説明

体外循環回路システム及び体外循環回路システム梱包体

【課題】装置本体にプレコネクトされた回路チューブのキンクを防止し、輸送時の振動及び長期保管時等による損傷を防止する体外循環回路システム及び体外循環回路システム梱包体の提供。
【解決手段】この体外循環回路システム1は、人工肺11を含む装置本体10と、それにプレコネクトされた回路チューブ20とを有し、本体当接面と、側壁と、本体当接面に対して所定間隔で支持される支持面とを有する枠状のホルダ30を備え、このホルダ30が装置本体10の側面に着脱可能に固定され、その支持面に、回路チューブ20が巻き取られた状態で載置されて着脱可能に固定されている。また、循環システム1を梱包ケース50に収容してなる体外循環回路システム梱包体5は、梱包ケース50内にホルダ30が上向きに収容された状態で、支持面とほぼ同じ高さとなる受け面56aが両側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓手術等において用いられる、血液を体外循環させて処理する体外循環回路システム、及び、同体外循環回路システムを輸送するための体外循環回路システム梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓手術においては、心臓を一時的に停止させ血流を遮断した状態で処置を施すことが一般的であり、その際には、血液を体外循環させて処理する体外循環回路システムが用いられている。
【0003】
従来のこの種の体外循環回路システムは、血液中の炭酸ガスを除去すると共に、血液に酸素を供給する役割をなす人工肺を備える装置と、この装置に接続される複数のチューブとを有しており、装置及び複数のチューブが梱包ケースにそれぞれ梱包されて医療現場に輸送されるようになっている。そして、心臓手術を施す前に梱包ケースから装置及びチューブを取り出して、複数のチューブの一端を、装置の所定箇所にそれぞれ接続すると共に、同複数のチューブの他端を、血液を循環させる人工心臓や、静脈側の血液通路(脱血回路)、動脈側の血液通路(送血回路)等にそれぞれ接続することにより、血液の体外循環がなされるようになっている。
【0004】
しかしながら、上記複数のチューブの接続作業は、煩雑で時間がかかり作業性に問題があるうえ、誤接続の可能性があることから、近年では、装置に予めチューブを接続しておき、それを一つの梱包ケースにまとめて収納し、医療現場に輸送するようになっている。
【0005】
上記のようにチューブを装置に予め接続しておくことを、いわゆる「プレコネクト」というが、このようなプレコネクトされたシステムとして、下記特許文献1には、静脈リザーバー、人工肺及び動脈フィルタ等の複数の部材からなる装置を有し、該装置の各部材に複数のチューブがプレコネクトされており、更に、梱包ケース内の下方部分に、複数のチューブがプレコネクトされた装置を収納すると共に、その上に巻回された複数のチューブが載置された、体外循環回路システムの梱包体が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、血液貯蔵器及び血液酸素付加器(人工心肺に相当)を有する血液処理装置と、該血液処理装置の背面に設けられたキャリアと、所定深さの箱状をなし、前記血液処理装置の側方に装着されたトレーとを有しており、血液処理装置に接続された複数のチューブが適宜巻回されて、前記トレーに収容するように構成された体外循環回路システムのパックアセンブリが開示されている。
【特許文献1】特許第3738211号公報
【特許文献2】特表2002−536131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように、装置に複数のチューブがプレコネクトされてなるシステムを梱包ケース内に収容する際には、梱包ケースに収容可能な程度に、チューブをコンパクトな巻き取り形状に巻き取る必要がある。しかしながら、チューブをコンパクトな巻き取り形状とした場合、チューブが折れ曲がってキンクしたり、チューブどうしが絡み合ったりするという不都合が生じることがあった。チューブがキンクした場合には、その内部を流れる血液が詰まったり流量が低下したりする可能性があるため、手術時に使用することができない場合がある。また、チューブが絡まった場合は、その絡みを直す必要があるので、脱血回路や送血回路等への接続作業性が低下し、更に、チューブが複雑に絡み合っている場合には、本体からチューブを一旦取り外して絡みを直した後、再度本体に接続することもあり、接続作業性が大きく低下する結果となる。
【0008】
そのため、複数のチューブは、比較的大きな巻き取り形状として、それに対応して大きな梱包ケースに体外循環回路システムを梱包することが多い。しかしながら、その場合、システムの保管に大きなスペースが必要であると共に、輸送可能なシステム個数が減少するため輸送効率が低下し、更に、梱包ケースからシステムを取り出した後の不要な廃棄物が増えるという問題が生じる。
【0009】
また、引用文献1の梱包体においては、複数のチューブが装置上方に載置された状態で梱包ケース内に収容されているが、チューブの巻き取り形状が大きな場合は、装置上方にて支持しきれず、チューブの一部がはみ出てしまうことがあった。この状態で、医療現場に輸送された場合、輸送時における衝撃や振動及び長期保管時等によって、チューブが下方に落ち込んでしまってキンクする可能性があった。
【0010】
ところで、所定長さで伸びる複数のチューブを所定の巻き取り形状でまとめた場合、それは比較的大きな重さを有している。上記引用文献2のシステムのパックアセンブリにおいては、血液処理装置の側方に装着されたトレーに、巻き取られたチューブが収容されて、該トレーの底面によって前記チューブの重さが支持されるようになっている。そのため、同システムのパックアセンブリが梱包ケースに収容された場合に、輸送時の衝撃や振動及び長期保管時等によって、巻き取られたチューブの重さがトレーの底面に強く作用して、本体やチューブに損傷が生じる可能性があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、装置本体にプレコネクトされた回路チューブのキンクや絡み合いを防止できると共に、輸送時の衝撃や振動及び長期保管時などによって装置本体や回路チューブが損傷するのを防止できる、体外循環回路システム及び体外循環回路システム梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の体外循環回路システムは、少なくとも人工肺を含む装置本体と、この装置本体に接続される回路チューブとをプレコネクトした体外循環回路システムにおいて、前記装置本体の側面に当接される本体当接面と、この本体当接面の両側から立ち上がる側壁と、この側壁を介して前記本体当接面に対して所定間隔で支持される支持面とを有する枠状のホルダが設けられ、このホルダの前記本体当接面が前記装置本体の側面に着脱可能に固定され、前記ホルダの前記支持面に、前記回路チューブが巻き取られた状態で載置されて着脱可能に固定されていることを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、装置本体に予め接続された回路チューブを、コンパクトな巻き取り形状にして装置本体に付設することができ、体外循環回路システムの梱包や取出し作業を容易にすることができる。また、回路チューブは、比較的面積の広いホルダの支持面上に支持することができるので、回路チューブの折れ曲がりによるキンクや、チューブどうしの絡み合いなどを防止できる。更に、回路チューブをホルダの支持面に載置することにより、枠状をなすホルダのクッション性によって、輸送時の衝撃や振動及び長期保管時などに対して、回路チューブの重さを柔らかく受けることができ、装置本体や回路チューブの損傷を防止できる。更にまた、梱包体から体外循環回路システムを取出すときには、ホルダを片手で持ち上げることにより、容易に取出すことができる。更に、セッティングをスムーズに短時間で行え、セッティング後はホルダを取り去ることができる。
【0014】
本発明の体外循環回路システムにおいては、前記ホルダの前記支持面にトレーが取付けられて、このトレー内に前記回路チューブの少なくとも一部が収容されていることが好ましい。これによれば、回路チューブの少なくとも一部をトレーに収容して、ホルダ本体の支持面に固定するので、回路チューブをより安定して保持することができ、回路チューブのばらけをより確実に防止できる。
【0015】
一方、本発明の体外循環回路システム梱包体は、上記体外循環回路システムを梱包ケースに収容してなる体外循環回路システム梱包体であって、前記梱包ケースの内部には、前記体外循環回路システムを前記ホルダが上向きになるようにして収容した状態で、前記ホルダの支持面とほぼ同じ高さとなる受け面が両側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、回路チューブの巻き取り径が大きくて、支持面の両側からはみ出すような場合でも、回路チューブの両側にはみ出した部分が、梱包ケース内の受け面によって支持されるので、輸送時の衝撃や振動及び長期保管時に回路チューブが梱包ケースの下方に落ち込んで折れ曲がり、キンクすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の体外循環回路システムによれば、装置本体に予め接続された回路チューブを、コンパクトな巻き取り形状にして装置本体に付設でき、梱包や取出し作業を容易にすることができる。また、回路チューブは、比較的面積の広いホルダの支持面上に支持することができるので、回路チューブのキンクや絡み合いなどを防止できる。更に、回路チューブをホルダの支持面に載置することにより、枠状をなすホルダのクッション性によって、輸送時の衝撃などに対して、回路チューブの重さを柔らかく受けることができ、装置本体や回路チューブの損傷を防止できる。
【0018】
一方、本発明の体外循環回路システム梱包体によれば、回路チューブの巻き取り径が大きくて、支持面の両側からはみ出すような場合でも、回路チューブの両側にはみ出した部分が、梱包ケース内の受け面によって支持されるので、輸送時の衝撃や振動及び長期保管時に回路チューブが梱包ケースの下方に落ち込んで折れ曲がり、キンクすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の体外循環回路システム及び体外循環回路システム梱包体の一実施形態を説明する。
【0020】
心臓手術の際には、心臓を一時的に停止させ血流を遮断した状態にして、心臓に処置を施すようになっているが、本発明の体外循環回路システムは、例えば、このような心臓手術の際に用いられるものであって、体内から血液を取り出して、その血液に所定の処理を施した後、再び体内に戻す循環回路をなすものである。
【0021】
図8には、心臓手術時における体外循環の概略構成図が示されている。患者の静脈には、脱血カテーテルK1が接続されており、この脱血カテーテルK1により炭酸ガスを多く含む血液が体外に取り出されて、後述する装置本体10のリザーバー13に送られる。この静脈側における血液通路が脱血回路C1をなしている。患者の動脈には、送血カテーテルK2が接続されており、人工肺11(後述する)により酸素が供給された血液が体外から再び体内に戻されるようになっており、この動脈側における血液通路が送血回路C2をなしている。更に、心臓から出血する血液を回収する血液通路である吸引回路C3や、停止した心臓組織のダメージを防ぐ心筋保護液を投与する心筋保護回路C4等の、複数の回路が構成されている。なお、送血回路C2における血液の送液は、後述するポンプユニット15によってなされ、脱血回路C1や吸引回路C3等における血液の送液は、ローラポンプRによってなされている。
【0022】
図1に示すように、この体外循環回路システム1(以下、「循環システム1」という)は、少なくとも人工肺11を有する装置本体10と、該装置本体10に接続される回路チューブ20とを有しており、この回路チューブ20が装置本体10にプレコネクトされた状態をなしている。そして、この循環システム1は、図1及び図4に示す梱包ケース50に収容されて、もう一つの本発明である体外循環回路システム梱包体5(以下、「システム梱包体5」という)を構成している(図1,5参照)。
【0023】
まず、循環システム1について説明する。図2を併せて参照すると、循環システム1を構成する装置本体10は、円筒ケース状をなす人工肺11と、同じく円筒ケース状をなし前記人工肺11に隣り合った位置に同軸的に設けられたリザーバー13とを有している。前記人工肺11の内部には、複数の中空糸膜が配設されていて、血液中の炭酸ガスを除去すると共に、血液に酸素を供給する役割をなしている。また、人工肺11に内蔵された中空糸膜の外周には、図示しない動脈フィルタが配設されており、後述するポンプユニット15によって、動脈側の血液通路である送血回路C2(図8参照)を流れる血液中の異物を取り除くようになっている。一方、リザーバー13は、静脈側の血液通路である脱血回路C1(図8参照)を流れる血液や、心臓に処置を施す際に心臓から出血する血液を回収するための血液通路である吸引回路C3(図8参照)を流れる血液などを貯留するためのものである。このリザーバー13は、図2及び図7に示すように、前記人工肺11から遠ざかるにつれて次第に拡径した円筒状をなしている。
【0024】
また、この装置本体10は、ポンプユニット15を更に備えている。このポンプユニット15は、回転する羽根車の遠心力によって送液する遠心ポンプで、人工肺11及びリザーバー13にチューブを介して接続されていて、リザーバー13に貯留された血液を人工肺11に送ると共に、人工肺11により炭酸ガスが除去され酸素が付加された血液を、送血回路C2を通して液体内に再び送り込む人工心臓としての役割をなしている。
【0025】
上記の装置本体10の各部材には、血液を流出入させるための図示しないポートが複数設けられている。そして、この循環システム1においては、これら複数のポートに複数の回路チューブ20の一端部がプレコネクトされている(予め接続されている)。なお、これら複数の回路チューブ20の他端部は、図8に示す脱血回路C1や送血回路C2等に接続される。そして、これらの複数の回路チューブ20は、一端部が装置本体10にプレコネクトされた状態で、一本ずつ或いは複数本ずつ適宜まとめられ、それらが例えば環状に巻かれて、所定の巻き取り形状に巻き取られている。
【0026】
そして、本発明の循環システム1においては、所定の巻き取り形状で巻き取られた複数の回路チューブ20を装置本体10外周にて支持すべく、装置本体10にホルダ30が装着されている。図3を併せて参照して、この実施形態におけるホルダ30について説明すると、このホルダ30は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂から形成されたもので、前記装置本体10の軸方向に沿って長く伸び、装置本体10の周方向に沿って短く形成された板状をなし、装置本体10の側面に当接される本体当接面31と、該本体当接面31の幅方向両側(装置本体10の周方向に沿った方向)から所定高さで立ち上がる一対の側壁33,33と、装置本体10の軸方向に長く周方向に短い板状をなし、前記この一対の側壁33,33に連結されると共に、同側壁33,33を介して前記本体当接面31に対して所定間隔で支持される支持面35とを有する枠状をなしている。
【0027】
すなわち、このホルダ30は、本体当接面31と側壁33,33と支持面35とで囲まれて、その内部に装置本体10の軸方向に沿った空隙が形成された枠状をなしており、内部に腕を差し込む、又は、掴んで片手で持ち上げることができるようになっている。また、ホルダ30は、内部に空隙が介在した枠状であるため、該空隙及び前記側壁33がクッションとなって、支持面35により支持された回路チューブ20の重さが、本体当接面31に直接作用しないようになっている。
【0028】
また、前記本体当接面31は、図3(b),(c)に示すように、前記装置本体10のリザーバー13の形状、すなわち、人工肺11から遠ざかるほど次第に拡径する外周形状に対応した三次元形状をなしている。具体的には、本体当接面31は、図3(b)に示すように、先端部(ホルダ30を装置本体10に装着したときに、人工肺11側に位置する端部)から基端部に向かって次第に高さが高くなるカーブ形状をなし、底上げされた形状をなすと共に、図3(c)に示すように側方から見たときに、円筒状をなすリザーバー13の周方向に沿って湾曲した形状をなしている。それによって本体当接面31をリザーバー13の外周上に載置したときに、本体当接面31がリザーバー13の外周にフィットしてほぼ隙間なく当接し、ホルダ30が装置本体10にガタつきなく固定できるようになっている。
【0029】
更に、図3(a)に示すように、本体当接面31の基端側における幅方向両側からは、帯状のバンド装着片31a,31aが突設されており、その先端に形成されたスリットに2分割されたホルダ固定用バンド36がそれぞれ取り付けられている。このホルダ固定用バンド36の各先端部には面ファスナーが固着され、両バンド36の先端部どうしを脱着可能となっている。また、本体当接面31の先端側の幅方向両側には、図示しない一対のスリットが形成されている。この一対のスリットに、両端に面ファスナーを設けたホルダ固定用バンド37が挿通されており、ホルダ固定用バンド37の両端部どうしが脱着可能となっている。これらのホルダ固定用バンド36,37によって、装置本体10に対してホルダ30を着脱可能に固定することができるようになっている。
【0030】
一方、回路チューブ20が載置される支持面35は、図3(c)に示すように、その幅W2が本体当接面31の幅W1よりも大きく、本体当接面31よりも支持面35の方が幅広とされており(W1<W2)、回路チューブ20の載置面を広くとることが可能となっている。また、本体当接面31の屈曲形状に対して、支持面35は、装置本体10の軸心に対してほぼ平行とされた平坦面をなしており、回路チューブ20を安定して支持可能となっている。更に、図3(a)に示すように、支持面35の長さ方向両側に、バンド挿通孔35a,35aが対向して設けられており、これらが支持面35の幅方向中央部に複数対設けられている。対向するバンド挿通孔35a,35aには、両端に面ファスナーを設けたチューブ固定用バンド38が挿通されて、前記ホルダ固定用バンド36,37に直交した状態で支持面35に装着されていると共に、バンド38の両端どうしを脱着可能となっており、支持面35上に載置された回路チューブ30を固定できるようになっている(図1,2参照)。更に、支持面35の先端部上方からは、断面逆L字状をなす把持部39が幅方向に沿って突設されていて(図3(a),(b)参照)、循環システム1を梱包ケース50から取り出す際に、ホルダ30を把持する部分となっており(図6参照)、それにより循環システム1を片手で持ち上げやすくなっている。
【0031】
また、回路チューブ20は、ホルダ30の支持面35上に載置されるようになっているが、図1及び図2に示すようなトレー40を支持面35上に載置して、これに回路チューブ20の一部を収容するようにしてもよい。このトレー40は、上面及び後端面(リザーバー13側)が開口すると共に、その周縁にフランジ部41aが形成された箱状の受け容器41と、該受け容器41のフランジ部41aに当接するフランジ部43aを有すると共に、受け容器41の上方に載置される蓋43とから構成されている。
【0032】
次に上記構成からなる循環システム1の作用効果について説明する。まず、ホルダ30の本体当接面31を、装置本体10のリザーバー13外周に当接させると共に、各ホルダ固定用バンド36,37をリザーバー13外周に巻き付けて、面ファスナーによって各バンド36,37の両端どうしを固着することにより、装置本体10にホルダ30を固定する。
【0033】
次いで、複数の回路チューブ20の一端部を、装置本体10の各部材に設けたポートにプレコネクトし、その状態で、回路チューブ20を一本ずつ或いは複数本ずつ適宜まとめて、環状や楕円形状等に巻回することにより、複数の回路チューブ20を所定の巻き取り形状となるように巻き取る。なお、回路チューブ20を予め所定の巻き取り形状に巻き取っておき、その後に回路チューブ20の一端部を装置本体10のポートにプレコネクトしてもよい。
【0034】
そして、所定の巻き取り形状とされた回路チューブ20を、ホルダ30の支持面35上に載置する。このとき、この実施形態においては、支持面35上にトレー40が載置されているので、図2に示すように、このトレー40の受け容器41内に回路チューブ20一部を収容することができ、それによって、支持面35に回路チューブ20を直接載置する場合に比べて、回路チューブ20をより安定して支持することができ、回路チューブ20のばらけをより確実に防止することができる。
【0035】
また、図2に示すように、回路チューブ20の一部を袋体45,46に収容して、巻き取られた部分を覆うようにしてもよい。特に患者の体内に挿入される部分に用いられる回路チューブ20を、袋体により覆うことが好ましく、それにより体内に挿入される回路チューブ20の外部汚染を防止して、衛生状態を良好に保つことができる。この実施形態では、小さな巻き取り形状で巻き取られた回路チューブ20が小さな袋体45に収容され、それよりも大きな巻き取り形状で巻き取られた他の回路チューブ20が大きな袋体46に収容される。そして、小さな袋体45に覆われた回路チューブ20は、受け容器41内に収容された回路チューブ20の上方に載置されて、その状態で蓋43が被せられて、トレー40内に複数の回路チューブ20がパッケージングされる。
【0036】
その後、トレー40の蓋43上に大きな袋体46に覆われた回路チューブ20を載置して、面ファスナーによってチューブ固定用バンド38の両端どうしを固着することにより、トレー40や、該トレー40内に収容された回路チューブ20、及び、トレー40上に載置された回路チューブ20が、チューブ固定用バンド38によって固定される。なお、図7に示すように、袋体46よりも更に大きく形成された袋体47によって、トレー40及びその上に載置された袋体46を含め全体を覆いシールして滅菌をおこなう。
【0037】
以上説明したように、この循環システム1においては、装置本体10に固定したホルダ30の支持面35上に、回路チューブ20が巻き取られた状態で載置されているので、装置本体10にプレコネクトされた回路チューブ20を、コンパクトな巻き取り形状にして装置本体10に付設することができ、循環システム1の梱包ケース50への梱包や、同梱包ケース50からの取り出し作業を容易に行うことができる。また、回路チューブ20は、比較的面積の広いホルダ30の支持面35上に直接又はトレー40等を介して間接的に支持することができるので、回路チューブ20の折れ曲がりによるキンクや、チューブどうしの絡み合いなどを防止できる。更に、回路チューブ20をホルダ30の支持面35に直接又は間接的に載置することにより、枠状をなすホルダ30のクッション性によって、輸送時の衝撃や振動などに対して、回路チューブ20の重さを柔らかく受けることができ、装置本体10や回路チューブ20の損傷を防止できる。更にまた、システム梱包体5から循環システム1を取出すときには、図6に示すように、ホルダ30の内部に腕を差し込んで持ち上げることにより、容易に取出すことができる。更に、セッティングをスムーズに短時間で行え、セッティング後はホルダ30を装置本体10から取り去ることができる。
【0038】
次に、上記の循環システム1を梱包ケース50に収容してなる、本発明のシステム梱包体5について、図1,4及び5を参照して説明する。図1に示すように、このシステム梱包体5は、循環システム1と、この循環システム1が収容される梱包ケース50とを有しており、更に前記梱包ケース50は、一方向に長く伸びる横長の有底箱状をなし、その上端周縁に上方開口部を開閉可能な複数の天板51aを有する外ケース51と、該外ケース51よりも一回り小さな寸法とされて、同外ケース51内に収容される内ケース53とを有している。
【0039】
内ケース53は、前記外ケース51と同様に、横長の有底箱状をなし、その上端周縁に上方開口部を開閉可能とした複数の天板53aが形成されている。更に、図4に示すように、この内ケース53内には、複数の帯状板が縦横に組み合わされて格子状をなす緩衝部材54と、該緩衝部材54の上方に載置される略長方形の枠形状をなす底蓋55と、該底蓋55の長さ方向両側辺の上面に載置される、横長のブロック状をなす一対の側方支持部材56,56と、該一対の側方支持部材56,56上に載置されると共に、長さ方向両側に手を差し込むための孔57aを設けた中蓋57とを有している。
【0040】
また、前記底蓋55は、その長さ方向両側に装置本体10の軸方向長さに適合する2つの切れ目を設けると共に、長さ方向中央に別の切れ目を形成して、所定荷重が作用すると2つの分割片55a,55aに分割される構造をなしており、その上面にはエアーパッキン55bが貼着されている。その結果、内ケース53内に装置本体10が収容されると、エアーパッキン55bを介して2つの分割片55a,55aが下向きに開いて、装置本体10の下方部分が底蓋55に潜り込むようにして支持される(図5参照)。
【0041】
また、図5に示すように、梱包ケース50内に循環システム1のホルダ30を上向きになるように収容した状態で、回路チューブ20を支持するホルダ30の支持面35とほぼ同じ高さとなるように、前記一対の側方支持部材56,56の上端が所定高さで伸びており、その上端部が、ホルダ30の両側からはみ出した回路チューブ20を支持可能な受け面56aをなしている。なお、前記受け面56aは、横長ブロック状をなし、底蓋55の両側上方に載置された側方支持部材56の上端面からなるが、これに限定されるものではなく、例えば、内ケース53の側板からフランジ状のつば部を突設させて、これを受け面56aとしてもよい。
【0042】
次に上記構成からなるシステム梱包体5の作用効果について説明する。まず、外ケース51内に内ケース53を収容し、同内ケース53に緩衝部材54、底蓋55を順次載置すると共に、底蓋55の長さ方向両側の上方に一対の側方支持部材56,56をそれぞれ載置する。その状態で、図1に示すように、回路チューブ20がプレコネクトされた循環システム1を、ホルダ30が上向きになるように収容する。すると、底蓋55の2つの分割片55a,55aが下向きに開いて、装置本体10の下方部分が底蓋55内に潜り込むように支持される。
【0043】
このとき、このシステム梱包体5においては、梱包ケース50内には、循環システム1をホルダ30が上向きになるようにして収容した状態で、ホルダ30の支持面35とほぼ同じ高さとなる受け面56aが両側に設けられているので、回路チューブ20の巻き取り径が大きくて、支持面35の両側からはみ出すような場合でも、図5に示すように、回路チューブ20の両側にはみ出した部分が、前記受け面56aによって支持されるので、回路チューブ20が梱包ケース50の下方に落ち込んで折れ曲がり、キンクすることを防止することができる。
【0044】
上記のように、梱包ケース50内に循環システム1を収容した後は、一対の側方支持部材56,56上に中蓋57を載置して、複数の天板53aを閉じて内ケース53の開口部を閉塞すると共に、外ケース51の天板51aも閉じて、その開口部を閉塞することにより、循環システム1が密閉状態で梱包ケース50内に箱詰めされて、システム梱包体5が構成される。
【0045】
上記状態で医療現場にシステム梱包体5が輸送され、心臓手術前に両ケース51,53の天板51a,53aをそれぞれ開いて中蓋57を取り出すと共に、図6に示すように、上向きに収容されたホルダ30の内部に手を差し入れて、支持面35上方に設けた把持部39を把持して持ち上げることにより、循環システム1を梱包ケース50から容易に取り出すことができる。なお、片腕で循環システム1を持ち上げてもよいが、一方の手で循環システム1をサポートしつつ、他方の手でホルダ30を持ち上げるようにしてもよい。
【0046】
上記のように循環システム1を取り出したら、図7に示すように、体外循環回路の所定箇所に立設された支持ポール60に設けられた略U字状の支持ブラケット61に、循環システム1のホルダ30とは反対側の部分を装着して、支持ポール60に循環システム1を固定する。その後、袋体45,46,47、及び、トレー40等を取り外して、装置本体10に一端部がプレコネクトされた回路チューブ20の他端部を、必要とされる各回路にそれぞれ接続すると共に、ホルダ30を装置本体1から取り外すことにより、心臓手術に必要な体外循環回路が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の体外循環システム及び体外循環システム梱包体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の体外循環システムの斜視図である。
【図3】同体外循環システムのホルダを示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視線にける断面図、(c)は側面図である。
【図4】本発明の体外循環システム梱包体の分解斜視図である。
【図5】同体外循環システム梱包体の断面図である。
【図6】同体外循環システム梱包体から体外循環システムを取り出す際の状態を示す斜視図である。
【図7】取り出した体外循環システムを支持ポールに固定する際の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の体外循環システムを用いた、体外循環回路の概略構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 体外循環回路システム(循環システム)
5 体外循環回路システム梱包体(システム梱包体)
10 装置本体
11 人工肺
13 リザーバー
15 ポンプユニット
20 回路チューブ
30 ホルダ
31 本体当接面
31a バンド装着片
33 側壁
35 支持面
35a バンド挿通孔
36,37 ホルダ固定用バンド
38 チューブ固定用バンド
39 把持部
40 トレー
41 受け容器
41a フランジ部
43 蓋
43a フランジ部
45,46,47 袋体
50 梱包ケース
51 外ケース
51a 天板
53 内ケース
53a 天板
54 緩衝部材
55 底蓋
55a 分割片
55b エアーパッキン
56 側方支持部材
56a 受け面
57 中蓋
60 支持ポール
61 支持ブラケット
C1 脱血回路
C2 送血回路
C3 吸引回路
C4 心筋保護回路
K1 脱血カテーテル
K2 送血カテーテル
R ローラポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも人工肺を含む装置本体と、この装置本体に接続される回路チューブとをプレコネクトした体外循環回路システムにおいて、
前記装置本体の側面に当接される本体当接面と、この本体当接面の両側から立ち上がる側壁と、この側壁を介して前記本体当接面に対して所定間隔で支持される支持面とを有する枠状のホルダが設けられ、
このホルダの前記本体当接面が前記装置本体の側面に着脱可能に固定され、前記ホルダの前記支持面に、前記回路チューブが巻き取られた状態で載置されて着脱可能に固定されていることを特徴とする体外循環回路システム。
【請求項2】
前記ホルダの前記支持面にトレーが取付けられて、このトレー内に前記回路チューブの少なくとも一部が収容されている請求項1記載の体外循環回路システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の体外循環回路システムを梱包ケースに収容してなる体外循環回路システム梱包体であって、前記梱包ケースの内部には、前記体外循環回路システムを前記ホルダが上向きになるようにして収容した状態で、前記ホルダの支持面とほぼ同じ高さとなる受け面が両側に設けられていることを特徴とする体外循環回路システム梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−106445(P2009−106445A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280692(P2007−280692)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(394023241)株式会社ウベ循研 (13)
【Fターム(参考)】