説明

体重管理のための遺伝子マーカーおよびその使用法

本出願は、鍵代謝遺伝子における被験体の代謝遺伝子型に基づいた、被験体のために個別化された体重減少プログラムの確立を可能にする方法および試験に関する。特定の食事および活動レベルに対する被験体の反応性の可能性に基づいて適切な治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するために用いることができる被験体の代謝遺伝子型を決定するためのキットおよび方法を開示する。そのような個別化された体重減少プログラムは、遺伝情報を考慮に入れない伝統的な体重減少プログラムと比べて明らかな利点(例えば、体重減少および体重維持に関するより良好な結果を生ずる)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年11月18日に出願された米国出願第12/621,201号への優先権を主張する。米国出願第12/621,201号は、2008年5月16日に出願された米国仮特許出願第61/053,888号の出願日の利益を主張する2009年5月15日に出願された米国出願第12/466,614号の一部継続である。これらの両方は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本出願は、被験体の代謝遺伝子型を決定する方法ならびに被験体の代謝プロファイルおよび不都合な体重管理上の問題の影響の受けやすさに基づいて適切な治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
世界保健機関(WHO)により1998年に公表された報告によれば、肥満は、世界的にまん延の割合に達し、世界の約17億人が過体重であり、そのうちの3億人が肥満である。米国では、約1億2700万人の成人が過体重であり、6900万人が肥満である。肥満患者は、糖尿病、心疾患、高血圧および高血中コレステロールを含む1つまたは複数の重篤な病状を発現するリスクが高い。肥満の罹患率は、過去25年間に2倍以上増加し、今や20歳以上の米国の成人の31%に達する。より高率の肥満がアフリカ系アメリカ人およびラテンアメリカ系アメリカ人、特に女性に認められる(30%〜50%)。
【0004】
過去数十年に全世界で認められた肥満の罹患率の増加は、身体活動のレベルの漸進的な低下と豊富な非常に口当たりの良い食物を特徴とする環境の変化の中で起こった。WHOの報告は、これらの変化を、肥満の発生を促進する現代の生活様式の2つの主な修正できる特性であると特定した。しかし、人々が同じ環境にさらされているという事実があるにもかかわらず、全ての人が肥満になるとは限らないことから、体重管理上の問題の発生に被験体の遺伝的プロファイルが役割を果たしていることが示唆される。すなわち、遺伝的性質が、好ましくない環境にさらされた場合の被験体の肥満になりやすさ、ならびに彼/彼女が食事および運動に対して反応することができる仕方を決定する。
【0005】
したがって、遺伝情報を考慮に入れない同様なプログラムと比べて体重減少および体重維持の結果を改善するために、肥満への個人の遺伝的感受性を考慮する個人向け体重減少プログラムを確立するための手段が必要である。被験体の代謝遺伝子型を食事および/または運動に対する反応に関連づける手段が必要である。
【0006】
公知の方法に関連する短所および問題の本明細書における記述は、本文書で述べる実施形態の範囲をそれらの排除に限定するものでは全くない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被験体の代謝遺伝子型を決定し、被験体に適した治療方法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法およびキットを提供する。いくつかの実施形態によれば、被験体の代謝遺伝子型を決定し、被験体が反応する可能性がある1つまたは複数の一連の栄養および運動カテゴリーに被験体を分類し、被験体に適した治療方法/食事レジメンまたは生活様式推奨を被験体に伝達する方法を提供する。このようにして、被験体の代謝遺伝子型に基づいて個別化された体重減少プログラムを選択することができる。そのような個別化された体重減少プログラムは、遺伝情報を考慮に入れない伝統的な体重減少プログラムと比べて明らかな利点(例えば、体重減少および体重維持に関するより良好な結果をもたらす)を有する。
【0008】
本開示の一部の実施形態によると、体重を減少させ、かつ/または体重を維持するために、被験体に適した食事レジメンを選択するための方法であって、a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座;およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するステップと;b)被験体を、低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;およびカロリー制限食からなる群より選択される栄養カテゴリーに分類するステップとを含む方法が提供される。
【0009】
本開示の一部の実施形態では、FABP2(rs1799883)2.2またはFABP2(rs1799883)2.1(A/AまたはA/G)のうちの1つおよびPPARG(rs1801282)1.1(C/C)の複合遺伝子型(combined genotype)を有する被験体は、低脂肪食に反応することが予測される。
【0010】
本開示の一部の実施形態では、FABP2(rs1799883)2.2またはFABP2(rs1799883)2.1(A/AまたはA/G)のうちの1つ、およびPPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2(G/CまたはG/G)のうちの1つの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物食に反応することが予測される。
【0011】
本開示の一部の実施形態では、PPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2(G/CまたはG/G)のうちの1つ、およびADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2(C/GまたはG/G)のうちの1つの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物食に反応することが予測される。
【0012】
本開示の一部の実施形態では、FABP2(rs1799883)1.1(G/G)、およびPPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2(G/CまたはG/G)のうちの1つの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物食に反応することが予測される。
【0013】
本開示の一部の実施形態では、FABP2(rs1799883)1.1(G/G)、PPARG(rs1801282)1.1(C/C)、およびADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2(C/GまたはG/G)のうちの1つの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物食に反応することが予測される。
【0014】
本開示の一部の実施形態では、FABP2(rs1799883)1.1(G/G)、PPARG(rs1801282)1.1(C/C)、およびADRB2(rs1042714)1.1(C/C)の複合遺伝子型を有する被験体は、バランス食に反応することが予測される。
【0015】
本開示の一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む、被験体の代謝遺伝子型を同定する方法が提供される。
【0016】
本開示の一部の実施形態によると、被験体に適した運動レジメンを選択するための方法は、ADRB2(rs1042713;G/A;Gly16Arg)遺伝子座;およびADRB3(rs4994;C/T;Arg64Trp)からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するステップと、被験体を、通常の(中程度の)運動;および活発な(強度の)運動からなる群より選択される運動カテゴリーに分類するステップとを含む。
【0017】
本開示の一部の実施形態では、ADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16 Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16 Gly/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。
【0018】
本開示の一部の実施形態では、ADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝子型を有する被験体は、通常の(中程度の)運動に反応することが予測される。
【0019】
本開示の一部の実施形態では、ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。
【0020】
本開示の一部の実施形態では、ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)の遺伝子型を有する被験体は、通常の(中程度の)運動に反応することが予測される。
【0021】
本開示の一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するための試薬と;被験体の代謝遺伝子型を決定するための説明書とを含むキットが提供される。
【0022】
本開示の一部の実施形態によると、キットは、被験体を、低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;バランス食およびカロリー制限食からなる群より選択される栄養カテゴリーに分類するための手段をさらに含む。
【0023】
本開示の一部の実施形態によると、ADRB2(rs1042713;G/A;Gly16Arg)遺伝子座;およびADRB3(rs4994;C/T;Arg64Trp)からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するための試薬と;被験体の代謝遺伝子型を決定するための説明書とを含むキットが提供される。
【0024】
本開示の一部の実施形態によると、キットは、被験体を、通常の(中程度の)運動;および活発な(強度の)運動からなる群より選択される運動カテゴリーに分類するための手段をさらに含む。
【0025】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座から選択される多型遺伝子座の任意の2つ、任意の3つ、または任意の4つに関する被験体の遺伝子型を決定するステップであって、前記遺伝子座に関する被験体の遺伝子型により、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさの増加に関する情報が提供され、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさに適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択することが可能になるステップを含む方法が提供される。
【0026】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型決定するステップであって、前記遺伝子座に関する被験体の遺伝子型により、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさの増加に関する情報が提供され、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさに適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択することが可能になるステップを含む方法が提供される。
【0027】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座の任意の2つ、任意の3つ、または任意の4つに関する被験体の遺伝子型を決定するステップと、b)被験体の遺伝子型を、栄養反応性カテゴリーおよび/または運動反応性カテゴリーに分類するステップとを含む方法が提供される。被験体の遺伝子型が栄養反応性カテゴリーおよび/または運動反応性カテゴリーに分類またはカテゴリー化されたら、これらに限定されないが、被験体が最も反応する可能性のある適切な食事および活動レベルを選択することを含め、被験体に治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を提供することができる。
【0028】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するステップと、b)被験体の遺伝子型を、栄養反応性カテゴリーおよび/または運動反応性カテゴリーに分類するステップとを含む方法が提供される。
【0029】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、(a)FABP2 SNP rs1799883、対立遺伝子1(遺伝子型:G;アミノ酸:Ala);FABP2 SNP rs1799883、対立遺伝子2(遺伝子型:A;アミノ酸:Thr);PPARG SNP rs1801282、対立遺伝子1(遺伝子型:C;アミノ酸:Pro);PPARG SNP rs1801282、対立遺伝子2(遺伝子型:G;アミノ酸:Ala);ADRB3 SNP rs4994、対立遺伝子1(遺伝子型:T;アミノ酸:Trp);ADRB3 SNP rs4994、対立遺伝子2(遺伝子型:C;アミノ酸:Arg);ADRB2 SNP rs1042713、対立遺伝子1(遺伝子型:G;アミノ酸:Gly);ADRB2 SNP rs1042713、対立遺伝子2(遺伝子型:A;アミノ酸:Arg);ADRB2 SNP rs1042714、対立遺伝子1(遺伝子型:C;アミノ酸:Gln)およびADRB2 SNP rs1042714、対立遺伝子2(遺伝子型:G;アミノ酸:Glu)の遺伝子座から選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、または少なくとも8つの対立遺伝子の、対立遺伝子のパターンを検出するステップであって、対立遺伝子のパターンの存在により、食事および/または運動に対する被験体の反応が予測されるステップと、(b)食事および/または運動に対する被験体の予測される反応に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するステップとを含む方法が提供される。
【0030】
一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定する方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つに関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0031】
一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定する方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0032】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するための手段を含むキットが提供される。キットは、試料収集手段も含有してよい。キットは、陽性もしくは陰性いずれかの対照試料または標準物質ならびに/または結果を評価するためのアルゴリズムデバイスならびに追加的な試薬および成分も含有してよい。
【0033】
本発明のキットは、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する被験体の遺伝子型に基づいて食事および運動の推奨を提供するために使用するDNA検査の形態であってよい。被験体の遺伝子型によって提供される情報は、医療従事者が肥満の予防および治療を改善する個人向けの食事介入および運動介入を開発するのに役立ち得る。本発明の他の実施形態および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、12カ月にわたる平均の体重減少を示すグラフである。遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図2】図2は、12カ月にわたるウエスト周の変化率(%)を示すグラフである。遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図3】図3は、ウエスト−ヒップ比の変化率(%)を示すグラフである。遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図4】図4は、反応性遺伝子型カテゴリーに応じた食事の割り当てにより、体重が2〜3倍多く減少したことを示すグラフである。遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。反応性遺伝子型カテゴリーに応じた食事性の割り当てにより、体重が2〜3倍多く減少した。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図5】図5は、ウエスト周の変化率(%)を示すグラフである:遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。反応性遺伝子型カテゴリーに応じた食事を処方された個体では、ウエスト周が2〜3倍多く減った。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図6】図6は、ウエスト周対ヒップ周比の変化率(%)示すグラフである:遺伝子型に適した食事を割り当てた群と遺伝子型に適さない食事を割り当てた群を比較した。反応性遺伝子型カテゴリーに応じた食事を処方された個体では、ウエスト周対ヒップ周比が2〜3倍多く減った。「N」は、比較されている2つの群についての各測定ポイントにおける被験体の数である。「p」の値は、各測定値の統計的有意性を示す。
【図7】図7は、2〜12カ月の間、アトキンスダイエット(Atkins diet)、オーニッシュダイエット(Ornish diet)、ラーンダイエット(LEARN diet)およびゾーンダイエット(Zone diet)を行った全被験体間の(遺伝子型にかかわらず)kg単位の平均の体重減少を示すグラフである。
【図8】図8は、2〜12カ月の間、アトキンスダイエット(Atkins diet)を行った低CHOおよび低脂肪反応性群からの被験体間のkg単位の平均の体重減少を示すグラフである。低炭水化物食事群および低脂肪食事群の個体を、i)低炭水化物反応性遺伝子型(LCG);およびii)低脂肪食反応性遺伝子型(LFG)の2つの群に分類した。
【図9】図9は、2〜12カ月の間、オーニッシュダイエット(Ornish diet)を行った低CHOおよび低脂肪反応性群からの被験体間のkg単位の平均の体重減少を示すグラフである。低炭水化物食事群および低脂肪食事群の個体を、i)低炭水化物反応性遺伝子型(LCG);およびii)低脂肪反応性遺伝子型(LFG)の2つの群に分類した。
【図10】図10は、2〜12カ月の間、オーニッシュダイエット(Ornish diet)およびラーンダイエット(LEARN diet)を行った低CHOおよび低脂肪反応性群からの被験体間のkg単位の平均の体重減少を示すグラフである。オーニッシュ(Ornish)食事群およびラーン(LEARN)食事群の個体を、i)低炭水化物反応性遺伝子型(LCG);およびii)低脂肪食反応性遺伝子型(LFG)の2つの群に分類した。t検定分析を実施して、2つの群における平均の体重減少を比較した。
【図11】図11は、2〜12カ月の間、アトキンスダイエット(Atkins diet)、オーニッシュダイエット(Ornish diet)、ラーンダイエット(LEARN diet)およびゾーンダイエット(Zone diet)を行った低脂肪反応性遺伝子型を有する被験体間のkg単位の平均の体重減少を示すグラフである。
【図12】図12は、2〜12カ月の間、アトキンスダイエット(Atkins diet)、オーニッシュダイエット(Ornish diet)、ラーンダイエット(LEARN diet)およびゾーンダイエット(Zone diet)を行った低炭水化物反応性遺伝子型を有する被験体間のkg単位の平均の体重減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のキットおよび方法は、特定の代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子のパターンと特定の食事および運動レジメンに対する被験体の反応性との間に関連性があるという所見に少なくとも一部は依拠している。すなわち、代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子のパターンと体重管理に関連する臨床的転帰および表現型との間には関連性がある。特定の遺伝子が、体重に影響を及ぼす種々の経路に影響を及ぼし、肥満になるリスクの上昇および遺伝子型によって体重管理介入に対する被験体の反応を識別するそれらの能力に関連づけられている。本発明の目的のために、そのような遺伝子を「代謝に関わる遺伝子」または「体重管理遺伝子」と称する。これらの遺伝子としては、これらに限定されないが、脂肪酸結合タンパク質2(FABP2);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−ガンマ(PPARG);ベータ2アドレナリン作動性受容体(ADRB2);およびベータ3アドレナリン作動性受容体(ADRB3)が挙げられる。
【0036】
本発明は、1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、4つなど)代謝に関わる遺伝子について被験体の遺伝子型を決定することを含む、被験体の「代謝遺伝子型」を決定するための体重管理試験を提供する。そのような代謝遺伝子型決定の結果を使用して、体重を減少させるための、運動を伴うまたは伴わない、食事における主要栄養素の相対的な量およびカロリー制限に対する被験体の反応性を予測することができる。被験体の遺伝子型を同定することを用いて被験体を治療または栄養または生活様式の変更、またはそれらの組合せと対にし、体重減少を実現し、かつ/または持続させるための戦略を考案することができる。したがって、一部の実施形態によると、多型遺伝子型決定の結果(単一多型または組合せについての)を使用して、1)体重管理介入/転帰に対する遺伝的影響および2)体重を減少させるための、運動を伴うまたは伴わない、食事における主要栄養素およびエネルギー制限に対する反応性を決定することができる。
【0037】
まとめると、1つまたは複数の代謝に関わる遺伝子について被験体の遺伝子型を決定することにより、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するのにすぐに使用可能な情報をもたらす解釈が可能になる。被験体の代謝遺伝子型は、1つまたは複数の代謝に関わる遺伝子に関する被験体の遺伝的な多型パターンを検出するために設計された体重管理試験で決定される。関連性のある遺伝子多型および遺伝子型パターンの結果を同定することにより、この試験によって可能性のある体重管理転帰のリスクを評価し、被験体の個人的な遺伝子構造に適合する栄養介入および生活様式介入の選択に関する手引きを被験体に提供することができる。
【0038】
代謝に関わる遺伝子
代謝に関わる遺伝子としては、これらに限定されないが、脂肪酸結合タンパク質2(FABP2);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−ガンマ(PPARG);ベータ2アドレナリン作動性受容体(ADRB2);およびベータ3アドレナリン作動性受容体(ADRB3)が挙げられる。これらの遺伝子の1つまたは複数に関する被験体の遺伝的多型パターンは、被験体の代謝遺伝子型を示す。被験体の代謝遺伝子型は、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の1つまたは複数(すなわち、2つ、3つ、4つ、または5つ)に関する被験体の遺伝的多型パターンを同定することによって決定することができることがより好ましい。
【0039】
FABP2 rs1799883(Ala54Thr;G/A)多型
FABP2遺伝子は、脂質の輸送および代謝を制御するタンパク質のファミリーである腸管型の脂肪酸結合タンパク質をコードする。FABP2タンパク質は小腸上皮細胞に見いだされ、そこで脂肪の吸収を制御する。in vitroでは、このタンパク質のThr54型は、長鎖脂肪酸に対して2倍の結合親和性を示し(Baierら、J Clin Invest 95巻:1281〜1287頁、1995年)、また、腸における脂肪の吸収の増強に関連することが示された(Levyら、J Biol Chem 276巻:39679〜39684頁、2001年)。したがって、Thr54変異体では、腸による食事性脂肪酸の吸収および/または処理が増加し、それによって脂肪の酸化が増加する。最新の肥満遺伝子マップに従って、合計5つの試験により、FABP2遺伝子と肥満との間の関連性の証拠が示された;その試験のうち4つは、Ala54Thr多型を伴った。54Thr変異体は、BMIおよび体脂肪の上昇(Hegeleら、Clin Endocrinol Metab 81巻:4334〜4337頁、1996年)、日本人男性における腹部脂肪の増加(Yamadaら、Diabetologia 40巻:706〜710頁、1997年)および女性の間の肥満ならびに高レプチンレベル(Albalaら、Obes Res 12巻:340〜345頁、2004年)に関連づけられている。
【0040】
多数の試験により、Ala54Thr多型が試験食における食事性脂肪の変化に対する反応に影響を及ぼすことが示された。高脂肪食の7時間後、54Thr/Thrホモ接合体の被験体において、54Ala/Alaホモ接合体と比較して非エステル化脂肪酸(NEFA)が20%高かった(Pratleyら、J Lipid Res 41巻:2002〜2008頁、2000年)。脂肪を経口摂取した後、54Thr対立遺伝子は食後のトリグリセリドのレベルの増加に関連すること(Agrenら、Arterioscler Thromb Vasc Biol 18巻:1606〜1610頁、1998年)および14〜18炭素鎖脂肪酸のレベルの増加(Agrenら、Am J Clin Nutr 73巻:31〜35頁、2001年)に関連することも見いだされた。トランス脂肪酸を強化した試験食とシス脂肪酸を強化した同様の食事を比較した摂食後の代謝プロファイルにより、Thr54対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する被験体は、Ala54対立遺伝子についてホモ接合性の被験体と比較して、食後のグルコースレベルおよび脂質生成においてより大きな増加を示したことが示された(Lefevreら、Metabolism 54巻:1652〜1658頁、2005年)。低カロリー食(1日当たり1,520kcal)および1週間当たり3回の有酸素運動からなる生活様式改変プログラム(de Luis DAら、Ann Nutr Metab 50巻:354〜360頁、2006年)の前、およびその3カ月後に分析された肥満、非糖尿病性の患者群により、54Thr対立遺伝子の保有者(野生型の54Ala/Alaホモ接合体と比較して)は、脂肪量、LDLコレステロールレベルおよびレプチンレベルを有意に低下させることができなかったことが示された。他の試験により、FABP2遺伝子型と、中程度の炭水化物摂取を伴う食事性脂肪の摂取との間の関連性が実証された(Marinら、Am J Clin Nutr 82巻:196〜200頁、2005年;Takakuraら、Diabetes Research and Clinical Practice 67巻:36〜42頁、2005年)。
【0041】
PPARG rs1801282(C/G;Pro12Ala)多型
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、転写因子の核内ホルモン受容体サブファミリーのメンバーである。PPARガンマ(PPARG)は、脂肪細胞において大量に発現されており、脂肪細胞の形成、脂質代謝および2型糖尿病の発生において重要な役割を果たす。PPARGノックアウトマウスは、正常な脂肪組織を発生させることができず、高脂肪食を与えた場合、体重増加の減少を示し、インスリン抵抗性が発生しない(Jonesら、PNAS 102巻:6207〜6212頁、2005年)。12Ala変異体は、受容体の標的遺伝子のPPAR反応エレメントに対する受容体の結合親和性の減少に関連し、したがって、これらの標的遺伝子の発現を調節するその能力の低下に関連する(Deebら、Nat Genet 20巻:284〜287頁、1998年)。2006年の肥満遺伝子マップに従って(Rankinenら、Obesity 14巻:529〜644頁)、合計30の試験により、PPARG遺伝子と肥満との間の関連性の証拠が示され、陽性の所見の大部分は、Pro12Ala多型を含んだ。
【0042】
大規模横断研究のQuebec Family Study(QFS)(Robitailleら、Clin Genet 63巻:109〜116頁、2003年)により、12Pro対立遺伝子を保有する被験体は、食事中の脂肪の量に対する反応性がより高いことが示された。同様の試験(Memisogluら、Human Molecular Genetics 12巻:2923〜2929頁、2001年)によっても、多量の脂肪を摂取する12Pro/Proの被験体は、少量の脂肪を摂取する12Pro/Proの被験体よりも肥満度指数(BMI)が高いことが示された。食事性脂肪の摂取とBMIとの間のこの関連性は、12Ala保有者においては見られず、このことは12Pro/の被験体は、食事中の脂肪の量に対してより感受性が高いことを重ねて示唆している。食事介入に対する反応における遺伝子型の違いについての強力な証拠を、Finnish Diabetes Prevention Study(Lindiら、Diabetes 51巻:2581〜2586頁、2002年)から得た。食事および運動に関する3年の介入に反応して、体重減少は、12Pro/Proの被験体(−3.4kg)よりもPro12Ala被験体(−4.0kg)、それよりも12Ala/Ala被験体(−8.3kg)で大きかった。過体重および肥満の女性の試験では、6カ月のカロリーの低い食事に反応して、12Pro/Pro保有者と12Ala/保有者との間で体重減少に差は示されなかったが、経過観察(1年)の間の体重の回復はAla対立遺伝子を有する女性の方が、12Pro対立遺伝子についてホモ接合性の女性よりも大きかった。この介入に反応して、Ala保有者は、インスリン感受性および空腹時の炭水化物の酸化がより大きく増加し、空腹時の脂質の酸化がより大きく減少した(Nicklasら、Diabetes 50巻:2172〜2176頁、2001年)。
【0043】
12Pro/Proの被験体(最も頻度の高い遺伝子型)は、食事中の脂肪の量に対してより感受性が高く、体重減少に対してより抵抗性であり、また糖尿病になるリスクが高い。この遺伝子についての遺伝子−食事相互作用の証拠は強力である。食事介入試験からの所見により、12Ala保有者では脂肪の貯蔵および動員において代謝柔軟性がより高いことが示唆され、これは、BMIの増加、介入に反応した体重減少がより大きいこと、およびインスリン感受性がより高いこと、および糖尿病になるリスクの低下を示している試験と一致する。したがって、複数の試験により、12Pro対立遺伝子が高リスクの対立遺伝子であることが一致して示されている。
【0044】
ADRB2 rs1042713(G/A;Arg16Gly)多型およびADRB2 rs1042714(C/G;Gln27Glu)多型
ベータ2アドレナリン作動性受容体(ADRB2)は、脂肪細胞において発現されている受容体の優性型であり、カテコールアミンに反応して、エネルギーのために脂肪細胞から脂肪が分解されることにおいて重要な役割を果たす。この遺伝子の、アミノ酸の変化をもたらすいくつかの多型が同定されており、Arg16Gly多型およびGln27Glu多型がコーカサス人種において最も一般的であり、肥満に関して最も頻繁に調査されている多型である。この2つの多型は強力な連鎖不平衡にある(Meirhaegheら、Intntl J Obesity 2巻:382〜87頁、2000年)。チャイニーズハムスター線維芽細胞における、これらの受容体の組換え発現のin vitro試験により、この2つの多型の機能的影響が示された(Greenら、Biochemistry 33巻:9414〜9419頁、1994年)。それらのそれぞれの正常な対立遺伝子と比較して、16Gly対立遺伝子は、アゴニスト(イソプロテレノール(isoproteranol))処置に反応してADRB2の発現の下方制御の増強を伴い、27Gluは、ADRB2の発現においていくらかの増加(すなわち、下方制御に抵抗性)を伴った。興味深いことに、両方の突然変異体対立遺伝子(16Glyおよび27Glu)が組み合わさると、受容体の産生の下方制御が増強された。最近の肥満遺伝子マップ(Rankinenら、The human obesity gene map:The 2005 update. Obesity 14巻:529〜644頁)に従って、合計20の試験により、ADRB2遺伝子と肥満との間の関連性の証拠が示され、陽性の所見の大部分はArg16Gly多型またはGln27Glu多型を含み、また27Glu対立遺伝子とのより強力な関連性が存在することのいくらかの徴候を含んだ。いくつかの試験により、これらの多型を伴う肥満になるリスクにおける性差が実証されたが(22.Hellstromら、J Intern Med 245巻:253〜259頁、1999年;Garencら、Obes Res 11巻:612〜618頁、2003年)、この証拠の優勢はこのパネルにおける性特異的な遺伝子型の判定を行うのに有利ではない。
【0045】
多数の試験により、27Glu対立遺伝子が腹部肥満と正に関連することが見いだされたという証拠が示されており(Langeら、Int J Obes(Lond)29巻:449〜457頁、2005年;Gonzalezら、Clin Endocrinol(Oxf)59巻:476〜481頁、2003年)、同様に、複数の試験により、肥満になるリスクおよび脂肪量の上昇について27Glu対立遺伝子および16Gly対立遺伝子の両方が調べられている(Masuoら、Am J Hypertens、19巻:1084〜91頁、2006年)。縦断研究により、小児期から成人期までの体重増加が、16Gly対立遺伝子を保有する被験体において16Arg/Argの被験体と比較してより大きいこと(Ellsworthら Int J Obes Relat Metab Disord 26巻:928〜937頁、2002年)および成人期の間の体重増加が、16Gly対立遺伝子を保有する被験体において16Arg/Argの被験体と比較してより大きいこと(Masuoら、Circulation 111巻:3429〜3434頁、2005年;van Rossumら、Int J Obes Relat Metab Disord 26巻:517〜528頁、2002年)が示された。
【0046】
肥満になるリスクの増加(OR=2.56)が、炭水化物摂取量が高い(全エネルギー摂取量のうちCHO>49%)27Gln/Gluの女性において見いだされたが、27Gln/Glnの女性では関連性は観察されなかった(Martinezら、J Nutr 133巻:2549〜2554頁、2003年)。ある場合では、食事の選択を行うための最良の多型および対立遺伝子を決定するための対立遺伝子の判定は、逆の介入(栄養過剰)試験および逆の対立遺伝子を選択することによってもたらされる。例えば、男性の一卵性双生児の対において実施した栄養過剰試験(100日間、1日当たり余分の1000kcal)からの結果により、27Gln/Glnの被験体の方が、27Glu対立遺伝子の保有者よりも体重および皮下脂肪がより多く増したことが示された(Ukkolaら、Int J Obes Relat Metab Disord 25巻:1604〜1608頁、2001年)。24カ月の体重減少プログラム(カロリーの低い食事(1日当たり1,600kcal)および毎日1時間の有酸素運動)に登録された過体重の日本人男性における試験により、体重減少に対して抵抗性の男性(10%未満のBMI変化と定義される;n=81)および6カ月の時点での好結果の最初の体重減少の後に体重が回復した男性において16Gly対立遺伝子の頻度が高いことが示された(Masuoら、Circulation 111巻:3429〜3434頁、2005年)。余暇においてより活動的であり、27Glu対立遺伝子の保有者である女性は、非保有者と比較してBMIが高く、このことは、これらの女性が、体重減少に対してより抵抗性であり得ることが示唆されている(Corbalanら、Clin Genet 61巻:305〜307頁、2002年)。
【0047】
ADRB3 rs4994(C/T;Arg64Trp)多型
アドレナリン作動性ベータ3受容体(ADRB3)は、白色脂肪組織における脂肪分解の調節に関与し、肥満に関連する代謝性合併症と密接に関連づけられる脂肪の貯蔵所である内臓脂肪組織において主に発現されている。単離された脂肪細胞に対するin vitro試験により、突然変異によって、64Arg対立遺伝子を保有する細胞における特異的なアゴニストに反応した脂肪分解が悪化することが示された(Umekawaら、Diabetes 48巻:117〜120頁、1999年)。64Arg変異体を含めたADRB3遺伝子の3種の変異体で形成されたハプロタイプは、BMIの増加(n=208)および内臓脂肪細胞の、選択的な3受容体アゴニストに対する感受性(脂肪分解の誘導)が10分の1に減少することに関連することが見いだされた(Hoffstedtら、Diabetes 48巻:203〜205頁、1999年)。3種の変異体は連鎖不平衡にあり、これは、64Arg変異体が受容体機能の低下に関連づけられることを示唆している。合計29の試験により、ADRB3遺伝子と肥満との間の関連性の証拠が示された。9,000人を超える被験体を用いた31の試験に基づく1つのメタ分析により、64Arg変異体の保有者は、ホモ接合性の64Trp/Trpの被験体と比較してBMIが高い(平均で0.30kg/m高い)ことが示された(Fujisawaら、J Clin Endocrinol Metab 83巻:2441〜2444頁、1998年)。22の試験からの6,500人を超える被験体(主に日本人の被験体)に基づく第2のメタ分析によっても、64Arg変異体の保有者は非保有者と比較してBMI値が高い(平均で0.26kg/m高い)ことが示された(Kurokawaら、Obes Res 9巻:741〜745頁、2001年)。
【0048】
症例対照研究(肥満158例、正常体重154例)により、座りがちの被験体間でのみ64Arg保有者(高BMI)における肥満になるリスクの増加が示された(OR=2.98)が、BMIに遺伝子型の違いが見いだされなかった、体をよく動かす被験体においてはそのリスクの増加は示されなかった(Martiら、Diabetes Obes Metab 4巻:428〜430頁、2002年)。2型糖尿病の肥満の女性61人に3カ月のカロリーの低い食事と運動を組み合わせた介入を受けさせた試験により、64Arg変異体を有する女性は、64Trp/Trp女性よりも体重の減少が少なく(4.6kg対8.3kg)、またボディマスの減少も少なかった(1.9kg/m対3.4kg/m)(Sakaneら、Diabetes Care 20巻:1887〜1890頁、1997年)。閉経期前後の女性76人に実施した、3カ月の運動と食事を組み合わせた介入を受けさせた試験により、64Arg変異体を有さない女性の69%が体重減少したのと比較して、64Arg変異体を有する女性ではその48%が体重減少した(Shiwakuら、Int J Obes Relat Metab Disord 27巻:1028〜1036頁、2003年)。これらの2つの試験は、この変異体が、食事と運動によって体重を減少させることの難しさに関連づけられることを示唆している。男性29人および女性41人に対して実施した試験(Pharesら、Obes Res 12巻:807〜815頁、2004年)により、ADRB3 64Arg保有者は、24週間の指導付きの有酸素運動訓練後に、非保有者と比較して脂肪量および体幹の脂肪がより大きく減少した。これらの結果は、逆の対立遺伝子の運動に対する反応を実証していると思われるが、この試験療法における運動のレベルは、より活発な、指導付きの持久力訓練であった。運動に対する反応における遺伝子型の違いを判定することは、多くの試験において、肥満の状態が、変異体のエネルギー消費に対する中程度の影響を覆い隠す交絡因子であり得るので、さらに複雑になる可能性がある(Tchernofら、Diabetes 48巻:1425〜1428頁、1999年)。
【0049】
したがって、一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2遺伝子座、PPARG遺伝子座、ADRB3遺伝子座、および/またはADRB2遺伝子座の1つまたは複数(すなわち、2つ、3つ、または4つ)に関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の1つまたは複数(すなわち、2つ、3つ、4つ、または5つ)を有する被験体の遺伝子型を入手することに関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0050】
一部の実施形態によると、被験体の単一多型代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される、代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子に関する遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0051】
一部の実施形態によると、被験体の複合代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される、少なくとも2つの代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子に関する遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0052】
一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される、少なくとも3つの代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子に関する複合多型遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0053】
一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される、少なくとも4つの代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子に関する複合多型遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0054】
一部の実施形態によると、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法であって、代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座のそれぞれに関する複合多型遺伝子型を同定するステップを含む方法が提供される。
【0055】
被験体の単一多型代謝遺伝子型および/または複合代謝遺伝子型の結果は、食事介入および/または運動介入による「より低い反応性」または「より高い反応性」の結果を構成するものを含めた、体重管理リスクとそれらの関係、2)それらの関連する臨床的バイオマーカーまたは健康関連バイオマーカーの転帰、3)体重を管理するための介入の選択とそれらの関係、および4)各遺伝子型の分布率に従って分類することができる。以下の表1および2において、特定の代謝に関わる遺伝子の対立遺伝子を定義し、特定の代謝障害/代謝パラメータに対する感受性に対するリスクの増加を説明している。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2−1】

【0058】
【表2−2】

【0059】
【表2−3】

一部の実施形態によると、適切な治療介入または食事介入または生活様式の変化について被験体を選択またはスクリーニングするための被験体の血中脂質レベルを測定するための方法およびキットが提供される。本発明は、被験体のHDL、LDLおよび/またはトリグリセリドの測定を提供する。被験体は、男性では約40mg/dL以下および女性では50mg/dL以下の低レベルのHDL、または約100mg/dL以上の高レベルのLDL、または約150mg/dL以上の高レベルのトリグリセリド、またはそれらの任意の組合せを有するとスクリーニングされた場合、異常な脂質プロファイルまたは脂質異常症を有するとみなされる。
【0060】
一部の実施形態によると、低レベルのHDLは、20〜60mg/dLまたは50〜59mg/dLまたは40〜49mg/dLまたは30〜39mg/dLまたは<30mg/dLであり;高レベルのLDLは、100〜>190mg/dLまたは100〜129mg/dLまたは130〜159mg/dLまたは160〜190mg/dLまたは>190mg/dLであり;高レベルのトリグリセリドは、150〜>500mg/dLまたは150〜199mg/dLまたは200〜500mg/dLまたは>500mg/dLである。
【0061】
一部の実施形態によると、被験体を、体重管理戦略、または治療介入に対する反応についての臨床試験についてスクリーニングすることができ、これは、被験体を、その被験体の本発明の対立遺伝子プロファイルおよび/または複合遺伝子型を同定するステップと、それらの被験体の、推奨される療法/食事/生活様式またはその組合せに対する反応を、HDL、またはLDLまたはトリグリセリドの予測されるレベルを用いて予測するステップとを含む。
【0062】
一部の実施形態によると、被験体を体重管理のための臨床試験についてスクリーニングするための方法およびキットが提供され、ここで、低体重の被験体はBMI<18.5を有し;過体重の被験体は25〜29.9の範囲であり、肥満の被験体は30〜39.9のBMIを有し、BMIが>40.0であると、極度の肥満とみなされる。これらの被験体において代謝遺伝子型を同定することにより、医療従事者に、BMIが25である被験体のBMIを、カロリーを低くした食事を単独で用いて22に到達させることの難しさについて考察するためのツールを提供することができ得る。
【0063】
表3は、特定の代謝遺伝子型についての民族的な分布率を提供する。
【0064】
【表3】

これらの遺伝子変異の組合せは、1)被験体が食事中の特定の主要栄養素に対してどのように反応するか、および2)運動によって体重を維持するまたは減少させるそれらの被験体の能力に最終的に影響を及ぼす、それらの被験体のエネルギー代謝における異なる傾向に影響を及ぼす。代謝遺伝子型を決定することは、健康な被験体が、まだ顕在化していない体重管理上の不都合な問題の遺伝的リスクを同定するために役立つ。遺伝子に関連するリスクを早期に知ることは、将来の健康を守るために、ならびに、最適な体重および体組成を管理するための栄養および生活様式の選択に関する被験体の焦点にどのように優先順位を付けるのが最善であるかを方向付けるために、個人向けの健康に関する決定(栄養、生活様式)を下すことに役立ち得る。
【0065】
被験体の代謝遺伝子型から得られる情報を用いて、体重管理上の不都合な問題が生じる被験体の遺伝的リスクを予測することができる。被験体の遺伝子型を使用して、リスク評価することができ、適切な治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択することが可能になる。対象としている遺伝子型を同定することを用いて、被験体を、治療または栄養または生活様式の変更または任意の2つまたは3つの組合せと対にし、体重減少を実現し、かつ/または持続させるための戦略を考案することができる。一般に、1つまたは複数の代謝に関わる遺伝子の被験体の対立遺伝子のパターンを使用して、体重減少管理プログラムにおける、運動を伴うまたは伴わない、食事における主要栄養素およびエネルギー制限に対する被験体の予測される反応性を分類することができる。したがって、被験体の予測される反応に基づいて、被験体のための個人向けの体重管理プログラムを選択することができる。例えば、体重管理プログラムにより、特定の主要栄養素および運動の程度に対する反応性についての被験体の素因に基づいて、被験体の代謝遺伝子型を一連の栄養カテゴリーの1つおよび一連の運動カテゴリーの1つに分類することができる。被験体の遺伝的パターンに基づいて、被験体のための栄養カテゴリー、運動カテゴリー、またはその組合せを選択することができる。
【0066】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座の任意の4つに関する被験体の遺伝子型を決定するステップであって、前記遺伝子座に関する被験体の遺伝子型により、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさの増加に関する情報が提供され、被験体の体重管理上の不都合な問題の影響の受けやすさに適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択することが可能になるステップを含む方法が提供される。
【0067】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1、PPARG(rs1801282)1.1、ADRB2(rs1042714)1.1、ADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1の複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0068】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つおよびPPARG(rs1801282)1.1、さらに、ADRB2(rs1042714)1.1、ADRB2(rs1042714)1.2、またはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0069】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2もしくはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、および/またはADRB2(rs1042714)1.2もしくはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0070】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、およびFABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0071】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1、およびPPARG(rs1801282)1.1と、ADRB2(rs1042714)1.2もしくはADRB2(rs1042714)1.1のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)1.2もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0072】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つ、およびPPARG(rs1801282)1.1と、ADRB2(rs1042714)1.1、ADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つ、およびADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)1.2もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つのいずれかとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0073】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2もしくはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、および/またはADRB2(rs1042714)1.2もしくはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)1.2もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0074】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、およびFABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)1.2もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0075】
一部の実施形態によると、治療法/食事レジメンは、栄養補助食品を投与することを含む。
【0076】
一部の実施形態によると、上記方法は、被験体を、治療法/食事レジメンまたは生活様式の変化から得られる可能性が高い利益に関して分類することをさらに含む。
【0077】
一部の実施形態によると、上記の方法の低脂肪食は、総カロリーの約35パーセント以下が脂肪に由来する。
【0078】
一部の実施形態によると、上記の方法の低炭水化物食は、総カロリーの約50パーセント未満が炭水化物に由来する。
【0079】
一部の実施形態によると、上記の方法のカロリー制限食では、総カロリーを被験体の体重管理レベルの95%未満に制限する。
【0080】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の少なくとも3つに関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法が提供される。
【0081】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の少なくとも4つに関する被験体の遺伝子型を同定するステップを含む、被験体の代謝遺伝子型を同定するための方法が提供される。
【0082】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座;ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座;ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座;およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座から選択される多型遺伝子座の任意の4つに関する被験体の遺伝子型を決定するステップと;b)被験体を、被験体が可能性のある利益を得ることが予測される栄養カテゴリーおよび/または運動カテゴリーに分類するステップであって、栄養カテゴリーが低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;およびカロリー制限食から選択され、運動カテゴリーが軽い運動;通常の運動;および活発な運動から選択されるステップとを含む方法が提供される。
【0083】
一部の実施形態によると、被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するための方法であって、(a)FABP2(rs1799883)対立遺伝子1(AlaまたはG)、FABP2(rs1799883)対立遺伝子2(ThrまたはA)、PPARG(rs1801282)対立遺伝子1(ProまたはC)、PPARG(rs1801282)対立遺伝子2(AlaまたはG)、ADRB3(rs4994)対立遺伝子1(TrpまたはT)、ADRB3(rs4994)対立遺伝子2(ArgまたはC)、ADRB2(rs1042713)対立遺伝子1(GlyまたはG)、ADRB2(rs1042713)対立遺伝子2(ArgまたはA)、ADRB2(rs1042714)対立遺伝子1(GlnまたはC)およびADRB2(rs1042714)対立遺伝子2(GluまたはG)からなる群より選択される少なくとも2つの対立遺伝子のパターンを検出するステップであって、対立遺伝子のパターンの存在により、食事および/または運動に対する被験体の反応が予測されるステップと、(b)食事および/または運動に対する被験体の予測される反応に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択するステップとを含む方法が提供される。
【0084】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)、PPARG(rs1801282)1.1(Pro/ProまたはC/C)、ADRB2(rs1042714)1.1(Gln/GlnまたはC/C)、およびADRB2(rs1042713)2.2(Arg/ArgまたはA/A)、およびADRB3(rs4994)1.1(Trp/TrpまたはT/T)の複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0085】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)またはFABP2(rs1799883)1.2(Ala/ThrまたはG/A)のうちの1つおよびPPARG(rs1801282)1.1(Pro/ProまたはC/C)、さらに、ADRB2(rs1042714)1.1(Gln/GlnまたはC/C)、ADRB2(rs1042714)1.2(Gln/GluまたはC/G)、またはADRB2(rs1042714)2.2(Glu/GluまたはG/G)のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2(Arg/ArgまたはA/A)およびADRB3(rs4994)1.1(Trp/TrpまたはT/T)との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0086】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2(Pro/Ala(C/C)もしくはPPARG(rs1801282)2.2(Ala/AlaまたはG/G)のうちの1つ、および/またはADRB2(rs1042714)1.2(Gln/GluまたはC/G)もしくはADRB2(rs1042714)2.2(Glu/GluまたはG/G)のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2(Arg/ArgまたはA/A)、およびADRB3(rs4994)1.1(Trp/TrpまたはT/T)との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0087】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2(Pro/AlaまたはC/G)またはPPARG(rs1801282)2.2(Ala/AlaまたはG/G)、およびFABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)またはFABP2(rs1799883)1.2(Ala/ThrまたはG/A)のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2(Arg/ArgまたはA/A)、およびADRB3(rs4994)1.1(Trp/TrpまたはT/T)との組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される。
【0088】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)、およびPPARG(rs1801282)1.1(Pro/ProまたはC/C)と、ADRB2(rs1042713)1.2(Gly/ArgまたはG/A)もしくはADRB2(rs1042713)2.2(Arg/ArgまたはA/A)のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1(Arg/TrpまたはC/T)もしくはADRB3(rs4994)2.2(Arg/ArgまたはC/C)のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0089】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)またはFABP2(rs1799883)1.2(Ala/ThrまたはG/A)、およびPPARG(rs1801282)1.1(Pro/ProまたはC/C)のうちの1つと、ADRB2(rs1042714)1.1(Gln/GlnまたはC/C)、ADRB2(rs1042714)1.2(Gln/GluまたはC/G)もしくはADRB2(rs1042714)2.2(Glu/GluまたglはG/G)のうちの1つ、およびADRB2(rs1042713)1.1(Gly/GlyまたはG/G)もしくはADRB2(rs1042713)1.2(Gly/ArgまたはG/A)のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1(Arg/TrpまたはC/T)もしくはADRB3(rs4994)2.2(Arg/ArgまたはC/C)のうちの1つのいずれかとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低脂肪、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0090】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2(Pro/AlaまたはC/G)もしくはPPARG(rs1801282)2.2(Ala/AlaまたはG/G)のうちの1つ、および/またはADRB2(rs1042714)1.2(Gln/GluまたはC/G)もしくはADRB2(rs1042714)2.2(Glu/GluまたはG/G)のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1(Gly/GlyまたはG/G)もしくはADRB2(rs1042713)1.2(Gly/ArgまたはG/A)のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1(Arg/TrpまたはC/T)もしくはADRB3(rs4994)2.2(Arg/ArgまたはC/C)のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0091】
一部の実施形態によると、PPARG(rs1801282)1.2(Pro/AlaまたはC/G)またはPPARG(rs1801282)2.2(Ala/AlaまたはG/G)のうちの1つ、およびFABP2(rs1799883)1.1(Ala/AlaまたはG/G)またはFABP2(rs1799883)1.2(Ala/ThrまたはG/A)のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1(Gly/GlyまたはG/G)もしくはADRB2(rs1042713)1.2(Gly/ArgまたはG/A)のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1(Arg/TrpまたはC/T)もしくはADRB3(rs4994)2.2(Arg/ArgまたはC/C)のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型を有する被験体は、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される。一部の実施形態によると、被験体は、定期的な運動に対してあまり反応しないことがさらに予測される。
【0092】
一部の実施形態によると、体重管理上の不都合な問題が生じる被験体の遺伝的リスクを予測するための方法であって、FABP2(rs1799883)対立遺伝子1(AlaまたはG)、FABP2(rs1799883)対立遺伝子2(ThrまたはA)、PPARG(rs1801282)対立遺伝子1(ProまたはC)、PPARG(rs1801282)対立遺伝子2(AlaまたはG)、ADRB3(rs4994)対立遺伝子1(TrpまたはT)、ADRB3(rs4994)対立遺伝子2(ArgまたはC)、ADRB2(rs1042713)対立遺伝子1(GlyまたはG)、ADRB2(rs1042713)対立遺伝子2(ArgまたはA)、ADRB2(rs1042714)対立遺伝子1(GlnまたはC)およびADRB2(rs1042714)対立遺伝子2(GluまたはG)から選択される少なくとも2つの対立遺伝子を含む遺伝的多型パターンを検出するステップであって、その遺伝的多型パターンが存在することにより、食事および/または運動に対する被験体の反応が予測されるステップを含む方法が提供される。
【0093】
本開示の一部の実施形態では、低脂肪食(例えば、オーニッシュダイエット(Ornish diet))の下での体重減少に反応する被験体の遺伝的リスクを、FABP2 rs1799883(A/)およびPPARG遺伝子型rs1801282(C/C)を含めた低脂肪反応性遺伝子型を決定することによって予測するための方法が提供される。
【0094】
本開示の一部の実施形態では、低炭水化物食(例えば、アトキンスダイエット(Atkins Diet)またはラーンダイエット(LEARN Diet))の下での体重減少に反応する被験体の遺伝的リスクを、4つの異なる遺伝子の組合せ:FABP2 rs1799883(A/)、PPARG rs1801282(G/);PPARG rs1801282(G/)、ADRB2 rs1042714(G/);FABP2(G/G)、PPARG(G/);およびFABP2(G/G)、PPARG(C/C)、ADRB2(G/)のうちのいずれか1つを有する被験体における遺伝子型のパターンを含めた低炭水化物反応性遺伝子型を決定することによって予測するための方法が提供される。本開示の一部の実施形態では、バランス食(例えば、ゾーンダイエット(Zone diet))の下での体重減少に反応する被験体の遺伝的リスクを、遺伝子型のパターン:FABP2(G/G)、PPARG(C/C)、ADRB2(C/C)を含めたバランス食反応性遺伝子型を決定することによって予測するための方法が提供される。
【0095】
本開示の一部の実施形態によると、ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)のうちの1つおよびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16 Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16 Gly/Arg)のうちの1つを含む遺伝的パターンを有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。本開示の一部の実施形態では、ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝的パターンを有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。また、ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64 Trp/Trp)およびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16 Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16 Gly/Arg)のうちの1つを含む遺伝的パターンを有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。しかし、ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64 Trp/Trp)およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝的パターンを有する被験体は、通常の(中程度の)運動に反応することが予測される。
【0096】
一部の実施形態によると、治療法/食事レジメンは、栄養補助食品を投与することを含む。一部の実施形態によると、上記方法は、被験体を、治療法/食事レジメンまたは生活様式の変化から得られる可能性が高い利益に関して分類することをさらに含む。
【0097】
一部の実施形態によると、上記の方法の低脂肪食は、総カロリーの約35パーセント以下が脂肪に由来する。
【0098】
一部の実施形態によると、上記の方法の低炭水化物食は、総カロリーの約50パーセント未満が炭水化物に由来する。
【0099】
一部の実施形態によると、上記の方法のカロリー制限食では、総カロリーを被験体の体重管理レベルの95%未満に制限する。
【0100】
一部の実施形態によると、a)以下から選択される多型遺伝子座の任意の4つに関する被験体の遺伝子型を決定するための試薬:FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座;ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座;ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座;およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座;ならびにb)被験体の代謝遺伝子型を決定するための説明書、および被験体を、被験体が可能性のある利益を得ることが予測される栄養カテゴリーおよび/または運動カテゴリーに分類するための手段であって、栄養カテゴリーが、低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;およびカロリー制限食からなる群より選択され、運動カテゴリーが、軽い運動;通常の運動;および活発な運動からなる群より選択される手段を含むキットが提供される。
【0101】
一部の実施形態によると、キットは、被験体を、治療法/食事レジメンまたは生活様式の変化からの可能性のある利益に関してさらに分類する。
【0102】
一部の実施形態によると、キットは、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される、FABP2(rs1799883)1.1、PPARG(rs1801282)1.1、ADRB2(rs1042714)1.1、およびADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1の複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0103】
一部の実施形態によると、キットは、低脂肪、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される、FABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つおよびPPARG(rs1801282)1.1、さらにADRB2(rs1042714)1.1、ADRB2(rs1042714)1.2、またはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0104】
一部の実施形態によると、キットは、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される、PPARG(rs1801282)1.2もしくはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、および/またはADRB2(rs1042714)1.2もしくはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型を有する被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0105】
一部の実施形態によると、キットは、低炭水化物、カロリー制限食;定期的な運動;またはその両方に反応することが予測される、PPARG(rs1801282)1.2またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、およびFABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)2.2、およびADRB3(rs4994)1.1との組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0106】
一部の実施形態によると、キットは、低脂肪または低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される、FABP2(rs1799883)1.1、およびPPARG(rs1801282)1.1と、ADRB2(rs1042713)1.2もしくはADRB2(rs1042713)1.1のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0107】
一部の実施形態によると、キットは、低脂肪、カロリー制限食に反応することが予測される、FABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つ、およびPPARG(rs1801282)1.1と、ADRB2(rs1042714)1.1、ADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つ、およびADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つのいずれかとの組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0108】
一部の実施形態によると、キットは、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される、PPARG(rs1801282)1.2もしくはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、および/または、ADRB2(rs1042714)1.2もしくはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0109】
一部の実施形態によると、キットは、低炭水化物、カロリー制限食に反応することが予測される、PPARG(rs1801282)1.2またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、およびFABP2(rs1799883)1.1またはFABP2(rs1799883)1.2のうちの1つと、ADRB2(rs1042713)1.1もしくはADRB2(rs1042713)1.2のうちの1つ、またはADRB3(rs4994)2.1もしくはADRB3(rs4994)2.2のうちの1つとの組合せの複合遺伝子型について被験体の遺伝子型決定をするための試薬を含む。
【0110】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の少なくとも4つに関する被験体の遺伝子型を同定することを含む、被験体の代謝遺伝子型を決定するための試薬および説明書を含むキットが提供される。
【0111】
一部の実施形態によると、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、ADRB3(rs4994;C/T)遺伝子座、ADRB2(rs1042713;A/G)遺伝子座、および/またはADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座の少なくとも3つに関する被験体の遺伝子型を同定することを含む、被験体の代謝遺伝子型を決定するための試薬および説明書を含むキットが提供される。
【0112】
栄養カテゴリー
栄養カテゴリーは、概して、被験体の代謝遺伝子型に基づいて被験体に推奨される主要栄養素(すなわち、脂肪、炭水化物、タンパク質)の量に基づいて分類する。被験体に適した治療法/食事レジメンまたは生活様式推奨を選択することの主要な目的は、被験体の代謝遺伝子型を、被験体が最も反応する可能性が高い栄養カテゴリーと対にすることである。栄養カテゴリーは、一般に、被験体の食事に提案される主要栄養素の相対的な量に関して、またはカロリー制限(例えば、被験体が受け取る総カロリー数を制限し、かつ/または特定の主要栄養素から被験体が受け取るカロリー数を制限する)に関して表される。例えば、栄養カテゴリーとしては、これらに限定されないが、1)低脂肪、低炭水化物食;2)低脂肪食、または3)低炭水化物食を挙げることができる。あるいは、栄養カテゴリーは、被験体の代謝遺伝子型に基づいて被験体に推奨される特定の主要栄養素の制限性に基づいて分類することができる。例えば、栄養カテゴリーは、1)バランス食またはカロリー制限食;2)脂肪制限食、または3)炭水化物制限食として表すことができる。脂肪制限食または低脂肪食に反応する代謝遺伝子型を有する被験体は、より多くの食事性脂肪を体内に吸収し、代謝が遅い傾向がある。これらの被験体は、体重が増加する傾向が強い。臨床試験により、これらの被験体は、総食事性脂肪を減らすことにより、楽に健康な体重に達することが示された。これらの被験体は、脂肪を低減し、かつ/またはカロリーを低減した食事に従うことにより、体重減少においてより大きな成功を収め得る。さらに、これらの被験体は、カロリー低減食内で飽和脂肪を一価不飽和脂肪に交換することによって利益を得る。臨床試験により、これらの同じ食事を改変することにより、糖および脂肪を代謝する体の能力が改善されることも示された。
【0113】
炭水化物制限食または低炭水化物食に反応する代謝遺伝子型を有する被験体は、過剰な炭水化物の摂取による体重増加に対する感受性が高い傾向がある。これらの被験体は、カロリー低減食中の炭水化物を減らすことにより、体重減少においてより大きな成功を収め得る。この遺伝的パターンを有する被験体は、肥満を起こしやすく、毎日の炭水化物の摂取量が高い場合、例えば、毎日の炭水化物の摂取量が、例えば、総カロリーの約49%を超える場合などに血糖調節に困難を有する。炭水化物を減らすことにより、血糖調節が最適化され、さらに体重が増加するリスクが低下することが示された。これらの被験体の食事が高飽和脂肪かつ低一価不飽和脂肪を有する場合、体重増加および血糖増加のリスクが上昇する。総カロリーを限定しながら、これらの被験体は、総炭水化物摂取量を制限し、かつ食事の脂肪組成を一価不飽和脂肪にシフトすること(例えば、低飽和脂肪かつ低炭水化物の食事)から利益を得る可能性がある。
【0114】
脂肪と炭水化物のバランスに反応する代謝遺伝子型を有する被験体は、低脂肪食または低炭水化物食の一貫した必要性を示していない。これらの被験体では、重要なバイオマーカー、例えば体重、体脂肪および血漿中脂質のプロファイルなどが、脂肪と炭水化物のバランスのとれた食事によく反応する。体重を減らすことに関心のあるこの遺伝的パターンを有する被験体について、カロリーが制限されたバランス食によって体重減少および体脂肪の減少が促進されることが見いだされた。
【0115】
低脂肪食とは、総カロリーの約10%から約40%未満の間が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーの約35パーセント以下(例えば、約19%以下、約21%以下、約23%以下、約22%以下、約24%以下、約26%以下、約28%以下、約33%以下など)が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーのうち約30%以下が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーのうち約25%以下が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーのうち約20%以下が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーのうち約15%以下が脂肪に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、総カロリーのうち約10%以下が脂肪に由来する食事を指す。
【0116】
一部の実施形態によると、低脂肪食とは、1日当たりの脂肪が約10グラムから約60グラムの間である食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、1日当たりの脂肪が約50グラム未満(例えば、約10、25、35、45)グラム未満である食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、1日当たりの脂肪が約40グラム未満である食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、1日当たりの脂肪が約30グラム未満である食事を指す。一部の実施形態によると、低脂肪食とは、1日当たりの脂肪が約20グラム未満である食事を指す。
【0117】
脂肪は、飽和型および不飽和型(一価不飽和のおよび多価不飽和)両方の脂肪酸を含有する。一部の実施形態によると、カロリーの10%未満まで飽和脂肪が低減されていれば、飽和脂肪の低い食事である。一部の実施形態によると、カロリーの15%未満まで飽和脂肪が低減されていれば、飽和脂肪の低い食事である。一部の実施形態によると、カロリーの20%未満まで飽和脂肪が低減されていれば、飽和脂肪の低い食事である。
【0118】
低炭水化物(CHO)食とは、総カロリーの約15%から約50%未満の間が炭水化物由来である食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物(CHO)食とは、総カロリーの約50パーセント以下(例えば、約15%以下、約18%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下など)が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約45%以下が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約40%以下が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約35%以下が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約30%以下が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約25%以下が炭水化物に由来する食事を指す。一部の実施形態によると、低炭水化物食とは、総カロリーの約18%以下が炭水化物に由来する食事を指す。
【0119】
低炭水化物(CHO)食とは、食事中の炭水化物のグラム量を制限する食事、例えば、1日当たりの炭水化物が約20から約250グラムまでの食事を指し得る。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約220グラム以下(例えば、約40以下、約70以下、約90以下、約110以下、約130以下、約180以下、約210以下など)の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約200グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約180グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約150グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約130グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約100グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態によると、低炭水化物食は、1日当たり約75グラム以下の炭水化物を含む。一部の実施形態では、カロリーの低い食事に指定された被験体には、アトキンスダイエット(Atkins diet)をさせる。
【0120】
カロリー制限食またはバランス食とは、主要栄養素についてのどんな優先も考慮せず、摂取される総カロリーが被験体の体重維持レベル(WML)を下回るように制限された食事を指す。バランス食またはカロリー制限食は、例えば、任意の特定の主要栄養素から摂取されるカロリーを制限することに特に焦点を合わせることなく、被験体の総カロリー摂取量を被験体のWMLを下回るように減らすことによって、被験体の全体的なカロリー摂取量を低下させようとする。したがって、一部の実施形態によると、バランス食は、被験体のWMLの百分率として表すことができる。例えば、バランス食は、約50%から約100%の間のWMLの総カロリー摂取量を含む食事である。一部の実施形態によると、バランス食は、WMLの100%未満の(例えば、約99%未満、97%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満の)総カロリー摂取量を含む食事である。この枠組みの中で、バランス食により、食事中の主要栄養素の健康的な、または所望のバランスが実現され、バランス食は、低脂肪;低飽和脂肪;低炭水化物;低脂肪かつ低炭水化物;または低飽和脂肪かつ低炭水化物であり得る。例えば、食事は、低脂肪のカロリー制限食(低脂肪は、上記の意味を有する)であり得る。食事は、低炭水化物のカロリー制限食(低炭水化物は、上記の意味を有する)であり得る。食事は、バランスのとれた、カロリー制限食であり得る(例えば、主要栄養素の相対的な部分は、摂取される総カロリーがWMLを下回る場合には変動し得る)。一部の実施形態によると、低炭水化物食(炭水化物:45%、タンパク質:20%、および脂肪:35%)は、アトキンスダイエット(Atkins diet)、血糖インパクトダイエット(Glycemic Impact Diet)、サウスビーチダイエット(South Beach Diet)、シュガーバスターズダイエット(Sugar Busters Diet)、および/またはゾーンダイエット(Zone diet)のいずれかを含む。
【0121】
一部の実施形態によると、低脂肪食(炭水化物:65%、タンパク質:15%、脂肪:20%)は、ライフチョイスダイエット(Life Choice Diet)(オーニッシュダイエット(Ornish Diet))、プリティキンダイエット(Pritikin Diet)、および/または市販されている他の心臓によい食事のいずれかを含む。
【0122】
一部の実施形態によると、バランス食(炭水化物:55%、タンパク質:20%、脂肪:25%)は、ベストライフダイエット(Best Life Diet)、地中海ダイエット(Mediterranean Diet)、ソノマダイエット(Sonoma Diet)、ボリューメトリクスイーティングダイエット(Volumetrics Eating Diet)、ウェイトウォッチャーズダイエット(Weight Watchers Diet)のいずれかを含む。
【0123】
他の低炭水化物、低脂肪、バランス食およびカロリー制限食は当技術分野で周知であり、したがって、被験体の代謝遺伝子型およびカロリー制限または他の種類の食事に対する予測される反応に応じて被験体に推奨することができる。
【0124】
運動区分
運動区分は、被験体の代謝遺伝子型を前提として、被験体が運動に対してどのように反応するかを基準に一般的に分類される。例えば、被験体は軽い運動、中程度の運動、激しい運動、または非常に激しい運動に反応し得る。
【0125】
運動に反応する代謝遺伝子型を有する被験体は、身体活動に反応して効率的に体脂肪を分解することができる。これらの者は、運動に反応して有意に体重が減少する傾向があり、また当該体重減少を維持する可能性がより高い。被験体が軽いまたは中等度の運動に反応する場合、この分類に含まれる。
【0126】
運動に対する反応性が劣る代謝遺伝子型を有する被験体は、この者とは別の遺伝型を有する者よりも運動に反応して体脂肪をエネルギーに分解する能力が劣る。これらの者は、中程度の運動で期待される場合よりも体重および体脂肪の減少がより少ない傾向がある。このような被験体は、体脂肪をエネルギーや体重減少に変える分解を活性化させるためにより多くの運動を必要とする。これらの者は、減量を保つために継続的な運動プログラムも維持しなければならない。
【0127】
軽い活動とは、一般的に、1週間に1〜3日運動する(活動的なトレーニングまたはスポーツに関わる)被験体を指す。中程度の活動とは、一般的に、1週間に3〜5日運動する(活動的なトレーニングまたはスポーツに関わる)被験体を指す。激しい活動とは、一般的に、1週間に6〜7日運動する(活動的なトレーニングまたはスポーツに関わる)被験体を指す。非常に激しいまたは過酷な活動とは、一般的に、平均して1日1回を超えて(例えば1日当たり2回)運動する(活動的なトレーニングまたはスポーツに関わる)被験体を指す。通常の運動とは、少なくとも軽い運動、または少なくとも中程度の運動である活動を指す。
【0128】
より正確には、活動レベルはBMRに対する割合(%)として表され得る。例えば、Harris−BenedictまたはKatch−McArdle式の乗数が活動レベルを規定するための基準として利用可能である。したがって、軽い運動とは、被験体のTDEEを約125%のBMR(すなわち、約25%増加する)から約140%未満(例えば、約128%、130%、133%、135%、137.5%など)のBMRに高めるように設計された推奨活動レベルを指す。中程度の運動とは、被験体のTDEEを約140%のBMRから約160%未満(例えば、約142%、145%、150%、155%、158%など)のBMRに高めるように設計された推奨活動レベルを指す。激しい運動とは、被験体のTDEEを約160%のBMRから約180%未満(例えば、約162%、165%、170%、172.5%、175%、178%など)のBMRに高めるように設計された推奨活動レベルを指す。非常に激しいまたは過酷な運動とは、被験体のTDEEを約180%のBMRから約210%を超えた(例えば、約182%、185%、190%、195%、200%など)のBMRに高めるように設計された推奨活動レベルを指す。
【0129】
あるいは、一部の実施形態によると、「通常の運動」ルーチンは、1週間当たり2.5時間(150分間)の中程度の強度の活動(中程度の強度の活動は、3.0〜5.9METと定義される)を含み、「軽い運動」ルーチンは、1週間当たり2.5時間未満の中程度の強度の活動を含み、「活発な運動」ルーチンは、1週間当たり13METを超える強強度の活動(強強度の活動は、6MET以上と定義される)を含む。1METは、1時間当たり体重1kg当たり1カロリーと等しい。被験体が消費する総kcal=活動×kg単位の体重×時間単位の時間のMET値である。
【0130】
体重の増減は、摂取カロリーと消費カロリーとの間のバランスに左右される。摂取カロリー量が消費カロリー数を超える場合、体重増加が起こり得る。対照的に、摂取カロリーが消費カロリー数よりも少ない場合、体重減少が起こり得る。被験体のWMLとは、現在の体重を維持するために被験体が摂取する必要がある総カロリー摂取量を指す。被験体のWMLは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定または算出することができる。WMLは、多くの場合、1日の総エネルギー消費量(TDEE)または推定エネルギー必要量(EER)として表される。TDEEおよびEERの意味は、当技術分野で使用される場合、被験体の体重維持レベルを算出する様式を反映する技術的な違いを有し得るが、これらの用語は、それらの技術的な違いを維持しながら、それらの一般的な意味において互換的に使用することができる。WMLは、被験体のWMLを決定するために当技術分野で用いられる任意の方法(例えば、TDEEまたはEER)を使用して算出することができる。
【0131】
概して、米国の女性に関しては、WMLは1日当たり2000〜2100カロリーの間である。男性は平均してWMLが高く1日当たり2700〜2900カロリーである。TDEEを算出するための好ましい方法は、当業者に周知のHarris−Benedict計算またはKatch−McArdle式を使用することによる。簡単に述べると、Harris−Benedict式では、まず被験体の基礎代謝率(BMR)を決定し、次いでこれを活動レベルに基づいて調整し、被験体のTDEEをもたらす。例えば、女性のBMRは、次式に従って算出することができる:BMR=65.51+(9.563×kg)+(1.850×cm)−(4.676×年齢)。男性のBMRは、次式に従って算出することができる:BMR=66.5+(13.75×kg)+(5.003×cm)−(6.775×年齢)。次に、BMRに特定の活動レベルに割り当てられた乗数を掛けることによってBMRを調整する。下記の表はそのような乗数の例を提供する。結果は、被験体のTDEEである。
【0132】
【表4】

Katch&McArdle式は、被験体の除脂肪体重(LBM)に基づく。例えば、BMRは、次式に従って算出する:BMR(男性および女性)=370+(21.6×kg単位の除脂肪体重)。Katch−McArdle式は、LBMを説明するので、この単一の式は、男性および女性の両方に等しく適用される。次に、活動の乗数を、Harris−Benedict計算(上記の表)において使用したのと同様に使用してTDEEを決定する。
【0133】
分類
一般に、被験体の代謝遺伝子型は、1つの栄養区分および1つの運動区分に含まれ得る。したがって、いくつかの実施形態によれば、被験体は、その代謝遺伝子型に基づき1つの栄養区分、および1つの運動区分に分類されることとなる。例えば、被験体は下記6つの区分のうちの1つに分類可能である:1)脂肪制限に反応し、かつ運動に反応する;2)脂肪制限に反応し、かつ運動への反応性に劣る;3)炭水化物制限に反応し、かつ運動に反応する;4)炭水化物制限に反応し、かつ運動への反応性に劣る;5)脂肪および炭水化物がバランスしている、かつ運動に反応する;および6)脂肪および炭水化物がバランスしている、かつ運動への反応性に劣る。
【0134】
1)脂肪制限に反応し、かつ運動に反応する:この遺伝型を有する被験体は体内により多くの食物性脂肪を吸収し、代謝速度がより遅い。これらの者は体重増加傾向がより大きい。このような被験体は、総食物性脂肪を減らすことにより健康体重に達するまでの時間を容易に得ることが、臨床試験により明らかにされた。これらの者は、脂肪低減食、カロリー低減食に従うことにより、減量に成功する可能性がより高い。さらに、これらの者は、カロリー低減食中の飽和脂肪を単不飽和脂肪に置き換えることからベネフィットを得る。これと同様に食事を変更すれば、糖および脂肪を代謝する身体能力が改善することも、臨床試験により明らかにされた。
【0135】
この遺伝型を有する被験体は、身体活動に反応して体脂肪を効率的に分解することができる。これらの者は運動に反応して有意に体重が減少する傾向があり、当該体重減少を維持する可能性がより高い。かかる被験体は、少なくとも軽い運動、または少なくとも中程度の運動などの任意のレベルで活動を増加させることからベネフィットを得ることができる。
【0136】
2)脂肪制限に反応し、かつ運動への反応性に劣る−この遺伝型を有する被験体は体内により多くの食物性脂肪を吸収し、代謝速度がより遅い。これらの者は体重増加傾向がより大きい。このような被験体は、総食物性脂肪を減らすことにより健康体重に達するまでの時間を容易に得ることが、臨床試験により明らかにされた。これらの者は、脂肪低減食、カロリー低減食に従うことにより、体重減少に成功する可能性がより高い。さらに、これらの者は、カロリー低減食中の飽和脂肪を単不飽和脂肪に置き換えることからベネフィットを得る。これと同様に食事を変更すれば、糖および脂肪を代謝する身体能力が改善することも、臨床試験により明らかにされた。
【0137】
この遺伝型を有する被験体は、この者とは別の遺伝型を有する者よりも、運動に反応して体脂肪を分解してエネルギーに変える能力が劣る。これらの者は、中程度の運動で期待される場合よりも体重および体脂肪の減少が少ない傾向がある。このような被験体は、体脂肪をエネルギーや体重減少に変える分解を活性化するためにより多くの運動を必要とする。これらの者は、減量を保つために継続的な運動プログラムも維持しなければならない。
【0138】
3)炭水化物制限に反応し、かつ運動に反応する−この遺伝型を有する被験体は、炭水化物の過剰摂取に起因する体重増加に対して感受性がより高い。これらの者は、カロリー低減食中の炭水化物を減少させることにより体重減少に成功する可能性がより高い。このような遺伝型を有する被験体は、肥満になりやすく、これらの者の1日当たりの炭水化物摂取量が、総カロリーの49%を上回る場合には、血糖値制御に困難が伴う。炭水化物を低減すれば、血糖制御が最適化され、さらなる体重増加のリスクが低下することが明らかにされている。これらの者の食事に飽和度が高く、単不飽和度の低い脂肪が含まれ、これらの者がこれを摂取する場合には、体重増加および血糖が上昇するリスクが高まる。総カロリーを制限しながら、このような被験体は、総炭水化物摂取量を制限し、またその食事の脂肪組成を単不飽和脂肪にシフトすれば、こうしたことからベネフィットを得ることができる。
【0139】
この遺伝型を有する被験体は、身体活動に反応して体脂肪を効果的に分解することができる。これらの者は運動に反応して有意に体重が減少する傾向があり、当該体重減少を維持する可能性がより高い。
【0140】
4)炭水化物制限に反応し、かつ運動への反応性に劣る−この遺伝型を有する被験体は、炭水化物の過剰摂取に起因する体重増加に対して感受性がより高い。これらの者は、カロリー低減食中の炭水化物を減少させることにより体重減少に成功する可能性がより高い。このような遺伝型を有する被験体は、肥満になりやすく、これらの者の1日当たりの炭水化物摂取量が、総カロリーの49%を上回る場合には、血糖値制御に困難が伴う。炭水化物を低減すれば、血糖制御が最適化され、さらなる体重増加のリスクが低下することが明らかにされている。これらの者の食事に飽和度が高く、単不飽和度の低い脂肪が含まれ、これらの者がこれを摂取する場合には、体重増加および血糖が上昇するリスクが高まる。総カロリーを制限しながら、このような被験体は、総炭水化物摂取量を制限し、またその食事の脂肪組成を単不飽和脂肪にシフトすれば、こうしたことからベネフィットを得ることができる。
【0141】
この遺伝型を有する被験体は、この者とは別の遺伝型を有する者よりも、運動に反応して体脂肪を分解してエネルギーに変える能力が劣る。これらの者は、中程度の運動で期待される場合よりも体重および体脂肪の減少が少ない傾向がある。このような被験体は、体脂肪をエネルギーや体重減少に変える分解を活性化するためにより多くの運動を必要とする。これらの者は、減量を保つために継続的な運動プログラムも維持しなければならない。
【0142】
5)脂肪および炭水化物がバランスしている、かつ運動に反応する−この遺伝型を有する被験体は、低脂肪食または低炭水化物食を継続して必要としないことが判明している。このような被験体では、主要なバイオマーカー、例えば体重、体脂肪、および血漿脂肪プロファイルなどは、脂肪および炭水化物についてバランスがとれた食事によく反応する。体重減少に関心を寄せるこの遺伝型を有する被験体では、カロリーの制限されたバランス食が体重減少を促進し、体脂肪を低下させることが判明している。
【0143】
この遺伝型を有する被験体は、身体活動に反応して体脂肪を効率的に分解することができる。これらの者は運動に反応して有意に体重が減少する傾向があり、当該体重減少を維持する可能性がより高い。
【0144】
6)脂肪および炭水化物がバランスしている、かつ運動への反応性に劣る−この遺伝型を有する被験体は、低脂肪食または低炭水化物食を継続して必要としないことが判明している。このような被験体では、主要なバイオマーカー、例えば体重、体脂肪、および血漿脂肪プロファイルなどは、脂肪および炭水化物についてバランスがとれた食事によく反応する。体重減少に関心を寄せるこの遺伝型を有する被験体では、カロリーの制限されたバランス食が体重減少および体脂肪の低下を促進することが判明している。
【0145】
この遺伝型を有する被験体は、この者とは別の遺伝型を有する者よりも、運動に反応して体脂肪を分解してエネルギーに変える能力が劣る。これらの者は、中程度の運動で期待される場合よりも体重および体脂肪の減少が少ない傾向がある。このような被験体は、体脂肪をエネルギーや体重減少に変える分解を活性化するためにより多くの運動を必要とする。これらの者は、減量を保つために継続的な運動プログラムも維持しなければならない。
【0146】
栄養推奨および運動推奨に加えて、個人的な治療/食事計画には、栄養補助食品(dietary supplement)、食品補助剤、または機能性食品(nutraceutical)に関する推奨も含まれ得る。「機能性食品」とは、その栄養上のベネフィット以外の追加のベネフィットをもたらす任意の機能的食品である。この区分には、健康ドリンク、ダイエット飲料(例えば、Slimfast(商標)など)の他、スポーツハーバル(sports herbal)、およびその他の栄養強化飲料が含まれ得る。
【0147】
キット
一部の実施形態によると、試薬(オリゴヌクレオチド、塩、酵素、緩衝液など)およびキットを使用するための説明書を含む、被験体の代謝遺伝子型を検出するためのキットが提供される。
【0148】
一部の実施形態によると、キットは、これに限定されないが、唾液を収集するための綿棒を含めた試料収集手段、収集した試料を貯蔵するため、および輸送するための貯蔵手段を含む。キットは、どのように試料を収集し、試料を輸送するかについての説明書、および試料DNAから引き出された遺伝子型の情報を判定し、その情報を治療的な/食事性のまたは生活様式推奨に換算するための手段を伴うCD、またはCD−ROMをさらに含む。遺伝子型パターンは、コンピュータネットワークおよびインターネットを介して蓄積、伝達および提示することができる。治療的な/食事性のおよび生活様式推奨としては、それらに限定されないが、本発明に記載のものが挙げられる。
【0149】
対立遺伝子の検出
対立遺伝子パターン、多型パターン、またはハプロタイプパターンは、任意の様々な利用可能な技法を用いて任意の成分対立遺伝子を検出することにより識別可能であり、これには1)核酸試料、および対立遺伝子にハイブリダイズする能力を有するプローブ間のハイブリダイゼーション反応の実施;2)少なくとも対立遺伝子の一部の配列決定;3)対立遺伝子またはその断片(例えば、エンドヌクレアーゼ消化により生成する断片)を電気泳動したときの移動度の決定が含まれる。対立遺伝子は、検出ステップを実施する前に、任意選択により増幅ステップの被験体となり得る。好ましい増幅法は、下記事項から構成される群より選択される:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、クローニング、および上記変法(例えば、RT−PCR、および対立遺伝子特異的増幅)。増幅に必要なオリゴヌクレオチドは、例えば目的のマーカー(PCR増幅に必要な)に隣接する、またはマーカー(対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーションで用いられるような)に直接重複する、いずれか一方の代謝遺伝子座内から選択可能である。特に好ましい実施形態では、試料は一連のプライマーを用いてハイブリダイズされるが、同プライマーは、血管疾患関連対立遺伝子に対するセンスまたはアンチセンス配列内の5’および3’にハイブリダイズし、またPCR増幅の対象となる。
【0150】
また、対立遺伝子は、例えばDNAがコードするタンパク質生成物を分析することにより間接的に検出することも可能である。例えば、問題のマーカーが突然変異タンパク質の翻訳を引き起こす場合には、当該タンパク質は、任意の様々なタンパク質検出法により検出可能である。かかる方法として、免疫検出および生化学試験、例えばサイズ分画が挙げられ、この場合、当該タンパク質にはトランケーション、エロンゲーション、フォールディングの変化、翻訳後修飾の変化のいずれかにより、見掛けの分子量に変化が生じている。
【0151】
独特なヒト染色体ゲノム配列を増幅するためのプライマーを設計する一般的な指針として、当該プライマーは少なくとも約50℃の融点を有することが挙げられ、この場合、およその融点は、式Tmelt=[2×(AまたはTの数)+4×(GまたはCの数)]を用いて見積もることができる。
【0152】
多くの方法がヒト多型座に存在する特定の対立遺伝子を検出するために利用可能である。特定の多型対立遺伝子を検出するための好ましい方法は、多型の分子的性状に部分的に依存する。例えば、多型座の様々な対立遺伝子の形態は、DNAのうちの1つの塩基対によって変化し得る。かかる一塩基多型(またはSNP)は、遺伝的変異に対する主要な寄与因子であり、公知の全多型のうち80%程を占め、またヒトゲノム中のそれらの密度は1,000塩基対に対して平均1つ存在すると見積もられている。SNPは、両対立遺伝子に生じるのが最も頻繁であるが、2つの異なる形態しか存在しない(DNAに生じている4つの異なるヌクレオチド塩基に対応して、SNPには最大4つの異なる形態が理論的に可能である)。しかしながら、SNPは突然変異の観点からは他の多型よりも安定であり、疾患原因の突然変異をマッピングするためにマーカーと未知の変異体との間の連鎖不均衡が用いられる関連試験に適するものとしている。さらに、SNPは一般的に2つの対立遺伝子しか有さないので、長さ測定するのではなく、単純なプラス/マイナスアッセイによりSNPの遺伝子型を決定することができ、自動化により適するものとしている。
【0153】
様々な方法が、被験体内にある特定の一塩基多型対立遺伝子の存在を検出するために利用可能である。この分野の進歩により、正確、簡便、および安価な大スケールのSNP遺伝子型決定法がもたらされた。ごく最近、例えば、いくつかの新規技法が記載されているが、これには、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的連結反応、TaqManシステム、ならびにAffymetrix SNPチップのような様々なDNA「チップ」技術が含まれる。これらの方法は、一般的にはPCRによる、標的遺伝子領域の増幅を必要とする。なおも新規に開発されたその他の方法は、侵襲的開裂による小型のシグナル分子の生成と、これに続く質量分析、または固定化パッドロックプローブおよびローリングサークル増幅法に基づくが、同方法は最終的にPCRの必要性を無くすと考えられる。特定の一塩基多型を検出するための当技術分野で公知のいくつかの方法を、下記に要約する。本発明の方法は、利用可能な全ての方法を含むものと理解される。
【0154】
いくつかの方法が、一塩基多型の分析に役立つように開発されている。1つの実施形態では、一塩基多型は、例えば、Mundy、C.R.(米国特許第4,656,127号)に開示されるように、専用のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを用いることにより検出可能である。当該方法によれば、多型部位に対して直近3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーは、特定の動物またはヒトから得られた標的分子とハイブリダイズすることができる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体と相補的であるヌクレオチドを含む場合には、当該誘導体はハイブリダイズしたプライマーの末端に組み込まれる。かかる組込みによって、プライマーはエキソヌクレアーゼに対して耐性を有するようになり、これによりその検出が可能になる。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性は公知であるので、プライマーがエキソヌクレアーゼ耐性となったことを把握すれば、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に用いられたヌクレオチド誘導体のヌクレオチドと相補的であったことが明らかとなる。この方法は、大量の無関係な配列データについて決定を必要としないという利点を有する。
【0155】
本発明の別の実施形態では、多型部位のヌクレオチドの同一性を判定するために溶液ベースの方法が用いられる。Cohen, D.ら(フランス国特許第2,650,840号;PCT国際出願特許WO91/02087)。米国特許第4,656,127号のMundy法の場合と同様に、多型部位に対して直近3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーが用いられる。当該方法は、標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を用いて当該部位のヌクレオチドの同一性を判定するが、同誘導体が多型部位のヌクレオチドと相補的である場合には、当該誘導体はプライマーの末端に組み込まれることとなる。
【0156】
遺伝子ビット分析、またはGBA(商標)として公知の別の方法が、Goelet, P.らによって記載されている(PCT国際公開特許WO92/15712)。Goelet, P.らの方法は、標識されたターミネーターと、多型部位に対して3’側にある配列に相補的なプライマーとの混合物を使用する。したがって、組み込まれる標識されたターミネーターは、評価対象となる標的分子の多型部位内に存在するヌクレオチドによって判定され、また同ヌクレオチドと相補的である。Cohenらの方法(フランス国特許第2,650,840号;PCT国際公開特許WO91/02087)とは対照的に、Goelet, P.らの方法は、好ましくは不均一相アッセイであり、そこではプライマーまたは標的分子は固相に固定化される。
【0157】
近年、DNA中の多型部位を分析するための、いくつかのプライマー誘導型ヌクレオチド組込み手順が記載されている(Komher, J.S.ら、Nucl. Acids. Res.、第17巻:7779〜7784頁(1989年);Sokolov, B. P.、Nucl. Acids. Res.、第18巻:3671頁(1990年);Syvanen, A.−C.ら、Genomics、第8巻:684〜692頁(1990年);Kuppuswamy, M. N.ら、Proc. Natl. Acad. Sci.(米国)、第88巻:1143〜1147頁(1991年);Prezant, T. R.ら、Hum. Mutat.、第1巻:159〜164頁(1992年);Ugozzoli, L.ら、GATA、第9巻:107〜112頁(1992年);Nyren, P.ら、Anal. Biochem.、第208巻:171〜175頁(1993年))。これらの方法は、それら全てが多型部位にある塩基と塩基とを区別するのに標識されたデオキシヌクレオチドの組込みに依存する点でGBA(商標)と異なる。かかるフォーマットでは、シグナルは組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同一ヌクレオチドの一連として生ずる多型は、その一連の長さに比例するシグナルを生じ得る(Syvanen, A.−C.ら、Amer. J. Hum. Genet.、第52巻:46〜59頁(1993年))。
【0158】
タンパク質の翻訳を早期に終了させるような突然変異の場合、短縮タンパク質試験(PTT)が効率的な診断アプローチを提供する(Roestら、(1993年)Hum. Mol. Genet.、第2巻:1719〜21頁;van der Luijtら、(1994年)Genomics、第20巻:1〜4頁)。PTTの場合、RNAが利用可能な組織から最初に単離され、および逆転写され、また目的のセグメントがPCRによって増幅される。逆転写PCR生成物は、次いで、RNAポリメラーゼプロモーター、および真核細胞の翻訳を開始させるための配列を含むプライマーを用いたネスト化PCR増幅用の鋳型として用いられる。対象領域の増幅後、プライマーに組み込まれた特有のモチーフによって、PCR生成物の連続的なin vitro転写および翻訳が可能となる。翻訳生成物のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った際に、短縮されたポリペプチドが出現すれば、それは翻訳の早期終了を引き起こす突然変異の存在を示唆する。この方法の変法では、対象となる標的領域が1つのエクソンに由来する場合には、DNA(RNAでなく)がPCR鋳型として用いられる。
【0159】
任意の細胞型または組織が、本明細書に記載する診断で用いられる核酸試料を得るために利用可能である。好ましい1つの実施形態では、DNA試料は、体液、例えば公知の技法(例えば、静脈穿刺)により得られる血液、または唾液から採取される。あるいは、核酸試験は、乾燥試料(例えば、毛髪または皮膚)について実施可能である。RNAまたはタンパク質を用いる場合、利用することのできる細胞または組織は、対象とする代謝遺伝子を発現しなければならない。
【0160】
また、診断手順は、核酸の精製が不要であるように、生検または切除物から得られた患者組織の組織切片(固定化および/または凍結された)に対してin situで直接実施可能である。核酸試薬が、かかるin situ手順のために、プローブおよび/またはプライマーとして使用可能である(例えば、Nuovo, G. J.、1992年、PCR in situ hybridization: protocols and applications、 Raven Press、 NYを参照)。
【0161】
1つの核酸配列の検出に主に重点が置かれる方法に加えて、プロファイルもかかる検出スキームで評価可能である。フィンガープリントプロファイルが、例えば、差次的発現手順、ノーザン分析、および/またはRT−PCRを利用することにより作製可能である。
【0162】
好ましい検出方法として、代謝遺伝子またはハプロタイプの少なくとも1つの対立遺伝子の領域と重なり合い、また約5、10、20、25、または30個のヌクレオチドを突然変異または多型領域の周辺に有するプローブを用いる、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションが挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、主要な代謝遺伝子のその他の対立遺伝子変異体と特異的にハイブリダイズする能力を有するいくつかのプローブが、例えば「チップ」(最大約250,000オリゴヌクレオチドを保持することができる)などの固相支持体に結合している。オリゴヌクレオチドは、リトグラフィーを含む様々なプロセスによって固相支持体に結合させることができる。オリゴヌクレオチドを含む、「DNAプローブアレイ」とも称されるかかるチップを用いた突然変異検出分析法は、例えば、Croninら(1996年)Human Mutation、第7巻:244頁に記載されている。1つの実施形態では、1つのチップは、ある遺伝子の少なくとも1つの多型領域に関する全ての対立遺伝子変異体を含む。固相支持体は、次に試験核酸と接触し、特異的プローブとのハイブリダイゼーションが検出される。したがって、1つまたは複数の遺伝子に関する多数の対立遺伝子変異体の同一性は、単純なハイブリダイゼーション実験で同定可能である。
【0163】
また、これらの技法は、分析前に核酸を増幅するステップも含み得る。増幅技法は当業者にとって公知であり、クローニング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、特異的対立遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(ASA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ネスト化ポリメラーゼ連鎖反応、自家持続配列複製法(Guatelli, J. C.ら、1990年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第87巻:1874〜1878頁)、転写増幅システム(Kwoh, D. Y.ら、1989年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第86巻:1173〜1177頁)、およびQ−ベータレプリカーゼ(Lizardi, P. M.ら、1988年、Bio/Technology、第6巻:1197頁)が含まれるが、但しこれらに限定されない。
【0164】
増幅生成物は、サイズ分析、制限酵素消化とこれに続くサイズ分析、反応生成物中のタグ標識された特定のオリゴヌクレオチドプライマーの検出、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的5’エキソヌクレアーゼ検出、配列決定、ハイブリダイゼーションなどを含む様々な方法で分析可能である。
【0165】
PCRに基づく検出手段は、複数のマーカーを同時に多重増幅するステップを含み得る。例えば、サイズが重複せず、同時に分析可能なPCR生成物が生み出されるように、PCRプライマーを選択することは当技術分野で周知である。あるいは、個別に標識され、したがってそれぞれ個別に検出可能なプライマーを有する異なるマーカーを増幅することが可能である。もちろん、ハイブリダイゼーションに基づく検出手段は、1つの試料中の複数のPCR生成物を個別に検出可能にする。複数のマーカーの多重分析を可能にするその他の技法が当技術分野で公知である。
【0166】
もっぱら例示的な実施形態では、方法には、(i)患者から細胞の試料を収集するステップ、(ii)核酸(例えば、ゲノム核酸、mRNAまたは両方)を試料の細胞から単離するステップ、(iii)核酸試料を、代謝遺伝子またはハプロタイプの少なくとも1つの対立遺伝子に対して、5’および3’側で特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマーと、対立遺伝子のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こる条件下で接触させるステップ、および(iv)増幅生成物を検出するステップが含まれる。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、かかる分子が非常に少ない数で存在する場合に特に有用である。
【0167】
対象の分析に関する好ましい実施形態では、代謝遺伝子またはハプロタイプの対立遺伝子は、制限酵素による開裂パターンが変化することによって同定される。例えば、試料DNAおよび対照DNAが単離され、増幅され(任意選択により)、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼで消化され、そして断片の長さがゲル電気泳動によって決定される。
【0168】
さらに別の実施形態では、当技術分野で公知である任意の様々な配列決定反応を用いて直接的に対立遺伝子を配列決定することができる。典型的な配列決定反応として、MaximおよびGilbert((1977年)、Proc. Natl Acad Sci USA、第74巻:560頁)、またはSanger(Sangerら、(1977年)、Proc. Nat. Acad. Sci USA、第74巻:5463頁)によって開発された技法に基づくものが挙げられる。質量分析による配列決定(例えば、PCT国際公開特許WO94/16101;Cohenら、(1996年)Adv Chromatogr、第36巻:127〜162頁;およびGriffinら、(1993年)Appl Biochem Biotechnol、第38巻:147〜159頁を参照)を含む、対象の分析(例えば、Biotechniques(1995年)、第19巻:448頁を参照)を実施する場合、様々な任意の自動化された配列決定手順が利用可能であることも検討される。特定の実施形態において、核酸塩基のうち1つ、2つ、または3つのみの出現が配列決定反応で決定される必要があることは当業者にとって明らかである。例えば、1つの核酸のみが検出される、例えばA−トラック(A−track)などが実施可能である。
【0169】
さらなる実施形態では、開裂試薬(例えば、ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン、または四酸化オスミウム、およびピペリジンにより)から保護することが、RNA/RNA、またはRNA/DNA、またはDNA/DNAヘテロ二本鎖中のミスマッチ塩基を検出するのに利用可能である(Myersら、(1985年)Science、第230巻;1242頁)。一般的に、「ミスマッチ開裂」技法は、野生型対立遺伝子を含む(標識された)RNAまたはDNAを試料とハイブリダイズすることによって形成されたヘテロ二本鎖を得ることから始まる。二重らせん構造の二本鎖は、対照のらせん構造と試料のらせん構造との間の塩基対ミスマッチに起因して存在するような、二本鎖の一本鎖らせん構造領域を開裂する試薬で処理される。例えば、ミスマッチ領域を酵素的に消化するために、RNA/DNA二本鎖はRNaseで処理可能であり、またDNA/DNAハイブリッドはS1ヌクレアーゼで処理可能である。別の実施形態では、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNA二本鎖はヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウム、またはピペリジンを用いて処理可能である。ミスマッチ領域の消化後、得られた物質は次に、突然変異の部位を決定するために、変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分離される。例えば、Cottonら(1988年)、Proc. Natl Acad Sci USA、第85巻:4397頁;およびSaleebaら(1992年)、Methods Enzymol.、第217巻:286〜295頁を参照。好ましい実施形態では、対照DNAまたはRNAは検出するために標識可能である。
【0170】
なおも別の実施形態では、ミスマッチ開裂反応は、二重らせん構造のDNA中のミスマッチ塩基対を認識する1つまたは複数のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を利用する。例えば、E.coliのmutY酵素は、G/AミスマッチにおいてAを開裂させ、およびHeLa細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチにおいてTを開裂させる(Hsuら(1994年)、Carcinogenesis、第15巻:1657〜1662頁)。典型的な実施形態によれば、代謝遺伝子座ハプロタイプの対立遺伝子に基づくプローブは、試験細胞(複数可)由来のCDNAまたは他のDNA生成物とハイブリダイズされる。当該二本鎖はDNAミスマッチ修復酵素で処理され、開裂生成物はもしあれば電気泳動プロトコールなどから検出可能である。例えば、米国特許第5,459,039号を参照。
【0171】
他の実施形態では、電気泳動移動度における変化が、代謝遺伝子座対立遺伝子を同定するのに用いられる。例えば、一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)が、突然変異の核酸と野生型の核酸との間の電気泳動移動度の差異を検出するのに利用可能である(Oritaら(1989年)、Proc Natl. Acad. Sci USA、第86巻:2766頁、Cotton(1993年)、Mutat Res、第285巻:125〜144頁、およびHayashi(1992年)、Genet Anal Tech Appl、第9巻:73〜79頁も参照)。試料および対照の代謝遺伝子座対立遺伝子の一本鎖らせん構造のDNA断片は変性され、復元するように放置される。一本鎖らせん構造の核酸の二次構造は配列によって異なり、これに起因する電気泳動移動度の変化は、一塩基変化さえも検出を可能にする。当該DNA断片は標識可能、または標識プローブで検出可能である。アッセイ感度は、二次構造が配列に生じた変化に対してより感受性が高いRNA(DNAでなく)を用いることによって強化することができる。好ましい実施形態では、電気泳動移動度の変化に基づき二重らせん構造のヘテロ二本鎖分子を分離するために、対象方法はヘテロ二本鎖分析法を利用する(Keenら(1991年)、Trends Genet、第7巻:5頁)。
【0172】
なおも別の実施形態では、変性剤のグラジエントを含むポリアクリルアミドゲル中の対立遺伝子の移動を、変性グラジエントゲル電気泳動法(DGGE)を用いて分析する(Myersら(1985年)、Nature、第313巻:495頁)。DGGEを分析方法として用いる場合、DNAが完全には変性しないことを保証するために、例えばPCRによって約40bpからなる高融点のGCに富んだDNAのGCクランプを付加することにより修飾される。さらなる実施形態では、対照DNAと検体DNAの移動度の差異を識別するために、変性剤グラジエントの代わりに温度グラジエントが用いられる(RosenbaumおよびReissner(1987年)、Biophys Chem、第265巻:12753頁)。
【0173】
対立遺伝子を検出するためのその他の技法の例として、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法、選択的増幅法、または選択的プライマー伸長法が挙げられるが、但しこれらに限定されない。例えば、公知の突然変異またはヌクレオチドの相違(例えば、対立遺伝子変異体における)が中央に置かれたオリゴヌクレオチドプライマーが作製可能であり、次いで完全マッチが判明した場合に限りハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、標的DNAとハイブリダイズ可能である(Saikiら(1986年)、Nature、第324巻:163頁;Saikiら(1989年)、Proc. Natl Acad. Sci USA、第86巻:6230頁)。かかる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技法は、オリゴヌクレオチドがPCRで増幅された標的DNA、またはいくつかの異なる突然変異、または多型領域とハイブリダイズする場合において、当該オリゴヌクレオチドがハイブリダイジング膜に結合しており、標識された標的DNAとハイブリダイズするとき、1つの反応毎に1つの突然変異または多型領域を試験するために利用可能である。
【0174】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術を本発明に関連して利用可能である。特異的増幅のためにプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、対象とする突然変異または多型領域を分子の中心に(増幅が差示的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbsら(1989年)、Nucleic Acids Res.、第17巻:2437〜2448頁)、または適当な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を阻止し得る、または低減し得る1つのプライマーの3’側の最端部に(Prossner(1993年)、Tibtech、第11巻:238頁)担持し得る。さらに、開裂に基づく検出を作り出すために、突然変異の領域に新規制限部位を導入することが望ましい場合がある(Gaspariniら(1992年)、Mol. Cell Probes、第6巻:1頁)。特定の実施形態では、増幅は増幅用のTaqリガーゼを用いて実施することも可能であると予想される(Barany(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci USA、第88巻:189頁)。そのような場合には、5’配列の3’末端で完全な一致が存在する場合に限りライゲーション反応は起こるので、増幅の有無を調査すれば、かかる反応により特定部位にある公知の突然変異の存在について検出が可能となる。
【0175】
別の実施形態では、対立遺伝子変異体の同定は、例えば米国特許第4,998,617号、およびLandegren, U.ら((1988年)、Science、第241巻:1077〜1080頁)に記載されるように、オリゴヌクレオチドライゲーション反応分析法(OLA)を用いて実施される。OLAプロトコールは、標的となる一本鎖の隣接する配列とハイブリダイズする能力を有するように設計される2種類のオリゴヌクレオチドを用いる。1つのオリゴヌクレオチドは、例えばビオチニル化物などの分離マーカーと結合しており、もう1つは検出可能に標識されている。標的分子中に正確な相補的配列が見いだされる場合には、オリゴヌクレオチドはそれらの末端部が隣接するようにハイブリダイズし、ライゲーション反応の基質を形成する。ライゲーション反応は、次にアビジンまたは別のビオチンリガンドを用いて、標識されたオリゴヌクレオチドが回収されることを可能にする。Nickerson, D.A.らは、PCRおよびOLAの特性を組み合わせた核酸検出分析法を記載している(Nickerson, D. A.ら(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第87巻:8923〜27頁)。この方法では、標的DNAの指数的増幅を実現するためにPCRが用いられており、標的DNAは、次にOLAを用いて検出される。
【0176】
かかるOLA法に基づくいくつかの技法が開発されており、代謝遺伝子座ハプロタイプの対立遺伝子の検出に利用可能である。例えば、米国特許第5,593,826号は、アミドリン酸エステル結合を有するコンジュゲートを形成するために、3’−アミノ基を有するオリゴヌクレオチド、および5’−リン酸化オリゴヌクレオチドを用いるOLAを開示する。Tobeらの((1996年)、Nucleic Acids Res、第24号:3728頁)に記載するOLAの別の変法では、PCRと組み合わせたOLAにより1つのマイクロタイターウェル内で2つの対立遺伝子のタイピングが可能になる。各対立遺伝子特異的プライマーを独特のハプテン、すなわちジゴキシゲニンおよびフルオレセインで標識することにより、各OLA反応は、異なる酵素レポーターであるアルカリホスファターゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたハプテン特異的抗体を用いることにより検出可能となる。このシステムは、2つの異なる色を発色させるハイスループットフォーマットを用いて、2つの対立遺伝子の検出を可能にする。
【0177】
別の態様では、本発明は、上記のアッセイを実施するためのキットを特徴とする。一部の実施形態によると、本発明のキットは、1つまたは複数の代謝に関わる遺伝子に関する被験体の遺伝子型を決定するための手段を含んでよい。キットは、核酸試料の収集手段も含有してよい。キットは、陽性もしくは陰性いずれかの対照試料または標準物質ならびに/または結果を評価するためのアルゴリズムデバイス、ならびに、DNA増幅試薬、DNAポリメラーゼ、核酸増幅試薬、制限酵素、緩衝液、核酸試料採取デバイス、DNA精製デバイス、デオキシヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば プローブおよびプライマー)などを含めた追加的な試薬および成分も含有してよい。
【0178】
キットに使用するためのオリゴヌクレオチドは、合成オリゴヌクレオチド、制限断片、cDNA、合成ペプチド核酸(PNA)などの任意の種々の天然の組成物および/または合成の組成物であってよい。アッセイキットおよび方法では、アッセイにおける同定を容易にするために、標識されたオリゴヌクレオチドを用いることもできる。使用することができる標識の例としては、放射性標識、酵素、蛍光化合物、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、磁性部分、金属結合性部分、抗原部分または抗体部分などが挙げられる。
【0179】
上記の通り、対照は、陽性対照または陰性対照であってよい。さらに、対照試料は、使用した対立遺伝子検出技法の陽性(または陰性)の産物を含有し得る。例えば、対立遺伝子検出技法がPCR増幅、それに続くサイズ分画である場合、対照試料は、適切なサイズのDNA断片を含み得る。同様に、対立遺伝子検出技法が、突然変異したタンパク質を検出することを含む場合、対照試料は、突然変異したタンパク質の試料を含み得る。しかし、対照試料は、試験される材料を含むことが好ましい。例えば、対照は、ゲノムDNAの試料または代謝に関わる遺伝子のクローニングされた部分であってよい。しかし、試験される試料がゲノムDNAである場合、対照試料は、高度に精製されたゲノムDNAの試料であることが好ましい。
【0180】
前記キット内に存在するオリゴヌクレオチドは、対象の領域を増幅するため、または対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を問題のマーカーに直接ハイブリダイズさせるために使用することができる。したがって、オリゴヌクレオチドは、対象のマーカー(PCR増幅に必要な)に隣接するか、またはマーカーと直接オーバーラップするか(ASOハイブリダイゼーションの場合と同様に)のいずれかであってよい。
【0181】
本明細書に記載のアッセイおよびキットを使用して得られる情報(単独でまたは変形性関節症に寄与する別の遺伝子的欠陥または環境因子に関する情報と併せて)は、無症候性の被験体が特定の疾患または状態を有するかどうか、またはそれが発生する可能性があるかどうかを決定するために有用である。さらに、この情報により、疾患または状態の発症または進行を予防するための、よりカスタマイズされた手法が可能になる。例えば、この情報により、臨床医が疾患または状態の分子基盤に対処する療法をより有効に処方することが可能になる。
【0182】
キットは、場合によって、DNA試料採取手段も含んでよい。DNA試料採取手段は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、ろ紙、AmpliCard(商標)(University of Sheffield、Sheffield、England S10 2JF;Tarlow、J Wら、J. of Invest. Dermatol. 103巻:387〜389頁(1994年))などの基材;DNA精製試薬、例えばNucleon(商標)キット、溶解緩衝液、プロテイナーゼ溶液など;PCR試薬、例えば10×反応緩衝液、熱安定ポリメラーゼ、dNTPなど;および対立遺伝子検出手段、例えばHinfI制限酵素、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、乾燥血液由来のネステッドPCR用の縮退オリゴヌクレオチドプライマーなどを含んでよい。
【0183】
本発明の別の実施形態は、特定の食事および/または活動レベルに対する反応性についての素因を検出するためのキットを対象とする。このキットは、代謝に関わる遺伝子座またはハプロタイプの少なくとも1つの対立遺伝子の5’および3’にハイブリダイズする5’オリゴヌクレオチドおよび3’オリゴヌクレオチドを含めた1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含有してよい。PCR増幅オリゴヌクレオチドは、その後の分析のために都合のよいサイズのPCR産物をもたらすために、25塩基対から2500塩基対の間離れてハイブリダイズするべきであり、約100塩基から約500塩基の間離れることが好ましい。
【0184】
【表5】

ヒトFABP2遺伝子座を含むヒト染色体4q28〜q31から得られた最新の配列情報、およびこの遺伝子座について入手可能な最新のヒト多型情報の、両方が利用可能であれば、これにより、本発明の方法で代謝遺伝子多型対立遺伝子の増幅用および検出用として用いられるさらなるオリゴヌクレオチドの設計に役立つ。代謝遺伝子中のヒト多型を検出するための適するプライマーは、この配列情報およびプライマー配列を設計および最適化するための当技術分野で公知の標準的な技法を用いて容易に設計可能である。かかるプライマー配列の最適設計は、例えばPrimer2.1、Primer3、またはGeneFisherなどの市販のプライマー選択プログラムを使用することにより実現可能である(Nicklin M. H. J.、Weith A. Duff G. W.、「A physical Map of the Region Encompassing the Human Interleukin−1α, Interleukin−1β, and Interleukin−1 Receptor Antagonist Genes」、Genomics、第19巻:382頁(1995年);Nothwang H.G.ら、「Molecular Cloning of the Interleukin−1 gene Cluster:Construction of an Integrated YAC/PAC Contig and a partial transcriptional Map in the Region of Chromosome 2q13」、Genomics、第41巻:370頁(1997年);Clarkら、(1986年)、Nucl. Acids. Res.、第14巻:7897〜7914頁[Nucleic Acids Res.、第15巻:868頁(1987年)、およびゲノムデータベース(GDB)プロジェクトに訂正あり]も参照)。
【0185】
別の態様では、本発明の特徴として、上記アッセイを実施するためのキットが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、本発明のキットは、1つまたは複数の代謝遺伝子について被験体の遺伝子型を決定するための手段を含む。キットは、核酸試料収集手段も含み得る。また当該キットは、陽性もしくは陰性のいずれかの対照試料、または標準物質、および/または結果を評価するためのアルゴリズムデバイス、ならびにDNA増幅試薬、DNAポリメラーゼ、核酸増幅試薬、制限酵素、バッファー、核酸サンプリングデバイス、DNA精製デバイス、デオキシヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、プローブおよびプライマー)等を含む追加の試薬および成分も含み得る。
【0186】
キットで使用する場合、オリゴヌクレオチドは、例えば合成オリゴヌクレオチド、制限断片、cDNA、合成ペプチド核酸(PNA)などの任意の様々な天然および/または合成の組成物であり得る。また、アッセイキットおよび方法は、分析において同定を容易にするために、標識されたオリゴヌクレオチドを用いることもできる。利用可能な標識の例として、放射性標識、酵素、蛍光化合物、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、磁性部分、金属結合部分、抗原または抗体部分などが挙げられる。
【0187】
上記のように、対照は陽性であっても、または陰性であってもよい。さらに、対照は、採用された対立遺伝子検出技法の陽性(または陰性)生成物を含み得る。例えば、対立遺伝子検出技法がPCR増幅とこれに続くサイズ分画である場合、対照試料は適するサイズのDNA断片を含み得る。同様に、対立遺伝子検出技法が突然変異したタンパク質の検出を含む場合には、対照試料は突然変異タンパク質試料を含み得る。しかし、対照試料は試験対象物質を含むのが好ましい。例えば、対照はゲノムDNAまたは代謝遺伝子のクローン化された部分からなる試料であり得る。しかし、試験対象試料がゲノムDNAの場合、対照試料は高度に精製されたゲノムDNAの試料であるのが好ましい。
【0188】
前記キット内に存在するオリゴヌクレオチドは、対象領域を増幅するために、または問題とするマーカーに対して対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を直接ハイブリダイズさせるために利用可能である。したがって、オリゴヌクレオチドは、対象とするマーカー(PCR増幅に必要な)に隣接するか、または当該マーカーと直接重複する(ASOハイブリダイゼーションの場合と同様に)か、いずれかであり得る。
【0189】
本明細書に記載するアッセイ法およびキットを用いて得られる情報は(単独、または骨関節炎に寄与する別の遺伝的欠陥または環境因子に関する情報と組み合わせて)、無症候性の被験体が特定の疾患または病状を有する、または発症するおそれがあるかどうか判定するのに有用である。さらに、当該情報は疾患または病状の発現または進行を予防する、より特別に設計されたアプローチを提供し得る。例えば、この情報によって、臨床医は、疾患または病状の分子的機序に作用する療法をより効果的に処方できるようになる。
【0190】
キットは、任意選択によりDNAサンプリング手段も含むこともできる。DNAサンプリング手段は当業者には周知であり、例えばろ紙、AmpliCard(商標)(University of Sheffield、 Sheffield、 England S10 2JF;Tarlow、JWら、J. of Invest.Dermatol.、第103巻:387〜389頁(1994年))などの基材;Nucleon(商標)キット、細胞溶解バッファー、プロテイナーゼ溶液などのDNA精製試薬;10X反応バッファー、熱安定ポリメラーゼ、dNTPsなどのPCR試薬;およびHinfI制限酵素、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、乾燥血液由来のネスト化PCR用縮退オリゴヌクレオチドプライマーなどの対立遺伝子検出手段を含み得るが、但しこれらに限定されない。
【0191】
定義
別段定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の技術者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で述べるのと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、適切な方法および材料を下に述べる。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体として参照により本明細書に組み込まれている。不一致の場合、定義を含めた、本明細書が支配するものとする。さらに、材料、方法および実施例は、一例にすぎず、限定するものではない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0192】
本明細書で述べる実施形態の理解を促進する目的のために、好ましい実施形態を参照し、同じものを記述するのに特定の術語を用いるものとする。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態のみを記述する目的のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。本開示を通して用いているように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上他の状態であることが明確でない限り、複数の言及した事柄を含む。したがって、例えば、「組成物」への言及は、1つの組成物に加えて、複数のそのような組成物を含み、「治療薬」への言及は、1つもしくは複数の治療薬および/または医薬品ならびに当業者に公知のその同等物への言及であるなどである。
【0193】
「対立遺伝子」という用語は、異なる多型領域に認められる異なる配列変異体を意味する。配列変異体は、制限なしに、挿入、欠失もしくは置換を含む単一もしくは複数の塩基の変化であってよく、または可変数の配列反復であってよい。
【0194】
「対立遺伝子パターン」という用語は、1つまたは複数の多型領域における1つの対立遺伝子または複数の対立遺伝子の同一性を意味する。例えば、対立遺伝子パターンは、PPARG(rs1801282)対立遺伝子1のように、多型部位における単一対立遺伝子からなっていてよい。あるいは、対立遺伝子パターンは、単一多型部位における同型接合または異型接合状態からなっていてよい。例えば、PPARG(rs1801282)対立遺伝子2.2は、第2の対立遺伝子の2つのコピーが存在する対立遺伝子パターンであり、同型接合PPARG(rs1801282)対立遺伝子2状態に対応する。あるいは、対立遺伝子パターンは、複数の多型部位における対立遺伝子の同一性からなっていてよい。
【0195】
「対照」または「対照試料」という用語は、用いる検出技術に適した試料を意味する。対照試料は、用いる対立遺伝子検出技術の産物または試験する物質を含んでいてよい。さらに、対照は、陽性または陰性対照であってよい。例として、対立遺伝子検出技術がPCR増幅とそれに続くサイズ分画である場合、対照試料は、適切なサイズのDNA断片を含み得る。同様に、対立遺伝子検出技術が成熟タンパク質の検出を伴う場合、対照試料は、突然変異タンパク質の試料を含み得る。しかし、対照試料が試験する物質を含むことが好ましい。例えば、対照試料は、ゲノムDNAの試料であるか、または1つもしくは複数の代謝遺伝子を含むクローニングされた部分であってよい。しかし、試験する試料がゲノムDNAである場合、対照試料は、好ましくはゲノムDNAの高度に精製された試料である。
【0196】
「遺伝子の破壊」および「標的破壊」という語句または他の同様な語句は、遺伝子の野生型コピーと比較して細胞中の当遺伝子の発現を妨げるための天然DNA配列の部位特異的中断を意味する。中断は、遺伝子の欠失、挿入もしくは修飾、またはそれらの任意の組合せにより引き起こすことができる。
【0197】
本明細書で用いている「ハプロタイプ」という用語は、統計的に有意なレベル(Pcorr<0.05)で群として一緒に遺伝する一組の対立遺伝子(連鎖不平衡にある)を意味することを意図する。本明細書で用いているように、「代謝ハプロタイプ」という語句は、代謝遺伝子座のハプロタイプを意味する。
【0198】
「リスクの増大」という用語は、特定の多型対立遺伝子を有さない集団のメンバーにおける疾患または状態の発生の頻度と比較して特定の多型対立遺伝子を有する被験体における疾患または状態の発生の統計的に高い頻度を意味する。
【0199】
DNAまたはRNAなどの核酸に関して本明細書で用いている「単離された」という用語は、巨大分子の天然源に存在するそれぞれ他のDNAsまたはRNAsから分離された分子を指す。本明細書で用いている単離されたという用語は、組換えDNA技術により産生される場合には細胞性物質、ウイルス性物質または培地を、あるいは化学的に合成される場合には化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドも指す。さらに、「単離核酸」は、断片として天然に存在せず、自然の状態で発見されないような核酸断片を含むことを意味する。「単離された」という用語は、本明細書で用いているように他の細胞性タンパク質から単離されているポリペプチドも指し、精製および組換えポリペプチドを含むことを意味する。
【0200】
「連鎖不平衡」は、所与の対照集団における各対立遺伝子の発生の個別化された頻度から予想されるよりも大きい頻度での2つの対立遺伝子の共遺伝を意味する。独立に遺伝する2つの対立遺伝子の予測される発生の頻度は、第1の対立遺伝子の頻度に第2の対立遺伝子の頻度を掛けたものである。予測される頻度で同時発生する対立遺伝子は、「連鎖不平衡」にあると言われる。連鎖不平衡の原因は、しばしば不明である。それは、特定の対立遺伝子の組合せの選択、または遺伝的に異質な集団が最近になって入り混じったことに起因し得る。さらに、疾患遺伝子に非常に強固に連鎖しているマーカーの場合、疾患突然変異が近接過去に発生し、そのため特定の染色体領域における組換え事象により平衡が達成されるのに十分な時間が経過しなかった場合に、対立遺伝子(または連鎖対立遺伝子の群)と疾患遺伝子との関連性が予想される。複数の対立遺伝子から構成される対立遺伝子パターンに言及する場合、第1の対立遺伝子パターンを含む全ての対立遺伝子が第2の対立遺伝子パターンの対立遺伝子の少なくとも1つと連鎖不平衡にある場合には、第1の対立遺伝子パターンは、第2の対立遺伝子パターンと連鎖不平衡にある。
【0201】
「マーカー」という用語は、被験体間で異なることが公知であるゲノムにおける配列を意味する。
【0202】
「突然変異遺伝子」または「突然変異」または「機能的突然変異」は、突然変異遺伝子を有さない被験体と比べて突然変異遺伝子を有する被験体の表現型を変化させることができる、遺伝子の対立遺伝子の形を意味する。突然変異によって引き起こされた表現型の変化は、特定の物質により補正または補償することができる。この突然変異が表現型の変化をもたらすために被験体が同型接合でなければならない場合、突然変異は劣性であると言われる。突然変異遺伝子の1つのコピーが被験体の表現型を変化させるのに十分である場合、突然変異は優性であると言われる。被験体が突然変異遺伝子の1つのコピーを有し、同型接合被験体の表現型と異型接合被験体の表現型(当遺伝子の)との中間である表現型を有する場合、突然変異は共優性であると言われる。
【0203】
本明細書で用いているように、「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)および適切な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを意味する。この用語は、ヌクレオチド類似体(例えば、ペプチド核酸)から調製されたRNAまたはDNAの類似体を同等物として、ならびに述べる実施形態に適用できるものとして一本(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドも含むと理解すべきである。
【0204】
「多型」という用語は、遺伝子またはその部分(例えば、対立形質変異体)の複数の形態の共存を指す。少なくとも2つの異なる形態、すなわち、2つの異なる核酸配列がある、遺伝子の部分は、「遺伝子の多型領域」と呼ばれる。遺伝子の多型領域における特定の遺伝子配列が対立遺伝子である。多型領域は単一ヌクレオチドでありえ、その同一性は異なる対立遺伝子で異なる。多型領域は、数ヌクレオチド長であり得る。
【0205】
「疾患への罹患傾向」また疾患「素因」もしくは「感受性」という用語または同様な語句は、特定の対立遺伝子が被験体が特定の疾患を発現する率に関連するまたはその予測となることが、それにより発見されることを意味する。そのため、対立遺伝子は、健康な被験体と比較して疾患を有する被験体において頻度が過剰に示される。したがって、これらの対立遺伝子は、発症前または罹患前の被験体においてさえ疾患を予測するのに用いることができる。
【0206】
本明細書で用いているように、「特異的にハイブリダイズする」または「特異的に検出する」という用語は、試料の核酸の少なくとも約6つの連続したヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子の能力を意味する。
【0207】
「転写調節配列」は、それらが作動可能に連結したタンパク質コーディング配列の転写を誘導または制御する、開始シグナル、エンハンサーおよびプロモーターなどのDNA配列を指すために本明細書を通して用いる総称である。
【0208】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。1種類の好ましいベクターはエピソーム、すなわち、染色体外で複製可能な核酸である。好ましいベクターは、自律複製することができ、かつ/または、それが連結されている核酸を発現させることができるベクターである。それが作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、多くの場合、一般に、ベクター形態では染色体に結合しない環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態である。プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」は互換的に使用される。しかし、本発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、および今後当技術分野で公知になる他の形態の発現ベクターを含むものとする。
【0209】
「野生型対立遺伝子」という用語は、被験体に2つのコピーで存在する場合に野生型表現型をもたらす遺伝子の対立遺伝子を意味する。遺伝子における特定のヌクレオチドの変化が、ヌクレオチドの変化を有する遺伝子の2つのコピーを有する被験体の表現型に影響を及ぼさない可能性があるので、特定の遺伝子のいくつかの異なる野生型対立遺伝子が存在し得る。
【0210】
以下の実施例は例示的であるが、但し本発明の方法および構成を限定するものではない。治療において通常遭遇する様々な条件およびパラメータに関するその他の適する変更および改変であり、当業者に明白なものは、本実施形態の精神および適用範囲の被験体である。
【実施例】
【0211】
(実施例1)
遺伝子と、体重管理に関連する代謝の変動との間の相関を同定し;どの遺伝的変異が、食事および生活様式を変化させることによって潜在的に改変可能な様に代謝経路に影響を及ぼすかを同定するための判定基準を確立し;どの遺伝子型が、リスクを増加させることが示されたか、および食事介入および/または生活様式介入によって改変可能なリスクを示唆しているかを決定し;選択した試験構成、試験結果の解釈、食事介入/生活様式介入、および利益/リスク分析を支持するために証拠をまとめる臨床試験についての包括的な概説から体重管理試験が開発されてきた。
【0212】
遺伝子/多型選択の判断基準は、同じ遺伝子型の関連性を示した3つ以上の独立した、同様の試験からの証拠において見られるように、多型が体重管理の表現型(例えば、体重、体脂肪、肥満度指数)との有意な関連性を有すること;遺伝子が体重管理において生物学的に妥当と思われる役割を有すること;多型が分子遺伝子のレベルで、または体重および/または健康に関する転帰に影響を及ぼすことが公知のバイオマーカーの測定によって決定されるように、機能的影響に関連づけられること;および特異的な推奨カテゴリーを導く多型遺伝子型についての2つ以上の独立した、同様の試験からの証拠において見られるように、介入への反応(例えば、食事または運動)が遺伝子型によって異なることが示されたことの証拠を必要とする。
【0213】
試験パネルの科学的原理
この試験の科学的原理は、2007年4月を通して入手可能な科学文献についての広範囲にわたる総説に基づく。公開された証拠を、先を見越して明確に示した判定基準のセットに対して評価した。この証拠を、遺伝子>多型>複合遺伝子型の階層に組み立てて、このパネルについての試験結果の解釈を定義し、正当化した。
【0214】
含まれる評価プロセス:
1.体重の恒常性に関連する代謝経路における有意な関与を同定することにより、候補遺伝子を確立すること。
【0215】
2.どの遺伝的変異が、食事パターンおよび運動パターンを変化させることによって潜在的に改変可能な様に代謝経路に影響を及ぼすかを決定するための判定基準を確立すること。これらは以下の証拠を含んだ:
a)同じ遺伝子型−表現型関連性を示した3つ以上の独立した試験によって実証されているように、多型が、関連する表現型(例えば、体重、体脂肪、肥満度指数)との有意な関連性を有すること。
【0216】
b)遺伝子が体重管理において生物学的に妥当と思われる役割を有すること。
【0217】
c)多型が、DNAレベルで、または体重の恒常性に影響を及ぼす生理的経路に関連することが公知のバイオマーカーの測定によって決定されるように、機能的影響に関連づけられること。
【0218】
d)食事または運動などの介入に対する被験体の反応を、遺伝子型によって層別化することができること。そのような証拠は、少なくとも2つ独立して存在しなければならない。
【0219】
3.遺伝的変異の、a)代謝機序;b)肥満/体重管理と健康に関する転帰の関連性、およびc)体重もしくは脂肪蓄積の変化またはバイオマーカーの変化によって測定された介入に対する反応に対する影響を評価するために科学文献の包括的な検索を行うこと。
【0220】
4.どの遺伝子型が、被験体に体重増加の素因を与えることが示されたか、およびその増加が特定の食事戦略または運動戦略によって改変可能であり得ることを決定すること。
【0221】
5.選択した試験構成、試験結果の解釈、食事介入/生活様式介入、および利益/リスク分析を支持するために証拠をまとめること。
【0222】
以下の遺伝子は、上で概説した判断基準に適合した。これらの遺伝子は、体重に影響を及ぼし、肥満になるリスクの上昇に関連づけられている種々の経路に対するそれらの影響について選択された。これらの遺伝子はまた、これらを使用して、遺伝子型によって体重管理介入に対する反応を識別することができるので、選択された。これらは、脂肪酸結合タンパク質2(FABP2);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARG);ベータ2アドレナリン作動性受容体(ADRB2);およびベータ3アドレナリン作動性受容体(ADRB3)である。
【0223】
複合遺伝子型の理論的解釈
試験パネルに含めるための、先を見越して展開した判断基準に適合した、またはそれを超えた遺伝子/多型を同定した後、5つの多型の全てが生じる複合遺伝子型を、特定の判定を支持する別個のカテゴリーに分配することができるかどうかを決定するために組合せを分析した。結果を、食事性の主要栄養素に対する反応の証拠に基づいて3つのカテゴリーに分けた(脂肪制限に反応する、炭水化物制限に反応するおよび脂肪と炭水化物のバランス)。これらを同様に、運動に対する反応の証拠に基づいて2つの別々のカテゴリーに分配した(運動に反応する、および運動に対する反応性に劣る)。生じたカテゴリーまたは遺伝子型パターンの3×2(6つのセル)の行列が表7に示されている。
【0224】
脂肪制限食に反応する
このカテゴリーは、複合遺伝子型:FABP2 Ala54ThrおよびPPARG Pro12Alaを有する人で構成される。FABP2 Thr54対立遺伝子の保有者でもある、PPARG 12Pro/Pro遺伝子型を有する人もこのカテゴリーに入る。これらの被験体は、特定の脂肪の摂取量を制限することを伴わない体重管理における難しさを実証している。FABP2 Thr54変異体は、(1)長鎖脂酸に対する結合親和性が2倍高く、(2)腸による脂肪の吸収および/または食事性脂肪酸の処理が増強されている。Thr54変異体は、腸による食事性脂肪酸の吸収および/または処理を増加させる。PPARGは、脂肪細胞(脂肪の貯蔵)の形成において、および脂質代謝(脂肪の動員)において重要な役割を果たす。PPARGは、脂肪細胞の核に位置する受容体である。食事性脂肪によって活性化されると、PPARG受容体は、特異的なDNA配列に結合し、それが次に、脂肪細胞への食事性脂肪の貯蔵を促進する特定の遺伝子を「刺激する」。ヒトでは、PPARG活性の増強は、脂肪蓄積の増加を伴う。Ala12変異体は、PPARG活性の低下に関連する(43、44)。12Pro/Proである人は、食事性脂肪の量に対する反応性が、12Ala保有者よりも高い可能性が高い。Ala12変異体の保有者は、介入に反応した脂肪の貯蔵および動員における代謝柔軟性がより高い。したがって、12Pro/Proである被験体は、食事由来の脂肪を蓄積することにおいてより効率的である。Ala12保有者と比較して、12Pro/Pro遺伝子型を有する被験体では、PPARGのDNAへの結合が増強し、それによって受容体がより効率的に活性化され、脂肪の貯蔵が促進される。
【0225】
炭水化物制限に反応する
このカテゴリーは、PPARG Pro12AlaおよびADRB2 Gln27Gluの2つの異なる遺伝子の組合せのいずれか1つを有する人を含む。PPARG12Ala/遺伝子型を有する人(Ala対立遺伝子保有者)および/またはADRB2Glu27対立遺伝子を保有する人は、炭水化物の食事による摂取量を制限しなければ体重管理において困難を有する。それぞれ2つの遺伝子/SNPのうちの1つのみに焦点を合わせた2つの別々の試験において、研究者は、変異体対立遺伝子を保有する被験体において、それらの被験体の炭水化物の摂取量を総カロリーの50%未満に制限した場合、接種量が50%を超えた同じ遺伝子型を有する被験体と比較して体重増加/肥満の傾向が減ることを見いだした。このことは、これらの変異のそれぞれが、炭水化物制限下で肥満になるリスクの差を示すことを示唆している。さらに、これらの試験の1つにより、変異体対立遺伝子を保有する被験体において、それらの被験体の炭水化物の摂取量が総カロリーの50%未満であった場合に、インスリン抵抗性になるリスクが低下することが実証された(30)。Ala12保有者を用いた介入試験からの結果は、Ala12保有者が、カロリーの低い食事(19)および運動訓練(45−47)に反応して、非保有者よりも大きく体重減少し(18)、インスリン感受性が大きく改善されたことを示している。これらの結果は、Ala12変異体に関連づけられるPPARG活性の低下によって説明することができ、それにより、PPARG標的遺伝子の刺激の効率が落ち、より少ない脂肪蓄積(脂肪を貯蔵する力の低下)が引き起こされ、そして今度はインスリン感受性が高くなる。Ala12対立遺伝子またはGlu27対立遺伝子のいずれかの保有者であると、高炭水化物食に際して肥満になるリスクが増加し、またこれらの遺伝子型は、食事/運動介入と併せてインスリン感受性の改善に関連づけられるので、これらの保有者には炭水化物制限食を推奨することが適切である。
【0226】
体重およびインスリン感受性の変化を用いる介入試験の結果は、PPARG12Ala/について、およびADRB2 27Glu/(18,30,38,45−47)について強力である。しかし、どの試験でも、1つの集団における両方の多型の影響は評価しなかった。したがって、両方のSNP遺伝子型の組合せを必要とするよりもPPARG12Ala/遺伝子型「および/または」ADRB2 27Glu/遺伝子型の被験体をこのパターンに含めることがより適切である。
【0227】
5つのSNP遺伝子型のパターンの中での唯一の矛盾は、ADRB2Glu27対立遺伝子を保有する被験体が、PPARG12Pro/ProとFABP2 54Thr/の組合せも有する場合、それらを「脂肪制限に反応する」パターンと認定することである。この試験では、PPARGおよびFABP2多型の体重および/または体脂肪に関連する表現型に対する遺伝子−食事相互作用(1,2,9,10,16,18)についての科学的証拠が、体の炭水化物の調節に対する反応についてのADRB2の遺伝子−食事相互作用(21,30,31)について見いだされた科学的証拠よりも優勢であるので、そのような被験体を「脂肪制限に反応する」パターンに割り当てる。
【0228】
多数の試験により、FABP2 Thr54対立遺伝子を保有する被験体は、メタボリックシンドロームになるリスクがあることが実証された(48−50)。他者は、飽和脂肪の摂取量を減らすことによってグルコース代謝に関連する危険因子(インスリン、血糖、トリグリセリド)が改善されることを実証した(10,11,12)。食事中の脂肪の種類に焦点を合わせた介入試験も、ほとんどの場合、中程度の量の食事性炭水化物を含んだ。FABP2遺伝子型とは直接関連しない他の研究により、炭水化物の摂取量を調節することによってインスリンレベルおよび血中ブドウ糖の制御が改善されることが実証されている(51−53)。それらの被験体の食事中の脂肪を減らすことに焦点を合わせるのではなく;PPARG12/Ala/遺伝子型とFABP2 54Thr/遺伝子型の組合せを有する被験体は、炭水化物の摂取量を減らすことからより多くの利益を受ける可能性が高いと思われる。
【0229】
運動に対する反応性に劣る
ADRB3遺伝子またはADRB2遺伝子のいずれかに特定の遺伝子型を有する人は、体重を制御する戦略としての運動に対する反応性が劣りやすくなる遺伝的素因を有する。これらの多型はどちらも、カテコールアミンに対する反応を媒介することによって脂肪組織からの脂肪の動員(脂肪分解)において重要な役割を果たす。ADRB2 Gly16変異体は(in vitro試験の間にGlu27変異体と組み合わせた場合でさえ)、アドレナリン作動性受容体反応性の低下に関連する(21)。これらの2つの多型は、密接な連鎖不平衡にある。したがって、Gly16変異体についての試験によっても、大多数の被験体が、同じ素因に関連づけられているGlu27変異体を保有することが同定される。ADRB3Arg64変異体は、受容体機能の低下および脂肪分解の低下に関連づけられている。運動中に、この変異体の保有者は、脂肪分解の低下、したがって、脂肪を燃焼させる力の低下を示す可能性が高く、これにより、運動に反応した体重減少が少なくなると思われる。多数の介入試験により、Arg64変異体を有する人は、食事/運動に反応した体重減少が非保有者よりも難しいことが一貫して示されている。ADRB2のGly16変異体の保有者は、非保有者よりも、運動(23)または食事と運動の組合せ(28)によって体重が減る可能性が低い。両方のアドレナリン作動性受容体が運動中のカテコールアミンに対する反応に影響を及ぼすこと、ならびにADRB2Gly16およびADRB3Arg64はどちらも受容体機能の低下を有することを考慮して、これらの多型のいずれかを有する被験体は、運動反応性に劣る複合パターンに含めるべきである。
【0230】
結果を、食事性の主要栄養素に対する反応の証拠に基づいて3つの別々のカテゴリーに分け、運動に対する反応の証拠に基づいて2つの別々のカテゴリーに分けた。生じたカテゴリーまたは遺伝子型パターンの3×2行列が下に示されている(表6)。
【0231】
【表6】

複合遺伝子型パターン#1−脂肪と炭水化物のバランスに反応し、運動に反応する:
FABP2 rs1799883、1.1またはG/G(54Ala/Ala)、PPARG rs1801282、1.1またはC/C(12Pro/Pro)、およびADRB2 rs1042714、1.1またはC/C(27Gln/Gln)、ならびにADRB2 rs1042713 2.2またはA/A(16Arg/Arg)、およびADRB3 rs4994 1.1またはT/T(64Trp/Trp)の複合遺伝子型を有する被験体。このカテゴリーは、低脂肪または低炭水化物のカロリー制限食による体重差に反応することが公知の被験体の遺伝子型を含む。このパネルにおいて試験した変異体から、これらの被験体は、食事中の脂肪または炭水化物のいずれかを絶つことに対する反応が損なわれる一貫した遺伝的傾向を示さない。これらの被験体は、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対して正常なエネルギー代謝反応を示す。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団2%に存在する。
【0232】
複合遺伝子型パターン#2−脂肪制限に反応し、運動に反応する:
FABP2 rs1799883、2.2または1.2(A/AまたはG/A)(54Thr/)およびPPARG rs1801282、1.1またはC/C(12Pro/Pro)、ならびにADRB2 rs1042714、1.2もしくはADRB2 rs1042714、2.2(C/GまたはG/G)(27Glu)またはADRB2 rs1042714、1.1(C/C)(27Gln/Gln)のいずれかと、ADRB2 rs1042713、2.2(A/A)(16Arg/Arg)およびADRB3 rs4994、1.1(T/T)(64Trp/Trp)との組合せの複合遺伝子型を有する被験体。これらの被験体は、食事性脂肪をより多く吸収し、代謝の間、それを動員するのではなく、脂肪細胞内に貯蔵する傾向がある。これらの被験体は、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対して正常なエネルギー代謝反応を示す。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団の約5%に予想される。
【0233】
複合遺伝子型パターン#3−炭水化物制限に反応し、運動に反応する:遺伝子型にPPARG rs1801282(12Ala/)1.2もしくはPPARG rs1801282(12Ala/)2.2(C/GまたはG/G)および/またはADRB2 rs1042714(27Glu/)1.2もしくはADRB2 rs1042714(27Glu/)2.2(C/GまたはG/G)を含む被験体、ならびにPPARG rs1801282(12Ala/)1.2またはPPARG rs1801282(12Ala/)2.2(C/GまたはG/G)およびFABP2 rs1799883(54Thr/)2.2またはFABP2 rs1799883(54Thr/)1.2(A/AまたはG/A)の複合遺伝子型を有する被験体。上記の限定した遺伝子型の全ては、ADRB2 rs1042713(16Arg/Arg)2.2(A/A)およびADRB3 rs4994(64 Trp/Trp)1.1(T/T)と組み合わせると運動に反応するカテゴリーの要件に適合する。これらの被験体は、食事性炭水化物の高摂取により体重が増す、または保たれる傾向があり、グルコースおよびインスリンの代謝が損なわれる徴候を示す。これらの被験体は、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対して正常なエネルギー代謝反応を示す。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団の約5%に予想される。
【0234】
複合遺伝子型パターン#4−脂肪と炭水化物のバランスに反応し、運動に対する反応性に劣る:FABP2 rs1799883(54Ala/Ala)1.1(G/G)およびPPARG rs1801282(12Pro/Pro)1.1(C/C)およびADRB2 rs1042713(16Gly)1.2もしくはADRB2 rs1042713(16Gly)1.1(G/GまたはG/A)またはADRB3 rs4994(64Arg)2.1もしくはADRB3 rs4994(64Arg)2.2(C/TまたはC/C)の複合遺伝子型を有する被験体。このカテゴリーは、低脂肪または低炭水化物のカロリー制限食による体重差に反応することが公知の被験体の遺伝子型を含む。このパネルにおいて試験した変異体から、これらの被験体は、食事中の脂肪または炭水化物を絶つことに対する反応が損なわれる一貫した遺伝的傾向を示さない。これらの被験体は、エネルギー代謝が損なわれ、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対する反応性が劣る傾向がある。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団14%に存在する。
【0235】
複合遺伝子型パターン#5−脂肪制限に反応し、運動に対する反応性に劣る:FABP2 rs1799883(54Thr/)2.2またはFABP2 rs1799883(54Thr/)2.1(A/AまたはA/G)およびPPARG rs1801282(12Pro/Pro)1.1(C/C)、ならびにADRB2 rs1042714(27Glu)1.2もしくはADRB2 rs1042714(27Glu)2.2(C/GまたはG/G)またはADRB2 rs1042714(27Gln/Gln)1.1(C/C)のいずれかと、ADRB2 rs1042713(16Gly)1.2もしくはADRB2 rs1042713(16Gly)1.1(G/AまたはG/G)またはADRB3 rs4994(64Arg)2.1もしくはADRB3 rs4994(64Arg)2.2(C/TまたはC/C)との組合せの複合遺伝子型を有する被験体。これらの被験体は、食事性脂肪をより多く吸収し、代謝の間、それを動員するのではなく、脂肪細胞内に貯蔵する傾向がある。これらの被験体は、エネルギー代謝が損なわれ、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対する反応性が劣る傾向がある。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団の約34%に予想される。
【0236】
複合遺伝子型パターン#6−炭水化物制限に反応し、運動に対する反応性に劣る:遺伝子型にPPARG rs1801282(12Ala/)1.2もしくはPPARG rs1801282(12Ala/)2.2(C/GまたはG/G)および/またはADRB2 rs1042714(27Glu/)1.2もしくはADRB2 rs1042714(27Glu/)2.2(C/GまたはG/G)を含む被験体、ならびにPPARG rs1801282(12Ala/)1.2またはPPARG rs1801282(12Ala/)2.2(C/GまたはG/G)およびFABP2 rs1799883(54Thr/)2.2またはFABP2 rs1799883(54Thr/)2.1(A/AまたはA/G)の複合遺伝子型を有する被験体。また、上記の限定した遺伝子型の全ては、ADRB2 rs1042713(16Gly)1.2もしくはADRB2 rs1042713(16Gly)1.1(G/AまたはG/G)またはADRB3 rs4994(64Arg)2.1もしくはADRB3 rs4994(64Arg)2.2(C/TまたはC/C)と組み合わせると運動に対する反応性に劣る要件に適合するに違いない。これらの被験体は、食事性炭水化物の高摂取により体重が増す、または保たれる傾向があり、グルコースおよびインスリンの代謝が損なわれる徴候を示す。これらの被験体は、エネルギー代謝が損なわれ、自身の体重管理の目標を実現するための定期的な運動に対する反応性が劣る傾向がある。この複合遺伝子型は、コーカサス人種の集団の約40%に予想される。
【0237】
【表7−1】

【0238】
【表7−2】

(実施例2)
臨床的な遺伝子型決定方法
DNAを頬側スワブから抽出するか(SOP#12、バージョン1.3)、またはCoriell Cell Repositoriesから購入した。単離されたDNAを、5つのSNPの周囲の配列の領域を増幅するPCRに使用した(SOP#29、バージョン1.0)。各試料から生じた4つのアンプリコンを、エキソヌクレアーゼI(Exo)およびエビのアルカリホスファターゼ(SAP)で処置して過剰なプライマーおよびヌクレオチドを除去した(SOP#29、バージョン1.0)。精製されたアンプリコンを、そのSNP標的に特異的なプライマーを用いた一塩基伸長(SBE)反応において使用した(SOP#30、バージョン1.0)。SBEが完了したら、再度SAPを加えて取り込まれなかったヌクレオチドを除去した(SOP#30、バージョン1.0)。次いで、SBE産物をBeckman Coulter CEQ8800において、公知の泳動サイズの標準物質を用いて解析した(SOP#15、バージョン1.4およびSOP#16、バージョン1.3)。PPARG(rs1801282)を例外として、全ての遺伝子型を、フォワードDNA鎖に対してアッセイした。PPARG(rs1801282)は、リバースDNA鎖に対してアッセイし、CEQ8800追跡における相補的塩基として提示した。生じた遺伝子型を記録し、次いでAgencourt Bioscience CorporationにおいてDNA配列決定によって生成した遺伝子型と、またはNCBIに記録されている公知の遺伝子型と比較した。Singleplex形式:対象のPCR産物を別々に増幅し、対応するSBEプライマーによって従属的に遺伝子型決定した。Poolplex形式:対象のPCR産物を別々に増幅し、次いで一緒にプールした。プールしたDNAを、単一反応において、5種のSNP全てについてSBEプライマーの混合物を使用して遺伝子型決定する。Multiplex形式:4つのPCR産物を全て単一反応において生成した。多重化したPCR産物を、単一反応において、5種のSNP全てについてSBEプライマーの混合物を使用して遺伝子型決定した。
【0239】
標準化
市販されているサイズ標準物質(Beckman Coulter品番608395)を、遺伝子型決定のための内部参照として試料と一緒に流した。
【0240】
正確度および特異度
確実に適当な遺伝子を標的とし、正確に遺伝子型決定するために、PCR産物を配列決定および遺伝子型決定するために独立した研究室(Agencourt Bioscience Corporation)に寄託した。Agencourtにおいて、配列をSNPに隣接しているゲノム配列と比較し、次に各試料の遺伝子型をInterleukin Geneticsに報告した。次に、AgencourtおよびInterleukinの結果を、一致について比較した。
【0241】
SNPの名称および略語
このアッセイの検証では以下のSNPの名称および略語を使用する:ADRB2(R16G)、rs1042713=A1;ADRB2(Q27E)、rs1042714=A2;ADRB3(R64W)、rs4994=A3;FABP2(A54T)、rs1799883=FA;PPARG(P12A)、rs1801282=PP。
【0242】
結果
PCRの結果
単離されたDNAを、付録Bに列挙されているプライマーセットを使用してPCR増幅した。ADRB2(rs1042713)およびADRB2(rs1042714)は、33ヌクレオチド離れており、単一のPCR産物上で増幅した。PCR産物をアガロースゲルに流して予測された産物のサイズ:A1/A2=422bp、A3=569bp、FA=311bp、PP=367bpを検証した。
【0243】
遺伝子型決定の結果
泳動のピーク
それぞれのSNP特異的な一塩基伸長プライマーを独特の長さで設計して、CEQ8800キャピラリー電気泳動計器に流した際に公知のサイズ標準物質に関する特定の場所におけるピーク(複数可)を創出した。ピークの位置は、色素の移動性、プライマー配列および解析ソフトウェアの影響により、プライマーサイズと正確に適合しない場合があるが、一貫して泳動する。一塩基伸長プライマーは、付録Cにそれらの予測される泳動のピークと一緒に列挙されている。
【0244】
塩基呼び出し(Base calling)
一塩基伸長反応により、SNP特異的なプライマーの3’末端に蛍光標識された塩基を付加する。この産物を、CEQ8800内部の2つのレーザーによって読み取る。結果をCEQ8800ソフトウェアによって解析し、それは有色のピークとして現れる−それぞれの色は、異なる塩基を表している。特定の遺伝子座に1つの単色のピークが存在することは、ホモ接合体を示し、一方、異なる色の2つのピークはヘテロ接合体を示す。この検証において遺伝子型決定した39の試料の中で、5種のSNP全てについてのほとんど全てのホモ接合性遺伝子型および全てのヘテロ接合性遺伝子型が表されている。1つの例外は、PPARG SNPホモ接合性のC遺伝子型である。これは、一般的な集団におけるC対立遺伝子の頻度はたった0.1(rs#1801282についてのdbSNPデータベースによって示されるように)であるので、予想されたことであった。しかし、ホモ接合性のC遺伝子型は、この検証の範囲の外側の他の試料において生じている。
【0245】
CEQ8800ソフトウェアは、使用者がSNP遺伝子座タグを特定することができることを特徴とする。使用者は、SNP特異的なプライマーの予測される泳動に基づいて泳動サイズ(ヌクレオチド単位で)を示す。これにより、試料と一緒に流した標準化されたマーカーと関連するその泳動に基づいて、コンピュータによってSNPを同定することが可能になる。コンピュータにより、それが検出する指示色素(複数可)に基づいてSNP内の塩基(複数可)も同定される。この検証のために、コンピュータにより、それぞれのSNPの最初の呼び出しが可能になる。次にデータを、確認のために2人の技術者がそれぞれ独立に再解析した。全事例において、コンピュータの呼び出しと2つの独立した(手動の)呼び出しは一致した。
【0246】
Coriell試料
15のCoriell DNA試料に対して遺伝子型決定をSingleplex形式で実施した後、結果を公知の遺伝子型と比較し、それらは100%合致した(表8参照)。
【0247】
【表8】

(実施例3)
体重減少との遺伝的関連について解析した複合遺伝子型パターン
体重減少に対する遺伝子型の影響を決定するために、異なる食事(アトキンス(Atkins)、オーニッシュ(Ornish)、ラーン(LEARN)、およびゾーン(Zone))を、異なる個体群に与えた。体重減少との遺伝的関連について解析した複合遺伝子型パターンは、表9に記載されている。解析した食事は表10に列挙されている。試験被験体を2つの群に分類した:
1.遺伝子型に適切な食事を割り当てた群:
a.アトキンスダイエット(Atkins diet)を行う低炭水化物群(LCG)を有する全ての個体、および
b.オーニッシュダイエット(Ornish diet)およびラーンダイエット(LEARN diet)を行う低脂肪群(LFG)を有する個体。
【0248】
2.遺伝子型に不適切な食事を割り当てた群:
a.オーニッシュダイエット(Ornish diet)およびラーンダイエット(LEARN diet)を行うLCGを有する個体、および
b.アトキンス(Atkins)を行うLFGを有する個体。
【0249】
次に、2つの群において平均の体重減少および他の肥満に関連する表現型を比較し、統計的有意性を決定した。所見は表11〜13および図1〜12に報告されている。
【0250】
【表9】

【0251】
【表10】

低脂肪食向けの複合遺伝子型パターン。
【0252】
このカテゴリーは、FABP2 rs1799883(A/)およびPPARG rs1801282(C/C)の複合遺伝子型を有する人で構成される。
【0253】
低炭水化物食向けの複合遺伝子型パターン。
【0254】
このカテゴリーは、以下の4つの異なる遺伝子の組合せのいずれか1つを有する人を含む:FABP2 rs1799883(A/)、PPARG rs1801282(G/);PPARG rs1801282(G/)、ADRB2 rs1042714(G/);FABP2(G/G)、PPARG(G/);およびFABP2(G/G)、PPARG(C/C)、ADRB2(G/)。
【0255】
バランス食向けの複合遺伝子型パターン。
【0256】
このカテゴリーは、FABP2(G/G)、PPARG(C/C)、ADRB2(C/C)の遺伝的な組合せを有する人を含む。
【0257】
遺伝子型−食事相互作用
食事反応性の遺伝子型パターンおよび非反応性の遺伝子型パターン(上記の1群および2群を参照されたい)と体重減少との間の遺伝的関連を実施した。エネルギーのパーセント単位の2カ月の平均の食事による摂取量が表10に列挙されている。任意の低炭水化物反応性遺伝子型(低CHO)と低脂肪反応性遺伝子型(低脂肪)とを比較することによって低脂肪食(オーニッシュダイエット(Ornish diet)+ラーンダイエット(LEARN diet))の下での体重減少を決定した場合に統計的に有意な関連性が観察された(表11参照)。統計的に有意な関連性は任意の低炭水化物反応性遺伝子型(低CHO)と低脂肪反応性遺伝子型(低脂肪)とを比較することによって、低脂肪だが高炭水化物食(オーニッシュダイエット(Ornish Diet))の下での体重減少を決定した場合にも観察された(表11参照)。
【0258】
ゾーンダイエット(ZONE diet)、ラーンダイエット(LEARN diet)およびオーニッシュダイエット(Ornish Diet)の下で観察された体重減少は、低CHO反応性遺伝子型と低脂肪反応性遺伝子型とを比較した場合も、統計的に有意であった(表12参照)。アトキンスダイエット(Atkins diet)の下では、遺伝子型に関して体重の増減に対する有意な関連性は観察されなかった。しかし、オーニッシュダイエット(Ornish Diet)の下で、低炭水化物遺伝子型(表9参照)については試験被験体の62.5%が2.5kg未満、体重が増加したが、一方、低脂肪遺伝子型の被験体は、その83%が2.5kg超、体重が減少した。低脂肪反応性遺伝子型を有する被験体は、アトキンスダイエット(Atkins diet)およびゾーンダイエット(Zone diet)に最小に反応したが、6カ月および12カ月においてはオーニッシュ(Ornish)およびラーン(LEARN)などの低脂肪食の方がよい(表13参照)。
【0259】
【表11】

【0260】
【表12】

【0261】
【表13】

(実施例4)
活発な(強度の)運動および通常の(中程度の)運動に対する反応に対する遺伝子型の影響
運動した後の脂肪細胞における貯蔵脂肪酸の動員(脂肪分解)は、主として、血液中を循環し、脂肪細胞のベータアドレナリン作動性受容体に結合するカテコールアミンと称される副腎ホルモンによって活性化される。2−アドレナリン作動性受容体(ADRB2)および3−アドレナリン作動性受容体(ADRB3)と称される、最もよく研究されているベータアドレナリン作動性受容体は、受容体のアミノ酸構造を変化させ、それによってカテコールアミンと受容体との間の結合カイネティクスを損なう機能性SNPを有する。そのSNPを有する個体において受容体を活性化するためにはカテコールアミンのレベルの増加が必要である。
【0262】
in vitro試験により、ADRB2 16Gly変異体がアドレナリン作動性受容体の反応性の抑制に関連することが示されている。介入試験からの結果も、ADRB2の16Gly変異体の保有者が運動または食事と運動の組合せによって誘導される体重減少に対して抵抗性であることを示唆している。
【0263】
ADRB3 64Arg変異体は、受容体機能の低下、したがって脂肪細胞において脂肪を分解する力の低下に関連する。これは、運動中に、この変異体の保有者が、脂肪分解の低下、したがって脂肪を燃焼させる力の低下を示すことが予測されることを意味し、運動に反応した体重減少が低下することが予測される。この転帰を、64Arg変異体が、食事または運動に反応した体重減少に対する抵抗性に関連する(この変異体の保有者は、非保有者よりも体重減少が少ない)ことが一貫して示されている多数の介入試験によって確認した。
【0264】
データにより、ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)のうちの1つおよびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16Gly/Arg)のうちの1つは、運動に対する反応性に劣ることを予測し、そのために活発な(強度の)運動を必要とすることが予測される。ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝的パターンを有する被験体は、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。また、ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)およびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16Gly/Arg)のうちの1つを含む遺伝的パターンを有する被験体も、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とする。しかし、ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝的パターンを有する被験体は、通常の(中程度の)運動に反応することが予測される。
【0265】
【表14】

特に好ましい実施形態および実施例に言及して本発明を記載しているが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の改変を行うことができることが当業者には認識される。
【0266】
本明細書において参照されている、かつ/または本出願データシートに列挙されている上記の全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0267】
【化1】

【0268】
【化2】

【0269】
【化3】

【0270】
【化4】

【0271】
【化5】

【0272】
【化6】

【0273】
【化7】

【0274】
【化8】

【0275】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重を減少させ、かつ/または体重を維持するために、被験体に適した食事レジメンを選択するための方法であって、前記方法は:
a)FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座;およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座に関する前記被験体の遺伝子型を決定するステップと;
b)前記被験体を、低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;およびカロリー制限食からなる群より選択される栄養カテゴリーに分類するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
a.FABP2(rs1799883)2.2またはFABP2(rs1799883)2.1のうちの1つ、およびPPARG(rs1801282)1.1の複合遺伝子型を有する前記被験体が、低脂肪食に反応することが予測され;
b.FABP2(rs1799883)2.2またはFABP2(rs1799883)2.1のうちの1つ、およびPPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つの複合遺伝子型を有する前記被験体が、低炭水化物食に反応することが予測され;
c.PPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つ、およびADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2のうちの1つの複合遺伝子型を有する前記被験体が、低炭水化物食に反応することが予測され;
d.FABP2(rs1799883)1.1、およびPPARG(rs1801282)2.1またはPPARG(rs1801282)2.2のうちの1つの複合遺伝子型を有する前記被験体が、低炭水化物食に反応することが予測され;
e.FABP2(rs1799883)1.1、PPARG(rs1801282)1.1、およびADRB2(rs1042714)1.2またはADRB2(rs1042714)2.2のうち1つの複合遺伝子型を有する前記被験体が、低炭水化物食に反応することが予測され;
f.FABP2(rs1799883)1.1、PPARG(rs1801282)1.1、およびADRB2(rs1042714)1.1の複合遺伝子型を有する前記被験体が、バランス食に反応することが予測される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体の代謝遺伝子型を同定する方法であって、FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座、PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座、およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座に関する前記被験体の遺伝子型を同定するステップを含む、方法。
【請求項4】
被験体に適した運動レジメンを選択するための方法であって、前記方法は:
a.ADRB2(rs1042713;G/A;Gly16Arg)遺伝子座;およびADRB3(rs4994;C/T;Arg64Trp)からなる群より選択される多型遺伝子座に関する前記被験体の遺伝子型を決定するステップと;
b.前記被験体を、通常の(中程度の)運動;および活発な(強度の)運動からなる群より選択される運動カテゴリーに分類するステップと
を含む、方法。
【請求項5】
a.ADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16Gly/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する前記被験体が、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とし;
b.ADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝子型を有する前記被験体が、通常の(中程度の)運動に反応することが予測され;
c.ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する前記被験体が、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とし;
d.ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)の遺伝子型を有する前記被験体が、通常の(中程度の)運動に反応することが予測され;
e.ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)のうちの1つ、およびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16Gly/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する前記被験体が、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とし;
f.ADRB3(rs4994)2.1(C/T;64Arg/Trp)またはADRB3(rs4994)2.2(C/C;64Arg/Arg)、およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝子型を有する前記被験体が、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とし;
g.ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)、およびADRB2(rs1042713)1.1(G/G;16Gly/Gly)またはADRB2(rs1042713)1.2(G/A;16Gly/Arg)のうちの1つの遺伝子型を有する前記被験体が、運動に対してあまり反応しないことが予測され、それによって活発な(強度の)運動を必要とし;
h.ADRB3(rs4994)1.1(T/T;64Trp/Trp)、およびADRB2(rs1042713)2.2(A/A;16Arg/Arg)の遺伝子型を有する前記被験体が、通常の(中程度の)運動に反応することが予測される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a.FABP2(rs1799883;G/A)遺伝子座;PPARG(rs1801282;C/G)遺伝子座およびADRB2(rs1042714;C/G)遺伝子座からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するための試薬と;
b.前記被験体の代謝遺伝子型を決定するための説明書と
を含むキット。
【請求項7】
前記被験体を、低脂肪食;低炭水化物食;高タンパク質食;バランス食およびカロリー制限食からなる群より選択される栄養カテゴリーに分類するための手段をさらに含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
a.ADRB2(rs1042713;G/A;Gly16Arg)遺伝子座;およびADRB3(rs4994;C/T;Arg64Trp)からなる群より選択される多型遺伝子座に関する被験体の遺伝子型を決定するための試薬と;
b.前記被験体の代謝遺伝子型を決定するための説明書と
を含むキット。
【請求項9】
前記被験体を、通常の(中程度の)運動;および活発な(強度の)運動からなる群より選択される運動カテゴリーに分類するための手段をさらに含む、請求項8に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2013−511535(P2013−511535A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540050(P2012−540050)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057195
【国際公開番号】WO2011/063098
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(506365809)インターロイキン ジェネティクス, インコーポレイテッド (3)
【出願人】(302070822)アクセス ビジネス グループ インターナショナル リミテッド ライアビリティ カンパニー (122)
【Fターム(参考)】