説明

作業機械および牧畜飼料製造方法

【課題】環状物の運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にできる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械11は、走行手段を有する機体12と、この機体12に設けた作業装置13とを備えている。作業装置13は、作業腕部21と、この作業腕部21の先端部に設けた環状物移載アタッチメント22とを有している。環状物移載アタッチメント22は、シャフト31aの下半部に沿って螺旋翼31bを設けたスクリュー31と、このスクリュー31のシャフト31aを一方向回転および他方向回転させる回転駆動部32と、この回転駆動部32を作業腕部21に取付けるブラケット33とを備えている。シャフト31aの上半部の周囲に、複数の環状物を貯留する環状物貯留部36を螺旋翼切欠状に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状物の取扱に適した作業機械および牧畜飼料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牧畜飼料すなわちサイレージを作るに当たり、牧草などのサイレージ原料を細かく裁断して転圧し、その後、サイレージ原料をビニールシートで覆って密封し、その上面を加圧しながら発酵させるバンカーサイロがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記加圧は、加圧板でするが、この加圧板に替えて重石を用いる場合があり、その重石として廃タイヤを利用する場合が多々ある。
【特許文献1】特開平6−14649号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、廃タイヤの運搬、敷設および撤去回収の各作業は、人力に頼っているのが現状であり、重労働である。特に、バンカーサイロでは、2〜2.5mも牧草などを積上げ、その上での作業となるため、作業が容易でない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、環状物の運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にできる作業機械およびこの作業機械を用いた牧畜飼料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行手段を有する機体と、この機体に設けられた作業装置とを備え、この作業装置は、作業腕部と、この作業腕部の先端部に設けられた環状物移載アタッチメントとを有し、この環状物移載アタッチメントは、シャフトに沿って螺旋翼が設けられたスクリューと、このスクリューのシャフトを一方向回転させることで環状物を螺旋翼間の溝に沿って持上げるとともに他方向回転させることで環状物を螺旋翼間の溝に沿って降ろす回転駆動部とを具備した作業機械である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の作業機械における環状物移載アタッチメントの螺旋翼が、シャフトの下半部に沿って設けられ、環状物移載アタッチメントは、シャフトの上半部の周囲に螺旋翼切欠状に設けられ複数の環状物を貯留する環状物貯留部を備えたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の作業機械における環状物移載アタッチメントが、環状物として廃タイヤを取扱うものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、サイレージ原料を合成樹脂シートで覆い、この合成樹脂シートの上に、請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械を用いて環状物を重石として載せることでサイレージ原料を加圧する牧畜飼料製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、走行手段を有する機体に作業装置を設け、この作業装置は、作業腕部の先端部に設けられた環状物移載アタッチメントのスクリュー先端を環状物に挿入して、回転駆動部によりスクリューのシャフトを一方向回転させることで、環状物を螺旋翼間の溝に沿って持上げることができ、また、他方向回転させることで環状物を螺旋翼間の溝に沿って降ろすことができるので、機体や作業装置の動きと連動させて、環状物の運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にできる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、螺旋翼間の溝に沿って持上げた複数の環状物を、螺旋翼切欠状に設けたシャフトの上半部の環状物貯留部に貯めておいて、一度に運搬することができ、環状物の運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にかつ効率良くできる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、廃タイヤの運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にできる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、サイレージ原料を合成樹脂シートで覆い、この合成樹脂シートの上に重石を載せてサイレージ原料を加圧する牧畜飼料製造方法において、請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械を用いることで、重石としての環状物の運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にでき、牧畜飼料の製造に伴なう重労働を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、作業機械11を示し、この作業機械11は、走行手段を有する機体12と、この機体12に設けられた作業装置13とを備えている。
【0016】
機体12は、履帯式の下部走行体14に、旋回軸受部15を介して上部旋回体16が旋回可能に設けられ、この上部旋回体16には、エンジンおよびこのエンジンにより駆動される油圧ポンプなどの動力装置17や、キャブ18などが搭載されている。
【0017】
作業装置13は、作業腕部21と、この作業腕部21の先端部に設けられた環状物移載アタッチメント22とを有している。
【0018】
作業腕部21は、上部旋回体16に、ブームシリンダ23により上下方向に回動されるブーム24が回動自在に軸支され、このブーム24の先端に、アームシリンダ25により回動されるアーム26が回動自在に軸支されている。
【0019】
アーム26の先端に、アタッチメントシリンダ27によってリンケージ28を介し回動される環状物移載アタッチメント22が回動自在に軸支されている。
【0020】
ブームシリンダ23、アームシリンダ25およびアタッチメントシリンダ27は、動力装置17の油圧ポンプから供給される油圧により作動される油圧シリンダであり、ブームシリンダ23によりブーム24を上下方向に回動することで主として環状物移載アタッチメント22の高さ位置を調整でき、アームシリンダ25によりアーム26を前後方向に回動するとともに上部旋回体16を旋回させることで主として環状物移載アタッチメント22の前後左右の平面位置を調整でき、アタッチメントシリンダ27により環状物移載アタッチメント22の傾斜角度を調整できる。
【0021】
この環状物移載アタッチメント22は、シャフト31aの下半部に沿って螺旋翼31bが設けられたスクリュー31と、このスクリュー31のシャフト31aを一方向回転および他方向回転させることが可能な回転駆動部32と、この回転駆動部32を作業腕部21に取付けるブラケット33とを備えている。このブラケット33には、アーム26の先端がピン34により連結されているとともに、リンケージ28の先端がピン35により連結されている。
【0022】
環状物移載アタッチメント22は、シャフト31aの上半部の周囲に螺旋翼切欠状に設けられた、複数の環状物を貯留する環状物貯留部36を備えている。
【0023】
回転駆動部32は、ブームシリンダ23、アームシリンダ25およびアタッチメントシリンダ27などと同様に、動力装置17の油圧ポンプから供給される油圧により作動される油圧モータを用いることが望ましい。
【0024】
次に、図2に基づき、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0025】
環状物移載アタッチメント22は、環状物としての廃タイヤТを取扱い、回転駆動部32によりスクリュー31のシャフト31aを一方向回転(正転)させることで廃タイヤТを螺旋翼31b間の溝に沿って持上げ、環状物貯留部36に貯めるとともに、他方向回転(逆転)させることで環状物貯留部36の廃タイヤТを螺旋翼31b間の溝に沿って降ろすことができる。
【0026】
すなわち、環状物移載アタッチメント22を斜めに設定して、スクリュー31の螺旋翼先端を廃タイヤТの中央空洞部分に引掛けて、このスクリュー31を回転駆動部32により正転させることによって、廃タイヤТが螺旋翼31b間の溝に沿って徐々に持上げられ、シャフト31aの上半部の環状物貯留部36に貯まるので、複数の廃タイヤТを順次持上げて一度に運搬することが可能である。
【0027】
また、この環状物移載アタッチメント22に取込まれた廃タイヤТは、スクリュー31を回転駆動部32により逆転させることによって、環状物貯留部36にある複数の廃タイヤТをそれぞれ螺旋翼31b間の溝に沿ってスクリュー31の先端まで移動させ、この先端から落下させるように取出すことが可能である。
【0028】
このように、走行手段を有する機体12に作業装置13を設け、この作業装置13は、作業腕部21の先端部に設けられた環状物移載アタッチメント22のスクリュー31の先端を廃タイヤТの中央空洞部分に挿入して、回転駆動部32によりスクリュー31のシャフト31aを一方向回転すなわち正転させることで、廃タイヤТを螺旋翼31b間の溝に沿って持上げることができ、また、他方向回転すなわち逆転させることで廃タイヤТを螺旋翼31b間の溝に沿って降ろすことができるので、機体12や作業装置13の動きと連動させて、廃タイヤТの運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にできる。
【0029】
特に、螺旋翼31b間の溝に沿って持上げた複数の廃タイヤТを、螺旋翼切欠状に設けられたシャフト31aの上半部の環状物貯留部36に貯めておいて、一度に運搬することができるので、廃タイヤТの運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にかつ効率良くできる。
【0030】
図3は、バンカーサイロ41における牧畜飼料製造方法を示し、牧畜飼料すなわちサイレージを作るに当たり、牧草などのサイレージ原料を細かく裁断し、作業機械11の履帯式の下部走行体14などによりこのサイレージ原料を踏み潰すようにして転圧し、その後、このサイレージ原料を合成樹脂シート42すなわちビニールシートで覆って密封し、この合成樹脂シート42の上に、上記の作業機械11を用いて環状物としての廃タイヤТを重石として、まんべんなく敷設する。これにより、合成樹脂シート42により密封されたサイレージ原料を加圧しながら発酵させることができる。
【0031】
この廃タイヤ敷設作業において、廃タイヤТが用意されたる場所から合成樹脂シート42上に廃タイヤТを移載するときは、環状物移載アタッチメント22を斜めに設定して、スクリュー31の螺旋翼先端を廃タイヤТの中央空洞部分に引掛け、このスクリュー31を回転駆動部32により正転させることによって、廃タイヤТを螺旋翼31b間の溝に沿って徐々に持上げ、シャフト31aの上半部の環状物貯留部36に貯めるので、複数の廃タイヤТを順次持上げて環状物移載アタッチメント22に取込むことができるとともに、機体12の走行移動、旋回動作および作業腕部21の動作による環状物移載アタッチメント22の上下動、前後左右動作と組合せて、複数の廃タイヤТを合成樹脂シート42上の任意の場所に運搬することができる。
【0032】
さらに、この合成樹脂シート42上で斜めに維持された環状物移載アタッチメント22のスクリュー31を回転駆動部32により逆転させると、環状物貯留部36に貯められた廃タイヤТが螺旋翼31b間の溝に沿ってスクリュー31の先端まで1つずつ移動し落下するので、作業装置13を水平方向へ移動させる動作と組合せながら、複数の廃タイヤТを合成樹脂シート42の上面に順次落下させ、敷設することができる。
【0033】
また、合成樹脂シート42上の廃タイヤТを回収するときも、環状物移載アタッチメント22を斜めに設定して、スクリュー31の螺旋翼先端を廃タイヤТの中央空洞部分に引掛けて、このスクリュー31を回転駆動部32により正転させることによって、複数の廃タイヤТが、螺旋翼31b間の溝に沿って徐々に持上げられ、シャフト31aの上半部の環状物貯留部36に貯まるので、合成樹脂シート42上に敷設されている複数の廃タイヤТを順次持上げて一度に撤去することができる。
【0034】
このように、サイレージ原料を合成樹脂シート42で覆い、この合成樹脂シート42の上に重石を載せてサイレージ原料を加圧する牧畜飼料製造方法において、上記のような作業機械11を用いることで、重石としての廃タイヤТの運搬、敷設および撤去回収の作業を容易にでき、牧畜飼料の製造に伴なう重労働を軽減できる。
【0035】
なお、本発明に係る作業機械11は、バンカーサイロ41での牧畜飼料の製造にのみ用途を限定されるものではなく、一般的なタイヤ処理にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上作業機械における環状物移載アタッチメントの側面図である。
【図3】同上作業機械を牧畜飼料製造方法に用いた実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
11 作業機械
12 機体
13 作業装置
21 作業腕部
22 環状物移載アタッチメント
31 スクリュー
31a シャフト
31b 螺旋翼
32 回転駆動部
36 環状物貯留部
42 合成樹脂シート
Т 環状物としての廃タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段を有する機体と、
この機体に設けられた作業装置とを備え、
この作業装置は、
作業腕部と、
この作業腕部の先端部に設けられた環状物移載アタッチメントとを有し、
この環状物移載アタッチメントは、
シャフトに沿って螺旋翼が設けられたスクリューと、
このスクリューのシャフトを一方向回転させることで環状物を螺旋翼間の溝に沿って持上げるとともに他方向回転させることで環状物を螺旋翼間の溝に沿って降ろす回転駆動部と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
環状物移載アタッチメントの螺旋翼は、シャフトの下半部に沿って設けられ、
環状物移載アタッチメントは、シャフトの上半部の周囲に螺旋翼切欠状に設けられ複数の環状物を貯留する環状物貯留部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
環状物移載アタッチメントは、環状物として廃タイヤを取扱う
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
サイレージ原料を合成樹脂シートで覆い、
この合成樹脂シートの上に、請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械を用いて環状物を重石として載せることでサイレージ原料を加圧する
ことを特徴とする牧畜飼料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−315805(P2006−315805A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139608(P2005−139608)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(505173739)
【Fターム(参考)】