説明

体細胞性及び卵巣癌の診断のためのインビトロ診断方法

本発明は、核酸分子、該核酸分子のフラグメント及び該核酸分子のバリアントから選択される1つの要素の、任意の型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、上記の要素のいずれかの少なくとも1つが、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現され、それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌細胞が、上記の要素の少なくとも1つを異常発現する使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体細胞性及び卵巣癌の診断のためのインビトロ診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精子形成は、多数の因子の協調した作用を含む細胞分化の独特のプロセスであり、これらの因子のうち多くは、精巣に限定された発現パターンを示す。精巣特異的遺伝子のいくつかのリストがマウス(Chalmelら、2007; Schultzら、2003)を含むいくつかの種について確立されているが、最近まで、ヒト遺伝子については利用可能なものはなかった。最近、2つのグループが、精巣で発現されるヒト遺伝子のリストを提案している(Bock-Axelsenら、2007; Chenら、2005)。しかし、用いられた方法は、精巣におけるそれらの厳密な発現にしたがって遺伝子を分類することを可能にしなかった。
【0003】
精巣特異的(TS)遺伝子は、体細胞において能動的に抑制される。しかし、細胞形質転換の間に、いくつかの精巣特異的遺伝子が抑制解除され、コードされた因子の不正な発現を導くことが観察されている。これらの因子は、それらに対して指向された免疫応答を誘導するそれらの能力により、「癌精巣」(CT)抗原と命名されている。最初は、CT因子は、いくつかの体細胞性癌を調節解除することが見出された。対照的に、CT因子は、未分化精巣腫瘍に通常は存在しない。
【0004】
実際に、CT遺伝子によりコードされるCT因子は、精巣(精巣特異的遺伝子;TS)及び胎盤(胎盤特異的遺伝子;PS)の生殖細胞に限定された発現を有する遺伝子に相当する。より具体的には、これらの発現は、精原細胞、精母細胞、精子細胞、及び栄養芽細胞のような胎盤細胞のような細胞に制限される。
いくつかのCTは、膵臓、肝臓及び脾臓のような非配偶子形成(nongametogenic)組織において、生殖細胞で観察されるものよりもはるかに低いレベルで発現され得る。
【0005】
CT遺伝子は、以下の共通の特徴を共有する遺伝子ファミリーに属する:
- これらは、多様な悪性腫瘍において発現し、
- これらは、免疫原性であり得る。
CT遺伝子の40を超えるファミリーが、免疫原性特性、発現プロファイル及びバイオインフォーマティクスによる方法により現在までに同定されているが(概説として、(Costaら、2007; Kalejs及びErenpreisa 2005; Meklatら、2007; Scanlanら、2002; Scanlanら、2004; Simpsonら、2005)を参照)、それらの特定の機能についてはほとんど知られておらず、幹細胞生物学及び癌とのそれらの機能的な関係はほとんど調べられていない。
【0006】
CT遺伝子は、特に興味が持たれている。これらがコードする因子は、適切な診断マーカー及び治療のターゲットとしてのそれらの高い能力が示されている。実際に、これらの因子は、それらに対して指向された免疫応答を誘導するそれらの能力により、「癌精巣抗原」と命名されている。現在までに、CT遺伝子の83を超えるファミリーが同定されている(概説のためにhttp://www.cta.lncc.br/、Chenら、2006 Genes Chromosomes Cancer 45: 392〜400; Chenら、2005b Cancer Immun 5: 9; Costaら、2007 Stem Cells 25: 707〜11; Heidebrechtら、2006 Clin Cancer Res 12: 4804〜11; Kalejs及びErenpreisa 2005 Cancer Cell Int 5: 4; Meklatら、2007 Br J Haematol 136: 769〜76; Scanlanら、2002; Scanlanら、2004; Simpsonら、2005 Nat Rev Cancer 5: 615〜25 ; Hofmannら、2008 Dec 23;105(51):20422〜7)。
CTの発見及び研究は、多くの希望と興味とを生み出すが、癌細胞でのそれらの散発的で予測不能な発現により、癌の診断及び/又は治療においてそれらを大規模に用いることが妨げられている。
【0007】
さらに、癌診断マーカーを提供するために、CT遺伝子を大規模に同定するストラテジーが研究により提案されている。
WO/2006/029176 (Scanlanら)は、核酸分子、ポリペプチド及びそれらのフラグメントの、癌のような疾患の診断及び治療のための方法及び組成物における使用に関する。いくつかの推定上のCT精巣特異的遺伝子が、体細胞性癌組織におけるそれらの発現についてRT-PCRにより試験された。しかし、この研究は、体細胞性癌の信頼できるマーカーとして用いるためのCT遺伝子をほとんど同定しなかった。
【0008】
Bock-Axelsenら(PNAS, 2007, 204巻 pp13122〜13127)は、最近、ヒト固形腫瘍において過剰発現される遺伝子を、マイクロアレイストラテジーを用いて同定する新しい方法を提案している。この文献は、癌が、腫瘍が由来する同じ組織において選択的に発現されるいくつかの遺伝子だけを過剰発現することを開示している。特に、Bock-Axelsenらは、いくつかの精巣特異的遺伝子が、体細胞性腫瘍のパネルにおいて誤って調節されることを記載している。トランスクリプトームに基づくアプローチを用いて、Bock-Aselsenらは、体細胞性癌において調節解除される精巣過剰発現遺伝子を見出したが、ESTデータによると(彼らはこれを見ていない)、彼らが「精巣特異的」又は「CT」と同定した遺伝子のほとんどは、正常細胞において精巣限定発現パターンを示さない。
【0009】
正常細胞において、ゲノムの構造的及び機能的な分化は、エピジェネティックな機構を含み、これは、多くの遺伝子の転写サイレンシングと、いくつかの組織特異的遺伝子の活性化とを導く(Bernstein BE, Meissner A, Lander ES (2007) Cell 128: 669〜81; Li B, Carey M, Workman JL (2007) Cell 128: 707〜19; Martin C, Zhang Y (2007) Curr Opin Cell Biol 19: 266〜72; Rando OJ (2007) Curr Opin Genet Dev 17: 94〜9)。細胞形質転換は、遺伝子の異常な抑制又は抑制解除をもたらすエピジェネティックなシグナル伝達経路の全体的な調節解除に関連する(Esteller 2007a Nat Rev Genet 8: 286〜98; Fragaら、2005 Nat Genet 37: 391〜400; Jones及びBaylin 2007 Cell 128: 683〜92)。さらに、Schubelerらは、初代線維芽細胞(正常体細胞の代表)及び精子細胞におけるヒトゲノム全体のプロモーター領域のDNAメチル化状態を系統的に特徴決定した(Weberら、2007 Apr;39(4):457〜66)。彼らは、ほとんどのヒト遺伝子のプロモーターがCpGリッチであることを観察した(全ての遺伝子のほぼ3/4)。
重要な細胞調節因子の転写サイレンシングは悪性細胞形質転換に明確に関与しているが(Baylin 2005 Nat Clin Pract Oncol 2 Suppl 1: S4〜11; Esteller 2007b Hum Mol Genet 16 Spec No 1: R50〜9)、癌又は前癌細胞における組織特異的遺伝子の不正な活性化の原因及び結果は、まだよく調べられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
新しいTS遺伝子を推定CT遺伝子として決定するこれらの研究にもかかわらず、いくつかの遺伝子の精巣特異的に制限された発現、又はCT遺伝子の発現の推定調節解除に関して満足できる結果を与える方法は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、本発明は、体細胞性腫瘍において誤って調節される傾向にあるTS及びPS、すなわちCT遺伝子の信頼できる全体的な同定を提供し、これらのCT遺伝子は、悪性体細胞形質転換の普遍的なバイオマーカーとして用いられる。
本発明は、体細胞性及び卵巣癌のインビトロ及びエクスビボでの診断のための、CT遺伝子の核酸分子又は対応するタンパク質を用いる、単純、迅速かつ用いるのが容易な方法も提供する。
本発明は、特異的CT遺伝子を用いる卵巣及び体細胞性癌の検出のためのキットを提供する。
さらに、本発明は、癌の治療のための核酸分子又はタンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明は:
-少なくとも、以下の:
・配列番号385 (旧641)〜配列番号414 (旧754)からなる群のヌクレオチド配列、又は
・配列番号2q (qは1〜192 (旧320)で変動する)からなる群に属するアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成されるタンパク質をコードする配列番号2q-1 (qは1〜192 (旧320)で変動する)からなる群のヌクレオチド配列、又は
・その核酸分子の相補配列
を含むか又はそれにより構成される群の核酸配列、
-少なくとも、上記の核酸分子の少なくとも15連続ヌクレオチドを含む、上記の核酸分子のフラグメント、
-少なくとも、上記の核酸分子と比較して、少なくとも70%、特に80%及びより具体的に90%の配列相同性を示す、上記の核酸分子のバリアント
から選択される1つの要素の、いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、上記の要素のいずれかの少なくとも1つは、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現され、それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌細胞は、上記の要素の少なくとも1つを異常発現する使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「配列番号385 (旧641)〜配列番号414 (旧754)からなる群のヌクレオチド配列」とは、配列番号385〜配列番号754を含むヌクレオチドの群が、2008年3月31日にファイルされた優先権書類EP 08 290 307.1で開示される配列番号641〜配列番号754の旧配列からなる群に対応することを意味する。
本発明において、「配列番号2q-1 (qは1〜192 (旧320)で変動する)からなる群のヌクレオチド配列」とは、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)を含むヌクレオチドの群が、2008年3月31日にファイルされた優先権書類EP 08 290 307.1で開示される配列番号2q-1 (qは1〜320で変動する)の旧配列からなる群に対応することを意味する。
【0014】
従来技術は、癌とCT遺伝子との間の明確なカットの関連、すなわち、いずれかのCT遺伝子が少なくとも1つの癌組織にて誤って調節され、かついずれかの癌が少なくとも1つのCT遺伝子を異常なレベルで発現することを決定することを可能にしない。
【0015】
本発明は、
・配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団から選択される少なくとも26の核酸分子を含むセット、
・上記の少なくとも26の核酸分子の少なくとも26の相補核酸分子を含むセット、
・以下の:
・上記の少なくとも26の核酸分子、若しくは
・上記の少なくとも26の相補核酸分子
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントは、上記の少なくとも26の核酸分子のそれぞれの少なくとも15〜18の連続するヌクレオチドを含む核酸配列を有するセット、及び
・以下の:
・上記の少なくとも26の核酸分子のそれぞれ、若しくは
・上記の少なくとも26の相補核酸分子のそれぞれ
の少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、該バリアントの核酸配列が、上記の核酸分子の核酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット
から選択される少なくとも1つの核酸分子のセットであって、上記の26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表されるセットの、
いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
上記の体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞が、上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子を異常発現し、
-上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用に関する。
【0016】
ある有利な実施形態において、本発明は、
・配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団から選択される少なくとも26の核酸分子を含むセット、
・上記の少なくとも26の核酸分子の少なくとも26の相補核酸分子を含むセット、
・以下の:
・上記の少なくとも26の核酸分子、若しくは
・上記の少なくとも26の相補核酸分子
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントは、上記の少なくとも26の核酸分子のそれぞれの少なくとも15〜18の連続ヌクレオチドを含む核酸配列を有するセット、及び
・以下の:
・上記の少なくとも26の核酸分子のそれぞれ、若しくは
・上記の少なくとも26の相補核酸分子のそれぞれ
の少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、該バリアントの核酸配列が、上記の核酸分子の核酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット
から選択される少なくとも1つの核酸分子のセットであって、上記の26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表されるセットの、
いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
上記の体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-上記で規定されるセットのうちの少なくとも1つの核酸分子のセットが、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現され、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞が、上記で規定されるセットのうちの少なくとも1つの核酸分子のセットを異常発現する
使用に関する。
【0017】
本発明の別の有利な実施形態は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団から選択される少なくとも26の核酸分子を含むセットであって、該26の核酸分子が配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表されるセットの、いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
上記の体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞が、上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子を異常発現し、
-上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用に関する。
【0018】
本発明は、いずれかのCT遺伝子が少なくとも1つの体細胞性及び卵巣腫瘍において誤って調節され、相互的に、任意の体細胞性及び卵巣癌が誤って調節されたCT遺伝子を少なくとも発現するという予期せぬ観察に基づく。
また、本発明は、222のCT遺伝子のうち26のCT遺伝子の核となる最小群が、少なくとも1つの癌において調節解除され、相互的に、任意の体細胞性及び卵巣癌が、上記の26のCT誤調節遺伝子の少なくとも1つを発現するという本発明者らによる予期せぬ観察に基づく。
また、本発明者らは、222のCT遺伝子の集団のうちの26の遺伝子のサブグループが特異的であり、特定の割合で癌の診断を可能にすることを示す。
【0019】
本明細書及び本発明において以下に開示される核酸分子の群により得られる結果は、実施例3に示す。
【0020】
本発明によると、「核酸分子」、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」の用語は、DNA分子又はRNA分子を特徴づける塩基の鎖を規定するために等しく用いられる。これらの分子は、共有結合された塩基の連続である核酸配列を含むか又はそれからなるという事実により規定される。
用語「塩基」は、DNA又はRNA、すなわちそれぞれデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの成分を規定するのに用いられる。当該技術において知られる全てのデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドが、本発明により考慮される。
本発明におけるDNA分子は、遺伝子、該遺伝子が発現される場合にはその転写産物、存在する場合は該遺伝子のバリアント、又は少なくとも2つの塩基で構成されるか若しくはそれを含む任意のその他の分子に相当する。DNA分子は、天然又は人工的な逆転写、すなわちRNAからのDNA合成により得られる相補核酸分子(cDNA)にも関する。
本発明のRNA分子は、mRNA、rRNA、miRNA又はRNAを特徴づける少なくとも2つの塩基で構成されるか若しくはそれを含む任意のその他の分子に相当する。
【0021】
好ましくは、本発明は、限定されないが、転写プロセス中の遺伝子の完全な転写に対応する全長mRNAを含むmRNA分子に関する。該RNAの全てのバリアント、アイソフォーム及びフラグメントも、本発明において考慮される。
【0022】
本発明によると、「バリアント」は、参照するポリヌクレオチド分子(遺伝子)とは異なるが、必須の特性を保持するポリヌクレオチド分子として規定される。遺伝子とそのバリアントとは、例えば70%の核酸同一性、好ましくは80%の核酸同一性、より好ましくは又は具体的には90%の核酸同一性、より好ましくは又は具体的には92%の核酸同一性、より好ましくは又は具体的には95%の核酸同一性、より好ましくは又は具体的には98%の核酸同一性、より好ましくは又は具体的には99%の核酸同一性を有する類似のポリヌクレオチド配列を共有する。本発明のバリアントは、アイソフォームとみなすこともできる。これらのバリアントは、遺伝子の核酸配列中に天然に含まれる1つ以上のエキソンの付加又は欠失をもたらす選択的スプライシングの結果であり得る。さらに、本発明のバリアントは、限定されないが、遺伝子から配列が分岐した偽遺伝子の生成物にも関する。
全てのバリアントは、それらが由来する核酸分子の必須の特性を保持することを特徴とする。
【0023】
本発明によると、核酸分子のフラグメントは、それらが少なくとも15〜18の連続ヌクレオチドを含み、有利にはそれらが少なくとも20ヌクレオチド、好ましくは30ヌクレオチド、より好ましくは40ヌクレオチド、より好ましくは60ヌクレオチド、より好ましくは100ヌクレオチドを含むという事実により規定される。最も好ましいフラグメントは、60ヌクレオチドを含む。
核酸分子のフラグメントは、少なくとも1つのヌクレオチドが抑止された遺伝子に相当する核酸分子にも相当し得る。これらのフラグメントは、該核酸分子のいくらかの重要な遺伝子情報を維持し得るか、又はDNA増幅を可能にするオリゴヌクレオチド、若しくは核酸分子ハイブリッド形成を可能にするオリゴヌクレオチドプローブとして単に働くことができる。
【0024】
本発明による「フラグメント」は、よって、該核酸分子の一部分に相当し、該核酸分子の上記の一部分の相補配列にも相当し得る。相補性は、プリン塩基とピリミジン塩基との間の可能な相互作用に基づく、当該技術において公知の概念である。
本発明において、上記の分子、フラグメント、バリアント又は相補分子は、セットに組み立てられる。本発明の222全ての遺伝子からなる特定のセットは、集団ともよばれる。
【0025】
本発明によると、「癌」は、決定された器官の細胞の異常増殖に関する。例えば、肺癌は、肺を形成する任意の細胞の異常増殖に相当する。
また、本発明によると、「癌の型」は、癌において生じ得る異常増殖の型のことをいう。例えば、肺癌は、非小細胞肺癌と小細胞肺癌とのようにいくつかの型に分けることができる。
【0026】
本発明において、「それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞が、上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子を異常発現する」とは、決定された癌及びその型について、222の核酸分子の集団の核酸から選択される少なくとも26の核酸分子を含むセットの少なくとも1つの核酸が異常発現されることを意味する。
また、2つの異なる癌、例えば肺癌と膵臓癌について、上記で規定される少なくとも1つの核酸分子は、肺癌若しくは膵臓癌のいずれかで調節解除されるか、又は両方の癌において調節解除され得る。
さらに、癌の型は、上記で規定される2つ以上の核酸分子を異常発現し得る。
【0027】
本発明において、「上記の核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される」とは、上記で規定される群の1つ以上の核酸分子が、全ての癌において、特に全ての型の癌において異常発現されることを意味する。
【0028】
本発明によると、「癌細胞において異常発現される」とは、上記の要素が、該要素の正常発現レベルでないレベルで発現されることを意味する。正常発現レベルは、病変に罹患していない個体において決定される。
本発明において、上記の要素は、精巣又は胎盤において特異的に発現される。それらの発現は、当該技術において知られる、通常用いられる方法により測定できる。例えば、核酸分子の発現レベルは、日常的なプロトコルに従う逆転写定量PCR (RT-QPCR)又はノザンブロッティングのような方法により測定できる。これらの方法は、特定の遺伝子(又は配列)に対応するmRNAのレベルの測定を可能にする。第1のアプローチにおいて、試料からのRNA (トータル又はポリA、後者はmRNAに相当する)を、相補配列に相当するDNAを得るために逆転写に供する。Q-PCRにおいて、このDNAは、次いで、DNAの最初の量の定量を可能にする条件でのPCRにより増幅される。特異的プライマーを用いることにより、特定の配列に相当するDNAの量を定量できる。ノザンブロッティングは、RNA分子の電気泳動による分離と、その後に、プローブ(これらのプローブは標識される)として用いられる相補鎖をハイブリッド形成させることによる特異的配列の検出とを含む。
【0029】
健常個体の精巣又は胎盤細胞において、上記の要素は、「正常レベル」に相当するレベルで発現される。本発明によると、上記の要素は、健常個体の対応する体細胞で発現されず、それらの発現レベルはゼロである。
体細胞が悪性になる場合に、本発明によると、該悪性体細胞は、対応する正常体細胞では通常発現されない上記の要素を発現する。よって、上記の要素は、悪性体細胞における発現レベルがゼロより高い。よって、悪性体細胞において、要素が健常状態において存在しない場合、悪性状態におけるその発現は異常であるとみなされる。
【0030】
本発明によると、「異常調節された」、「誤って調節された」、及び「調節解除された」との用語は、以下において、異常状態、すなわち癌における調節を規定するために等しく用いられる。また、正常調節のことをいう正常状態は、細胞が健常である状態に相当する。
【0031】
本発明によると、核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414からなる核酸配列のうちのそれらの核酸配列により特徴づけられる。
上記のこれらの核酸分子は、健常状態において精巣又は胎盤のいずれかで発現される。
上記の配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)の核酸配列は、以下の核酸配列に相当する:配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号149、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号161、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号169、配列番号171、配列番号173、配列番号175、配列番号177、配列番号179、配列番号181、配列番号183、配列番号185、配列番号187、配列番号189、配列番号191、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201、配列番号203、配列番号205、配列番号207、配列番号209、配列番号211、配列番号213、配列番号215、配列番号217、配列番号219、配列番号221、配列番号223、配列番号225、配列番号227、配列番号229、配列番号231、配列番号233、配列番号235、配列番号237、配列番号239、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号247、配列番号249、配列番号251、配列番号253、配列番号255、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号263、配列番号265、配列番号267、配列番号269、配列番号271、配列番号273、配列番号275、配列番号277、配列番号279、配列番号281、配列番号283、配列番号285、配列番号287、配列番号289、配列番号291、配列番号293、配列番号295、配列番号297、配列番号299、配列番号301、配列番号303、配列番号305、配列番号307、配列番号309、配列番号311、配列番号313、配列番号315、配列番号317、配列番号319、配列番号321、配列番号323、配列番号325、配列番号327、配列番号329、配列番号331、配列番号333、配列番号335、配列番号337、配列番号339、配列番号341、配列番号343、配列番号345、配列番号347、配列番号349、配列番号351、配列番号353、配列番号355、配列番号357、配列番号359、配列番号361、配列番号363、配列番号365、配列番号367、配列番号369、配列番号371、配列番号373、配列番号375、配列番号377、配列番号379、配列番号381及び配列番号383。配列番号2q-1の規定は、本発明による以下に記載される全ての群にあてはまる。
【0032】
上記の配列番号385〜配列番号414の核酸配列は、以下の配列に相当する;配列番号385; 配列番号386; 配列番号387; 配列番号388; 配列番号389; 配列番号390; 配列番号391; 配列番号392; 配列番号393; 配列番号394; 配列番号395; 配列番号396; 配列番号397; 配列番号398; 配列番号399; 配列番号400; 配列番号401; 配列番号402; 配列番号403; 配列番号404; 配列番号405; 配列番号406; 配列番号407; 配列番号408; 配列番号409; 配列番号410; 配列番号411; 配列番号412; 配列番号413及び配列番号414。
【0033】
上記の配列は、上記で規定されるCT遺伝子に相当する。
これらの核酸分子から、これらは精巣又は胎盤における正常細胞で発現される。
以下の表1は、本発明による222のCT遺伝子の配列番号と、精巣(TS)又は胎盤(PS)における対応する組織発現をまとめる。
また、2008年3月31日にファイルされた優先権書類EP 08 290 307.1に対応する番号付けを、括弧内に示す。
【0034】
【表1−1】

【0035】
【表1−2】

【0036】
【表1−3】

【0037】
【表1−4】

【0038】
本発明によると、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)からなる群より選択される核酸配列を特徴とする核酸分子は、タンパク質をコードできる。該タンパク質は、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなる群より選択されるアミノ酸配列を特徴とする。
【0039】
上記の配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列に相当する:配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号150、配列番号152、配列番号154、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号164、配列番号166、配列番号168、配列番号170、配列番号172、配列番号174、配列番号176、配列番号178、配列番号180、配列番号182、配列番号184、配列番号186、配列番号188、配列番号190、配列番号192、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号256、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号268、配列番号270、配列番号272、配列番号274、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号282、配列番号284、配列番号286、配列番号288、配列番号290、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号298、配列番号300、配列番号302、配列番号304、配列番号306、配列番号308、配列番号310、配列番号312、配列番号314、配列番号316、配列番号318、配列番号320、配列番号322、配列番号324、配列番号326、配列番号328、配列番号330、配列番号332、配列番号334、配列番号336、配列番号338、配列番号340、配列番号342、配列番号344、配列番号346、配列番号348、配列番号350、配列番号352、配列番号354、配列番号356、配列番号358、配列番号360、配列番号362、配列番号364、配列番号366、配列番号368、配列番号370、配列番号372、配列番号374、配列番号376、配列番号378、配列番号380、配列番号382及び配列番号384。
【0040】
本発明によると、「任意の型の体細胞性及び卵巣癌」とは、「任意の型の体細胞性癌」及び「任意の型の卵巣癌」を意味する。ところで、本発明は、雄性の生殖腺癌、すなわち精巣癌に関連しない。
【0041】
用語「診断」は、本発明において、医療状態又は疾患を、その徴候、症状により、及び種々の診断手順の結果から同定するプロセスを意味する。これは、疾患又は状態を、その外見の徴候及び症状により認識することも意味する。診断は、疾患又は状態の根底をなす生理的/生化学的原因の分析にも相当する。
本発明によると、インビトロ又はエクスビボでの診断は、体細胞性及び卵巣癌の型又は段階又は治療上のフォローアップの特徴づけにも関する。
【0042】
本発明者らは、222のCT遺伝子の群の発現の調節解除が、全ての癌及び癌の型を検出するために実質的に十分であることを、予期せぬことに示した。
これらの上記の222のCT遺伝子の発現レベルの研究は:
-無症状の固体において癌を診断するか、又は
-例えば組織学的分析により、同定された腫瘍の進化を可能であれば予測する
ことに用いることもできる。
【0043】
本発明は、ある有利な実施形態において、上記で規定される少なくとも1つの核酸配列のセットの使用に関し、
ここで、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜57で変動する)及び配列番号385〜配列番号386の核酸配列で表される少なくとも59の核酸分子を含み、
好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜88で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも93の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜103で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも108の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜121で変動する)及び配列番号385〜配列番号391の核酸配列で表される少なくとも128の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜144で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも160の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜150で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも166の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜163で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも179の核酸分子を含み、
より好ましくは、上記の核酸分子のセットは、配列番号2q-1 (qは1〜186で変動する)及び配列番号385〜配列番号411の核酸配列で表される少なくとも213の核酸分子を含み、
特に、上記の核酸分子のセットは、上記の222の核酸分子の群の222全ての核酸分子を含む。
【0044】
本発明によると、222のCT遺伝子の集団(群1+2+3+4+5+6+7+8+9+0)から選択される少なくとも26 (群1)、少なくとも59 (群1+2)、少なくとも93 (群1+2+3)、少なくとも108 (群1+2+3+4)、少なくとも128 (群1+2+3+4+5)、少なくとも160 (群1+2+3+4+5+6)、少なくとも166 (群1+2+3+4+5+6+7)、少なくとも179 (群1+2+3+4+5+6+7+8)及び少なくとも213 (群1+2+3+4+5+6+7+8+9)の核酸分子の上記の群は、特定のメチル化プロファイルを有する。
群(1〜10)に属する核酸分子の割合と、対応するエピジェネティックの状態を、図7に示す。
【0045】
群1〜10は、以下のように規定される:
群1:少なくとも1つのオンコマイン(oncomine)研究において、p<0.001、n=26で過剰発現していることが見出された、体細胞において過剰メチル化されたCpGリッチプロモーターを有する遺伝子を含む。
群2:少なくとも1つのオンコマイン研究において、p<0.001、n=33で過剰発現していることが見出された、低CpGプロモーターを有する遺伝子を含む。
群3:少なくとも1つのオンコマイン研究において、p<0.001、n=34で過剰発現していることが見出された、生殖系列(germline)細胞特異的なエピジェネティックの特徴の証拠がない遺伝子を含む。
群4:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.001<p<0.01、n=15で過剰発現していることが見出された、体細胞において過剰メチル化されたCpGリッチプロモーターを有する遺伝子を含む。
群5:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.001<p<0.01、n=20で過剰発現していることが見出された、低CpGプロモーターを有する遺伝子を含む。
群6:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.001<p<0.01、n=32で過剰発現していることが見出された、生殖系列細胞特異的なエピジェネティックの特徴の証拠がない遺伝子を含む。
群7:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.01<p<0.05、n=6で過剰発現していることが見出された、体細胞において過剰メチル化されたCpGリッチプロモーターを有する遺伝子を含む。
群8:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.01<p<0.05、n=13で過剰発現していることが見出された、低CpGプロモーターを有する遺伝子を含む。
群9:少なくとも1つのオンコマイン研究において、0.01<p<0.05、n=34で過剰発現していることが見出された、生殖系列細胞特異的なエピジェネティックの特徴の証拠がない遺伝子を含む。
群10:選択されたいずれのオンコマイン研究においても利用可能でない又は過剰発現されていないが、以下で規定されるマイクロアレイ上の1つの癌試料において(n=9)発現していることが見出された遺伝子を含む。
【0046】
本発明は、
・配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列で表される192のタンパク質の集団から選択される少なくとも26のタンパク質を含むセット、
・上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、該バリアントのアミノ酸配列が、上記のタンパク質のアミノ酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット、
・以下の:
・上記の少なくとも26のタンパク質、若しくは
・上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくともバリアント
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントが、該フラグメントが由来するタンパク質に対して特異的に指向された抗体により認識されることができるセット
から選択される少なくとも1つのアミノ酸分子のセットであって、
少なくとも26のタンパク質が、上記で規定される少なくとも26の核酸分子によりコードされ、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列で表され、
上記で規定される所定のセットに含まれるそれぞれのアミノ酸分子が、少なくとも1つの特異的抗体により特異的に認識され、該特異的抗体が、上記で規定される所定のセットの1つのアミノ酸分子を特異的に認識できるセットの、
任意の型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
上記の体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-任意の型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料が、上記のアミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識する少なくとも1つの抗体の異常な量を示し、
-上記のアミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識する少なくとも1つの抗体が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料中に異常な量で存在する
使用に関する。
【0047】
ある有利な実施形態において、本発明は、
・配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列で表される192のタンパク質の集団から選択される少なくとも26のタンパク質を含むセット、
・上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、該バリアントのアミノ酸配列が、上記のタンパク質のアミノ酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット、
・以下の:
・上記の少なくとも26のタンパク質、若しくは
・上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくともバリアント
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントが、該フラグメントが由来するタンパク質に対して特異的に指向された抗体により認識されることができるセット
から選択される少なくとも1つのアミノ酸分子のセットであって、
少なくとも26のタンパク質が、上記で規定される少なくとも26の核酸分子によりコードされ、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列で表され、
上記で規定される所定のセットに含まれるそれぞれのアミノ酸分子が、少なくとも1つの特異的抗体により特異的に認識され、該特異的抗体が、上記で規定される所定のセットの1つのアミノ酸分子を特異的に認識できるセットの、
任意の型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
上記の体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-任意の型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料が、上記のアミノ酸分子のセットのうちのあるアミノ酸分子のセットを特異的に認識する少なくとも抗体のセットの異常な量を示し、
-上記のアミノ酸分子のセットのうちのあるアミノ酸分子のセットを特異的に認識する少なくとも1つの抗体のセットが、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料中に異常な量で存在する
使用に関する。
【0048】
本発明の別の有利な実施形態は、上記で規定される少なくともアミノ酸分子のセットの使用に関し、ここで、
上記のタンパク質のセットは、少なくとも57のタンパク質を含み、該少なくとも57のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜57で変動する)のアミノ酸配列で表され、
好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも88のタンパク質を含み、該少なくとも88のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜88で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも103のタンパク質を含み、該少なくとも103のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜103で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも121のタンパク質を含み、該少なくとも121のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜121で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも144のタンパク質を含み、該少なくとも144のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜144で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも150のタンパク質を含み、該少なくとも150のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜150で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも163のタンパク質を含み、該少なくとも163のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜163で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、上記のタンパク質のセットは、少なくとも186のタンパク質を含み、該少なくとも186のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜186で変動する)のアミノ酸配列で表され、
特に、上記のタンパク質のセットは、上記の192のタンパク質の群の192全てのタンパク質を含む。
【0049】
上記の配列番号2q (qは1〜192 (旧320)で変動する)のタンパク質は、配列番号2q-1 (qは1〜192 (旧320)で変動する)の核酸分子によりコードされるタンパク質に相当する。
例えば、本発明によると、上記のタンパク質は、配列番号1の核酸分子によりコードされる配列番号2、配列番号3の核酸分子によりコードされる配列番号4、配列番号5の核酸分子によりコードされる配列番号6、配列番号7の核酸分子によりコードされる配列番号8などのように規定できる。
【0050】
本発明によると、用語「アミノ酸分子」及び「タンパク質」は、アミノ酸の鎖を規定するために等しく用いられる。これらの分子は、これらが、共有結合された連続するアミノ酸であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなるということにより規定される。
本発明によると、「バリアント」は、参照するアミノ酸分子(タンパク質)とは異なるが、必須の特性を保持するアミノ酸分子として規定される。タンパク質とそのバリアントとは、例えば70%のアミノ酸同一性、好ましくは80%のアミノ酸同一性、より好ましくは又は具体的には90%のアミノ酸同一性、より好ましくは又は具体的には92%のアミノ酸同一性、より好ましくは又は具体的には95%のアミノ酸同一性、より好ましくは又は具体的には98%のアミノ酸同一性、より好ましくは又は具体的には99%のアミノ酸同一性を有する類似のアミノ酸配列を共有する。本発明のバリアントは、アイソフォームとみなすこともできる。これらのバリアントは、タンパク質をコードする遺伝子の核酸配列中に天然に含まれる1つ以上のエキソンの付加又は欠失をもたらす選択的スプライシングの結果であり得る。
全てのバリアントは、それらが由来するアミノ酸分子の必須の特性を保持することを特徴とする。
【0051】
本発明によると、タンパク質又はアミノ酸分子は、特異的抗体により認識されることができ、アミノ酸分子とその特異的抗体との間の相互作用は免疫複合体を形成する。抗体がタンパク質又は該タンパク質のバリアントを認識するが、別の異なるタンパク質を認識できないので、該相互作用は「特異的」とよばれる。
【0052】
「任意の型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料が、アミノ酸分子を特異的に認識する少なくとも1つの抗体の異常な量を示す」により、本発明において、セットのタンパク質が、癌に罹患した対象者の生体試料中に存在する傾向にあるか又は健常個体の生体試料中の該抗体の量とは異なる量で存在する傾向にある抗体を検出できることが規定される。
【0053】
よって、本発明によるタンパク質のセットにおいて、それぞれのタンパク質は、個体の試料の少なくとも1つの抗体を認識でき、試料に含まれるそれぞれの抗体は、セットの1つのタンパク質により認識されることができる。
以下の表2は、配列番号2q-1の核酸分子と、該核酸によりコードされる配列番号2qの対応するタンパク質との間の対応をまとめる。
表2は、核酸分子及びタンパク質が通常発現される細胞も記載する。PS:胎盤特異的遺伝子、TS:精巣特異的遺伝子。
【0054】
【表2−1】

【0055】
【表2−2】

【0056】
本発明において、192のCTアミノ酸分子の集団から選択される最少で26、少なくとも57、少なくとも88、少なくとも103、少なくとも121、少なくとも144、少なくとも150、少なくとも163及び少なくとも186のアミノ酸分子は、上記で規定される222のCT遺伝子(群10)の集団からそれぞれ選択される最少で26 (群1)、少なくとも59 (群2)、少なくとも93 (群3)、少なくとも108 (群4)、少なくとも128 (群5)、少なくとも160 (群6)、少なくとも166 (群7)、少なくとも179 (群8)及び少なくとも213 (群9)の核酸分子により発現されるアミノ酸分子のことである。
【0057】
本発明は、少なくとも26の抗体のセット、好ましくは57の抗体のセット、より好ましくは88の抗体のセット、より好ましくは103の抗体のセット、より好ましくは121の抗体のセット、より好ましくは150の抗体のセット、より好ましくは163の抗体のセット、より好ましくは186の抗体のセット、特に192の抗体のセットであって、上記の所定の抗体のセットのそれぞれの抗体が上記で規定されるアミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識し、上記で規定される所定のアミノ酸分子のセットのそれぞれのアミノ酸分子が、上記の所定の抗体のセットの抗体により特異的に認識されることを特徴とするセットの、任意の型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌細胞が、上記の抗体のセットの抗体により認識される少なくとも1つのアミノ酸分子を異常発現し、
-上記の抗体のセットの抗体により認識される少なくとも1つのアミノ酸分子が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用にも関する。
【0058】
本発明の別の有利な実施形態は、少なくとも26の抗体のセット、好ましくは57の抗体のセット、より好ましくは88の抗体のセット、より好ましくは103の抗体のセット、より好ましくは121の抗体のセット、より好ましくは150の抗体のセット、より好ましくは163の抗体のセット、より好ましくは186の抗体のセット、特に192の抗体のセットであって、上記の所定の抗体のセットのそれぞれの抗体が上記で規定されるアミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識し、上記で規定される所定のアミノ酸分子のセットのそれぞれのアミノ酸分子が、上記の所定の抗体のセットの抗体により特異的に認識されることを特徴とするセットの、任意の型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌細胞が、上記の抗体のセットのうちのある抗体のセットにより認識される少なくともアミノ酸分子のセットを異常発現し、
-上記の抗体のセットのうちのある抗体のセットにより認識される少なくとも1つのアミノ酸分子のセットが、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用にも関する。
【0059】
抗体により、本発明において、B細胞により生成される全ての免疫分子、すなわち免疫グロブリン(Ig)が規定される。よって、本発明によると、IgG、IgM、IgA及びIgDのような全ての可溶性及び不溶性の免疫グロブリンが考慮される。本発明によると、IgG抗体が好ましい。
また、本発明によると、抗体は、それらの「免疫学的」部分、すなわち可変鎖により表すことができる。よって、抗体は、Fab、F(ab)'2又はscFvフラグメントのようなフラグメントとみなすこともできる。
【0060】
「アミノ酸分子を特異的に認識する抗体」により、本発明において、抗体が、ある決定されたタンパク質と特異的免疫複合体を形成できるが、別のタンパク質とは形成できないことを意味する。
また、本発明において、「アミノ酸分子が抗体により特異的に認識される」とは、タンパク質が1つの特異的抗体により認識されることを意味する。
よって、本発明によるタンパク質のセットにおいて、それぞれの抗体は、個体の試料の少なくとも1つのタンパク質を認識でき、試料に含まれるそれぞれのタンパク質は、該セットの1つの抗体により認識され得る。
【0061】
本発明によると、「新生物」とは、遺伝子的に変更された細胞の異常増殖のことをいう。新生物は、良性又は悪性であり得る。
本発明によると、「腫瘍」は、任意の異常な腫脹、しこり又は塊を意味する。
当該技術において通常用いられるように、本発明によると、「腫瘍」及び「新生物」の用語は、癌と同義である。
【0062】
癌は、腫瘍に似た細胞の型、よって腫瘍の起源であると推定される組織により分類される。一般的なカテゴリーの例は、以下のものを含む:
- 癌腫:上皮細胞に由来する悪性腫瘍。この群は、乳癌、前立腺癌、肺癌及び結腸癌の通常の形態を含む最も一般的な癌を表す。
-肉腫:結合組織又は間葉細胞に由来する悪性腫瘍、
-生殖細胞腫瘍:全能性細胞に由来する腫瘍。成人において、精巣及び卵巣で最も頻繁に見出される。しかし、本発明は、精巣癌に関しない、
-芽細胞性腫瘍:未熟又は胚性組織に似た腫瘍(通常、悪性)。これらの腫瘍の多くは、子供に最も一般的である、
-リンパ腫及び白血病:造血(血液生成)細胞に由来する悪性腫瘍。
【0063】
本発明によると、「固形腫瘍」は、器官に由来する腫瘍に関し、特に小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む肺癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、膠芽腫、髄芽腫及び神経芽腫を含む脳癌、子宮頸癌、胃癌、結腸直腸癌腫を含む結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆道癌、頭頚部癌、扁平上皮癌を含む口腔癌、肝細胞癌を含む肝臓癌、上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌、膵癌、前立腺癌、直腸癌、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫、神経肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性線維性組織肉腫、神経膠腫、肝細胞癌及び骨肉腫を含む肉腫、黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌を含む皮膚癌、甲状腺腺癌及び髄様癌を含む甲状腺癌、腺癌及びウィルムス腫瘍(tumthe)を含む腎臓癌、ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物、並びに胎盤癌又は絨毛癌に関する。
【0064】
本発明によると、「血液新生物」とは、血液細胞又は血液細胞の子孫に由来する全ての新生物に関し、特に:急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫に関する。
本発明は、ホジキン病、リンパ球性リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫のようなリンパ腫にも関する。
【0065】
本発明は、配列番号415〜446のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも32のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも32のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、上記で規定される少なくとも核酸分子のセットのうちの1つの核酸分子と、好ましくは配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表される少なくとも26の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、オリゴヌクレオチドプローブとそれらの対応する核酸配列との対応が表2aに示されるマイクロアレイも開示する。
【0066】
以下の表3aは、核酸分子と、対応するポリヌクレオチド分子との対応を示す。
遺伝子#は、核酸配列に相当する配列番号を示す。(遺伝子#優先権)は、優先権書類の核酸配列に相当する配列番号を示し、Prob1#、Prob2#及びProb#3は、プローブの核酸配列との対応を示す。
【0067】
【表3a】

【0068】
よって、例えば、配列番号1の遺伝子は、配列番号415及び416のポリヌクレオチドプローブにより検出されるか、又は配列番号9(優先権書類において配列番号7の遺伝子に相当する)は、配列番号421 (優先権書類において配列番号758の遺伝子に相当する)のプローブにより検出される。
【0069】
ある有利な実施形態において、本発明は、配列番号415〜484のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも70のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも70のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜57で変動する)及び配列番号385〜配列番号386の核酸配列で表される少なくとも59の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜524のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも110のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも110のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜88で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも93の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜544のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも130のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも130のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜103で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも108の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜568のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも154のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも154のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜121で変動する)及び配列番号385〜配列番号391の核酸配列で表される少なくとも128の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
【0070】
より好ましくは、配列番号415〜611のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも197のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも197のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜144で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも160の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜618のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも204のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも204のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜150で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも166の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜634のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも220のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも220のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜163で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも179の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
より好ましくは、配列番号415〜675のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも261のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも261のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜186で変動する)及び配列番号385〜配列番号411の核酸配列で表される少なくとも213の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイ、
特に、配列番号415〜684のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも270のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも270のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団の222の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイに関し、
オリゴヌクレオチドプローブとそれらの対応する遺伝子との対応が表3bに示され、
該マイクロアレイは、可能であれば、陽性及び陰性の対照核酸分子と特異的にハイブリッド形成する陽性及び陰性のオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0071】
「陽性及び陰性の対照核酸分子と特異的にハイブリッド形成する陽性及び陰性のオリゴヌクレオチドプローブ」により、本発明において、「陽性の対照核酸分子と特異的にハイブリッド形成する陽性のオリゴヌクレオチドプローブ、及び陰性の対照核酸分子と特異的にハイブリッド形成する陰性のオリゴヌクレオチドプローブ」を意味する。本発明の「陰性プローブ」は、遍在的に、すなわち全ての型の健常又は悪性の細胞において発現される遺伝子の発現を検出するプローブのことをいう。よって、「陰性核酸分子」は、遍在的に発現される遺伝子を規定する。
本発明の「陽性プローブ」は、1つ以上の組織において特異的に発現されるが、精巣又は胎盤において発現されない遺伝子の発現を検出するプローブであって、該組織が健常又は悪性の細胞で構成されるプローブのことをいう。
「陽性核酸分子」は、よって、1つ以上の組織で特異的に発現されるが、精巣又は胎盤で発現されない遺伝子を規定する。
【0072】
以下の表3bは、核酸分子と、対応するポリヌクレオチド分子との対応を示す。
遺伝子#は、核酸配列に相当する配列番号を示す。(遺伝子#優先権)は、優先権書類の核酸配列に相当する配列番号を示し、Prob1#、Prob2#及びProb#3は、プローブの対応する核酸配列を示す。
【0073】
【表3b−1】

【0074】
【表3b−2】

【0075】
本発明の別の有利な実施形態は、配列番号415〜配列番号684のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含む、より好ましくは配列番号415〜配列番号1617のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含む、特に配列番号415〜配列番号2989のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含むか又はそれからなる、上記で規定されるマイクロアレイに関する。
本発明において、配列番号415〜配列番号684のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイは、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222のCT遺伝子の発現の変動を検出できる。
【0076】
配列番号415〜配列番号1617のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイは、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222のCT遺伝子の発現の変動、並びに組織特異的様式で発現されるが、精巣又は胎盤で発現されない遺伝子の発現の変動を検出できる。
配列番号415〜配列番号2989のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイは、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222のCT遺伝子の発現の変動、並びに組織特異的様式で発現されるが、精巣又は胎盤で発現されない遺伝子の発現、遍在遺伝子の発現及び特異性が乏しい精巣及び胎盤発現遺伝子の変動を検出できる。
例えば、特異性が乏しい精巣及び胎盤発現遺伝子は、以下において、TEPEc及びd遺伝子により規定される(実施例3を参照)。
【0077】
本発明は、配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列で表される192のアミノ酸分子又はそのフラグメントの集団のうちの、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列で表される少なくとも26のアミノ酸分子又はそのフラグメントを含むマイクロアレイであって、該少なくとも26のアミノ酸分子又はそのフラグメントのそれぞれが、少なくとも1つの抗体と特異的にハイブリッド形成し、該抗体が、ある決定されたアミノ酸分子又はそのフラグメントと特異的に相互作用できるが、別のアミノ酸分子とは相互作用できないマイクロアレイも開示する。
【0078】
本発明は、192の抗体の群から選択される少なくとも26の抗体を含むマイクロアレイであって、該少なくとも26の抗体が、配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列で表される192のアミノ酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列で表される少なくとも26のアミノ酸分子又はそのフラグメントと特異的に相互作用するマイクロアレイも開示する。
【0079】
本発明は、対象者からの生体試料からの核酸分子のうち、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414からなる核酸配列を含むか又はそれらにより構成される少なくとも1つの核酸分子若しくはそのフラグメントの存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、上記の核酸分子の存在又は量の変動が、健常対象者から単離された試料からの上記の核酸分子の不在又は所定の量に関して評価され:
-上記の生体試料からの核酸を、作用剤と接触させて、核酸複合体を形成するステップであって、該作用剤が、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414又はそのフラグメントからなる群を含むか又はそれにより構成される少なくとも1つの核酸分子又は少なくとも1つの核酸分子の相補核酸分子であり、該作用剤が、生体試料からの核酸のうちに存在する傾向にある配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414からなる群を含むか又はそれにより構成される少なくとも1つの核酸分子と選択的にハイブリッド形成できるステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、上記の核酸複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む方法を記載する。
【0080】
また、本発明は、対象者からの生体試料からの核酸のうち、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団のうちの少なくとも26の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表され、
上記の核酸分子の存在又は量の変動は、健常対象者から単離された試料からの上記の核酸分子の不在又は所定の量に関して評価され:
-上記の生体試料からの核酸を、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの核酸との少なくとも1つの核酸複合体の形成を可能にするステップであって、
・該作用剤が、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子から選択される少なくとも26の核酸分子のそれぞれの、少なくとも:
・1つの核酸分子、又は
・該核酸配列の相補分子、又は
・該核酸分子若しくは該相補分子のフラグメント
を含み、該少なくとも26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列により表され、
・上記の作用剤に含まれる核酸配列、該核酸配列の相補配列又はそれらのフラグメントは、上記の少なくとも26の核酸分子と選択的にハイブリッド形成でき、
・上記の少なくとも26の核酸分子は、健常対象者から単離された試料からの該少なくとも26の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの核酸複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む方法を記載する。
【0081】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも59の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の59の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜57で変動する)及び配列番号385〜配列番号386の核酸配列で表される方法に関する。
【0082】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも93の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも93の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜88で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される方法に関する。
【0083】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも108の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも108の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜103で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される方法に関する。
【0084】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも128の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも128の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜121で変動する)及び配列番号385〜配列番号391の核酸配列で表される方法に関する。
【0085】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも160の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも160の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜144で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される方法に関する。
【0086】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも166の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも166の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜150で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される方法に関する。
【0087】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも179の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも179の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜163で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される方法に関する。
【0088】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも213の核酸分子の群のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
上記の少なくとも213の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜186で変動する)及び配列番号385〜配列番号411の核酸配列で表される方法に関する。
【0089】
ある好ましい実施形態において、本発明は、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団のうちの少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、上記で規定されるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法に関する。
【0090】
本発明によると、少なくとも1つの核酸分子の「存在の決定」とは、生体試料中で核酸分子が検出できるならば、該核酸分子が生体試料中に存在するとみなされることを示す。逆に、本発明の方法により該核酸分子が検出できないならば、核酸分子は生体試料中に存在しないとみなされる。
【0091】
本発明によると、少なくとも1つの核酸分子の「量の変動の決定」とは、該核酸分子の量を測定することを意味する。核酸分子の量は、核酸分子の量が少なくとも2つの対照試料と比較される、従来の定量プロトコルを用いて測定される。これらの対照試料は、少なくとも陰性試料及び陽性対照試料で表される。核酸分子の量の測定に関連する値は、対照陰性試料においてゼロであり、核酸分子の量の測定に関連する値は、対照陽性試料において正である。
陰性試料は、健常個体又は患者の生体試料に相当し、ここで、該核酸分子は存在しないか、又は既知のレベルで存在し、該既知のレベルは標準的なレベルと規定される。
よって、核酸分子が生体試料中に存在しないならば、定量の値はゼロである。一方、核酸分子が存在するならば、定量の値はゼロを上回る。
【0092】
核酸分子の存在又は量は、当該技術において通常用いられる任意の日常的なプロトコルにより決定してよい。特に、核酸分子は、サザンブロット及びノザンブロットのような核酸ハイブリッド形成に基づく通常用いられる技術により検出される。
試料の核酸分子の抽出は、当該技術において用いられる日常的なプロトコルにより行われる。有利には、生体試料から抽出される核酸分子は、RNAである。
【0093】
本発明によると、少なくとも1つのポリヌクレオチド分子を含むか及び/又はそれにより構成される上記の作用剤は、好ましくは、該核酸分子のフラグメントに相当し、該ポリヌクレオチド分子は、塩基相補性に基づいて上記の核酸分子と特異的にハイブリッド形成できるようなものである。好ましくは、本発明において、以下において核酸ともよばれる上記のポリヌクレオチド分子は、DNA分子である。
よって、本発明の方法は、対象者の生体試料から抽出される核酸分子を、作用剤と接触させることにある。存在する場合に核酸分子と作用剤との接触は、核酸複合体の形成を可能にする。
【0094】
好ましくは、作用剤を核酸分子と接触させる前に、上記の核酸分子は、任意の既知の標識分子(放射性同位体、酵素、蛍光分子など)で標識される。ハイブリッド形成は、標準的なプロトコルに従って、必要であれば塩濃度及び温度を調節することにより行われる。ハイブリッド形成に用いられるプロトコルは、当業者に公知である。
或いは、上記の核酸分子複合体は、ハイブリッド形成の結果としての2本鎖核酸分子の形成を特異的に検出する既知の標識分子(例えば蛍光分子)を用いて検出できる。
形成された核酸複合体の存在又は量は、用いた標識分子に合わせた特異的検出方法を用いるハイブリッド形成核酸分子の検出により検出される。
少なくとも核酸分子が存在しないこと又はその量と比較した核酸分子の存在又は量は、核酸分子が由来する個体が癌に罹患しているかを規定することを可能にする。
【0095】
有利な実施形態において、本発明は、上記で規定される方法に関し、ここで、上記で規定される作用剤は、好ましくは、マイクロアレイ上に固定化され、該マイクロアレイは:配列番号421、配列番号423、配列番号424、配列番号425、配列番号426、配列番号、配列番号427、配列番号429、配列番号430、配列番号431、配列番号432、配列番号434、配列番号435、配列番号436、配列番号437、配列番号、配列番号444、配列番号448、配列番号449、配列番号450、配列番号451、配列番号452、配列番号455、配列番号457、配列番号458、配列番号460、配列番号461、配列番号462、配列番号463、配列番号464、配列番号、配列番号465、配列番号466、配列番号470、配列番号471、配列番号、配列番号472、配列番号473、配列番号474、配列番号475、配列番号476、配列番号489、配列番号492、配列番号496、配列番号497、配列番号、配列番号499、配列番号500、配列番号501、配列番号502、配列番号503、配列番号504、配列番号505、配列番号506、配列番号507、配列番号508、配列番号509、配列番号528、配列番号530、配列番号531、配列番号532、配列番号、配列番号533、配列番号534、配列番号535、配列番号、配列番号536、配列番号537、配列番号538、配列番号、配列番号540、配列番号541、配列番号545、配列番号546、配列番号547、配列番号548、配列番号549、配列番号550、配列番号551、配列番号、配列番号552、配列番号554、配列番号556、配列番号557、配列番号558、配列番号559、配列番号560、配列番号561、配列番号562、配列番号569、配列番号571、配列番号573、配列番号576、配列番号577、配列番号578、配列番号、配列番号581、配列番号584、配列番号588、配列番号589、配列番号591、配列番号593、配列番号616、配列番号619、配列番号621、配列番号622、配列番号、配列番号623、配列番号624、配列番号625、配列番号626、配列番号627、配列番号628、配列番号629、配列番号、配列番号630、配列番号631、配列番号635、配列番号636、配列番号637、配列番号638、配列番号639、配列番号、配列番号640、配列番号641、配列番号642、配列番号643、配列番号645、配列番号646、配列番号647、配列番号649、配列番号650、配列番号652、配列番号653、配列番号567、配列番号605、配列番号666、配列番号667、配列番号668、配列番号671及び配列番号682を含む群の核酸酸配列を含むか又はそれからなる少なくとも1つの核酸を含む。上記の配列は、優先権書類に開示される群に含まれる(優先権書類の配列番号755〜配列番号1088からなる群)。
【0096】
本発明によると、上記のポリヌクレオチド分子又は核酸は、ポリヌクレオチドプローブともよばれる。
【0097】
別の有利な実施形態において、本発明は、上記で規定される方法に関し、ここで、上記の作用剤は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも26の核酸分子の少なくとも1つの核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする核酸配列を含み、該PCR増幅は、好ましくは、逆転写定量PCR又はPCRアレイである。
【0098】
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも59の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも59の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも93の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも93の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも108の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも108の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも128の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも128の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも160の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも160の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
【0099】
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも166の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも166の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも179の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも179の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの少なくとも213の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも213の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
本発明の別の有利な実施形態は、健常対象者から単離された試料からの222の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある222の核酸分子の核酸配列のフラグメントのPCR増幅を可能にする上記で規定される方法に関する。
【0100】
別の有利な実施形態において、本発明は:
-生体試料からの核酸を、上記で規定されるようなマイクロアレイである作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの核酸との少なくとも1つの核酸複合体の形成を可能にするステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す少なくとも1つの核酸複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む、上記で規定される方法に関する。
【0101】
本発明は、対象者からの生体試料からのポリペプチドのうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される少なくとも1つのタンパク質又はそのフラグメントの存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、上記のタンパク質の存在又は量の変動が、健常対象者から単離された試料からの上記のタンパク質の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを、作用剤と接触させて免疫複合体を形成するステップであって、該作用剤が、生体試料からのポリペプチドのうちに存在する傾向にある配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなる群を含むか又はそれにより構成される少なくとも1つのタンパク質又はそのフラグメントを認識できるステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、上記の免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む方法にも関する。
【0102】
別の好ましい実施形態において、本発明は、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法に関し、ここで、免疫複合体は、上記の作用剤による、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成されるタンパク質又はそのフラグメントの特異的認識により得られ、該免疫複合体は、例えば免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降により決定される傾向にある。
【0103】
本発明は、有利な実施形態において、対象者からの生体試料からのポリペプチドのうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質の群のうちの少なくとも1つのタンパク質又はそのフラグメントの存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、
該少なくとも26のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列により構成され、
該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質は、少なくとも1つの特異的抗体により特異的に認識され、該特異的抗体は、該少なくとも26のタンパク質の1つのタンパク質を特異的に認識でき、
上記のタンパク質の存在又は量の変動は、健常対象者から単離された試料からの上記のタンパク質の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つのタンパク質との少なくとも1つの免疫複合体の形成を可能にするステップであって、
該作用剤が、上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの1つのタンパク質と特異的にハイブリッド形成する少なくとも1つの抗体を含み、該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質が、少なくとも1つの抗体により特異的に認識され、
該少なくとも26のタンパク質が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26のタンパク質の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップであって、該免疫複合体が、好ましくは免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降により決定される傾向にあるステップと
を含む方法にも関する。
【0104】
上記の方法は、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質、或いは上記で規定される192のタンパク質の群から選択される少なくとも57のタンパク質、又は88のタンパク質、又は103のタンパク質、又は121のタンパク質、又は150のタンパク質、又は163のタンパク質、又は186のタンパク質、又は192のタンパク質の群の少なくとも1つのタンパク質又はそのフラグメントの存在又は量の変動を決定することを可能にする。
【0105】
本発明は、対象者からの生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体のうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成されるタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも1つの抗体の存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、タンパク質を特異的に認識する上記の抗体の存在又は量の変動が、健常対象者から単離された試料からのタンパク質を認識する抗体の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体を、作用剤と接触させて免疫複合体を形成するステップであって、該作用剤が、生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体のうちに存在する傾向にある配列番号2q (qは1〜320で変動する)からなる群を含むか又はそれにより構成されるタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも1つの抗体を認識できるステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、上記の免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む方法にも関する。
【0106】
本発明は、対象者からの生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体のうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される、少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも26の抗体の群のうちの少なくとも1つの抗体の存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、
該少なくとも26のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列により構成され、
上記のタンパク質を特異的に認識する抗体の存在又は量の変動は、健常対象者から単離された試料からのタンパク質を特異的に認識する抗体の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体を含む傾向にある対象者の試料を、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの抗体との少なくとも1つの免疫複合体の形成を可能にするステップであって、該作用剤が、該少なくとも26の抗体と特異的にハイブリッド形成できる少なくとも26のタンパク質を含み、該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質が、少なくとも1つの抗体と特異的にハイブリッド形成でき、それぞれの抗体が、少なくとも26のタンパク質のうちの1つのタンパク質と特異的にハイブリッド形成し、
該少なくとも26の抗体が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26の抗体の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップであって、該免疫複合体が、好ましくは免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降により決定される傾向にあるステップと
を含む方法にも関する。
【0107】
上記の方法は、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質、或いは上記で規定される192のタンパク質の群から選択される、少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186のタンパク質又はそのフラグメントをそれぞれ特異的に認識する少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186の抗体の群のうちの少なくとも1つの抗体の存在又は量の変動を決定することを可能にする。
【0108】
配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される、少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも26の抗体の群のうちの少なくとも1つの抗体、
【0109】
本発明によると、少なくとも1つの抗体の存在の決定は、生体試料中で抗体が検出できるかを示し、抗体が生体試料中に存在するとみなされる。逆に、該抗体が本発明の方法により検出できなければ、抗体は生体試料中に存在しないとみなされる。
抗体により、本発明において、B細胞により生成される全ての免疫学的分子、すなわち免疫グロブリン(Ig)が規定される。よって、本発明によると、IgG、IgM、IgA及びIgDのような全ての可溶性及び不溶性の免疫グロブリンが検出できる。
少なくとも抗体の量の定量の決定に関して、本発明において、該抗体の量が測定されるとみなされる。
【0110】
抗体の量は、抗体の量が少なくとも2つの対照試料と比較される従来の定量プロトコルを用いて測定される。これらの対照試料は、少なくとも陰性試料及び陽性対照試料により表される。抗体の量の測定に関連する値は、対照陰性試料においてゼロであり、抗体の量の測定に関連する値は、対照陽性試料において正である。
よって、抗体が生体試料に存在しなければ、定量の値はゼロである。一方、抗体が存在するならば、定量の値はゼロを上回る。
抗体の存在又は量は、当該技術において通常用いられる任意の日常的なプロトコルにより決定してよい。
【0111】
本発明の方法によると、ポリペプチドは、対象者の生体試料中に存在する傾向にある少なくとも1つの抗体により特異的に認識される。抗体が存在する場合、認識は特異的であり、これは、抗体が該ポリペプチド又は該ポリペプチドのバリアント若しくはアイソフォームとのみ相互作用するが、別のポリペプチドとは相互作用しないことを意味する。
【0112】
本発明は、対象者からの生体試料中の免疫応答の存在を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって:
-対象者からの生体試料を作用剤と接触させて、免疫応答の達成を可能にするステップであって、
該作用剤が、上記の少なくとも26のタンパク質のそれぞれの1つのタンパク質又はそのフラグメントと特異的にハイブリッド形成する少なくとも1つの抗体を含み、該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質が、少なくとも1つの抗体により特異的に認識され、
該少なくとも26のタンパク質が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26のタンパク質の所定の量とは異なる量で存在する傾向にあり、
該少なくとも26のタンパク質が、T細胞のMCH分子により提示される傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、上記の免疫応答の存在を決定するステップと
を含む方法にも関する。
【0113】
ある有利な実施形態において、本発明は、試料が体液、体滲出液、細胞、組織又は腫瘍である上記のいずれかの方法に関する。
【0114】
本発明は:
-上記で規定されるマイクロアレイと、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの生体試料の核酸の調製のため、特にcDNAの調製のための物質と、
-可能であれば、上記の核酸を標識するための標識分子と、
-可能であれば、健常対象者からの生体試料からの核酸に相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキットにも関する。
【0115】
本発明は:
-配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを含むか又はそれにより構成されるELISA支持体であって、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列又はそのフラグメントにより構成される支持体と、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの試料からのポリペプチドのうちに存在する傾向にあるタンパク質を特異的に認識する抗体に対して指向された標識抗体と、
-可能であれば、健常対象者からの試料からの抗体又は血清に相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキットにも関する。
【0116】
本発明は、
-配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも26の抗体を含むか又はそれにより構成されるELISA支持体であって、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列又はそのフラグメントにより構成される支持体と、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの試料からのポリペプチドのうちに存在する傾向にある抗体により特異的に認識されるタンパク質に対して指向された標識抗体と、
-可能であれば、健常対象者からの試料からのポリペプチドに相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキットにも関する。
【0117】
上記のキットは、
-配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質又はそのフラグメントから選択される少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186のタンパク質をそれぞれ特異的に認識する少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186の抗体、上記で規定される少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186のタンパク質、又は上記で規定される222のタンパク質を特異的に認識する222の抗体、或いは
-192のタンパク質から選択される少なくとも57若しくは88若しくは103若しくは121若しくは144若しくは150若しくは163若しくは186のタンパク質又はそのフラグメント、上記の少なくとも26のタンパク質、又は上記で規定される222のタンパク質
も含む。
【0118】
本発明は、有効成分として:
-上記の核酸分子、
-上記のタンパク質、及び
-上記の抗体
からなる群より選択される少なくとも1つの要素を、医薬的に許容され得るビヒクルとともに含む医薬組成物にも関する。
本発明は、活性成分として、上記の抗体、それらのフラグメント又は派生物を医薬的に許容され得るビヒクルとともに含むワクチン組成物にも関する。
【0119】
本発明は、活性成分として、上記の核酸分子とハイブリッド形成できる少なくとも1つのRNAi分子を、医薬的に許容され得るビヒクルとともに含む医薬組成物にも関する。
RNA干渉(RNAi)は、特定のRNA分子の分解を引き起こすか又は特定の遺伝子の転写を妨げることにより遺伝子発現を阻害する機構である。RNAiは、発達及びゲノム維持の調節における役割を有する。小型干渉RNA鎖(siRNA)はRNAiプロセスへの鍵であり、標的RNA鎖に対する相補ヌクレオチド配列を有する。特異的RNAi経路タンパク質は、siRNAにより、標的メッセンジャーRNA (mRNA)に案内され、ここでこれらは標的を「切断」し、タンパク質にもはや翻訳され得ないより小さい部分に分解する。
【0120】
有利な実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物に関し、ここで、上記のRNAiは、配列番号1〜配列番号476からなる群のヌクレオチド配列を含むか又はそれにより構成される群の少なくとも核酸分子、或いは配列番号2q (qは1〜320で変動する)からなる群に属するアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成されるタンパク質をコードする少なくとも核酸分子に特異的にハイブリッド形成し、該RNAiは、17〜25ヌクレオチドのセンス配列を含む(siRNA)。
【0121】
別の有利な実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物に関し、ここで、上記のRNAiは、配列番号1〜配列番号476からなる群のヌクレオチド配列を含むか又はそれにより構成される群の少なくとも核酸分子、或いは配列番号2q (qは1〜320で変動する)からなる群に属するアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成されるタンパク質をコードする少なくとも核酸分子に特異的に結合し、該RNAiは、17〜25ヌクレオチドのセンス配列、7〜11ヌクレオチドのヘアピンループ配列及びセンス配列と相補的に結合するアンチセンス配列(shRNA)を含み、該shRNAは、哺乳動物細胞においてshRNA発現を可能にする発現ベクターに含まれる。
【0122】
本発明は、限定されないが、以下の実施例1〜3及び図1〜7により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1aは、オンコマインデータのメタ分析を表し、体細胞性又は卵巣癌における、リストの精巣特異的又は胎盤特異的遺伝子(クラスA〜D-は、上記の遺伝子のリストを含む)、及び精巣又は胎盤で過剰発現される遺伝子(クラスE及びE-)の異常な発現を示す。遺伝子は垂直方向に示し、異なる組織特異的腫瘍は水平方向に示す。それぞれの赤色の四角は、対応する正常組織と比較した、それぞれの型の体細胞性癌の少なくとも1つの研究において過剰発現される遺伝子に相当する(p<0.001)。1つのみの型の体細胞性癌において発現されることが見出された遺伝子は、マップの上部に示し、いくつかの体細胞性癌において過剰発現されることが見出された遺伝子は、マップの下部で見出される。 図1b及び1cはそれぞれ、クラスA〜D (1b)及びE〜E- (1c)に属する遺伝子のマップの結果の拡大図を示す。
【図2】図2aは、記載されるカテゴリーに属する遺伝子の階層的クラスタリングとして表されるCTチップの第1バージョンの結果をまとめる。これは、「permutmatrix」ソフトウェアを用いて行った(オンラインhttp://www.lirmm.fr/~caraux/PermutMatrix/でフリー)。 図2bは、CTチップの第1バージョンで検出された精巣及び胎盤特異的遺伝子のクラスタリングの拡大図を示す。 図2cは、精巣及び胎盤で発現される遺伝子を含むCTチップ(第1バージョン)の全体の結果をまとめる。ハイブリッド形成を示さない(No Hyb)か、1つのプローブ若しくは多数のプローブのうちの1つとは特異的ハイブリッド形成を示さないか、又は精巣若しくは胎盤特異的な発現パターンを示す、精巣若しくは胎盤に特異的(A〜D)又は精巣若しくは胎盤で過剰発現される(E)遺伝子の数を示す。 NA on chip:この第1バージョンのCTチップでは存在しない遺伝子の数(ここでは分析せず);No hyb:分析したいずれの組織でも発現が検出されず、Non spe one probe:少なくとも1つの体細胞性組織において(1つのプローブを用いて)発現していることが見出された遺伝子、Non spe one of many probes:プローブに応じて異なる発現プロファイルを有し、少なくとも1つの体細胞性組織において発現していることが見出された遺伝子;Testis or placenta spe:第1バージョンのチップにより精巣及び/又は胎盤に限定された発現パターンを有する遺伝子。
【図3】図3は、本発明による222のCT遺伝子及び10の対応する群の決定のためのストラテジーを示す。 セクション1は、正常組織における現存する発現データの分析と、精巣又は胎盤でのそれらの発現特異性に従って遺伝子を4つのクラスTSPSa、TEPEb、TEPEc及びTEPEdに分類することに相当する。 セクション2は、配列番号415〜配列番号2989のポリヌクレオチドプローブを含む専用マイクロアレイ(バージョン2)での、正常及び非癌性組織におけるTSPSa及びTEPEb遺伝子の発現の分析と、精巣又は胎盤のみで発現される遺伝子の選択(特異的又は非特異的)に相当する。 セクション3は、線維芽細胞及び胚性幹(ES)細胞におけるTEPEb_spe遺伝子(マイクロアレイにおいて精巣又は胎盤で特異的に発現されるTEPEb遺伝子)のエピジェネティックの状態の分析と、特異的「生殖細胞サイン」を有する遺伝子の選択に相当する。 セクション4は、対応する組織の癌試料と正常試料とを比較して、少なくとも1つの研究において著しく過剰発現されているか(p<0.05)、又はCTチップv2 (実施例3)の少なくとも1つの癌試料において発現されていることが見出された遺伝子の選択と、エピジェネティックの状態(プロモーターのCpG含量及び体細胞におけるメチル化)及び癌における調節解除の頻度に従う分類とに相当する。
【図4】図4Aは、Symatlasオンライントランスクリプトームのデータのヒートマップを表す。 図4Bは、ESTオンラインデータのヒートマップを表す。 TSPSa、TEPEb、TEPEc及びTEPEd遺伝子が記載される。 図4Cは、Symatlas及びEST研究から規定される遺伝子の分布を表す。 図4Dは、第2バージョンの専用マイクロアレイ(CTチップ_v2) (正常体細胞性組織における発現)からの実験的トランスクリプトームデータのヒートマップを表す。 図4Eは、第2バージョンの専用マイクロアレイ(CTチップ_v2) (非癌性試料における発現)からの実験的トランスクリプトームデータのヒートマップを表す。 図4Fは、第2バージョンの専用マイクロアレイ(CTチップ_v2) (癌性試料における発現)からの実験的トランスクリプトームデータのヒートマップを表す。 図4A、4B及び4D〜4Fの全てのヒートマップ図において、遺伝子は、精巣又は胎盤におけるそれらの特異性により分類される。 図4Gは、実験的に規定される(第2バージョンのCTチップ上でのそれらの発現に従う) TSPSa遺伝子の分布を示し、該TSPSa遺伝子は、精巣及び胎盤に限定された発現を示す。 図4Hは、実験的に規定される(第2バージョンの専用マイクロアレイ(CTチップ_v2)上でのそれらの発現に従う) TEPEb遺伝子の分布を示し、該TEPEb遺伝子は、精巣及び胎盤に限定された発現を示し、Symatlas又はESTデータにおいていくつかの体細胞性組織で散発的に発現される。 図4Iは、30%未満の非精巣若しくは胎盤ESTで、Symatlas及びESTデータに従って精巣又は胎盤において高く過剰発現されるTEPEb遺伝子のエピジェネティックの状態を表し、これらはマイクロアレイ(CTチップバージョン2)上で特異的に発現される。遺伝子は、プロモーター領域(CpGリッチ)におけるCpGアイランドの存在、プロモーターにおける低レベルのCpG (LCP)又はCpG含量についての利用可能なデータの不在(NA_NA)に従って分類される。CpGリッチ遺伝子は、それらのメチル化状態に従ってさらに分けられる:過剰メチル化(hyperme)、低メチル化(hypome)又は非メチル化(NA)。 図4Jは、以下のカテゴリーA〜Fにおける精巣及び胎盤発現遺伝子の分布を示す:Aは、マイクロアレイ上で特異的発現を示すTSPSa遺伝子を表し、Bは、マイクロアレイ上で特異的発現を示し、エピジェネティックな修飾が陽性である(生殖細胞「サイン」) TEPEb遺伝子を表し、Cは、マイクロアレイ上で特異的発現を示し、エピジェネティックな修飾が陰性であるTEPEb遺伝子を表し、Dは、非癌性細胞で発現される遺伝子を表し、Eは、体細胞性組織で発現される遺伝子を表し、Fは、第2バージョンのチップ上で精巣又は胎盤において検出されない遺伝子を表す。
【図5】遺伝子のプロモーター領域のエピジェネティックな特徴は、精巣又は胎盤におけるそれらの発現の特異性と関連する。 図5Aは、TSPSa、TEPEb又はTEPEcとdの遺伝子のサブクラス中の、HICP: CpGリッチプロモーター(又は中間)又はLCP: 低CpGプロモーターの型のプロモーターに属する遺伝子の割合を示す。 図5Bは、CpGリッチプロモーターのメチル化による、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す:HCPICP hypoMe = 低レベルのメチル化; HCPICP hyperMe = 高レベルのメチル化。 図5Cは、ポリメラーゼ(PolII)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Dは、ヒストンH3ジメチル化リジン4 (H3K4me2)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Eは、ヒストンH3トリメチル化リジン4 (H3K4me3)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Fは、リジン9及び14でアセチル化されたヒストンH3 (H3K9/14ac)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Gは、リジン36でトリメチル化されたヒストンH3 (H3K36me3)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Hは、リジン79でジメチル化されたヒストンH3 (H3K79me2)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Iは、ポリメラーゼIIの開始複合体(RNApoli)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。 図5Jは、ポリメラーゼIIの伸長複合体(RNApole)の豊富さによる、それぞれのクラスTSPSa (左)、TEPEb (中)又はTEPEcとd (右)の遺伝子の割合を表す。
【図6】体細胞性癌におけるTSPS遺伝子の異常発現 図6Aは、オンコマイン研究による体細胞性癌でのTSPS遺伝子の異常発現を示すヒートマップを表す。白色の強度は、p範囲に応じて任意に規定され、明るい白色はp<0.001を、黒色はp>0.05又は無効の結果を表す。 図6Bは、マイクロアレイによる体細胞性癌でのTSPS遺伝子の異常発現を示すヒートマップを表し、ここで、発現の値は、全ての正常組織でのそれぞれの遺伝子についての発現平均値に対して標準化される。 図6Cは、マイクロアレイによる体細胞性癌でのTSPS遺伝子の異常発現を示すヒートマップを表し(上記と同じ)、ここで、白色は発現を示し、黒色は発現がないことを示す。 図6Dは、体細胞性癌における遺伝子発現に関するデータをまとめる(オンコマイン研究:結果はp値として示す;CTチップv2 (マイクロアレイの第2バージョン):チップ- = 発現されず;チップ+ =発現)。Aは、少なくとも1つのOncoStudyにおいて過剰発現される遺伝子(最も有意なp) p<0.001に相当し、Bは、少なくとも1つのOncoStudyにおいて過剰発現される遺伝子(最も有意なp) 0.001<p<0.01に相当し、Cは、少なくとも1つのOncoStudyにおいて過剰発現される遺伝子(最も有意なp) 0.01<p<0.05に相当し、Dは、OncoStudyにおいて過剰発現されない遺伝子に相当する(実施例3)。
【図7】エピジェネティックの状態及び体細胞性癌における調節解除によるCT遺伝子の分類 図7Aは、それらのエピジェネティックの状態(プロモーター領域のクラス及びメチル化;図5A及び%Bの凡例を参照)と、オンコマイン研究による体細胞性癌におけるそれらの異常発現(図6の凡例を参照)によるTSPS遺伝子の分布を表す。 図7Bは、CTチップv2 (マイクロアレイの第2バージョン)による体細胞性癌において異常発現される全ての遺伝子を表し、このうち53個は、オンコマインにより体細胞性癌において発現することがすでに見出されており、9個は、オンコマイン研究で研究されなかったか又は癌において過剰発現されているとは見出されなかった。群は上記及び実施例3で規定される。
【実施例】
【0124】
実施例1:精巣特異的(TS)及び胎盤特異的(PS)遺伝子のインシリコ同定
本発明者らは、雄性胚細胞(及び/又は胎盤)で通常、特異的に発現されるが、体性癌細胞において不正に発現される「癌精巣」(CT)遺伝子の大規模な同定を行った。
トランスクリプトーム及びESTデータを組み合わせて、雄性胚細胞(TS遺伝子)、又は胎盤(PS遺伝子)において特異的に発現される467のヒト遺伝子を同定した。
体細胞性癌におけるこれらの遺伝子の異常発現を調べるために、本発明者らは、オンコマインウェブサイト(http://www.oncomine.org/main/index.jsp)で利用可能な癌トランスクリプトームデータ及び検索エンジンを利用し、250の精巣又は胎盤特異的遺伝子が、オンコマインに記録される体細胞性癌において不正に発現し、それぞれの型の癌がこれらの遺伝子の種々の数を発現することを見出した。このデータベースマイニングアプローチは、新しいCT遺伝子を同定するのに非常に有効である。
【0125】
このCT遺伝子のリストは、癌の診断、フォローアップ及び治療のための新しいツールを開発する基礎を提供する。さらに、オンコマインにおいていずれの体細胞性癌においても過剰発現されることが見出されなかった196の胎盤又は精巣特異的遺伝子は、しかし、他の型の癌において調節解除され得るが、このための発現データはまだ研究されていない。
【0126】
1-精巣特異的(TS)及び胎盤特異的(PS)遺伝子の同定
利用可能なESTデータを用いるヒト精巣特異的(TS)及び胎盤特異的(PS)配列の同定
精巣特異的EST配列を検索するために、以下のクエリをunigeneで行った(ncbiウェブサイト: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=unigene):
「精巣(testis)」[限定]及び(AND)ホモ・サピエンス(HOMO SAPIENS)。
同様のクエリを、胎盤特異的転写産物の同定のために行った:「胎盤(placenta)」[限定]及び(AND)ホモ・サピエンス。
【0127】
利用可能なトランスクリプトームデータを用いるヒト精巣特異的(TS)及び胎盤特異的(PS)遺伝子の同定
ノバルティス研究基金ゲノム研究所(Genomics Institute of the Novartis Research Foundation (「GNF」))遺伝子発現データベースSymAtlasは、79のヒト組織及び61のマウス組織のパネルにおけるほとんどのタンパク質をコードするヒト及びマウス遺伝子の発現を問い合わせる、設計されたカスタムアレイから得られるトランスクリプトームデータを示す(http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/) (参照(Suら、2004))。
【0128】
2つのクエリストラテジーを行って、ヒト遺伝子の発現を問い合わせた。最初のアプローチは、精巣胚細胞及び/又は精巣精細管における発現が、少なくとも1つのプローブセットにおいて全ての組織における発現の中央値の10倍を超える精巣過剰発現遺伝子を、GNF1H gcRMA及びMAS5圧縮データセットを用いて検索した。発現プロファイル画像を次いでダウンロードし、精巣特異的発現を確認した。
【0129】
第2のアプローチにおいて、同様のクエリを行ったが、胚細胞及び/又は精細管における発現が、全ての組織における発現の中央値の3倍を超え、全てのその他の組織における発現が、中央値の2倍未満である精巣過剰発現遺伝子について検索した。以下の組織又は株化細胞での発現データは、この検索から除いた:721 Bリンパ芽球、結腸直腸腺癌、慢性骨髄性白血病k562、リンパ芽球性白血病molt4、前骨髄球性白血病hl60、バーキットリンパ腫Daudi、バーキットリンパ腫Raji、卵巣、胎盤及びその他の精巣組織。
【0130】
トランスクリプトーム研究は、固体表面に付着したオリゴヌクレオチド(オリゴプローブ)を用いる、異なる組織/細胞からの標識cDNAのハイブリッド形成に基づく。オリゴヌクレオチド配列の配列特異性は、ハイブリッド形成特異性を規定する。その配列により、オリゴプローブは、単一遺伝子生成物又は遺伝子のファミリーに対して特異的であり得る。さらに、いくつかのオリゴプローブは、スプライシングされた転写産物とのみハイブリッド形成する。トランスクリプトームアレイにおいて、それぞれの遺伝子は、1つ以上のオリゴヌクレオチドにより表され、それらのうちいくつかは、他のものよりも特異的である。今回のアプローチにおいて、全てのそのオリゴプローブを用いて得られるハイブリッド形成データが「精巣特異的」プロファイルを示す場合に、遺伝子は、雄性胚細胞において過剰発現しているとみなした。
同様のアプローチを行って、胎盤において特異的に過剰発現される遺伝子を同定した。
【0131】
これらの組み合わせたアプローチにより、733の遺伝子の同定が可能になり、そのうち655個は、EST及び/又はトランスクリプトームデータにより精巣発現され、78個は、胎盤発現と同定された。次いで、発現パターンが精巣及び/又は胎盤に限定されている遺伝子を選択するために、選択手順を行った。
【0132】
組織特異的データによる精巣発現遺伝子及び胎盤発現遺伝子の分類
上で同定された733の遺伝子を、次いで、それらの組織特異性により分類した。
この目的のために、EST配列の特異性が、以下の理由から優勢であると仮定した。ESTは、特異的組織における発現遺伝子の系統的配列決定の結果であるが、トランスクリプトームデータは、アレイ上に存在するオリゴヌクレオチドの特異性に大きく依存する。その配列に依存して、後者は、特定の遺伝子に対して完全に特異的であることができず、そのうちのいくつかは精巣非特異的又は胎盤非特異的である遺伝子ファミリー全体の転写産物とハイブリッド形成し得る。このことは、精巣又は胎盤特異的遺伝子の非特異的ハイブリッド形成プロファイルをもたらすだろう。逆に、選択されたオリゴプローブは、特定の遺伝子の精巣又は胎盤特異的スプライシングバリアントを示すことができ、これはその他の体細胞発現バリアントを発現する。1つ又はいくつかのプローブを用いて得られるハイブリッド形成プロファイルは、精巣又は胎盤特異的であるが、遺伝子自体はいくつかの体細胞性組織で発現されるだろう。上記の理由から、精巣及び胎盤発現遺伝子の分類は、対応するEST配列の特異性に基づいた。
各遺伝子について、20を超えるESTが利用可能な場合、比率「R0」は、ESTの合計数に対する精巣でも胎盤でもない組織で見出されたESTの数と規定した。比率R0は、精巣又は胎盤で見出されなかったEST配列の割合を表す。
【0133】
別の特定の言及は、脳においても発現される精巣又は胎盤発現遺伝子に関する。実際に、多くの精巣又は胎盤発現遺伝子は、脳でも発現される。精巣特異的遺伝子の1つの重要な特徴は、これらが血液精巣関門により免疫系からは通常分けられている生成物をコードすることである。胎盤特異的遺伝子は、同様の状態にある。体細胞性組織におけるこれらの不正な発現は免疫応答を誘導でき、CTのほとんどの応用は、これらの免疫原性特性に基づく。脳に同様の関門が存在するので、脳で発現される遺伝子も、通常の状況下では免疫系から保護され、その他の組織で不正に発現されるならば、潜在的に免疫原性である。よって、脳でも発現されるがその他の組織で発現されない精巣及び胎盤発現遺伝子のものを、ここでは、精巣又は胎盤特異的遺伝子のリストに含めた。
20を超えるESTが利用可能な各遺伝子について、別の比率「R1」は、ESTの合計数に対する精巣でも胎盤でも脳でもない組織で見出されたESTの数と規定して算出した。よって、R1は、精巣又は胎盤又は脳で見出されなかったEST配列の割合を規定する。
【0134】
遺伝子の特定のクラスは、この比率R1に基づき、以下のように規定される。
クラスAは、Symatlasデータにより特異的発現プロファイルを示すとともに、それらのEST特異性R1=0を示した精巣又は胎盤発現遺伝子と定義した。クラスA-及びA--の遺伝子も、特異的Symatlas発現プロファイルを示したが、小さい割合の非特異的ESTを示した:対応するESTの20%まで(A-遺伝子)又は30%まで(A--遺伝子)が、体細胞性組織(精巣でも胎盤でも脳でもない)で見出された(A-遺伝子:0〜0.2の間のR1比率;A--遺伝子:0.2〜0.3の間のR1比率)。これらの遺伝子について、発現の精巣又は胎盤特異性についての議論が強い。
クラスBは、精巣又は胎盤特異的EST (R1=0)を有するが、Symatlasにおけるトランスクリプトームデータが利用可能でない遺伝子と定義した。クラスB-及びB--の遺伝子は、小さい割合の非特異的ESTを示した:対応するESTの20%まで(B-遺伝子)又は30%まで(B--遺伝子)が、体細胞性組織(精巣でも胎盤でも脳でもない)で見出された(B-遺伝子:0〜0.2の間のR1比率;B--遺伝子:0.2〜0.3の間のR1比率)。EST特異性はプローブの選択又はハイブリッド形成条件に依存しないので、この遺伝子群は、高い信頼性で精巣又は胎盤特異的とみなすことができた。
【0135】
クラスCの遺伝子も、そのESTの精巣又は胎盤特異性を示したが(R1=0)、Symatlasにおけるそれらのトランスクリプトームプロファイルはそうでなかった。この明確な矛盾についての最も可能性のある説明は、同様の配列を共有する同じファミリーの体細胞性発現遺伝子とハイブリッド形成し得る、選択したオリゴプローブの特異性の欠如である。クラスC-及びC--は、小さい割合の非特異的ESTを有する遺伝子を含んだ:対応するESTの20%まで(C-遺伝子)又は30%まで(C--遺伝子)が、体細胞性組織(精巣でも胎盤でも脳でもない)で見出された(C-遺伝子:0〜0.2の間のR1比率;C--遺伝子:0.2〜0.3の間のR1比率)。symatlasで利用可能なトランスクリプトームデータは納得のゆく発現特異的パターンを示さなかったが、精巣又は胎盤での対応するESTの大きい優位性は、これらを、妥当な信頼性を持って精巣又は胎盤特異的遺伝子であるとみなすことができることを示唆した。
【0136】
クラスDに分類される遺伝子は、symatlasトランスクリプトームデータにより精巣又は胎盤特異的発現を示したが、合計で利用可能なEST配列が少なすぎた。実際に、1百万あたり20未満の記録された転写産物は、組織特異的研究について不十分であると考えられた。
クラスE及びE-の遺伝子は、symatlasトランスクリプトームデータにより精巣又は胎盤特異的発現プロファイルを示したが、30%を超えるか(E)又は50%を超える(E-)非特異的ESTが、体細胞性組織(精巣でも胎盤でも脳でもない)で見出された。いくつかの体細胞性組織でのESTの存在は、E及びE-クラスの遺伝子が精巣又は胎盤で過剰発現されるが、これらが完全に精巣又は胎盤特異的でないことを示唆する。Eクラスの遺伝子について、精巣及び/又は胎盤転写産物の数は、体細胞性転写産物の数を超えていたが、E-遺伝子について、体細胞性転写産物の数は精巣及び胎盤転写産物よりも多かった。これらの遺伝子は、TS及びPS遺伝子の最終リストから除外した。
【0137】
EST特異性とSymAtlasトランスクリプトームデータとの間のこの対比から、TS及びPS遺伝子のリストの分類を、それらの特異性により確立した。
【0138】
その他の利用可能な発表されたデータを用いる品質管理
その他の発表された研究から利用可能なデータを用いて、精巣特異的遺伝子のリストが網羅的であるかを確認した。
最初の研究(Foxら、2003)において、著者らは、ヒト成人正常精巣と、セルトリ細胞のみの精巣(胚細胞を有さない精巣)とで異なって発現される800の配列を同定した。Symatlas及びESTデータ(上記のように)を用いることにより、これらの配列のうちで、本発明者らは、57の精巣特異的発現遺伝子を見出した。これらの遺伝子の全ては、上記で同定されたものと重複した。
【0139】
第2の研究(Schultzら、2003)において、385のマウス精巣特異的遺伝子が同定され、春機発動期前のマウスにおけるそれらの発現の時間によって5つの群に分けられた。ヌクレオチドのblast検索を用いて(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)、本発明者らは、精巣特異的マウス遺伝子のそれぞれについてヒトのホモログを系統的に探索し、このことにより、233のヒト遺伝子が同定された。精巣特異的発現を示すものを選択することにより(SymAtlas及び/又はESTデータにより)、本発明者らは、29のヒト精巣特異的遺伝子を同定でき、これらの全ても、上記のアプローチを用いて同定されたものと重複した。
【0140】
最後に、雄性胚細胞において減数分裂又は減数分裂後に異なって発現されると記載された(Chalmelら、2007)げっ歯類遺伝子のヒトホモログを検索し、それらの精巣特異性を記録した。244のヒトホモログのうち、64は、トランスクリプトームのsymatlasデータにより精巣特異的であることが見出され、そのうち13は精巣特異的ESTも示し、1つの遺伝子はヒトにおいて胎盤特異的であった。全てのこれら65の遺伝子が、精巣及び胎盤特異的遺伝子のリストに存在した。リストに存在しないその他の遺伝子は、精巣過剰発現のいずれの明確な証拠も示さなかった。
最後に、トランスクリプトームデータに基づいていくつかの組織特異的遺伝子を記録する最近の研究は、242の遺伝子が「精巣特異的」であると列挙した(Bock-Axelsenら、2007)。しかし、これらのうち51のみがTS遺伝子のリストと重複した(クラスA〜D)。別の74遺伝子も、遺伝子の精巣過剰発現クラスで見出された(クラスE及びE-)が、それらのESTの特異性がないので、「精巣特異的」とはみなすことができなかった。その他の117遺伝子は、いくつかのsymatlasプローブのみを用いて精巣特異的プロファイルを示し、かつその他のプローブを用いて非特異的発現を示したので、異なってスプライシングされた遺伝子に相当することが示唆された(43遺伝子)か、又は全てのsymatlasプローブを用いて非特異的発現プロファイルを示し、かつ非特異的ESTを示した(74遺伝子)かのいずれかであった。
【0141】
よって、上記の全てのデータセットは、生殖系列特異的遺伝子のリストが、発現データが現在利用可能な精巣でのみ発現される全ての遺伝子を含むという証拠を支持する。
【0142】
遺伝子のプロモーターのDNAメチル化状態は、その特異性についての情報も提供できる。実際に、Schubelerらは、最近、初代線維芽細胞(正常体細胞の代表)及び精子細胞におけるヒトゲノム全体のプロモーター領域のDNAメチル化状態を系統的に特徴決定した(Weberら、2007)。彼らは、CpGリッチプロモーターが、体細胞において一般的に低メチル化されており、これは、線維芽細胞において一般的に過剰メチル化され、精子において低メチル化されている生殖系列特異的遺伝子プロモーターとは異なることを観察した。本発明者らが精巣特異的(TS、クラスA〜D)であると列挙した遺伝子のプロモーターについての彼らの研究から得られるDNAメチル化データを確認することにより(http://www.fmi.ch/members/dirk.schubeler/supplemental.htm)、本発明者らは、実際に、i)それらのほぼ半数がCpGリッチ又は中程度のプロモーターを有すること、及びii)これらのCpGリッチ/中程度のプロモーターのうち70%が過剰メチル化されていることを見出した。対照的に、過剰発現されているが精巣において特異的に発現されていないことが見出された精巣発現遺伝子(クラスE及びE-)は、CpGリッチ/中程度のプロモーターの割合が高いが(77%)、過剰メチル化されたCpGリッチ/中程度のプロモーターのパーセンテージがかなり低かった(13%)。よって、TSリストの遺伝子の精巣特異性は、EST及びトランスクリプトームデータにより確認されただけでなく、エピジェネティックな徴候によっても確認された。
【0143】
2-癌における発現によるTS及びPS遺伝子の分類
既知及び新しいCT遺伝子
文献及びオンラインで利用可能なデータ(http://www.cancerimmunity.org/CTdatabase/)の検討により、72の遺伝子が、CT遺伝子として現在のところ記録されていることが示される。これらの遺伝子のうち12 (10のTS及び2のPS)が、癌において調節解除されるTS-PS遺伝子の本リストと重複する。よって、我々が同定した12の精巣及び胎盤特異的遺伝子は、いくつかの体細胞性癌において調節解除される「癌精巣」遺伝子としてすでに記載されている。
しかし、60の既知のCTは、このアプローチによりCTと同定されなかった。主な理由は、これらの遺伝子が、リストを確立するために用いた精巣又は胎盤特異性の基準に合致しなかったことである。実際に、既知のCT遺伝子のうち9つ(7の精巣発現及び2の胎盤発現)は、精巣又は胎盤で過剰発現される遺伝子のうちから見出された(クラスE及びE-)。その他の51は、symatlasトランスクリプトームデータ及び/又はEST配列特異性により発現の特異的パターンを示さなかった。よって、これらは、この基準に基づいてCTとされなかった。
【0144】
さらに、Scanlanらは、発表された研究及びWO 2006/029176において、以下の遺伝子をCTと記載している。彼らが記載する遺伝子のうち9つが、TS遺伝子と重複し、除去された。
まとめると、この主題についての文献の網羅的な調査により、CTの発見及び研究は、それらの癌診断及び/又は治療におけるそれらの潜在的な使用により大きな興味を生じるが、これらの医療的応用は、全ての既知のCTが癌において散発的に発現されるという事実により、現在のところ妨げられている。全ての型の癌の信頼できる高度に特異的な検出及び/又はターゲティングを可能にする「完璧な」CT又はCTの群は見出されていない。
【0145】
本リストは、「癌精巣」特異的な限定された発現パターンを有する遺伝子の最初の大規模な同定を記録する。全体として、このリストは、全ての型の癌について利用可能な信頼できる検査と療法のアプローチの開発の基礎を提供する。これらのアプローチは、「癌精巣」遺伝子の既知の特性に基づく。
【0146】
体細胞性癌における精巣又は胎盤特異的遺伝子の発現
この知見をその他の体細胞性癌に拡張するために、次いで、本発明者らは、オンコマインウェブサイトで利用可能な癌トランスクリプトームデータ及び検索エンジンを利用した。
癌プロファイリングデータベースオンコマイン(http://www.oncomine.org/main/index.jsp) (Rhodesら、2007; Rhodesら、2004)は、20,000を超える癌トランスクリプトームプロファイルからのデータを、分析エンジン並びにデータマイニング及び視覚化のためのウェブアプリケーションと組み合わせる。
【0147】
上記で列挙した467の精巣特異的及び胎盤特異的遺伝子のそれぞれについて、本発明者らは、p<0.001で腫瘍対正常組織における過剰発現についてオンコマインデータベースを検索した。
もともとの467の精巣又は胎盤特異的遺伝子のうち35が、オンコマインデータベースに存在しなかった。残りの432のTS-PS-遺伝子のうち、この分析は、250 (58%)がオンコマインに記録される少なくとも1つのトランスクリプトーム研究において腫瘍で異常に発現されていることが見出されたことを明らかにした。これらの遺伝子のいくつかは、体細胞性癌の試料とその正常組織対応物の試料とを比較した研究において異常発現されていた(ECN: 157遺伝子)が、その他のものは、癌試料をその他の癌試料と比較した研究において過剰発現されていた(CC: 93遺伝子)。さらに、オンコマインに記録されるそれぞれ単独の型の癌は、これらの遺伝子のサブセットを発現した。合計で182のTS-PS-遺伝子が、試験したけれどもオンコマインに記録されるいずれの癌研究においても発現されなかった(NEC)。
【0148】
よって、オンコマインにおけるトランスクリプトームデータは、精巣特異的及び胎盤特異的遺伝子の半数より多くが、少なくとも1つの型の体細胞性癌において不正に発現され、それぞれの型の癌が、TS-PS遺伝子のサブセットの調節解除と関連することを示す。
【0149】
癌におけるTS及びPS遺伝子の発現、トランスクリプトームデータアプローチとのデータベースの比較
トランスクリプトームデータアプローチとのこのデータベースの比較により、250のCT遺伝子(癌において調節解除されるTS及びPS遺伝子)を同定することができ、そのうちのほとんどは以前にCTと記載されていなかった。
【0150】
以下の表4は、結果のデータを示す。表4は、体細胞性又は卵巣腫瘍のトランスクリプトームデータを対応する正常体細胞性組織試料と比較したオンコマインにおいて記録される研究のメタアナリシスにおけるリストの精巣及び胎盤特異的遺伝子の発現を記載する(対応する配列の配列番号を左列に記載する) (27の列は、癌性組織の型に従ってラベルされる。値は、それぞれの遺伝子が、p<0.001で正常対応組織と比較して腫瘍試料で有意に過剰発現されることが見出される研究の数を示す)。
オンコマインの列は、オンコマインで記録される研究における遺伝子発現を表す:癌試料とそれらの体細胞性対応物との比較(ECN) (図1a、1b及び1cにも示す)、又は癌試料をその他の癌試料と比較する(CC)研究における不正な発現、或いは上記のいずれのオンコマイン研究においても発現していることが見出されない(NEC)か、又はオンコマインに記録されていない(NA)。
【0151】
【表4−1】

【0152】
【表4−2】

【0153】
【表4−3】

【0154】
【表4−4】

【0155】
【表4−5】

【0156】
【表4−6】

【0157】
【表4−7】

【0158】
【表4−8】

【0159】
【表4−9】

【0160】
実施例2:正常及び腫瘍組織におけるTS及びPS遺伝子の発現を分析するため専用の「CTチップ」と命名されたマクロアレイの開発及び検証
目的
本研究の目的は、インシリコデータに基づいて、正常ヒト組織及び体細胞性腫瘍におけるTS及びPS遺伝子の検出及び定量を可能にするマクロアレイ(CTチップ)を設計することである。第1のマクロアレイを、6つの正常組織(胎盤、精巣、膀胱、結腸、肝臓、正常な肺)、癌株化細胞(Hela 53)及び腫瘍(肺腫瘍)を含むヒト組織の8つの試料におけるこれらの遺伝子の発現プロファイルを研究することにより評価した。
【0161】
ストラテジー及び方法
1-CTチップに含める遺伝子及びプローブの同定
以下のカテゴリーの遺伝子を含めた:
- TS又はPS遺伝子(クラスA〜D)、n=318
- 精巣又は胎盤過剰発現遺伝子(上記で規定されるクラスE及びE-)、n=241
- 精巣又は胎盤で少なくとも過剰発現する1つと、精巣又は胎盤で特異的に発現しない少なくとも別の1つとを含むいくつかのスプライスバリアントを有する遺伝子(クラスF)、又は精巣若しくは胎盤における特異性若しくは明確な過剰発現がない遺伝子(クラスG及びH)、n= 247
- 以下の組織の1つで発現される組織特異的遺伝子(symatlasトランスクリプトームデータにより選択される):膀胱(Bl)、脳(Bra)、胸部(Bre)、結腸(Co)、腎臓(K)、肝臓(Li)、肺(Lu)、卵巣(O)、前立腺(Pros)、皮膚(Sk)、甲状腺(T)、子宮(U)、n= 647。
- ハイブリッド形成対照として用いる、全ての組織で発現される対照遺伝子、n= 334。
【0162】
上記のリストの各遺伝子について、遺伝子のオープンリーディングフレーム又は転写配列に特異的な60塩基対配列に相当する少なくとも1つの特異的プローブを設計した。
特に、優先権書類の旧群(配列番号755〜配列番号1088) に含まれる配列番号421、配列番号423、配列番号424、配列番号425、配列番号426、配列番号、配列番号427、配列番号429、配列番号430、配列番号431、配列番号432、配列番号434、配列番号435、配列番号436、配列番号437、配列番号、配列番号444、配列番号448、配列番号449、配列番号450、配列番号451、配列番号452、配列番号455、配列番号457、配列番号458、配列番号460、配列番号461、配列番号462、配列番号463、配列番号464、配列番号、配列番号465、配列番号466、配列番号470、配列番号471、配列番号、配列番号472、配列番号473、配列番号474、配列番号475、配列番号476、配列番号489、配列番号492、配列番号496、配列番号497、配列番号、配列番号499、配列番号500、配列番号501、配列番号502、配列番号503、配列番号504、配列番号505、配列番号506、配列番号507、配列番号508、配列番号509、配列番号528、配列番号530、配列番号531、配列番号532、配列番号、配列番号533、配列番号534、配列番号535、配列番号、配列番号536、配列番号537、配列番号538、配列番号、配列番号540、配列番号541、配列番号545、配列番号546、配列番号547、配列番号548、配列番号549、配列番号550、配列番号551、配列番号、配列番号552、配列番号554、配列番号556、配列番号557、配列番号558、配列番号559、配列番号560、配列番号561、配列番号562、配列番号569、配列番号571、配列番号573、配列番号576、配列番号577、配列番号578、配列番号、配列番号581、配列番号584、配列番号588、配列番号589、配列番号591、配列番号593、配列番号616、配列番号619、配列番号621、配列番号622、配列番号、配列番号623、配列番号624、配列番号625、配列番号626、配列番号627、配列番号628、配列番号629、配列番号、配列番号630、配列番号631、配列番号635、配列番号636、配列番号637、配列番号638、配列番号639、配列番号、配列番号640、配列番号641、配列番号642、配列番号643、配列番号645、配列番号646、配列番号647、配列番号649、配列番号650、配列番号652、配列番号653、配列番号567、配列番号605、配列番号666、配列番号667、配列番号668、配列番号671及び配列番号682のプローブを含むマイクロアレイを用いた。
【0163】
利用可能であれば、現存するAgilent Technologiesのプローブを用いた。精巣又は胎盤に限定された発現を有するか又は有さないいくつかの転写産物を含むいくつかの遺伝子について(上記の最初の3つのカテゴリー内)、全ての既知のバリアントを検出するためにいくつかのプローブを設計した。
【0164】
2- CTチップ設計
オンラインソフトウェアeArray (Agilent Technologies)を用いて、CTチップの第1バージョンを設計した。8x15Kを選択した。特徴抽出によりデータ抽出を最適化するために、アレイあたり少なくとも10000のスポットを有することが必要であった。よって、対照遺伝子以外の上記の遺伝子リストの全てを、6回反復した。
【0165】
3- 以下のRNA試料は、Applied Biosystems (France)から購入した。
- 膀胱
- Hela 53
- 正常肺
- 腫瘍肺
- 結腸
- 肝臓
- 精巣
- 胎盤
【0166】
4-ハイブリッド形成
アプローチ:RNA試料を、CTチップ上で、one-coltheアプローチでハイブリッド形成させた。これは、共通の参照を必要とせずに、スライド間の蛍光強度の直接比較を可能にする。それぞれのRNA試料を3回ハイブリッド形成させて、合計で24の発現プロファイルを得た。
【0167】
RNA試料は、まず、定量的(Nanodrop ND-1000)及び定性的(Agilent BioAnalyser 2100によるリボソームRNA電気泳動プロファイルの分析)に評価し、次いで、400 ngの各試料を、Cy3と結合したCTPを、Low RNAインプット線形増幅キット(Agilent Technologies)を用いて組み込むことにより3重で標識した。標識cDNAの濃度を確認し、200ng/mlに調整し、それらの電気泳動プロファイルを上記のようにして分析した。標識cDNAを、次いで、60マーのプローブとの最適ハイブリッド形成のために必要な50〜200 bpフラグメントを得るために、フラグメント化した(特定のバッファー中で60Cにて30分間の変性により)。
600ngのCy3-cDNAを、次いで、65Cにて17時間(hthes)ハイブリッド形成させた。ハイブリッド形成したスライドを、Agilentスキャナ装置を用いて緑色で読み取った。
【0168】
5-データ抽出
データは、ソフトウェア「Feature Extraction 9.1」により、one-coltheプロトコルを用いて抽出した(GE1-v5_95_Feb97)。3つのファイルを作成し、これらは画像ファイル(.jpg)、データファイル(.text)及び品質レポート(.pdf)を含んだ。品質パラメータは、同じプローブを用いて得られたシグナル同士の変動係数が10%未満で、実験の高い再現性を示し、満足できるものであった。
バックグラウンドノイズシグナルを減じた後のデータファイルにおいて、各プローブについて得られた平均シグナルを標準化して、「加工シグナル」の値を得た。「IsWellAboveBG」の値は、平均シグナルがバックグラウンドよりも有意に高いか、及びこのシグナルがCy3についてのバックグラウンドノイズの標準偏差を2.6倍上回るかを示す(0=有意でない;1=有意)。
【0169】
6-発現プロファイルの分析
目的は:
- 各組織で発現される転写産物を同定するため
- 体細胞性組織での発現レベルを、精巣又は胎盤でのものと比較し、分析された遺伝子の組織特異性を検証するため
- HeLA細胞又は腫瘍肺で発現される精巣又は胎盤特異的遺伝子を同定するため
であった。
上記のカテゴリーの遺伝子の発現プロファイルを、以下にまとめる。図2a及び2bは、異なるカテゴリーに属する遺伝子の階層的クラスタリングを示す。これは、「permutmatrix」ソフトウェアを用いて行った(オンラインhttp://www.lirmm.fr/~caraux/PermutMatrix/にてフリー)。
【0170】
以下の表6は、CTチップでの遺伝子研究の発現データをまとめる。A〜Dカテゴリーに属する全ての研究した遺伝子のデータ、及び2つのその他のカテゴリーに属する遺伝子のデータのいくつかを示す(28の遺伝子E及び14の遺伝子F〜H)。
CTチップ_CT = Hela細胞及び/又は肺腫瘍でも発現が見出された精巣又は胎盤特異的遺伝子。CT遺伝子と見出された遺伝子を太字で示す。
全てのその他の列は、上記のとおりである。
【0171】
CTチップから得られた結果は、この第1バージョンのCTチップで分析された遺伝子の大多数が、正常体細胞性組織において予測された発現プロファイルを示すことを示す。これらの結果は、よって、インシリコアプローチを検証して、多数の新しい精巣又は胎盤特異的遺伝子を同定する(図2bを参照)。
これらの結果は、この多数の遺伝子の使用が、体細胞性癌のいずれの症例においても癌関連遺伝子調節解除の検出を可能にするという概念に基づく上記のアプローチの特異性も検証する(図1a、オンコマインデータを記載する図2aも参照)。
データを実施するために、全ての組織における予測される発現を有する対照遺伝子のほとんどは、実験において全ての組織で陽性であったことが注目される。
【0172】
組織特異的遺伝子の大部分が、むしろ組織限定発現パターンを示したが、いくつかはこの限定発現パターンを示さなかった。これらの遺伝子は、symatlasトランスクリプトームデータによる限定発現パターンについて選択されたが、それらのESTの特異性によって分類されなかったことに注意すべきである。よって、これらの非特異的発現プロファイルは、予測されるものであった。
特に、精巣特異的及び胎盤特異的遺伝子の高い割合(以前に定義されたように、特異性クラスA〜Dに属する)は、正常組織において精巣又は胎盤限定発現パターンを明確に示す(図2a、3番目の列、及び図2b)。
【0173】
精巣又は胎盤特異的遺伝子のうち、9つは、この一連の実験で分析されたHela細胞及び/又は肺腫瘍試料において発現していることが見出され(表6を参照)、このことは、これらが、体細胞性癌において調節解除され得る「CT」遺伝子とみなすことができることを示す。今回の結果は、このCTチップアプローチが、実際に、体細胞性癌における精巣又は胎盤特異的遺伝子の調節解除を検出でき、体細胞性癌における調節解除CT遺伝子のセットを同定できることを示す。
【0174】
まとめると、この第1CTチップを用いて得られるデータは、精巣又は胎盤特異的遺伝子の同定についてのインシリコアプローチを検証し、ほとんどの初期のデータ、特に遺伝子の発現特異性を確認することを可能にする。
これらの結果は、このツールが、全ての腫瘍において異常発現される遺伝子を系統的に同定するために非常に強力であり、任意の型の癌及び任意の進化の段階を規定するために用いることができることも証明する(オンコマインデータ参照)。
これらの結果は、よって、少なくとも1つの精巣及び胎盤特異的遺伝子は、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現されていると見出すことができ、及びそれぞれの型の体細胞性又は卵巣癌細胞は、少なくとも1つの精巣及び胎盤特異的遺伝子を異常発現し得るという概念を検証する。
【0175】
【表5−1】

【0176】
【表5−2】

【0177】
実施例3
組織特異性の第2のそしてより厳密な分析、文献の最新情報、TSPS遺伝子のエピジェネティックデータ及び第2バージョンのCTチップの結果
CT遺伝子の同定のストラテジーを、図3に概説する。
本発明者らは、遺伝子発現のエピジェネティックな調節の影響及び癌における系統的なエピジェネティック調節の誤りの発生についての疑問について調べる研究を行い、その発現が精巣又は胎盤に厳密に限定されている遺伝子の信頼できる全体的な同定は、「癌精巣」(CT)遺伝子の大規模同定のための独特の条件であり、いずれの体細胞性癌も系統的に検出する能力を与えるであろうという仮説を立てた。
【0178】
発表されたか又は未発表であるが公に利用可能な精巣及び胎盤特異的遺伝子のリストを見出すための最初の試みは、非限定的な発現パターンを有する遺伝子又は遍在遺伝子さえもこれらが主に含むことを示した。
上記の仮説に従って、この非限定的な発現により、これらの遺伝子は、体細胞性癌の癌マーカーとしての資格がない。
既知のCT遺伝子の非限定的組織特異性は、非常に最近になって確認され、いくつかのCT遺伝子が、非癌細胞における体細胞性組織において、生理的又は病気の状態の下で発現され得るという可能性は、調べられていない。
【0179】
本発明者らは、よって、彼ら独自の精巣及び胎盤特異的遺伝子のリストを確立することを決定し、それらの発現の厳密な特異性の選択のための基準を規定した。
大規模なオンライン及び自家製のトランスクリプトームアプローチを組み合わせて(上記の実施例を参照)、本発明者らは、その発現が精巣又は胎盤に厳密に限定される遺伝子を同定した。次いで、本発明者らは、これらの発現データを、興味対象遺伝子の選択のための付加的な基準としての全ゲノム(pan-genomic)エピジェネティックデータのいくつかのセットと対比した。
顕著なことに、これらの分析は、体細胞における選択された遺伝子のサイレンシングと関連する特異的なエピジェネティックの徴候の存在を一貫して示し、このことはよって、選択の信頼性を増加させる。
【0180】
本発明者らは、厳密に特異的な精巣(TS)及び胎盤(PS)遺伝子の網羅的なリストの代表である配列を含む専用マイクロアレイを設計した。このマイクロアレイは、遺伝子のリストを精巧に調節し、精巣及び胎盤についての厳密な発現特異性が確認された遺伝子の最終的なリストを提供することを可能にするだけでなく、多様な体細胞性及び卵巣癌の型の代表である20全ての試料における少なくとも1つのこれらの遺伝子の不正な発現を検出した。
広範囲の体細胞性癌の型及びサブタイプにおけるTS/PS遺伝子のリストの異常な発現について試験するために、本発明者らは次いで、オンラインで利用可能な癌トランスクリプトームデータを分析した(オンコマインウェブサイトを用いて)。このアプローチは、リストのうちのほとんどの精巣又は胎盤特異的遺伝子が、1つ以上の体細胞性癌において散発的に発現することを示した。さらに、全てでなければほとんどの癌の症例は、これらの精巣又は胎盤特異的遺伝子の少なくとも1つの異常発現と関連することが示された。
CT遺伝子の同定のストラテジーを、図3に概説する。
【0181】
1-精巣又は胎盤に限定された発現パターンを有する遺伝子の同定
精巣特異的遺伝子のリストが、マウスを含むいくつかの種について確立されているが(http://www.germonline.org/Multi/martview)、最近まで、ヒト遺伝子について利用可能なものはなかった。以前に用いられた従来技術の方法は、精巣におけるそれらの厳密な発現により遺伝子を分類することを可能にしなかった。
【0182】
オンラインで利用可能な発現データからの精巣特異的(TS)及び胎盤特異的(PS)遺伝子の大規模スクリーニング(図4)
正常組織における特異的発現パターンを有する遺伝子のリストを確立するために、本発明者らは:
i) 79のヒト組織及び61のマウス組織のパネルにおけるほとんどのタンパク質をコードするヒト及びマウス遺伝子の発現について問い合わせる設計されたカスタムアレイから得られるトランスクリプトームデータ(ノバルティス研究基金ゲノム研究所(「GNF」)により発表されたSymAtlasトランスクリプトームデータ) (http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/)、及び
ii)オンラインで利用可能なESTデータ(ncbiウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=unigene)
を利用した。
【0183】
Symatlasトランスクリプトームデータを用いて、本発明者らは、雄性胚細胞(「精細管」又は「精巣生殖細胞」の試料)又は胎盤における平均発現が、非胚性正常組織における平均発現の少なくとも5倍である遺伝子を選択した。
これと並行して、独立したアプローチにおいて、本発明者らは、それぞれの組織ライブラリーで見出されるESTの頻度を考慮した。この場合、比率Rは、精巣でも胎盤でもない組織で見出されるESTの数を、ESTの合計数で除することにより計算され、非特異的ESTの割合を表す。
【0184】
最初のスクリーニングの間に、本発明者らは、ESTの合計数の半分を超えるもの(比率R<0.5)が胎盤又は精巣で見出される全ての遺伝子を選択した。比率R=0は、精巣又は胎盤に限定された厳密な発現特異性を有する遺伝子を示す(TSPSa遺伝子)。
【0185】
トランスクリプトームデータとESTデータを組み合わせることにより、精巣(n= 990)又は胎盤(n=164)で過剰発現される1154のヒト遺伝子又は配列が同定された。ESTデータの精密な分析により、以下のように、これらの遺伝子の、その特異性に従う分類が可能になった。
ESTが胎盤又は精巣でのみ見出される場合(R=0、脳又は神経系で見出されるESTは考慮しない)、遺伝子は、精巣又は胎盤特異的と分類される(インシリコ特異性クラス:TSPSa)。過剰発現遺伝子の最初の選択のうち、443が、精巣(TS遺伝子、n=388)又は胎盤(PS遺伝子、n=55)に限定された発現パターンを有し、711の遺伝子が、精巣(TE遺伝子n=602)又は胎盤(PE遺伝子n=109)のみではないが、精巣又は胎盤において高く発現される遺伝子と分類された。
【0186】
過剰発現遺伝子は、EST及びsymatlasデータに従うそれらの発現パターンによりさらに分類され、以下のクラスが規定される:
TSPSa = 精巣又は胎盤に限定された発現パターンを有する遺伝子(胎盤又は精巣でのみ見出されるEST、R=0)
TSPSb = 精巣又は胎盤で高く過剰発現される遺伝子(精巣でも胎盤でも脳でもない組織で見出される30%未満のEST)
TSPSc = 精巣又は胎盤において過剰発現される遺伝子(精巣でも胎盤でも脳でもない組織で見出される30%〜50%の間のEST)
TSPSd = 精巣又は胎盤で過剰発現されるが、他の組織でも発現される遺伝子(50%を超えるESTが精巣でも胎盤でも脳でもない組織で見出される; symatlasデータは、精巣又は胎盤における発現が、全ての組織での平均発現の5倍以上であることを示した)。
【0187】
体細胞におけるTSPS遺伝子のエピジェネティック状態(図5)
遺伝子の選択についてのさらなる基準を含めるために、本発明者らは、現在利用可能なゲノム範囲のエピジェネティックデータから「掘り出す」ことができる「エピジェネティックサイン」遺伝子を、いくつかの型の正常体細胞において考慮することを決定した。
本発明者らは、ヒトゲノムの最近発表された大規模エピジェネティック研究を利用した。Schubelerのチームからの最初の研究(Weberら、2007 Apr;39(4):457〜66)において、DNAメチル化、RNAポリメラーゼ占有及びヒストン修飾が、初代体細胞及び精子における16,000のプロモーターで測定された。次の研究において、Youngら(Guentherら、2007 Cell 130: 77〜88)は、3つの型のヒト細胞、胚性幹(ES)細胞、肝臓細胞及び網状赤血球のゲノム範囲の分析を発表し、H3K4me3及びH3K9,14AcとH3K36me3を含むいくつかのヒストン修飾、並びにRNAポリメラーゼII占有を探索した。
【0188】
精巣及び胎盤発現遺伝子のリストに相当するデータを、これらの研究から抽出した。制限された発現パターンを有する遺伝子の特徴(TSPSa)を、精巣及び胎盤にて過剰発現される遺伝子(TEPEb = 精巣又は胎盤における高い過剰発現と、その他の組織での散発的な発現、及びTEPEcd = 精巣又は胎盤において過剰発現されるが、多くのその他の組織で発現することも見出される)の特徴、並びに研究により(示さず)又は上記のように広く発現することが見出されたその他のヒト遺伝子について観察されるパターンと比較した(図5)。
【0189】
本発明者らが精巣又は胎盤特異的であると列挙した遺伝子に相当するSchubelerのチームの研究から得られるプロモータークラス及びDNAメチル化データ(Weberら、2007 Apr;39(4):457〜66) (http://www.fmi.ch/members/dirk.schubeler/supplemental.htm)のメタ分析は、ここで、遺伝子が生殖系列特異的遺伝子のエピジェネティックな特徴を有することを示す。実際に、ヒト遺伝子の大部分のプロモーターと比較して、本発明者らは、TSPSa遺伝子プロモーターが、より頻繁に低CpGであることを観察する(半分が低CpG (LCP)であり、半分が中程度CpG又はCpGリッチプロモーター(HICP)である)。さらに、線維芽細胞において、ほとんどのその他のヒト遺伝子プロモーターとは対照的に、TSPSa遺伝子プロモーターは過剰メチル化され、H3K4me2又はポリメラーゼIIが豊富でない。ほとんどのTSPS遺伝子は、これらの異なる型の体細胞において、一貫してヒストンH3K4me3、acH3K14K9及びDNA poleが欠乏するが、著者らは、ほとんどのヒト遺伝子は、それらの発現状態からは独立して、H3K4me3及びpolIIeに富み、多くがacH3K9K14とも会合していることを記載している。
【0190】
本発明者らが、精巣又は胎盤で過剰発現されているが、これらの組織に厳密に限定されないことを見出した遺伝子を用いて行われた同じ分析により、それらのプロモーターの型、DNAメチル化パターン及びヒストン修飾が、ESTデータに従って規定される特異性のレベルと関連し得ることを示す(図5)。実際に、「生殖系列遺伝子特異的」なエピジェネティックの特徴(低CpGプロモーター、ポリメラーゼ及びヒストン修飾の欠乏、及び過剰メチル化CpGリッチプロモーター)が、高い割合のTEPEb遺伝子でも見出された(精巣でも胎盤でもない組織でのESTの30%未満で過剰発現される)が、TEPEcd遺伝子は、ほとんどのヒト遺伝子について記載されたものに近い分布を示した(大部分の低メチル化CpGリッチプロモーター)。
【0191】
まとめると、全ゲノムエピジェネティックデータのこの分析は、大部分のPS及びTS遺伝子が、いくつかの未分化(ES細胞)又は分化体細胞(線維芽細胞、網状赤血球、Tリンパ球)におけるほとんどのヒト遺伝子を特徴づけるものとは異なって、それらのプロモーター領域内に「生殖系列遺伝子特異的」なエピジェネティックの徴候を有することを明らかにする。さらに、研究は、この特異的なエピジェネティックの構成が、これらの遺伝子の厳密な発現特異性と直接関連でき、正常体細胞の全ての系列における活性で強い抑制状態を示すことを示す。
【0192】
この分析の後に、TEPEb遺伝子(インシリコデータにより精巣又は胎盤で高く過剰発現され、70%より高い精巣又は胎盤ESTを有する遺伝子)のうち、遺伝子を、マクロアレイでの厳密な発現特異性について選択し、これらのデータに従って「生殖系列特異的」なエピジェネティックの徴候と関連付けた(下記及び図4Iを参照)。
【0193】
第2の専用「CT」マクロアレイの設計と、正常及び非癌性組織での精巣及び胎盤遺伝子の発現分析(図4)
次いで、精巣(2つの試料)、胎盤、胸部(2つの試料)、膀胱、結腸(2つの試料)、肝臓、肺、前立腺、膵臓、卵巣、リンパ節、血液からの休止Bリンパ球及び脾臓を含む広い範囲の正常ヒト組織におけるそれらの発現を評価するために、インシリコで同定されたこれらの遺伝子及び配列を用いて専用マイクロアレイを設計した。
【0194】
さらに、非癌性状況におけるこれらのTS及びPS遺伝子の潜在的な調節解除を評価するために、本発明者らは、リンパ球活性化若しくは炎症性リンパ節のような生理的プロセス、又はクローン病(2つの試料)、肝硬変(2つの試料)、慢性気管支炎の肺、膵炎、過形成性若しくは炎症性前立腺を含む非癌性病変状態の間のそれらの発現も評価した。
マイクロアレイは、配列番号415〜2989のポリヌクレオチドプローブを含む。
【0195】
マクロアレイ設計及びハイブリッド形成、並びにシグナル分析及び統計についての方法論的アプローチは、上記のとおりである(実施例2)。
正常組織での発現分析は、208の精巣特異的遺伝子及び12の胎盤特異的遺伝子を含む現存する発現データ(n=220、SPE-spe遺伝子)から同定されるTSPSa遺伝子のほぼ半数について精巣又は胎盤における厳密な発現特異性を示した。これらの実験データにより、よって、これらの遺伝子が精巣又は胎盤で厳密に発現され、正常及び非癌性条件下で体細胞性組織において抑制されていることが確認される(図4d及びe)。
その他のTSPSa遺伝子のうち、105の遺伝子が、分析した体細胞性組織の1つ以上で陽性シグナルを示し、このことは、それらの発現が厳密に精巣又は胎盤特異的でないか、又はトランスクリプトーム分析のために選択したオリゴヌクレオチドが非特異的ハイブリッド形成シグナルを生じたかのいずれかを示唆する。別の118の遺伝子又は配列は、精巣又は胎盤においていずれのシグナルも示さなかった。これは、なぜなら、これらが精巣又は胎盤で発現されなかったか、又はプローブが適切に選択されなかったことによる。
【0196】
TEPEb遺伝子のうち、135が正常又は非癌性体細胞性組織において非特異的発現を示し、42が、精巣又は胎盤においていずれのハイブリッド形成シグナルも示さなかった。しかし、134は、精巣(n=124)又は胎盤(n=10)において限定された発現パターンを示した(図4d及びe)。本発明者らは、線維芽細胞におけるプロモーターCpG含量とメチル化(Weberら、2007からのデータを用いて)、及びES細胞におけるヒストン修飾(Guentherら、2007からのデータ)を精密に検討した。これらの遺伝子の55について、本発明者らは、「生殖系列遺伝子特異的」なエピジェネティックの徴候についての明確な証拠を得て(図4I)、これらは、線維芽細胞において過剰メチル化されたCpGリッチプロモーターを有する17の遺伝子と、ES細胞、肝臓細胞及び網状赤血球において、ヒストン修飾H3K4 me3及びH3K9/14acの欠如と、ポリメラーゼの不在(開始及び伸長複合体)とが一貫して組み合わされた38の遺伝子とを含む。
【0197】
まとめると、正常及び非癌性組織の上記の全ての分析と、エピジェネティックの特徴とを考慮して、本発明者らは、癌の不在において、精巣又は胎盤に厳密に限定された発現パターンについての強い証拠を有し、よって、良好なCT候補である合計で275の遺伝子を同定した。
【0198】
2-体細胞性及び卵巣癌におけるCT遺伝子候補の発現
厳密に精巣又は胎盤特異的であると同定された275の遺伝子(それぞれTS及びPS遺伝子)を、体細胞性癌細胞におけるそれらの不正な発現についての検索において調べた。
専用マクロアレイ上で分析した種々の癌性試料の小さいシリーズから得られるデータは、リストの遺伝子のいくつかが、体細胞性癌において散発的に抑制解除されることを示唆した。実際に、13の固形腫瘍試料(膀胱、胸部、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺の腫瘍を含む)及び7の血液癌試料(リンパ腫及び白血病試料)の専用マクロアレイでの分析は、リストの少なくとも1つの遺伝子が各試料中で発現されることを示した。44(Fthety fthe)の遺伝子が、少なくとも1つの癌試料において不正に発現されていることが見出された(図4f、図6b、c、d)。
【0199】
広範囲の体細胞性癌におけるTSPS遺伝子の発現の大きな概観を得るために、本発明者らは、20,000を超える癌トランスクリプトームプロファイルからのデータを、分析エンジン並びにデータマイニング及び視覚化のためのアプリケーションと組み合わせた癌プロファイリングデータベースであるオンコマインを利用した(http://www.oncomine.org/main/index.jsp) (Rhodesら、2007; Rhodesら、2004)。オンコマインでは、各遺伝子の発現プロファイルを試料の2群の間で比較し、箱型図とp値をこの比較から算出する。上記のリストの275の精巣特異的及び胎盤特異的遺伝子のそれぞれについて、本発明者らは、オンコマインデータベース中を、腫瘍と正常組織試料を比較する研究における過剰発現について検索した。本発明者らは、正常試料と種々の起源の体細胞性癌試料とを比較した、オンコマインに記録される分析を選択し、リストの少なくとも30の遺伝子が分析されたものを選択した(30未満の遺伝子が分析されたが、少なくとも1つの遺伝子が、腫瘍試料において、高い有意性p値p<0.001で過剰発現されたいくつかの研究も)。このアプローチにより、68の研究が選択された。それぞれの研究における遺伝子のそれぞれに対応するp値を記録した。
【0200】
少なくとも1つのオンコマイン研究(最も有意なp値とともに)及び/又は第2のマイクロアレイの少なくとも1つの癌試料において過剰発現される遺伝子の数:
【0201】
このメタ分析から、93の精巣又は胎盤特異的遺伝子が、少なくとも1つのオンコマイン研究においてp<0.001で過剰発現されていることが見出され、別の120の遺伝子は、少なくとも1つのオンコマイン研究において0.001<p<0.05で過剰発現されていた。22の遺伝子は、いずれの選択されたオンコマイン研究においても過剰発現していると見出されず、40はこれらのいずれの研究においても試験されなかった。
いずれのオンコマイン研究でも分析されなかった(又は過剰発現していると見出されなかった)62の遺伝子のうち、9つは、マクロアレイで分析された癌試料の少なくとも1つで発現していることが見出された。
これらのデータを図7に示す。
【0202】
よって、利用可能なトランスクリプトームデータのこの分析(データが利用可能なリストの遺伝子について)は、リストのほとんどの遺伝子(n= 222)が、1つ又はいくつかの体細胞性又は卵巣癌において不正に発現される可能性があり、よって、「癌精巣」(CT)遺伝子としての資格を得ることを示した。いくつかの個別の癌試料の詳細な分析は、少なくとも1つの精巣又は胎盤特異的遺伝子が、それぞれの所定の癌の症例(示さず)において異常発現することを示す。このことは、専用マイクロアレイの結果によっても確認される。なぜなら、分析された20の癌試料のそれぞれにおいて、リストの少なくとも1つの遺伝子が、不正に発現していることが見出されたからである。
【0203】
3-正常体細胞におけるTSPS遺伝子抑制に関与するエピジェネティックの機構及び癌における潜在的調節解除
結果は、限定発現プロファイルを有する遺伝子の大部分、特にTS遺伝子の大部分が、他のヒト遺伝子についてはほとんど観察されない、未分化及び分化した全ての型の体細胞で観察されるエピジェネティックの特徴の独特のパターンを示すことを示す。
多くの癌において、異常DNAメチル化パターンが、細胞形質転換及び癌の進行に貢献することが証明されている。例えば、腫瘍抑止遺伝子のCpGリッチプロモーターの異常メチル化は、これらの遺伝子の異常抑制を導き、このエピジェネティックの異常が癌性表現型の直接的な寄与になり得ることを示唆する。逆に、ゲノムの反復非コード領域の異常な脱メチル化は、結腸癌を含むいくつかの癌において示されている。
【0204】
本発明者らは、よって、体細胞性及び卵巣癌において調節解除される222の遺伝子のリストを明確に規定した。
本発明者らは、また、各群に属する遺伝子のプロモーターのエピジェネティックの状態に基づいて10の群を提案する。
222遺伝子のリスト及び群は、癌のそれぞれの型を、群のうちのこれらの遺伝子の少なくとも1つが少なくとも1つの腫瘍において調節解除されており、それぞれの腫瘍が群のうちの少なくとも1つの遺伝子の調節解除を示すという特徴とともに特異的及び効率的に検出することを可能にする。
【図1a】

【図1b−1】

【図1b−2】

【図1b−3】

【図1b−4】

【図1c−1】

【図1c−2】

【図1c−3】

【図2c】

【図4A−4B.4D−4F】

【図4C】

【図4J】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図5E】

【図5F】

【図5G】

【図5H】

【図5I】

【図5J】

【図6A−6C】

【図6D】

【図1b−5】

【図1c−4】

【図2a】

【図2b−1】

【図2b−2】

【図2b−3】

【図2b−4】

【図2b−5】

【図2b−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
・配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団から選択される少なくとも26の核酸分子を含むセット、
・前記少なくとも26の核酸分子の少なくとも26の相補核酸分子を含むセット、
・以下の:
・前記少なくとも26の核酸分子、若しくは
・前記少なくとも26の相補核酸分子
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントは、前記少なくとも26の核酸分子のそれぞれの少なくとも15〜18の連続ヌクレオチドを含む核酸配列を有するセット、及び
・以下の:
・前記少なくとも26の核酸分子のそれぞれ、若しくは
・前記少なくとも26の相補核酸分子のそれぞれ
の少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、前記バリアントの核酸配列が、前記核酸分子の核酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット
から選択される少なくとも1つの核酸分子のセットであって、前記26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表されるセットの、
いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
前記体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞は、前記核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子を異常発現し、
-前記核酸分子のセットの少なくとも1つの核酸分子は、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用。
【請求項2】
前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜57で変動する)及び配列番号385〜配列番号386の核酸配列で表される少なくとも59の核酸分子を含み、
好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜88で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも93の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜103で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも108の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜121で変動する)及び配列番号385〜配列番号391の核酸配列で表される少なくとも128の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜144で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも160の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜150で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも166の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜163で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも179の核酸分子を含み、
より好ましくは、前記核酸分子のセットが、配列番号2q-1 (qは1〜186で変動する)及び配列番号385〜配列番号411の核酸配列で表される少なくとも213の核酸分子を含み、
特に、前記核酸分子のセットが、前記222核酸分子の群の222全ての核酸分子を含む、請求項1に記載の少なくとも1つの核酸配列のセットの使用。
【請求項3】
・配列番号2q (qは1〜192で変動する)のアミノ酸配列で表される192のタンパク質の集団から選択される少なくとも26のタンパク質を含むセット、
・前記少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくとも1つのバリアントを含むセットであって、該バリアントのアミノ酸配列が、前記タンパク質のアミノ酸配列と比較して少なくとも70%の配列相同性を示すセット、
・以下の:
・前記少なくとも26のタンパク質、若しくは
・前記少なくとも26のタンパク質のそれぞれの少なくともバリアント
のそれぞれの少なくとも1つのフラグメントを含むセットであって、該フラグメントが、該フラグメントが由来するタンパク質に対して特異的に指向された抗体により認識されることができるセット
から選択される少なくとも1つのアミノ酸分子のセットであって、
少なくとも26のタンパク質が、請求項1又は2で規定される少なくとも26の核酸分子によりコードされ、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列で表され、
上記で規定される所定のセットに含まれるそれぞれのアミノ酸分子が、少なくとも1つの特異的抗体により特異的に認識され、該特異的抗体が、上記で規定される所定のセットの1つのアミノ酸分子を特異的に認識できるセットの、
いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
前記体細胞性癌は固形腫瘍又は血液新生物であり、
-いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料が、前記アミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識する少なくとも1つの抗体の異常な量を示し、
-前記アミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識する少なくとも1つの抗体が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌に罹患した患者の生体試料中に異常な量で存在する
使用。
【請求項4】
前記タンパク質のセットが、少なくとも57のタンパク質を含み、該少なくとも57のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜57で変動する)のアミノ酸配列で表され、
好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも88のタンパク質を含み、該少なくとも88のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜88で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも103のタンパク質を含み、該少なくとも103のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜103で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも121のタンパク質を含み、該少なくとも121のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜121で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも144のタンパク質を含み、該少なくとも144のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜144で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも150のタンパク質を含み、該少なくとも150のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜150で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも163のタンパク質を含み、該少なくとも163のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜163で変動する)のアミノ酸配列で表され、
より好ましくは、前記タンパク質のセットが、少なくとも186のタンパク質を含み、該少なくとも186のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜186で変動する)のアミノ酸配列で表され、
特に、前記タンパク質のセットが、前記192のタンパク質の群の192全てのタンパク質を含む、請求項3に記載の少なくともアミノ酸分子のセットの使用。
【請求項5】
少なくとも26の抗体のセット、好ましくは57の抗体のセット、より好ましくは88の抗体のセット、より好ましくは103の抗体のセット、より好ましくは121の抗体のセット、より好ましくは150の抗体のセット、より好ましくは163の抗体のセット、より好ましくは186の抗体のセット、特に192の抗体のセットであって、上記の所定の抗体のセットのそれぞれの抗体が請求項3又は4で規定されるアミノ酸分子のセットのアミノ酸分子を特異的に認識し、請求項3又は4で規定される所定のアミノ酸分子のセットのそれぞれのアミノ酸分子が、前記所定の抗体のセットの抗体により特異的に認識されることを特徴とするセットの、いずれかの型の体細胞性又は卵巣癌のインビトロ又はエクスビボでの診断のための使用であって、
-それぞれの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞が、前記抗体のセットの抗体により認識される少なくとも1つのアミノ酸分子を異常発現し、
-前記抗体のセットの抗体により認識される少なくとも1つのアミノ酸分子が、少なくとも1つの型の体細胞性又は卵巣癌の癌細胞において異常発現される
使用。
【請求項6】
配列番号415〜446のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも32のオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、該少なくとも32のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、請求項1又は2に記載の少なくとも核酸分子のセットのうちの1つの核酸分子と、好ましくは配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表される少なくとも26の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、オリゴヌクレオチドプローブとそれらの対応する核酸配列との対応が表3aに示されるマイクロアレイ。
【請求項7】
配列番号415〜484のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも70のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも70のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜57で変動する)及び配列番号385〜配列番号386の核酸配列で表される少なくとも59の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜524のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも110のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも110のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜88で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも93の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜544のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも130のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも130のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜103で変動する)及び配列番号385〜配列番号389の核酸配列で表される少なくとも108の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜568のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも154のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも154のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜121で変動する)及び配列番号385〜配列番号391の核酸配列で表される少なくとも128の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜611のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも197のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも197のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜144で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも160の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜618のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも204のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも204のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜150で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも166の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜634のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも220のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも220のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜163で変動する)及び配列番号385〜配列番号400の核酸配列で表される少なくとも179の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
より好ましくは、配列番号415〜675のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも261のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも261のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜186で変動する)及び配列番号385〜配列番号411の核酸配列で表される少なくとも213の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成し、
特に、配列番号415〜684のオリゴヌクレオチド配列で表される少なくとも270のオリゴヌクレオチドプローブを含み、該少なくとも270のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子の集団の222の核酸分子のうちの1つの核酸分子と特異的にハイブリッド形成するマイクロアレイであって、
オリゴヌクレオチドプローブとそれらの対応する遺伝子との対応が表3bに示され、
該マイクロアレイは、可能であれば、陽性及び陰性の対照核酸分子と特異的にハイブリッド形成する陽性及び陰性のオリゴヌクレオチドプローブを含む、請求項6に記載のマイクロアレイ。
【請求項8】
配列番号415〜配列番号684のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含む、好ましくは配列番号415〜配列番号1617のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含む、特に配列番号415〜配列番号2989のオリゴヌクレオチド配列で表されるオリゴヌクレオチドプローブを含むか又はそれからなる、請求項6又は7に記載のマイクロアレイ。
【請求項9】
対象者からの生体試料からの核酸のうち、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子又はそのフラグメントの集団から選択される少なくとも26の核酸分子の群の少なくとも1つの核酸分子の存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの体細胞性又は卵巣癌の診断の方法であって、
該26の核酸分子が、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列で表され、
核酸分子の存在又は量の変動が、健常対象者から単離された試料からの前記核酸分子の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からの核酸を、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの核酸との少なくとも1つの核酸複合体の形成を可能にするステップであって、
・該作用剤が、配列番号2q-1 (qは1〜192で変動する)及び配列番号385〜配列番号414の核酸配列で表される222の核酸分子から選択される少なくとも26の核酸分子のそれぞれの、少なくとも:
・1つの核酸分子、又は
・該核酸配列の相補分子、又は
・該核酸分子若しくは該相補分子のフラグメント
を含み、該少なくとも26の核酸分子は、配列番号2q-1 (qは1〜26で変動する)の核酸配列により表され、
・前記作用剤に含まれる核酸配列、該核酸配列の相補配列又はそれらのフラグメントは、前記少なくとも26の核酸分子と選択的にハイブリッド形成でき、
・前記少なくとも26の核酸分子は、健常対象者から単離された試料からの前記少なくとも26の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの核酸複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記作用剤が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26の核酸分子の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある少なくとも26の核酸分子の少なくとも1つの核酸分子のフラグメントのPCR増幅を可能にする核酸配列を含み、該PCR増幅は、好ましくは、逆転写定量PCR又はPCRアレイである、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
-生体試料からの核酸を、請求項6〜8のいずれかで規定されるようなマイクロアレイである作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの核酸との少なくとも1つの核酸複合体の形成を可能にするステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す少なくとも1つの核酸複合体の存在又は量の変動を決定するステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象者からの生体試料からのポリペプチドのうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質の群のうちの少なくとも1つのタンパク質又はそのフラグメントの存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、
前記少なくとも26のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列により構成され、
前記少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質は、少なくとも1つの特異的抗体により特異的に認識され、該特異的抗体は、該少なくとも26のタンパク質の1つのタンパク質を特異的に認識でき、
前記タンパク質の存在又は量の変動は、健常対象者から単離された試料からの前記タンパク質の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つのタンパク質との少なくとも1つの免疫複合体の形成を可能にするステップであって、
前記作用剤が、前記少なくとも26のタンパク質のそれぞれの1つのタンパク質と特異的にハイブリッド形成する少なくとも1つの抗体を含み、該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質が、少なくとも1つの抗体により特異的に認識され、
前記少なくとも26のタンパク質が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26のタンパク質の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップであって、前記免疫複合体が、好ましくは免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降により決定される傾向にあるステップと
を含む方法。
【請求項13】
対象者からの生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体のうち、配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される、少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも26の抗体の群のうちの少なくとも1つの抗体の存在又は量の変動を決定することによる、対象者におけるインビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断の方法であって、
該少なくとも26のタンパク質は、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列により構成され、
タンパク質を特異的に認識する抗体の存在又は量の変動は、健常対象者から単離された試料からのタンパク質を特異的に認識する抗体の不在又は所定の量に関して評価され:
-生体試料からのポリペプチドを特異的に認識する抗体を含む傾向にある対象者の試料を、作用剤と接触させて、該作用剤と対象者の試料からの少なくとも1つの抗体との少なくとも1つの免疫複合体の形成を可能にするステップであって、該作用剤が、該少なくとも26の抗体と特異的にハイブリッド形成できる少なくとも26のタンパク質を含み、該少なくとも26のタンパク質のそれぞれのタンパク質が、少なくとも1つの抗体と特異的にハイブリッド形成でき、それぞれの抗体が、少なくとも26のタンパク質のうちの1つのタンパク質と特異的にハイブリッド形成し、
該少なくとも26の抗体が、健常対象者から単離された試料からの少なくとも26の抗体の所定の量とは異なる量で存在する傾向にある
ステップと、
-対象者が癌に罹患していることを示す、少なくとも1つの免疫複合体の存在又は量の変動を決定するステップであって、該免疫複合体が、好ましくは免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング及び免疫沈降により決定される傾向にあるステップと
を含む方法。
【請求項14】
-請求項6〜8のいずれか1項で規定されるようなマイクロアレイと、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの生体試料の核酸の調製のため、特にcDNAの調製のための物質と、
-可能であれば、上記の核酸を標識するための標識分子と、
-可能であれば、健常対象者からの生体試料からの核酸に相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキット。
【請求項15】
-配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを含むか又はそれにより構成されるELISA支持体であって、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列又はそのフラグメントにより構成される支持体と、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの試料からのポリペプチドのうちに存在する傾向にある前記タンパク質を特異的に認識する抗体に対して指向された標識抗体と、
-可能であれば、健常対象者からの試料からの抗体ポリペプチドに相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキット。
【請求項16】
-配列番号2q (qは1〜192で変動する)からなるアミノ酸配列を含むか又はそれにより構成される192のタンパク質から選択される少なくとも26のタンパク質又はそのフラグメントを特異的に認識する少なくとも26の抗体を含むか又はそれにより構成されるELISA支持体であって、該少なくとも26のタンパク質が、配列番号2q (qは1〜26で変動する)のアミノ酸配列又はそのフラグメントにより構成される支持体と、
-可能であれば、癌に罹患していることが疑われる患者からの試料からの抗体のうちに存在する傾向にある前記抗体を特異的に認識するタンパク質に対して指向された標識抗体と、
-可能であれば、健常対象者からの試料からのポリペプチドに相当する陰性対照と
を含む、インビトロ及び/又はエクスビボでの癌の診断のためのキット。

【図3】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−517937(P2011−517937A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502373(P2011−502373)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053809
【国際公開番号】WO2009/121878
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509316028)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JOSEPH FOURIER
【住所又は居所原語表記】621,avenue Centrale,Domaine Universitaire,B.P.53,F−38041 Grenoble Cedex09,FRANCE
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【Fターム(参考)】