説明

体組成計

【課題】簡便且つ正確に腹部の横幅を測定することができ、測定した腹部の横幅に基づいて体組成に関する指標を演算することが可能な体組成計を提供する。
【解決手段】 体組成計100のCPU134は臍位置指示部118を駆動して発光させ、高さ調整処理を行う。臍位置指示部118からの光束が被測定者の臍を照射するようにフレーム114の高さが調整されると、各センサから被計測点までの距離を測定することにより、腹部の横幅Xを取得する。次いで、CPU134は、体重Wと生体インピーダンスZの測定値を取得する。内臓脂肪面積を演算するために、CPU134は、演算式を読み込み、測定した腹部の横幅Xと体重Wと生体インピーダンスZと演算式とから内臓脂肪面積を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹部のサイズを測定し、測定した腹部のサイズに基づいて体組成に関する指標を演算する体組成計に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部のサイズは、人の体型に関する判断指標の1つとして広く用いられている。身長が同じ場合には、腹部のサイズが大きいほど肥満度が高く、逆に小さいほど肥満度が低いといったように、腹部のサイズは内臓脂肪の蓄積量など体幹部の状態を反映する指標である。このため、腹部のサイズは、生活習慣病などの予防目的で健康を管理するという意味合いにおいて特に注目される指標である。
【0003】
ところで、腹部のサイズを手動で入力し、入力した腹部のサイズとその他のパラメータに基づいて体組成に関する指標を求めることが可能な装置がある(例えば、特許文献1参照)。一方、従来の体組成計には、腹部のサイズを入力せずとも、体組成に関する指標を推定可能なものがある。
【特許文献1】特開2002−85365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ウエスト周囲径などの腹部のサイズを被測定者に入力させる場合、被測定者が必ずしも自己のウエスト周囲径の正確な値を知っているとは云えず、体組成の指標の推定の精度は十分なものではなかった。一方、ウエスト周囲径を計測して入力する場合には、計測の手段としてメジャーを用いる方法が考えられる。しかしながら、メジャーのような巻尺状やベルト状の装置では、ウエスト周上の同じ位置に正確に巻き付けるのが難しかった。例えば、被測定者が立位での測定の場合には、臍位置の周りの水平面周上にメジャーを宛がうことは面倒であるとともに、高さがずれたりするため、計測値にバラツキが生じる(すなわち、再現性が低い)という問題があった。
【0005】
また、体組成に関する指標のうち、体幹部脂肪率、腹部全脂肪面積、腹部皮下脂肪厚、腹筋厚、腹部皮下脂肪面積、内臓脂肪面積などの指標は特に腹部のサイズと高い相関を有する指標である。このため、より正確に体組成に関する指標を推定するためには、腹部のサイズをパラメータとして用いることが望ましい。なお、腹部のサイズとしては、上述のウエスト周囲径の他に、腹部の横幅や腹部の縦幅などがある。
【0006】
そこで、本発明は、簡便に且つ正確に腹部の横幅を求め、これに基づいて体組成に関する指標を精度良く推定することが可能な体組成計を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の電極を足裏に接触させて、脚脚間部インピーダンスを測定する生体インピーダンス測定手段と、腹部の横幅を計測する腹部横幅計測手段と、体重を測定する体重測定手段と、前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスとに基づいて、体組成に関する指標を演算する演算手段と、を有し、前記腹部横幅計測手段は、被計測物までの距離を計測する反射式の非接触式距離計測センサを用いて前記腹部の横幅を計測する体組成計を提供する。
【0008】
体組成に関する指標として、体幹部脂肪率、腹部全脂肪面積、腹部皮下脂肪厚、腹筋厚、腹部皮下脂肪面積、内臓脂肪面積などの指標などがある。これら体組成に関する指標は、腹部のサイズと相関が高い。本発明の体組成計によれば、腹部の横幅を用いて体組成に関する指標を演算(推定)するので、体組成に関する指標を精度良く推定することが可能となる。すなわち、腹部のサイズをパラメータとして用いない場合と比較して、推定の精度が向上する。また、メジャーなどの巻尺状またはベルト状の装置を胴体に巻きつける場合には、高さがずれて計測値にバラツキが生じたり、呼吸によって大きく変化する腹部の前後への形状変化の影響を受ける。しかしながら、本発明においては、非接触式距離計測センサにより腹部の横幅を計測するので、正確性の高いウエスト周囲径を、再現性良く得ることが可能である。よって、この体組成計では、腹部の横幅が正確に測定されるので、体組成に関する指標も正確性高く得ることが可能である。また、ウエスト周囲全周に亙って測定具を巻き付ける必要がなく、装置の簡便な操作が可能である。
【0009】
本発明の好適な態様において、身長を入力するための身長入力手段を有し、前記演算手段は、前記腹部の横幅、前記体重および前記脚脚間部インピーダンスに加えて、前記身長入力手段によって入力された身長を用いて前記体組成に関する指標を測定することを特徴とする。身長は体重と合わせて、人の体型と相関が高いパラメータである。すなわち、体重が同じでも、身長が高くなると肥満度が低下し、身長が低いと肥満度が増大する。この態様によれば、身長を推定のパラメータとして用いるので、より正確に体組成指標を推定することが可能となる。
【0010】
本発明の別の好適な態様において、年齢を入力するための年齢入力手段を有し、前記演算手段は、前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスとに基づいて体密度を推定する体密度推定手段を兼ねており、前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスと、前記身長との代わりに、前記腹部の横幅と、前記体密度と、前記年齢入力手段によって入力された年齢とに基づいて前記体組成に関する指標を演算することを特徴とする。従来の体組成指標推定方法では、BMI(体重/身長)と、年齢と、体脂肪率とをパラメータとして用いるが、体脂肪率の推定には身長の入力を必要とする。しかしながら、本態様によれば、体密度を用いることにより、身長を入力せずとも、精度良く体組成を推定することが可能となる。
【0011】
前記腹部横幅計測手段は、少なくとも1対の前記非接触式距離計測センサの各距離計測方向が前記腹部の横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにして前記非接触式距離計測センサを対向させて配し、前記横幅の前後方向に平行な複数位置において距離計測させるように配したフレームをさらに備え、前記複数位置において計測された複数の距離に所定の演算を施して前記腹部の横幅を出力するのが好ましい。この場合、一対の非接触式距離計測センサを、腹部の横幅方向と平行な状態を保ったまま前記センサを前後方向に移動させて複数位置において距離を計測させるようにしてもよいし、複数対の固定式の非接触式距離計測センサを前記フレームに配して各対のセンサに距離を計測させ、前記複数位置における距離のうち、最大のものを前記腹部の横幅として出力するようにしてもよい。あるいは、前記腹部横幅計測手段は、複数の前記非接触式距離計測センサを、前記腹部の横幅の前後方向に別個独立して移動させ、複数位置において距離計測させるように配したフレームをさらに備え、前記複数位置において計測された複数の距離に所定の演算を施して前記腹部の横幅を出力するのが好ましい。この場合、前記センサにより腹部の外形をなす座標を検出し、座標に基づいて曲線の補間処理を実行し、この曲線の補間処理によって得られた腹部の外形から、横幅方向において距離が最大となる座標間の距離を腹部の横幅として出力するようにしてもよい。この態様によれば、体組成指標の演算の基となる腹部横幅距離を簡便な操作でスムーズに且つ正確に計測することが可能であり、被測定者はもとより測定者に掛かる負担を軽減することを可能とするとともに、再現性が高い計測結果を得ることが可能となる。
【0012】
前記フレームは、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であることが好ましい。これによれば、センサが取り付けられたフレームを被測定者の両脇の外側に配置し、測定を行うことが容易である。従来のメジャーは、体幹の全周に亙って巻きつけるものであるため、被測定者自身または測定者がメジャーを被測定者が巻きつける手間を要する。しかしながら、フレームの一片が開放されていれば、被測定者は容易にフレームの内部に入ることのみで測定が可能となるので、容易かつ迅速に測定できる。
【0013】
さらに、前記フレームは、被測定者の臍の位置を指示する臍位置指示手段を有し、前記フレームを被測定者の正中線方向に沿って摺動可能に支持する棒と、当該棒に沿って前記フレームの高さを可変とするフレーム位置可変手段とを有し、前記フレーム位置可変手段は、前記臍位置指示手段によって被測定者の臍が指示された状態において、前記フレームの高さを静止させ、前記腹部横幅計測手段は、前記フレームが前記静止した状態にあるときに、前記腹部の横幅を計測すると好ましい。臍位置指示手段が設けられていることにより、臍の高さにフレームを位置決めすることが容易であり、臍の高さにおける腹部の横幅を正確性高く得ることが可能である。臍位置指示手段は、前記フレームに取り付けられ光束を照射する発光装置でもよい。臍位置指示手段が発光装置の場合には、そこから発した光束が臍を照射するようにフレームを人体に対して位置決めするとよい。また、前記フレームを被測定者の正中線方向に沿って摺動可能に支持する棒と、当該棒に沿って前記フレームの高さを可変とするフレーム位置可変手段とを備えるので、フレーム位置可変手段によってフレームを被測定者の正中線方向に沿って自動的に簡単に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、腹部の横幅計測手段を備えた体組成計100である。腹部の横幅測定手段は、立位の被測定者10に対して、臍を通る腹部の横幅方向の最大距離(以下、「腹部の横幅」という)を計測する。体組成計は、脚脚間部の生体インピーダンスを測定する脚脚間部生体インピーダンス測定手段(後述の生体インピーダンス測定装置170)と、体重を測定する体重測定手段(後述の重量測定装置160)とを更に備え、前記測定された腹部の横幅と脚脚間部の生体インピーダンスと体重とに基づいて体組成に関する指標(以下、「体組成指標」という)を求める。体組成指標としては、体幹部脂肪率、腹部全脂肪面積、腹部皮下脂肪厚、腹筋厚、腹部皮下脂肪面積、内臓脂肪面積がある。本実施形態では、腹部の横幅に基づいて内臓脂肪面積を推定する態様について説明する。
【0015】
以下、図1乃至図7を用いて、第1の実施の形態の体組成計100を説明する。図1は、第1の実施の形態の体組成計100の外観を示す斜視図である。図1に示されるように、体組成計100は、被測定者10が載る本体190と、本体190の上に鉛直に立てられた棒すなわち柱192と、鉛直方向に移動可能に柱192に支持されたフレーム(腹部横幅計測手段)114を備える。本体190の上面には、被測定者10の足のつま先を合わせるための目印線196が描かれている。
【0016】
また、本体190の上面には、電流供給用電極1aおよび2aと電圧測定用電極1bおよび2bが設けられる。さらに、本体190の内部には、図示せぬ重量センサが設けられる。この重量センサは、被測定者が本体190に乗ったときに、その重量である被測定者の体重を測定可能である。重量センサとしては、起歪体と歪ゲージとを有し、起歪体の歪による電圧の変化を測定して出力するロードセルがある。
【0017】
フレーム114は、水平かつ平行に伸びる2本のアーム103a及び103bと、両端がそれぞれアーム103a,103bに連結された水平に延びる連結部102を有する。フレーム114は、このように一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であるので、被測定者10は容易にフレームの内部に入るか、フレームを容易に被測定者の外側に配置することが可能であり、容易かつ迅速に測定できる。
【0018】
フレーム114には、柱192に取り付けられる凸部194が固定されている。図示しないが、凸部194の内部には、柱192に沿ってフレーム214を鉛直方向に移動させるための移動機構、例えばボールネジまたは無端ベルト、およびこの移動機構を駆動するモータが配置されている。従って、凸部194は、移動機構とモータを有するフレーム位置可変手段を内蔵しており、柱192は、立っている被測定者10の正中線方向に沿って摺動可能にフレーム114を支持している。この構成により、フレーム位置可変手段によってフレーム114を被測定者10の正中線方向に沿って自動的に簡単に移動させることができる。
【0019】
柱192の上部には、コンソール120が取り付けられている。コンソール120の上面には、被測定者10が操作する入力装置としてのオン/オフキー121、決定キー122、上昇指令キー123および下降指令キー124が設けられている。また、コンソール120の上面には、被測定者10への操作の案内や測定結果の通知を表示するための表示部104が設けられている。また、この表示部104は、タッチパネル方式で、年齢や身長などのパラメータを入力する入力手段としても機能する。この入力手段によって入力されたパラメータの情報はCPU134に供給される。
【0020】
図2は、フレーム114の外観を示す斜視図であり、図3は、フレーム114を被測定者にセットした様子を示す、水平面における断面図である。図2および図3に示されるように、フレーム114の内側には、複数の光学式距離センサ(腹部横幅距離計測手段)106が取り付けられている。センサ106は水平な同一平面に配置されている。図において、センサ106の各々を識別するために添字a〜hを付ける。図の実施の形態では、8個のセンサ106a〜106hが設けられているが、センサ106の個数は実施の形態には限定されず、フレームの構造や横幅の距離の演算処理が複雑となり過ぎない範囲内において、多数のセンサ106を配置してもよい。多数のセンサ106を配置することより、実際の腹部の横幅との相関が高い計測結果が得られる。
【0021】
センサ106a〜106dはフレーム114のアーム103aに取り付けられ、センサ106e〜106hはアーム103bに取り付けられている。各センサ106は、例えば赤外線のような光を発光する発光素子と、被測定者10上の被計測点からの反射光を受けて電気信号を発する受光素子とを有する。受光素子は、光学測距方式でセンサと被測定者10上の被計測点との距離に相当する電気信号を発し、この電気信号はCPU134に供給される。
【0022】
各センサの受光素子は、センサの距離計測軸方向の直線と物体が交わる点からの反射光を受ける。その点が、そのセンサが測定する被計測点であり、受光素子は、光学測距方式でセンサと被計測点との距離に相当する電気信号を発する。図3を参照して具体的に説明すると、各センサ106の距離計測軸方向は、アーム103a及び103bに垂直で連結部102に平行な方向、つまり被測定者10がフレーム114の内部にいる場合に被測定者10の腹部横幅方向である。センサ106aは、その距離計測軸方向の直線と被測定者10が交わる点つまり被計測点からの反射光を受け、センサ106aと被計測点との距離Laに相当する電気信号を発する。同様に、センサ106b〜106hは、それぞれ距離Lb〜Lhに相当する電気信号を発する。
【0023】
アーム103aに取り付けられたセンサ106a〜106dは、アーム103bに取り付けられたセンサ106e〜106hに線対称に配置されている。つまり、センサ106a,106eの距離計測軸は同一線上にあり、センサ106b,106fの距離計測軸は同一線上にあり、センサ106c,106gの距離計測軸は同一線上にあり、センサ106d,106hの距離計測軸は同一線上にある。つまり、複数対のセンサ106の各距離計測方向が腹部横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにセンサ106は対向している。そして、センサ106は、被測定者10の前後方向と平行な方向の複数位置で距離計測を行う。センサ106a〜106dと、センサ106e〜106hの距離はLである。
【0024】
また、フレーム114の連結部102には、臍位置指示部(臍位置指示手段)118が固定されている。臍位置指示部118は、センサ106と同じ水平面内に配置されている。この実施の形態で、臍位置指示部118は、光束を照射する発光装置、例えばレーザーポインタである。臍位置指示部118が臍位置を指示した状態(すなわちレーザ光が被測定者の臍を照射する状態)になるように、フレーム114の高さを静止させることにより、測定位置の臍位置からのずれがなく、正確性の高い腹部横幅距離測定を可能とする。
【0025】
図4は、体組成計100の電気的構成を示すブロック図である。図1に示すコンソール120には、図4に示すスイッチ130、アナログ/デジタル(A/D)変換器132、CPU(中央演算処理装置)134、ROM(read only memory)127およびメモリ128が内蔵されている。スイッチ130は、光学式距離センサ106a〜106hの出力信号を次々とA/D変換器132に供給し、A/D変換器132は供給された信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器132からのデジタル信号は、CPU134に供給される。従って、CPU134には、センサ106a〜106hの出力信号に基づくデジタルの距離信号が次々と供給される。デジタルの距離信号の各々は、対応する光学式距離センサ106と、被測定者10上のその光学式距離センサ106に対応する被計測点との距離を示す。メモリ128は例えば揮発性のメモリであって、CPU134のワークエリアとして使用される。CPU134は、メモリ128にこれらの距離信号の示す距離のデータを記憶する。
【0026】
CPU134は、ROM127に記憶されたコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従って動作し、フレーム114を上下に移動させるための機構を駆動するモータ138、臍位置指示部118、および表示部104を制御する。また、CPU134は、前記のオン/オフキー121、決定キー122、上昇指令キー123および下降指令キー124を含む入力装置105からの信号に応じた動作を実行する。
【0027】
また、CPU134は、メモリ128に一旦記憶した距離のデータに基づいて、内臓脂肪面積を演算する演算手段として機能する。ROM(記憶手段)127には、腹部の横幅と、後述の重量測定装置160によって測定された体重と、後述の生体インピーダンス測定装置170によって測定された脚脚間部の生体インピーダンスとに基づいて、内臓脂肪面積を演算する内臓脂肪面積演算式が格納されている。CPU134は、腹部横幅距離と、体重と、生体インピーダンスとその演算式とから内臓脂肪面積を演算する演算手段として機能する。
【0028】
図1に示す本体190には、図4に示す生体インピーダンス測定装置170(電流供給部170Aおよび電圧検出部170B)と、重量測定装置160とが内蔵されている。生体インピーダンス測定装置170の電流供給部170Aは、被測定者が本体190に乗ったときに、その上面部に形成された各電流供給用電極1aおよび2aを介して被測定者の足裏に高周波の微弱な定電流を印加し、電圧検出部170Bは各電圧測定用電極1bおよび2bを介して電位差を測定する。重量測定装置160は、上記重量センサにより、被測定者が本体190に乗ったときに、その重量である被測定者の体重を測定する。生体インピーダンス測定装置170および重量測定装置160はCPU134に接続される。
【0029】
図5は、体組成計100の演算処理の流れを示すフローチャートである。ROM127には、このフローチャートに相当するコンピュータプログラムまたはプログラム要素が記憶されており、このコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従ってCPU134は動作する。この実施の形態では、コンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶した媒体としてROM127を使用するが、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶するために使用してもよい。
【0030】
図5に示す動作は、図1のオン/オフキー121が押されると開始する。まず、CPU134は、ステップS1で表示部104を駆動してその表示を開始する。そして、CPU134は、「つま先をラインに合わせて立って下さい」というメッセージを表示部104に表示させる。この案内により、被測定者10は足のつま先を目印線196(図1)に合わせるように促される。
【0031】
次に、ステップS3でCPU134は臍位置指示部118を駆動して発光させ、さらにステップS5で高さ調整処理を行う。高さ調整処理では、CPU134は、「上昇指令キー、下降指令キーでポインターの位置を臍に合わせてください」というメッセージを表示部104に表示させる。この案内により、被測定者10は図1の上昇指令キー123および/または下降指令キー124を押して、臍位置指示部118からの光束が被測定者の臍を照射するようにフレーム114の高さを調整するように促される。上昇指令キー123が押されると、上昇指令キー123は上昇指令信号をCPU134に与え、高さ調整処理では、CPU134は上昇指令信号が与えられている間、モータ138を駆動してフレーム114を上昇させる。下降指令キー124が押されると、下降指令キー124は下降指令信号をCPU134に与え、高さ調整処理では、CPU134は下降指令信号が与えられている間、モータ138を駆動してフレーム114を下降させる。
【0032】
この高さ調整処理は、決定キー122が押されるまで継続する(ステップS7)。決定キー122が押されると、CPU134は、臍位置指示部118の発光を停止し、「測定中」というメッセージを表示部104に表示させる。また、この後、上昇指令キー123または下降指令キー124が押されても、モータ138を駆動しない。
【0033】
次に、ステップS9にて、CPU134は、センサ106a〜106hに駆動指令信号を与えることによってセンサ106を駆動し、さらにA/D変換器132からのデジタルの距離信号が入力されると、メモリ128にこれらの距離信号の示す距離のデータを記憶する。このようにして、各センサから被計測点までの距離を測定する。
【0034】
ステップS11にて、CPU134は、メモリ128に一旦記憶した距離のデータに基づいて、腹部横幅の値を演算する演算手段として機能する。この実施の形態では、ステップS11で、腹部横幅の4つの値を演算する。4つの値を以下に示す。
(1)L―(La+Le)、
(2)L―(Lb+Lf)、
(3)L―(Lc+Lg)、
(4)L―(Ld+Lh)。
【0035】
図3から明らかなように、これらの4つの値はいずれも腹部横幅を示す。ステップS13にて、CPU134は、これらの4つの値のうち最大値、つまり腹部の横幅方向の最大距離を腹部横幅距離として選択する。
【0036】
次に、CPU134は、ステップS15で生体インピーダンス測定装置170から被測定者の脚脚間部の生体インピーダンスの測定値を取得し、ステップS17で重量測定装置160から体重の測定値を取得する。そして、内臓脂肪面積を演算するために、ステップS19でROM127から内臓脂肪面積を演算するための演算式を読み込む。
この演算式は、重回帰分析から見出され、
Y=k1+k2・X+k3・W+k4・%FAT・・・式(1)
なる推定式で表される。ここで、Yは内臓脂肪面積、Xは腹部横幅、Wは体重、%FATは体脂肪率、k1〜k4は定数(係数)であり、重回帰分析により適宜定められる値である。
また、CPU134は、以下に示す式(2)に従って体脂肪率%Fatを推定する。
%Fat=f1・Z・W/H−f2……(2)
但し、f1及びf2は定数であり、重回帰分析により適宜定められる値である。また、Zは生体インピーダンス、Hは身長である。「身長」は体脂肪率%Fatを生成するためのパラメータであり、被測定者の個人データとして表示装置104のタッチパネルから入力される。
ここで、式(2)の第1項において「W/H」は体格指数BMIであり、肥満の度合いを示す。式(2)の定数f1及びf2は、DXA(Dual energy X-ray Absorptiometry)法によって得られた体脂肪率に基づいて重回帰分析を行い、導かれたものである。DXA法は波長の異なる2種類の放射線を用い、その透過量から人体の組成を求める。DXA法は、体脂肪率を高い精度で測定することができるが、装置が大規模となりごく微量であるが放射線を被爆するといった問題がある。これに対して、本実施形態で採用する生体インピーダンス法によれば、簡易且つ安全に体脂肪率%Fatを推定することができる。
【0037】
ところで、従来から、BMI(W/H)と、年齢と、生体インピーダンス法により推定した脂肪量(体脂肪率)とに基づいて内臓脂肪面積を推定する方法がある。すなわち、この従来の方法では、腹部のサイズを変数として用いない。
図6は、従来の方法により推定した内臓脂肪面積の推定値と、CT(Computed Tomography)スキャン法によって測定された内臓脂肪面積の実際の測定値との関係を示す相関図であり、図7は、腹部のサイズを独立変数として用いて内臓脂肪面積を推定した場合の、推定値と実際値の関係を示す相関図である。図6および図7とを比較すると、腹部のサイズを変数として用いた場合には、そうでない場合と比較して、内臓脂肪面積の実際値との相関が強いことがわかる。よって、腹部のサイズを変数として用いる推定式に拠る方が、内臓脂肪面積をより精度良く推定することができる。すなわち、本実施形態において用いる上記の演算式(1)によれば、従来の方法と比較して、精度が高い推定が可能となる。
【0038】
また、本実施形態によれば、腹部の横幅を距離センサによって計測するので、被測定者がすでに知っている腹部のサイズを手動で入力したり、メジャーなどで腹部の周囲径を計測する場合と比較して、より正確な腹部のサイズを推定に用いることができる。よって、内臓脂肪面積の推定における精度が向上する。
【0039】
次に、ステップS21において、CPU134は、演算手段として機能し、上記演算式(2)と、身長と、ステップS15で得られた生体インピーダンスと、ステップS17で得られた体重とから体脂肪率%Fatを演算し、上記演算式(1)とステップS13で得られた腹部横幅距離Xと、ステップS17で得られた体重と、体脂肪率%Fatとから、内臓脂肪面積を演算(推定)する。さらにステップS23において、CPU134は内臓脂肪面積の推定値を表示部104に表示して、動作を終了する。
【0040】
なお、上述した実施形態では、測定された腹部の横幅に基づいて内臓脂肪面積を推定する態様について説明したが、これに限られず、その他の体組成に関する指標(体脂肪率、体幹部脂肪率、腹部全脂肪面積、腹部皮下脂肪厚、腹筋厚、腹部皮下脂肪面積など)を推定するようにしてもよい。
【0041】
<変形例1>
上述した実施形態では、腹部の横幅Xと、体重Wと、脚脚間部の生体インピーダンスZと、身長Hとをパラメータとする演算式(式(1)と式(2))を用いて、内臓脂肪面積を推定したが、以下の式(3)によれば、身長Hをパラメータとして用いることなく、内臓脂肪面積を求めることが可能である。
式(3)は、重回帰分析から見出され、
Y=p1・Age+p2・X+p3・W・Z/{a×W/X+p4・・・式(3)
なる回帰式で表される。ここで、Yは内臓脂肪面積、Ageは年齢、Xは腹部横幅、Wは体重、Zは生体インピーダンス、a,p1〜p4は定数(係数)であり、重回帰分析により適宜定められる値である。また、W・Z/{a×W/Xは体密度BDである。
【0042】
ここで、体密度BDを用いて内臓脂肪面積の算出が可能となる原理を説明する。
まず、人体を、長さ(身長)Hの値が不明の円柱と考え、既知の値を体積V、直径Dとすると、
H=V/D
となる。
ここで、Dは人体の特定部の直径と捉えると、
直径D≒腹部の横幅X
である。また、人体において、組織の比重が水に近いと考えると、
体重W≒体積V
であると考えることができる。
よって、
H=a・W/X・・・式(4)
となる。
また、体密度BDとは、体重と体全体の体積との比である。生体インピーダンス法によれば、体水分の体積が求められるから、水中体重計などで実際に測定した体密度BDと、生体インピーダンス法によって求められた体水分の体積との重回帰分析から、
体密度BD=W・Z/H・・・式(5)
が見出される。
よって、式(4)を式(5)に代入すると、
BD=W・Z/(a・W/X・・・式(6)
が導き出される。
よって、式(3)および式(6)より、
Y=p1・Age+p2・X+p3・BD+p4・・・式(7)
が得られる。式(3)および式(7)によれば、年齢が高く、腹部の横幅が大きくて、体密度が高ければ、内臓脂肪面積が大きくなることがわかる。
【0043】
図8は、式(3)を用いて内臓脂肪面積を推定した場合の推定値と、CTスキャン法による内臓脂肪面積の実測値との関係を示す相関図である。図8に示されるように、標準誤差推定(SEE:standard error estimation)が21.7cmとなり、式(3)を用いた推定方法を用いた場合の推定値が誤差21.7cmの範囲に収まることから、実際の内臓脂肪面積の値と相関が高いことがわかる。よって、式(3)を用いた推定方法によれば、腹部のサイズをパラメータとして用いることにより、精度の高い推定が可能となる。
以上説明したように、本変形例によれば、身長Hをパラメータとして用いずとも、内臓脂肪面積を推定することが可能である。
【0044】
なお、上述の体密度BDを用いれば、上記実施形態で用いた演算式(1)によっても、身長をパラメータとして用いずに内臓脂肪面積を求めることが可能である。具体的には、測定した体重Wと、腹部の横幅Wと、生体インピーダンスZと上記式(6)とから体密度BDを求め、体脂肪率%FAT=[(q1/BD)−q2]×100(Brozekの式。ただし、q1,q2は係数)に代入することで、体脂肪率%FATを算出できる。この演算方法によれば、体重Wと、腹部の横幅Wと、生体インピーダンスZとのみによって内臓脂肪面積を演算することができ、パラメータとしての身長を必要としない。
【0045】
<変形例2>
上記実施形態では、腹部の前後方向に平行な複数位置に各々に、対向する複数組のセンサ106を固定的に設け、各組のセンサが測定した横幅距離のうち、最大の値を腹部の横幅として選択した。しかしながら、上記実施形態の方法では、被測定者の脇腹のうち、腹部の横幅が実際に最大である位置にセンサ106が位置しているとは限らない。すなわち、図3の例においては、センサ106bと106fとで腹部の横幅の最大値を計測しているが、その計測値が実際の横幅距離の最大値であるとは限らない。そこで、複数対のセンサ106を設ける代わりに、移動式の1対のセンサ106をアーム103aと103bとに設けるようにしてもよい。この1対のセンサ106は、両者を結ぶ直線が腹部の横幅方向に対して平行且つ水平になる位置に配され、腹部の前後方向に沿って水平を保ったまま移動可能なように設けられる。この1組のセンサ106は、移動しながら小刻みに距離を測定可能である。あるいは、アーム103aおよび103bの各々に、センサ106を1個ずつ配置し、各センサ106を別個独立に移動させて腹部の表面までの距離を計測させるようにしてもよい。この場合も、CPU134は、測定された横幅距離のうち最大の値を腹部の横幅とすることができる。
【0046】
また、CPU134は、上述した実施形態または変形例によって測定した距離に基づいて、腹部の外形を構成する座標を求め、座標に基づいて曲線の補間処理を実行する。そしてこの曲線の補間処理によって得られた腹部の外形から、横幅方向において距離が最大となる座標間の距離を腹部の横幅として出力してもよい。
【0047】
<変形例3>
上述した実施形態では、腹部の横幅を測定し、測定した腹部の横幅に基づいて体組成指標を演算したが、腹部の横幅に基づいて腹部の周囲径を推定するようにしてもよい。この場合、腹部の周囲径に基づいて、体組成指標を演算すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態の体組成計100の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す体組成計100のうち、フレーム114の外観を示す斜視図である。
【図3】フレーム114を被測定者にセットした様子を示す、水平面における断面図である。
【図4】体組成計100の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】体組成計100の演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】従来の方法により推定した内臓脂肪面積の推定値と、CTスキャン法によって測定された内臓脂肪面積の実際の測定値との関係を示す相関図である。
【図7】腹部のサイズに基づいて内臓脂肪面積を推定した場合の推定値とCTスキャン法によって測定された内臓脂肪面積の実際値との関係を示す相関図である。
【図8】変形例に係り、腹部のサイズに基づいて内臓脂肪面積を推定した場合の推定値とCTスキャン法によって測定された内臓脂肪面積の実際値との関係を示す相関図である。
【符号の説明】
【0049】
1a,2a…電流供給用電極、1b,2b…電圧測定用電極、10…被測定者、100…体組成計、102…連結部、103a,103b…アーム部、104…表示部、106,106a〜106h…センサ(腹部横幅距離計測手段)、114…フレーム(腹部横幅距離計測手段)、118…臍位置指示部(臍位置指示手段)、120…コンソール、121…オン/オフキー、122…決定キー、123…上昇指令キー、124…下降指令キー、127…ROM(記憶手段)、128…メモリ、132…A/D変換器、134…CPU(演算手段)、138…モータ、160…重量測定装置、170…生体インピーダンス測定装置、170A…電流供給部、170B…電圧検出部、190…本体、192…柱(棒)、194…凸部、196…目印線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を足裏に接触させて、脚脚間部インピーダンスを測定する生体インピーダンス測定手段と、
腹部の横幅を計測する腹部横幅計測手段と、
体重を測定する体重測定手段と、
前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスとに基づいて、体組成に関する指標を演算する演算手段と、
を有し、
前記腹部横幅計測手段は、被計測物までの距離を計測する反射式の非接触式距離計測センサを用いて前記腹部の横幅を計測する、
体組成計。
【請求項2】
身長を入力するための身長入力手段を有し、
前記演算手段は、前記腹部の横幅、前記体重および前記脚脚間部インピーダンスに加えて、前記身長入力手段によって入力された身長を用いて前記体組成に関する指標を測定する、
請求項1に記載の体組成計。
【請求項3】
年齢を入力するための年齢入力手段を有し、
前記演算手段は、
前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスとに基づいて体密度を推定する体密度推定手段を兼ねており、
前記腹部の横幅と、前記体重と、前記脚脚間部インピーダンスと、前記身長との代わりに、前記腹部の横幅と、前記体密度と、前記年齢入力手段によって入力された年齢とに基づいて前記体組成に関する指標を演算する、
請求項2に記載の体組成計。
【請求項4】
前記腹部横幅計測手段は、
少なくとも1対の前記非接触式距離計測センサの各距離計測方向が前記腹部の横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにして前記非接触式距離計測センサを対向させて配し、前記横幅の前後方向に平行な複数位置において距離計測させるように配したフレームをさらに備え、
前記複数位置において計測された複数の距離に所定の演算を施して前記腹部の横幅を出力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項5】
前記腹部横幅計測手段は、
複数の前記非接触式距離計測センサを、前記腹部の横幅の前後方向に別個独立して移動させ、複数位置において距離計測させるように配したフレームをさらに備え、
前記複数位置において計測された複数の距離に所定の演算を施して前記腹部の横幅を出力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項6】
前記フレームは、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠である、
請求項4または5のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項7】
前記フレームは、被測定者の臍の位置を指示する臍位置指示手段を有し、
前記フレームを被測定者の正中線方向に沿って摺動可能に支持する棒と、当該棒に沿って前記フレームの高さを可変とするフレーム位置可変手段とを有し、
前記フレーム位置可変手段は、前記臍位置指示手段によって被測定者の臍が指示された状態において、前記フレームの高さを静止させ、
前記腹部横幅計測手段は、前記フレームが前記静止した状態にあるときに、前記腹部の横幅を計測する、
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の体組成計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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