説明

体内留置用カテーテル

【課題】 カテーテルの皮膚刺入部からの感染を防止し、皮下組織内に留置された1本のアウターカテーテルに様々な目的に適した形状及び本数のインナーカテーテルの選択的装着が可能な体内留置用カテーテルを提供する。
【解決手段】 皮膚刺入部及び皮下組織を介して体外から体内の血管、体液管又は臓器に留置する体内留置用カテーテルであって、該体内留置用カテーテルはアウターカテーテルと、該アウターカテーテルの内腔に挿通され、該アウターカテーテルと着脱可能に係合するインナーカテーテルとから構成され、体内に留置した際に、該インナーカテーテルは血管、体液管又は臓器まで到達する長さを有し、該アウターカテーテルはその先端部が皮下組織内に止まる長さを有していることを特徴とする体内留置用カテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に用いられる体内留置用カテーテルに関するものであり、さらに詳しくは、血液浄化のための体外循環、輸液・薬液の投与、採血、脈圧・血流量の測定等様々な医療上の治療の目的で使用される体内留置用カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長期にわたる輸液・薬液の投与を必要とする患者に対しては、中心静脈留置用カテーテルや消化管用の栄養カテーテルなどが使用され(非特許文献1参照)、腎不全、糖尿病、薬物中毒、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、多臓器不全(MOF)、肝炎、膵炎等の疾病のために血液浄化を必要とする患者に対しては、血管内にカテーテルを留置して血液を脱送血するブラッドアクセスカテーテルが使用されている(非特許文献2参照)。さらに、中心静脈圧・血流量の測定を必要とする患者に対しては、血管内に留置し静脈圧を測定する脈圧測定用カテーテル、心拍出量等血流量を測定するサーモダイリューションカテーテルが使用されている(非特許文献3参照)。また、心臓ペースメーカーの短期的体外式電極として使用する短期ペーシング用カテーテルなども開発され今日の臨床現場において広く普及している。
【0003】
上記の大部分のカテーテルは、体外と体内の目的とする血管や体液管、臓器との間を薬液の投与、血液の脱送血、生体内情報の測定など何らかのアクセスを行う手段として用いられており、通常は1本のカテーテルが体外から皮膚、皮下組織を通じて目的部位まで挿入される。
【0004】
また、皮膚刺入部から挿入されるカテーテルにおいては、カテーテルの内腔から投与される薬剤を介して細菌類が血管や体液管、臓器に進入する経路、あるいは皮膚の刺入部からカテーテルの外壁を伝って皮下組織や血管や体液管、臓器に進入する経路により感染を起こすことが問題になっている。特に、後者の経路の頻度は高く、医療従事者による頻回の消毒や厳重な管理にも係わらず重篤な感染症を引き起こすケースがしばしば見られ社会的にも大きな問題となっている。
【0005】
カテーテルの皮膚刺入部からの感染を防止することを目的として、例えば、カテーテルの抗菌剤を含有させた皮膚固定具(特許文献1参照)や、抗菌剤を表面にコートしたカテーテル(特許文献2参照)が開発されている。
【0006】
また、カテーテルの長期留置を目的として、カテーテルの一部にポリエステル製の綿をからなるカフを取り付け皮下組織と密着させてカテーテルの固定性と感染防止効果を期待するカテーテル(非特許文献4,5)も開発され、医療現場に広く用いられている。
【非特許文献1】日本静脈経腸栄養学会編集:コメディカルのための静脈・経腸栄養ガイドライン,43,南江堂(2000)
【非特許文献2】平沢由平:透析療法マニュアル(改訂第5版),170,日本メディカルセンター(1999)
【非特許文献3】鶴田早苗,原田和子:術後処置マニュアル,66,照林社(1991)
【特許文献1】特開平2−234767号公報
【特許文献2】特許第2665399号公報
【特許文献3】特開2006−51406号公報
【非特許文献4】ブロビアック(Broviac)NW,コール(Cole)JJ,スクライバー(Scriber)BH:「長期経静脈栄養用シリコーンラバー製右心房カテーテル(a silicone rubber right atrial catheter for prolonged parenteral alimentation)」Surgery, Gynecology & Obstetrics誌,136巻602頁(1973年)
【非特許文献5】ヒックマン(Hickman)RO,ブクナー(Buckner) D,クリフト(Clift)RA:「脊髄移植患者における静脈系アクセスのための改良型右心房カテーテル(A modified right atrial catheter for access to the venous system in marrow transplant recipients)」:Surgery, Gynecology & Obstetrics誌,148巻871頁(1979年)
【非特許文献6】宮形滋,本郷隆二,松崎章,加藤隆三,小林浩悦,原田忠,土田正義:ダブルルーメン型UKカテーテルの考案,日本透析医会雑誌、5(4),220(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、抗菌剤を含有させたカテーテルの皮膚固定具は、取り扱いが簡便である一方、抗菌剤の流出による抗菌活性の持続性や皮膚との隙間を完全に塞ぐことができない点で問題が残されており、また、抗菌剤をコートしたカテーテルにおいても、抗菌剤の流出による持続性や、生体内に留置した際のアレルギーなどの問題などがあった。
【0008】
カテーテルにカフを取り付けたものは、生体の本来持つ皮下組織の抗菌力で体内に進入する細菌を遮断し最も安全面で優れていると考えられるが、一旦、皮下組織に密着したカテーテルを、血栓や薬液の詰まりや感染を起こした際に抜去しなければならない際、カテーテル周囲の皮下組織ごと外科的に取り出す必要があるため、医療従事者、患者双方に肉体的、精神的に多大な負担を強いるものであった。
【0009】
一方、従来のカテーテルの多くは、体内の血管、体液管、臓器に直接挿入されるので、内腔が血液や薬液で閉塞したり、カテーテルの側孔から血液を吸引する際に血管壁にへばりついて吸引できなくなるなど目的を果たせなくなるトラブルが発生した場合、留置したカテーテル全体を交換する必要があり、医療従事者、患者双方に肉体的、精神的に多大な負担を強いるものであるばかりでなく、医療経済上も大きな損失を招くものであった。
【0010】
従来技術として、体外循環用のダブルルーメンカテーテルとして使用され、アウターカテーテルと1本のインナーカテーテルが同軸2層状になるコアクシャル型カテーテルが開発されている(非特許文献6)。しかし、閉塞等のトラブルによりインナーカテーテルが使用できなくなっても交換することは可能であるが、アウターカテーテルが閉塞または脱血不良となった際は結局カテーテル全体を交換することを余儀なくされるものであった。
【0011】
また、特許文献3に多管腔アクセスデバイスとして開示されているカテーテルにおいても、複数のルーメンを有するアウターカテーテルの内腔に着脱可能なインナーカテーテルを挿入することが提案されている。このカテーテルに限らず、血管内にアウターカテーテルが挿入され、インナーカテーテルのみを使用して脱送血などアクセスを行うためには、アクセスの流量を確保する必要上、必然的にカテーテルの内腔の大きさ、すなわちインナーカテーテルの外径が大きくなり、これに連動してアウターカテーテルの外径も大きくなうことは避けられず、留置する血管に制約を受けることとなる。
【0012】
本発明は、ヒトの体外から体内の血管、体液管又は臓器内に皮膚刺入部を介してアクセスする体内留置用カテーテルにおいて、挿入時、抜去時の取扱いが簡便でかつ、留置するインナーカテーテルの数及び外径の制約を受けにくくし、しかもカテーテル外壁を伝っての感染を有効に防止できる体内留置用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アウターカテーテルの長さを皮下組織内に止まる長さに短くすることで、目的とする体内の血管、体液管又は臓器内の制約を受けにくくし、インナーカテーテル留置時に皮下組織内に開腔したトンネルがインナーカテーテルの非使用時には自然に閉止し、抗菌剤によらなくても生体本来の皮下組織の感染防止効果が発揮されることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、皮膚刺入部及び皮下組織を介して体外から体内の血管、体液管又は臓器に留置する体内留置用カテーテルであって、該体内留置用カテーテルはアウターカテーテルと、該アウターカテーテルの内腔に挿通され、該アウターカテーテルと着脱可能に係合するインナーカテーテルとから構成され、体内に留置した際に、該インナーカテーテルは血管、体液管又は臓器まで到達する長さを有し、該アウターカテーテルはその先端部が皮下組織内に止まる長さを有していることを特徴とする体内留置用カテーテルを要旨とするものであり、好ましくは、アウターカテーテルの内腔が、単層又は2層以上であるものであり、また好ましくは、インナーカテーテルの内腔が、単層又は2層以上であるものであり、また好ましくは、インナーカテーテルが、1本又は2本以上からなる前記した体内留置用カテーテルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、皮下組織からなるトンネルがインナーカテーテル留置時にはカテーテル表面に密着し、生体本来にある皮下組織の感染防御作用が発揮されることにより、体外から皮膚刺入部を通じて進入する細菌などを有効に遮断することができる。インナーカテーテル抜去時には自然と閉止して生体組織内の抗菌又は抗感染力により感染を防止し、更に、不要時にはオブチュレーター(内栓)を挿入し内腔全体を内封することが可能となるため、長期にわたるカテーテルの留置が可能となる。
【0016】
さらに、本発明によれば、アウターカテーテルは体内の血管等に挿入されないことより、外径の制約がなく、そのことから様々な目的に適した形状及び本数のインナーカテーテルの選択的装着が可能で、閉塞等のトラブルが生じた時には新たなインナーカテーテルを簡便に交換でき、結果的に長期にわたり継続的に留置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の体内留置用カテーテルは、アウターカテーテルとインナーカテーテルとから構成され、インナーカテーテルはアウターカテーテルの内腔に挿通され、体内に留置された場合には、体内の血管、体液管又は臓器にまで達する長さを有しており、アウターカテーテルと着脱可能に係合していることが必要である。アウターカテーテルには1本の2層以上の複層ルーメンカテーテルから構成されるインナーカテーテルを組合せて使用することが好ましいが、単層ルーメンのインナーカテーテルが1本もしくは2本以上であってもよい。
【0019】
本発明においてインナーカテーテルとアウターカテーテルを着脱可能に嵌合するための手段としては、次のように種々の方法が採用できる。
a)複数本のインナーカテーテルが貫通し固定されたアダプター部をアウターカテーテルのコネクター部に嵌め込み、さらに嵌合部をロックリング部でネジ締めする方法
b)一本毎にインナーカテーテルが貫通し固定されたアダプター部を、アウターカテーテルのコネクター部にインナーカテーテル毎に対応して形成した一体化した接続部に嵌め込み、ロックリングでネジ締めする方法
c)b)における接続部がアタッチメントを介してアウターカテーテルのコネクター部にネジ止めする方法
d)インナーカテーテルのY管部が挿入できるテーパー状の内孔を有する弾性ゴム製アタッチメントをアウターカテーテルのコネクター部にネジ止めし、その内孔にインナーカテーテルを押し込む方法
以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、上記のa)の方法により着脱可能に嵌合した本発明の体内留置用カテーテルの全体図を示している。図1は、嵌合方法を説明する便宜上、インナーカテーテル2のアダプター部23をアウターカテーテル1のコネクター部12から外した状態を示している。インナーカテーテル2の先端側は血管8内に留置されている一方、アウターカテーテル1の先端20は皮下組織内7までで終わり、アウターカテーテルの先端20から延長されるインナーカテーテル2は血管刺入部9までの間、皮下組織内7のトンネル10を挿通している。インナーカテーテル2はアダプター部23に貫通して固定されており、アダプター部23の下部は雄ルアーテーパー状25となっている。アウターカテーテル1のコネクター部12はインナーカテーテル2を固着したアダプター部23と嵌合・接続できるように、内腔は図3(A)に示すようなルアーテーパー構造26を有している。
【0021】
アウターカテーテル1のコネクター部12の上部にはネジ部19が形成され、ロックリング部24でネジ締めされることによりアダプター部23がコネクター部12と着脱可能に嵌合することができる。
【0022】
本発明で用いられるアウターカテーテルは、従来のコアクシャル型カテーテルにおけるアウターカテーテルとして知られているものと比較すると、長さが短いものである。すなわち、本発明の体内留置用カテーテルにおけるアウターカテーテルは、体内に留置した場合、その先端部は皮下組織内に止まる長さを有するものである。通常皮下組織の厚みとしては、体格、性別、年齢で異なるが、およそ16〜37mmの範囲にあり、平均20mmとされており(高橋みや子他:「CT写真解析による注射部位の検討―臀部筋肉内注射―」,日本看護科学会雑誌,8(3),128(1988)参照)、通常の目的で留置するカテーテルの皮膚刺入部から目的とする血管や臓器までの間の皮下組織を挿通する長さは10〜20mm、長期留置を目的に皮下組織の間を長い距離挿通させる場合は、留置部位により異なるが、20〜300mm、平均50〜100mmと考えられる。
【0023】
従って、本発明におけるアウターカテーテルの具体的な長さとしては、カテーテルの皮膚刺入部から先端部までの長さが10〜300mmとなるように設計することが好ましく、さらに好ましくは20〜200mm、最も好ましくは50〜100mmである。
【0024】
図2は、図1におけるカテーテルの内、インナーカテーテル2を抜去した際のアウターカテーテル1の様子を示す概略図である。インナーカテーテル2が抜去されたアウターカテーテルの先端20は皮下組織内7にあり、血管刺入部9までの間のトンネル10は皮下組織自体の伸縮によりほぼ完全に閉じることができる。またインナーカテーテル2が挿入されていた血管の刺入部9も血管壁の伸縮により自然に閉塞することができる。
【0025】
本発明の体内留置用カテーテルにおける前記以外の構成は、図6に示す従来の血管留置用カテーテルと同様なものが採用できる。すなわち、アウターカテーテルには血液の脱血または送血のルーメンとして使用することができる側注部29、カテーテルと皮膚とを縫合糸で固定するための糸掛部14を備えている。また、インナーカテーテル2の手元側チューブおよびアウターカテーテル1の側注部29に接続するチューブには、体外循環回路などのラインやシリンジ等に接続するためのハブ15が設けられ、また内腔を一時的に遮断するためのクランプ16が備わっている。
【0026】
本発明においてインナーカテーテル2は、目的に応じて本数、長さ、ルーメンの数が選択される。例えば、中心静脈栄養用のカテーテルとして使用する場合は、インナーカテーテル2に輸液が投与される。一方、血液浄化などの体外循環に使用する場合は、図1に示す様に、脱送血のため2つのルーメンを有するインナーカテーテル2を接続して、血液を循環させることができる。
【0027】
さらに、本発明においては、インナーカテーテル2には、そのルーメンを通じて脈圧、血流量等の各種センサーおよび心臓ペーシング用の電極が装着されていてもよく、そのような体内留置用カテーテルは、治療用途、診断用途としても利用できる。センサーとしては、カテーテルの内腔に埋め込み電気信号等を感知する金属線状のものが挙げられる。
【0028】
サーモダイリューションカテーテルを例にとると、血流量を測定する場合にはカテーテルの手元側から氷冷した生理食塩水を流し先端側のセンサーで温度を測定した時の血液の温度希釈度により測定する。圧力測定に関しては、カテーテル先端に設けられたバルーン内に空気を注入し、バルーンにかかる圧を手元側の圧力センサーで測定する方法もある。
【0029】
心臓ペーシング用電極としては、カテーテルの先端と手元側の2カ所に設けられて、電極は体外部の体外式ぺースメーカーのジェネレーターに接続することによりぺーシングを行う。
【0030】
図4は、インナーカテーテル2の血管内への留置方法の一例を示す概略図である。インナーカテーテル2を血管内8に挿入するためには、例えば、外套のカニューラを被覆させた穿刺針をアウターカテーテル1から挿入し、血管壁を穿刺してカニューラを留置した後、穿刺針のみを抜去してカニューラにガイドワイヤー27を留置する。そのガイドワイヤー27に沿ってインナーカテーテル2を進めて行くことによりインナーカテーテル2を血管内に留置することが可能である。
【0031】
本発明の体内留置用カテーテルにおけるクランプ16の形状については、指で押さえてチューブを閉止させるピンチ式、または板状のものに幅が段階的に狭くなるスリットが入り、スリットをスライドさせることによりチューブを閉止するスリット式などの形状があるが、チューブを閉塞させる機能を有するものであれば形状は問わない。
【0032】
アウターカテーテル1の接続部12は、図3(B)に示すように、インナーカテーテル2またはオブチュレーター3を装着する際に血液が体外に洩れることをできる限り抑える逆流防止弁の構造18を採ることが好ましいが、なくても使用は可能である。逆流防止弁の構造は、例えばスリットの入った弾性ゴムの厚みをもつ層であることもあるが、血液等の液体が漏れない構造のものであれば材質、構造は特に限定するものではない。
【0033】
本発明の体内留置用カテーテルの材質は、体内、特に血管内に留置して安全な弾性のある材質であれば良く、例えば、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、好ましくは体外では硬度を保ち体内で柔軟性をもつ性質をもつポリウレタンが好ましい。
【0034】
本発明の体内留置用カテーテルにおけるアウターカテーテル1には、図1に示したような、皮下組織8と密着させる機能を有するカフ17が皮膚6の刺入部11からカテーテル先端部分の1箇所、または2箇所以上取り付けられているものであってもよい。
【0035】
カフの形状としては、繊維の綿状のもの、スポンジ状のもの、カテーテルの一部が盛り上がったもの等が挙げられ、材質としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成高分子化合物または綿、絹、キチンなどの天然高分子化合物等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、アウターカテーテル1とインナーカテーテル2を接続するアタッチメントを工夫することにより、アウターカテーテル1に接続した状態でインナーカテーテル2の長さを微調整できる構造とすることもできる。
【0037】
そのような一例として、図7にはアタッチメント本体部分をネジ構造31として、これに嵌合するロックリング24部分を回転させてアウターカテーテル1に嵌合する長さを調節するものを示している。この他、インナーカテーテル2のアダプター部23のロックリング部分24を回転させてアタッチメントの長さを調節する方法もある。
【0038】
インナーカテーテル2の長さの微調整はカテーテルの先端が血管壁に対して接触しない位置に変更する等の目的で行われるが、微調整する長さは5cm以内が好ましいが、1〜2cmの範囲で機能を果たすことがさらに好ましい。
【0039】
インナーカテーテルの長さを微調整する他の方法としては、図8に示すような蛇腹式のアタッチメント32の他、図9に示すような複数の着脱式アタッチメント33の組合せであってもよく、さらに図10に示すようなロックリングを締め付けながら長さを調整および固定するアタッチメント34であってもよい。長さの微調整の範囲は先述した通りである。
【0040】
インナーカテーテル2の長さを微調整するための方法としては、上記のアタッチメントの他、アタッチメントの構造がアウターカテーテル1のコネクター部12と一体化していてもよい。
【0041】
本発明の体内留置用カテーテルにおいては、インナーカテーテル2の未使用時にアウターカテーテル内腔に血栓が形成されて閉塞することを防止するために、図5に示すようなオブチュレーター(内栓)3を装着することもできる。
【0042】
オブチュレーター3の構造としては、アウターカテーテルの内腔閉塞させる太さの棒状オブチュレーター本体とアウターカテーテル1に装着させるためのアダプター23の構造を有していればよい。アダプター23の構造はインナーカテーテル2ものと基本的には同じでよい。
【0043】
本発明の体内留置用カテーテルは、留置中に血液に接触して血栓が形成されるのを防ぐために、抗血栓性処理が施されていてもよい。
【0044】
抗血栓性処理には、ウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを化学結合法により基材のカテーテル表面に固定化する方法(詳細は、特許1406830号参照)、ヘパリン等の抗凝固因子をカテーテル表面にコーティングする方法等様々な方法が開発されているが、特定の方法に限定されるものではない。
【0045】
また、抗血栓性処理の範囲は血液に接触する部分であればカテーテルの外面、内面またはその両方であってもよい。
【0046】
本発明の体内留置用カテーテルは、カテーテル留置中に細菌や真菌、ウィルスなどに感染することを防止するため、基材のカテーテルの全体または一部の表面に抗菌剤や抗生物質などがコーティングしているもの(例えば、特開2001−276210号公報参照)や、抗菌剤が基材に直接混練されているもの(例えば、特開平8−157641号公報参照)であってもよい。
【0047】
本発明の体内留置用カテーテルは、皮下組織または血管への挿入を容易にするため、基材表面を親水性高分子化合物でコーティングするなどの潤滑性処理が施されているもの(例えば、特開平10−248919号公報参照)であってもよい。潤滑性処理する方法は多くの方法が開発されているが、特にどの方法を選択してもよい。また、潤滑性処理の範囲は人体に接触する部分、またはカテーテルを留置する用具等に接触する部分であれば特にどの部分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の体内留置用カテーテルにおけるアウターカテーテルと2つのルーメンを有するインナーカテーテルを組合せ、皮膚から皮下組織を介して血管内に留置されている一例を示す概略図である。(A)全体形状の一例を示す概略図(B)カテーテルA-A’部分の断面図(C)インナーカテーテルが挿通された皮下組織のトンネル部分B-B’の断面図
【図2】本発明におけるインナーカテーテルが抜去された状態のアウターカテーテルの一例(A)皮下組織に留置されたアウターカテーテルの概略図(B)カテーテルA-A’部分の断面図(C)皮下組織のトンネルB-B’部分の断面図
【図3】本発明におけるアウターカテーテルのコネクター部内面を示す断面図の一例(A)コネクター部の横方向からの透視図(B)カテーテルB-B’部分の断面図
【図4】本発明の体内留置用カテーテルにおけるアウターカテーテルにインナーカテーテルを挿入し血管内に留置する方法を示す一例(A)ガイドワイヤーを介してインナーカテーテルを血管内に留置する方法の一例を示す概略図(B)カテーテルA-A’部分の断面図
【図5】本発明におけるインナーカテーテル非使用時にアウターカテーテルにオブチュレーター(内栓)を装着した一例を示す概略図(A)オブチュレーターが装着されたアウターカテーテルの概略図(B)カテーテルA-A’部分の断面図(C)皮下組織のトンネルB-B’部分の断面図
【図6】従来技術であるコアクシャル型ブラッドアクセスカテーテルの形状の概略図(A)全体形状を示す概略図(B)カテーテルA-A’部分の断面図
【図7】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができるネジ式アタッチメント31の構造の一例を示す概略図(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図8】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる蛇腹式アタッチメント32の構造の一例を示す概略図(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図9】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる組合せ式アタッチメント33の構造の一例を示す概略図(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図10】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる締め付け固定式アタッチメント34の構造の一例を示す概略図(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図(C)アタッチメントにインナーカテーテルのロックリング24が嵌合している概略図(D)アタッチメントの内腔の構造を示す概略図
【符号の説明】
【0049】
1 アウターカテーテル
2 インナーカテーテル
3 オブチュレーター(内栓)
4 従来のコアクシャル型カテーテルのアウターカテーテル
5 従来のコアクシャル型カテーテルのインナーカテーテル
6 皮膚
7 皮下組織
8 血管
9 血管刺入部
10 トンネル
11 皮膚刺入部
12 コネクター部
13 クランプチューブ部
14 糸掛部
15 ハブ
16 クランプ
17 カフ
18 逆流防止弁
19 ネジ部
20 アウターカテーテルの先端部
21 インナーカテーテルの先端部
22 インナーカテーテルの側孔
23 アダプター部
24 ロックリング部
25 雄ルアーテーパー部
26 雌ルアーテーパー部
27 ガイドワイヤー
28 オブチュレーター(内栓)の先端
29 側注部
31 長さの微調整が可能なネジ式アタッチメント
32 長さの微調整が可能な蛇腹式アタッチメント
33 長さの微調整が可能な組合せ式アタッチメント
34 長さの微調整が可能な締め付け固定式アタッチメント
41 アタッチメント本体のネジ構造
42 アタッチメント本体の伸縮自在の蛇腹式アタッチメント
43 複数の組合せ式アタッチメント
44 アタッチメント本体の溝付ネジ構造
45 インナーカテーテル締め付け用ロックリング
46 溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚刺入部及び皮下組織を介して体外から体内の血管、体液管又は臓器に留置する体内留置用カテーテルであって、該体内留置用カテーテルはアウターカテーテルと、該アウターカテーテルの内腔に挿通され、該アウターカテーテルと着脱可能に係合するインナーカテーテルとから構成され、体内に留置した際に、該インナーカテーテルは血管、体液管又は臓器まで到達する長さを有し、該アウターカテーテルはその先端部が皮下組織内に止まる長さを有していることを特徴とする体内留置用カテーテル。
【請求項2】
アウターカテーテルの内腔が、単層又は2層以上であることを特徴とする請求項1記載の体内留置用カテーテル。
【請求項3】
インナーカテーテルの内腔が、単層又は2層以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の体内留置用カテーテル。
【請求項4】
インナーカテーテルが、1本又は2本以上からなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の体内留置用カテーテル。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−330688(P2007−330688A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169006(P2006−169006)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(397048379)
【出願人】(506211285)
【出願人】(504224588)
【Fターム(参考)】