説明

作動液タンク

【解決手段】 本発明は、液体の還元剤を保つための、SCRタンクと称されるような、還元剤タンク1に関する。SCRタンクは、タンクを脱気するための少なくとも1つの装置を備え、その装置は、ガスの交換を許可するがタンクを圧力を締める方法で閉鎖する少なくとも1つの圧力補償素子(3)によって閉鎖される。還元剤タンク(1)は、また、圧力補償素子(3)と連絡する脱気ライン(5)を備え、脱気ライン(5)は、タンクが取り付け位置にあるとき、少なくともタンクの最大許容渡河レベルの上のポイントへと導かれる。脱気ライン(5)は、脱気のための第2の上昇ライン部(5b)と重力により引き起こされる凝縮液の排水のための第3の落下ライン(5c)とに分岐する少なくとも1つの第1の下向きに傾斜したライン部(5a)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の作動液タンクに関し、特に触媒排気ガス脱窒素(denitrogenization)のための液体の還元剤を保つための還元剤タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル自動車の排気ガスの浄化において、主に実用車において、いわゆるSCRプロセスはしばしば用いられる。SCRは、窒素酸化物がアンモニアによって還元されるいわゆる選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction)につき言及する。ここで、必要とされるアンモニアは、例えば水溶性尿素溶液の形式で、SCR触媒コンバータの排気ガス部上流に注入される。アンモニアと二酸化炭素は、加水分解反応により尿素水溶液から生成される。対応する温度の触媒コンバータにおいて、アンモニアは排気ガスの窒素酸化物と反応することができる。
【0003】
還元剤タンクは、従来、水溶液に存在する尿素のために、問題の車両に提供される。その後、尿素がアンモニアを放出すると、不快なにおいの排気を導いてしまうことがある。溶液の乾燥は、極めて強い結晶成長やボリュームの増加に関連する。それゆえに、自動車に携行される還元剤タンクは乾燥が起こらないようにしなければならない。既知の還元剤タンクは、限られた範囲でのガスの交換は許すが、液体で締める方法(liquid-tight fashion)でタンクを閉じる圧力補償素子によって閉じられる。既知の作動液タンクの圧力補償素子は、例えばガスの交換は許すが液体に不浸透性である焼結したカバーを備えている。逆止めバルブの形式で圧力補償素子を提供することも知られている。特に、もし液体により湿ると、焼結された材料で構成されたプラグを有する圧力補償素子は機能的に損なわれる。
【0004】
少なからずこの理由のために、既知の還元剤タンクは、限られた範囲で、オフロードカーの使用のためにただ適している。オフロードカーにおいては、確かな渡河能力のための要求がしばしばあり、渡河される水のボディの水位より下を少なくとも簡単に通過する車両の重要な部品を除外することは可能ではない。SCRタンクの既知のデザインにおいては、渡河能力はただ限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その結果、作動液タンク、特には、渡河能力を備えた車両の使用に適しており、その機能は渡河動作の間においてさえ確実である、触媒排気ガス脱窒素のための液体の還元剤を保つための還元剤タンク、を提供するとの目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的は、自動車の作動液タンクにより、特に、触媒排気ガス脱窒素のための液体の還元剤を保つための還元剤タンクにより達成され、それは、タンクを脱気するための少なくとも1つの装置を備え、その装置は、ガスの交換を許すがタンクを圧力を締める方法(pressure-tight manner)で閉じる少なくとも1つの圧力補償素子によって閉じられ、さらに、圧力補償素子と連絡する脱気ラインを備え、脱気ラインは、タンクが取り付け位置にあるとき、少なくともタンクの最大許容渡河レベルの上のポイントへと導かれ、そして脱気ラインは、脱気のための第2の上昇ライン部と重力により引き起こされる凝縮液(condensate)の排水のための第3の落下ライン部とに分岐する少なくとも1つの第1の下向きに傾斜したライン部を有する。
【0007】
本発明に従えば、たとえ還元剤タンクが水位よりも下に位置する場合であっても、この方法により、信頼性のある脱気は保証される。しかしながら、脱気ラインは凝縮液から自由にしておかれることが同時に保証され、上昇ラインの凝縮液フォーメーションは、いくつかの環境の下、脱気ラインの閉塞へと明確に導くだろう。冷水中を進むとき、還元剤タンクのガス相が縮み得るので、冷水か凝縮液が還元剤タンクで吸い込まれるように、脱気ラインの排他的な下降配置はある環境下では好ましくないこともあり得る。
【0008】
その一方、本発明に従えば、脱気ラインの第1ライン部は凝縮液の排出を確実なものとするために下降或いは下向きに傾斜したデザインであり、第2ライン部は脱気の目的のために上昇できるようにアレンジされ、第3ライン部は凝縮液の排出のために備えることが提供される。便宜上、少なくとも第3ライン部は、渡河プロセスの間、外側からの水の浸入を確実に防ぐ排水バルブにより閉鎖される。第2に、上側のライン部は、水中に沈む部位上の相当の間隔のところに位置している自動車の部位で好ましくは途絶えている。このライン部の問題の終端は、水或いは泥の侵入に対する更なる保護手段が必要とならないように、例えば、自動車の保護された本体部位にアレンジされてよい。
【0009】
本発明に従った作動液タンクの一つの好ましい実施形態では、第3ライン部の長さは、排水バルブがたまった凝縮液の液柱により作動されるように寸法付けられることが提供される。下方に延びた第3ライン部の長さは、十分なレベルの間隔が、ライン部の凝縮液レベルと圧力補償素子との間でいつでも維持されるように、更に選択される。
【0010】
排水バルブが無負荷時に閉められると特に都合がよい。
【0011】
例えば、排水バルブは、その油圧作動する表面が、外部からの上昇液体レベルが閉める力を強めるように、及び排水バルブが渡河レベルの外に位置している場合に限り内部からの上昇液体レベルによって凝縮液の排水が発生するように、寸法付けられている、少なくとも1つの柔軟で及び/又は弾性的な伸縮するバルブ本体を有してよい。
【0012】
排出バルブは、例えば、いわゆるマッシュルームバルブとしてデザインされてよい。逆止めバルブの異なるデザインが、マッシュルームバルブの代わりに、排出バルブとして提供されることも可能である。
【0013】
本発明に従った作動液タンクの一つの好ましい実施形態は図示された例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。本発明に従った作動液タンクの好ましい実施形態は還元剤タンクであるけれども、前記作動液タンクは、例えばウォッシャー液或いは燃料タンクのような、他のアプリケーションのために、本発明の主旨の範囲内で用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、水中に沈めた状態の本発明に従った還元剤タンクの概略図を示す。
【図2】図2は、図1の詳細IIの拡大図を示す。
【図3】図3は、閉じた状態の排出バルブを備えた、図1の詳細IIIの部分拡大図を示す。
【図4】図4は、排出バルブが開いた、図3に関連した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に図示されるように、還元剤タンク1は、いくらかの望ましい材料により構成され、いくらかの望ましい態様で生成されてよい。還元剤タンク1は、しかしながら、好ましくは熱可塑性物質により構成され、押し出しブロー成形により生成される。前記還元剤タンク1は、例えば、自動車のボディのリア部分に隠されて配置され、或いは自動車のエンジン室に配置される。還元剤タンク1は、水溶液の中に存在し、いわゆるSCR触媒コンバータの自動車の上流部門の排気ガス部に注入される、尿素を保つ役目を果たす。アンモニアと二酸化炭素は、加水分解反応により尿素水溶液から生成される。対応する温度のSCR触媒コンバータにおいて、アンモニアは排気ガスの中の窒素酸化物の還元をもたらすことができる。
【0016】
図から特にわかるように、中央の給気及び脱気開口部2は、取り付け位置において還元剤タンク1の上側に提供され、給気及び脱気開口部2は圧力補償素子3によって閉じられる。圧力補償素子3は、例えば、多孔の焼結プレートの形で、密閉された本体として形成されてよい。多孔の焼結された本体は、たとえば、親油性で疎水性の超高密度ポリエチレン(UHDPE;ultra high density polyethylene)により形成されてよい。前記材料は、ガスを浸透できるが、液体を浸透できない。
【0017】
圧力補償素子3は、ハウジングを形成するキャップの形式である脱気ハット4によりすっぽり包まれる。脱気ライン5a,5b,5cは、脱気ハットに接続されている。この際、還元剤タンク1の他の機能的な素子は、簡潔化のために図示されていないことが指摘される。還元剤タンク1は、例えばフィルターネックが接続される少なくとも1つのフィルター開口部を備えている。さらに、脱気を果たす手段、及び脱気プロセスの間、注入レベルを制限する手段、は提供される。
【0018】
図1から特にわかるように、脱気ライン5は、合計で3つのライン部5a,5b,5cを備えており、第1のライン部5aは、還元剤タンク1のほぼ水平な取り付け位置に対して、或いは前記還元剤タンク1に発生した液体レベルに対して、下方に傾斜したつくりで配置されている。脱気ライン5の第1ライン部5aは、すなわちサイフォンを作ることなく、脱気ライン5が第2上昇ライン部5bと第3落下ライン部5cに分岐するブランチ6へと、およそ直線的に延びている。脱気ラインの第2及び第3ライン部5b、5cは、いずれの場合にも、上側及び下側にそれぞれ反対方向に延びている。文言"上"及び"下"は、いずれの場合にも、自動車の還元剤タンク1の取り付け位置に関連している。表現"上"は重力の力に対向する方向を言及し、表現"下"は重力の力の方向を言及する。
【0019】
いま図3,4を参照するに、それは脱気ライン5のブランチ6及び第3ライン部5cの部分拡大図の各場合を示している。第3ライン部5cは、主に脱気ライン5の排水の役割を果たすが、その下端にて、マッシュルームバルブ8により閉じられるバルブハウジング7の中に広がっている。マッシュルームバルブ8は、バルブハウジング7の2つの排水開口部10を閉じるフレキシブルバルブ本体9を備えている。排水バルブは、マッシュルームバルブ8としてデザインされているが、バルブ本体9が無負荷時に閉じられる。自動車の動作の間に脱気ライン5に凝縮液が蓄積すると、凝縮液は重力の力に基づいて、第1の下向きに傾斜したライン部5aからブランチ6へと通過し、そこから凝縮液は、第3、垂直下向きに延びるライン部5cを通過し、前記凝縮液は最初にたまる。第3ライン部5cの長さは、還元剤タンク1の中の最も高い充填レベルより上に前記凝縮液が上ることなく多量の凝縮液がたまることができるように、寸法付けられている。バルブ本体9の油圧作動する表面及びその柔軟性は、図4に示されるように、特に凝縮液の柱がブランチ6に到達する前に、ライン部5cを昇る凝縮液の柱がバルブ本体9の開きを引き起こせるように寸法付けられている(dimensioned)。ライン部5cは、その上、バルブ本体9の閉じる力に対抗して少なくとも部分的に空になる。もし還元剤タンク1が、示される取り付け位置の液体(水)に沈むならば、第3ライン部5cを空にすることがもはや起こり得ないように、外部から作用する液体の静水圧は、バルブ本体9の閉じる力を強める。ここで、液体(水)は、外部から脱気ライン5の中に侵入することを確実に防止される。
【0020】
脱気ライン5の上端(不図示)は水に沈まない部位に配置されている。ラインの前記端は、"保護された"本体部位の環境(atmosphere)に連絡してよい。配置にもよるだろうが、水や泥の侵入を防ぐ更なる手段は必要とされない。
【0021】
脱気ラインの第3ライン部5cは、否応なしに垂直下方に延びている必要はからなずしもなく、斜めに走るように配置されてもよく、第3ライン部5cは、ループやサイフォンが形成されないように有利に経路が決められている。
【0022】
言及された例示的な実施形態において、第1ライン部5aは水平に対して45°よりも著しくより小さい角度で斜めに延びている。傾斜の角度や第1のライン部5aの下向きに傾斜する程度は、取り付け位置次第で異なってよい。
【符号の説明】
【0023】
1 還元剤タンク
2 給気及び脱気開口部
3 圧力補償素子
4 脱気ハット
5 脱気ライン
5a 第1ライン部
5b 第2ライン部
5c 第3ライン部
6 ブランチ
7 バルブハウジング
8 マッシュルームバルブ
9 バルブ本体
10 排水開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の作動液タンク、特に、触媒排気ガス脱窒素のための液体の還元剤を保つための還元剤タンク(1)であって、
前記タンクを脱気するための少なくとも1つの装置を備え、その装置は、ガスの交換を許すがタンクを圧力を締める方法で閉じる少なくとも1つの圧力補償素子(3)によって閉じられ、
さらに、前記圧力補償素子(3)と連絡する脱気ライン(5)を備え、前記脱気ライン(5)は、前記タンクが取り付け位置にあるとき、少なくとも前記タンクの最大許容渡河レベルの上のポイントへと導かれ、そして、前記脱気ライン(5)は、脱気のための第2の上昇ライン部(5b)と重力により引き起こされる凝縮液の排水のための第3の落下ライン(5c)とに分岐する少なくとも1つの第1の下向きに傾斜したライン部(5a)を有する、作動液タンク。
【請求項2】
少なくとも前記第3ライン部(5c)は、排水バルブによって閉じられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに従った作動液タンク。
【請求項3】
前記第3のライン部(5c)の長さは、前記排水バルブが蓄積された凝縮液の液柱により作動されることができるように寸法付けられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに従った作動液タンク。
【請求項4】
前記排水バルブは、無負荷時に閉められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに従った作動液タンク。
【請求項5】
前記排水バルブは、その油圧作動する表面が、外部からの上昇液体レベルが閉める力を強めるように、及び前記排水バルブが前記渡河レベルの外に位置している場合に限り内部からの上昇液体レベルによって凝縮液の排水が発生するように、寸法付けられている、少なくとも1つの柔軟で及び/又は弾性的な伸縮するバルブ本体(9)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに従った作動液タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519254(P2012−519254A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552350(P2011−552350)
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001229
【国際公開番号】WO2010/099907
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510169365)コーテックス テクストロン ジーエムビーエイチ アンド シーオー ケージー (12)
【Fターム(参考)】