説明

作業工具

【課題】先端工具を保持するクランプ部材の着脱に関する優れた技術を提供する。
【解決手段】電動式振動工具100は、スピンドル120と、スピンドル120に対して着脱可能なクランプシャフト123と、スピンドル120とクランプシャフト123の間に介在配置され、クランプシャフト123と螺合してクランプシャフト123をスピンドル120に固定するクランプシャフト保持部材130を有している。この電動式振動工具100は、クランプシャフト123によるクランプ作用を介してスピンドル120に保持されたブレード200を駆動する。そして、クランプシャフト保持部材130は、スピンドル120に対して相対回転可能に構成されており、クランプシャフト保持部材130の相対回転によりクランプシャフト123の取り外しが許容される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を駆動させる作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2002/0028644号公報には、スピンドルに対して着脱可能なクランピングフランジをスピンドル内部に配置されたスラストピースに螺合させた状態で、スラストピースを介してクランピングフランジを付勢することにより、スピンドルとクランピングフランジの間にツールを挟持する作業工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0028644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、米国特許出願公開第2002/0028644号公報の構成においては、クランピングフランジをスラストピースに螺合させる際のスラストピースの供回りを防止するために、スラストピースを回転不能に強固に保持する必要がある。そのため、スラストピースをスピンドルに固定しているが、クランピングフランジが締め付け過多になった場合等に、スラストピースの固定が解除されてしまうおそれがある。スラストピースの固定が解除されてしまうと、クランピングフランジが着脱不能となってしまう。そこで、本発明は、上記に鑑み、先端工具を保持するクランプ部材の着脱に関する優れた技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、駆動シャフトと、駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材と、駆動シャフトとクランプ部材の間に介在配置され、クランプ部材と螺合してクランプ部材を駆動シャフトに固定する螺合部材を有する作業工具が構成される。当該作業工具は、クランプ部材によるクランプ作用を介して駆動シャフトに保持された先端工具を駆動する。そして、螺合部材は、駆動シャフトに対して相対回転可能に構成されており、螺合部材の相対回転によりクランプ部材の取り外しが許容される構成である。
【0006】
本発明によれば、螺合部材が駆動シャフトに対して相対回転可能であるため、螺合部材を駆動シャフトに強固に固定するための構成が不要となる。その結果、クランプ部材の取付けにおいて、部品点数を減らすことができ、先端工具を保持するクランプ部材の着脱に関する優れた技術を提供することができる。
【0007】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、螺合部材に係合し、螺合部材の回転を制御可能な回転制御部材を有する。「螺合部材の回転を制御」とは、螺合部材を駆動シャフトに対して、回転自在に保持する態様や、回転不能に保持する態様を好適に包含する。
【0008】
本形態によれば、螺合部材の回転を制御可能な回転制御部材を有するため、螺合部材を回転させてクランプ部材に螺合または螺合を解除させたり、螺合部材を回転不能に保持してクランプ部材を螺合部材に螺合または螺合を解除させたりすることができる。すなわち、クランプ部材の着脱に関して複数の着脱態様を可能にしている。
【0009】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、回転制御部材は、螺合部材と係合する第1の位置と螺合部材と係合不能に離隔した第2の位置の間を駆動シャフトの長軸方向に移動可能なシャフト部と、シャフト部を移動させる駆動シャフトに対して移動可能なレバー部を有している。
【0010】
本形態によれば、レバー部を移動させる構成により、シャフト部を移動させて螺合部材を制御可能とすることができる。
【0011】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、回転制御部材は、シャフト部の軸方向に交差しシャフト部に対して回動可能に配置された保持ピンを有し、レバー部は、シャフト部に対して保持ピンによって当該保持ピンを中心とした第1方向に旋回可能に軸支されている。そして、レバー部の第1方向への旋回に伴ってシャフト部が第1の位置と第2の位置の間を移動する構成である。
【0012】
本形態によれば、レバー部の旋回によって、シャフト部を移動させることができ、簡単な構成および操作によって螺合部材の回転を制御することができる。
【0013】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、レバー部は、駆動シャフトの長軸方向周りの第2方向に旋回可能である。そして、レバー部の第2方向への旋回に伴ってシャフト部が長軸周りに回動する構成である。
【0014】
本形態によれば、レバー部の旋回によって、シャフト部を回動させることができ、簡単な構成および操作によって螺合部材の回転を制御することができる。
【0015】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、螺合部材は、それぞれがクランプ部材と螺合するねじ部を有する複数の螺合部材構成要素で構成されている。そして、複数の前記螺合部材構成要素を保持する保持部材を有し、保持部材が複数の螺合部材構成要素を保持することによって、複数の螺合部材構成要素が螺合部材を構成している。
【0016】
本形態によれば、螺合部材が複数の螺合部材構成要素で構成されていることで、各螺合部材構成要素が保持部材に保持されていない時には、各螺合部材構成要素が移動することができる。そのため、各螺合部材構成要素がクランプ部材に対して移動して係合することができる。そして、係合した後に保持部材が螺合部材構成要素を保持することで、クランプ部材を螺合部材に螺合させることができる。すなわち、螺合のみによってクランプ部材と螺合部材を固定する構成の場合には、クランプ部材と螺合部材を軸方向周りに相対回転させて螺合させることにより、クランプ部材と螺合部材の軸方向の相対位置が変化して、クランプ部材と螺合部材が固定されることになる。しかしながら、本形態においては、螺合部材が複数の螺合部材構成要素で構成されており、各螺合部材構成要素が移動可能であるため、クランプ部材と螺合部材を螺合させることなく、クランプ部材と螺合部材の軸方向の相対位置を変化させることができる。軸方向においてクランプ部材と螺合部材が所定の相対位置に位置した後にクランプ部材と螺合部材を螺合させることにより、クランプ部材と螺合部材を固定することができる。したがって、クランプ部材を螺合部材に素早く螺合させることができる。
【0017】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、クランプ部材は、先端工具をクランプする複数のクランプ部材構成要素で構成されている。そして、螺合部材は、クランプ部材と螺合してクランプ部材構成要素によってクランプされた先端工具を駆動シャフトに保持する構成である。
【0018】
本形態によれば、クランプ部材構成要素が予め先端工具をクランプしていることにより、クランプ部材を螺合部材に螺合させる構成が容易になる。
【0019】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、螺合部材は、雌ねじが形成されており、クランプ部材は、雌ねじと螺合する雄ねじが形成されている。
【0020】
本形態によれば、螺合部材側に雌ねじが形成され、クランプ部材側に雄ねじが形成されているため、取り外されるクランプ部材を小型化することができる
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、先端工具を保持するクランプ部材の着脱に関する優れた技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】図3のIV−IV線におけるクランプシャフト保持部材の断面図である。
【図5】図1のカムレバーを旋回させた状態において、係合部材とクランプシャフト保持部材が係合している状態を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線における断面図である。
【図7】図1のカムレバーを旋回させた状態において、係合部材とクランプシャフト保持部材が係合していない状態を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【図9】図8のIX−IX線におけるクランプシャフト保持部材の断面図である。
【図10】クランプシャフト保持部材の2つの分割部材が離隔して配置されている状態を示す断面図である。
【図11】図10のXI−XI線におけるクランプシャフト保持部材の断面図である。
【図12】図10のカムレバーを旋回させた状態において、係合部材とクランプシャフト保持部材が係合している状態を示す図である。
【図13】図12のXIII−XIII線における断面図である。
【図14】第3実施形態に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【図15】工具クランプ部材がスピンドルから分離した状態を示す断面図である。
【図16】工具クランプ部材の分解断面図である。
【図17】図15の電動式振動工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。本実施形態は、作業工具として、電動式振動工具に本発明を適用した例である。
【0024】
図1に示すように、電動式振動工具100は、例えば、ブレードや研磨パッド等の複数種類の工具を選択的に装着し、装着された工具を振動させて、被加工材に対して工具の種類に応じた切断や研磨などの加工を行う作業工具である。本実施形態では、工具の一例としてブレード200を用いて説明する。なお、ブレード200等の工具が、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。
【0025】
図1〜図3に示すように、電動式振動工具100は、本体ハウジング101に収納された駆動機構102、工具保持機構103、回転制御機構104等を主体として構成されている。
【0026】
駆動機構102は、モータ110、偏心軸112、ベアリング113、被駆動アーム114、スピンドル接続部115等を主体として構成されている。偏心軸112は、モータ110の出力軸111の先端であって、出力軸111の回転軸に対して偏心した位置に、回転軸と平行な方向に延在して配置されている。ベアリング113は、偏心軸112に取り付けられている。被駆動アーム114は、図2に示すように、スピンドル接続部115からモータ110に向けて延在する2本のアーム部114aで構成されている。そして、被駆動アーム114は、2本のアーム部114aがベアリング113の外側の対向する2箇所において、ベアリング113に当接するように配置されている。
【0027】
工具保持機構103は、ブレード200を保持するとともに、モータ110の出力をブレード200に伝達させてブレード200を振動させる機構であり、スピンドル120、クランプシャフト123、ナット130等を主体として構成されている。
【0028】
スピンドル120は、中空の円筒状部材であり、モータ110の出力軸111に対して交差する方向に長軸方向が延在するように配置されている。スピンドル120は、長軸方向の2箇所において、長軸方向周りに回転可能にベアリング125,126を介して、本体ハウジング101に支持されている。本体ハウジング101の外側におけるスピンドル120の先端部には、スピンドル延長部材121が取り付けられている。スピンドル延長部材121は、スピンドル120と係合する部分がスピンドル120の外形と略同じ大きさの内径を有し、スピンドル120から長軸方向に突出した部分は、円錐状に形成された内部形状を有する。また、スピンドル延長部材121の先端部には、円盤状のフランジ122が取り付けられている。このスピンドル120が、本発明における「駆動シャフト」に対応する実施構成例である。以下においては、スピンドル120の長軸方向を長軸方向と称し、長軸方向に交差する方向を交差方向と称し、長軸周りの方向を周方向と称する。
【0029】
クランプシャフト123は、略円柱状の部材であり、一方の端部に一体に形成されたクランプヘッド124を有しており、他方の端部側にねじを有している。具体的には、他端部側に、雄ねじが形成されている。クランプシャフト123は、スピンドル120の内側に挿入可能で、スピンドル120に対して着脱可能に構成されている。このクランプシャフト123が、本発明における「クランプ部材」に対応する実施構成例である。
【0030】
以上の通り構成されたスピンドル120、スピンドル延長部材121、フランジ122およびクランプシャフト123は、クランプヘッド124と、クランプヘッド124に対向するフランジ122との間にブレード200を挟持可能とされている。
【0031】
図3に示すように、クランプシャフト保持部材130は、クランプシャフト123と螺合してクランプシャフト123を保持する機構である。クランプシャフト保持部材130は、先端部が円錐状の外形を有する中空の略円筒状の部材である。円錐状の外形が、スピンドル延長部材121の円錐状の内部形状と一致して、クランプシャフト保持部材130とスピンドル延長部材121が係合するよう構成されている。
【0032】
図4に示すように、クランプシャフト保持部材130の中空部分は、クランプシャフト123と螺合するねじを有するねじ部131が設けられている。このねじ部131には、雌ねじが形成されている。また、クランプシャフト130には、係合部材141と係合する溝部132が形成されている。図3に戻り、このクランプシャフト保持部材130は、スピンドル120の内部に配置されており、先端部がスピンドル120から突出している。この先端部は、スピンドル延長部材121の内部に配置されている。クランプシャフト保持部材130は、スピンドル120およびスピンドル延長部材121に対して、周方向に相対回転可能とされている。クランプシャフト保持部材130の外周には、Oリング133が配置されており、クランプシャフト保持部材130が周方向に回動したときに、スピンドル120の内側の壁との間に摩擦抵抗を生じさせている。このクランプシャフト保持部材130が、本発明における「螺合部材」に対応する実施構成例である。
【0033】
回転制御機構104は、クランプシャフト保持部材130の周方向の相対回転を制御する機構であり、スラストピン140、係合部材141、連結部材142、コイルバネ143、カムレバー150等を主体として構成されている。この回転制御機構104を構成する部材が、本発明における「回転制御部材」に対応する実施構成例である。
【0034】
図1、図3に示すように、スラストピン140は、スピンドル120の内側に配置され、長軸方向に摺動可能とされている。係合部材141は、クランプシャフト保持部材130の溝部132と係合可能であり、スラストピン140の先端部に配置されている。連結部材142は、交差方向にスラストピン140から突出した円盤状の部材であり、スラストピン140と係合部材141の間に配置されている。スラストピン140と係合部材141は、連結部材142を介して結合されており、一体となってスピンドル120内部を長軸方向に摺動可能であり、周方向に旋回可能に構成されている。コイルバネ143は、スピンドル120の内部に配置され、一端が連結部材142に当接し、他端がスピンドル120に当接している。これにより、スラストピン140、係合部材141および連結部材142をスピンドル120の内部において、クランプシャフト保持部材130が配置された方向に付勢している。このスラストピン140が、本発明における「シャフト部」に対応する実施構成例である。
【0035】
図1、図3に示すように、カムレバー150は、スラストピン140を長軸方向に摺動させる部材であり、レバー部151、偏心部152、旋回軸153、回転部材154を主体として構成されている。カムレバー150は、レバー部151が旋回軸152回りに旋回可能であるとともに、スピンドル120の長軸周りに旋回可能に構成されている。このレバー部151、旋回軸152がそれぞれ、本発明における「レバー部」、「保持ピン」に対応する実施構成例である。
【0036】
レバー部151は、偏心部152に連接されている。偏心部152には、旋回軸153が貫通する穴が形成されている。旋回軸153は、偏心部152に挿通し、回転部材154に長軸方向に移動可能に保持されている。これにより、偏心部152およびレバー部151が、旋回軸153回りに旋回可能とされている。偏心部152は中心位置が、旋回軸153の軸中心に対して偏心して配置されており、これにより、偏心部152の外周の各箇所において、旋回軸153の軸中心からの距離が異なるように構成されている。
【0037】
回転部材154は、Oリング155を介して長軸周りに旋回可能に本体ハウジング101に取り付けられている。回転部材154は、交差方向の断面における外形が円形である旋回部154aと、旋回部154aから長軸方向に延在した2つの支持部154bから構成されている。2つの支持部154bの間で、旋回軸153を長軸方向に移動可能に保持しており、旋回軸153を介して偏心部152およびレバー部151を旋回可能に支持している。回転部材154が、周方向に旋回することで、レバー部151が周方向に旋回可能に構成されている。
【0038】
以上の通り構成された回転制御機構104は、レバー部151を、図1に示す位置と、図5に示す位置の間を旋回軸153を中心に旋回させることで、スラストピン140を長軸方向に移動させることができる。スラストピン140を移動させることで、係合部材141が、クランプシャフト保持部材130の溝部132に係合可能となる。
【0039】
具体的には、図1に示すように、旋回軸153が支持部154bにおいて本体ハウジング101から離隔した位置に位置する場合には、係合部材141は、溝部132と係合不能である。一方、図5、図6に示すように、レバー部151を旋回軸153周りに旋回させて、旋回軸153が支持部154bにおいて本体ハウジング101に近接した位置に位置する場合には、スラストピン140および係合部材141が、図1の位置に対して下方に移動し、係合部材141が溝部132と係合する。
【0040】
クランプシャフト保持部材130は、周方向に相対回転可能であるため、溝部132の位置によっては、レバー部151を旋回させても、図7に示すように、係合部材141と溝部132が係合しない場合がある。そのような場合には、レバー部151を周方向に旋回させて、係合部材141と溝部132の位置が一致させることで、コイルバネ143の付勢力によって係合部材141と溝部132を係合させることができる。
【0041】
ブレード200を着脱する際は、レバー部151を旋回させて、係合部材141と溝部132を係合させることで、クランプシャフト保持部材130の周方向の回動を制御する。
【0042】
具体的には、係合部材141と溝部132を係合させた状態で、レバー部151を周方向に旋回させることによって、クランプシャフト保持部材130を周方向に回動させる。すなわち、クランプシャフト123を回動不能に保持した状態で、レバー部151を周方向に旋回させることで、クランプシャフト123とクランプシャフト保持部材130を螺合させ、あるいは螺合を解除することができる。クランプシャフト123がクランプシャフト保持部材130から取り外されることで、ブレード200を着脱することができる。また、クランプシャフト123がクランプシャフト保持部材130に螺合して保持されることで、ブレード200がフランジ122とクランプヘッド124の間に挟持される。クランプシャフト123とクランプシャフト保持部材130を螺合させる場合には、スピンドル延長部在121とクランプシャフト保持部材130の円錐状部分が互いに係合して、クランプシャフト123を強固に螺合させることができる。
【0043】
以上の通り構成された電動式振動工具100は、モータ110が通電駆動されると、図2に示すように、出力軸111の回転運動は、偏心軸112およびベアリング113によって、矢印Aで示される方向(以下、A方向)への往復運動に変換される。A方向への往復運動は、被駆動アーム114に伝達されて、スピンドル接続部115を中心とした矢印Bで示されるスピンドル120周りの円周方向(以下、B方向)への所定の角度をなす回転運動に変換される。これにより、スピンドル接続部115に接続されたスピンドル120がB方向に往復駆動される。その結果、フランジ121とクランプヘッド124で挟持されたブレード200を振動させて、被加工材に対して切断等の加工をすることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図8〜図13を参照して詳細に説明する。ただし、第1実施形態と同じ構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0045】
図8、図9に示すように、第2実施形態においては、クランプシャフト保持部材230が、2つの分割部材234で構成されている。2つの分割部材234は対向して配置されており、それぞれの分割部材234には、ねじ部231と溝部232が形成されている。2つの分割部材234は、対向する面が互いに当接して一体となる。対向する面が当接して一体となった2つの分割部材234の外径は、スピンドル120の内径よりも小さく構成されており、2つの分割部材234は、スピンドル120の内部をそれぞれ独立して、長軸方向、および交差方向に移動可能に構成されている。このクランプシャフト保持部材230が、本発明における「螺合部材」に対応し、分割部材234が、本発明における「螺合部材構成要素」に対応する実施構成例である。
【0046】
連結部材142と分割部材234の間には、保持用バネ235が設けられている。保持用ばね235は、一端が連結部材142に当接し、他端が2つの分割部材234に当接しており、分割部材234をスピンドル延長部材121の円錐状部分に向けて付勢して、分割部材234の姿勢を保持する。
【0047】
2つの分割部材234は、長軸方向における図8の下方に移動すると、図9に示すように、対向する面が互いに当接して一体となる。すなわち、2つの分割部材234は、スピンドル延長部材121の円錐状部分に係合して保持され、互いに近接する方向に移動することで一体となる。一体となった2つの分割部材234は、ねじ部231がクランプシャフト230と螺合することができる。このスピンドル延長部在121が、本発明における「保持部材」に対応する実施構成例である。
【0048】
一方、2つの分割部材234は、長軸方向における図10の上方に移動すると、図11に示すように、互いに交差方向に移動して離隔する。離隔した2つの分割部材234は、ねじ部231がクランプシャフト230と螺合不能となる。これにより、クランプシャフト230がねじ部231の長軸方向に移動自在となる。
【0049】
ブレード200を着脱する際は、第1実施形態と同様に、図12、図13に示すように、レバー部151を旋回させることにより、スラストピン140を長軸方向に移動させて、係合部材141と溝部132を係合させることで、クランプシャフト保持部材130の周方向の回動を制御する。
【0050】
具体的には、ブレード200を装着する際には、図10に示すように、2つの分割部材234が離隔した状態で、ブレード200を挿通させたクランプシャフト123をクランプシャフト保持部材230に挿入する。2つの分割部材234は、クランプシャフト123に押圧されて長軸方向の上方に移動することによって、2つの分割部材234が交差方向に離隔し2つの分割部材234の間に隙間が形成される。2つの分割部材234が離隔することで、クランプシャフト123はクランプシャフト保持部材230のねじ部231と螺合することなく、挿入することができる。その後、図12に示すように、レバー部151を旋回軸153周りに旋回させて、スラストピン140を長軸方向に移動させて、係合部材141と溝部232を係合させることで、2つの分割部材234を長軸方向の下方に移動させる。このとき、2つの分割部材234は、交差方向における互いに近接する方向に移動する。
【0051】
図13に示すように、係合部材141と溝部232を係合させた状態で、レバー部151を周方向に旋回させることによって、一体となった2つの分割部材234、すなわちクランプシャフト保持部材230を周方向に回動させる。クランプシャフト123を回動不能に保持した状態で、レバー部151を周方向に旋回させることで、一体となった2つの分割部材234がクランプシャフト123と螺合して保持する。これにより、ブレード200がフランジ122とクランプヘッド124の間に挟持される。
【0052】
一方、ブレード200の装着を解除する際には、図13に示すように、係合部材141と溝部232を係合させた状態で、レバー部151を周方向に旋回させることによって、一体となった2つの分割部材234、すなわちクランプシャフト保持部材230を周方向に回動させる。ブレード200を装着する際とは逆にレバー部151を周方向に旋回させることで、一体となった2つの分割部材234とクランプシャフト123の螺合を解除することができる。これにより、クランプシャフト123を、クランプシャフト保持部材230から取り外すことができる。クランプシャフト123がクランプシャフト保持部材130から取り外されることで、ブレード200を着脱することができる。
【0053】
以上の第2実施形態によれば、2つの分割部材234が離隔することで、クランプシャフト123はクランプシャフト保持部材230のねじ部231と螺合することなく、挿入することで、クランプシャフト123とクランプシャフト保持部材230の軸方向の相対位置を変化させることができる。そのため、クランプシャフト保持部材が分割不能に形成されている場合に比べて、クランプシャフト123を螺合させるためのクランプシャフト保持部材230の周方向への回転数を減らすことができ、クランプシャフト123の装着を迅速に行うことができる。
【0054】
以上の第1実施形態および第2実施形態によれば、クランプシャフト保持部材130,230に係合する係合部材141によって、クランプシャフト保持部材130,230の回転を制御することができる。そのため、クランプシャフト保持部材130,230を回転させたり、回転を規制したりすることができる。したがって、クランプシャフト123を回転不能に保持した状態で、クランプシャフト保持部材130,230を回転させることで、クランプシャフト123をスピンドル120に固定して、フランジ122とクランプヘッド124の間にブレード200を挟持することができる。一方で、クランプシャフト保持部材130,230を回転不能に保持した状態で、クランプシャフト123を回転させることで、クランプシャフト123をスピンドル120に固定して、フランジ122とクランプヘッド124の間にブレード200を挟持することができる。すなわち、ブレード200の着脱に関して、複数の着脱態様を可能にしている。
【0055】
また、第1実施形態および第2実施形態によれば、カムレバー150は、レバー部151を旋回軸153に対して旋回させるだけで、スラストピン140を長軸方向に移動させることができる。これにより、スラストピン140と一体となった係合部材141をクランプシャフト保持部材130,230に係合させることができる。
【0056】
また、第1実施形態および第2実施形態によれば、カムレバー150は、レバー部151が旋回軸153に対して旋回可能であるだけでなく、レバー部151が回転部材154に保持されていることにより周方向に対しても回動可能である。すなわち、カムレバー150は、スラストピン140を長軸方向に移動させて係合部材140をクランプシャフト保持部材130,230に係合させる機能と、係合部材140を周方向に回動させることでクランプシャフト保持部材130,230を周方向に回動させる機能の2つの機能を有する。
【0057】
以上の第1実施形態および第2実施形態においては、係合部材141と溝部132,232を係合させた状態で、レバー部151を周方向に旋回させたが、これには限定されない。すなわち、係合部材141と溝部132,232を係合させた状態で、レバー部151を固定して、クランプシャフト123を周方向に回動させることにより、クランプシャフト123とクランプシャフト保持部材130,230を螺合させてもよい。
【0058】
また、第1実施形態および第2実施形態においては、クランプシャフト123に雄ねじが形成されており、クランプシャフト保持部材130,230に雌ねじが形成されていたが、これには限られない。例えば、クランプシャフト123に雌ねじが形成され、クランプシャフト保持部材130,230に雄ねじが形成されていてもよい。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図14〜図17を参照して詳細に説明する。ただし、第1実施形態と同じ構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0060】
図14に示すように、第3実施形態においては、クランプシャフト保持部材330が、スピンドル120の外側に、スピンドル120に対して周方向に相対回転可能に配置されている。クランプシャフト保持部材330が、工具クランプ部材340に螺合して保持することで、工具クランプ部材340に挟持されたブレード200を保持する。
【0061】
図15に示すように、スピンドル120は、中心部分に工具クランプ部材340が挿入される係合穴が形成されている。係合穴は、交差方向における断面が、六角形部分120aと円形部分120bにより構成されている。
【0062】
クランプシャフト保持部材330は、貫通穴が形成された環状部材である。貫通穴には、ねじを有するねじ部330aが設けられている。このねじ部330aには、雌ねじが形成されており、ねじ部330aに設けられているねじは右ねじである。このクランプシャフト保持部材330が、本発明における「螺合部材」に対応する実施構成例である。
【0063】
工具クランプ部材340は、クランプシャフト341、ツールホルダ342、ロックナット343を主体として構成されている。
【0064】
図16に示すように、クランプシャフト341は、スピンドル120の係合穴に挿入されるシャフト341aと、ねじを有するねじ部341bが設けられている。ねじ部341bには、雄ねじが形成されている。シャフト341aは、図17に示すように、断面が六角形状部分341a1と円形状部分341a2とが軸方向に連接して構成されている。ねじ部341bに設けられているねじは左ねじである。
【0065】
ツールホルダ342は、シャフト341aに挿通されてクランプシャフト341と係合する環状部材である。ツールホルダ342は、ブレード200と係合する複数の凸部342aを有する。
【0066】
ロックナット343は、シャフト341aに挿通されてクランプシャフト341およびツールホルダ342と係合する環状部材である。ロックナット343の外周部には、ねじを有するねじ部343aが設けられている。ねじ部343aには、雄ねじが形成されている。また、ロックナット343の貫通穴には、ねじを有するねじ部343bが設けられている。ねじ部343bには、雌ねじが形成されている。ねじ部343aのねじは右ねじであり、ねじ部343bのねじは左ねじである。また、ロックナット343は、貫通穴周りに周方向に形成された凹溝343cを有する。
【0067】
以上の通り構成された工具クランプ部材340は、クランプシャフト341に挿通されたツールホルダ342とロックナット343によってブレード200を挟持する。具体的には、ツールホルダ342がクランプシャフト341に取り付けられ、ブレード200に形成された複数の穴が、クランプシャフト341およびツールホルダ342の複数の凸部342aと係合するように配置される。そして、ロックナット343のねじ部343bのねじとクランプシャフト341のねじ部341bのねじを螺合させて、ロックナット343をクランプシャフト341に取り付けることで、ツールホルダ342とロックナット343の間にブレード200を挟持する。この工具クランプ部材340が、本発明における「クランプ部材」に対応する実施構成例である。また、クランプシャフト341、ツールホルダ342、ロックナット343が、本発明における「クランプ部材構成要素」に対応する実施構成例である。
【0068】
工具クランプ部材340はブレード200を挟持した状態で、シャフト341aがスピンドル120の係合穴に挿入される。このとき、六角形状部分341a1と六角形部分120aが係合し、工具クランプ部材340がスピンドル120に対して回動不能となる。そして、クランプ保持部材330のねじ部330aのねじとロックナット343のねじ部343aのねじを螺合させることで、ブレード200がスピンドル120に固定される。
【0069】
以上の第3実施形態によれば、工具クランプ部材340が予めブレード200を保持した状態で、スピンドル120に螺合させることにより着脱可能であるため、スピンドル120に対してブレード200を直接固定する場合に比べて、スピンドル120に対するブレード200の固定する構成が容易になる。
【0070】
また、第3実施形態によれば、ブレード200を挟持するためのねじ部341b、343bには、左ねじが形成されており、工具クランプ部材340をスピンドル120に固定するためのねじ部330a、343aには右ねじが形成されているため、ブレード200を駆動させて被加工材を加工する際の振動によって、螺合したねじが緩むおそれがない。
【0071】
以上の第3実施形態においては、工具クランプ部材340に雄ねじが形成されており、クランプシャフト保持部材330に雌ねじが形成されていたが、これには限られない。例えば、工具クランプ部材340に雌ねじが形成され、クランプシャフト保持部材330に雄ねじが形成されていてもよい。また、工具クランプ部材340のうち、クランプシャフト341にクランプシャフト保持部材330と螺合するねじが形成されていてもよい。
【0072】
以上の各実施形態によれば、クランプシャフト保持部材130,230,330がスピンドル120に対して相対回転可能に構成されているため、スピンドル120に対して常時固定するための構成が不要となる。
【0073】
以上においては、先端工具としてブレード200を用いて説明したが、これにはかぎられない。例えば、先端工具として研磨パッド等の他の種類の先端工具を取り付けてもよい。
【0074】
また、以上においては、作業工具として、電動式振動工具100を用いて説明したが、これには限られず、先端工具を挟持する作業工具であれば、例えばグラインダや丸鋸のように先端工具が回転する作業工具にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 電動式振動工具(作業工具)
101 本体ハウジング
102 駆動機構
103 工具保持機構
104 ナット回転制御機構
110 モータ
111 出力軸
112 駆動軸
113 ベアリング
114 被駆動アーム
115 スピンドル接続部
120 スピンドル(駆動シャフト)
121 スピンドル延長部材
122 フランジ
123 クランプシャフト(クランプ部材)
124 クランプヘッド
130 クランプシャフト保持部材(螺合部材)
131 ねじ部
132 溝部
133 Oリング
140 スラストピン
141 係合部材
142 連結部材
143 コイルバネ
150 カムレバー
151 レバー部
152 偏心部
153 旋回軸
154 回転部材
155 Oリング
200 ブレード(先端工具)
230 クランプシャフト保持部材(螺合部材)
231 ねじ部
232 溝部
234 分割部材(螺合部材構成要素)
235 保持用バネ
330 クランプシャフト保持部材(螺合部材)
340 工具クランプ部材(クランプ部材)
341 クランプシャフト
342 ツールホルダ
343 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材と、
前記駆動シャフトと前記クランプ部材の間に介在配置され、前記クランプ部材と螺合して前記クランプ部材を前記駆動シャフトに固定する螺合部材を有し、
前記クランプ部材によるクランプ作用を介して前記駆動シャフトに保持された先端工具を駆動する作業工具であって、
前記螺合部材は、前記駆動シャフトに対して相対回転可能に構成されており、
前記螺合部材の相対回転により前記クランプ部材の取り外しが許容される構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載の作業工具であって、
前記螺合部材に係合し、前記螺合部材の回転を制御可能な回転制御部材を有することを特徴とする作業工具。
【請求項3】
請求項2に記載の作業工具であって、
前記回転制御部材は、前記螺合部材と係合する第1の位置と前記螺合部材と係合不能に離隔した第2の位置の間を前記駆動シャフトの長軸方向に移動可能なシャフト部と、前記シャフト部を移動させる前記駆動シャフトに対して移動可能なレバー部を有していることを特徴とする作業工具。
【請求項4】
請求項3に記載の作業工具であって、
前記回転制御部材は、前記シャフト部の軸方向に交差し前記シャフト部に対して回動可能に配置された保持ピンを有し、
前記レバー部は、前記シャフト部に対して前記保持ピンによって前記保持ピンを中心とした第1方向に旋回可能に軸支されており、
前記レバー部の前記第1方向への旋回に伴って前記シャフト部が前記第1の位置と前記第2の位置の間を移動する構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の作業工具であって、
前記レバー部は、前記駆動シャフトの長軸方向周りの第2方向に旋回可能であり、
前記レバー部の前記第2方向への旋回に伴って前記シャフト部が前記長軸周りに回動する構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記螺合部材は、それぞれが前記クランプ部材と螺合するねじ部を有する複数の螺合部材構成要素で構成されており、
複数の前記螺合部材構成要素を保持する保持部材を有し、
前記保持部材が複数の前記螺合部材構成要素を保持することによって、複数の前記螺合部材構成要素が前記螺合部材を構成していることを特徴とする作業工具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記先端工具をクランプする複数のクランプ部材構成要素で構成されており、
前記螺合部材は、前記クランプ部材と螺合して前記クランプ部材構成要素によってクランプされた前記先端工具を前記駆動シャフトに保持することを特徴とする作業工具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記螺合部材は、雌ねじが形成されており、
前記クランプ部材は、前記雌ねじと螺合する雄ねじが形成されていることを特徴とする作業工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−94904(P2013−94904A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240444(P2011−240444)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】