説明

作業環境構築プログラム、作業環境を構築させる方法およびコンピュータ

【課題】ユーザの意図を反映させた作業環境を構築させるものであって、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能なプログラムを提供する。
【解決手段】ディスプレイを備えるコンピュータに、所定の作業環境を構築させるプログラムであって、作業環境を形成する要素の一部に影響を与える選択事項について、ユーザによる操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、該操作選択を受付ける状態で待機する選択受付ステップ、前記環境を形成する各要素を構築する構築ステップ、の各ステップをコンピュータに実行させることにより、コンピュータに作業環境を構築させるものであり、操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、構築ステップを開始させるプログラムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが何らかの作業を行うことができる環境をコンピュータに構築させる、作業環境構築プログラム、作業環境を構築させる方法およびコンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを動作させるプログラムとして、ユーザが何らかの作業を行うことができる環境をコンピュータに構築させる、作業環境構築プログラムが広く利用されている。コンピュータにおいて作業環境構築プログラムが実行されると、作業環境の構築が逐次進められる。
【0003】
作業環境構築プログラムは、作業環境を提供するためのソフトウェアの一部として設けられており、当該ソフトウェアが立ち上げられる際に、作業環境構築プログラムが実行される。作業環境構築プログラムを有するソフトウェアの典型例としては、モデルの操作編集が可能なエディタ環境(作業環境の一種)をコンピュータに構築させ、ユーザのモデル作成を支援するモデル作成支援ソフトウェアが挙げられる。なお本願における「モデル」は、特に種類を問わず、ユーザの編集を通じて作成されるデータを指す。モデル作成支援ソフトウェアの一例として、非特許文献1に開示されている画面作成ソフトウェアを挙げ、以下、その内容について簡潔に説明する。
【0004】
このソフトウェアが立上げられた状態のコンピュータは、ユーザに、モデル(本ソフトウェアでは、画面やその他情報から形成されるモデル)の編集を可能とするエディタ環境を提供する。より具体的には、当該コンピュータは、ディスプレイに図8に示すような編集画面を表示させる。編集画面は、編集対象とするモデルが表示されるモデル表示窓122や、モデルの編集操作に役立つ操作補助窓123(ツールバーなどが入った窓)が設けられており、フレーム121に収まるように表示されている。
【0005】
また編集画面を表示させた状態で、当該コンピュータは、ユーザインターフェースを通じたユーザの編集操作を継続的に受付ける。そして当該コンピュータは、編集操作の内容に従って、編集対象とするモデルを改変させる。これによりユーザは、当該コンピュータを使って編集対象のモデルを編集し、所望のモデルを作成することが可能である。作成されたモデルは、例えばプログラマブル表示器に送られ、製造ラインの制御や管理などに利用される。
【0006】
次に、このようなソフトウェアを立上げるための処理(立上げ処理)の具体例について、簡潔に説明する。立上げ処理に必要な処理は、概ね、フレームを表示させる「フレーム表示」の処理、編集対象とするモデルをユーザに操作選択させる「モデル選択受付」の処理、および、エディタ環境を構築する処理に分類できる。
【0007】
またエディタ環境を構築する処理は、更に、編集対象とするモデルの内容に影響されない「共通環境構築」の処理と、編集対象とするモデルの内容に影響される「モデル別環境構築」の処理に分類できる。「共通環境構築」の処理には、フレーム121に収まるように編集画面を構築して表示する処理などが含まれ、「モデル別環境構築」の処理には、編集対象とするモデルを読出して、モデル表示窓122に表示する処理などが含まれる。なお「モデル別環境構築」の処理については、編集対象とするモデルが決まるまでその内容が確定しないため、編集対象とするモデルが決まった後に実行される。
【0008】
立上げ処理をコンピュータに実行させるプログラム(つまり、作業環境構築プログラム)は、インストール作業によって、予めハードディスク等の補助記憶装置に記録されている。そして、ユーザによる立上げ処理の開始指示があったときに、逐次、主記憶装置にロードされた上で実行される。
【0009】
ここで、当該立上げ処理の進行手順(ソフトウェアの設計段階で定められている)について説明する。本例の進行手順は、立上げ時におけるユーザの操作(モデルの操作選択)を極力円滑にし、ユーザに、操作のもたつき感を与えないようにすることが重視されている。またユーザが操作を完了した後は、出来るだけ早くエディタ環境を完成させ、操作後に更に長く待たされることによる違和感を、ユーザに与えないようにすることも重視されている。
【0010】
図9は、立上げ処理の進行手順の概略を表すものであり、横軸は時間を表している。なお白色矢印は、プログラムや必要なデータがロードされつつある状態(ロード状態)を表す。また同様に黒色矢印は、ロードされたプログラム等に基づいて、ある状態が構築されつつある状態(構築状態)を表す。また同様に斜線部は、構築された状態が維持されている状態(維持状態)を表す。
【0011】
なお通常、何らかのプログラム等についてロード状態や構築状態となっているときは、維持状態や単に待機状態となっているときに比べて、コンピュータ(特にCPU等)の処理負担は大きくなる。本例では、各プログラム等のロード状態および構築状態は、同時期に重複しない(つまり、並列に実行されない)ものとする。
【0012】
図9に示すように、立上げ処理の開始指示があったら(図9のt0)、コンピュータは先ず、立上げ処理に必要なプログラムやデータを全てロードしておき、当該プログラムを直ちに実行可能な状態とする。その後コンピュータは、当該プログラムに基づいて、「フレーム表示」の処理を行い、フレームが表示された状態を構築する。また続いてコンピュータは、「共通環境構築」の処理を行って、エディタ環境の一部を構築する。これらの構築された状態は、そのまま維持される。
【0013】
またコンピュータは、フレームが表示された状態やエディタ環境の一部が構築されたら、「モデル選択受付」の処理を行い、編集対象とするモデルをユーザに操作選択させる状態を構築する。この状態は、例えば、ディスプレイに当該操作選択を受付ける画面が表示され、ユーザによる当該操作選択を待機する状態である。このような状態となっている間(図9のt1以降)は、ユーザは、何れのモデル(既存のモデルだけでなく、新規のモデルも含む)を編集対象とするかを決定し、そのモデルが特定されるように操作選択を行うことができる。
【0014】
そして当該操作選択が完了し、編集対象とするモデルが特定された時点(図9のt2)で、コンピュータは、この情報に応じて、「モデル別環境構築」の処理を行い、エディタ環境の残りの部分を構築する。この構築が完了した時点(図9のt3)で、エディタ環境は完成し、立上げ処理は完了する。なお「モデル選択受付」の処理は、エディタ環境(作業環境の一種)を形成する各要素の一部に影響を与える事項(ここでは、何れのモデルを編集対象とするか)をユーザに選択させ、ユーザの意図を反映させたエディタ環境を構築するために、必要な処理であるといえる。
【0015】
ここで、ユーザによる操作選択を待機する期間(図9の着色された部分)に着目すると、この期間では、プログラムがロードされつつある状態や、エディタ環境が構築されつつある状態とはなっていない。この期間は、フレームが表示された状態やエディタ環境の一部が構築された状態が、単に維持された状態(比較的、処理負担が軽い状態)となっている。
【0016】
そのため、操作選択を待機する期間において、操作受付に必要な処理(例えば、どのように操作されたかを判断する処理や、操作に応じて選択リストを作成する処理など)が、極力妨げられないようになっている。その結果、ユーザの操作を円滑にし、極力ユーザに、操作のもたつき感を与えないようにすることが可能となっている。
【0017】
また、ユーザによる操作選択が完了した後(図9のt2の後)に着目すると、「モデル別環境構築」の処理が行われるだけで、エディタ環境が完成するようになっており、プログラムのロードや「共通環境構築」の処理などは行われない。その結果、ユーザが操作を完了した後は、出来るだけ早くエディタ環境を完成させ、操作後に更に長く待たされることによる違和感を、極力ユーザに与えないようにすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第01/16657号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】画面作成ソフトウェア「GP−Pro ex Ver.2.5」(株式会社デジタル製)に関する製品カタログ、[online]、[平成21年11月12日検索]、インターネット[URL:http://www.proface.co.jp/product/pdf/gpproex_j_090708_a.pdf]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ユーザが作業環境を利用しようとする場合、上述したように、通常は先ず、コンピュータにソフトウェアの立上げ処理(作業環境構築プログラムの実行)を行わせる必要がある。そして立上げ処理に要する時間については、ユーザが速やかに作業に取り掛かることができるように、できるだけ短くなっていることが望ましい。
【0021】
しかし近年では、プログラム内容の高度化や複雑化が進んでおり、立上げ処理に要する時間の短縮化は難しくなってきている。またコンピュータの使用態様として、マルチタスクが多用される傾向にあるため、コンピュータの処理負担は増大する傾向にある。このような事情もあり、立上げ処理に時間が掛かり過ぎて、ユーザに不快感を与えてしまうことが懸念されている。
【0022】
そのため立上げ処理については、ユーザに、その遅さを感じさせないようにすることが、非常に重要となっている。また一方で、ユーザの利便性を考慮すれば、立上げ処理において、ユーザの意図を反映させた作業環境が、構築されるようになっていることが重要である。
【0023】
本発明は上述した問題に鑑み、コンピュータにユーザの意図を反映させた作業環境を構築させるものであって、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能なプログラムの提供を目的とする。また、このようなプログラムを用いて作業環境を構築させる方法およびコンピュータの提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、ディスプレイを備えるコンピュータに、ユーザが該コンピュータを操作して所定作業を行うことが可能となる環境を、構築させるプログラムであって、前記環境を形成する要素の一部に影響を与える選択事項について、ユーザによる操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、該操作選択を受付ける状態で待機する選択受付ステップ、および、前記環境を形成する各要素を構築する構築ステップ、の各ステップを前記コンピュータに実行させることにより、前記コンピュータに前記環境を構築させるものであり、前記環境を構築させるにあたり、前記コンピュータに、前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、構築ステップを開始させるプログラムとする。
【0025】
本プログラムを実行するコンピュータによれば、選択事項の操作選択を受付けるようになっているため、ユーザの意図を反映させた作業環境を構築することが可能である。また本プログラムを実行するコンピュータは、構築ステップを開始する前に、操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。そのためユーザは、立上げ処理の開始後、極力早い段階で、操作選択を行うことが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となる。
【0026】
また上記プログラムにおいて、前記環境は、前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されている編集対象のモデルについて、ユーザが操作編集を行うことが可能な環境である、エディタ環境であり、前記選択事項は、編集対象とするモデルを何れとするかであり、前記構築ステップは、前記環境を形成する各要素のうち、前記選択事項に影響されないものを前記操作選択の結果に関わらずに構築する第1構築ステップと、前記選択事項に影響されるものを前記操作選択の結果に基づいて構築する第2構築ステップと、からなり、第1構築ステップは、前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示処理を含み、第2構築ステップは、前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示処理を含み、前記環境を構築させるにあたり、前記操作選択を受付ける状態で待機している間に、前記コンピュータに、第1構築ステップを開始させるプログラムとしてもよい。
【0027】
本プログラムを実行するコンピュータによれば、ユーザは、所望のモデルを作成することが可能となる。なお先述した通り、「モデル」とは、ユーザの編集を通じて作成されるデータのことであり、その種類は問わない。また操作選択の待機に並行して第1構築ステップが進められるため、作業環境の構築に要する時間をより短縮させることが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに、より一層感じさせないようにすることが可能となる。
【0028】
また本発明に係る方法は、ディスプレイ、補助記憶装置、および主記憶装置を備えたコンピュータに、ユーザが該コンピュータを操作して所定作業を行うことが可能となる環境を、構築させる方法であって、前記環境を形成する要素の一部に影響を与える選択事項について、ユーザによる操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、該操作選択を受付ける状態で待機させる、選択受付プログラム、前記環境を形成する各要素を構築させる構築プログラム、の各プログラムを、前記補助記憶装置に予め記憶させておき、選択受付プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第1手順、および、構築プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第2手順、の各手順を、前記コンピュータに実行させる一方、前記コンピュータに、第1手順の実行により前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、第2手順を開始させる方法とする。
【0029】
本方法によれば、コンピュータに選択事項の操作選択を受付けさせるようにし、ユーザの意図を反映させた作業環境を構築させることが可能である。また本方法によれば、コンピュータは、第2手順を開始する前に、操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。そのためユーザは、立上げ処理の開始後、極力早い段階で、操作選択を行うことが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となる。
【0030】
また、前記環境は、前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されている編集対象のモデルについて、ユーザが操作編集を行うことが可能な環境である、エディタ環境であり、前記選択事項は、編集対象とするモデルを何れとするかであり、前記構築プログラムは、前記環境を形成する各要素のうち、前記選択事項に影響されないものを前記操作選択の結果に関わらずに構築させる第1構築プログラムと、前記選択事項に影響されるものを前記操作選択の結果に基づいて構築させる第2構築プログラムと、からなり、第1構築プログラムは、少なくとも、前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示処理を実行させるものであり、第2構築プログラムは、少なくとも、前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示処理を実行させるものであり、第2手順は、第1構築プログラムを前記主記憶装置にロードして実行する第3手順と、第2構築プログラムを前記主記憶装置にロードして実行する第4手順と、からなる上記の方法について、前記操作選択を受付ける状態で待機している間に、前記コンピュータに、第3手順を開始させる方法としてもよい。
【0031】
本方法によれば、ユーザは、所望のモデルを作成することが可能となる。また操作選択の待機に並行して第3手順が進められるため、作業環境の構築に要する時間をより短縮させることが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに、より一層感じさせないようにすることが可能となる。
【0032】
また本発明に係るコンピュータは、ディスプレイ、補助記憶装置、および主記憶装置を備え、補助記憶装置が記憶しているプログラムを主記憶装置にロードして実行するコンピュータであって、補助記憶装置には、前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されているモデルの操作編集が可能な環境である、エディタ環境を構築させるエディタ環境構築プログラムが記憶されており、該エディタ環境構築プログラムには、編集対象とするモデルの操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、ユーザによる該操作選択を受付ける状態で待機させる、選択受付プログラム、前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示プログラム、および、前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示プログラム、の各プログラムが含まれており、前記エディタ環境を構築するにあたり、前記選択受付プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第1処理、前記編集画面表示プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第2処理、および、前記モデル表示プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第3処理、の各処理を行うものであり、第3処理に加えておよび第2処理についても、第1処理の実行により前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、開始する構成とする。
【0033】
本構成によれば、第2処理および第3処理を開始する前に、操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。そのためユーザは、立上げ処理の開始後、極力早い段階で、操作選択を行うことが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
上述した通り、本発明に係るプログラムを実行するコンピュータ、もしくは本発明に係るコンピュータによれば、選択事項の操作選択を受付けるようになっているため、ユーザの意図を反映させた作業環境を構築することが可能である。
【0035】
また更に、当該コンピュータによれば、構築ステップ(もしくは第2手順、あるいは第2処理および第3処理)を開始する前に、操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。そのためユーザは、立上げ処理の開始後、極力早い段階で、操作選択を行うことが可能となる。その結果、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るコンピュータの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエディタ環境における、表示状態に関する説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るモデル作成ソフトに関する、プログラムやデータについての説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、立上げ処理の進行手順を表す説明図である。
【図5】選択受付画面が表示された状態を表す説明図である。
【図6】エディタ環境の一部(共通要素)が構築された段階における、表示状態に関する説明図である。
【図7】待ちウィンドウが表示された状態を表す説明図である。
【図8】従来のエディタ環境の一例についての、表示状態に関する説明図である。
【図9】従来の立上げ処理の一例についての、進行手順を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態に係るコンピュータおよびプログラムについて、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0038】
[コンピュータの構成等について]
まず、本実施形態に係るコンピュータの構成について説明する。図1は、当該コンピュータの構成図である。本図に示すように、当該コンピュータ1は、CPU[Central Processing Unit]11、RAM[Random Access Memory]12、HDD[Hard Disk Drive]13、ディスプレイ14、ユーザインターフェース15、および外部接続インターフェース16などを備えている。コンピュータ1としては、例えば、一般的なパーソナルコンピュータを用いることが可能であるが、これには限定されない。
【0039】
CPU11は、主にRAM12に記憶されているプログラムに基づいて、コンピュータ1の機能を発揮するために必要な、各種の演算や制御の処理を行う。またRAM12は、CPU11が直接読み書きを行うことができる主記憶装置として機能する。
【0040】
HDD13は、各種のプログラムやデータを記憶する補助記憶装置として機能する。HDD13は、RAM12に比べて記憶容量が大きく不揮発性であり、コンピュータ1にインストールされたプログラムは、主にHDD13に記録されることになる。インストールされたプログラムの実行は、先ずそのプログラムがHDD13からRAM12にロードされ、CPU11が、このロードされたプログラムを読込むことにより実現される。
【0041】
ディスプレイ14は、CPU11の指示に基づいて各種情報を表示する。またユーザインターフェース15は、キーボードやマウス等から形成されており、ユーザによる操作入力(モデルの操作選択や操作編集など)を受付ける。操作入力された情報はCPU11に伝送され、コンピュータ1の動作に反映される。
【0042】
外部接続インターフェース16は、ネットワークを用いた外部機器(ここでは特に、プログラマブル表示器が想定される)との接続を可能とする。これによりコンピュータ1は、外部機器との情報のやり取りが可能となっている。
【0043】
またコンピュータ1は、外部接続インターフェース16を介して、プログラマブル表示器2に接続されている。プログラマブル表示器2は、例えば各種製造ラインに使用される各機械との通信を行い、ユーザの指示に応じた製造ラインの遠隔制御や監視などを行う装置である。またプログラマブル表示器2は、後述するモデル作成ソフトによって作成されたモデルをコンピュータ1から受取り、これを用いて、ユーザの各種指示を受付けたり、製造ラインの稼働状況等を表示したりすることができる。
【0044】
上述した構成のコンピュータ1には、モデル(本実施形態では一例として、プログラマブル表示器2で用いることが可能な、製造ライン等を表す画面やその他情報から形成されるモデル)の作成支援を主目的としたソフトウェア(以下、「モデル作成ソフト」と称する)がインストールされている。当該インストールは、一例として、コンピュータ1の製造工程や、ユーザによるインストール作業(例えばフロッピー(登録商標)ディスクやCD-ROMを使った作業)によって実現されている。
【0045】
ユーザは、適宜、コンピュータ1に立上げ開始を指示することにより、コンピュータ1にモデル作成ソフトを立上げさせて、モデル作成ソフトを利用することが可能となっている。モデル作成ソフトが立ち上がった状態のコンピュータ1は、モデルを編集するためのエディタ環境が構築されている。
【0046】
ユーザは、エディタ環境が構築されたコンピュータ1を使い、モデルの編集を重ねることによって、プログラマブル表示器2で用いる所望のモデルを作成することが可能である。つまりユーザは、コンピュータ1を操作してモデルを作成した後、このモデルをプログラマブル表示器2へ送ること等によって、プログラマブル表示器2において当該モデルを利用することが可能となる。
【0047】
[エディタ環境について]
ここで、エディタ環境が構築された状態のコンピュータ1が、ユーザに提供する機能について説明する。
【0048】
図2は、エディタ環境が構築された状態における、ディスプレイ14の表示状態を表している。本図に示すようにディスプレイ14には、モデル表示窓22および各種の操作補助窓23からなる、編集画面25が表示されている。なおディスプレイ14にはフレーム21が表示されており、編集画面25はフレーム21に収まるように表示されている。
【0049】
モデル表示窓22は、現時点で編集対象となっているモデルが、表示される領域である。つまり図2に示す状態では、モデル表示窓22に表示されているモデルMDLが、編集対象(編集可能)となっている。操作補助窓23は、各種のアイコン(部品などを表すもの)、ツールバー、および、文字の入力窓などが設けられており、ユーザによるモデルの編集操作等を補助する役割を果す。なお編集画面25は、基本的に、どのようなモデルが編集される際にも共通に用いられる。換言すれば、編集画面25の構成は、編集対象であるモデルの如何によっては変動しない。
【0050】
エディタ環境において、ユーザは、ユーザインターフェース15を操作し、文字等を入力したり、ディスプレイ14に表示されているポインタ24を動かしたりして、モデルを編集することができる。これによりユーザは、操作補助窓23に示された部品を、コピーアンドペーストによって編集中のモデルに追加配置するといった具合に、操作補助窓23を利用しつつ、モデル表示窓22に表示されているモデルを所望の状態に編集することが可能である。
【0051】
なおエディタ環境では、プログラマブル表示器2で用いるモデルを適切に作成することができるように、作図操作を受付ける機能(CADに準じた機能)の他にも、モデルの操作編集を補助する種々の機能が備えられている。一例としては、モデルに使われている部品の各種パラメータの操作設定を受付ける機能や、ラダー図を表示して各工程の流れの操作設定を受付ける機能などが備えられている。ユーザは適宜、このような機能をも利用して、モデルを操作編集することができる。
【0052】
またエディタ環境では、現在編集中のモデルを、完成されているか否かに関わらず、任意の時点でHDD13に記録保存させることが可能である。なおHDD13は、複数のモデルの情報を、別個のモデルファイルとして記録保存することが可能となっている。記録保存されたモデル(既存モデル)については、ユーザの指示に応じていつでも編集可能な状態(RAM12に読出されて、モデル表示窓22に表示された状態)とすることができ、編集を再開することが可能である。またエディタ環境では、ユーザは、別のモデルを編集するため、編集対象のモデルを随時変更させることも可能である。
【0053】
一旦立ち上げられたエディタ環境は、ユーザによってエディタ環境の終了指示がなされるまで、継続される。またコンピュータ1は、ユーザの指示に応じて、HDD13に記録保存されているモデルファイルを、プログラマブル表示器2に送ることができる。
【0054】
[モデル作成ソフトに関するプログラムやデータについて]
次に、モデル作成ソフトの立上げ処理、すなわち、エディタ環境を構築するための処理に関わるプログラム及びその他データについて、図3を参照しながら説明する。図3は、当該立上げ処理に関わるプログラム及びその他データの種類を示している。
【0055】
本図に示すように、当該プログラム及びその他データとしては、主に、モデル作成ソフトのインストールによってコンピュータ1が取得したデータ群D1、および、これまでにエディタ環境を通じて作成されたモデルファイルの集まりである、モデルファイル群D2などが挙げられる。データ群D1およびモデルファイル群D2は、常時、HDD13に記憶されている。
【0056】
データ群D1は、立上げ処理遂行プログラムPG1、エディタ環境構築プログラム群PG2、およびその他のプログラムや各種データから構成されている。立上げ処理遂行プログラムPG1は、コンピュータ1にエディタ環境構築プログラム群PG2の各プログラムを逐次実行させ、モデル作成ソフトの立上げ処理が適切に遂行されるようにする。
【0057】
エディタ環境構築プログラム群PG2は、モデル選択受付プログラムPG2a、共通環境構築プログラムPG2b、およびモデル別環境構築プログラムPG2cの各プログラム(モジュール)から構成されている。
【0058】
モデル選択受付プログラムPG2aは、編集対象とするモデルを選択するための、ユーザの選択操作を受付ける処理を、コンピュータ1に実行させるプログラムである。モデル選択受付プログラムPG2aは、当該選択操作を受付ける状態にした後、当該選択操作が完了するまで、コンピュータ1にこの状態を維持させる。
【0059】
またモデル選択受付プログラムPG2aは、ディスプレイ14にフレーム21(図2を参照)を表示させる処理をも、コンピュータ1に実行させるようになっている。モデル選択受付プログラムPG2aは、フレーム21が表示されるようにした後、エディタ環境が解消されるまで、コンピュータ1にフレーム21の表示を維持させる。
【0060】
共通環境構築プログラムPG2bは、エディタ環境を形成する各要素のうち、編集対象とするモデルに影響されないもの(何れのモデルが編集対象となっても内容が変わらない、共通の要素であり、以下「共通要素」と称することがある)を構築する処理を、コンピュータ1に実行させるプログラムである。この処理には、モデル表示窓22および操作補助窓23を含んだ編集画面25(図2を参照)を形成してディスプレイ14に表示させる処理(環境復元)や、ドキュメントの初期化、外部ファイルの読込みなどが含まれる。
【0061】
モデル別環境構築プログラムPG2cは、エディタ環境を形成する各要素のうち、編集対象とするモデルに影響されるもの(何れのモデルが編集対象となるかによって、内容が変わる要素であり、以下「モデル別要素」と称することがある)を構築する処理を、コンピュータ1に実行させるプログラムである。この処理には、操作選択されたモデル(つまり、編集対象とするモデル)をロードし、モデル表示窓22に表示する処理などが含まれる。
【0062】
このようにエディタ環境構築プログラム群PG2は、概して、何らかの機能単位ではなく、処理単位に分けられたモジュールが集まって構成されている。そのため、各プログラムのロードや実行を、処理単位で異なるタイミングに実行させることが容易となっている。なお、上述したプログラム(PG2a〜PG2c)は、単一のプログラムとして形成されていても良く、更に細分化された複数のモジュールが集まって形成されていても良い。これらのプログラム(PG2a〜PG2c)がコンピュータ1に実行させる処理の、より詳細な内容については、以下の「モデル作成ソフトの立上げ処理について」の欄における説明で明らかとなる。
【0063】
またデータ群D1に含まれる各種データとしては、複数のモデルフォーマットデータからなるモデルフォーマットデータ群Dat1や、複数の部品データからなる部品データ群Dat2などが挙げられる。モデルフォーマットデータは、モデル作成ソフトの作成者側で予め準備されている、モデルの汎用的なフォーマットデータである。ユーザは新たにモデルを作成するとき、モデルフォーマットデータが付加された状態からモデルの編集を開始すれば、一から編集を開始するよりも、モデルの編集(作成)の手間を軽減させることができる。部品データは、モデルの編集に使われる各種の部品(一例として、ランプやベルトコンベア等)に関するデータである。部品データは、共通要素の構築などに使用される。
【0064】
[モデル作成ソフトの立上げ処理について]
次に、コンピュータ1において実行されるモデル作成ソフトの立上げ処理、すなわち、エディタ環境を構築するために実行される処理の内容について、図4を参照しながら説明する。なお図4は、立上げ処理の進行手順の概略(各プログラムがロード・実行されるタイミング等)を表している。
【0065】
また図4において白色矢印は、そのプログラムおよび当該プログラムの実行に必要なデータが、HDD13からRAM12へロードされつつある状態(ロード状態)を表す。また同様に黒色矢印は、そのプログラムが実行され、何らかの状態が構築されつつある状態(構築状態)を表す。また同様に斜線部は、そのプログラムによって構築された状態が維持されている状態(維持状態)を表す。
【0066】
なお本実施形態では、従来の処理(図9を参照)との比較を容易とするため、各プログラム等のロード状態および構築状態は、同時期に重複しない(つまり、並列に処理されない)ものとする。ただし実際には、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、これらの状態が同時期に重複していても構わない。
【0067】
ユーザインターフェース15を通じて、ユーザによるモデル作成ソフトの立上げ指示(例えば、ディスプレイ14に表示されている所定アイコンのクリック動作)がなされると、立上げ処理遂行プログラムPG1がRAM12にロードされる。ここまでの処理は、主に、コンピュータ1に導入されているOS[Operating System]に基づいて実行される。以降、コンピュータ1は、主に立上げ処理遂行プログラムPG1に基づいて、モデル作成ソフトの立上げ処理を実行する。その内容は以下の通りである。
【0068】
モデル作成ソフトの立上げ処理が開始されると(図4のt0)、まずコンピュータ1は、モデル選択受付プログラムPG2aを、RAM12へロードする。そしてコンピュータ1は、モデル選択受付プログラムPG2aのロードを完了させたら、モデル選択受付プログラムPG2aを実行する。
【0069】
これにより、ディスプレイ14に、フレーム21と所定の選択受付画面が表示され、ユーザによる編集対象とするモデルの選択操作を受付ける状態(選択操作を待機する状態)が構築される。この状態はその後、ユーザが選択操作を完了するまで(つまり図4のt1からt2まで)維持される。選択操作を受付ける状態は、より具体的には、次の通りとなっている。
【0070】
まずディスプレイ14には、図5に示すように、選択受付画面31が、フレーム21に収まるように表示される。選択受付画面31には、「新規モデルの作成」と「既存モデルの編集」の項目が表され、コンピュータ1はこの状態で、ユーザによる何れかの項目の操作選択を待機する。このときユーザは、例えばポインタ24の操作を通じて、何れかの項目を操作選択することが可能となっている。
【0071】
ユーザとしては、新たにモデルを作成しようとする場合には、「新規モデルの作成」を操作選択し、作成途中の既存モデルを編集しようとする場合には、「既存モデルの編集」を操作選択することになる。なお選択受付画面31には、例えば「ようこそ、○○○へ」(○○○には、モデル作成ソフトの正式名称やバージョンが示されている)といった表示も設けておき、その旨をユーザに周知させるようにしても良い。
【0072】
「新規モデルの作成」が操作選択された場合は、コンピュータ1は、選択受付画面31を、どのモデルフォーマットを利用するかの操作選択を受付ける画面に切り替える。このときコンピュータ1は、モデルフォーマットデータ群Dat1のリストを表示させ、ユーザの操作選択を補助する。そしてコンピュータ1はこの状態で、どのモデルフォーマットを利用するかについての、ユーザによる操作選択を待機する。
【0073】
これによりユーザは、利用したいモデルフォーマットを操作選択することが可能となっている。そして当該操作選択がなされたら、コンピュータ1は、操作選択されたモデルフォーマットのデータが付加された新規モデルを、編集対象として特定する。なおユーザは、モデルフォーマットを指定しないことも可能となっており、この場合コンピュータ1は、何れのモデルフォーマットも付加されていない(いわゆる白紙の状態の)新規モデルを、編集対象として特定する。
【0074】
一方、「既存モデルの編集」が操作選択された場合は、コンピュータ1は、選択受付画面31を、どの既存モデルを編集するかの操作選択を受付ける画面に切り替える。このときコンピュータ1は、モデルファイル群D2のリストを表示させ、ユーザの操作選択を補助する。そしてコンピュータ1はこの状態で、どの既存モデルを編集するかについての、ユーザによる操作選択を待機する。
【0075】
これによりユーザは、編集しようとする既存モデルを操作選択することが可能となっている。そして当該操作選択がなされたら、コンピュータ1は、操作選択された既存モデルを、編集対象として特定する。
【0076】
このようにしてコンピュータ1は、ユーザの意図に沿って、編集対象とするモデルを特定する。なおユーザが操作選択を完了した時点で(図4のt2)、選択受付画面31は不要となるため、コンピュータ1は以降、選択受付画面31を表示させないようにする。ここまでの処理が、主に、モデル選択受付プログラムPG2aに基づいて実行される。
【0077】
またコンピュータ1は、モデル選択受付プログラムPG2aが実行され、ユーザによる編集対象とするモデルの操作選択を受付ける状態(換言すれば、ユーザによる当該操作選択が可能な状態)が構築された後に(図4のt1の後に)、共通環境構築プログラムPG2bについて、RAM12へのロードを開始する。
【0078】
そしてコンピュータ1は、共通環境構築プログラムPG2bのロードを完了させたら、共通環境構築プログラムPG2bを実行する。その結果コンピュータ1は、共通要素を構築し、その後、構築された状態を維持する。なお共通要素の内容は、編集対象とするモデルに依拠しないため、編集対象とするモデルが特定されていない段階であっても(図4のt2より前の時点であっても)、共通要素の構築は遂行され得る。そのため、共通環境構築プログラムPG2bは、既にモデルの操作選択が完了していたとしても、この操作選択の結果に関わらずに実行される。
【0079】
共通要素が構築された段階における、ディスプレイ14の表示状態を、図6に示す。本図に示すように、この段階では、ディスプレイ14に編集画面25が表示されている。ただしモデル表示窓22の中は空白となっており、編集対象とするモデルは表示されていない。
【0080】
なお、編集画面25と選択受付画面31がディスプレイ14上で重複している場合、ユーザの操作選択が妨げられないように、編集画面25は、選択受付画面31の背面に表示される。また、ユーザの操作選択が完了するまで(つまり、選択受付画面31が表示されなくなるまで)、編集画面25のディスプレイ14への表示が保留されるようになっていても構わない。この場合コンピュータ1は、バックグラウンド処理によって編集画面25を形成する処理を進めておき、選択受付画面31が表示されなくなり次第、編集画面25をディスプレイ14に表示するようにしても良い。
【0081】
一方、コンピュータ1は、エディタ環境のうちの共通要素が構築されたら、モデル別環境構築プログラムPG2cについて、RAM12へのロードを開始する。そしてコンピュータ1は、モデル別環境構築プログラムPG2cのロードの完了時点、および、編集対象とするモデルの操作選択が完了した時点のうちの遅い時点(図4の場合は、t2のタイミング)で、モデル別環境構築プログラムPG2cを実行する。その結果コンピュータ1は、モデル別要素を構築し、その後、構築された状態を維持する。なおこの時点では、既に編集対象とするモデルが特定されているため、モデル別要素の構築は遂行され得る。つまり、モデル別環境構築プログラムPG2cは、モデルの操作選択の結果に基づいて実行される。
【0082】
モデル別要素の構築は、編集対象とするモデルの種類に対応して実行される。すなわち「新規モデルの作成」が選択されている場合は、コンピュータ1は、選択されているモデルフォーマットデータ(モデルフォーマットデータ群Dat1の一つ)をRAM12にロードし、このデータが付加された新規モデルを生成する。その後コンピュータ1は、この新規モデルをモデル表示窓22に表示させ、ユーザがモデルを見ながら、これを編集できる状態とする。
【0083】
また「既存モデルの編集」が選択されている場合は、コンピュータ1は、選択されているモデルファイル(モデルファイル群D2の一つ)をRAM12に読出す。またコンピュータ1は、このモデルファイルが表すモデルをモデル表示窓22に表示させ、ユーザがモデルを見ながら、これを編集できる状態とする。
【0084】
共通要素とモデル別要素の双方が構築された時点(図4のt3)で、エディタ環境の構築は完了する。この段階で、ディスプレイ14の表示状態は図2に示す通りとなり、モデル表示窓22には、編集対象とするモデルMDLも表示されている。以降にコンピュータ1が実行する処理については、既に「エディタ環境について」の欄で説明した通りである。
【0085】
[本実施形態の主な特長等について]
本実施形態における立上げ処理(図4を参照)と、従来例の立上げ処理(図9を参照)とを比較すると、次のことが言える。
【0086】
先ず、ソフトウェアの立上げ処理の開始から、操作選択の受付が開始されるまでの時間(図4または図9の、t0からt1までの期間に相当し、以下「起動時間」と称する)に着目する。この起動時間は、従来例では概ね、立上げ処理に必要な各プログラムロードする時間、フレームが表示される状態を構築する時間、エディタ環境の一部を構築する時間、および、編集対象とするモデルを操作選択させる状態を構築する時間、の各時間を合わせたものとなっている。
【0087】
一方、本実施形態における起動時間は、モデル選択受付プログラムPG2a(フレームを表示し、編集対象とするモデルを操作選択させる状態を構築するために必要なプログラム)をロードして、その状態を構築するまでの時間となっている。
【0088】
このように本実施形態では、立上げ処理の開始後、ユーザによる操作選択を待機する状態とするために重要とみなされる動作が優先的に実行され、その他の動作については、操作選択を待機する状態となった後に実行される。つまり、当該その他の動作については、従来例に比べて、遅延・分散されるようになっている。そのため本実施形態では、従来例に比べると、起動時間が非常に短くなっている。具体的な起動時間はコンピュータの性能等にも左右されるが、概ね、従来例では40秒程度となっていた起動時間は、本実施形態では15〜20秒程度になると期待される。
【0089】
ここで操作選択が可能となっている状態においては、ユーザは通常、所望のモデルを選択するために、選択受付画面31を見ながら、ユーザインターフェース15を正しく操作することに集中する。そのため操作選択が可能となっている期間では、そうでない期間(通常ユーザは、単に待機するだけとなる)に比べて、待たされているとは感じにくくなると言える。
【0090】
そして、ソフトウェアの立上げ時におけるユーザの心理状態を考えると、立上げ処理の開始を指示してからそのまま待機するだけとなっている時間が長いほど、多くのユーザは、長く待たされていると感じることになる。この点、本実施形態のように起動時間が短くなっていれば、起動時間がより長い場合に比べて、ユーザはより早く操作選択に取り掛かることができ、長く待たされているとは感じにくくなる。
【0091】
その結果として、本実施形態によれば、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となっている。なお、より早く操作選択に取り掛かることが可能となっていれば、起動時間を待っている間に、ユーザが選択すべきモデルを忘れてしまうといったことを、出来るだけ防ぐこともできる。
【0092】
また、操作選択の待機中における他の処理の実行状況に着目すれば、本実施形態では、共通環境構築プログラムPG2bのロードや実行、ならびに、モデル別環境構築プログラムPG2cのロードが、操作選択を待機する処理と並列的になされている。なお操作選択を待機する処理は、概ね、何れかのモデルが特定されるようにユーザの操作を受付けるだけであるため、処理負担は比較的軽いといえる。そのため、これらのプログラム(PG2b、PG2c)のロードや実行が、操作選択を待機する処理と並列的になされても、コンピュータ1の処理負担が過剰になることは、殆どないと言える。
【0093】
本実施形態では、このように並列的に処理が進められるため、従来例に比べて操作のもたつき感がやや大きくなる可能性があるものの、立上げ処理をより効率良く進めて、立上げ処理に要する時間を極力抑えることが可能となっている。本実施形態によればこの観点からも、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となっている。
【0094】
また本実施形態では、モデル選択受付プログラムPG2aの実行によりフレーム21が表示されるため、フレーム21が早い段階で表示されるようになっている。そのためユーザは、ディスプレイ14における編集画面25の表示に用いられ得る領域(つまり、編集画面25が表示される領域の外縁)を、極力早い段階で認識することが可能となっている。これによりユーザは、例えばマルチタスクによって複数のソフトウェアの画面をディスプレイ14に表示させる場合、編集画面25が、他のソフトウェアの画面に重なってしまうか否かを早い段階で認識し、適切な対応を採ることが可能となる。
【0095】
[その他]
以上に説明したモデル作成ソフトの立上げ処理は、立上げ処理の開始後に、編集対象とするモデルの操作選択を受付けるようになっている。しかしユーザは、編集対象とするモデルを予め指定した上で、モデル作成ソフトを立ち上げることも可能となっている。例えばユーザは、既存のモデルファイル群D2を表すリストやアイコンから、一のモデルファイルを選択して、モデル作成ソフトを立ち上げることが可能となっている。
【0096】
この場合は、既に編集対象とするモデルは特定されているため、立上げ処理において、モデル選択受付プログラムPG2aの実行は省略されるようになっている。すなわち立上げ処理では、フレーム21が表示される状態が構築された後、モデル選択受付プログラムPG2aが実行されることなく、共通環境構築プログラムPG2bやモデル別環境構築プログラムPG2cについてのロードや実行が開始される。
【0097】
また共通環境構築プログラムPG2bやモデル別環境構築プログラムPG2cの実行が開始された際には、編集画面25および編集対象のモデルMDLの表示や、ユーザが自在に操れるポインタ24の表示(つまりエディタ環境で現れるディスプレイ14の表示状態のうち、ユーザが編集開始後の初期の段階で目にするものの形成)が、その他の処理に先立って実行されるようにしてもよい。
【0098】
このようにしていれば、ユーザが編集開始後の初期の段階で目にする表示状態が、いち早く形成されることになる。その結果ユーザに、あたかもこの表示状態が形成された時点で、モデル作成ソフトが立ち上がったと感じさせることができ、立上げ処理の遅さをより感じにくくさせることが可能となる。
【0099】
なお、その他の処理については、ユーザが次にすべき操作を考えたりポインタ24を操作したりしている間に、バックグラウンド処理として進めるようにすれば、ユーザに出来るだけ違和感を与えないようにすることが可能である。また一部のプログラムやデータについては、コンピュータ1の常駐プログラムを用いて事前に読込ませておく処理(事前読込処理)によって、RAM12に読込まれるようにしておいても良い。
【0100】
また、各プログラムがロードされている状態、負荷の高い処理が実行されている状態、ユーザの操作が想定された以上に早く完了し、次の処理が間に合わない状態などにおいては、ディスプレイ14の表示状態が暫く変化せず、ユーザによって、コンピュータ1がフリーズしていると誤解される可能性も否めない。そこでディスプレイ14の表示状態が暫く変化しない状態のときに、コンピュータ1に、図7に示すような待ちウィンドウ32(コンピュータ内部で、処理が進行中であることを示す画面)を表示させるようにしても良い。
【0101】
また本実施形態では、モデル選択受付プログラムPG2aの実行によりフレーム21が表示され、その後エディタ環境が終了するまで、フレーム21の表示は維持されるようになっている。しかしフレーム21については、基本的に、モデルの操作編集(ユーザの作業)に何らかの形で寄与するものではなく、エディタ環境を形成する要素の一部ではないと見ることができる。
【0102】
また、モデルの操作選択を受付ける段階で、フレーム21の表示が不要とみなされるような場合には、モデル選択受付プログラムPG2aではなく、共通環境構築プログラムPG2b等の実行によって、フレーム21が表示されるようにしても良い。また、そもそもフレーム21の表示自体が不要とみなされるような場合には、フレーム21を表示する処理が、省略されるようにしても構わない。
【0103】
なお、出来るだけ早くモデルの操作選択を受付ける状態とするためには、本実施形態のように、立上げ処理開始の指示があった後、真っ先に、モデル選択受付プログラムPG2aのロードや実行がなされることが望ましい。つまり、エディタ環境を形成する要素を形成するためのプログラムのロードや実行の全てが、コンピュータ1が操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、開始されることが望ましい。
【0104】
しかし何等かの都合により、エディタ環境を構築する処理の一部が、モデル選択受付プログラムPG2aのロードや実行に先立って、実行されるようにしても構わない。先立って実行される処理が比較的軽いものであれば、起動時間がさほど長くなることはないため、立上げ処理の遅さを、ユーザにあまり感じさせないようにすることは可能である。
【0105】
また「モデル」について、本実施形態では、製造ライン等を表す画面やその他情報から形成されるものを例に挙げたが、他の態様のものであっても構わない。例えば文書や図表など、ユーザの編集を通じて作成される種々のデータが「モデル」に該当し得る。
【0106】
上述した通り、本実施形態に係るモデル作成ソフトに含まれているプログラム(PG1、PG2)は、コンピュータ1に、ユーザがコンピュータ1を操作して、所定作業を行うことが可能となる環境(作業環境)を構築させるプログラムである。より具体的には、ディスプレイ14を有するコンピュータ1に、ディスプレイ14にモデル表示窓22を含む編集画面25が表示され、モデル表示窓22に表示されているモデルMDL(編集対象のモデル)について、ユーザが操作編集を行うことが可能な環境である、エディタ環境を構築させるプログラムである。
【0107】
またプログラム(PG1、PG2)は、エディタ環境を形成する各要素の一部に影響を与える、編集対象とするモデルを何れとするか(選択事項)について、ユーザによる操作選択を受付ける状態で待機するステップ(選択受付ステップ)、エディタ環境を形成する各要素のうち、編集対象とするモデルに影響しないものを、当該操作選択の結果に関わらずに構築するステップ(第1構築ステップ)、および、エディタ環境を形成する各要素のうち、編集対象とするモデルに影響されるものを、当該操作選択の結果に基づいて構築するステップ(第2構築ステップ)、の各ステップをコンピュータ1に実行させることにより、コンピュータ1にエディタ環境を構築させるものである。
【0108】
そして更にプログラム(PG1、PG2)は、コンピュータ1にエディタ環境を構築させるにあたり、コンピュータ1に、第2構築ステップに加えて第1構築ステップについても、編集対象とするモデルの操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、開始させるものである。
【0109】
このように、プログラム(PG1、PG2)を実行するコンピュータ1によれば、選択事項の操作選択を受付けるようになっているため、ユーザの意図を反映させたエディタ環境を構築することが可能となっている。そしてコンピュータ1は、第1構築ステップおよび第2構築ステップを開始する前に、編集対象とするモデルの操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。
【0110】
このようにコンピュータ1は、第2構築ステップだけでなく、第1構築ステップの開始前の段階で、当該操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。更に言えば、コンピュータ1は、当該操作選択がなされる前に第1構築ステップを開始することが可能であるにも関わらず、第1構築ステップの開始前の段階で、当該操作選択を受付ける状態で待機する状態となる。
【0111】
つまり本実施形態に係るプログラム(PG1、PG2)、すなわち作業環境構築プログラムは、モデル作成ソフトにおける立上げ処理の開始から、ユーザの操作選択が可能となるまでの時間を、極力短くすることを強く意図して作成されている。その結果、当該プログラム(当該プログラムを実行するコンピュータ)によれば、立上げ処理の遅さを、ユーザに極力感じさせないようにすることが可能となっている。
【0112】
なお、これまでに説明した各プログラムやこれらを含むソフトウェアは、CD−ROMやDVDなどの記憶媒体を利用して流通させることもでき、サーバからダウンロードさせることによって流通させることもできる。またASP[Application Service Provider]等の態様によって、ユーザに利用させることも可能である。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。例えば作業環境や選択事項の内容については、上述した形態に限定されるものではなく、他の態様となっていても構わない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、画面などのモデル作成に用いられるコンピュータ等に、利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 コンピュータ
2 プログラマブル表示器
11 CPU
12 RAM(主記憶装置)
13 HDD(補助記憶装置)
14 ディスプレイ
15 ユーザインターフェース
16 外部接続インターフェース
21 フレーム
22 モデル表示窓
23 操作補助窓
24 ポインタ
25 編集画面
31 選択受付画面
32 待ちウィンドウ
D1 モデル作成ソフトのデータ群
D2 モデルファイル群
Dat1 モデルフォーマットデータ群
Dat2 部品データ群
MDL 編集対象のモデル
PG1 立上げ処理遂行プログラム
PG2 エディタ環境構築プログラム群
PG2a モデル選択受付プログラム
PG2b 共通環境構築プログラム
PG2c モデル別環境構築プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを備えるコンピュータに、
ユーザが該コンピュータを操作して所定作業を行うことが可能となる環境を、構築させるプログラムであって、
前記環境を形成する要素の一部に影響を与える選択事項について、ユーザによる操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、該操作選択を受付ける状態で待機する選択受付ステップ、および、
前記環境を形成する各要素を構築する構築ステップ、
の各ステップを前記コンピュータに実行させることにより、前記コンピュータに前記環境を構築させるものであり、
前記環境を構築させるにあたり、
前記コンピュータに、前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、構築ステップを開始させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記環境は、
前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されている編集対象のモデルについて、ユーザが操作編集を行うことが可能な環境である、エディタ環境であり、
前記選択事項は、
編集対象とするモデルを何れとするかであり、
前記構築ステップは、
前記環境を形成する各要素のうち、前記選択事項に影響されないものを前記操作選択の結果に関わらずに構築する第1構築ステップと、前記選択事項に影響されるものを前記操作選択の結果に基づいて構築する第2構築ステップと、からなり、
第1構築ステップは、
前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示処理を含み、
第2構築ステップは、
前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示処理を含み、
前記環境を構築させるにあたり、
前記操作選択を受付ける状態で待機している間に、前記コンピュータに、第1構築ステップを開始させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
ディスプレイ、補助記憶装置、および主記憶装置を備えたコンピュータに、
ユーザが該コンピュータを操作して所定作業を行うことが可能となる環境を、構築させる方法であって、
前記環境を形成する要素の一部に影響を与える選択事項について、ユーザによる操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、該操作選択を受付ける状態で待機させる、選択受付プログラム、
前記環境を形成する各要素を構築させる構築プログラム、
の各プログラムを、前記補助記憶装置に予め記憶させておき、
選択受付プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第1手順、および、
構築プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第2手順、
の各手順を、前記コンピュータに実行させる一方、
前記コンピュータに、第1手順の実行により前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、第2手順を開始させることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記環境は、
前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されている編集対象のモデルについて、ユーザが操作編集を行うことが可能な環境である、エディタ環境であり、
前記選択事項は、
編集対象とするモデルを何れとするかであり、
前記構築プログラムは、
前記環境を形成する各要素のうち、前記選択事項に影響されないものを前記操作選択の結果に関わらずに構築させる第1構築プログラムと、前記選択事項に影響されるものを前記操作選択の結果に基づいて構築させる第2構築プログラムと、からなり、
第1構築プログラムは、
少なくとも、前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示処理を実行させるものであり、
第2構築プログラムは、
少なくとも、前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示処理を実行させるものであり、
第2手順は、
第1構築プログラムを前記主記憶装置にロードして実行する第3手順と、第2構築プログラムを前記主記憶装置にロードして実行する第4手順と、からなる請求項3に記載の方法であって、
前記操作選択を受付ける状態で待機している間に、前記コンピュータに、第3手順を開始させることを特徴とする方法。
【請求項5】
ディスプレイ、補助記憶装置、および主記憶装置を備え、補助記憶装置が記憶しているプログラムを主記憶装置にロードして実行するコンピュータであって、
補助記憶装置には、
前記ディスプレイにモデル表示窓を含む編集画面が表示され、該モデル表示窓に表示されているモデルの操作編集が可能な環境である、エディタ環境を構築させるエディタ環境構築プログラムが記憶されており、
該エディタ環境構築プログラムには、
編集対象とするモデルの操作選択を受付ける選択受付画面を前記ディスプレイに表示させ、ユーザによる該操作選択を受付ける状態で待機させる、選択受付プログラム、
前記編集画面を前記ディスプレイに表示させる、編集画面表示プログラム、および、
前記操作選択されたモデルを前記モデル表示窓に表示させる、モデル表示プログラム、
の各プログラムが含まれており、
前記エディタ環境を構築するにあたり、
前記選択受付プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第1処理、
前記編集画面表示プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第2処理、および、
前記モデル表示プログラムを、前記主記憶装置にロードして実行する第3処理、
の各処理を行うものであり、
第3処理に加えておよび第2処理についても、第1処理の実行により前記操作選択を受付ける状態で待機する状態となった後に、開始することを特徴とするコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−113164(P2011−113164A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267167(P2009−267167)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】