説明

作業機械

【課題】容易に操作できるとともに空打ちによるハンマ破損のおそれを防止できるオートハンマ機能を備えた作業機械を提供する。
【解決手段】作業装置の先端部の油圧ブレーカ14に供給する作動油を第1および第2スプール33,34により制御する。操作レバー24により片ロッド型のブームシリンダ12bmを縮み方向に作動して、油圧ブレーカ14を破砕対象物に押付ける。ブームシリンダ12bmのヘッド側の圧力Phおよびロッド側の圧力Prを圧力検出器44,45により検出する。スイッチ25,26,27の1つは、オートハンマ禁止状態とオートハンマ許可状態とを切替える。コントローラ51は、オートハンマ許可状態にあるとき圧力検出器44,45で検出したブームシリンダ12bmのヘッド側の圧力Phおよびロッド側の圧力Prが一定の押付圧力状態となる場合のみ油圧ブレーカ14の第1および第2スプール33,34を開き制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ブレーカを自動的に駆動する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式作業機械は、機体に対し上下動可能に設けられた作業装置の先端部に、機体側での流量調整操作を要しない油圧ハンマ機構を備えた油圧ブレーカを装着している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の油圧ブレーカのハンマにて破砕対象物を砕く操作手順は、先ず、ハンマの先端を破砕対象物の上に置き、次に作業装置のブームを上下動操作する操作レバーを下げ側に入れ、ハンマを破砕対象物に押付けることで相対的に機体を持上げ状態にし、次にスイッチ類を操作して、機体の荷重をハンマ先端から破砕対象物にかけながら、ハンマの打撃を開始し、破砕対象物が砕けるとスイッチ類を中立に戻して打撃を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−185378号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このとき、ブーム下げ操作で破砕対象物にかける負荷を調節しながら、スイッチ類を操作する必要があり、高い操作技術を必要とするとともに、オペレータの疲労が大きい。
【0006】
すなわち、ハンマに負荷がかかっていない状態で打撃を行なうと空打ちとなり、ハンマが破損してしまうので、破砕対象物が砕けると即座に打撃を終了する必要があるが、熟練オペレータでも、破砕対象物が砕けてから、実際にスイッチ類を中立にするまで、若干のタイムラグが発生し、空打ちをしてしまう。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、容易に操作できるとともに空打ちによるハンマ破損のおそれを防止できるオートハンマ機能を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、機体と、機体に搭載された作業装置と、作業装置の先端部に装着された油圧ブレーカと、油圧ブレーカに供給される作動油を制御する制御弁と、作業装置を下げ方向に作動して油圧ブレーカを破砕対象物に押付ける片ロッド型の油圧シリンダと、油圧シリンダを縮み方向に作動して作業装置を下げ方向に操作する操作部と、油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力を検出する圧力検出器と、油圧ブレーカを作動不能とするオートハンマ禁止状態と油圧ブレーカを作動可能とするオートハンマ許可状態とを切替可能な切替スイッチと、切替スイッチによりオートハンマ許可状態にあるとき圧力検出器で検出した油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力が一定の押付圧力状態となる場合のみ油圧ブレーカの制御弁を開き制御する機能を備えたコントローラとを具備した作業機械である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の作業機械におけるコントローラが、切替スイッチを1度オン操作しても、そのまま一定時間経過した場合はオートハンマ禁止状態に戻され、一定時間内に切替スイッチを再度オン操作することで、オートハンマ許可状態に設定される機能を備えたものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の作業機械において、オートハンマ許可状態を表示するモニタを具備したものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械におけるコントローラが、切替スイッチをオートハンマ許可状態でオン操作することで、オートハンマ禁止状態に設定される機能を備えたものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の作業機械におけるコントローラが、油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力が一定の押付圧力状態でなくなったときは、作業装置を下げ方向に操作する操作部をいったん中立位置に戻してから下げ方向に再操作するリセット操作により油圧ブレーカの再作動を可能とする機能を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、コントローラは、切替スイッチによりオートハンマ許可状態にあり、かつ、圧力検出器で検出した作業装置を下げ方向に作動する油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力が一定の押付圧力状態となる場合のみ、油圧ブレーカの制御弁を開き制御するので、オペレータは、切替スイッチによりコントローラをオートハンマ許可状態に切替えた後は、操作部を作業装置下げ方向に操作するのみで、油圧ブレーカを作動または停止させるためのスイッチ操作を行なわなくても、所定の押付圧力を確保した状態で油圧ブレーカを自動的に作動でき、操作が簡単になるとともに空打ちによるハンマ破損のおそれを防止できるオートハンマ機能が得られる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、コントローラは、切替スイッチの一定時間内の2度のオン操作によりオートハンマ許可状態に設定され、1度オン操作しても、そのまま一定時間経過すると自動的にオートハンマ禁止状態に戻されるので、切替スイッチの1度の誤操作による誤作動を防止できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、油圧ブレーカの作動が可能なオートハンマ許可状態をモニタに表示するので、オペレータの不用意な操作による打撃を防止できる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、切替スイッチをオートハンマ許可状態でオン操作することで、コントローラはオートハンマ禁止状態に設定されるので、機体持上げによる方向転換などを行なう場合は、簡単にオートハンマ禁止状態に切替えることができる。
【0017】
請求項5に記載された発明によれば、油圧ブレーカが一定の押付圧力状態でなくなったときの油圧ブレーカの再作動を可能とするには、作業装置の操作部をいったん中立位置に戻してから作業装置下げ方向に再操作するリセット操作を条件としたので、オペレータの予期しない打撃を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る作業機械の油圧ブレーカを制御する制御回路の一実施の形態を示す概要図である。
【図2】同上制御回路のコントローラ内の制御ロジックを示す論理回路図である。
【図3】同上作業機械の斜視図である。
【図4】同上作業機械のキャブ内を示す斜視図である。
【図5】(a)は同上作業機械の操作レバーの一例を示す側面図、(b)はその操作レバーの正面図、(c)はその操作レバーのスイッチによるオートハンマ状態の切替パターンを示す説明図である。
【図6】同上制御回路の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】同上制御回路のオートハンマ状態の切替手順を示すフローチャートである。
【図8】同上制御回路のオートハンマ作動時の状態を示す論理回路図である。
【図9】同上制御回路の機体持上げ状態でなくなったときの状態を示す論理回路図である。
【図10】同上制御回路のリセット操作時の状態を示す論理回路図である。
【図11】同上制御回路のオートハンマ再作動時の状態を示す論理回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図11に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図3は、油圧ショベル型の作業機械10を示し、下部走行体11aに対し上部旋回体11bが旋回可能に設けられた機体11に対し、油圧シリンダとしてのブームシリンダ12bmによって上下動される作業装置13が搭載され、この作業装置13の先端部に油圧ブレーカ14が装着されている。この油圧ブレーカ14は、油圧作動式のハンマ装置15を備えている。
【0021】
作業装置13は、上部旋回体11bにブーム13bmの基端が上下方向回動自在に軸支され、このブーム13bmの先端にスティック13stが回動自在に軸支され、このスティック13stの先端に油圧ブレーカ14が回動可能に軸支され、ブーム13bmはブームシリンダ12bmによって回動され、スティック13stはスティックシリンダ12stにより回動され、油圧ブレーカ14は、バケットシリンダ12bkにより回動される。
【0022】
上部旋回体11bの一側部にはオペレータの作業空間を保護するキャブ16が搭載されている。
【0023】
図4は、このキャブ16内を示し、運転席21の左右部にコンソール22がそれぞれ設けられ、これらのコンソール22の上部に操作部としての操作レバー23,24がそれぞれ設けられ、これらの操作レバー23,24のうちの一側の操作レバー24はブーム操作用であり、その上部には切替スイッチとしてのプッシュボタン式のスイッチ25,26および切替スイッチとしての親指操作輪式(サムホイール式)のスイッチ27が設けられ、さらに、切替スイッチとしての足踏み式のスイッチ28が走行操作ペダル29の一側部に設けられ、他側部にはモニタ30が設置されている。
【0024】
図5(a)、(b)は、一側の操作レバー24を示し、その上部の前面部にプッシュボタン式のスイッチ25および親指操作輪式のスイッチ27が設けられ、背面部にプッシュボタン式のスイッチ26が設けられている。これらのスイッチ25,26,27の1つを、油圧ブレーカ14のハンマ装置15を自動的に駆動する際のオートハンマ状態の切替スイッチとして用いる。
【0025】
図5(c)は、オートハンマ状態の切替パターンを示し、不用意な打撃を行なわないように、通常は、オートハンマ禁止状態とし、このオートハンマ禁止状態でプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで、オートハンマ待機状態とし、このオートハンマ待機状態で一定時間内に再度プッシュボタンなどのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで、オートハンマ許可状態とし、このオートハンマ許可状態でプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで、オートハンマ禁止状態に戻す。
【0026】
オートハンマ待機状態で一定時間内にプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つをオンしない場合は、オートハンマ禁止状態に戻る。モニタ30には、オートハンマ待機状態が「オートハンマ/スタンバイ」と表示され、オートハンマ許可状態は「オートハンマ/オン」と表示される。
【0027】
図1は、油圧ブレーカ14を制御する制御回路の概要を示し、車載エンジン31により駆動されるメインポンプ32から油圧ブレーカ14に供給される作動油を制御する制御弁としてのアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34が、コントロール弁ブロック35の内部に、それぞれ移動自在に設けられている。
【0028】
このコントロール弁ブロック35の内部には、パイロット操作式の左走行モータ制御用スプール36、右走行モータ制御用スプール37、旋回モータ制御用スプール38、ブームシリンダ制御用第1スプール39および第2スプール40、スティックシリンダ制御用第1スプール41および第2スプール42、バケットシリンダ制御用スプール43が、それぞれ変位自在に設けられている。
【0029】
ブームシリンダ12bmは、作業装置13を下げ方向に作動して油圧ブレーカ14を破砕対象物に押付ける片ロッド型の油圧シリンダであり、操作レバー24は、このブームシリンダ12bmを伸び方向に作動して作業装置13を上げ方向に操作するとともにブームシリンダ12bmを縮み方向に作動して作業装置13を下げ方向に操作する操作部であり、スプール変位制御用のパイロット圧を出力する減圧弁いわゆるリモコン弁を内蔵している。
【0030】
ブームシリンダ12bmのヘッド側には、このヘッド側の圧力(すなわちブームヘッド圧Ph)を検出する圧力検出器44が設けられ、ブームシリンダ12bmのロッド側には、このロッド側の圧力(すなわちブームロッド圧Pr)を検出する圧力検出器45が設けられ、また、操作レバー24のリモコン弁から引出されてブームシリンダ制御用第1スプール39のブーム下げ側パイロット圧作用部に連通されたブーム下げ用パイロットライン46には、操作レバー24のリモコン弁から出力されたブーム下げ用のパイロット圧(すなわちブーム下げパイロット圧Pp)を検出する圧力検出器47が設けられている。
【0031】
操作レバー24には、油圧ブレーカ14を作動不能とするオートハンマ禁止状態と、油圧ブレーカ14を作動可能とするオートハンマ許可状態とを切替可能な切替スイッチとしての前面部のプッシュボタン式のスイッチ25、背面部のプッシュボタン式のスイッチ26または親指操作輪式(サムホイール式)のスイッチ27が設けられている。これらのスイッチ25,26,27のいずれか1つを油圧ブレーカ作動用の切替スイッチとして用いる。
【0032】
この図1に示されるように、ブームヘッド圧Phの圧力検出器44、ブームロッド圧Prの圧力検出器45およびブーム下げパイロット圧Ppの圧力検出器47は、コントローラ(電子制御モジュールECM)51の入力部に接続され、このコントローラ51の出力部は、電磁比例弁52,53のソレノイドに接続されている。
【0033】
これらの電磁比例弁52,53は、パイロットポンプ54から供給されたパイロット1次圧を、コントローラ51からの制御信号に応じたパイロット2次圧に変換して、油圧ブレーカ14のハンマ装置15を制御するアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34のパイロット圧作用部に作用させる減圧弁である。
【0034】
コントローラ51は、スイッチ25,26,27の1つの切替操作によりオートハンマ許可状態にあり、圧力検出器47で検出したブーム下げパイロット圧Ppが設定圧以上であることを条件に、圧力検出器44,45で検出したブームシリンダ12bmのブームヘッド圧Phおよびブームロッド圧Prが一定の押付圧力状態すなわち機体持上げ状態となる場合のみ、電磁比例弁52,53を介して、アタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34を開き制御する機能を備えている。
【0035】
油圧ブレーカ14を制御するアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34は、ペダル操作されるペダル操作式リモコン弁55からシャトル弁56,57を介して供給されるパイロット圧によってパイロット操作することも可能である。
【0036】
コントローラ51は、図5(c)に示されるようにスイッチ25,26,27の1つを1度オン操作しても、そのまま一定時間経過した場合はオートハンマ禁止状態に戻され、一定時間内にスイッチ25,26,27の1つを再度オン操作することで、オートハンマ許可状態に設定される機能を備えている。
【0037】
さらに、コントローラ51は、スイッチ25,26,27の1つをオートハンマ許可状態でオン操作することで、オートハンマ禁止状態に設定される機能を備えている。
【0038】
また、コントローラ51は、ブームシリンダ12bmのブームヘッド圧Phおよびブームロッド圧Prが一定の押付圧力状態すなわち機体持上げ状態でなくなったときは、作業装置13をブーム下げ方向に操作する操作レバー24をいったん中立位置に戻してから下げ方向に再操作するリセット操作により油圧ブレーカ14の再作動を可能とする機能を備えている。
【0039】
図2は、コントローラ51内の制御ロジック回路を示し、圧力検出器47で検出されたブーム下げパイロット圧Ppは、オートハンマ許可閾値Pzおよびオートハンマ禁止閾値Pz−Δzを有するヒステリシス特性部61に入力する。圧力検出器44で検出されたブームヘッド圧Phは、オートハンマ許可閾値Pxおよびオートハンマ禁止閾値Px+Δxを有するヒステリシス特性部62に入力する。圧力検出器45で検出されたブームロッド圧Prは、オートハンマ許可閾値Pyおよびオートハンマ禁止閾値Py−Δyを有するヒステリシス特性部63に入力する。圧力検出器47で検出されたブーム下げ操作判定信号(オン/オフ)は、NОТ64に入力する。
【0040】
ヒステリシス特性部62,63の出力部は、AND65の入力部に接続され、ヒステリシス特性部61の出力部とAND65の出力部はAND66の入力部に接続され、AND66の出力部は、切替器67の0側に接続され、切替器67の1側には0入力部68が接続され、AND66の出力部は、さらにリセット禁止フラグの有効/無効切替の切替器69の有効側に接続され、切替器67の出力部は切替器69の無効側に接続され、切替器69の出力部は、バッファ70を介して、オートハンマ許可判定の許可と禁止または待機とにより切替わる切替器71の許可側に接続され、切替器71の禁止または待機側には0入力部72が接続され、切替器71の出力部は、図1に示された電磁比例弁52,53のソレノイドに接続されている。
【0041】
AND65の出力部は、NОТ73を介してAND74の一方の入力部に接続され、このAND74の出力部は、RSフリップフロップ75のセット入力部Sに接続され、NОТ64の出力部はRSフリップフロップ75のリセット入力部Rに接続され、RSフリップフロップ75の出力部Qは、切替器67の切替信号入力部に接続され、切替器67の出力部は、前回値を適用する前回値適用部76を介してAND74の他方の入力部に接続されている。
【0042】
AND65は、ブームシリンダ12bmの圧力条件を判定するもので、ハンマ作動をするには、機体11を持上げるまで油圧ブレーカ14のハンマ装置15を破砕対象部に一定の押付圧力で押付ける必要があり、その機体持上げ状態を実現するには、圧力検出器44で検出されたブームヘッド圧Phがオートハンマ許可閾値Px以下で、かつ、圧力検出器45で検出されたブームロッド圧Prがオートハンマ許可閾値Py以上となることが要求される。
【0043】
RSフリップフロップ75は、ブームヘッド圧Phとブームロッド圧Prが、油圧ブレーカ14のハンマ装置15を破砕対象部に一定の押付圧力で押付けて機体持上げ状態を実現している間は、「前状態保持」を出力するが、ブームヘッド圧Phがオートハンマ禁止閾値Px+Δxより高くなったり、ブームロッド圧Prがオートハンマ禁止閾値Py−Δyより低くなると、オートハンマ作動を停止し、そして、オートハンマ再作動の条件として、ブーム下げ操作をいったん中止して再操作することが必要となる。
【0044】
リセット禁止フラグが無効の場合は、機体持上げ負荷が軽くなったことでオートハンマが停止した際に、ブーム下げ操作をいったん中立に戻さなければならないが、リセット禁止フラグを有効とした場合は、機体持上げ負荷が軽くなったことでオートハンマが停止した際でも、オートハンマの再作動の条件としてブーム下げ操作をいったん中立としなくても、もう一度機体持上げ負荷が大きくなれば、オートハンマを作動状態とすることができ、ブーム下げ操作の中止動作を特別に省くことができる。
【0045】
次に、図6に示されたフローチャートを参照しながら、オートハンマシステムの制御手順を説明する。なお、図6中の丸数字は、制御手順を示すステップ番号を表わす。
【0046】
(ステップ1)
コントローラ51は、図5に示されたオートハンマ状態(禁止状態、待機状態、許可状態)を読込む。
【0047】
(ステップ2)
コントローラ51は、オートハンマ状態がオートハンマ許可状態であるか否かを判定する。オートハンマ許可状態であれば、ステップ3へ進む。
【0048】
(ステップ3)
コントローラ51は、ブーム下げパイロット圧を検出している圧力検出器47により、操作レバー24が下げ側に操作されたか否かを判定し、操作レバー24が下げ側に操作されたと判定したときは、ステップ4へ進む。
【0049】
(ステップ4)
コントローラ51は、各圧力センサ44,45,47により、ブームシリンダのヘッド圧Phおよびロッド圧Pr、ブーム下げパイロット圧Ppの各圧力を監視し、ヘッド圧Phがオートハンマ許可閾値Pxより低く、かつ、ロッド圧Prがオートハンマ許可閾値Pyより高く、かつ、ブーム下げパイロット圧Ppがオートハンマ許可閾値Pzより高いか否かを検知する。全ての圧力条件が整ったときは、ステップ5へ進む。
【0050】
(ステップ5)
コントローラ51は、ステップ4の圧力条件が全て整っているときは、ハンマの先端に十分な負荷がかかっている機体持上げ状態と判定して、電磁比例弁52,53を制御してアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34を開き、ハンマ装置15に作動油を供給して、自動的に打撃を行なう(ハンマ作動)。
【0051】
(ステップ6)
コントローラ51は、ステップ2の判断でオートハンマ許可状態でない場合、操作レバー24が中立位置に戻されるなど下げ側に操作されていないとき、各圧力センサ44,45,47によりハンマ先端の負荷が軽くなったことを検知したときは、電磁比例弁52,53を制御してアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34を閉じ、ハンマ作動を自動的に終了する(ハンマ停止)。
【0052】
したがって、オペレータは操作レバー24を下げ側へ入れるだけで打撃を行なえるようになる。
【0053】
次に、図7は、図5に示されたオートハンマ状態の切替手順を示すフローチャートであり、通常は、オートハンマ禁止状態とし(ステップ11)、このオートハンマ禁止状態でプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで(ステップ12YES)、オートハンマ待機状態となる(ステップ13)。
【0054】
このオートハンマ待機状態に入って一定時間内に再度プッシュボタンなどのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで(ステップ14YES)、モニタ30などに設けられたブザーを鳴らしてから(ステップ15)、オートハンマ許可状態となる(ステップ16)。
【0055】
このオートハンマ許可状態でプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つをオンすることで(ステップ17YES)、ステップ11のオートハンマ禁止状態に戻る。ステップ14で、一定時間内にプッシュボタン式などのスイッチ25,26,27の1つが再度オンされない場合も(ステップ14NO)、オートハンマ禁止状態に戻る。
【0056】
次に、図8乃至図11を参照しながら、図2に示されたロジック回路の動作を説明する。
【0057】
図8は、オートハンマ作動時の状態を示し、ブームシリンダ12bmのブームロッド圧Prは機体持上げ状態を検出し、機体11が持上がるとブームヘッド圧Phが下がるので、このブームヘッド圧Phも常に監視し、ブーム下げ用パイロット圧Ppの閾値Pz以上と、ブームロッド圧Prの閾値Py以上と、ブームヘッド圧Phの閾値Px以下の3つの圧力条件が満足されたときに、切替器71から電磁比例弁52,53に「1」が出力され、自動的に油圧ブレーカ14に作動油が供給され、ハンマ作動が行なわれる。
【0058】
図9は、機体持上げ状態でなくなったときの状態を示し、ブーム下げ操作中であっても機体持上げ状態でなくなると、RSフリップフロップ75のセット信号入力部に「1」が入力されて、切替器67に対し「1」が出力され、切替器67は1側に切替わるので、0入力部68から「0」が入力され、リセット禁止フラグが「無効」である切替器69およびバッファ70を経て、図7のオートハンマ許可判定が「許可」であっても、切替器71から電磁比例弁52,53への出力は「0」となり、油圧ブレーカ14のハンマ作動が停止される。
【0059】
図10は、リセット操作時の状態を示し、油圧ブレーカ14をいったん停止した後は、単に3つの圧力条件が回復しても、RSフリップフロップ75にリセット信号を入力しなければ、図9に示された状態を保持するだけであるから、いったんブーム下げ操作を解除して、RSフリップフロップ75のリセット信号入力部Rにリセット信号「1」を入力することが、油圧ブレーカ14を再動作する上で必要となる。
【0060】
図11は、オートハンマ再作動時の状態を示し、図8に示された状態と同様に、3つの圧力条件が満足されたときに、切替器71から電磁比例弁52,53に「1」が出力され、油圧ブレーカ14が自動的に再作動される。
【0061】
次に、図示された実施の形態の効果を説明する。
【0062】
コントローラ51は、スイッチ25−28の1つによりオートハンマ許可状態にあり、かつ、圧力検出器44,45で検出した作業装置13を下げ方向に作動するブームシリンダ12bmのヘッド側の圧力Phおよびロッド側の圧力Prが一定の押付圧力状態となる場合のみ、油圧ブレーカ14のアタッチメントツール制御用第1スプール33および第2スプール34を開き制御するので、オペレータは、スイッチ25−28の1つによりコントローラ51をオートハンマ許可状態に切替えた後は、操作レバー24をブーム下げ方向に操作するのみで、油圧ブレーカ14を作動または停止させるためのスイッチ操作を行なわなくても、機体持上げ状態を実現できる所定の押付圧力を確保した状態で油圧ブレーカ14を自動的に作動でき、操作が簡単になるとともに空打ちによるハンマ破損のおそれを防止できるオートハンマ機能が得られる。
【0063】
要するに、オペレータは操作レバー24を下げ側へ操作するのみで打撃を行なえるようになり、操作が簡単になる。また、ハンマ先端の負荷が軽くなると自動的に打撃が停止するので、空打ち状態になることを防止でき、ハンマの破損を防止できる。特に、オペレータは空打ちしないように注意を払う必要がなくなり、操作が楽になる。
【0064】
コントローラ51は、スイッチ25−28の1つの一定時間内の2度のオン操作によりオートハンマ許可状態に設定され、1度オン操作しても、そのまま一定時間経過すると自動的にオートハンマ禁止状態に戻されるので、スイッチ25−28の1つの1度の誤操作による誤作動を防止できる。
【0065】
通常は、オートハンマ禁止状態にしておき、油圧ブレーカ14の作動が可能なオートハンマ許可状態をモニタ30に表示し、オートハンマを起動するときは、図5に示されるようにモニタ30に警告を表示するので、オペレータの不用意な操作による打撃を防止できる。
【0066】
スイッチ25−28の1つをオートハンマ許可状態でオン操作することで、コントローラ51はオートハンマ禁止状態に設定されるので、機体持上げによる方向転換などを行なう場合は、簡単にオートハンマ禁止状態に切替えることができる。
【0067】
油圧ブレーカ14が一定の押付圧力状態でなくなったときの油圧ブレーカ14の再作動を可能とするには、作業装置13の操作レバー24をいったん中立位置に戻すなどしてブーム下げ操作を解除してからブーム下げ方向に再操作するリセット操作を条件としたので、オペレータの予期しない打撃を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、油圧ブレーカを備えた油圧ショベル型作業機械に好適であるが、機体から作業装置が突設された作業機械であれば、ホイールタイプの作業機械にも利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10 作業機械
11 機体
12bm 油圧シリンダとしてのブームシリンダ
13 作業装置
14 油圧ブレーカ
24 操作部としての操作レバー
25,26,27,28 切替スイッチとしてのスイッチ
30 モニタ
33,34 制御弁としてのアタッチメントツール制御用第1スプールおよび第2スプール
44,45 圧力検出器
51 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
機体に搭載された作業装置と、
作業装置の先端部に装着された油圧ブレーカと、
油圧ブレーカに供給される作動油を制御する制御弁と、
作業装置を下げ方向に作動して油圧ブレーカを破砕対象物に押付ける片ロッド型の油圧シリンダと、
油圧シリンダを縮み方向に作動して作業装置を下げ方向に操作する操作部と、
油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力を検出する圧力検出器と、
油圧ブレーカを作動不能とするオートハンマ禁止状態と油圧ブレーカを作動可能とするオートハンマ許可状態とを切替可能な切替スイッチと、
切替スイッチによりオートハンマ許可状態にあるとき圧力検出器で検出した油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力が一定の押付圧力状態となる場合のみ油圧ブレーカの制御弁を開き制御する機能を備えたコントローラと
を具備した作業機械。
【請求項2】
コントローラは、
切替スイッチを1度オン操作しても、そのまま一定時間経過した場合はオートハンマ禁止状態に戻され、一定時間内に切替スイッチを再度オン操作することで、オートハンマ許可状態に設定される機能を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
オートハンマ許可状態を表示するモニタ
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
コントローラは、
切替スイッチをオートハンマ許可状態でオン操作することで、オートハンマ禁止状態に設定される機能を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械。
【請求項5】
コントローラは、
油圧シリンダのヘッド側の圧力およびロッド側の圧力が一定の押付圧力状態でなくなったときは、作業装置を下げ方向に操作する操作部をいったん中立位置に戻してから下げ方向に再操作するリセット操作により油圧ブレーカの再作動を可能とする機能を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−209641(P2010−209641A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59481(P2009−59481)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】