説明

作業用足場装置

【課題】トンネル内周面の作業位置に容易に手が届き、かつ、安全に作業を行うことができる作業用足場装置を提供する。
【解決手段】レール部材8と、レール部材8に設けられた走行部9と、走行部9に設けられたバケット10とを備えた作業用足場装置1において、バケット10の外周壁13が、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部15と、固定壁部15にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部16とを備え、可動壁部16が、その下部に形成されバケット外方に屈曲されて倒されたとき足場を形成する拡張足場部19と、拡張足場部19に水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部19の上方に壁面を形成する拡張壁部20と、拡張壁部20の両側と固定壁部15の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部20と固定壁部15に回動可能に連結された可動柵部21とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内壁に接近される作業用足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大口径シールド等においては、セグメントのピース間やリング間をボルトで締結する作業や、エレクタの把持金物の取り出し作業を行うため、旋回式の作業用足場装置を装備する。
【0003】
この作業用足場装置は、トンネルの内周に沿って延びるレール部材に、レール部材に沿って走行する走行部を設け、この走行部に作業用のバケットを、走行部が走行しても水平となるようにトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に、かつ、トンネル軸方向(坑口側、切羽側)に摺動自在に設けて構成されている。
【0004】
作業用足場装置を用いてセグメントのピース間ボルトを締める場合、走行部に対してバケットを坑口側又は切羽側に摺動させて作業者の立ち位置を微調整するが、作業用足場装置の摺動ストロークが足らず、作業者の手が届かないという場合があると共に、施工条件でセグメントの桁厚が変わり、ボルト締結部や把持金物のところに作業者の手が届かなくなる場合があるという問題があった。
【0005】
この場合、作業者は、バケットから体を乗り出して作業を行わなくてはならず、安全上問題があった。
【0006】
また、特許文献1には、バケットに前方に回動するステップを設け、バケット内の作業員がステップを利用して前方のボルト締結作業を行えるようにした発明と、バケットの底板に前方にスライド可能な作業ステップを設けると共に、作業ステップに前壁を設け、前壁に左右のチェーンを連結する発明とが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−357099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のバケットに前方に回動するステップを設ける発明は、ステップが前方に突出されるだけであるため、バケット外に体を乗り出すことには変わりなく、安全上問題があるという課題があった。
【0009】
また、バケットの底板にスライド可能な作業ステップを設けると共に、作業ステップに前壁を設け、前壁に左右のチェーンを連結する発明は、作業員の体をチェーンで支えることは困難であり、実質的にバケット外に体を乗り出しているのと同じであり、安全上問題があるという課題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、トンネル内周面の作業位置に容易に手が届き、かつ、安全に作業を行うことができる作業用足場装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、トンネルの内周に沿って延びるレール部材と、該レール部材に走行自在に設けられた走行部と、該走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられると共に走行部が走行しても水平となるように設けられた作業用のバケットとを備えた作業用足場装置において、上記バケットの外周壁が、上記走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部と、該固定壁部にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部とを備え、該可動壁部が、その下部に形成されバケット外方に屈曲されて倒されたとき足場を形成する拡張足場部と、該拡張足場部に水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部の上方に壁面を形成する拡張壁部と、該拡張壁部の両側と上記固定壁部の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部と固定壁部に回動可能に連結された可動柵部とを備えたものである。
【0012】
上記可動壁部が、上記バケットのトンネル軸方向側の外周壁に形成されるとよい。
【0013】
上記可動壁部が、上記バケットのトンネル側方の外周壁に形成されるとよい。
【0014】
また、トンネルの内周に沿って延びるレール部材と、該レール部材に走行自在に設けられた走行部と、該走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられると共に走行部が走行しても水平となるように設けられた作業用のバケットとを備えた作業用足場装置において、上記バケットの外周壁が、上記走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部と、該固定壁部にバケット外方にスライド可能に設けられた可動壁部とを備え、該可動壁部が、上記固定壁部に近接離間される拡張壁部と、該拡張壁部の両側に設けられると共に上記固定壁部にスライド可能に設けられる可動柵部とを備え、上記バケットの足場部が、上記固定壁部に設けられる固定足場部と、該固定足場部に上記可動壁部のスライド方向にスライド可能に設けられると共に上記拡張壁部に連結され上記可動壁部と一体にスライドして拡張壁部と固定足場部との間に足場を形成する拡張足場部とを備えるとよい。
【0015】
上記可動壁部が、上記固定壁部にトンネル軸方向にスライド可能に設けられるとよい。
【0016】
上記可動壁部が、上記固定壁部にトンネル側方にスライド可能に設けられるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トンネル内周面の作業位置に容易に手が届き、かつ、安全に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0019】
図1はシールド掘進機に具備される作業用足場装置の側面図であり、図2は作業用足場装置を坑口側(トンネル掘進方向後側)から視た背面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、作業用足場装置1は、セグメント2を組み立てるエレクタ装置3と、エレクタ装置3で組み立てたセグメント2の形状を保持する形状保持装置4との間に配置される。作業用足場装置1は、エレクタ装置3でセグメント2を組み立てるときセグメント組立位置の近傍に足場を形成する。作業用足場装置1は、シールド掘進機本体5内から掘進方向後方に延びる後方デッキ6上に走行自在に設けられた台車部7と、台車部7に設けられトンネルの内周に沿って延びるレール部材8と、レール部材8に走行自在に設けられた走行部9と、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられると共に走行部9が走行しても水平となるように設けられた作業用のバケット10とを備えて構成されている。
【0021】
レール部材8は、トンネルの下部一側からトンネル上部を経てトンネルの下部他側に延びるように円弧状に形成されており、外周に走行部9に噛合されるラックギヤ(図示せず)を有する。
【0022】
走行部9は、レール部材8の両側にそれぞれ独立して走行可能に設けられている。走行部9は、ラックギヤに噛合されるピニオンギヤ11と、ピニオンギヤ11を回転駆動する駆動装置(図示せず)と、バケット10を支持すべくトンネル軸方向前方に延びる回転軸12と、バケット10を水平に維持するように走行部9の走行に応じて回転軸12を回転させるべくピニオンギヤ11と回転軸12の間に介設されピニオンギヤ11の回転を反転すると共に減速して回転軸12に伝達する減速機(図示せず)とを備える。
【0023】
バケット10は、それぞれの走行部9に設けられている。バケット10は、バケット10の外周を区画する外周壁13と、外周壁13の下部に設けられ作業員が搭乗するための足場部14とを備える。外周壁13は、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部15と、固定壁部15にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部16とを備える。
【0024】
固定壁部15は、平面視コ字状に形成されバケット10の左右側壁と後壁を構成する。図4に示すように、固定壁部15は、下部を板状に形成されると共に、上部を柵状に形成されており、安全性を確保しつつ良好な視界を得られるようになっている。図1及び図2に示すように、後壁を構成する固定壁部15には、回転軸12の先端部が設けられており、固定壁部15と回転軸12が一体に回転するようになっている。また、トンネルの中心側の側壁を構成する固定壁部15には、作業員がバケット10に乗降するための開閉自在な扉(図示せず)が設けられている。
【0025】
可動壁部16は、左右に延びるように形成されバケット10の前壁を構成する。図3(a)、図3(b)及び図4に示すように、可動壁部16は、両側を固定壁部15に固定されると共に下端を足場部14に固定された固定下部17と、固定下部17の上端に蝶番18を介して回動可能に連結され起立したとき壁面を形成すると共にバケット外方に屈曲されて倒れたとき足場を形成する拡張足場部19と、拡張足場部19に水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部19の上方に壁面を形成する拡張壁部20と、拡張壁部20の両側と固定壁部15の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部20と固定壁部15に回動可能に連結された可動柵部21とを備える。
【0026】
拡張足場部19は、板状に形成され、固定下部17の上方、かつ、可動壁部16の下部に形成されている。拡張足場部19は、固定下部17より上方に位置されることで倒れたとき足場部14より一段高い位置に足場を形成するようになっている。また、固定下部17には、拡張足場部19がバケット外方に倒れて水平となったとき拡張足場部19の底面に当接して拡張足場部19を水平に保持するストッパ部22が形成されている。
【0027】
拡張壁部20は、下端を拡張足場部19の回動端に水平軸回り回動自在に連結されている。拡張壁部20の下部は板状に形成され、拡張壁部20の上部は柵状に形成されている。また、拡張壁部20の下部と固定壁部15には、拡張足場部19を起立させて収納したとき拡張壁部20をロックするための壁ロック機構23が設けられている。壁ロック機構23は、拡張足場部19に後方に延びて設けられた第一フランジ24と、拡張壁部20の両側の固定壁部15にバケット内方に延びて設けられた第二フランジ25と、これらフランジ24、25に貫通されるピン26とからなる。また、拡張壁部20の上端には、前方に延びる作業棚27が収納可能に設けられている。作業棚27は、拡張壁部20の上端に水平軸回り回動自在に設けられ前方に回動されたとき棚を形成すると共に下方に回動されたとき拡張壁部20に重なって収容される棚板28と、棚板28を前方に延ばしたとき棚板28を支持する支持ロッド29とを備える。支持ロッド29は、伸縮可能な二重管30、31と、棚板28を前方に延ばしたとき二重管30、31に径方向に貫通されて二重管30、31の伸縮をロックするピン(図示せず)とからなる。二重管30、31の内管30と外管31には、棚板28を前方に延ばしたときに重なる孔(図示せず)と、棚板28を収納したとき重なる孔(図示せず)とが形成されている。また、作業棚27と拡張壁部20には、作業棚27を収納したとき作業棚27をロックする棚ロック機構32が設けられている。棚ロック機構32は、棚板28の先端部に後方に延びて設けられた第三フランジ33と、拡張壁部20の柵状の上部と板状の下部との間に設けられた第四フランジ34と、これらフランジ33、34に貫通されるピン35とからなる。
【0028】
可動柵部21は、ロッド状に形成され、一端を固定壁部15に水平軸回り回動自在に連結されると共に、他端側を拡張壁部20の側部に水平軸回り回動自在に、かつ長手方向スライド可能に連結されている。また、可動柵部21は、拡張足場部19が前方に倒れたとき拡張壁部20の前方への回動を規制して拡張壁部20を鉛直に支持するようになっている。
【0029】
足場部14は、平面視矩形状に形成されており、外周壁13の下部を塞ぐように外周壁13に設けられている。
【0030】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0031】
作業用足場装置1を用いてセグメント2のボルト締め作業を行う場合、図2に示すように、後方デッキ6の下部両側に設けられた連絡足場36からバケット10に乗り込み、台車部7を前方に走行させてトンネル軸方向の位置を調節すると共に走行部9をレール部材8に沿って走行させてトンネル周方向の位置を調節し、所定の作業位置に接近する。この後、バケット10上から手を伸ばしてボルト締め作業を行う。
【0032】
作業用足場装置1の台車部7やレール部材8等が他の機器等と干渉するなどしてバケット10を作業位置に十分接近させられない場合、図3(a)、図3(b)に示すように、壁ロック機構23による拡張壁部20のロックを解除し、拡張壁部20を前方に押す。これにより、拡張足場部19が前方に倒れてバケット10の前方に拡張足場部19による足場が増設されると共に、拡張壁部20が起立した姿勢のまま前方に移動され、さらに、可動柵部21が拡張壁部20に追従して前方に回動して固定壁部15と拡張壁部20の間に柵が形成され、バケット10自体が前方に拡張される。拡張足場部19上に乗ることで容易に作業位置に手を伸ばすことができる。またさらに、拡張足場部19は足場部14より一段高い位置に形成されるため、前方への拡張長さ以上に作業位置に手を接近させることができ、容易に作業を行うことができる。
【0033】
また、作業位置の近傍に工具や資材等を配置したい場合、棚ロック機構32による作業棚27のロックを解除し、棚板28の下部を前方に押す。棚板28は、上端を中心として前方に回動される。棚板28が水平な姿勢になったら支持ロッド29の内管30と外管31の孔にピンを貫通させて支持ロッド29の伸縮をロックする。これにより、拡張壁部20の上端から前方に延びる棚が形成され、作業位置の近傍に工具や資材等を配置することができる。
【0034】
1ピース分のセグメント2のボルト締め作業が終了したら、拡張したバケット10を元に戻す。具体的には、拡張壁部20を持ち上げつつ後方に引く。これにより、拡張足場部19の前側が上方に回動されて起立されると共に、拡張壁部20が起立した姿勢のまま後方に移動され、かつ、可動柵部21が回動されて固定壁部15と拡張壁部20の間の空間に収納される。この後、壁ロック機構23で拡張壁部20をロックして拡張壁部20の移動を規制する。
【0035】
この後、台車部7をセグメント1リング分後退させ、次セグメント2をエレクタ装置3にて組み立てて、前述と同様にセグメント2のボルト締め作業を開始する。台車部7を前進させるとき、拡張壁部20、拡張足場部19及び可動柵部21はそれぞれ収納されているため、エレクタ装置3にバケット10を十分接近させることができる。
【0036】
このように、バケット10の外周壁13が、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部15と、固定壁部15にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部16とを備え、可動壁部16が、その下部に形成されバケット外方に屈曲されて倒されたとき足場を形成する拡張足場部19と、拡張足場部19に水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部19の上方に壁面を形成する拡張壁部20と、拡張壁部20の両側と固定壁部15の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部20と固定壁部15に回動可能に連結された可動柵部21とを備えるため、バケット10自体を前方に拡張することができ、作業用足場装置1全体と他の機器との取り合いは変えることなく、セグメント組立作業時、作業者が作業し易い距離まで作業位置に近づくことができる。そして、作業者がバケット10から体を乗り出さなくとも作業ができ、安全に作業が行える。
【0037】
また、可動壁部16が、バケット10のトンネル軸方向側の外周壁13に形成されるものとしたため、作業位置とバケット10の位置がトンネル軸方向に離間され、作業員の手が作業位置に届かない場合、可動壁部16を前方に拡張させることで容易かつ安全に作業ができる。
【0038】
なお、拡張足場部19は、固定下部17に蝶番18を介して回動可能に連結されるものとしたが、これに限るものではない。拡張足場部19は、固定下部17に左右に延びる水平軸回り回動可能に連結されていればよい。
【0039】
バケット10に変更を加えた第二の実施の形態について述べる。バケット10以外の構成については上述と同様であるため、説明を省略する。また、上述と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図5は第二の実施の形態を示すバケットの背面図であり、図6はこのバケットの平面図であり、図7は図5に示すバケットの側面図である。
【0041】
セグメント2の桁厚がトンネルの途中で薄くなる等により作業位置に作業者の手か届かなくなる場合、上述のバケット10では作業員が作業位置に近づくことはできない。このような場合、図5、図6及び図7に示すように、バケット40のトンネル側方の外周壁41に上述と同様の可動壁部42を形成するとよい。かかるバケット40について以下に詳述する。
【0042】
バケット40は、バケット40の外周を区画する外周壁41と、外周壁41の下部に設けられ作業員が搭乗するための足場部14とを備える。外周壁41は、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部43と、固定壁部43にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部42とを備える。
【0043】
固定壁部43は、平面視コ字状に形成されバケット40の前壁と、後壁と、トンネル中心側の側壁とを構成する。固定壁部43は、下部を板状に形成されると共に、上部を柵状に形成されており、安全性を確保しつつ良好な視界を得られるようになっている。後壁を構成する固定壁部43には、回転軸12の先端部が設けられており、固定壁部43と回転軸12が一体に回転するようになっている。また、トンネル中心側の側壁を構成する固定壁部43には、作業員がバケット40に乗降するための開閉自在な扉44が設けられている。
【0044】
可動壁部42は、前後に延びるように形成されバケット40のトンネル外周側の側壁を構成する。可動壁部42は、両側を固定壁部43に固定されると共に下端を足場部14に固定された固定下部17と、固定下部17の上端に蝶番18を介して回動可能に連結され起立したとき壁面を形成すると共にバケット40外方に屈曲されて倒れたとき足場を形成する拡張足場部19と、拡張足場部19に前後に延びる水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部19の上方に壁面を形成する拡張壁部20と、拡張壁部20の両側と固定壁部43の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部20と固定壁部43に回動可能に連結された可動柵部21とを備える。
【0045】
次に第二の実施の形態の作用を述べる。
【0046】
セグメント2の桁厚がトンネルの途中で薄くなり、作業位置に作業者の手か届かなくなった場合、壁ロック機構23による拡張壁部20のロックを解除し、バケット40内から拡張壁部20を押す。これにより、拡張足場部19がトンネル外周側の側方に倒れて拡張足場部19による足場が形成されると共に、拡張壁部20が起立した姿勢のままトンネル外周側に移動され、さらに、可動柵部21が拡張壁部20に追従してトンネル外周側に回動して固定壁部43と拡張壁部20の間に柵が形成され、バケット40自体がトンネル外周側の側方に拡張される。拡張足場部19上に乗ることで容易に作業位置に手を伸ばすことができる。またさらに、拡張足場部19は足場部14より一段高い位置に形成されるため、トンネル側方への拡張長さ以上に作業位置に手を接近させることができ、容易に作業を行うことができる。
【0047】
このように、可動壁部42が、バケット40のトンネル側方の外周壁41に形成されるものにすると、バケット40自体をトンネル側方に拡張することができ、セグメント2の桁厚がトンネルの途中で薄くなる等により作業位置に作業者の手か届かなくなった場合でも、作業用足場装置全体と他の機器との取り合いは変えることなく、作業者が作業し易い距離まで作業位置に近づくことができる。そして、作業者がバケット40から体を乗り出さなくとも作業ができ、安全に作業が行える。
【0048】
なお、第一の実施の形態と第二の実施の形態では、可動壁部42が外周壁41の前方又は側方のいずれか一方に形成されるものとしたが、外周壁41の前方と側方の両方に可動壁部42が形成されるものとしてもよい。
【0049】
また、レール部材8に沿って走行するバケット40が1つである場合、バケット40の両側の外周壁41に可動壁部42が形成されるとよい。
【0050】
第一の実施の形態に係るバケット10に変更を加えた第三の実施の形態について述べる。バケット10以外の構成については第一の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。また、第一の実施の形態と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図8は第三の実施の形態を示すバケットの側面図であり、図9はこのバケットの背面図であり、図10は図8に示すバケットの底面図である。
【0052】
図8、図9及び図10に示すように、バケット50は、バケット50の外周を区画する外周壁51と、外周壁51の下部に設けられ作業員が搭乗するための足場部52とを備える。外周壁51は、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部53と、固定壁部53にバケット外方にスライド可能に設けられた可動壁部54とを備える。
【0053】
固定壁部53は、平面視コ字状に形成されバケット50の左右側壁と後壁を構成する。
【0054】
可動壁部54は、前壁を構成し固定壁部53に近接離間される拡張壁部55と、拡張壁部55の両側に設けられると共に固定壁部53に前後スライド可能に設けられる可動柵部56とを備える。拡張壁部55の下部は板状に形成され、拡張壁部55の上部は柵状に形成されている。可動柵部56は、前後に延びるロッド状に形成され、前端を拡張壁部55に取り付けられると共に、固定壁部53にスライド可能に支持されている。
【0055】
足場部52は、固定壁部53に一体に設けられる固定足場部57と、固定足場部57の下側に可動壁部54と同方向にスライド可能に設けられた拡張足場部58とを備える。拡張足場部58は、前端を拡張壁部55に連結されており、可動壁部54と一体にスライドするようになっている。拡張足場部58は、可動壁部54と一体にスライドしたとき拡張壁部55と固定足場部57との間に足場を形成する。
【0056】
次に第三の実施の形態の作用を述べる。
【0057】
作業用足場装置の台車部7やレール部材8等が他の機器等と干渉するなどしてバケット50を作業位置に十分接近させられない場合、拡張壁部55を前方に押す。これにより、拡張壁部55と拡張足場部58と可動柵部56が前方へスライドし、固定足場部57の前方に拡張足場部58による足場が形成され、固定壁部53と拡張壁部55の間で可動柵部56が延び、バケット50自体が前方に拡張される。拡張足場部58上に乗ることで容易に作業位置に手を伸ばすことができる。
【0058】
1ピース分のセグメント2のボルト締め作業が終了したら、拡張したバケット50を元に戻す。具体的には、拡張壁部55を後方に引く。これにより、拡張壁部55と拡張足場部58と可動柵部56が後方にスライドし、バケット50が、縮小される。
【0059】
この後、台車部7をセグメント1リング分後退させ、次セグメント2をエレクタ装置3にて組み立てて、前述と同様に次のセグメント2のボルト締め作業を開始する。台車部7を前進させるとき、拡張壁部55、拡張足場部58及び可動柵部56はそれぞれ収納されているため、エレクタ装置3にバケット50を十分接近させることができる。
【0060】
このように、バケット50の外周壁51が、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部53と、固定壁部53にバケット外方にスライド可能に設けられた可動壁部54とを備え、可動壁部54が、固定壁部53に近接離間される拡張壁部55と、拡張壁部55の両側に設けられると共に固定壁部53にスライド可能に設けられる可動柵部56とを備え、バケット50の足場部52が、固定壁部53に設けられる固定足場部57と、固定足場部57に可動壁部54のスライド方向にスライド可能に設けられると共に拡張壁部55に連結され可動壁部54と一体にスライドして拡張壁部55と固定足場部57との間に足場を形成する拡張足場部58とを備えるものとしたため、バケット50自体を前方に拡張することができ、作業用足場装置全体と他の機器との取り合いは変えることなく、セグメント組立作業時、作業者が作業し易い距離まで作業位置に近づくことができる。そして、作業者がバケット50から体を乗り出さなくとも作業ができ、安全に作業が行える。
【0061】
また、可動壁部54が、固定壁部53にトンネル軸方向にスライド可能に設けられるものとしたため、作業位置とバケット50の位置がトンネル軸方向に離間され、作業員の手が作業位置に届かない場合、可動壁部54を前方にスライドさせることで容易かつ安全に作業ができる。
【0062】
第三の実施の形態に係るバケットに変更を加えた第四の実施の形態について述べる。バケット以外の構成については上述と同様であるため、説明を省略する。また、上述と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図11は第四の実施の形態を示すバケットの背面図であり、図12はこのバケットの平面図であり、図13は図11に示すバケットの底面図である。
【0064】
トンネル側方の作業位置に作業者の手か届かなくなる場合、図11、図12及び図13に示すように、バケット60のトンネル側方の外周壁にトンネル側方にスライド可能な可動壁部61を形成するとよい。
【0065】
具体的には、バケット60は、バケット60の外周を区画する外周壁62と、外周壁62の下部に設けられた足場部63とを備える。外周壁62は、走行部9にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部64と、固定壁部64にバケット外方にスライド可能に設けられた可動壁部61とを備える。
【0066】
固定壁部64は、平面視コ字状に形成されバケット60の前壁と後壁とトンネル中心側の側壁とを構成する。
【0067】
可動壁部61は、トンネル外周側の側壁を構成し固定壁部64に近接離間される拡張壁部55と、拡張壁部55の前後両端部に設けられると共に固定壁部64に左右方向にスライド可能に設けられる可動柵部56とを備える。拡張壁部55の下部は板状に形成され、拡張壁部55の上部は柵状に形成されている。可動柵部56は、左右に延びるロッド状に形成され、トンネル外周側の端部を拡張壁部55に取り付けられると共に、固定壁部64にスライド可能に支持されている。
【0068】
足場部63は、固定壁部64に一体に設けられる固定足場部57と、固定足場部57の下側に可動壁部61と同方向にスライド可能に設けられた拡張足場部58とを備える。拡張足場部58は、トンネル外周側の端部を拡張壁部55に連結されており、可動壁部61と一体にスライドするようになっている。拡張足場部58は、可動壁部61と一体にスライドしたとき拡張壁部55と固定足場部57との間に足場を形成する。
【0069】
次に第四の実施の形態の作用を述べる。
【0070】
バケット60をトンネル側方の作業位置に十分接近させられない場合、拡張壁部55をトンネル外周側の側方に押す。これにより、拡張壁部55と拡張足場部58と可動柵部56がトンネル外周側の側方にスライドし、固定足場部57のトンネル外周側の側方に拡張足場部58による足場が形成され、固定壁部64と拡張壁部55の間で可動柵部56が延び、バケット60自体がトンネル外周側に拡張される。拡張足場部58上に乗ることで容易に作業位置に手を伸ばすことができる。
【0071】
このように、可動壁部61が、固定壁部64にトンネル側方にスライド可能に設けられるものにすると、バケット60自体をトンネル側方に拡張することができ、セグメント2の桁厚がトンネルの途中で薄くなる等により作業位置に作業者の手か届かなくなった場合でも、作業用足場装置全体と他の機器との取り合いは変えることなく、作業者が作業し易い距離まで作業位置に近づくことができる。そして、作業者がバケット60から体を乗り出さなくとも作業ができ、安全に作業が行える。
【0072】
なお、バケット10、40、50、60はレール部材8の前方(切羽側)に位置されるものとしたが、作業用足場装置が、セグメント2の内面に加工を施すためのものである場合、レール部材8の後方に位置されていてもよい。この場合、可動壁部16、42、54、61は外周壁13、41、51、62の後側に形成されるものとしてもよい。
【0073】
また、走行部9の走行に応じて回転軸12を回転させ、バケット10、40、50、60を水平に維持するものとしたが、バケット10、40、50、60の下部にウェイト(図示せず)を設け、ウェイトの重さでバケット10、40、50、60を水平に維持するものとしてもよく、他の機構で水平に維持するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す作業用足場装置の側面図である。
【図2】作業用足場装置の背面図である。
【図3】(a)は図1の拡張足場部が展開されたバケットの要部拡大図であり、(b)は拡張足場部が格納されたバケットの要部拡大図である。
【図4】図3(b)のA−A線矢視図である。
【図5】他の実施の形態を示すバケットの背面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図5のB−B線矢視図である。
【図8】他の実施の形態を示すバケットの側面図である。
【図9】図8の背面図である。
【図10】図8の底面図である。
【図11】他の実施の形態を示すバケットの背面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】図11のC−C線矢視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 作業用足場装置
8 レール部材
9 走行部
10 バケット
13 外周壁
15 固定壁部
16 可動壁部
19 拡張足場部
20 拡張壁部
21 可動柵部
50 バケット
51 外周壁
52 足場部
53 固定壁部
54 可動壁部
55 拡張壁部
56 可動柵部
57 固定足場部
58 拡張足場部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周に沿って延びるレール部材と、該レール部材に走行自在に設けられた走行部と、該走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられると共に走行部が走行しても水平となるように設けられた作業用のバケットとを備えた作業用足場装置において、上記バケットの外周壁が、上記走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部と、該固定壁部にバケット外方に屈曲可能に設けられた可動壁部とを備え、該可動壁部が、その下部に形成されバケット外方に屈曲されて倒されたとき足場を形成する拡張足場部と、該拡張足場部に水平軸回り回動自在に連結され拡張足場部の上方に壁面を形成する拡張壁部と、該拡張壁部の両側と上記固定壁部の間にそれぞれ掛け渡されると共に拡張壁部と固定壁部に回動可能に連結された可動柵部とを備えたことを特徴とする作業用足場装置。
【請求項2】
上記可動壁部が、上記バケットのトンネル軸方向側の外周壁に形成された請求項1記載の作業用足場装置。
【請求項3】
上記可動壁部が、上記バケットのトンネル側方の外周壁に形成された請求項1記載の作業用足場装置。
【請求項4】
トンネルの内周に沿って延びるレール部材と、該レール部材に走行自在に設けられた走行部と、該走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられると共に走行部が走行しても水平となるように設けられた作業用のバケットとを備えた作業用足場装置において、上記バケットの外周壁が、上記走行部にトンネル軸と平行な軸回りに回動自在に設けられた固定壁部と、該固定壁部にバケット外方にスライド可能に設けられた可動壁部とを備え、該可動壁部が、上記固定壁部に近接離間される拡張壁部と、該拡張壁部の両側に設けられると共に上記固定壁部にスライド可能に設けられる可動柵部とを備え、上記バケットの足場部が、上記固定壁部に設けられる固定足場部と、該固定足場部に上記可動壁部のスライド方向にスライド可能に設けられると共に上記拡張壁部に連結され上記可動壁部と一体にスライドして拡張壁部と固定足場部との間に足場を形成する拡張足場部とを備えたことを特徴とする作業用足場装置。
【請求項5】
上記可動壁部が、上記固定壁部にトンネル軸方向にスライド可能に設けられた請求項4記載の作業用足場装置。
【請求項6】
上記可動壁部が、上記固定壁部にトンネル側方にスライド可能に設けられた請求項4記載の作業用足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−65416(P2010−65416A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231186(P2008−231186)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】