説明

作業用車両

【課題】 車体に設けられた作業装置を作動させ、車体と作業装置との合成された重心位置が平面視において転車台の接地位置と重なるように調整することができる作業用車両を提供する。
【解決手段】 前後輪3a,3bを有して走行可能な車体2と、この車体2に配設され、車体2に対する姿勢が変化するように作動する高所作業装置8と、車体2に設けられ下方に張り出されて車体2を持ち上げる転車台12とを有し、車体2と高所作業装置8との合成された重心位置が平面視において転車台12の接地位置12aと重なるように高所作業装置8を作動させた後に、転車台12により車体2を持ち上げる軌陸作業車1において、目視マーキング13に合わせて高所作業装置8を作動させることにより、合成された重心位置が平面視において接地位置12aと重なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌陸作業車のように車体略中央部に転車台を有し、また、車体上に作業装置を有する作業用車両であって、作業装置を作動させることにより、平面視において車体と作業装置との合成された重心位置が転車台の接地位置と重なるように調整をすることができる作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸作業車は、トラック車両をベースに車体上に作業装置が設けられた作業用車両に、鉄道の軌道を走行可能な鉄輪が設けられたものである。この軌陸作業車が軌道に進入可能な場所は限られており、例えば、踏切部分が進入に用いられる。そのため、車体の下部の略中央部には車体を持ち上げて旋回させる転車台が設けられており、この転車台により軌道に沿って車両を向け、鉄輪を降ろして軌道に進入するように構成されている。
【0003】
このように、転車台は車両を軌道に進入させるために、若しくは、軌道から一般道に脱出させるために車体を地上から持ち上げるように構成されているため、車体の重心位置が平面視においてこの転車台の接地位置と重なっていないとバランスを崩し、全ての車輪が地上から持ち上げられず、旋回させることができない場合がある。そのため、シリンダを用いて転車台と車体とのなす角度を調整する傾斜機能によりバランスを取るように構成された軌陸作業車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−59149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、転車台に傾斜機能を持たせると転車台の構造が複雑になり、また、転車台は軌陸作業車全体の重量を一箇所で支持するため傾斜機能が大型化するので、全体の重量や製造コストが増加するという課題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、車体に設けられた作業装置を作動させ、車体と作業装置との合成された重心位置が平面視において転車台の接地位置と重なるように調整することができる作業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る作業用車両(例えば、実施形態における軌陸作業車1)は、車輪(例えば、実施形態における前後輪3a,3b)を有し走行可能な車体と、この車体上に配設され、車体に対する姿勢が変化するように作動する作業装置(例えば、実施形態に係る高所作業装置8)と、車体に設けられ下方に張り出されて車体を持ち上げる転車台とを有するものであり、車体と作業装置との合成された重心位置が平面視において転車台の接地位置と重なるようにするために、作業装置の姿勢を指示する転車姿勢指示手段を備えて構成される。
【0008】
このとき、転車姿勢指示手段が、車体上に設けられ、作業装置の姿勢が、合成された重心位置が平面視において接地位置と重なる姿勢にあることを示す目視用マーキングで構成されることが好ましい。
【0009】
あるいは、第2の本発明に係る作業用車両は、車輪を有し走行可能な車体と、車体上に配設され、車体に対する姿勢が変化するように作動する作業装置と、車体に設けられ下方に張り出されて車体を持ち上げる転車台と、作業装置の姿勢を検出する姿勢検出手段(例えば、実施形態におけるブーム姿勢検出器22)と、車体と作業装置との合成された重心位置が平面視において転車台の接地位置と重なる姿勢に作業装置を移行させる操作を行う転車姿勢移行操作手段(例えば、実施形態における下部操作装置21、または、転車姿勢移行スイッチ26)と、転車姿勢移行操作手段が操作されたときに、姿勢検出手段により検出される姿勢が、合成された重心位置が平面視において接地位置と重なる姿勢と一致するように作業装置を作動させる制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ30)とを有して構成される。
【0010】
なお、姿勢検出手段により検出された姿勢情報が、合成された重心位置が平面視において接地位置と重ならない範囲にあるときに、転車台の作動を規制する転車台規制手段(例えば、実施形態における転車台張出量制御部33)を有することが好ましい。
【0011】
また、転車台の張出量を検出する転車台張出量検出手段(例えば、実施形態における転車台張出量検出器23)と、転車台張出量検出手段により検出された張出量が所定の張出量以上で、かつ、転車台が接地される張出量より小さい範囲にあるときに、作業装置の作動を許容する作業装置許容手段(例えば、実施形態における所定範囲ブーム作動許可部32及び転車台張出量制御部33)とを有して構成されることが好ましい。
【0012】
このような第1及び第2の本発明に係る作業用車両は、作業装置が、先端に作業台が取り付けられ、車体に対して少なくとも旋回作動、伸縮作動、および、起伏作動のいずれかが可能に構成されたブームを有して構成され、ブームを旋回作動、伸縮作動、若しくは、起伏作動させて合成された重心位置が平面視において接地位置と重なるように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業用車両を以上のように構成すると、転車台を張り出すときに、この作業用車両が有する作業装置を作動させることにより、車体と作業装置との合成された重心位置を転車台の接地位置と重なるように調整することができるため、特別な部材をほとんど必要とせず、重量を増加させることがなく、また、簡単な機構で実現することができる。
【0014】
このとき、作業装置が転車姿勢(車体と作業装置との合成された重心位置が平面視において転車台の接地位置と重なるときの姿勢)にあることを示す目視マーキングを設けることにより、作業者は、作業装置を作動させて目視マーキングと一致するように操作することで簡単に重心位置の調整を行うことができる。あるいは、姿勢検出手段とコントローラにより作業装置を転車姿勢にして重心位置の調整を行うように構成すると、更に、操作を容易にすることができる。
【0015】
なお、作業装置が転車姿勢に無いときに、転車台の張出量が所定の値以上にならないようにその作動を規制することにより、重心位置の調整がされていない状態で車体が転車台により持ち上げられることを防止することができる。
【0016】
また、転車台の張出量を検出して、転車台の張出量が所定の範囲内にあるときに作業装置を作動可能とすることにより、転車作業をしないときに作業装置が作動されることを防止することができる。
【0017】
このような作業用車両の重心位置を調整する手段としては、ブームを有する作業用車両の場合、このブームを旋回作動、伸縮作動、若しくは、起伏作動を行うことにより、合成された重心位置の調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係るバランス調整装置を説明する前に、図1を用いてこのバランス調整装置が設けられる作業用車両として、道路だけでなく、鉄道の軌道を走行可能な軌陸作業車について説明する。
【0019】
軌陸作業車1は、車体2の前方に運転キャビン2aを有し、前後輪3a,3bで道路走行可能なトラック車両をベースに構成される。車体2の略中央部には旋回モータ51により駆動されて旋回動可能に構成された旋回台4が取り付けられている。そして、この旋回台4の上部に基部が枢結されて起伏シリンダ52の伸縮作動により垂直面内に起伏動可能にブーム5が取り付けられている。
【0020】
ブーム5は、基端ブーム5a、中間ブーム5b、及び、先端ブーム5cを入れ子式に組み合わせて、内蔵の伸縮シリンダ53により伸縮動可能に構成されている。なお、ここでは、ブーム5を三段伸縮ブーム構成としているが、二段若しくは四段以上のブームで構成される多段ブーム構成としても良い。
【0021】
先端ブーム5cの先端部には、ブーム5の起伏作動面と同一面内に揺動可能に作業台支持ブラケット6が枢結されている。そして、この作業台支持ブラケット6の上部に作業台7の下部が旋回可能(首振り可能)に支持されている。作業台支持ブラケット6は、内蔵のレベリングシリンダ54によって、ブーム5の起伏角度に拘わらず、作業台7の床面が常に地上に対して水平を保持するように揺動される。また、作業台7は、内蔵の首振りモータ55により旋回動される。なお、以降の説明において、旋回台4、ブーム5、作業台支持ブラケット6,及び、作業台7をまとめて高所作業装置8と呼ぶこととする。
【0022】
これらの高所作業装置8の操作は、作業台7に設けられ、この作業台7に搭乗した作業者が旋回台4の旋回、ブーム5の伸縮・起伏、及び、作業台7の首振り操作を行う上部操作装置13により行われる。また、地上から同様の操作が行えるように、車体2には下部操作装置が設けられている(図1においては図示せず)。
【0023】
車体2の前後左右の4箇所に、上下方向に伸縮自在なアウトリガジャッキ9が設けられている。高所作業装置8により高所作業を行うときには、アウトリガジャッキ9を下方に張り出させて車体2を持ち上げ支持する。なお、このアウトリガジャッキ9の操作は、車体2に設けられたジャッキ操作装置(図示せず)により行なわれる。
【0024】
また、車体2の前後左右の4箇所に、軌道を走行可能な鉄輪11a,11bを有する軌道走行装置10a,10bが設けられており、この軌道走行装置10a,10bは車体2に対して上下に揺動可能に取り付けられている。そのため、軌陸作業車1が道路を走行するときは軌道走行装置10a,10bを上方に揺動して車体2に格納し、鉄道の軌道上を走行するときは、下方に揺動して張り出すように構成されている。
【0025】
さらに、車体2の略中央部には、上下方向に伸縮自在であるとともに、車体2と相対回転可能な転車台12が設けられている。軌陸作業車1を軌道に進入させるとき、軌道から脱出させるとき、若しくは、軌道上で進行方向を変更するときは、この転車台12を下方に張り出して車体を持ち上げ支持した後、転車台12に対して車体2を旋回させることにより、軌陸作業車1の向きを変えることができるとともに、軌道走行装置10a,10bの張り出し及び格納操作を行うことができる。なお、転車台12の張り出し・格納操作は、車体2に設けられた転車台操作装置から操作される(図1においては図示せず)。
【0026】
以上のように構成された軌陸作業車1において、旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、レベリングシリンダ54、及び、首振りモータ55(以下、まとめて「ブームアクチュエータ50」と呼ぶ)には、作動油圧で駆動される油圧モータや油圧シリンダが用いられている。また、転車台12の伸縮は油圧シリンダ等が用いられた転車台アクチュエータ60により行われる(図1においては図示せず)。
【0027】
次に、このような作業用車両(軌陸作業車1)に設けられるバランス調整装置について、図2及び図3を用いて説明する。本実施例に係るバランス調整装置20は、高所作業装置8を作動させることにより、軌陸作業車1の全体の重心位置(車体2と高所作業装置8との合成された重心位置)が平面視において転車台12の接地位置と重なるように調整するものである。例えば、図1及び図2(a)に示すように、高所作業装置8が車体2上において格納された姿勢(この高所作業装置8の位置を「格納位置8a」と呼ぶ)にあるときには合成された重心位置Gが転車台12よりも車体2の前方に位置するように構成された軌陸作業車1において、図2(b)に示すように、ブーム5を伸長させた姿勢(この高所作業装置8の位置を「転車位置8b」と呼ぶ)にして、重心位置G′に移動させて転車台12の接地位置(車体2を持ち上げるときに、転車台12が地面に接地する範囲)12aと重なるように調整する。
【0028】
バランス調整装置20は、高所作業装置8を操作する下部操作装置21、高所作業装置8が転車位置8bにあることを検出するブーム姿勢検出器22、転車台12の張出量を検出する転車台張出量検出器23、転車台12の張り出し・格納を操作する転車台操作装置24、並びに、これらの操作装置21,24および検出器22,23からの信号を受けて高所作業装置8および転車台12の制御を行うコントローラ30から構成される。ここで、軌陸作業車1には、ブームアクチュエータ50および転車台アクチュエータ60の作動を行うために作動油を供給・制御する油圧装置40が設けられており、コントローラ30はこの油圧装置40に制御信号を出力してブームアクチュエータ50及び転車台アクチュエータ60の作動を制御するように構成されている。なお、図3においては、電気的な信号の流れを実線で示し、作動油の流れを破線で示している。
【0029】
油圧装置40は、作動油を供給する油圧ポンプ41、作動油を溜めるタンク42、油圧ポンプ41から吐出された作動油のブームアクチュエータ50への供給を制御するブーム制御バルブ43、および、同じく転車台アクチュエータ60への供給を制御する転車台制御バルブ44から構成される。また、コントローラ30は、所定の条件の時だけブーム5の作動を可能とするブームインターロック部31、ブーム5が所定の範囲に位置していること、すなわち、転車位置8bにあるか否かを判断する所定範囲ブーム作動許可部32、転車台12の張出量を監視する転車台張出量制御部33、及び、所定の条件で転車台12の作動を規制する転車台張出インターロック部34から構成される。
【0030】
それでは、転車台12を張り出す時に高所作業装置8を作動させて合成された重心位置を調整するバランス調整装置20の動作について図4を合わせて用いて説明する。なお、ここでは、図1に示すように、旋回台4が車体略中央部に位置し、高所作業装置8が格納位置8aにあるときに作業台7が車体2の後部に位置する軌陸作業車1の場合において、ブーム5を伸長作動させて車体2と高所作業装置8との合成された重心位置を調整するように構成された場合について説明する。
【0031】
転車台12を張り出すときは、図4(a)に示すように、転車台12を所定の位置まで張り出すステップ(S100)と、ブーム5を操作して重心位置を調整するステップ(S110)と、転車台12で車体2を押し上げるステップ(S120)とから構成される。
【0032】
まず、転車台12を所定の位置まで張り出すステップS100では、図4(b)に示すように、作業者は、転車台操作装置24を操作して(ステップS101)、転車台12を下方に張り出す(ステップS102)。なお、転車台操作装置24から出力された操作信号は、コントローラ30の転車台張出インターロック部34を介して転車台制御バルブ44に制御信号として出力されるように構成されている。
【0033】
このとき、コントローラ30の転車台張出量制御部33は、転車台張出量検出器23の検出値を監視しており、転車台12が所定の張出量に達すると(例えば、転車台12が接地しない範囲であって、全伸の時のストローク量に対して4分の3ストロークだけ張り出されると(ステップS103))、転車台張出量制御部33は、転車台張出インターロック部34に規制信号を出力する。この規制信号の出力を受信した転車台張出インターロック部34は、転車台操作装置24からの操作信号の出力に拘わらず、転車台制御バルブ44への制御信号の出力を停止する(ステップS104)。すなわち、転車台12の張出量が所定の値になると、転車台12の張出作動は停止する。これにより、ブーム5が転車位置8bにない状態で転車台12が車体2を持ち上げることを防止することができる。
【0034】
転車台12の張り出し作動が停止すると、作業者は、図4(c)に示すように、次にブーム5を伸長作動させてバランスを調整するステップS110を実行する。ところで、コントローラ30は、下部操作装置21からの操作信号を制御信号に変換してブーム制御バルブ43に出力するように構成されているが、軌陸作業車1においてアウトリガジャッキ9が張り出された作業姿勢に無いときに、高所作業装置8が作動すると車体2が不安定になる虞がある。このため、ブームインターロック部31は、アウトリガジャッキ9の張出し状態を検出する検出器(図示せず)からの信号を監視して作業姿勢に無いとき(例えば、アウトリガジャッキ9により車体2が持ち上げ支持されていいないとき)は下部操作装置21を操作してもブーム制御バルブ43に制御信号を出力しないように構成されている(このブームインターロック部31の状態を「規制状態」と呼ぶ)。
【0035】
なお、この実施例においては、ブームインターロック部31をコントローラ30に実装した場合について示しているが、制御バルブ等を用いて油圧装置40に設けることも可能である。転車台張出インターロック部34も同様である。
【0036】
そこで、転車台張出量制御部33は、転車台12の張出量が所定のストロークに達すると、所定範囲ブーム作動許可部32に許可信号を送信する。そして、所定範囲ブーム作動許可部32は、この許可信号を受信すると、ブームインターロック部31の規制状態を解除する(ステップS105)。そのため、下部操作装置21が操作されると操作信号がコントローラ30に送信され、操作量に応じてブーム制御バルブ43に制御信号が送信されてブーム5が伸長作動する(ステップS112)。
【0037】
ブーム5が伸長作動して、予め決められた長さになると(すなわち、高所作業装置8が転車位置8bになると)、ブーム姿勢検出器22から検出信号(姿勢情報)が出力され、所定範囲ブーム作動許可部32は高所作業装置8が転車位置8bにあることを検出する(ステップS113)。なお、ブーム5が転車位置8bにあることは、車体2に目視マーキング13を設け、その目視マーキング13の位置にブーム5が位置する(例えば、図5に示すように、ブーム5の先端部が目視マーキング13の位置と一致する)ように作業者が下部操作装置21を操作するように構成することもできるし、所定範囲ブーム作動許可部32に、転車位置8bになるブーム5の伸長量(ブーム姿勢検出器22の検出値)を転車姿勢情報32aとして記憶しておき、ブーム姿勢検出器22の検出値が転車姿勢情報32aに一致するときに、所定範囲ブーム作動許可部32がブームインターロック部31を規制状態にし、ブーム5の伸長作動を停止させるように構成することができる(ステップS114)。
【0038】
なお、所定範囲ブーム作動許可部32は、高所作業装置8が転車位置8bになったことを検出する(すなわち、ブーム姿勢検出器22の検出値が、転車位置8bのときの値になったことを検出する)と、転車台張出インターロック部34にその情報を送信し、転車台張出インターロック部34は、転車台操作装置24による転車台12の操作の規制を解除する(ステップS115)。この場合、ブーム5の伸長量が転車姿勢8bを越えて伸長されたときは、転車台張出インターロック部34において規制を解除しないように構成することが好ましい。
【0039】
最後に、作業者は転車台操作装置24を操作して転車台12を更に張り出し、車体2を持ち上げる(ステップS120)。このとき、上述のように高所作業装置8(ブーム5)は転車位置8bにあるため、合成された重心位置は転車台12の接地位置と平面視において重なっているため(図2(b)に示す状態)、転車台12に対して軌陸作業車1はバランスが保たれており、車体2を安定して持ち上げることができる。
【0040】
なお、車体2に表示装置25を設け、転車台12が所定のストロークだけ張り出された状態(重心位置を調整するためにブーム5を作動させることが可能である状態)、ブーム5が伸長作動して転車位置8bにある状態(バランスが調整されて転車台12で車体2を持ち上げることができる状態)等をこの表示装置25に表示することにより、作業者は、現在の軌陸作業車1の状態を把握することができるため、転車台12の張り出し作業(転車作業)が容易になる。あるいは、警報装置を設け(図示せず)、高所作業装置8が転車位置8bに無いときに転車台12を所定の範囲以上に張り出させて車体2を持ち上げようとしたときに、作業者に警告を発するように構成することも可能である。
【0041】
このように、ブーム5を伸長作動させて車体2と高所作業装置8との合成された重心位置を移動させるように構成することにより、軌陸作業車1の製造時点において、平面視において重心位置が転車台12と一致するブーム5の伸長位置、すなわち、転車位置を目視マーキング13として車体2上に設けるか、あるいは、所定範囲ブーム作動許可部32に記憶させておくことで、軌陸作業車1毎に容易にバランスを調整することができる。これにより、軌陸作業車1の設計時点においては、全体の重心を平面視において転車台12と一致させなければならないという制約がなくなるため、設計の自由度を向上させることができる。また、通常の高所作業車として設計された作業用車両を軌陸作業車に設計変更することも容易となる。
【0042】
このとき、バランス調整のためにブーム5を操作可能とするようにブームインターロック部31の規制を解除するのは、転車台12が所定のストロークだけ張り出されたときであり、また、ブーム5が作動する範囲も所定範囲ブーム作動許可部32に設定された範囲内であるため、ブーム5の予期せぬ操作により車体2の安定が崩れることはない。また、このバランス調整装置20は、高所作業装置8を作動させてバランスを調整するため、特別の部材が不要となり軌陸作業車1の全体の重量を増加させることがなく、その機構も簡単に構成することができる。
【0043】
なお、このバランス調整装置20による重心位置の移動は、軌陸作業車1を作業姿勢にすることなく(アウトリガジャッキ9等を張り出すことなく)ブーム5を伸長作動させるため、ブーム5の伸長量は車体2の安定を妨げない範囲、たとえば、全縮状態から200mm程度の伸長量までとすることが好ましい。特に、図1に示したように、ブーム5を車体2の前方から後方で下方に向けて倒伏させて格納する軌陸作業車1の場合、ブーム5を伸長させたとしても重心は後方で且つ下方に移動するため、車体2の安定を大きく変化させることはない。
【0044】
また、以上の実施例においては、高所作業装置8のうち、ブーム5を伸長作動させてバランスを調整した場合について説明したが、ブーム5を所定の角度だけ格納位置8aから起仰動させてバランスを調整するように、バランス調整装置20を構成することも可能である。この場合も、車体2の安定を崩すことがないように、ブーム5の起仰角度は、格納位置8aから5度程度まであることが好ましい。あるいは、作業台7に設けられた上部操作装置13や工具箱のレイアウトを調整して、作業台7の重心位置をこの作業台7の中心から偏心させておき、首振りモータ55により作業台7をブーム5に対して旋回させることにより、車体2と高所作業装置8との合成された重心位置を転車台12に重なるように移動させて調整することも可能である。また、ブーム5を旋回作動させてバランスを調整するように構成することも可能である。この場合も、車体2の安定を崩すことがないように、ブーム5(旋回台4)の旋回角度は格納位置8aから狭小範囲内であることが好ましい。
【0045】
さらに、以上の実施例においては、ブーム5が車体2の前方から後方に向けて倒伏されて作業台7が車体2の後部に位置して格納される軌陸作業車1について説明したが、ブーム5が車体2の後方から前方に向けて倒伏されて格納される作業用車両の場合にも、本実施例に係るバランス調整装置20を適用することが可能である。
【0046】
また、以上の実施例では、転車台12の張り出しと、ブーム5の伸長作動を作業員が交互に操作して行う場合について示したが、例えば、転車姿勢移行スイッチ26を設け、この転車姿勢移行スイッチ26を操作することにより、コントローラ30により自動的に転車台12の張り出しとブーム5の伸長作動を行って、車体2と高所作業装置8との合成された重心位置を調整するように構成することも可能である。あるいは、転車姿勢移行スイッチ26の代わりに、転車台操作装置24を操作することにより、転車台12の張り出しとブーム5の作動によるバランス調整の作業を連続して行うことができるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るバランス調整装置が用いられる軌陸作業車の側面図である。
【図2】車体の重心位置を調整する方法を説明するための説明図であり、(a)はブーム格納時の重心位置を示す図であり、(b)は、ブーム伸長時の重心位置を示す図である。
【図3】バランス調整装置の構成を示すブロック図である。
【図4】バランス調整装置の処理を示すフローチャートであり、(a)は、全体の流れを示し、(b)は、転車台を張り出すときの流れを示し、(c)は、ブームを伸長させるときの流れを示している。
【図5】ブームが転車位置にあるときの軌陸作業車の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 軌陸作業車(作業用車両)
2 車体
3a,3b 前後輪(車輪)
5 ブーム
7 作業台
8 高所作業装置(作業装置)
12 転車台
12a 接地位置
13 目視マーキング(転車姿勢指示手段)
21 下部操作装置(転車姿勢移行操作手段)
22 ブーム姿勢検出器(姿勢検出手段)
23 転車台張出量検出器(転車台張出量検出手段)
26 転車姿勢移行スイッチ(転車姿勢移行操作手段)
30 コントローラ(制御手段)
32 所定範囲ブーム作動許可部(作業装置許容手段)
33 転車台張出量制御部(転車台規制手段,作業装置許容手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有し走行可能な車体と、前記車体上に配設され、前記車体に対する姿勢が変化するように作動する作業装置と、前記車体に設けられ下方に張り出されて前記車体を持ち上げる転車台とを有した作業用車両であって、
前記車体と前記作業装置との合成された重心位置が平面視において前記転車台の接地位置と重なるようにするために、前記作業装置の姿勢を指示する転車姿勢指示手段を備えることを特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記転車姿勢指示手段が、前記車体に設けられ、前記作業装置の姿勢が、前記合成された重心位置が平面視において前記接地位置と重なる姿勢にあることを示す目視用マーキングで構成されることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
車輪を有し走行可能な車体と、
前記車体上に配設され、前記車体に対する姿勢が変化するように作動する作業装置と、
前記車体に設けられ下方に張り出されて前記車体を持ち上げる転車台と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記車体と前記作業装置との合成された重心位置が平面視において前記転車台の接地位置と重なる姿勢に前記作業装置を移行させる操作を行う転車姿勢移行操作手段と、
前記転車姿勢移行操作手段が操作されたときに、前記姿勢検出手段により検出される前記姿勢が、前記合成された重心位置が平面視において前記接地位置と重なる姿勢と一致するように前記作業装置を作動させる制御手段とを有して構成されたことを特徴とする作業用車両。
【請求項4】
前記姿勢検出手段により検出された前記姿勢が、前記合成された重心位置が平面視において前記接地位置と重ならない範囲にあるときに、前記転車台の作動を規制する転車台規制手段を有することを特徴とする請求項3に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記転車台の張出量を検出する転車台張出量検出手段と、
前記転車台張出量検出手段により検出された前記張出量が所定の張出量以上で、かつ、前記転車台が接地される張出量より小さい範囲にあるときに、前記作業装置の作動を許容する作業装置許容手段とを有することを特徴とする請求項3または4に記載の作業用車両。
【請求項6】
前記作業装置が、先端に作業台が取り付けられ、前記車体に対して少なくとも旋回作動、伸縮作動、および、起伏作動のいずれかが可能に構成されたブームを有して構成され、
前記ブームを旋回作動、伸縮作動、若しくは、起伏作動させて前記合成された重心位置が平面視において前記接地位置と重なるように構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の作業用車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−38777(P2007−38777A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223857(P2005−223857)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】