説明

作業機付車両

【課題】乗用型芝刈り車両において、電動モータの冷却系を改良することである。
【解決手段】2個の主駆動輪12,14を駆動する第1電動モータ16および第2電動モータ18と、芝刈り機とを備え、第1電動モータ16および第2電動モータ18のそれぞれの回転軸54の端部に空冷用ファン78を固定する。これにより、空冷用ファン78の駆動により送られる冷却風により、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却する。電動モータ16,18を駆動するインバータである、モータ制御ユニット76を空冷用ファン78と対向させることにより、モータ制御ユニット76も、空冷用ファン78に送られる冷却風により冷却されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機とを備える乗用型芝刈り車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から芝刈り機を備える芝刈り車両において、人が車両の後側で操作するウォークビハインド式芝刈り車両と、人が乗車して運転する乗用型芝刈り車両とが知られている。また、乗用型芝刈り車両において、走行用動力源により駆動する主駆動輪と、芝刈り機とを備える乗用型芝刈り車両も考えられている。
【0003】
このような乗用型芝刈り車両は、人が乗車して運転しながら、芝刈り機により芝を所定の長さに調節するために利用する。特許文献1および特許文献2には、このような乗用型電動芝刈り車両において、エンジンと、エンジンにより駆動される発電機と、走行用の電動モータとを備え、発電機により発電された電力を電動モータに供給することにより、2個の後輪(特許文献1の場合)または2個の前輪(特許文献2の場合)を駆動するいわゆるハイブリッド型の乗用型芝刈り車両が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、2個の前輪と、後輪である1個のキャスタ輪と、燃料電池と、走行用の電動モータとを備え、燃料電池により発電された電力を電動モータに供給することにより、2個の前輪を駆動する乗用型芝刈り車両が記載されている。また、特許文献4には、2個ずつの前輪および後輪と、バッテリと、バッテリから供給される電力を電動モータに供給することにより、2個の後輪を駆動する乗用型芝刈り車両が記載されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第7017327号明細書
【特許文献2】米国特許第6591593号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/086412号パンフレット
【特許文献4】米国特許第3732671号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1から特許文献4に記載された乗用型芝刈り車両の場合、電動モータの冷却系に対して改良の余地がある。例えば、特許文献1から特許文献4に記載された乗用型芝刈り車両において、車輪駆動用の電動モータ、キャスタ輪操向用の電動モータ、芝刈り機駆動用の電動モータ等の種々の電動モータを設けることが考えられるが、電動モータは使用時に温度上昇しやすいため、適度に冷却することが性能向上の面から好ましい。これに対して、特許文献1から特許文献4に記載された乗用型芝刈り車両の場合、電動モータを冷却することに対して改良の余地がある。また、電動モータの駆動のために制御回路部およびインバータを使用することも考えられるが、制御回路部およびインバータの冷却の面からも改良の余地がある。また、電動モータを冷却するために冷媒を使用することも考えられるが、冷媒を流す冷媒配管に対しても改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、乗用型芝刈り車両において、電動モータの冷却系を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち、第1の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、電動モータの回転軸に空冷用ファンを固定したことを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0009】
また、本発明のうち、第2の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、2個の駆動輪をそれぞれ2個の電動モータにより駆動し、2個の電動モータは、単一の冷媒ポンプにより冷媒流路を循環させる冷媒により共通して冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0010】
また、本発明のうち、第3の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、電動モータの動力を、減速歯車装置を介して駆動輪に伝達可能としており、電動モータは、油または水により冷却しており、減速歯車装置を構成するケースの内部に、潤滑油またはグリースを封入していることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0011】
また、本発明のうち、第4の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、内燃機関と、内燃機関により駆動される発電機と、を備え、発電機により発電された電力を直接または蓄電部を介して電動モータに供給可能としており、かつ、内燃機関の冷却用のラジエータを通過する冷却水により電動モータを冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0012】
また、本発明のうち、第5の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、操向輪であるキャスタ輪を備え、キャスタ輪を操向するための操向用電動モータと、キャスタ輪を回転駆動するための駆動用電動モータとのうち、一方または両方を構成するケースの外側に冷却フィンを設けていることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0013】
また、本発明のうち、第6の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、芝刈り機を駆動する芝刈り機駆動用電動モータを備え、芝刈り機駆動用電動モータは、ラジエータまたはオイルクーラを冷却する冷却風の通過方向に沿って配置していることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0014】
また、本発明のうち、第7の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、電動モータを冷却するために循環させる冷媒により、制御回路部およびインバータの少なくとも一方を冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0015】
また、本発明のうち、第8の発明に係る乗用型芝刈り車両は、電動モータにより駆動する駆動輪と、芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、電動モータを冷却するための冷媒を流す冷媒配管を、駆動輪を支持するフレームの幅方向両端部に上下方向に突出する状態で設けた2個の立板部の内側に配置していることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータの冷却系を改良することができる。例えば、第1の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータの回転軸に空冷用ファンを固定しているので、電動モータを効率よく冷却できる。
【0017】
また、第2の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、2個の駆動輪をそれぞれ2個の電動モータにより駆動し、2個の電動モータは、単一の冷媒ポンプにより冷媒流路を循環させる冷媒により共通して冷却するので、2個の電動モータを効率よく冷却できる。
【0018】
また、第3の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータの動力を、減速歯車装置を介して駆動輪に伝達可能としており、電動モータは、油または水により冷却しており、減速歯車装置を構成するケースの内部に、潤滑油またはグリースを封入しているので、減速歯車装置を、電動モータを冷却する油または水により冷却する必要がなくなり、電動モータを効率よく冷却できる。
【0019】
また、第4の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、発電機により発電された電力を直接または蓄電部を介して電動モータに供給可能としており、かつ、内燃機関の冷却用のラジエータを通過する冷却水により電動モータを冷却するので、内燃機関冷却用と、電動モータ冷却用とで、冷却水を循環させる冷却水回路と、ラジエータと、冷却水ポンプとを共通して使用することができ、部品点数の削減によるコスト低減と、軽量化と、乗用型芝刈り車両の空間の有効利用の程度の向上とを図れる。
【0020】
また、第5の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、操向輪であるキャスタ輪を備え、キャスタ輪を操向するための操向用電動モータと、キャスタ輪を回転駆動するための駆動用電動モータとのうち、一方または両方を構成するケースの外側に冷却フィンを設けているので、キャスタ輪用の操向用電動モータと駆動用電動モータとの一方または両方を効率よく冷却できる。
【0021】
また、第6の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、芝刈り機駆動用電動モータは、ラジエータまたはオイルクーラを冷却する冷却風の通過方向に沿って配置しているので、芝刈り機駆動用電動モータを効率よく冷却できる。
【0022】
また、第7の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータを冷却するために循環させる冷媒により、制御回路部およびインバータの少なくとも一方を冷却するので、制御回路部およびインバータの少なくとも一方を効率よく冷却でき、電動モータの冷却系の改良を図れる。
【0023】
また、第8の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータを冷却するための冷媒を流す冷媒配管を、駆動輪を支持するフレームの幅方向両端部に上下方向に突出する状態で設けた2個の立板部の内側に配置しているので、冷媒配管を含む乗用型芝刈り車両の空間の有効利用の程度を高めることができる。また、冷媒配管の損傷をより有効に防止できる。
このように本発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、電動モータの冷却系を改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の発明の実施の形態]
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。図1から図3は、第1の実施の形態を示す図である。図1は、本実施の形態の乗用型芝刈り車両である芝刈り車両10の構成を示す略図であり、図2は、図1の略A−A断面図である。なお、以下の説明において、前後は、車両の前後を意味し、例えば、図1、図2の左右である。なお、本実施の形態では、芝刈り車両が、左右2個の後輪を主駆動輪とし、左右2個の前輪をキャスタ輪とした場合について説明するが、キャスタ輪を1輪とした3輪走行型とすることもできる。また、以下においては、電動モータの電力供給源として二次電池を使用するものを説明するが、二次電池の代わりにキャパシタを使用することもできる。
【0025】
また、車輪駆動用の電動モータは、単に電力を供給して少なくとも主駆動輪に対し回転駆動力を出力する電気モータとしての機能を有するだけのものを使用する場合に限定せず、電気モータとしての機能を有し、また、少なくとも主駆動輪に対し制動がかけられるときに回生エネルギを回収する発電機としての機能も有するものも使用できる。また、本実施の形態の芝刈り車両は、電動モータの電力供給源を電源ユニットであり、蓄電部である二次電池とし、二次電池への電力供給源としてエンジンおよび発電機を用いる、いわゆるハイブリッド式としている。また、電源ユニットとしては、外部から蓄電電力の供給を受ける二次電池の代わりに、燃料電池、太陽電池等のように自己発電機能を有するものも使用できる。例えば、芝刈り車両の車体、フェンダー、サンバイザー、集草タンク等に太陽電池の発電用パネルを設けることもできる。
【0026】
芝刈り車両10は、ZTR型と呼ばれるもので、図1、図2に示すように、右左2個の主駆動輪(図示の場合は後輪)12,14を、2個の電動モータである、第1電動モータ(右車軸モータ)16および第2電動モータ(左車軸モータ)18により互いに独立して駆動可能としている。芝刈り車両10は、作業機である芝刈り機(モア)20を備え、また右左2個の主駆動輪12,14と、右左2個のキャスタ輪22,24とによって地面を走行する。作業者の座る運転席26付近には、芝刈り車両10の旋回、加速、減速を行うための、右左方向に2個離れて設けた2レバー式操作子であり、2本の操作部である操作レバー28を設けている。図1では、両操作レバー28のうち、1本の操作レバー28のみを図示している。また、図1、図2では図示を省略するが、運転席26付近には、芝刈り機20の操作を行うための別の操作部である起動スイッチや、芝刈り車両10の制動を行うためのブレーキペダルおよび停止状態を維持するための機械式ブレーキを構成するパーキングブレーキレバー等の操作部も設けている。
【0027】
芝刈り車両10は、車体を構成する車体フレームである、メインフレーム30と、メインフレーム30に支持した内燃機関であるエンジン32と、エンジン32の出力軸に作動的に連結し、すなわち出力軸にその駆動軸を作動的に連結した発電機34と、発電機34から電力を供給され、その電力を蓄電する二次電池36(図2参照)とを備える。例えば、エンジン32は、出力軸の端部に発電機34を構成する駆動軸を連結するか、またはエンジン32の出力軸と発電機34の駆動軸とを共通の軸により一体に構成する。なお、エンジン32の出力軸の端部に駆動プーリを固定するとともに、この駆動プーリ、ベルト、発電機34の駆動軸に固定した従動プーリを介して、エンジン32により発電機34を駆動可能とすることもできる。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18は、二次電池36から供給される電力により駆動する。第1電動モータ16、第2電動モータ18をそれぞれ構成するケースは、メインフレーム30に固定している。
【0028】
また、メインフレーム30の後寄り(図1、図2の右寄り)部分に、右左(図2の上下)の主駆動輪12,14を支持し、メインフレーム30の前端部(図1、図2の左端部)の右左(図2の上下)に分かれた部分に、右左のキャスタ輪22,24を支持している。また、メインフレーム30の前後方向(図1、図2の左右方向)に関してキャスタ輪22,24と主駆動輪12,14との間に、芝刈り機20を設けている。芝刈り機20は、芝刈り機20駆動用の動力源であり、電動モータである、芝刈り機駆動用モータ38と作動的に連結している。芝刈り機駆動用モータ38は、図1に示すメインフレーム30に、メインフレーム30を構成する横板部よりも下側の位置に固定している。
【0029】
また、図示の例の場合には、芝刈り機駆動用モータ38と芝刈り機20との間に動力伝達機構42を設けている。芝刈り機20は、デッキ40の内側に支持した、鉛直方向の軸を中心に回転駆動する1個または複数の芝刈ブレード(図1、図2では図示せず。)を備える。動力伝達機構42は、芝刈り機20に芝刈り機駆動用モータ38の動力を伝達可能とする。動力伝達機構42は、自在継手を介して複数の動力伝達軸を連結している。すなわち、芝刈り機20は芝刈り機駆動用モータ38に、動力伝達機構42により、作動的に、すなわち動力の伝達を可能に連結される。芝刈り機駆動用モータ38と、動力伝達機構42とにより、芝刈り機駆動装置44を構成している。
【0030】
芝刈り機20は、図示しない作業機昇降アクチュエータにより、高さ調節を可能としている。なお、作業機昇降アクチュエータを、油圧シリンダを備える構成とし、油圧シリンダに圧油を供給する油圧源の油圧ポンプを、電動モータまたはエンジン32により駆動する構成とすることもできる。また、芝刈り機20に、図示しない補助キャスタ輪を設けることもできる。また、芝刈り機20に、刈り取った草を後方に排出するための集草用ダクトである、排出ダクト46を接続している。排出ダクト46は、運転席26の後側に沿うように斜め上方に伸ばして、上部を運転席26の後側に設けた集草タンク48に接続している。排出ダクト46の中間部は、メインフレーム30を構成する横板部に設けた孔部を貫通するように、斜め上下方向に伸びている。この結果、集草タンク48は、排出ダクト46により芝刈り機20、すなわち、芝刈り機20を構成するカバーである、デッキ40の後端部と接続される。また、芝刈りブレードの駆動軸に芝刈り機駆動用モータ38の動力を伝達する動力伝達機構42において、1段以上の減速歯車部等の減速部を有する減速装置を設けることもできる。
【0031】
また、図2に示すように、エンジン32および発電機34と二次電池36とは、メインフレーム30を構成する平板状の横板部の下側において、排出ダクト46を避けるように排出ダクト46の後側に支持している。すなわち、エンジン32および発電機34と二次電池36とは、集草タンク48(図1)の下側に位置させている。また、エンジン32と二次電池36との下端は、主駆動輪12,14の回転中心軸O(図1)と上下方向に関して同じ位置か、または主駆動輪12,14の回転中心軸Oよりも下側に位置するようにしている。
【0032】
また、車両の幅方向片側から他側(図1の表側から裏側、図2の下側から上側)に見た場合において、エンジン32と、二次電池36と、それぞれ冷却装置であるラジエータ50およびオイルクーラ52と、芝刈り機駆動用モータ38と、排出ダクト46との、一部または全部と、主駆動輪12,14とを重畳させている。ラジエータ50は、エンジン32冷却用の冷却水を冷却する。オイルクーラ52は、エンジン32潤滑用のオイルを冷却する。また、ラジエータ50およびオイルクーラ52の前側において、ラジエータ50およびオイルクーラ52の下端部の前側と対向するように、芝刈り機駆動用モータ38を配置することにより、芝刈り機駆動用モータ38が、ラジエータ50およびオイルクーラ52を冷却する冷却風の通過方向に沿って配置されるようにしている。このために、例えば、芝刈り機駆動用モータ38の上側において、ラジエータ50よりも前側のオイルクーラ52の上側寄り部分前側に対向する部分に、冷却風が図1の矢印α方向に通過するように、空間部分を設けている。また、オイルクーラ52の前側を通過する冷却風の通過方向(図1の矢印α方向)にその長さ方向が一致するように、芝刈り機駆動用モータ38を配置している。また、芝刈り機駆動用モータ38を構成するケースの外面に冷却フィンを設けている。
【0033】
図3は、片側の主駆動輪12(または14)の駆動部分を示す断面図である。図3に示すように、本実施の形態では、第1電動モータ16(または第2電動モータ18)の回転軸54の回転力を2段式の遊星歯車機構56a、56bを介して主駆動輪12、14に伝達可能としている。すなわち、第1段の遊星歯車機構56aは、回転軸54の一端部(図3の右端部)に設けたサンギヤと、サンギヤと噛合するピニオンギヤ58と、ピニオンギヤ58と噛合するリングギヤ60とを備える。また、ピニオンギヤ58を支持するピニオン軸をキャリア62に支持するとともに、回転軸54と同軸で、かつ、互いの相対回転を可能に支持した第2回転軸64の外周面に設けた第2サンギヤに、キャリア62を係合させている。また、第2段の遊星歯車機構56bを構成する第2ピニオンギヤ66を、第2サンギヤと第2リングギヤ68とに噛合させ、第2ピニオンギヤ66に支持した第2ピニオン軸70により、主駆動輪12、14が回転するようにしている。
【0034】
また、第1段の遊星歯車機構56aを構成するリングギヤ60と、第2段の遊星歯車機構56bを構成する第2リングギヤ68とを、主駆動輪12,14の内側に支持したハウジング72に固定している。このために、ハウジング72の一部に形成した孔に複数個のピンを挿通し、ピンの内径側端部をリングギヤ60および第2リングギヤ68の外周面に設けた凹部に係止している。また、ピンの外径側端部に一対の軸受の内輪を対向させて、ハウジング72に対するピンの抜け止めを図っている。これにより、ハウジング72に対し回転不能にリングギヤ60と第2リングギヤ68とが支持される。
【0035】
また、第1段の遊星歯車機構56aと第2段の遊星歯車機構56bとの、減速比を互いに同じとする一方、第2段の遊星歯車機構56bの第2ピニオンギヤ66の歯幅W1を、第1段の遊星歯車機構56aのピニオンギヤ66の歯幅W2よりも大きくしている(W1>W2)。
【0036】
また、回転軸54の他端寄り部分(図3の左端寄り部分)の周囲で、メインフレーム30を構成する立板部74の内側部分(図3の左側部分)に、モータ制御ユニット76を固定している。モータ制御ユニット76は、インバータを含む。なお、モータ制御ユニット76は、インバータとDC/DCコンバータとを含むものとしてもよい。また、回転軸54の他端部(図3の左端部)に空冷用ファン78を固定している。空冷用ファン78およびモータ制御ユニット76を覆うカバー80は、立板部74の内側面(図3の左側面)に固定している。カバー80の複数個所に内外を貫通する通孔82を形成している。
【0037】
なお、図3では図示しない他側の主駆動輪14(または12)部分の構成についても、図3に図示した構成と左右が逆になる以外同様である。また、電動モータ16,18の回転力を主駆動輪12,14に伝達する部分の構成において、本実施の形態のように2段式の減速部を備える構成とする以外に、1段式の減速部または3段以上の減速部を介して、電動モータ16,18の回転力を主駆動輪12,14に伝達可能な構成とすることもでき、また、電動モータ16,18の回転力を、減速部を介さず主駆動輪12,14に伝達可能な構成とすることもできる。
【0038】
ここで、図2に戻り、二次電池36、第1電動モータ16、第2電動モータ18等の各構成要素の動作を総合的に制御するために、モータ制御ユニット76以外に、モータ制御ユニット84,86,88を設け、モータ制御ユニット84,86,88を、メインフレーム30の適当な位置に配置している。モータ制御ユニット84,86,88は、制御回路部であるコントローラと、DC/DCコンバータとのうち、少なくとも1を備える。また、モータ制御ユニット84,86,88は、電気回路であるので、他の機構要素と比べて、分散配置を行うことが可能である。
【0039】
図1、図2の例では、メインフレーム30の上面側で運転席26の下側の位置と、メインフレーム30の下面側で、第1電動モータ16、第2電動モータ18に近い2つの位置との、合計3箇所に分散してモータ制御ユニット84,86,88を配置している。これらのモータ制御ユニット84,86,88は、上記の図3に示したモータ制御ユニット76とともに、適当な信号ケーブル等で相互に接続される。なお、運転席26に近い位置に配置されるモータ制御ユニット84には、CPU等の制御論理回路を有するコントローラを主に配置する。また、モータ制御ユニット84,86,88は、例えば、運転席下側のモータ制御ユニット84位置等の、いずれか1個または2個の位置に統合することもできる。また、運転席26下側のモータ制御ユニット84に、コントローラと、インバータおよびDC/DCコンバータを含むドライバー回路とを集中的に配置して、モータ制御ユニット86,88の一方または両方の位置にキャパシタを設けることもできる。この場合には、上記の図3に示したモータ制御ユニット76を省略し、運転席26下側のモータ制御ユニット84から信号ケーブル等で直接、第1電動モータ16および第2電動モータ18に接続する。
【0040】
第1電動モータ16および第2電動モータ18は、回転軸54(図3)の駆動により、2個の主駆動輪12,14をそれぞれ駆動する。2個の電動モータ16,18は、DCブラシレスモータ等で、正逆両方向に回転駆動することを可能としている。また、2個の電動モータ16,18の回転数を制御可能としている。
【0041】
モータ制御ユニット76、84,86,88(84,86,88は図1、図2参照。)は、CPUからの制御信号により、第1電動モータ16および第2電動モータ18の一方または両方を駆動する。第1電動モータ16および第2電動モータ18からは、モータ制御ユニット76、84,86,88に、回転数、回転方向、電流値等を表す信号をフィードバックする。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18に対応して、主駆動輪12、14を制動するための電動で作動する図示しないブレーキユニットを設けることもできる。第1電動モータ16および第2電動モータ18へは、発電機34により発電した電力を、直接または二次電池36を介して供給可能としている。なお、主駆動輪12,14の制動に対応して、第1電動モータ16および第2電動モータ18が発電機の役目を果たし、発電された電力がそれぞれの電動モータ16,18に対応する電力回生ユニットを介して二次電池36に蓄電されるようにすることもできる。
【0042】
二次電池36は、電気エネルギを蓄え、必要に応じて、電動モータ16,18等の負荷に電力を供給する機能を有するもので、鉛蓄電池、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池等を用いることができる。
【0043】
芝刈り機20関係の動力源である芝刈り機駆動用モータ38は、例えば、二次電池36から電力を供給される。芝刈り機駆動用モータ38の作動は、運転席26の近くに設けられる芝刈り機起動スイッチ(図示せず)のオン・オフによって制御される。例えば、モータ制御ユニット84,86,88が図示しない芝刈り機起動スイッチのオン・オフ状態を検出し、その検出によって、芝刈り機駆動用モータ38駆動用の回路の作動を制御して、芝刈り機駆動用モータ38を作動させ、あるいは停止させる。このようにエンジン32を停止させた状態で芝刈り機20を駆動することができ、芝刈り作業時の騒音を小さくできる。
【0044】
また、運転席26の両側に1本ずつ合計2本設けた操作レバー28は、それぞれ左右の主駆動輪12,14の回転数を調整する機能を有する。例えば、運転席26の左側に左の主駆動輪14の回転数を調整する操作レバー28を配置し、運転席26の右側に右の主駆動輪12の回転数を調整する操作レバー28を配置する。各操作レバー28は、運転席26に対して前後方向に移動することができる。各操作レバー28の操作量は、操作量検出部である、操作量センサを用いてモータ制御ユニット76,84,86,88に伝送され、左右の主駆動輪12,14に対応する電動モータ16,18の作動が制御される。
【0045】
また、2個のキャスタ輪22,24は、鉛直方向の軸を中心とする回動を自由に行えるようにしている。したがって、左右の電動モータ16,18の回転数の差に基づいて車両が旋回しようとする場合には、これにしたがって、キャスタ輪22,24が対応する方向に自由操向する。なお、それぞれのキャスタ輪22,24に操向用の電動モータを設けることにより、この電動モータによりキャスタ輪22,24を強制的に操向させることもできる。また、作業者のスイッチ等の操作部の操作に応じてキャスタ輪22,24の自由操向と強制操向とを切り替え可能な切り替え手段を設けることもできる。キャスタ輪22,24を強制的に操向させる電動モータを設ける場合、主駆動輪12,14駆動用の電動モータ16,18の作動に対応して、キャスタ輪22,24(図2)操向用の電動モータの作動が制御されるようにする。
【0046】
作業者が、芝刈り車両10の旋回や加速を行うために、右左の操作レバー28を操作すると、操作量センサからの信号に応じて、主駆動輪12,14(図2)に対応する2個の電動モータ16,18が作動する。右左の操作レバー28(図1)を前後に操作することにより、主駆動輪12,14に対応する電動モータ16,18が駆動し、旋回、加速、減速等を行える。操作レバー28は上下に直立した位置で開放状態、すなわちニュートラル状態となる。電動モータ16,18はこの状態で停止する。これに対して、操作レバー28を前に倒すことにより、対応する電動モータ16,18が前進方向に正回転し、操作レバー28を後に倒すことにより、対応する電動モータ16,18が後進方向に逆回転する。また、操作レバー28の倒し量が増大するのにしたがって、電動モータ16,18の回転数が増大する。例えば、右の操作レバー28を前に倒すことにより、右側の主駆動輪12に対応する電動モータ16が正回転し、右の操作レバー28を後に倒すことにより、右の主駆動輪12に対応する電動モータ16が逆回転する。また、両方の操作レバー28を同じ分だけ前に倒すと、芝刈り車両10は直進する。この場合には、前側の2個のキャスタ輪22,24は、主駆動輪12,14と平行な方向に向いた状態となる。
【0047】
これに対して、芝刈り車両10を左右いずれかの方向に旋回させる場合には、例えば両方の操作レバー28を前に倒すが、片側の操作レバー28を他側の操作レバー28よりも大きく倒す。このように操作レバー28の倒し量が右側と左側とで差がある場合には、芝刈り車両10が左右の操作レバー28の倒し量の差に対応して旋回する。
【0048】
また、このような芝刈り車両10により、左右いずれかの方向に超信地旋回(スピン)、すなわち、旋回中心を右左の主駆動輪12,14の設置位置同士の間の中央位置に位置させた状態で左右いずれかの方向に旋回させることもできる。この場合には、片側の操作レバー28を前に倒すが、他側の操作レバー28を同じ分だけ後に倒す。この場合、モータ制御ユニット76,84,86,88が有する右左車輪速度取得手段が、操作レバー28の倒し量に応じて右左の主駆動輪12,14の走行速度を求めて取得する。右左の主駆動輪12,14は、同じ速度で逆方向に回転する。第1電動モータ用駆動回路と第2電動モータ用駆動回路とは、取得された右左の主駆動輪12,14の速度に応じて、第1電動モータ16および第2電動モータ18を駆動する。
【0049】
なお、2個のキャスタ輪22,24を、それぞれに対応する走行用の電動モータ(図示せず)により駆動することもできるが、その場合には、2個のキャスタ輪22,24駆動用として、例えば電動モータと、電動モータを駆動する電動モータ用駆動回路とを、それぞれ設ける。このような芝刈り車両10によれば、少なくとも2個の主駆動輪12,14は、第1電動モータ16および第2電動モータ18を走行用動力源として、第1電動モータ16および第2電動モータ18により互いに独立して駆動する。
【0050】
このような本実施の形態によれば、主駆動輪12,14の駆動部分に設けた第1電動モータ16および第2電動モータ18の回転軸54のそれぞれに空冷用ファン78を固定している。このため、電動モータ16,18の回転軸54の回転駆動に伴い、空冷用ファン78を駆動することができ、空冷用ファン78の駆動により送られる冷却風により、電動モータ16,18を効率よく冷却することができる。この結果、電動モータ16,18の冷却系を改良することができる。
【0051】
また、芝刈り機駆動用モータ38を、ラジエータ50およびオイルクーラ52を冷却する冷却風の通過方向に沿って配置しているので、芝刈り機駆動用モータ38を効率よく冷却できる。なお、芝刈り機駆動用モータ38を、ラジエータ50およびオイルクーラ52の一方を冷却する冷却風の通過方向に沿って配置することもできる。
【0052】
なお、図示は省略するが、芝刈り車両は、前側の右左2個の主駆動輪と、後側の右左2個のキャスタ輪とによって地面を走行可能とし、主駆動輪よりも前側に芝刈り機を設けた、いわゆるFMM型と呼ばれる構成とすることもできる。また、芝刈り車両は、前側の右左2個のキャスタ輪と、後側の右左2個の主駆動輪とによって地面を走行可能とし、キャスタ輪と主駆動輪との間に芝刈り機を設けるとともに、運転席の前側に二次電池またはエンジンを設けた、いわゆるSST型と呼ばれる構成とすることもできる。また、芝刈り車両は、2個の前輪を支持するフロントフレームと、2個の後輪を支持するリアフレームと、フロントフレームおよびリアフレームを胴体屈折可能に連結する連結部と、操作部の操作に連動して、フロントフレームおよびリアフレームの胴体屈折角度を変える操舵装置とを備える、いわゆるアーティキュレート式旋回機構付車両とすることもできる。
【0053】
[第2の発明の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態において、第1電動モータ16および第2電動モータ18の冷却系を示す略回路図である。本実施の形態の芝刈り車両10では、上記の第1の実施の形態において、右左2個の主駆動輪12,14を駆動する第1電動モータ16および第2電動モータ18と、第1電動モータ16および第2電動モータ18の動力を主駆動輪12,14に減速して伝達可能とするための減速歯車装置である、2個の減速装置90とを、いずれも油により冷却している。このために、冷媒流路である油圧回路92に冷媒ポンプである油圧ポンプ94を設け、油圧ポンプ94から吐出された冷媒である油が、分岐部96で分岐して右左2個の電動モータ16,18に供給されるようにしている。また、電動モータ16,18に供給された潤滑油が減速装置90を流れた後、合流部98で合流してから、オイルクーラ100に供給されるようにしている。オイルクーラ100の油出口は油圧ポンプ94の油入口に接続している。このように構成するため、第1電動モータ16および第2電動モータ18と、右左2個の減速装置90とは、単一の油圧ポンプ94により油圧回路92を循環させる油により、共通して冷却される。
【0054】
また、油圧ポンプ94を駆動する電動モータ102の回転軸に固定した空冷用ファン104により、オイルクーラ100に冷却風が送られるようにしている。すなわち、油圧ポンプ94駆動用と空冷用ファン104駆動用とで、1個の電動モータ102を共用している。また、油圧回路92において、油圧ポンプ94と分岐部96との間に、第1電動モータ16および第2電動モータ18の駆動用のインバータ106と、インバータ106を制御する制御回路部であるコントローラ108とを冷却するための冷却流路を設け、この冷却流路に油圧ポンプ94から吐出された油が流れるようにしている。
【0055】
このような本実施の形態によれば、第1電動モータ16および第2電動モータ18は、単一の油圧ポンプ94により油圧回路92を循環させる油により共通して冷却するので、第1電動モータ16および第2電動モータ18を効率よく冷却できる。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却するために循環させる油により、コントローラ108およびインバータ106を冷却するので、コントローラ108およびインバータ106を効率よく冷却できる。なお、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却するために循環させる油により、コントローラ108およびインバータ106の一方を冷却することもできる。その他の構成および作用については、上記の第1の実施の形態と同様であるため、重複する図示および説明を省略する。
【0056】
[第3の発明の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態において、上記の図4のB部に対応する図である。本実施の形態の芝刈り車両10では、上記の図4に示した第2の実施の形態において、片側の主駆動輪12(または14、本実施の形態で以下同様。)を駆動する第1電動モータ16(または第2電動モータ18、本実施の形態で以下同様。)を、油圧回路92を循環させる油により冷却している。これに対して、第1電動モータ16の動力を主駆動輪12に減速して伝達するための減速装置90は、油圧回路92を循環させる油によっては冷却していない。その代わりに、減速装置90を構成するケースの内部の底部に、潤滑油またはグリースを封入している。また、減速装置90のケースの内部に潤滑油を封入する場合に、減速装置90を構成する歯車の回転に伴って、減速装置90内で潤滑油が循環するか、または減速装置90内を潤滑油がミスト潤滑するようにしている。また、減速装置90を構成する歯車の回転により図示しない循環ポンプを駆動させ、図示しない外部の油タンクを介して減速装置90に潤滑油を循環させることにより、減速装置90を冷却するドライサンプ方式とすることもできる。
【0057】
また、第1電動モータ16の側方に油圧ポンプ94を設け、第1電動モータ16の回転軸と、油圧ポンプ94の回転軸とを一体とし、第1電動モータ16の回転軸の駆動により、油圧ポンプ94が駆動されるようにしている。油圧ポンプ94の駆動により、第1電動モータ16を含む油圧回路92に油が循環する。また、図5では図示しない他側の主駆動輪14(または12)部分の構成についても、図5に図示した構成と同様の構成を有する。また、本実施の形態では、油圧回路92において、図4で参照される、インバータ106とオイルクーラ100との間に設ける油圧ポンプ94を省略することもできる。
【0058】
このような本実施の形態によれば、第1電動モータ16および第2電動モータ18の動力を、それぞれ減速装置90を介して主駆動輪12,14に伝達可能としており、第1電動モータ16および第2電動モータ18を油により冷却している。また、減速装置90を構成するケースの内部に、潤滑油またはグリースを封入している。このため、減速装置90を、電動モータ16,18を冷却する油により冷却する必要がなくなり、電動モータ16,18を効率よく冷却できる。その他の構成および作用については、上記の図4に示した第2の実施の形態と同様であるため、重複する図示および説明を省略する。
【0059】
[第4の発明の実施の形態]
図6は、本発明の第4の実施の形態において、第1電動モータ16および第2電動モータ18の冷却系を示す略回路図である。本実施の形態の芝刈り車両10では、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、右左2個の主駆動輪12,14を駆動する第1電動モータ16および第2電動モータ18を、水冷、すなわち冷却水により冷却している。このために、冷媒流路である冷却水回路110に冷媒ポンプである冷却水ポンプ112を設け、冷却水ポンプ112から吐出された冷媒である、冷却水が分岐部114で分岐して右左2個の第1電動モータ16および第2電動モータ18に供給されるようにしている。
【0060】
また、電動モータ16,18に供給された冷却水が減速装置90を通過することなく、合流部116で合流してから、ラジエータ118に供給されるようにしている。ラジエータ118の冷却水出口は冷却水ポンプ112の冷却水入口に接続している。このように構成するため、第1電動モータ16および第2電動モータ18は、単一の冷却水ポンプ112により冷却水回路110を循環させる冷却水により、共通して冷却される。
【0061】
また、電動モータ120の回転軸に固定した空冷用ファン122により、ラジエータ118に冷却風が送られるようにしている。また、冷却水回路110において、冷却水ポンプ112と分岐部114との間にインバータ106と、制御回路部であるコントローラ108とを冷却するための冷却水流路を設け、この冷却水流路に冷却水ポンプ112から吐出された冷却水が流れるようにしている。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18に対応する減速歯車装置である、減速装置90では、それぞれ上記の図5に示した第3の実施の形態と同様に、減速装置90を構成するケースの内部の底部に、潤滑油またはグリースを封入している。また、減速装置90のケースの内部に潤滑油を封入する場合に、減速装置90を構成する歯車の回転に伴って、減速装置90内で潤滑油が循環するか、または減速装置90内を潤滑油がミスト潤滑するようにしている。また、減速装置90を構成する歯車の回転により図示しない循環ポンプを駆動させ、図示しない外部の油タンクを介して減速装置90に油を循環させることにより、減速装置90を冷却するドライサンプ方式とすることもできる。
【0062】
このような本実施の形態によれば、第1電動モータ16および第2電動モータ18は、単一の冷却水ポンプ112により冷却水回路110を循環させる冷却水により共通して冷却するので、第1電動モータ16および第2電動モータ18を効率よく冷却できる。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却するために循環させる冷却水により、コントローラ108およびインバータ106を冷却するので、コントローラ108およびインバータ106を効率よく冷却できる。なお、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却するために循環させる冷却水により、コントローラ108およびインバータ106の一方を冷却することもできる。また、減速装置90を構成するケースの内部に、潤滑油またはグリースを封入しているので、減速装置90を、電動モータ16,18を冷却する冷却水により冷却する必要がなくなり、電動モータ16,18をより効率よく冷却できる。その他の構成および作用については、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態と同様であるため、重複する図示および説明を省略する。
【0063】
[第5の発明の実施の形態]
図7は、本発明の第5の実施の形態において、第1電動モータ16および第2電動モータ18の冷却系を示す略回路図である。本実施の形態の芝刈り車両10では、上記の図6に示した第4の実施の形態において、右左2個の主駆動輪12,14を駆動する第1電動モータ16および第2電動モータ18を水冷、すなわち冷却水により冷却している。特に、本実施の形態では、内燃機関であるエンジン32の冷却用のラジエータ50を通過する冷却水により、第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却している。このために、エンジン32冷却用と、第1電動モータ16および第2電動モータ18の冷却用とで、冷却水回路110aを共用し、エンジン32を通過した冷却水がラジエータ50を通過後、冷却水ポンプ112に送られるようにしている。冷却水ポンプ112から吐出された冷却水は、インバータ106およびコントローラ108を冷却するための冷却水流路を流れた後、第1電動モータ16および第2電動モータ18に送られるようにしている。
【0064】
このような本実施の形態によれば、エンジン32と、エンジン32により駆動される発電機34(図1、図2参照)を備え、発電機34により発電された電力を直接または二次電池36(図2参照)を介して第1電動モータ16および第2電動モータ18に供給可能とするハイブリッド式とし、かつ、エンジン32冷却用のラジエータ50を通過する冷却水により第1電動モータ16および第2電動モータ18を冷却するようにしている。このため、エンジン32冷却用と、第1電動モータ16および第2電動モータ18の冷却用とで、冷却水回路110aと、ラジエータ50と、冷却水ポンプ112とを共通して使用することができ、部品点数の削減によるコスト低減と、軽量化と、芝刈り車両10の空間の有効利用の程度の向上とを図れる。また、ラジエータ50に冷却風を送るための空冷用ファン124をエンジン32により駆動することが可能となる。その他の構成および作用については、上記の図6に示した第4の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0065】
なお、図示は省略するが、上記の各実施の形態において、キャスタ輪22,24を操向する、すなわち方向を変えるための操向用電動モータと、キャスタ輪22,24を回転駆動するための駆動用電動モータとのうち、一方または両方を構成するケースの外面に冷却フィンを設けることもできる。このような構成によれば、キャスタ輪22,24用の操向用電動モータと駆動用電動モータとの一方または両方を、自然空冷、すなわち、モータにより駆動する冷却ファンを使用しない空冷により、効率よく冷却できる。
【0066】
また、図示は省略するが、上記の図2から図7に示した第2の実施の形態から第5の実施の形態において、主駆動輪12,14を支持するメインフレーム30の幅方向両端部に上下方向に突出する状態で設けた2個の立板部74の内側に、油圧回路92を構成する油配管または冷却水回路110,110aを構成する冷却水配管、例えばホース類を配置することもできる。すなわち、メインフレーム30の内側に冷却用の配管を配置することもできる。このような構成によれば、油配管または冷却水配管を含む芝刈り車両10の空間の有効利用の程度を高めることができる。また、油配管または冷却水配管の損傷をより有効に防止できる。
【0067】
また、上記の図2から図7に示した第2の実施の形態から第5の実施の形態において、油圧ポンプ94または冷却水ポンプ112を構成するケースと、第1電動モータ16または第2電動モータ18を含むケースとを一体化させ、モータユニットとしたり、第1電動モータ16または第2電動モータ18を含むモータユニットに油圧ポンプ94または冷却水ポンプ112を内蔵することもできる。また、上記の図2から図7に示した第2の実施の形態から第5の実施の形態において、芝刈り機駆動用モータ38を、油圧回路92を流れる油または冷却水回路110,110aを流れる冷却水により冷却することもできる。
【0068】
また、上記の各実施の形態の芝刈り車両において、エンジン32(図1、図2、図7参照)を設けず、二次電池36から第1電動モータ16および第2電動モータ18に電力を供給することにより、主駆動輪12,14を駆動可能とする、いわゆるオール電動型とすることもできる。この場合、二次電池36は外部からの電力供給により蓄電する。例えば、二次電池36は、プラグインの方法で、外部電源から充電電力供給を受けられるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の芝刈り車両の構成を示す略図である。
【図2】図1の略A−A断面図である。
【図3】第1の実施の形態において、片側の主駆動輪の駆動部分を示す断面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態において、第1電動モータおよび第2電動モータの冷却系を示す略回路図である。
【図5】同じく第3の実施の形態において、図4のB部に対応する図である。
【図6】同じく第4の実施の形態において、第1電動モータおよび第2電動モータの冷却系を示す略回路図である。
【図7】同じく第5の実施の形態において、第1電動モータおよび第2電動モータの冷却系を示す略回路図である。
【符号の説明】
【0070】
10 芝刈り車両、12,14 主駆動輪、16 第1電動モータ、18 第2電動モータ、20 芝刈り機(モア)、22,24 キャスタ輪、26 運転席、28 操作レバー、30 メインフレーム、32 エンジン、34 発電機、36 二次電池、38 芝刈り機駆動用モータ、40 デッキ、42 動力伝達機構、44 芝刈り機駆動装置、46 排出ダクト、48 集草タンク、50 ラジエータ、52 オイルクーラ、54 回転軸、56a、56b 遊星歯車機構、58 ピニオンギヤ、60 リングギヤ、62 キャリア、64 第2回転軸、66 第2ピニオンギヤ、68 第2リングギヤ、70 第2ピニオン軸、72 ハウジング、74 立板部、76 モータ制御ユニット、78 空冷用ファン、80 カバー、82 通孔、84,86,88 モータ制御ユニット、90 減速装置、92 油圧回路、94 油圧ポンプ、96 分岐部、98 合流部、100 オイルクーラ、102 電動モータ、104 空冷用ファン、106 インバータ、108 コントローラ、110,110a 冷却水回路、112 冷却水ポンプ、114 分岐部、116 合流部、118 ラジエータ、120 電動モータ、122 空冷用ファン、124 空冷用ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
電動モータの回転軸に空冷用ファンを固定したことを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項2】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
2個の駆動輪をそれぞれ2個の電動モータにより駆動し、
2個の電動モータは、単一の冷媒ポンプにより冷媒流路を循環させる冷媒により共通して冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項3】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
電動モータの動力を、減速歯車装置を介して駆動輪に伝達可能としており、
電動モータは、油または水により冷却しており、
減速歯車装置を構成するケースの内部に、潤滑油またはグリースを封入していることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項4】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
内燃機関と、
内燃機関により駆動される発電機と、を備え、
発電機により発電された電力を直接または蓄電部を介して電動モータに供給可能としており、
かつ、内燃機関の冷却用のラジエータを通過する冷却水により電動モータを冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項5】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
操向輪であるキャスタ輪を備え、
キャスタ輪を操向するための操向用電動モータと、キャスタ輪を回転駆動するための駆動用電動モータとのうち、一方または両方を構成するケースの外側に冷却フィンを設けていることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項6】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
芝刈り機を駆動する芝刈り機駆動用電動モータを備え、
芝刈り機駆動用電動モータは、ラジエータまたはオイルクーラを冷却する冷却風の通過方向に沿って配置していることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項7】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
電動モータを冷却するために循環させる冷媒により、制御回路部およびインバータの少なくとも一方を冷却することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項8】
電動モータにより駆動する駆動輪と、
芝刈り機と、を備える乗用型芝刈り車両であって、
電動モータを冷却するための冷媒を流す冷媒配管を、駆動輪を支持するフレームの幅方向両端部に上下方向に突出する状態で設けた2個の立板部の内側に配置していることを特徴とする乗用型芝刈り車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63092(P2013−63092A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3978(P2013−3978)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2007−114746(P2007−114746)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】