さらに別の変形では、ブドウ糖の割合は、解糖を受けている投与された2H標識ブドウ糖の割合を同定するために使用してもよい。
【0098】
もう1つの変形では、方法は、新たに合成されるグリコーゲンを決定するために使用してもよい。全体のブドウ糖消失は、解糖の全量+新たに合成されたグリコーゲンの全量(図2と3)も等しいので、新たに合成されるグリコーゲンは、初期に投与されたブドウ糖の全量から解糖を差し引くことによって間接的に決定することができる。次の式は、新たに合成されたグリコーゲンを計算するために使用してもよい。
【0099】
全ブドウ糖 - 解糖 = 新しく合成されたグリコーゲン
新たに合成されたグリコーゲンを決定することは、インシュリン抵抗性、糖尿病、および循環器疾患の上昇した危険のための早期マーカーであると広く信じられているので、有用である。すなわち、投与されたブドウ糖のある一定量から形成されるグリコーゲンの量が多ければ多いほど(より多くの解糖およびより少ないグリコーゲンの形成とは逆に)、インシュリン抵抗性、糖尿病および循環器疾患を発症する危険性が高くなる。グリコーゲン形成はまた、脳血管の疾患の上昇した危険性の早期マーカーでもある。
【0100】
もう1つの変形では、グリコーゲンの出現速度(Raglycogen)、すなわち、グリコーゲン合成の速度は、解糖の出現速度(Raglycolysis)をブドウ糖の消失速度(Rdglucose)から差し引くことによって決定してもよい。次の式を使用して新たなグリコーゲン合成の速度を計算することができる。
【0101】
Rdglucose - Raglycolysis = Raglycogen
グリコーゲン合成のより遅い速度は、糖尿病、循環器疾患および脳血管の疾患を発症する危険性の上昇に関連することもあるので、グリコーゲンの出現の速度(すなわち、グリコーゲン合成の速度)を知ることは、付加的な有用な情報を提供する。さらに、新しく合成されたグリコーゲンの増加と共にグリコーゲン合成の速度がより遅くなることは、糖尿病、循環器疾患および脳血管の疾患を発症する危険の上昇に関連することもある。
【0102】
同様に、解糖を知ることは、糖尿病、循環器疾患および脳血管の疾患の上昇した危険性を決定することにも有用なこともある。解糖の速度を知ることは、グリコーゲン合成の速度について上述したように、上昇した危険性を決定するために有用な付加的な情報を提供する。解糖および解糖の速度は、上述したように2Hブドウ糖の投与後に形成された2H2Oの量を測定することよって決定してもよい。
【0103】
もう1つの変形では、1種または複数の化学組成物は、グリコーゲンでもよい。グリコーゲンは、当分野でよく知られている侵襲性または非侵襲性の手順を使った直接試料抽出によって直接的に測定してもよい。別の変形では、1種または複数の化学組成物は、トリグリセリドでもよい。別の変形では、方法は、新たなトリグリセリド合成を決定するために使用してもよい。
【0104】
もう1つの変形では、1種または複数の化学組成物は、トリグリセリド-脂肪酸を含む化合物でもよい。別の変形では、方法は、新たな脂肪酸合成を計算するために使用してもよい。
【0105】
さらに別の変形では、方法は、標識脂肪酸の貯蔵された脂肪酸に対する比を計算するために使用してもよい。さらに別の変形では、方法は、脂肪酸酸化を受けている投与された脂肪酸の割合を計算するために使用してもよい。
【0106】
もう1つの変形では、化学組成物は、タンパク質を含んでもよい。
【0107】
別の変形では、組成はDNAを含んでもよい。そうすれば、DNA取り込みの測定を、新たな細胞増殖の速度を決定するために使用してもよい。
【0108】
1種または複数の化学組成物は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速性能液体クロマトグラフィー(FPLC)、ガスクロマトグラフィー、ゲル電気泳動および/または他のいかなる分離方法を含む従来の精製方法によって、精製し、または部分的に精製し、または任意選択で単離してもよい。
【0109】
1種または複数の化学組成物は、加水分解または他の態様で分解されてより小さなサブユニットを形成してもよい。加水分解または他の分解方法は、当分野において知られているいかなる方法も含み、化学的加水分解(酸加水分解のような)、および生化学的加水分解(酵素切断または分解のような)を含むが、それらに限定されない。加水分解または分解は、1種または複数の化学組成物を精製および/または単離の前または後のどちらかで行ってもよい。例えば、単糖から形成されるポリマーは、分解されて、多くの単糖残基および/または任意選択で単糖構成要素からなるより小さなサブユニットを形成してもよい。グリコーゲンは、化学的またはタンパク分解的に分解されて、ブドウ糖残基または任意選択でブドウ糖モノマーから形成される多糖を形成してもよい。タンパク質は、化学的またはタンパク分解的に分解されて、オリゴペプチドまたは任意選択でアミノ酸を形成してもよい。脂肪酸は、分解されて、ケトン体、二酸化炭素、および水を形成してもよい。DNAは、分解されて、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基、または核酸バックボーンを形成してもよい。分解産物は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速性能液体クロマトグラフィー(FPLC)、ガスクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、および/または当分野において知られている他のいかなる方法を含む従来の精製方法によって、部分的に精製し、または任意選択で単離してもよい。
【0110】
v)速度論的パラメータの計算
水への2H取り込みの速度または総量を計算してもよい。他のバイオポリマーへの取り込みの速度を計算してもよい。1つの変形では、水への2Hの取り込みの速度を計算してもよい。もう1つの変形では、標識糖または脂肪酸を含有する化合物の分解の速度を測定してもよい。別の変形では、ブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAのようなバイオポリマーの生合成および分解速度を決定してもよい。さらにもう一つ変形では、標識水形成と生体高分子形成の両方の速度を計算してもよい。最後に、速度を、代謝性のまたは代謝的に関連した疾患または障害を診断、予知または同定するために、個別にまたは組み合わせて使用してもよい。
【0111】
合成および分解速度は、質量同位体分子種分布分析(MIDA)によって計算してもよく、これを、標識水の生成を測定することによって代謝物および/または水の分解または生合成速度を計算するために使用してもよい。加えて、MIDAは、代謝物を含有する糖または脂肪酸が代謝された後でブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAのようなバイオポリマーの合成速度を計算するために使用してもよい。
【0112】
MIDA組み合わせアルゴリズムの変形は、当業者に知られているいくつかの異なる資料で考察されている。具体的には、MIDA計算方法は、ここに参照によって組み入れられた米国特許第5336686号の主題である。方法はさらに、ここに参照によって組み入れられたHellersteinとNeese (1999年)や、PattersonとWolfe (1993年)、およびKelleherとMasterson (1992年)によって考察されている。
【0113】
上記引用した参照文献に加えて、方法を実行する計算ソフトウェアが、カリフォルニア大学バークレー校のMarc Hellersteinから公に入手可能である。
【0114】
手短に言えば、糖または脂肪酸と細胞水との間で代謝的に交換されたH原子の数(n)の計算は組み合わせ分析あるいはMIDAによるものであった。2Hの前駆体プール濃縮(p)が知られていれば、単一標識糖または脂肪酸に対する二重標識それの相対比率からnが明らかにされる。pが身体の標識水濃縮を反映していると仮定すると、nは組み合わせ分析によって計算することができる。
【0115】
質量同位体分子種の存在度比率は、天然存在度分子を、パラメータpによって特徴づけられた標識モノマーのプールから新たに合成された分子と混ぜることによって生じるものである。この種の混合物は、新たな比率であるfと、pとによって完全に特徴づけることができる。アルゴリズムは、段階式に進み、簡易な計算、天然に存在し他のいかなる分子とも混ざっていない同じ存在度比率の同位体を含有する単一の元素から合成される分子、から始まる。そして、全ての同位体が天然存在度である二つ以上の元素を含有する分子へ進み、そして、異なる元素を含有する非ポリマーの分子へ進む。ここで、異なる元素のいくつかは、同位体組成が天然存在度に規制されず可変である群に属する。そして、繰り返し化学単位(モノマー)の組み合わせを含有するポリマー分子へ進む。ここで、モノマーは、非標識(天然存在度分布の同位体を含有する)であるかまたは潜在的に標識されて(同位体比を変えた元素群を含有する)いるかのどちらかである。最後に、天然存在度ポリマーと潜在的に標識されたポリマーの両方から構成されるポリマー分子の混合物へ進む。ここで、後者のポリマーは、天然存在度と同位体的摂動されたユニットの組み合わせを含有する。
【0116】
最後に挙げた計算は、生物学的な系において一般的に存在する条件を扱うものであり、ある同位体取り込み実験の期間中に新たに合成されるポリマーは、前から存在する天然存在度ポリマーとともに存在し、調査者は、合成速度または関連パラメータを推論するために、存在する物それぞれの割合を決定することに興味を持つ。
【0117】
使用方法
ここに開示された方法を使って、栄養素摂取の代謝結果を、個体におけるいくつかの代謝物について決定してもよい。これらの結果は、診断および/またはモニタリング用途に使用してもよい。この手法には多数の研究および臨床的使用法がある。
【0118】
1つの変形では、個体に対する薬剤の効果をモニターしてもよい。薬剤を投与された個体における糖または脂肪酸代謝における変化は、個体の糖または脂肪酸代謝を変更する能力があるものとして薬剤を同定する。薬剤は、同一の個体または異なる生体系に投与してもよい。薬剤は、当分野で知られているいかなる化学物質または組成物でもよい。薬剤は、例えば、ここに参照によってその全体が組み入れられたThe Merck Indexの第13版(米国の出版物、Whitehouse Station, N.J., USA)に開示されたいかなる化学物質または組成物も含むが、それらに限定されない。
【0119】
もう1つの変形では、薬剤は、望ましいまたは望ましくない(または両方)特性に関して少なくとも部分的に同定することができる。そのような情報は、ある薬剤の臨床開発を進めるべきか否か、例えば、ある薬剤をin vivo動物モデルで試験すべきか否か、臨床試用の対象とすべきか否か、および臨床試用設定においてさらに進めるべきか否か(例えば、IND申請後および/またはフェーズI、フェーズIIおよび/またはフェーズIII試用の完了後)、を評定する際に有用である。一旦NDAの申請と承認を通れば、本発明の方法が、糖尿病、循環器疾患および他の肥満関連疾患または障害のような代謝疾患の治療に有用な薬剤の早期同定に対する対応がなされていることがただちに明らかになる。もう1つの実施形態では、FDA試用の間における代用物としての栄養素の運命をモニターしてもよい。
【0120】
もう1つの変形では、方法は、糖尿病の危険性がある個体を同定するために使用してもよい。もう1つの変形では、方法は、高脂肪食誘発性肥満の危険性がある患者を同定するために使用してもよい。
【0121】
もう1つの変形では、方法は、個体においてインシュリン抵抗性/真性糖尿病(II型糖尿病)の危険性を診断、予知または同定するために使用してもよい。別の変形では、方法は、個体において高脂肪食誘発性肥満の危険性を診断、予知または同定するために使用してもよい。もう1つの変形では、方法は、インシュリン抵抗性/真性糖尿病または高脂肪食誘発性肥満を防止するまたは後退させるための介入または治療方法の効果をモニターするために使用してもよい。
【0122】
同位体比を変えた分子
もう1つの変形では、方法は、同位体比を変えた分子(例えば、標識脂肪酸、脂質、炭水化物、タンパク質、核酸など)の産生に対して備えがなされている。これら同位体比を変えた分子は、興味対象の代謝経路内の分子の流れを決定することにおいて有用な情報を含んでいる。1種または複数の同位体比を変えた分子は、一旦有機体の細胞および/または組織から単離されると、上述のように情報を抽出するために分析される。
【0123】
他の変形では、方法は、消耗性疾患または障害、低血糖症、またはグリコーゲン蓄積症を診断または治療するために使用してもよい。
【0124】
キット
他の側面では、本発明は、in vivoでブドウ糖または脂肪酸の代謝的運命を分析するためのキットを提供する。キットは、標識ブドウ糖または脂肪酸を含んでもよい。キットはまた、尿、骨または筋肉から化学的または生化学的化合物を単離するために当分野で知られている化学化合物を含んでもよく、および/または組織試料を得るために必要な化学物質、組み合わせ分析のための自動計算ソフトウェア、およびキットの使用説明書が任意選択でキットに含まれる。
【0125】
標識糖および脂肪酸を含有する化合物の投与のためのツールのような他のキット構成要素が、任意選択で含まれる。ツールは、計量カップ、針、シリンジ、ピペット、IVチュービング)を含んでもよく、キットに任意選択で備えられてもよい。同様に、対象から試料を得るための器具(例えば、検体カップ、針、シリンジおよび組織試料抽出装置)も任意選択で備えられてもよい。
【0126】
情報格納装置
本発明はまた、本発明の方法で収集したデータを含むデータ格納装置または紙レポートのような情報格納装置をもたらす。情報格納装置は、紙または同様の有形の媒体上の書かれたレポート、プラスチック製透明シートまたはマイクロフィッシュ上の書かれたレポート、光学的または磁気的媒体(例えば、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、磁気ディスクなど)に格納されたデータ、または一時的または永久的を問わず情報を格納したコンピューターを含むが、それらに限定されない。データは、少なくとも部分的にコンピューター内に収納されていてもよいし、電子メールメッセージの形態であったりまたは電子メールメッセージに別の電子ファイルとして添付されていてもよい。情報格納装置内のデータは、「生」(すなわち、収集されたが分析されていない)でも、部分的に分析されていても、または完全に分析されていてもよい。データ分析は、コンピューターまたは何か他の自動装置を介してもよいし、または手作業で行ってもよい。情報格納装置は、さらなる分析のため、または表示のため、またはその両方のために、別のデータ格納系(例えば、コンピューター、手持ち型のコンピューターなど)にデータをダウンロードするために使用してもよい。代替として、情報格納装置内のデータは、さらなる分析のため、または表示のため、またはその両方のために、紙、プラスチック製透明シートまたは他の同様の有形の媒体の上に印刷されてもよい。情報格納装置は、データの検索に対して備えがなされていてもよい。そのような検索は、表示の目的のため、および/またはさらなる分析、または他のいかなる目的のためでもありうる。
【0127】
下記の実施例は、本発明の方法は代謝性のブドウ糖または脂肪酸の運命を決定するために使用してもよいことを示すために提供される。当業者には、具体的な実施形態が図示および説明されてはいるが、それらは本発明を限定することを意図したものではないことが認識されるであろう。
【実施例】
【0128】
〔実施例1〕
速度論的OGTT-正常なラットとマウスにおけるブドウ糖の解糖的処分
マウスとラットに対する速度論的な経口耐糖能試験を図5と6にそれぞれ図示する。図は、重水素標識ブドウ糖の投与の後の水への重水素取り込みによって測定される解糖率を示す図である。
【0129】
Sprague-Dawleyラット(200〜250g、Simonsen社、カリフォルニア州ギルロイ)とC57Blk/6ksjマウス(10〜15g、Jackson Laboratories、メイン州バーハーバー)を使用した。ラットは個々に、マウスは5匹ずつの組で収容した。給餌は、Purina(登録商標)げっ歯類固形飼料を自由に摂取させた。全ての研究は、UCバークレー動物管理使用委員会から事前承認を得た。
【0130】
2Hブドウ糖標識付けプロトコルは、99.9%の[6,6-2H2]ブドウ糖の初回腹腔内(ip)注入からなっていた。ラットとマウスを標識付けるために、体重1グラムあたり2mgの標識ブドウ糖を導入した。体内水を様々な時点で血清として採取した。
【0131】
解糖は、分子ブドウ糖および分子水中の重水素の異なるモル量を考慮して正規化された投与[6,6-2H2]ブドウ糖の百分率として体内水中の重水素を測定することによって測定した。重水素化水は、同位体比質量分析法によって測定した。
【0132】
〔実施例2〕
速度論的OGTT-正常なラットとマウスにおけるブドウ糖の解糖的処分
ヒト対象における動力学的な経口耐糖能試験を図4に図示する。同図は、重水素標識ブドウ糖の摂取の後の水への重水素取り込みによって測定される解糖率を示す図である。
【0133】
2Hブドウ糖標識付けプロトコルは、99.9%の[6,6-2H2]ブドウ糖の経口摂取からなっていた。50グラムの経口負荷(30%の[6,6-2H2])中の15グラムのブドウ糖がヒト対象によって摂取された。体内水を様々な時点で血清として採取した。
【0134】
解糖は、分子ブドウ糖および分子水中の重水素の異なるモル量を考慮して正規化された投与[6,6-2H2]ブドウ糖の百分率として体内水中の重水素を測定することによって測定した。重水素化水は、同位体比質量分析法によって測定した。
【0135】
〔実施例3〕
痩せた男性ヒト対象(対象#1)、過体重であるが肥満ではない男性ヒト対象(対象#2)、肥満の女性ヒト対象(対象#3)、およびHIV/エイズの痩せた男性ヒト対象(対象#4)に[6,6-2H2]ブドウ糖を、経口投与した(水中に15グラム)。血液試料を4時間にわたって毎時間採取(10cc)した。血液からブドウ糖を単離し、同位体比質量分析法に適合する形態に調製することによって、血糖の2H含有量を測定した。血液から水を単離し、同位体比質量分析法に適合する形態に調製することによって、体内水の同位体(2H2O)含有量を測定した。体内水に放出された2Hブドウ糖からの2Hの比率を計算するために質量分析法を実行した。これは、投与されたブドウ糖負荷からの解糖/酸化を示す。質量分析法で測定された2Hブドウ糖含有量の測定値を、投与2Hブドウ糖の投与2H含有量と比較して、体のブドウ糖産生速度を計算した。空腹時血漿インシュリンレベルを、インシュリンに特異的なラジオイムノアッセイ(RIA)で測定した。RIAキットは、Linco Research社、米国ミズーリ州セントチャールズ、またはPhoenix Pharmaceutical社、米国カリフォルニア州バーモント、のような多様な販売元から容易に入手可能である。血漿ブドウ糖レベルを、当分野で知られている手法であるブドウ糖酸化酵素の使用によって、測定した。ブドウ糖の測定のためのブドウ糖酸化酵素を含むキットが、例えば、Sigma Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス、から容易に入手可能である。表1はこの結果を示す。
【表1】

【0136】
上記の表1からわかるように、対象#1は正常で痩せた健康な男性対象(正常な対照)。対象#2は正常で過体重だが肥満ではない健康な男性対象。対象#3は正常で肥満の健康な女性。対象#4はHIV/エイズの痩せた男性。データは、肥満性がないにもかかわらず、臨床的に明らかなブドウ糖不耐性または糖尿病性個体を同定する(対象#4)。対象#4は、エイズを発症したHIV陽性の男性であり、抗レトロウイルスの治療を含有するプロテアーゼ阻害剤を受けている。抗レトロウイルス治療を受けているエイズの人々は、しばしばブドウ糖耐性異常または糖尿病性表現型を呈する。表1のデータは、ブドウ糖不耐性が明らかになる前に前糖尿病性(インシュリン抵抗性の)個体を同定する(対象#3)。この方法は、ブドウ糖耐性異常の早期検出に対して対応がなされている。
【0137】
参照文献
1. Veerkamp JH、Van Moerkerk HTB、Glatz JFC、Zuurveld JGEM、Jacobs AEM、Wagenmakers AJM、14CO2 production is no adequate measure of 14C-fatty acid oxidation。Biochem Med Metab Biol 35:248〜59頁、1986年。
【0138】
2. Malewiak MI、Griglio S、Kalopissis AD、LeLiepure X、Oleate metabolism in isolated hepatocytes from lean and obese Zucker rats. Influence of a high-fat diet and in vitro response to glucagon. Metab Clin Exp 32:661〜8頁、1993年。
【0139】
3. Van Hinsbergh V、Veerkamp JH、van Moerkerk HTB、Palmitate oxidation by rat skeletal muscle mitochondria。Comparison of polarographic and radiochemical experiments Arch Biochem Biophys 190:762頁、1978年。
【0140】
4. Hellerstein MK、Methods for measurement of fatty acid and cholesterol metabolism. 文献:Howard B、Packard C編、Current Opinion in Lipidology 6:172〜81頁、1995年。
【0141】
5. Katz, J.とR. Rognstad。Futile cycles in the metabolism of glucose、文献:Current Topics in Cellular Regulation。第10巻、B. HoreckerとE. Stadman編集、New York: Academic Press、1976年、238〜239頁。
【0142】
6. Rossetti L、Lee YT、Ruiz J、Aldridge SC、Shamoon H、Boden G、Quantitation of glycolysis and skeletal muscle glycogen synthesis in humans. Am J Physiol 265:E761〜9頁、1993年。
【0143】
7. Turner S、Neese RA、Murphy E、Antelo F、Thomas T、Hellerstein MK、Measurement of triglyceride synthesis and turnover in vivo by 2H2O incorporation into the glycerol moiety and application of mass isotopomer distribution analysis. Am J Physiol、提出、2002年。
【0144】
8. Neese RA、Misell L、Antelo F、Hoh R、Chu A、Strawford A、Christiansen M、Hellerstein MK、Measurement of DNA synthesis in slow turnover cells in vivo using 2H2O labeling of the deoxyribose moiety: application to human adipocytes. Proc Natl Acad Sci USA、印刷中、2002年。
【0145】
9. Misell L、Thompson J、Antelo F、Chou Y-C、Nandi S、Neese R、Hellerstein MK、A new in vivo stable isotope method using 2H20 for measuring mammary epithelial cell proliferation. FASEB J 14(4):A786頁、2000年。
【0146】
10. Kim J、Neese R、Hellerstein MK、A new method to measure proliferation rates of colon epithelial cells. FASEB J 14(4):A718頁、2000年。
【0147】
11. Antelo F、Strawford A、Neese RA、Christiansen M、Hellerstein M、Adipose triglyceride (TG) turnover and de novo lipogenesis (DNC) in humans: measurement by long-term 2H2O labeling and mass isotopomer distribution analysis (MIDA). FASEB J 16:A400頁、2002年。
【0148】
12. Chu A、Cesar D、Ordonez E、Hellerstein M、An in vivo method for measuring vascular smooth muscle cell (VSMC) proliferation using 2H2O. 配布、2000年。
【0149】
13. Hellerstein MK、Neese RA、Kim Y-K、Schade-Serin V、Collins M、Measurement of synthesis rates of slow-turnover proteins from 2H2O incorporation into non-essential amino acids (NEAA) and application of mass isotopomer distribution analysis (MIDA). FASEB J 16:A256頁、2002年。
【0150】
14. Kim Y-K、Neese RA、Schade-Serin V、Collins M、Misell L、Hellerstein MK、Measurement of synthesis rates of slow-turnover proteins based on 2H2O incorporation into non-essential amino acids and application of mass isotopomer distribution analysis. Biochemical J、提出、2002年。
【0151】
15. Reaven GM、Banting lecture 1988年、Role of insulin resistance in human disease. Diabetes 37(12):1595-607頁、1988年。
【0152】
ここに引用した全ての出版物、特許および特許出願は、個々の各出版物、特許または特許出願が特定的かつ個別に参照によって組み入れられたとした場合と同じ程度にあらゆる目的のためにそれらの全体が参照によってここに組み入れられる。上述の発明は、理解を明確にする目的で実施例と図示によってある程度詳細に説明したが、この発明の教示に照らして当分野の通常の技能を有する者には、請求項の範囲および精神から逸脱することなく一定の変更や変形を行うことが可能であることはただちに明らかであろう。出願人は、請求されていない主題のいかなるものも放棄していないし、公共に捧げてもいない。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】細胞内において脂肪酸に付加された2Hの運命を示す図である。この場合、パルミテートが示されている。脂肪酸は、β-酸化を介して代謝されて、脂肪のC-H結合から水素原子を体内H2Oへ放出する。代替として、脂肪酸は、エステル化されて、トリグリセリド-脂肪酸、この場合トリグリセリド-パルミテートを生成してもよい。
【図2】糖、この場合はブドウ糖、に付加された2Hの運命を示す図である。糖は、解糖とクエン酸回路を介して代謝され、糖のC-H結合から水素原子を体内H2Oへ放出する。代替として、ブドウ糖はグリコーゲンを形成してもよい。
【図3】ブドウ糖または脂肪耐性試験の模式的な分子を示す図である。ブドウ糖または脂肪酸代謝は、体内水への2Hの放出から直接に測定してもよい。測定は、体内水から、標識グリセロール-トリグリセリド、脂肪酸-トリグリセリド、タンパク質、DNAまたはそれらの構成成分を含む他の標識化学化合物へ戻る2H取り込みをする追加のステップを含む。
【図4】正常なヒト対象における速度論的な経口耐糖能試験を示す図である。解糖率は、重水素標識ブドウ糖の投与に続く重水素の水への取り込みによって測定されたもので、一定時間に対して示されている。
【図5】正常なマウスにおける速度論的な経口耐糖能試験を示す図である。解糖率は、重水素標識ブドウ糖の投与に続く重水素の水への取り込みによって測定されたもので、一定時間に対して示されている。
【図6】正常なラットにおける速度論的な経口耐糖能試験を示す図である。解糖率は、重水素標識ブドウ糖の投与に続く重水素の水への取り込みによって測定されたもので、一定時間に対して示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定する方法であって、
(a)1種または複数の2H標識糖または2H標識脂肪酸を含む1種または複数の組成物を個体に投与することと、
(b)1種または複数の体組織または体液を1回または複数回にわたって前記個体から得ることと、
(c)前記個体における前記1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定するために、前記1種または複数の2H標識糖または2H標識脂肪酸からの前記2Hの水への取り込みを検出することと
を含む方法。
【請求項2】
前記1種または複数の組成物は、2H標識ブドウ糖を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2H標識ブドウ糖は、[6,6-2H2]ブドウ糖、[1-2H1]ブドウ糖および[1,2,3,4,5,6-2H7]ブドウ糖から選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種または複数の組成物は、経口、経胃管法、腹腔内、静脈内および皮下投与から選ばれる手法によって投与される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種または複数の組成物は、経口投与される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体は哺乳動物である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物は、ヒト、齧歯類、霊長類、ハムスター、モルモット、イヌおよびブタから選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物はヒトである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数の体組織または体液は、血液、尿、唾液および涙から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1種または複数の体組織または体液は、肝臓、筋肉、脂肪、腸、脳および膵臓から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水を部分的に精製する追加のステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水を単離する追加のステップを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ブドウ糖、グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAから選ばれる1種または複数の化学組成物への2Hの取り込みまたは取り込み比を測定する追加のステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記化学組成物はブドウ糖である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
内因性のブドウ糖産生を測定する追加のステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
投与された前記標識糖に対する組織グリコーゲンに貯蔵された標識ブドウ糖の割合を測定する追加のステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
解糖を受けている投与された2Hブドウ糖の割合または速度を測定する追加のステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記化学組成物はグリコーゲンである請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記化学組成物はグリセロール-トリグリセリドである請求項13に記載の方法。
【請求項20】
新たなトリグリセリド合成を計算する追加のステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学組成物はトリグリセリド脂肪酸である請求項13に記載の方法。
【請求項22】
新たな脂肪酸合成を計算する追加のステップを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
投与された標識脂肪酸に対する組織に貯蔵された標識脂肪酸の割合または貯蔵速度を計算する追加のステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項24】
脂肪酸酸化を受けている投与された標識脂肪酸の割合または貯蔵速度を計算する追加のステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記化学組成物はタンパク質である請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記化学組成物はDNAである請求項13に記載の方法。
【請求項27】
DNA合成の速度または量を計算する追加のステップを含む請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記水への前記2Hの取り込みの速度または総量を計算することをさらに含む前記請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記1種または複数の化学組成物への2Hの取り込みの速度または量を計算することさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項30】
前記1種または複数の化学組成物への2Hの取り込みの速度または量を計算することさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記水は、ガスクロマトグラフィー/質量分析法、液体クロマトグラフィー-質量分析法、ガスクロマトグラフィー-熱分解-同位体比/質量分析法、ガスクロマトグラフィー-燃焼-同位体比/質量分析法、サイクロイド質量分析法、フーリエ変換-同位体比(IR)-分光法、近IRレーザー分光法、および同位体比質量分析法から選ばれる方法によって検出される請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記検出ステップは、水107部中1部の2Hを検出することによって遂行することができる請求項1に記載の方法。
【請求項33】
薬剤の個体への効果を同定する方法であって、
前記個体へ薬剤を投与することと、
前記薬剤の前記個体への効果を同定するために、請求項1に記載の、前記個体における1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定することを含む方法。
【請求項34】
前記代謝決定は、薬剤のFDA承認のための代用マーカーとして使用される請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記代謝決定は、患者の臨床管理のために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項36】
インシュリン抵抗性または真性糖尿病を診断する方法であって、
請求項1に記載の1種または複数の糖または脂肪酸の代謝を決定することを含む方法。
【請求項37】
前記代謝決定は、インシュリン抵抗性および真性糖尿病の危険性がある個体を同定することから選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記代謝決定は、高脂肪食誘発性肥満を診断することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記代謝決定は、高脂肪食誘発性肥満の危険性がある個体を同定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記代謝決定は、インシュリン抵抗性、真性糖尿病および高脂肪食誘発性肥満を防止するまたは後退させるための介入の効果をモニタリングすることから選ばれるステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項41】
消耗性障害を診断することおよび治療することから選ばれるさらなるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項42】
低血糖症を診断することおよび治療することから選ばれるさらなるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項43】
グリコーゲン蓄積症を診断することおよび治療することから選ばれるさらなるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項44】
個体における糖の代謝を決定するためのキットであって、
a)1種または複数の標識糖と、
b)前記キットの使用のための説明書を含み、
前記キットは、前記個体における糖代謝を決定するために使用されるものであるキット。
【請求項45】
水を単離するための化学化合物をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項46】
ブドウ糖、グリコーゲン、タンパク質およびDNAから選ばれる組成物を単離するための化学化合物をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項47】
標識ブドウ糖を投与するためのツールをさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項48】
対象から試料を採取するための器具をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項49】
請求項33に記載の方法によって効果が少なくとも部分的に同定された薬剤。
【請求項50】
グリコーゲン、グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド脂肪酸、タンパク質およびDNAから選ばれる同位体比を変えた分子。
【請求項51】
前記方法によって少なくとも部分的に同定される1種または複数の薬剤の製造をさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項52】
請求項1に記載の方法から得られるデータを含む情報格納装置。
【請求項53】
前記装置は、印刷されたレポートである請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記レポートが印刷される媒体は、紙、プラスチックおよびマイクロフィッシュから選ばれる請求項53に記載の印刷されたレポート。
【請求項55】
前記装置はコンピューターディスクである請求項52に記載の装置。
【請求項56】
前記ディスクは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスクおよび磁気ディスクから選ばれる請求項55に記載のディスク。
【請求項57】
前記装置はコンピューターである請求項52記載の装置。
【請求項58】
請求項33に記載の方法から得られるデータを含む情報格納装置。
【請求項59】
請求項1に記載の方法によって生成された同位体比を変えた分子。
【請求項60】
個体における脂肪酸の代謝を決定するためのキットであって、
a)1種または複数の標識脂肪酸と、
b)前記キットの使用のための説明書を含み、
前記個体における脂肪酸代謝を決定するために使用されるキット。
【請求項61】
水を単離するための化学化合物をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項62】
グリセロール-トリグリセリド、トリグリセリド-脂肪酸、タンパク質およびDNAから選ばれる組成物を単離するための化学化合物をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項63】
標識脂肪酸を投与するためのツールをさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項64】
対象から試料を採取するための器具をさらに含む請求項44に記載のキット。
【請求項65】
請求項1に記載の方法によって生成される少なくとも1つの単離された重水素化水分子 (2H2O)。
【請求項66】
請求項33に記載の方法によって生成される少なくとも1つの単離された重水素化水分子 (2H2O)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−505777(P2006−505777A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550465(P2004−550465)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/035107
【国際公開番号】WO2004/042360
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】