説明

作業記録システム及びそのプログラム

【課題】 本発明の課題は、特定領域で作業している検知対象の作業履歴を自動記録することを目的とする。
【解決手段】 上記課題は、特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報より該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定する手段と、2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断する手段と、前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する手段とを有することを特徴とする作業記録システムにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定領域で作業している作業員の作業履歴を自動記録することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、屋外の農場などでの作業員の作業時間を自動記録するために、作業員に携帯電話機などのGPS(Global Positioning System)機能付端末を所持させて、作業員のGPSから得られる軌跡が予め定義しておいた農場範囲内に入っているか否かを判断することによって、農場での作業記録が行われるようになってきた。
【0003】
例えば、検知エリアを設定し、GPS機能を備えた検知対象端末から受信した位置情報と予め設定した検知エリアとを比較して、その検知エリアへの入出を判定すること等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−180242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術を農場に適用した場合では、GPS誤差(凡そ10m)が検知エリアの幅(例えば、農場のハウスであれば凡そ7m)より大きい場合、複数のハウスが隣接していると、どのハウスにGPS機能付端末を所持した作業員がいるのかを正しく判断することができない。
【0006】
また、より正確にハウスへの入退室を記録するために、ハウスの入り口にICカードリーダを設置し、作業員にICカードを持たせハウスの入退室時にICカードをICカードリーダにタッチさせることにより作業記録を行うようにすることが考えられる。しかしながら、作業員は手荷物により手がふさがっていることもあり、入退室毎にICカードをICカードリーダにかざす操作が煩雑であると言った問題がある。
【0007】
操作を簡潔にするため、例えば、UHF(Ultra High Frequency)帯RF−ID(Radio Frequency Identification)等のカードを持つだけで入退室の自動記録が可能なものもあるがリーダ装置が大掛かりとなり、また、費用も掛かると言った問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報より該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定する手段と、2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断する手段と、前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する手段とを有することを特徴とする作業記録システムを提供する。
【0009】
また、上記課題を解決するための手段として、コンピュータに上記作業記録サーバとして機能させるためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び作業記録方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術では、検知対象の位置の検出に係る誤差よりも幅の狭い特定領域において、検知対象が特定領域内に居たことを精度良く判別し、また、その特定領域内に居た時間を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】正しい軌跡と測定軌跡との関係を説明するための図である。
【図2】作業記録システムの全体構成例を示す図である。
【図3】作業員端末のハードウェア構成を示す図である。
【図4】作業員端末での処理を説明するための図である。
【図5】人感センサのハードウェア構成を示す図である。
【図6】人感センサでの処理を説明するための図である。
【図7】サーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第一の作業領域特定方法(ハウスに入り口が一つの場合)を説明するための図である。
【図9】作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第二の作業領域特定方法(ハウスに入り口が複数の場合)を説明するための図である。
【図10】作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第三の作業領域特定方法(検知された時間内で複数の近傍範囲に位置する場合)を説明するための図である。
【図11】サーバ装置の機能構成例を示す図である。
【図12】サーバ装置のハウス特定部による処理を説明するための図である。
【図13】初期設定のデータ構成例を示す図である。
【図14】作業員の軌跡を記録するためのデータ構成例を示す図である。
【図15】ハウス特定前の入退室表のデータ例を示す図である。
【図16】ハウスを特定するための処理におけるデータ変化(その1)を説明するための図である。
【図17】ハウスを特定するための処理におけるデータ変化(その2)を説明するための図である。
【図18】ハウス特定後の入退室表のデータ例を示す図である。
【図19】ハウス特定の精度の違いを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、検知対象の実際の位置とGPSが測定した位置との差(GPS誤差)よりも狭い幅を持つ特定領域内における検知対象の存在可否を精度良く判別する。以下、複数のハウスが隣接して設置される農場において作業者が作業する各ハウスを特定領域とし、作業者が作業しているハウスを特定することを一例として説明する。
【0013】
先ず、作業者が辿った正しい軌跡とGPSが測定した測定軌跡との関係について説明する。図1は、正しい軌跡と測定軌跡との関係を説明するための図である。図1では、ハウスH1、H2、H3が隣接された農場において、作業員がハウスH1に入室してから退室するまでの軌跡を、正しい軌跡1aと、作業員が携帯するGPS機能によって測定された測定軌跡1bとで示している。ハウスの幅7wに対してGPS誤差7gが大であると、時刻tにおける、正しい軌跡1a上の作業員の位置6aは、位置6aからGPS誤差範囲1z内の位置6bであるとしてGPSによって測定される。
【0014】
従って、正しい軌跡1a上の作業員の位置6aはハウスH1内であるのに対して、GPSによって測定された位置6bはハウスH3内となる。図1で例示されるように、GPS誤差7gのため、GPSによって測定された測定軌跡1bは、ハウスH1とH2を跨る軌跡と、ハウスH1とH3を跨る軌跡とを描くため、作業員が作業しているハウスを正確に特定することが困難となる。
【0015】
次に、GPS誤差より幅の狭い隣接する複数のハウスのうち、作業員が作業しているハウスを特定するための本実施例に係る作業記録システムについて説明する。
【0016】
図2は、作業記録システムの全体構成例を示す図である。図2に示す作業記録システム1000は、携帯電話基地局3と、複数の作業員端末4と、複数の人感センサ5と、サーバ装置100とを有する。携帯電話基地局3と、複数の人感センサ5とは、インターネット2を介してサーバ装置100に接続される。また、複数の作業員端末4は、無線により携帯電話基地局3と通信することにより、携帯電話基地局3からインターネット2を介してサーバ装置100に接続される。
【0017】
作業員端末4は、農作業を行う各作業員W1、W2等(以下、総称して作業員Wと言う)により所持されるGPS機能付き携帯電話機であり、所定間隔で作業員Wの位置情報をGPS機能によって取得し、サーバ装置100へ送信する。位置情報は、経度、緯度、時刻、作業員Wを特定する作業員IDを含む。作業員IDとして、作業員端末4の電話番号を用いてもよい。
【0018】
作業員端末4は、図3に示されるように、CPUにより作業員端末4全体を制御する制御部4aと、GPSから経度、緯度、時刻を含むGPS情報を受信するGPS受信部4bと、無線通信による携帯電話基地局3を介してサーバ装置100と通信するための無線通信部4cと、作業員Wを特定するための作業員IDが格納された作業員ID保持部4dと、メモリ4eとを有する。
【0019】
作業員端末4は、図4に示すように、所定周期(例えば、1分)毎(ステップS11)に、GPS情報をGPS受信部4bで受信すると、制御部4aは、受信したGPS情報と、作業員端末4の時刻とをメモリ4eに蓄積して保存する(ステップS12)。そして、制御部4aは、所定周期(例えば、1時間)毎(ステップS13)に、作業員ID保持部4dに予め格納された作業員IDを、メモリ4eに蓄積されたGPS情報に付加した位置情報を作成し、無線通信部4cによって携帯電話基地局3へ送信することによって携帯電話基地局3からインターネット2を介してサーバ装置100へ送信する(ステップS14)。制御部4aは、サーバ装置100への所定周期毎の位置情報の送信処理の終了か否かを判断する(ステップS15)。終了でない場合、制御部4aは、ステップS11へ戻り、上記同様の処理を繰り返す。終了の場合、つまり、その日の作業員による作業が終了した場合、制御部4aは、この処理を終了する。
【0020】
人感センサ5は、各作業員Wが作業するハウス毎に1又は複数設置され、人を検知した際に、その時刻と人感センサ5を特定するセンサIDとを含む時刻情報を、インターネット2を介してサーバ装置100へ通知する。人感センサ5は、ハウスの入り口に一つずつ設置される。人感センサ5は、ハウスのドア開閉センサ、赤外線人感センサ、フットスイッチ、光遮断スイッチ等である。
【0021】
人感センサ5は、図5に示されるように、CPUにより人感センサ5全体を制御する制御部5aと、人(作業員W)の通過を検知する人感センサ5bと、サーバ装置100と通信するための通信部5cと、人感センサ5bを特定するためのセンサIDが格納されたセンサID保持部5dと、メモリ5eと、人感センサ5bによる検知時刻を取得するためのタイマ5fとを有する。本実施例における人感センサ5は、人(作業員W)の所定範囲内の接近を感知可能であればよく、人を特定する等の高度な技術や装置を必要としない。
【0022】
人感センサ5は、図6に示すように、人(作業員W)を検知すると(ステップS21)、制御部5aは、その検知時刻をタイマ5fから読み出して、メモリ5eに蓄積して保持する(ステップS22)。そして、制御部5aは、一定周期(例えば、1時間)毎(ステップS23)に、センサID保持部5bに予め格納されたセンサIDを、メモリ5eに蓄積された検知時刻に付加した検知情報を作成し、インターネット2を介してサーバ装置100へ送信する(ステップS24)。制御部5aは、サーバ装置100への所定周期毎の検知情報の送信処理の終了か否かを判断する(ステップS25)。終了でない場合、制御部5aは、ステップS21へ戻り、上記同様の処理を繰り返す。終了の場合、つまり、その日の作業員による作業が終了した場合、制御部5aは、この処理を終了する。
【0023】
サーバ装置100は、作業員端末4から収集した位置情報と、人感センサ5から収集した検知情報とを用いて、GPS誤差より幅の狭い隣接した複数のハウスから作業員Wが作業しているハウスを特定する。
【0024】
本実施例に係るサーバ装置100は、例えば、図7に示すようなハードウェア構成を有する。図7は、サーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0025】
図7において、サーバ装置100は、コンピュータによって制御される端末であって、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリユニット12と、表示ユニット13と、出力ユニット14と、入力ユニット15と、通信ユニット16と、記憶装置17と、ドライバ18とを有し 、システムバスBに接続される。
【0026】
CPU11は、メモリユニット12に格納されたプログラムに従ってサーバ装置100を制御する。メモリユニット12には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)等が用いられ、CPU11にて実行されるプログラム、CPU11での処理に必要なデータ、CPU11での処理にて得られたデータ等を格納する。また、メモリユニット12の一部の領域が、CPU11での処理に利用されるワークエリアとして割り付けられている。
【0027】
表示ユニット13は、CPU11の制御のもとに必要な各種情報を表示する。出力ユニット14は、プリンタ等を有し、利用者からの指示に応じて各種情報を出力するために用いられる。入力ユニット15は、マウス、キーボード等を有し、利用者がサーバ装置100が処理を行なうための必要な各種情報を入力するために用いられる。通信ユニット16は、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)等に接続し、外部装置との間の通信制御をするための装置である。記憶装置17には、例えば、ハードディスクユニットが用いられ、各種処理を実行するプログラム等のデータを格納する。
【0028】
サーバ装置100によって行われる処理を実現するプログラムは、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等の記憶媒体19によってサーバ装置100に提供される。即ち、プログラムが保存された記憶媒体19がドライバ18にセットされると、ドライバ18が記憶媒体19からプログラムを読み出し、その読み出されたプログラムがシステムバスBを介して記憶装置17にインストールされる。そして、プログラムが起動されると、記憶装置17にインストールされたプログラムに従ってCPU11がその処理を開始する。尚、プログラムを格納する媒体としてCD−ROMに限定するものではなく、コンピュータが読み取り可能な媒体であればよい。コンピュータ読取可能な記憶媒体として、CD−ROMの他に、DVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリであっても良い。また、サーバ装置100によって行われる処理を実現するプログラムが、通信ユニット16を介して外部装置から提供されてもよい。
【0029】
以下、本実施例に係るサーバ装置100によって行われる、作業員Wが作業したハウスを特定するための作業領域特定方法について、図8、図9、図10で説明する。
【0030】
図8は、作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第一の作業領域特定方法(ハウスに入り口が一つの場合)を説明するための図である。図8中、各ハウスH1〜H3には一つの入り口があり、図5に示す人感センサ5が設置され、人感センサS1〜S3で特定する。
【0031】
図8では、各ハウスH1〜H3に入り口が一つである場合の、サーバ装置100が、作業員W1が作業した領域がハウスH1内であることを特定する作業領域特定方法について説明する。
【0032】
図8において、作業員W1の実際の軌跡を実軌跡C1で示し、作業員W1が所持するGPS機能付の作業員端末4からサーバ装置100へ送信された位置情報に基づく軌跡を測定軌跡P1で示す。他の作業員W2、W3等については、測定軌跡P2、P3のみが示される。
【0033】
サーバ装置100は、先ず、ハウスH1の人感センサS1による検知情報で示される人(作業員W1)を検知した時刻に、近傍範囲A1内にいた作業員Wを特定する。近傍範囲A1は、GPS誤差7gに基づいて決定された人感センサS1を中心とした範囲であり、人感センサS1の設置位置からGPS誤差7gを半径とする円(図1のGPS誤差範囲)内となる。他センサS2、S3に対しても同様に近傍範囲A1が定義される。
【0034】
図8(A)は、作業員W1がハウスH1へ入室し人感センサS1が人を検知した時刻T1に、人感センサS1が設置してある位置からGPS誤差7gに基づいて決定された近傍範囲A1で人(作業員W1又は/及びW2)を検知した場合を例示している。人感センサS1は作業員W1及びW2を特定しない。時刻T1の作業員W1及びW2の位置情報による位置を、各々の測定軌跡P1とP2上に黒丸「●」で夫々示している。
【0035】
時刻T1の状態では、サーバ装置100は、作業員W1及びW2について、いずれがハウスH1に入退室したのか、あるいは、いずれが単に通り過ぎたのかを判断することができない。
【0036】
次に、作業員W1がハウスH1から退室した状態を説明する。図8(B)は、作業員W1がハウスH1から退室し人感センサS1が人を検知した時刻T2に、人感センサS1の近傍範囲A1で人(作業員W1又は/及びW3)を検知した場合を例示している。人感センサS1は作業員W1及びW3を特定しない。時刻T2の作業員W1及びW3の位置情報による位置を、各々の測定軌跡P1とP3上に黒丸で夫々示している。
【0037】
時刻T2の状態では、サーバ装置100は、作業員W1及び作業員W3について、いずれがハウスH1に入退室したのか、あるいは、いずれが単に通り過ぎたのかを判断することができない。しかしながら、時刻T1と時刻T2の2つの時刻で、作業員W1が共通して人感センサS1の近傍範囲A1にいることから、人感センサS1によって作業員W1が検知されたと判断でき、また、時刻T1で入室して時刻T2で退室したと判断することができる。
【0038】
図8(C)は、ハウスを特定する方法について説明するための図である。時刻T1と時刻T2に同一作業員W1がハウスH1の人感センサS1の近傍範囲A1内にいたため、作業員W1の測定軌跡P1について、作業員W1が、時刻T1から時刻T2まで、ハウスH1の形状とGPS誤差1gとに基づくハウスH1の検出範囲B1内にいたと判断できる場合、サーバ装置100は、時刻T1から時刻T2までの時間が、作業員W1がハウスH1で作業していた時間であると判断する。
【0039】
検出範囲B1は、GPS誤差1gが10mである場合、ハウスH1の縦方向で上下を夫々10m延長し、横方向で左右を夫々10m延長した領域を含む範囲である。
【0040】
ところで、時刻T1又は時刻T2のいずれか一方でハウスH1の人感センサS1の近傍範囲A1内にいたとされる作業員W2及び作業員W3については、その時刻にハウスH1の近辺いたのみと判断し、ハウスH1での作業とは見なさない。
【0041】
図9は、作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第二の作業領域特定方法(ハウスに入り口が複数の場合)を説明するための図である。図9中、ハウスH1には二つの入り口が夫々ハウスH1の上下にある場合を例示している。ハウスH1の上下の入り口に図5に示す人感センサ5を設置し、夫々を人感センサS1a及びS1bで特定する。ハウスH2及びH3についても同様に人感センサ5が設置されるが、図9では省略する。
【0042】
図9では、各ハウスH1〜H3に入り口が二つである場合の、サーバ装置100が、作業員W1が作業した領域がハウスH1内であることを特定する作業領域特定方法について説明する。
【0043】
図9において、作業員W1の実際の軌跡を実軌跡C1で示し、作業員W1が所持するGPS機能付の作業員端末4からサーバ装置100へ送信された位置情報に基づく軌跡を測定軌跡P1で示す。近傍範囲A1aは人感センサS1aの設置位置を中心として定義され、また、近傍範囲A1bは人感センサS1bの設置位置を中心として定義される。近傍範囲A1a及び近傍範囲A1bは、図8の近傍範囲A1と同様の方法で定義された範囲である。また、ハウスH1に対する検出範囲B1についても図8で説明した同様の方法で定義された範囲である。
【0044】
図9(A)では、ハウスH1にて、時刻T1で人感センサS1aによって人(作業員W1)が検知され、その後の時刻T2で人感センサS1bによって人(作業員W1)が検知された場合に、作業員W1がハウスH1内で作業していたと判断される軌跡を例示している。
【0045】
サーバ装置100は、人感センサS1aによって検知された時刻T1で近傍範囲A1a内にいた作業員W1を特定する。また、人感センサS1bによって検知された時刻T2で近傍範囲A1b内にいた作業員W1を特定する。
【0046】
人感センサS1a及びS1bによって検知された時刻のうち、早い時刻T1で作業員W1がハウスH1に入室し、時刻T1後の時刻T2で作業員W1がハウスH1から退室したとことを、時刻T1から時刻T2までの時間の作業員W1の測定軌跡P1で判断する。
【0047】
次に、サーバ装置100は、時刻T1から時刻T2までの時間、作業員W1の測定軌跡P1が検出範囲B1内である場合に、作業員W1はハウスH1内で作業していたと判断する。入退室が同じ入り口であっても同様の方法で判断できる。
【0048】
一方、図9(B)では、ハウスH1にて、時刻T1で人感センサS1aによって人(作業員W1)が検知され、その後の時刻T2で人感センサS1bによって人(作業員W1)が検知された場合であっても、作業員W1がハウスH1内で作業していたとは判断されない軌跡を例示している。
【0049】
先ず、サーバ装置100は、人感センサS1aによって検知された時刻T1で近傍範囲A1a内にいた作業員W1を特定する。また、人感センサS1bによって検知された時刻T2で近傍範囲A1b内にいた作業員W1を特定する。
【0050】
次に、サーバ装置100は、時刻T1から時刻T2までの時間、作業員W1の測定軌跡P1が検出範囲B1の中に入っていない場合、作業員W1はハウスH1の外にいたと判断し、この時間中はハウスH1内の作業とは判断しない。同じ入り口で検知された場合であっても同様の方法で判断できる。
【0051】
図10は、作業員に係る検知情報と位置情報とに基づく第三の作業領域特定方法(検知された時間内で複数の近傍範囲に位置する場合)を説明するための図である。(発明者注:元々私が作成した図10の番号の付け方が不適切でした。S2a、S2bはハウス3に付いているのでS3a、S3bと修正してます。同様にA2a→A3a、A2b→A3b、B2→B3と修正します。)図9中、各ハウスH1〜H3には、図9のハウスH1のように二つの入り口があるものとし、ここでは、ハウスH1とH3について、入り口に配置された人感センサ5を、人感センサS1a、S1b、S3a、S3bで特定する。ハウスH2についても同様に人感センサ5が設置されるが、図10では省略する。
【0052】
図10では、各ハウスH1〜H3に入り口が二つであり、検知された時間内で2以上のハウスにおいて複数の近傍範囲に位置する場合において、サーバ装置100が、作業員W1が作業した領域がハウスH1内であることを特定する作業領域特定方法について説明する。
【0053】
図10(A)において、ハウスH3に対する、近傍範囲A3a及び近傍範囲A3b、また、検出範囲B3は、ハウスH1と同様に定義される。
【0054】
時刻T1で、ハウスH1の人感センサS1aによって人(作業員W1)が検知される。時刻T2で、ハウスH3の人感センサS3aによって人(作業員W1)が検知され、時刻T3で、ハウスH3の人感センサS3bによって人(作業員W1)が検知される。そして、時刻T3で、ハウスH1の人感センサS1bによって人(作業員W1)が検知される。時刻T1、T2、T3、T4の作業員W1の位置情報による位置を、測定軌跡P1上に黒丸「●」で夫々示している。
【0055】
人感センサS1aによって検知された時刻T1で近傍範囲A1a内にいた作業員W1を特定する。時刻T2で近傍範囲A3a内で、時刻T3で近傍範囲A3b内で、そして、時刻T4で近傍範囲A1b内で作業員W1を特定する。
【0056】
これら検知された時刻T1〜T4と、作業員W1の測定軌跡P1に基づくハウスH1の検出範囲B1とハウスH3の検出範囲B3との対応は、図10(B)に示す通りである。ハウスH1に関して、時刻T1から時刻T4までの時間、作業員W1の測定軌跡P1が検出範囲B1内である。また、時刻T1から時刻T4までの時間内の時刻T2から時刻T3までの時間において、作業員W1の測定軌跡P1が検出範囲B1内であると共に、同時に検出範囲B2内である。
【0057】
時刻T1から時刻T4までの時間に比べて、時刻T2と時刻T3は時間が近い。サーバ装置100は、時間の近い順から、つまり、ハウスH3で検知された時刻T2と時刻T3から、作業員W1のハウスH3内での作業であったか否かを判断する。(A)に例示される測定軌跡P1では、時刻T2から時刻T3までの時間は検出範囲B3内であるから、サーバ装置100は、この時間は作業員W1がハウスH3内で作業していたと判断し、検出範囲B3内と確定した部分を測定軌跡P1から除外する。
【0058】
従って、時刻T1から時刻T2までの時間と、時刻T3から時刻T4までの時間とで、測定軌跡P1は検出範囲B1内に含まれるが、時刻T1から時刻T4までの時間で、測定軌跡P1は連続して検出範囲B1内に含まれなくなる。そのため、サーバ装置100が、時刻T1から時刻T4までの時間は作業員W1がハウスH1内で作業していたと判断することはない。
【0059】
図11は、サーバ装置の機能構成例を示す図である。サーバ装置100は、上述したような作業領域特定方法を実現するために、主に、表示処理部111と、入出力処理部112と、通信制御部113と、インストーラ114と、初期設定部121と、GPS情報記録部122と、センサ情報記録部123と、ハウス特定部124とを有し、記憶領域に、データベース130を格納し保持する。データベース130は、ハウス位置情報131と、センサ設置位置情報132と、位置情報133と、検知情報134と、入退室表135とを管理する。
【0060】
表示処理部111は、表示ユニット13へのデータの表示を制御する。入出力処理部112は、入力ユニット15及び出力ユニット14へのデータの入出力を制御する。通信制御部113は、ネットワーク2等を介して行われるデータ通信を制御する。インストーラ114は、本実施例に係るプログラムを記録した記録媒体19から該プログラムを記憶装置17にインストールする。そして、CPU11が対応するプログラムを実行することによって、処理部121から124等として機能する。
【0061】
初期設定部121は、利用者によって入力されたハウスH1〜H3の位置をデータベース130のハウス位置情報131に設定する。また、初期設定部121は、利用者によって入力された各ハウスH1〜H3に設置された人感センサ5の設置位置をセンサ設置位置情報132に設定する。
【0062】
GPS情報記録部122は、作業員端末4から作業員端末4を特定する作業員IDが付加された位置情報を受信すると、データベース130の作業員位置情報133に追加する。作業員位置情報133は、位置情報を作業員ID毎に蓄積して保持する。
【0063】
センサ情報記録部123は、人感センサ5からセンサIDを含む時刻情報を受信すると、データベース130のセンサ検知情報134に追加する。センサ検知情報134は、時刻情報をセンサID毎に蓄積して保持する。
【0064】
ハウス特定部124は、センサ毎の時刻情報に基づいて、センサ付近にいたと判断される作業員を、作業員位置情報133を参照することにより特定することによって、データベース130内に作業員毎の入退室表135を作成し、入退室表135を用いて後述するフローチャートに従って上述したような作業領域特定方法を実行する。ハウス特定部124によって作業員毎に作業したハウスが特定され、入退室表135には特定されたハウス名が示される。従って、作業員毎にハウス内での作業時間を自動的に記録することが可能となる。
【0065】
次に、ハウス特定部124が、GPS情報記録部122が作業員位置情報133に蓄積した位置情報と、センサ情報記録部123がセンサ検知情報134に蓄積した検知情報とを用いて、各作業員Wが作業したハウスを特定する処理について説明する。図12は、サーバ装置のハウス特定部による処理を説明するための図である。
【0066】
図12において、ハウス特定部124は、データベース130から作業員位置情報133に蓄積した位置情報と、センサ検知情報134に蓄積した検知情報とを読み込む(ステップS31)。ハウス特定部124は、センサ設置位置情報132から順に人感センサ5を選択し、その人感センサ5に係るセンサ検知情報134から検知情報を取得する。
【0067】
ハウス特定部124は、作業員Wに係る作業員位置情報133を参照することによって、検知情報によって示される人感センサ5が人を検知した時刻における位置情報から、その作業員WのGPSによる位置を特定する(ステップS32)。
【0068】
そして、ハウス特定部124は、センサ設置位置情報132を参照して処理中の人感センサ5のセンサ名から設置位置を取得して近傍範囲Aを求め、作業員Wの位置が処理中の人感センサ5から近傍範囲A内か否かを判断する(ステップS33)。近傍範囲A外の場合、ハウス特定部124はステップS35へと進む。一方、近傍範囲A内の場合、ハウス特定部124は、センサ設置位置情報132から処理中の人感センサ5のセンサ名に対応づけられている、人感センサ5設置されているハウスのハウス名を取得し、作業員W毎に入退室表135に時刻とハウス名とを追加して記録する(ステップS34)。
【0069】
ハウス特定部124は、処理中の人感センサ5に関して、全ての作業員Wを調査したか否かを判断する(ステップS35)。全ての作業員Wを調査していない場合、次の作業員Wを選択してステップS32へ戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0070】
一方、全ての作業員Wを調査した場合、ハウス特定部124は、全ての時刻を調査したか否かを判断する(ステップS36)。全ての時刻の調査が終了していない場合、つまり、処理中の人感センサ5のセンサ検知情報134に未処理の検知情報がある場合、ハウス特定部124は、センサ検知情報134から次の検知情報を取得してステップS32へ戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0071】
一方、全ての時刻を調査した場合、つまり、処理中の人感センサ5のセンサ検知情報134の全ての検知情報が処理された場合、ハウス特定部124は、全ての人感センサ5を調査したか否かを判断する(ステップS37)。全ての人感センサ5について調査を終了していない場合、ハウス特定部124は、次の人感センサ5を選択してステップS32へ戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0072】
上述までの処理により、人感センサ5で検知された時刻に作業員Wが近傍範囲A内にいた場合に、作業員W毎に、人感センサ5で検知された時刻と人感センサ5が設置されるハウス名とが対応させて記録された入退室表135がデータベース130に作成される。ハウス特定部124は、入退室表135を参照し、最初の作業員Wを選択する。
【0073】
ハウス特定部124は、作業員Wに関して、入退室表135の近い順に2つの時刻に同じハウスが記録されているか否かを判断する(ステップS38)。入退室表135において、同じハウス名が対応付けて記録されている2つの時刻が存在しない場合、ハウス特定部124は、ステップS42へと進む。
【0074】
一方、2つの時刻に同じハウス名が対応付けて記録されている場合、ハウス特定部124は、2つの時刻間のGPSから得た作業員Wの軌跡がハウスから検出範囲B内にあるか否かを判断する(ステップS39)。ハウス特定部124は、作業員位置情報133から作業員Wの2つの時刻間の位置情報を参照することによって、作業員Wの軌跡がハウスから検出範囲B内にあるか否かを判断する。検出範囲B内にない場合、ハウス特定部124は、ステップS42へと進む。
【0075】
一方、検出範囲B内にある場合、ハウス特定部124は、作業員Wは2つの時刻間はハウス内で作業していたと判断して、入退室表135に2つの時刻に対応させてハウス名を記録する(ステップS40)。そして、ハウス特定部124は、作業員位置情報133から、作業員Wに関して、ハウス内で作業していたと判断した2つの時刻間の軌跡を示す位置情報を、ハウス特定済みとしてそれ以外で参照されないように無効の設定をする(ステップS41)。
【0076】
ハウス特定部124は、作業員Wに関して、全ての時刻を調査したか否かを判断する(ステップS42)。ハウス特定部124は、入退室表135の作業員Wに関する全ての時刻を調査していない場合、ステップS38に戻り、上述同様の処理を行う。
【0077】
一方、全ての時刻を調査した場合、ハウス特定部124は、入退室表135の全ての作業員Wを調査したか否かを判断する(ステップS43)。全ての作業員Wを調査していない場合、ハウス特定部124は、次の作業員Wを選択してステップS38へと戻り、上述同様の処理を行う。全ての作業員Wを調査した場合、ハウス特定部124は、この処理を終了する。
【0078】
上述したハウス特定部124による処理によって、入退室表135によって、作業員W毎に作業していたハウスが特定されると共に、作業していた開始時刻と終了時刻とを特定できる。従って、GPS誤差7gより幅の狭いハウスが隣接するような配置であっても作業時間の自動記録が可能となる。
【0079】
次に、サーバ装置100で行われる処理例について以下に説明する。
【0080】
図13は、初期設定のデータ構成例を示す図である。図13では、初期設定部121を介して利用者によって初期設定された、ハウス毎の位置が設定されたハウス位置情報131のデータ構成例と、人感センサ5毎の所属するハウス名と位置とが設定されたセンサ設置位置情報132のデータ構成例とを示す。
【0081】
ハウス位置情報131は、ハウス名、頂点数、頂点毎の位置などを記録し保持している。ハウス名は、ハウスを特定するための識別名である。この例では、ハウスH1、ハウスH2などで記録される。頂点数は、ハウスの形状に応じて設定される。この例では、ハウスの形状となる長方形に対応させて頂点数「4」が記録されている。頂点毎の位置は、頂点毎に緯度及び経度で位置が設定される。頂点数「4」の場合、頂点1、頂点2、頂点3、頂点4のように頂点を特定して頂点の数だけ記録され管理される。
【0082】
この例では、ハウス名「ハウスH1」の頂点数は「4」であり、頂点1の緯度「35.4434」及び経度「139.31335」が記録されている。頂点2〜4についても同様に記録されている。他ハウスについても同様に、ハウス名毎に頂点数と緯度及び経度による頂点毎の位置とが記録されている。
【0083】
センサ設置位置情報132は、センサ名、所属ハウス名、緯度、経度などを記録し保持している。センサ名は、人感センサ5を特定するための識別名である。この例では、S1a、S1b、S2a、S2bなどで記録される。所属ハウス名は、センサ名で特定される人感センサ5が設置されているハウスを特定するハウス名である。この例では、センサ名「S1a」の人感センサ5が設置されているハウスは、ハウス名「ハウスH1」であることが記録されている。緯度及び経度は、センサ名で特定される人感センサ5の設置位置である。この例では、センサ名「S1a」の人感センサ5の設置位置は、緯度「35.4434」及び経度「139.3134」であることが記録されている。他人感センサ5についても同様に、センサ名毎に所属ハウス名と緯度及び経度による設置位置とが記録されている。
【0084】
図14は、作業員の軌跡を記録するためのデータ構成例を示す図である。図14では、GPS情報記録部122が各作業員端末4から受信した位置情報が作業員W毎に記録された作業員位置情報133のデータ構成例と、センサ情報記録部123が各人感センサ5から受信した検知情報が人感センサ5毎に記録されたセンサ検知情報134のデータ構成例とを示す。
【0085】
作業員位置情報133は、作業員名、所定時間毎にGPSから取得した位置1、位置2、・・・などを記録し保持している。作業員名は、作業員Wを特定するための識別名である。この例では、W1、W2、・・・などで記録される。作業員名は、作業員Wの作業員ID、又は、作業員端末4の電話番号であってもよい。位置1、位置2、・・・には、各作業員端末4から受信した、所定時間毎にGPSから取得したGPS情報に取得した時刻が付加されている位置情報が記録される。この例では、作業員名「W1」の位置1には、時刻「8:20」に緯度「35.44347」及び経度「139.31332」の位置であったことが記録されている。位置2、・・・でも同様に時刻、緯度、経度が記録される。他の作業員W2、・・・についても同様である。
【0086】
センサ検知情報134は、センサ名、時系列に検知された検知時刻などを記録し保持している。人感センサ5を特定するための識別名である。この例では、S1a、S1b、S2a、S2bなどで記録される。検知時刻には、検知した分の検知時刻が時系列に記録される。識別名「S1a」の人感センサ5は、「8:25」、「9:55」、・・・に人を検知したことが記録されている。他の人感センサ5についても同様である。
【0087】
このような作業員位置情報133とセンサ検知情報134とに基づいて作成された入退室表135の例を図15で説明する。図15は、ハウス特定前の入退室表のデータ例を示す図である。図15に例示される入退室表135では、ハウス特定部124によって図12のステップS37までの処理を終了し、全ての人感センサ5の調査が終了した状態でのデータ例を示している。
【0088】
入退室表135は、作業員W毎に時系列の検知時刻を記録し、検知時刻毎に検知ハウスを対応させて記録している。図12のステップS33にて作業員Wの位置が近傍範囲A内であると判断された時刻のみが検知時刻に記録される。その検知時刻毎に記録される検知ハウスには、検知した人感センサ5が設置されるハウス名が記録される(図12のステップS34)。
【0089】
この例では、作業員W1について、検知時刻「8:25」に対して検知ハウス「ハウスH1」、検知時刻「8:55」に対して検知ハウス「ハウスH1」、・・・などが記録される。また、作業員W2について、検知時刻「8:25」に対して検知ハウス「ハウスH1」、検知時刻「13:37」に対して検知ハウス「ハウスH7」、・・・などが記録される。
【0090】
入退室表135においてこの時点で空欄となっている特定ハウスは、図12のステップS38〜S43での処理で適宜記録される。
【0091】
図16は、ハウスを特定するための処理におけるデータ変化(その1)を説明するための図である。図16に例示されるデータ変化は、図8(C)又は図9(A)に例示される測定軌跡P1が、ハウス特定部124による図12のステップS38〜S41で処理された場合に相当する。図16中、入退室表135及び作業員位置情報133において、作業員W1に係る情報のみが示され、他は省略される。
【0092】
入退室表135において、作業員W1に関して、2つの時刻「8:25」と時刻「8:55」の夫々に対して同一ハウス名「ハウスH1」が記録されている(図12のステップS38)。作業員位置情報133において、作業員W1に関する位置情報を参照して、この2つの時刻「8:25」と時刻「8:55」の間の緯度及び経度による測定軌跡P1−1を取得する。この測定軌跡P1−1が、ハウスH1に対して定義される検出範囲B内であるか否かが判断される(図12のステップS39)。
【0093】
測定軌跡P1−1がハウスH1の検出範囲B内であると判断されると、入退室表135において、2つの時刻「8:25」と時刻「8:55」に対してハウス名「ハウスH1」が記録される(図12のステップS40)。そして、作業員位置情報133において、ハウスが特定済みとなった作業員W1に関する測定軌跡P1−1に対して、その緯度及び経度の参照を無効とするマーク「NO」が設定される(図12のステップS41)。
【0094】
図17は、ハウスを特定するための処理におけるデータ変化(その2)を説明するための図である。図17に例示されるデータ変化は、図10(A)に例示される測定軌跡P1が、ハウス特定部124による図12のステップS38〜S41で処理された場合に相当する。図17中、入退室表135及び作業員位置情報133において、作業員W1に係る情報のみが示され、他は省略される。
【0095】
入退室表135において、作業員W1に関して、2つの時刻「10:31」と時刻「11:41」の夫々に対して同一ハウス名「ハウスH1」が記録されている。この時刻間内において、更に、2つの時刻「10:33」と時刻「11:39」の夫々に対して同一ハウス名「ハウスH3」が記録されている。前者の2つの時刻よりも時間的に近い後者の2つの時刻の方が先に処理される(図12のステップS38)。作業員位置情報133において、作業員W1に関する位置情報を参照して、この2つの時刻「10:33」と時刻「11:39」の間の緯度及び経度による測定軌跡P1−2を取得する。この測定軌跡P1−2が、ハウスH3に対して定義される検出範囲B内であるか否かが判断される(図12のステップS39)。
【0096】
測定軌跡P1−2がハウスH3の検出範囲B内であると判断されると、入退室表135において、2つの時刻「10:33」と時刻「11:39」に対してハウス名「ハウスH3」が記録される(図12のステップS40)。そして、作業員位置情報133において、ハウスが特定済みとなった作業員W1に関する測定軌跡P1−2に対して、その緯度及び経度の参照を無効とするマーク「NO」が設定される(図12のステップS41)。
【0097】
従って、次に、2つの時刻「10:31」と時刻「11:41」の間にハウスH1での作業であったか否かを判断する際には、測定軌跡P1−2が無効であるため、連続した位置情報を得ることができない。よって、ハウスH1での作業であったと判断することができない。
【0098】
図12のステップS42での判断により、ステップS38〜S41が繰り返されて図16及び図17でのデータ変更が行われた結果の一例を図18に示す。図18は、ハウス特定後の入退室表のデータ例を示す図である。図18に例示される入退室表135では、ハウス特定部124が、図12のステップS38〜S42までを繰り返し行なうことによって、作業員W1に関して作業していたハウスが特定された状態でのデータ例を示している。
【0099】
入退室表135は、作業員W1について、2つの時刻「8:25」と時刻「8:55」の間はハウスH1で作業しており、2つの時刻「10:33」と時刻「11:39」の間はハウスH3で作業していたことを示している。
【0100】
更に、図19を参照して、作業記録システム1000を適用した場合としない場合について説明する。図19は、ハウス特定の精度の違いを説明するための図である。図19に例示されるようなハウスH1がハウスH2及びH3との間で隣接するように配置された農場で、作業員W1が実際には正しい軌跡1aで示されるようにハウスH1へ入室してハウスH1内で作業し、ハウスH1から退室する。
【0101】
一方、作業員W1が所持している携帯端末4がGPSから取得した位置情報に基づく測定軌跡1bは、GPSの精度の誤差により、ハウスH1からH3が隣接する領域では、どちらかと言うと、ハウスH3内で作業していたかのような軌跡を描く。作業記録システム1000が適用されず測定軌跡1bに基づいて判断する場合、このように測定軌跡1bのハウスH3内への当てはまりが良いと、作業員W1はハウスH3で作業していたと判断され易い。また、その作業時間がハウスH3の領域へ入った時刻と出た時刻で判断された場合、実際の作業時間とは異なってしまう。
【0102】
しかしながら、作業記録システム1000が適用された場合、測定軌跡1bによれば、ハウスH3の入り口の人感センサS3が人を検知するはずであるが、センサ検知情報134に、その時刻の人感センサS3による検知時刻の記録がない、又は、1回の記録があるだけなどにより、作業員W1がハウスH3で作業していたとは判断されない。
【0103】
作業記録システム1000では、ハウスH1の入り口に設置された人感センサS1が、正しい軌跡1aで示されるように作業員W1の入室時及び退室時で人を2回検知する。センサ検知情報134に、人感センサS1によるその2回の検知時刻の記録が存在する。
【0104】
作業記録システム1000では、正しい軌跡1aに基づいた人感センサS1による検知時刻と、GPS誤差7gを含む測定軌跡1bとから、入退室を検知したハウスに対するGPS誤差7gを考慮した近傍範囲A及び検出範囲Bを用いてハウスを特定し、また、特定したハウス内での作業時間を決定することができる。
【0105】
上述により、ハウス等のGPS誤差7gより幅の狭い特定領域であっても、更に、そのような特定領域が隣接した配置であっても、作業員が作業している特定領域を精度良く特定し、また、作業時間を適切に決定することができる。従って、特定した特定領域内での作業時間を、その作業員の作業履歴として自動記録可能となる。
【0106】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0107】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定する手段と、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断する手段と、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する手段と
を有することを特徴とする作業記録システム。
(付記2)
前記判断する手段は、前記第一の範囲内に前記検知対象がいたと判断された前記2つの検知時刻の組合せのうち、検知時刻の近い順に該検知時刻間の前記検知対象の軌跡が前記第二の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする付記1記載の作業記録システム。
(付記3)
データベースを格納する記憶領域を有し、
前記検知対象が所持するGPS機能付き携帯端末からGPSが測定した検知対象の位置を示す位置情報を該検知対象毎に前記データベースに記録する手段と、
前記センサによる検知時刻を該センサ毎に前記データベースに記録する手段とを有し、
前記特定する手段と前記判断する手段とは、前記データベースに記録された前記検知時刻と前記位置情報とを参照する
ことを特徴とする付記1又は2記載の作業記録システム。
(付記4)
前記データベースに記録されている位置情報内の、前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間の該検知対象の軌跡を示す前記位置情報を無効にする手段を有することを特徴とする付記3記載の作業記録システム。
(付記5)
作業記録サーバとしてコンンピュータを機能させるためのプログラムであって、該コンピュータに、
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定し、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断し、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
(付記6)
作業記録サーバとしてコンンピュータを機能させるためのプログラムを格納した記憶媒体であって、該コンピュータに、
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定し、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断し、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録させるためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体。
(付記7)
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定する手段と、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断する手段と、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する手段と
を有することを特徴とする作業記録システム。
(付記8)
コンピュータが、
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定し、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断し、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する作業記録方法。
【符号の説明】
【0108】
1a 正しい軌跡
1b 測定軌跡
1z GPS誤差範囲
2 インターネット
3 携帯電話基地局
4 作業員端末
4a 制御部
4b GPS受信部
4c 無線通信部
4d 作業員ID保持部
4e メモリ
5 人感センサ
5a 制御部
5b センサ
5c 通信部
5d センサID保持部
5e メモリ
5f タイマ
6a、6b 位置
7g GPS誤差
11 CPU
12 メモリユニット
13 表示ユニット
14 出力ユニット
15 入力ユニット
16 通信ユニット
17 記憶装置
18 ドライバ
19 記憶媒体
100 サーバ装置
111 表示処理部
112 入出力処理部
113 通信制御部
114 インストーラ
121 初期設定部
122 GPS情報記録部
123 センサ情報記録部
124 ハウス特定部
130 データベース
131 ハウス位置情報
132 センサ設置位置情報
133 作業員位置情報
134 センサ検知情報
135 入退室表
1000 作業記録システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報より該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定する手段と、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断する手段と、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録する手段と
を有することを特徴とする作業記録システム。
【請求項2】
前記判断する手段は、前記第一の範囲内に前記検知対象がいたと判断された前記2つの検知時刻の組合せのうち、検知時刻の近い順に該検知時刻間の前記検知対象の軌跡が前記第二の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の作業記録サーバ。
【請求項3】
データベースを格納する記憶領域を有し、
前記検知対象が所持するGPS機能付き携帯端末からGPSが測定した検知対象の位置を示す位置情報を該検知対象毎に前記データベースに記録する手段と、
前記センサによる検知時刻を該センサ毎に前記データベースに記録する手段とを有し、
前記特定する手段と前記判断する手段とは、前記データベースに記録された前記検知時刻と前記位置情報とを参照する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作業記録システム。
【請求項4】
前記データベースに記録されている位置情報内の、前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間の該検知対象の軌跡を示す前記位置情報を無効にする手段を有することを特徴とする請求項3記載の作業記録システム。
【請求項5】
作業記録システムとしてコンンピュータを機能させるためのプログラムであって、該コンピュータに、
特定領域に設置されたセンサが人の入退室を検知した複数の検知時刻において、検知対象の位置を示す位置情報から該センサから第一の範囲内にいる検知対象を特定し、
2つの検知時刻間の前記特定された検知対象の前記位置情報に基づく軌跡が、前記特定領域に対して定義される第二の範囲内である場合、該検知対象が該特定領域で作業していたと判断し、
前記複数の検知時刻のうち前記検知対象が作業していたと判断した検知時刻間に対応させて前記特定領域の識別名を記憶領域に記録させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−114519(P2012−114519A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259516(P2010−259516)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】