説明

作業機械用のミラー

【課題】工具を用いずにステーの回動や固定ができ、調整も簡単で耐久性にも優れた作業機械用のミラーを提供する。
【解決手段】ミラーを支持するステー7と、ステー7を支持し、車両側に取り付けられる取付部材8とを備えている。取付部材8は、圧接面が両端に形成されているボス部12と、圧接面に直交してボス部12を貫通する軸孔15とを有し、ステー7は、軸孔15に挿入される円柱状の回動軸部31と、回動軸部31の基端部分から大きく張り出す鍔部32とを有している。軸孔15から突出する回動軸部31の先端部分には、ステー7と共回りする圧接リング21が嵌め込まれ、回動軸部31に、圧接リング21をボス部12側に押し付ける調圧ナット22が締結されている。樹脂製ワッシャ20が圧接面と接するように取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に用いられるミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に用いられるミラーは、通常、作業性を良くするために、自動車などと比べて車体から大きく外側に突き出すように設けられている。従って、この種のミラーは、搬送車両に搭載する場合などに邪魔になるため可倒式である場合が多い。
【0003】
そのような可倒式のミラーに関しては、例えば、工具を用いずにミラーステーの回動及び固定ができるようにしたミラー取付装置が開示されている(特許文献1)。
【0004】
このミラー取付装置の場合、ステーの端部に円筒形のドラムが形成されていて、そのドラムの上下面が一対の摩擦板で挟まれている。摩擦板は、円環状の金属メッシュを樹脂でコーティングして形成された、特殊な金属メッシュ製ワッシャである。ドラム及び一対の摩擦板は、3本のねじで締結される上下一対のケース部材に挟むように収容されている。ドラムと摩擦板との間の摩擦抵抗は、3本のねじの締め付け具合によって調整している。
【0005】
そうすることで、摩擦抵抗力に抗して強く回すことでステーを任意の角度まで回動させることができ、摩擦板の摺動抵抗力によってステーを任意の位置に固定できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−182088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のミラー取付装置の場合、3本のねじの締め付け具合によって摩擦抵抗力を調整しているため、3本のねじを均等に締め込んで微調整する必要があり、手間がかかるし調整が難しい不利がある。調整がうまくできずに締め付けバランスが崩れてしまうと、摩擦板が偏って磨耗し、ガタが生じ易くなる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工具を用いずにステーの回動や固定ができ、調整も簡単で耐久性にも優れた作業機械用のミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明ではミラーのステーの支持構造を工夫した。
【0010】
すなわち、本発明に係る作業機械用のミラーは、ミラーと、前記ミラーを支持するステーと、前記ステーを支持し、車両側に取り付けられる取付部材と、を備え、前記取付部材は、互いに平行な圧接面が両端に形成されている軸受部と、前記圧接面に直交して前記軸受部を貫通する軸孔と、を有し、前記ステーは、前記軸孔に先端部分が突出するように挿入される回動軸部と、前記回動軸部の基端部分から前記軸孔の内径よりも大きく張り出す鍔部と、を有し、緩衝部材が前記圧接面と接するように取り付けられ、前記軸孔から突出する前記回動軸部の先端部分に、前記軸孔の内径よりも大径の圧接部材が嵌め込まれ、前記回動軸部に、前記圧接部材を前記軸受部側に押し付ける締結部材が締結されていて、前記圧接部材が前記ステーと共回りするように構成されている。
【0011】
このような構成のミラーによれば、鍔部と圧接部材とで、緩衝部材を介在しながら軸受部の両端の圧接面を挟みつけてステーが取付部材に支持されているので、締結部材の締め付け度合を調整することでステーを自在に回動させて任意の角度で固定することができる。
【0012】
ステーを繰り返し回動させても、回動軸部と圧接部材とが共回りするため、締結部材が緩むのを抑制できる。締結部材が緩んだ時の調整は、1つの締結部材の締め付け程度を変えるだけなので、簡単にでき、作業性に優れる。締結部材の締め付けによる力は圧接面に対してほぼ均一に加わるので耐久性に優れる。
【0013】
特に、前記緩衝部材に環状の樹脂製ワッシャが用いられている場合に効果的である。
【0014】
樹脂製ワッシャによって摩擦抵抗力が緩和され、ステーの回動等が安定する。偏って磨耗し難くなっているので、薄くなるまで使用でき、樹脂製でも長期間交換せずに使用できる。
【0015】
前記締結部材には、ボルトやナットが使用できるが、ボルトを用いれば、見栄えがよくなるし、不用意な引っ掛かりを防止することができる。
【0016】
前記軸孔に筒状の樹脂製ブッシュを取り付けてあってもよい。そうすれば、ステーの回動が滑らかになって耐久性や操作性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、工具を用いずにステーを自在に回動して任意の角度で固定することができ、調整も簡単で耐久性にも優れた作業機械用のミラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した油圧ショベルの概略斜視図である。
【図2】ミラーの要部を示す分解斜視図である。
【図3】ミラーの要部を示す概略断面図である。
【図4】図3におけるX−X線断面図である。
【図5】第1変形例を示す図3相当図である。
【図6】第2変形例を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0020】
図1に、本発明を適用した油圧ショベル(作業機械)を示す。この油圧ショベルは、一般的なものであり、クローラ式の下部走行体1の上に、上部旋回体2が旋回自在に搭載されていて、その上部旋回体2にアタッチメント3やキャブ4等が配設されている。アタッチメント3は、バケットやアームなどで構成されていて、上部旋回体2の前部中央部に起伏自在に支持されている。キャブ4は、ウインドウやドアなどで箱状に形成されていて、アタッチメント3の左側方に配設されている。キャブ4の内部には、オペレータが着座する運転席や各種操作装置、計器類が装備されている。
【0021】
そして、このキャブ4の左隅上部にサイドミラー5が取り付けられている。このサイドミラー5は、車両の左側の後方視野を確保するために設けられていて、車両側部から側方に突き出す使用位置と車両側部に沿う収納位置とに回動変位可能となっている(可倒式)。
【0022】
図2〜図4に、サイドミラー5の詳細を示す。サイドミラー5は、ミラー本体6やステー7、取付部材8などを有し、工具を用いずに自在に回動させて任意の位置で固定できるように構成されている。
【0023】
取付部材8は、ベース部11とボス部12(軸受部)とを有している。ベース部11は、帯状の金属板材を略L字状に曲げて形成されており、短寸の基端部11aと、長寸の先端部11bとを含んでいる。ボス部12は、先端部11aの上面に円柱状の金属部材の下端面12bを溶接することによって形成されている。基端部11bには締結座部13が設けられ、先端部11bの下面には棒状の支柱部材14が固定されている。締結座部13はボルトでキャブ4のフレーム上部に、支柱部材14の下端はキャブ4のフレーム下部に、それぞれ取り付けられている。
【0024】
ボス部12の上端面12aは、先端部11bの下面のこれと対向する部分(ボス部12の下端面12bに相当)と互いに平行な平滑面に形成されていて、ボス部12には、これら上下の端面12a,12b(圧接面)に直交し、これらの間を貫通するように円筒状の軸孔15が形成されている。
【0025】
ミラー本体6は、一方の面に鏡面が取り付けられた縦長のミラー枠6aと、ミラー枠6aの他方の面に設けられたステー取付部6bと、を有している。ステー取付部6bには、横軸回りに回動可能な支持部6cが設けられていて、その支持部6cにステー7の先端部分が縦軸回りに回動可能に取り付けられている。
【0026】
ステー7は、コ字状に曲げられた棒状の金属部材からなり、図2に示すように、その基端部分が、樹脂製ワッシャ20(緩衝部材)や圧接リング21(圧接部材)、調圧ナット22(締結部材)と共に組み付けることで、ボス部12に回動可能に支持されている。
【0027】
詳しくは、図3にも示すように、ステー7の基端部分には、円柱状の回動軸部31と、回動軸部31の基端部分から周方向に張り出す環状の鍔部32とが設けられている。回動軸部31の外径は、ボス部12の軸孔15の内径よりも僅かに小さく形成されている(すきま嵌め)。鍔部32の外径は、ボス部12の軸孔15の内径よりも大きく形成されていて、回動軸部31の先端側の面(被圧接面32aともいう)は回動軸部31に直交する平滑面となっている。
【0028】
回動軸部31の先端部分には、外周の一部を切り欠くように形成された回動規制部33aを有する嵌合部33と、嵌合部33より先端側に形成され、外周に雄ネジが形成された雄ネジ部34と、が設けられている。回動軸部31の軸方向の寸法は、ボス部12のものよりも大きく形成されている。
【0029】
樹脂製ワッシャ20は、例えばナイロンやフッ素樹脂等の耐候性、耐摩耗性に優れた硬質の樹脂で形成された円環状の部材である。樹脂製ワッシャ20の挿通孔20aの内径は、回動軸部31の外径よりも僅かに小さく形成しておくのが好ましい(しまり嵌め)。挿入した時にステー7に保持することができ、組み付け作業性に優れるからである。本実施形態では、ボス部12の上下両方の圧接面と接するように2枚取り付けられている。
【0030】
圧接リング21は、肉厚な円環状の金属部材であり、その外径はボス部12の軸孔15の内径よりも大きく形成されている。図4に示すように、圧接リング21の中央には、回動軸部31の嵌合部33と嵌合する嵌合孔21aが形成されている。従って、圧接リング21を嵌合部33に嵌め込むと、圧接リング21は回動規制部33aによって規制され、回動軸部31と共回りする。圧接リング21の厚みは、ステー7の支持安定性を向上させるために、回動軸部31の外径の1/2よりも大きく設定されている。但し、回動軸部31の外径より大きくしても支持安定性はほとんど変わらないため、それ以下に設定しておくのが好ましい。
【0031】
調圧ナット22は、公知のナットであり、雄ネジ部34に螺合する雌ネジを有している。
【0032】
ステー7を取付部材8に取り付けるには、例えば、樹脂製ワッシャ20の1枚を回動軸部31に取り付けた後、回動軸部31をボス部12の軸孔15にその上端面12aの側から挿入する。鍔部32の被圧接面32aとボス部12の上端面12a(圧接面)とが樹脂製ワッシャ20に密着するまで挿入すると、回動軸部31の先端部分に設けられた嵌合部33及び雄ネジ部34はボス部12の下端面12bから下方に突出する。そこにもう1枚の樹脂製ワッシャ20を取り付けた後、圧接リング21を嵌合部33に嵌め込む。続いて、調圧ナット22を雄ネジ部34にねじ込んで圧接リング21をボス部12側に押し付け、圧接リング21のボス部12側の面(被圧接面21bともいう)とボス部12の下端面12b(圧接面)とを樹脂製ワッシャ20に密着させる。後は、適度な力でステー7を回動軸部31回りに回動させることができるように、調圧ナット22の締め付け程度を調整すればよい。
【0033】
調圧ナット22の調整を適正に行うことで、工具を用いなくても、圧接面と被圧接面との間の摩擦抵抗力によってステー7を回動させたり固定したりできる。圧接面と被圧接面との間には樹脂製ワッシャ20が介在しているので、摩擦抵抗力が緩和されてステー7の回動等が安定する。
【0034】
回動軸部31と共回りするため、圧接リング21は調圧ナット22と一体に回動し、ステー7を繰り返し回動させても、調圧ナット22が緩むのを抑制できる。
【0035】
調圧ナット22が緩んだ時の調整は、1つの調圧ナット22の締め付け程度を変えるだけなので、簡単にでき、作業性に優れる。調圧ナット22の締め付けによる力は、樹脂製ワッシャ20に対してほぼ均一に加わるので、樹脂製ワッシャ20の偏った磨耗を防ぐことができ、耐久性に優れる。仮に樹脂製ワッシャ20が破損しても圧接面と被圧接面とを密着させてステー7を支持することができるので、応急的に使用することもできる。
(変形例)
図5は、本実施形態の変形例を示している。この実施形態のミラーでは、調圧ナット22に代えて調圧ボルト40が用いられている。なお、その他の構成については先の実施形態と同様であるため、同じ構成については同一の符号を付してその説明は省略する(後述する別の変形例も同様)。
【0036】
具体的には、雄ネジ部34に代えて、短くした嵌合部33の先端面に、軸方向に延びる締結孔41aを形成し、雌ネジ部41が設けられている。締結孔41aには雌ネジが形成されている。そして、この雌ネジ部41に調圧ボルト40をねじ込むことで圧接リング21をボス部12側に押し付けるように構成されている。
【0037】
この実施形態のミラーによれば、ステー7の下端に雄ネジ部34の先端が露出しないため、見栄えがよくなるし、不用意な引っ掛かりを防止することができる。
【0038】
図6は、また別の変形例を示している。この実施形態のミラーでは、ボス部12の軸孔15に円筒状の樹脂製ブッシュが取り付けられている。
【0039】
具体的には、一方の樹脂製ワッシャ20の代わりに、円筒状のブッシュ部50a(樹脂製ブッシュ)と、ブッシュ部50aの一端縁からフランジ状に張り出す円環状のワッシャ部50bとを有する樹脂部材50(緩衝部材)が用いられている。ブッシュ部50aの内径は、回動軸部31の外径と同じか僅かに小さく形成されている(中間嵌め)。樹脂部材50の素材は、上述した樹脂製ワッシャ20と同様である。ここでの軸孔15は、回動軸部31よりも大径で、ブッシュ部50aが圧入可能に形成されている。
【0040】
樹脂部材50は、ボス部12の上下端面12a,12bのいずれか一方から軸孔15に圧入する。そうして、ボス部12の他方の端面に樹脂製ワッシャ20を配置し、回動軸部31を樹脂部材50が圧入された軸孔15に挿入して調圧ナット22を締め付ける。
【0041】
この実施形態のミラーによれば、軸孔15と回動軸部31との間の隙間がほとんど無くなるため、ステー7の回動が滑らかになる。樹脂部材50をボス部12の上端面12aから圧入すれば、ステー7を取付部材8に組み付ける際、ステー7側に樹脂製ワッシャ20を取り付けておく必要が無くなるため、組み付け作業性に優れる利点もある。
【0042】
なお、本発明にかかるミラーは、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0043】
例えば、回動規制部は、圧接リング21と回動軸部31とを共回りさせるものであればよく、圧接リング21の内面及び回動軸部31の外面のそれぞれに形成した凹凸形状等であってもよい。樹脂製ブッシュは、樹脂部材50のように一方の樹脂製ワッシャ20の代わりに用いるのではなく、樹脂製ワッシャ20とは別個に軸孔15に取り付けてあってもよい。緩衝部材は樹脂製ワッシャに限らない。例えば、中央部分が膨出した金属ワッシャ等、軸方向に弾性を有する金属片であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
4 キャブ
5 サイドミラー
6 ミラー本体
7 ステー
8 取付部材
11 ベース部
12 ボス部
12a 上端面
12b 下端面
15 軸孔
20 樹脂製ワッシャ(緩衝部材)
21 圧接リング(圧接部材)
22 調圧ナット(締結部材)
31 回動軸部
32 鍔部
33 嵌合部
34 雄ネジ部
40 調圧ボルト(締結部材)
41 雌ネジ部
50 樹脂部材
50a ブッシュ部
50b ワッシャ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーと、
前記ミラーを支持するステーと、
前記ステーを支持し、車両側に取り付けられる取付部材と、
を備え、
前記取付部材は、
互いに平行な圧接面が両端に形成されている軸受部と、
前記圧接面に直交して前記軸受部を貫通する軸孔と、
を有し、
前記ステーは、
前記軸孔に先端部分が突出するように挿入される回動軸部と、
前記回動軸部の基端部分から前記軸孔の内径よりも大きく張り出す鍔部と、
を有し、
緩衝部材が前記圧接面と接するように取り付けられ、
前記軸孔から突出する前記回動軸部の先端部分に、前記軸孔の内径よりも大径の圧接部材が嵌め込まれ、
前記回動軸部に、前記圧接部材を前記軸受部側に押し付ける締結部材が締結されていて、
前記圧接部材が前記ステーと共回りするように構成されている作業機械用のミラー。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械用のミラーであって、
前記緩衝部材に環状の樹脂製ワッシャが用いられている作業機械用のミラー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業機械用のミラーであって、
前記締結部材にボルトが用いられている作業機械用のミラー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の作業機械用のミラーであって、
前記軸孔に筒状の樹脂製ブッシュが取り付けられている作業機械用のミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74641(P2011−74641A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226339(P2009−226339)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】