説明

作動油タンクのサクションスクリーン

【課題】作動油タンクの底部のポンプ吸込口に設置されるサクションスクリーンと傾いた状態の作動油面との距離を、作動油タンクの容積を増量させることなく、大きくすることができるようにする。
【解決手段】サクションスクリーン(12)の外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部(K)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の作動油タンクのポンプ吸込口に好適な、サクションスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような作業機械は、油圧シリンダ、油圧モーターなどの油圧アクチュエータを多数装備している。この油圧アクチュエータは作動油タンクの底部からポンプによって吸込まれ吐出される作動油によって駆動される。作動油タンクのポンプ吸込口には、ポンプに異物が流入しないように、周知の筒状のサクションスクリーンが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
作動油タンクに収容された作動油の油面の高さは、作業機械の稼動によって以下に述べるように変動する。したがって、ポンプが空気を吸い込まないようにするために、サクションスクリーンは常に油面よりも下方になるように設置されている。
【0004】
作動油タンクの油面高さは、先ず油圧シリンダの伸縮作動によって上下する。すなわち、シリンダ筒内の一側に存在するシリンダロッドによって一側の容積と他側の容積が異なることから、油面高さは、シリンダ伸張時には下降し収縮時には上昇する。油面はまた、作業機械が傾斜地で、あるいは凹凸地で稼働するときの機体の傾きによって、作動油タンクに対して傾く。
【0005】
したがって、作動油タンクの大きさとサクションスクリーンの位置はサクションスクリーンが常に油中にあるように、以下のように決められる。
【0006】
図3を参照して説明する。作動油タンク2の大きさ(容積)は、先ずポンプの吐出油量に基づいた基準となる油面L1が、油圧アクチュエータの作動による油面の上下動を考慮した空気空間を上方に設けて決められる。油面L1は作動油タンク2の側面に備えたサイトゲージ4によって確認される。
【0007】
基準油面L1は、アクチュエータの作動によって下降した油面L2に変動し、さらに作業機械の傾き角度θ、すなわち作動油タンク2の傾きによって傾いた油面L3に変動する。
【0008】
したがって、作動油タンク2の大きさは、底部のポンプ吸込口6に設置した高さHのサクションスクリーンの上端部が空中に出ないように、サクションスクリーン8と油面L3の間に所定の距離Aを確保するように決められる。
【特許文献1】実開平6−35133号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したとおりの形態の従来の作動油タンクのサクションスクリーンには次のとおりの解決すべき課題がある。
【0010】
すなわち、サクションスクリーンの設置位置は種々の要因によって制約される。例えば、ポンプの吸込配管の設置位置に合わせた吸込口の位置、タンクに内蔵された戻り作動油のリターンフィルタを避けた位置、また作業機械の機体形状に合わせた作動油タンクの形状などによって制約を受ける。
【0011】
したがって、図3に示すように、サクションスクリーン8が作動油タンク2の底部の側板10側に寄せて設置される場合には、サクションスクリーン8が側板10に近付くほど、サクションスクリーン8と傾いた油面L3との間の距離Aの確保が困難になる。その場合には、距離Aを確保するために油面全体を高くする必要があり、作動油タンクの容積の増量を余儀なくされる。
【0012】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、作動油タンクの容積を増量させることなく、サクションスクリーンと傾いた作動油面との距離を大きくすることができる、作動油タンクのサクションスクリーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば上記技術的課題を解決するために、作動油タンクの底部のポンプ吸込口に設置されるサクションスクリーンが、その外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部を備えていることを特徴とする作動油タンクのサクションスクリーンが提供される。
【0014】
好適には、サクションスクリーンは円錐台状に形成されている。また、サクションスクリーンを多角錐台状に形成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従って構成された作動油タンクのサクションスクリーンは、その外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部を備えている。したがって、サクションスクリーンの外側面が下方外側に向けて傾斜しているので、傾いた油面とサクションスクリーンとの距離を作動油タンクの容積を増量させることなく大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成された作動油タンクのサクションスクリーンについて、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0017】
なお、図1において図3と実質上同一の部分は同一の符号で示されている。
【0018】
図1を参照して説明する。作動油タンク2の底部のポンプ吸込口6にサクションスクリーン12が設置されている。サクションスクリーン12は、その外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部Kを備えている。
【0019】
作動油タンク2は略直方体に形成されている。作動油タンク2の底板14の一方の側板10側に、ポンプ吸込口6を有したボス16が一体的に取り付けられている。作動油タンク2の大きさ(容積)は、先ずポンプの吐出油量に基づいた基準となる油面L1が、油圧アクチュエータの作動による油面の上下動を考慮して全容積の約4割程度の空気空間Sを上方に設けて決められている。作動油タンク2の側面には、油面L1を目視確認することができる周知のサイトゲージ4が備えられている。
【0020】
基準油面L1は、ポンプにより吸込まれ吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータの作動によって、下方には油面L2まで変動し、さらに油面L2は作業機械の傾き角度θによる作動油タンク2の傾きによって傾いた油面L3に変動する。
【0021】
作動油タンク2の上面部には、作動油タンク2に内蔵された戻り作動油のリターンフィルタ(図示していない)を支持するためのカバー18、サクションスクリーン12を支持するためのカバー20が、それぞれ着脱を自在に取り付けられている。
【0022】
サクションスクリーン12は円錐台状に、底面Dφ、高さHを有して形成されている。傾斜面部Kは、所定の角度θ傾いた油面L3と略平行にその間に距離Aを有して形成されている。角度θは、作動油タンク2を装備した作業機械の許容稼働角度に設定されている。
【0023】
傾斜面部Kを含むスクリーン本体12aはステンレス鋼網によって形成されている。スクリーン面積は、従来の円筒状のサクションスクリーン8(図3)と略同一に規定されている。スクリーン本体12aは、鋼網を円錐台状に丸めて、あるいは鋼網を適宜に周知のプリーツ加工を施して円錐台状に丸めて形成されている。
【0024】
スクリーン本体12aの底面には、ステンレス鋼板により形成された円形の底面板12bが一体的に取り付けられている。底面板12bの中心部には、ポンプ吸込口6のボス16の端が係脱自在に嵌合する連結穴12cが形成されている。スクリーン本体12aの上端には、ステンレス鋼板により形成された円形の上端板12dが一体的に取り付けられている。上端板12dの中心部のスクリーン本体12aの内側には、ナット12eが取り付けられている。
【0025】
作動油タンク2の上面のカバー20のタンク内面側には、鉛直下方に伸びるスクリーン支持ロッド22が取り付けられている。スクリーン支持ロッド22の下端部には、サクションスクリーン12のナット12eに螺合する雄ねじ22aが備えられている。サクションスクリーン12は、予めこの雄ねじ22aを上端板12dのナット12eに所定の長さねじ込み、止めナット22bによってその位置を固定し、カバー20と一体にサブ組立状態にして、作動油タンク2に組み込まれる。サクションスクリーン12を清掃するときにはこのサブ組立状態で作動油タンク2から取り外す。
【0026】
円錐台状に形成したサクションスクリーン12に代えて、製作上、また作動油タンク内の配置上などから好都合であれば、図2に概略図示したように4個の傾斜面部Kを有した四角錐台状のサクションスクリーン24にしてもよい。あるいは、他の多角錐台状であってもよい。
【0027】
図1を参照して、上述したとおりの作動油タンク2のサクションスクリーン12の作用効果について説明する。
【0028】
作動油タンク2のサクションスクリーン12は、その外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部Kを備えている。したがって、サクションスクリーン12の外側面が下方外側に向け傾斜しているので、傾いた油面L3とサクションスクリーン12との距離Aを作動油タンク2の容積を増量させることなく大きく確保することができる。
【0029】
また、作動油タンク2の容積を増量させないので、特に、機体の形状などからタンク容積の増量が困難な場合に有効である。
【0030】
さらに、サクションスクリーン12は円錐台状に、あるいはサクションスクリーン24のように角錐台状に形成すればよいので、製作が容易である。
【0031】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0032】
本実施の形態においては、サクションスクリーンは、傾斜面部Kを有した円錐台状に、あるいは角錐台状に形成されているが、傾斜面部Kをサクションスクリーンの外側面の一部の作動油タンク2の側板10側にのみ備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従って構成された、作動油タンクおよびサクションスクリーンの断面図。
【図2】本発明に従って構成された、サクションスクリーンの他の形態の概略斜視図。
【図3】従来の作動油タンクおよびサクションスクリーンの断面図。
【符号の説明】
【0034】
2:作動油タンク
6:ポンプ吸込口
8、12、24:サクションスクリーン
K:傾斜面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油タンクの底部のポンプ吸込口に設置されるサクションスクリーンが、
その外側面に上方から下方外側に向けて延びる傾斜面部を備えている、
ことを特徴とする作動油タンクのサクションスクリーン。
【請求項2】
サクションスクリーンが円錐台状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の作動油タンクのサクションスクリーン。
【請求項3】
サクションスクリーンが多角錐台状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の作動油タンクのサクションスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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