説明

作業負荷平準化装置および作業負荷平準化方法

【課題】作業負荷を平準化した製造工程の日程を、設計日程に影響を及ぼすことなく決定する処理の所要時間を短縮し、迅速な生産計画の立案を可能にする。
【解決手段】作業負荷平準化装置1000は、各工程の作業負荷および能力をそれぞれ計算する負荷計算部210および能力計算部220と、各工程のうち作業負荷が能力を超過する量が最大となるネック工程を特定するネック工程特定部230と、ネック工程に対して山積みされた各作業対象の負荷を山崩しするネック工程山崩し部240と、ネック工程山崩し部240によるネック工程の期限日の変更に伴い、そのネック工程に先行する非ネック工程の期限日を、初工程側から順に、当該非ネック工程の負荷がその能力以下となり、かつ、その期限日が当該非ネック工程の最長リードタイムと最短リードタイムの範囲内に含まれるように決定する非ネック工程日程変更部250と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備など受注設計・生産される製品の生産管理に好適な作業負荷平準化装置および作業負荷平準化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受注を受けてから設計・生産する製品では、その製品ごとに設計・製造の各工程の作業日程を定め、その作業日程に従って、製品の設計・生産が進められる。この作業日程の立案に際しては、通常、週次や月次など所定の日数ごとに現場の設計能力、生産能力、作業負荷が計算され、各工程の負荷が能力を超えないように、作業日程が定められる。このとき、負荷が能力を超える工程(以下、ネック工程という)が生じる場合には、作業日程を変更しながら作業負荷の平準化が図られる。
【0003】
このような作業負荷の平準化を行うと、ネック工程の作業日程の変更のために、その前後の工程の日程の間隔が短くなったり、長くなったりする可能性がある。そして、次工程の待ち時間や仕掛かり在庫が増大したり、製品の製造遅延が生じたり、さらには、製品品質の劣化を招くような事態も生じる。
【0004】
特許文献1には、ネック工程の日程変更後に非ネック工程の日程変更を行う生産管理システムの例が開示されている。その生産管理システムでは、各工程に対し、最長リードタイム、最短リードタイム、標準リードタイムの3つのリードタイムが設定されており、ネック工程の作業日程の変更に際しては、各工程の作業日程がこれら最長と最短のリードタイムの範囲内に収まり、かつ、各工程の作業負荷が能力を超過しないように、各工程の作業日程が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−30200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、受注設計・生産される製品では、製品設計着手後に製品の納期や設計仕様が変更されたり、設計作業の遅延が生じたりするケースは、頻繁に発生する。そのような場合には、生産現場においても作業日程が変更され、各工程の負荷が変動し、その結果、負荷が能力を超過する工程も現れる。そこで、工程管理者には、製品の設計作業が進行している時点でも、適宜、作業負荷平準化を実施することが求められる。
【0007】
特許文献1に開示された作業負荷平準化の方法によれば、負荷が能力を超過するネック工程が存在する場合、ネック工程の負荷の山崩し処理により、ネック工程日程は、その負荷が小さくなるように変更される。さらに、そのネック工程の山崩し処理により、ネック工程前後の非ネック工程のリードタイムが設定した最短リードタイムより短くなる場合、または、最長リードタイムより長くなる場合には、その非ネック工程の日程は、最短リードタイム以上、かつ、最長リードタイム以下となる範囲で、しかも、装置などの着工タイミングの日程に合致するように前倒しまたは後倒しされる。
【0008】
すなわち、非ネック工程の日程は、ネック工程から上流または下流に向かって、逐次的に、その非ネック工程のリードタイムが最短リードタイムと最長リードタイムとの間で装置などの着工タイミングが合致する日程を選択しながら決定される。
【0009】
従って、この作業負荷平準化の方法では、ネック工程から上流に向かって非ネック工程の日程を変更する場合には、その非ネック工程の日程を着工タイミングなどの条件を満たすように決定する必要があるため、その日程変更に時間が掛かることになる。そのため、この方法では、生産計画の立案に時間が掛かることになる。とくに、もともと作業負荷と能力に大幅な差があり、人手による調整を加味して作業負荷平準化をシミュレーションするプロセスを繰り返して生産計画を立案するような場合などには、迅速な計画立案が困難となる。
【0010】
本発明は、以上に説明した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、迅速な生産計画の立案が可能となる作業負荷平準化装置および作業負荷平準化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る作業負荷平準化装置は、複数の工程からなる製造工程の各工程の作業負荷を各工程の能力に応じて平準化する作業負荷平準化装置であって、各工程についての生産期限データと生産能力データと作業物量データとリードタイムデータとを含む入力データの入力を受付ける入力受付部と、各工程の作業の負荷を計算する負荷計算部と、各工程の作業の能力を計算する能力計算部と、工程ごとに作業の負荷と能力とを比較して、作業の負荷が能力を超過する量が最大となる工程をネック工程と特定するネック工程特定部と、そのネック工程に対して山積みされた各作業対象の負荷のうち、一部の作業対象の生産期限データの期限日を変更して、当該ネック工程の作業負荷を削減する山崩し処理を行うネック工程山崩し部と、その山崩し処理による前記ネック工程の期限日の変更に伴い、ネック工程に先行する非ネック工程の期限日を、初工程側から順に、当該非ネック工程の負荷がその非ネック工程の能力以下となり、かつ、当該期限日が当該非ネック工程の最長リードタイムと最短リードタイムの範囲内に含まれるように決定する非ネック工程日程変更部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る作業負荷平準化装置において、前記非ネック工程日程変更部は、前記各工程の最長リードタイムから最短リードタイムを差し引いた日数である余裕日数と、当該工程の余裕日数から当該工程の1つ前の工程の余裕日数を差し引いた日数である消費可能日数とを用いて、当該工程で前記期限日の前倒しが可能な日数である残調整日数を算出し、前記算出した残調整日数に基づき、前記非ネック工程の期限日を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、迅速な生産計画の立案が可能となる作業負荷平準化装置および作業負荷平準化方法を提供することにある。
【0014】
本発明によれば、ネック工程の作業負荷平準化後の非ネック工程の日程決定に要する時間を短縮することが可能となるため、迅速な生産計画の立案が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る作業負荷平準化装置の構成の例を示した図。
【図2】生産期限データのデータ構造の例を示した図。
【図3】生産能力データのデータ構造の例を示した図。
【図4】作業物量データのデータ構造の例を示した図。
【図5】リードタイムデータのデータ構造の例、および、最長リードタイムおよび最短リードタイムの具体例を示した図。
【図6】作業負荷平準化処理部における作業負荷平準化処理の処理フローの例を示した図。
【図7】負荷計算部の処理よって生成される時期別負荷状況データのデータ構造の例を示した図。
【図8】ネック工程特定部の処理によって生成される負荷vs能力比較表のデータ構造の例を示した図。
【図9】ネック工程山崩し部によるネック工程山崩し処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図10】図9の山崩し処理で用いられる山積み作業対象リストの例を示した図。
【図11】非ネック工程日程変更部による非ネック工程日程変更処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図12】図11の非ネック工程日程変更処理において、各作業対象に対する非ネック工程の期日変更処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図13】非ネック工程の期日を前倒しする処理の計算過程の例を模式的に示した図。
【図14】ネック工程山崩し処理および非ネック工程日程変更処理によって生成され、結果出力部に表示される「工程日程変更一覧」画面の例を示した図。
【図15】図14の「工程日程変更一覧」画面において「日程変更状況図示」ボタンが押下されたときに結果出力部に表示される「日程変更状況図示」画面の例を示した図。
【図16】図14の「工程日程変更一覧」画面において「負荷推移状況表示」ボタンが押下されたときに結果出力部に表示される「負荷推移状況表示」画面の例を示した図。
【図17】図14の「工程日程変更一覧」画面において「負荷推移状況表示」ボタンが押下されたときに結果出力部に表示されるグラフ形式の「負荷推移状況表示」画面の例を示した図。
【図18】能力調整が必要であることを通知する「要能力調整通知」画面の例を示した図。
【図19】実施形態の第1の変形例において入力されるリードタイムデータの例を示した図。
【図20】実施形態の第1の変形例において、負荷超過合計時間を算出する過程の例を示した図。
【図21】実施形態の第1の変形例において、各工程の余裕日数および最短リードタイムを算出する過程の例を示した図。
【図22】実施形態の第2の変形例における作業負荷平準化処理の処理フローの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る作業負荷平準化装置1000の構成の例を示した図である。作業負荷平準化装置1000は、図1に示すように、入力受付部100と、作業負荷平準化処理部200と、結果出力部300と、を含んで構成され、パーソナルコンピュータやワークステーションなど一般的なコンピュータによって実現される。
【0018】
ここで、作業負荷平準化処理部200は、負荷計算部210、能力計算部220、ネック工程特定部230、ネック工程山崩し部240、非ネック工程日程変更部250などの機能ブロックを含んで構成される。また、作業負荷平準化処理部200は、ハードウエア的には、図示しない演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、図示しない記憶装置(半導体メモリ、ハードディスク装置など)を含んで構成され、前記の機能ブロックの諸機能は、前記の演算処理装置が前記の記憶装置に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0019】
また、入力受付部100は、外部からの様々な入力データ(生産期限データ110、生産能力データ120、作業物量データ130、リードタイムデータ140など)の入力を受付け、その受付けた入力データを作業負荷平準化処理部200の図示しない記憶装置に格納する。なお、入力受付部100は、一般的には、キーボードやマウスなどの入力装置によって構成されるが、LAN(Local Area Network)などの通信インタフェース装置や、USB(Universal Serial Bus)などの入出力ポートなどを含んで構成されてもよい。
【0020】
また、結果出力部300は、作業負荷平準化処理部200によって生成され、平準化された各工程の日程、負荷、能力などのデータを表示する装置であり、一般的には、LCD(Liquid Crystal Display)やプリンタなどによって構成されるが、LANなどの通信インタフェース装置や、USBなどの入出力ポートを含んで構成されてもよい。
【0021】
図2は、生産期限データ110のデータ構造の例を示した図である。生産期限データ110は、所定の作業対象に対して各工程の作業を実施する期限を設定したデータであり、そのデータフィールドとして「作業対象111」、「工程112」、「期日113」などを有する。ここで、「工程112」には、設計日程の完了と製造日程の開始である出図工程を初工程としたとき、出図工程に後続する製造工程の各工程の名称が設定されている。また、「作業対象111」には、当該工程(「工程112」で指定される工程)で作業の対象となる部品の名称などが格納されている。また、「期日113」には、当該工程の当該当該作業対象(「作業対象111」で指定される作業対象)に対する作業を完了させる期限日が設定されている。
【0022】
図3は、生産能力データ120のデータ構造の例を示した図である。生産能力データ120は、所定の期間(例えば、1週間)ごとの生産能力を作業投入可能時間として設定したデータであり、そのデータフィールドとして「集計日121」、「工程122」、「能力123」などを有する。本実施形態では、各「工程122」の「能力123」のデータは、1週ごとに集計されるものとする。そして、この「能力123」のデータは、「工程122」の作業に従事する作業員数やその作業に必要な装置数などに基づき、能力計算部220によって算出される。
【0023】
図4は、作業物量データ130のデータ構造の例を示した図である。作業物量データ130は、各作業対象の各工程の作業で必要となる作業物量や作業所要時間を設定したデータであり、そのデータフィールドとして「作業対象131」、「工程132」、「作業物量133」、「作業所要時間134」などを有する。
【0024】
図5は、(a)リードタイムデータ140のデータ構造の例、ならびに、(b)最長リードタイムおよび最短リードタイムの具体例を示した図である。リードタイムデータ140は、初工程から当該工程完了までの日数を表すデータであり、そのデータフィールドとして「工程141」、「最長リードタイム142」、「最短リードタイム143」を有する。すなわち、本実施形態では、各工程に対し、最長リードタイムと最短リードタイムとが設定されており、また、各工程の日程は、最短リードタイムよりも長く、最長リードタイムよりも短くなるように設定されることが求められる。
【0025】
図6は、作業負荷平準化処理部200における作業負荷平準化処理の処理フローの例を示した図である。作業負荷平準化処理部200は、入力受付部100を介して入力される生産期限データ110、生産能力データ120、作業物量データ130、リードタイムデータ140などのデータを用いて各工程の作業負荷が平準化された生産計画日程を生成する。
【0026】
作業負荷平準化処理部200の図示しない演算処理装置(以下、単に、演算処理装置という)は、ステップS10以下の作業負荷平準化処理を開始するに当たって、まず、入力受付部100を介して外部から入力される生産期限データ110、生産能力データ120、作業物量データ130、リードタイムデータ140などの入力データを入力し、図示しない記憶装置に格納する。
【0027】
演算処理装置は、作業負荷平準化処理を開始すると、まず、負荷計算部210による負荷計算処理を実行する(ステップS10)。すなわち、演算処理装置は、生産期限データ110と作業物量データ130とに基づき、所定の期間の集計日ごとに各工程の負荷を作業所要時間として算出し、図7に示す時期別負荷状況データ150を生成する。そして、その生成した時期別負荷状況データ150を作業負荷平準化処理部200の図示しない記憶装置に格納する。
【0028】
図7は、負荷計算部210の処理によって生成される時期別負荷状況データ150のデータ構造の例を示した図である。図7に示すように、時期別負荷状況データ150は、データフィールドとして、「集計日151」、「工程152」、「負荷153」などを有する。なお、本実施形態では、「集計日151」は、1週間隔の日付となっている。従って、「負荷153」には、「集計日151」が含まれる週における「工程152」での作業所要時間を集計したデータが格納される。
【0029】
すなわち、演算処理装置は、生産期限データ110の「工程112」に含まれる各工程名について、その工程名(例えば、工程X)を有し、かつ、「期日113」の日付が時期別負荷状況データ150の「集計日151」の週(例えば、2010/03/12)に相当するレコードをすべて抽出し、さらに、その抽出したレコードの「作業対象111」から作業対象(例えば、部品A、部品B)を抽出する。
【0030】
続いて、演算処理装置は、作業物量データ130を参照し、その「作業対象131」が前記抽出した作業対象と一致するレコードを抽出する。そして、その抽出したレコードに含まれる「作業所要時間134」を合計して、時期別負荷状況データ150における当該「集計日151」(例えば、2010/03/12)の当該「工程152」(例えば、工程X)に対する「負荷153」とする。
【0031】
図6の説明に戻ると、演算処理装置は、次に、ネック工程特定部230によるネック工程特定処理を実行する(ステップS20)。すなわち、演算処理装置は、ステップS10で生成した時期別負荷状況データ150の「負荷153」と生産能力データ120の「能力123」とを比較し、「能力123」に対する「負荷153」の超過が最も大きい工程を特定する。
【0032】
具体的には、演算処理装置は、集計日および工程をキーとして、時期別負荷状況データ150と生産能力データ120とを結合して、図8に示す負荷vs能力比較表160を生成し、生成した負荷vs能力比較表160を作業負荷平準化処理部200の図示しない記憶装置に格納する。
【0033】
図8は、ネック工程特定部230の処理によって生成される負荷vs能力比較表160のデータ構造の例を示した図である。図8に示すように、負荷vs能力比較表160は、データフィールドとして「集計日161」、「工程162」、「負荷163」、「能力164」などを有する。ここで、「負荷163」は、時期別負荷状況データ150の「負荷153」をコピーしたものであり、「能力164」は、生産能力データ120の「能力123」をコピーしたものである。
【0034】
そこで、演算処理装置は、能力負荷比較表160において「負荷163」と「能力164」とを比較し、「負荷163」が「能力164」を超過している超過量を工程ごとに合計し、その合計した超過量が最も大きい工程をネック工程と特定する。
【0035】
再度、図6の説明に戻ると、演算処理装置は、次に、ネック工程山崩し部240によるネック工程山崩し処理を実行する(ステップS30)。すなわち、演算処理装置は、ステップS20で特定したネック工程について負荷が能力を超過した状態を、生産期限データ110の「期日113」を変更することにより解消する。
【0036】
次に、演算処理装置は、非ネック工程日程変更部250により、非ネック工程日程変更処理を実行する(ステップS40)。すなわち、演算処理装置は、ステップS20で作業日程を変更したネック工程の作業対象について、ネック工程以外の工程の日程を変更する処理を行う。
【0037】
次に、演算処理装置は、すべてのネック工程について山崩し処理を終了したか否かを判定し(ステップS50)、終了していない場合には(ステップS50でNo)、ステップS30へ戻って、ステップS30以下の処理を再度実行する。また、すべてのネック工程について山崩し処理が終了した場合には(ステップS50でYes)、演算処理装置は、日程変更結果表示処理を実行して(ステップS60)、当該作業負荷平準化処理を終了する。
【0038】
なお、以上の処理のうち、ネック工程山崩し処理(ステップS30)の詳細な処理フローのついては、別途、図9および図10を用いて説明する。また、非ネック工程日程変更処理(ステップS40)の詳細な処理フローのついては、別途、図11〜図13を用いて説明する。
【0039】
図9は、ネック工程山崩し部240によるネック工程山崩し処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図9に示すように、演算処理装置は、まず、図8に示した負荷vs能力比較表160を参照して、処理対象のネック工程の「集計日161」のうち最も遅い日を評価対象週にセットし(ステップS310)、評価対象週の「負荷163」が「能力164」を超過しているか否か判定する(ステップS320)。
【0040】
その判定の結果、評価対象週の「負荷163」が「能力164」を超過している場合には(ステップS320でYes)、演算処理装置は、山崩し可能な作業対象を選択して、その期日を1週前の期日にセットする(ステップS330)、すなわち、生産期限データ110の「期日113」を1週前倒しする。ここで、前倒し可能な作業対象は、当該作業対象の山崩し前の期日と山崩し後の期日との日数の差が、ネック工程の最長リードタイム142と最短リードタイム143との差以下であるものとする。また、本実施形態では、山崩し可能な作業対象を選択する優先順位を、(1)前倒しした日数が小さい順、(2)同じ前倒し日数の場合には、「負荷163」が大きい順、とするが、これに限定されるものではない。
【0041】
次に、演算処理装置は、ステップS330までの山崩し処理の結果に基づき、「負荷163」を再計算し(ステップS340)、負荷vs能力比較表160を更新する。
【0042】
一方、ステップS320の判定の結果、「負荷163」が「能力164」を超過していなかった場合には(ステップS320でNo)、演算処理装置は、ステップS330およびS340の処理をスキップする。
【0043】
次に、演算処理装置は、最初の週を評価対象週として山崩し処理をした(ステップS320〜S340を処理した)か否かを判定し(ステップS350)、処理済でなかった場合には(ステップS350でNo)、評価対象週を1週前にセット(1週前倒し)した上で(ステップS350)、ステップS320へ戻り、ステップS320以下の処理を、再度、実行する。また、最初の週を評価対象週として処理済であった場合には(ステップS350でYes)、当該ネック工程山崩し処理を終了する。
【0044】
続いて、図10を参照しながら、図9に示したネック工程山崩し処理におけるステップS330およびS340の処理(以下、これらのステップの処理を、単に、山崩し処理という)の具体例について説明する。ここで、図10は、図9の山崩し処理で用いられる山積み作業対象リスト170の例を示した図で、(a)は、ステップS330処理前の山積み作業対象リスト170の例、(b)は、ステップS330処理後の山積み作業対象リスト170の例である。この山積み作業対象リスト170は、作業負荷平準化処理部200の図示しない記憶装置に記憶される。
【0045】
図10(a),(b)に示すように、山積み作業対象リスト170は、「作業対象171」、「山崩し可否172」、「山崩し候補173」、「作業負荷174」、「山崩し前の期日175」、「山崩し後の期日176」を有する。なお、ここでいう「山崩し前の期日175」は、図9のネック工程山崩し処理を開始する前に清算期限データに設定されていた「期日113」であり、「山崩し後の期日176」は、ステップS330およびS340処理後に得られる期日をいう。
【0046】
図10(a)によれば、2010年4月2日の、例えば、工程Zの作業負荷の合計は、「山崩し後の期日176」の値が「2010/04/02」であるレコードの「作業負荷174」の値を合計した値であり、この例では、「90(時間)」である。一方、2010年4月2日の週の能力は、図8に示した負荷vs能力比較表160の「能力164」の値から「50(時間)」が得られる(ただし、図8の工程Xを工程Zと読み替える)。
【0047】
演算処理装置は、ステップS330の処理では、まず、山崩し可能な作業対象を特定する。図10(a)の例では、部品Cが山崩し不可能、それ以外の部品が山崩し可能と特定される。そこで、演算処理装置は、図10(b)に示すように、その山崩し可否の情報を「山崩し可否172」のデータフィールドに記録する。なお、部品Cが山崩し不可能となるのは、図10(a)において「山崩し前の期日175」と「山崩し後の期日176」との差が28日であり、一週間さらに前倒しした場合、その差が35日となり、工程Zの最長リードタイムと最短リードタイムの差30日を超えるためである。
【0048】
また、ステップS330の処理では、山崩し可能な作業対象のうち、作業負荷が大きい順に、作業負荷の合計が作業能力「50(時間)」を下回るまで順番に山崩し対象として選択し、その選択した山崩し可能な作業対象の「山崩し後の期日176」を2010年4月2日の1週前に設定している。なお、前倒しの期間を1週間としているのは、負荷計算処理(図6、ステップS10参照)を、例えば、1週単位で行っていることによるもので、前倒しの期間が1週間に限定されるわけではない。
【0049】
また、図10(b)では、「山崩し候補173」のデータフィールドに「対象」の値が記録されたものを山崩し対象として選択している。その結果、2010年4月2日の工程Zで山積みされた作業対象のうち、「山崩し後の期日176」の値が「2010/04/02」となっているのは、「部品C」、「部品E」、「部品F」のみとなり、2010年4月2日の工程Zの作業負荷は、「部品C」、「部品E」、「部品F」のそれぞれの「作業負荷174」を合計して得られる45時間となり、能力の50時間を下回る。
【0050】
図11は、非ネック工程日程変更部250による非ネック工程日程変更処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図11に示すように、演算処理装置は、生産期限データ110に含まれるすべての作業対象について、作業対象を指定しつつ、繰り返し処理終了(ステップS450)までの繰り返し処理を開始する(ステップS410)。
【0051】
演算処理装置は、まず、指定された作業対象について、その作業対象の期日(生産期限データ110の当該非ネック工程の当該作業対象に対する「期日113」)が、直前に実行されたネック工程山崩し処理(図9、ステップS30)で変更されたか否かを判定する(ステップS420)。
【0052】
そして、その判定の結果、当該作業対象の期日が変更されていた場合には(ステップS420でYes)、演算処理装置は、当該作業対象の非ネック工程の前倒し日数を計算し、その非ネック工程の期日(生産期限データ110の非ネック工程の当該作業対象に対する「期日113」)を、その計算した前倒し日数分前の期日に変更する(ステップS430)。次に、演算処理装置は、その期日の変更に合わせて当該作業対象の集計日を変更し、非ネック工程の負荷を再計算し(ステップS440)、再計算した負荷を、時期別負荷状況データ150の「負荷153」のデータフィールドに再設定する。
【0053】
また、ステップS420の判定で、当該作業対象の期日が変更されていなかった場合には(ステップS420でNo)、演算処理装置は、ステップS430およびS440の処理をスキップする。
【0054】
次に、演算処理装置は、すべての作業対象についてステップS420以下の処理を実行したか否かを判定し、すべての作業対象について実行していない場合には、その実行していない作業対象についてステップS420以下の処理を再度実行し、また、すべての作業対象について実行していた場合には、当該非ネック工程日程変更処理を終了する(ステップS450)。
【0055】
図12は、図11の非ネック工程日程変更処理において、各作業対象に対する非ネック工程の期日変更処理(ステップS430)の詳細な処理フローの例を示した図である。図12に示すように、演算処理装置は、まず、ネック工程山崩し処理で得られた前倒し日数Dを、残調整日数Rにセットする(ステップS431)。
【0056】
次に、演算処理装置は、前倒し日数計算の対象となる日程変更工程として、出図工程の次の工程を設定し(ステップS432)、当該日程変更工程の余裕日数Sおよび消費可能日数Cを算出する(ステップS433)。ここで、余裕日数Sとは、当該工程の「最長リードタイム142」から「最短リードタイム143」を差し引いた日数をいい、消費可能日数Cとは、当該工程の余裕日数から、当該工程の1つ前の工程の余裕日数を差し引いた日数をいう。
【0057】
次に、演算処理装置は、残調整日数Rが当該工程の消費可能日数C以下であるか否かを判定し(ステップS434)、残調整日数Rが消費可能日数Cより大きい場合には(ステップS434でYes)、日程変更工程の期日を消費可能日数Cの日数分前倒しし(ステップS435)、残調整日数Rを、そのときの残調整日数Rから消費可能日数Cを減じた日数(すなわち、R−C)によって更新する(ステップS436)。さらに、演算処理装置は、日程変更工程として当該工程の次の工程を設定し(ステップS437)、ステップS433に戻り、ステップS433以下の処理を繰り返し実行する。
【0058】
一方、ステップS434の判定で、残調整日数Rが消費可能日数C以下であった場合には(ステップS434でNo)、日程変更工程の期日を、残調整日数Rに当該工程の前の工程の前倒し日数を加算して得られる日数分前倒しし(ステップS438)、図12の非ネック工程の期日変更処理を終了する。
【0059】
図13は、非ネック工程の期日を前倒しする処理の計算過程の例を模式的に示した図である。図13(a)には、日程変更前の各工程の期日、および、ネック工程山崩し処理により変更されたネック工程(工程Z)の期日が示されている。すなわち、この例では、ネック工程(工程Z)の期日は、9月9日から8月25日に前倒しされている。この例の場合、図12のステップS431の処理では、残調整日数Rには、ネック工程の前倒し日数Dである15日がセットされる。
【0060】
次に、図13(b)には、図12のステップS432〜S435の処理によって、出図の次の工程である工程Xの期日が6月1日から5月22日に前倒しされる例が示されている。
【0061】
この例の場合、ステップS432で、日程変更工程として、出図の次工程である工程Xがセットされる。また、ステップS433では、工程Xの余裕日数Sとして、工程Xの最長リードタイム50日と最短リードタイム40日との差10日がセットされ、消費可能日数Cとして、工程Xの余裕日数10日から工程Xの前工程である出図の余裕日数0日を引いた10日がセットされる。さらに、ステップS434では、残調整日数Rの15日が工程Xの消費可能日数Cの10日より大きいので、ステップS435が実行され、工程Xの期日は、工程Xの消費可能日数Cの10日、前倒しされる。
【0062】
次に、図13(c)には、図12のステップS436、S437,S433,S434,S438の処理によって、工程Yの期日が7月21日から7月6日に前倒しされる例が示されている。
【0063】
この例の場合、ステップS436で、残調整日数Rが15日から消費可能日数Cの10日が差し引かれ、新たな残調整日数Rは、5日となる。また、ステップS437では、日程変更工程に、工程Yがセットされ、ステップS433では、工程Yの余裕日数Sとして、20日がセットされ、消費可能日数Cとして、工程Yの余裕日数20日から工程Xの余裕日数10日を差し引いた10日がセットされる。さらに、ステップS434では、残調整日数Rの5日が工程Yの消費可能日数Cの10日より小さいので、ステップS438が実行され、日程変更工程である工程Yの期日は、残調整日数Rの5日に1つ前の工程(工程X)の前倒し日数の10日を加算して得られる15日分前倒しされる。
【0064】
図14は、ネック工程山崩し処理および非ネック工程日程変更処理によって生成され、結果出力部300に表示される「工程日程変更一覧」画面310の例を示した図である。図14に示すように、「工程日程変更一覧」画面310には、各工程、各作業対象について、「変更前日程」、「変更後日程」、「日程差」および「余裕日数」の各データが表示されるとともに、表示内容切り替えなどのためのボタンとして、例えば、「日程変更状況図示」ボタン311、「負荷推移状況表示」ボタン312が表示される。
【0065】
図15は、図14の「工程日程変更一覧」画面310において「日程変更状況図示」ボタン311が押下されたときに結果出力部300に表示される「日程変更状況図示」画面310aの例を示した図である。図15に示すように、「日程変更状況図示」画面310aには、各工程の変更前と変更後の日程の変更状況が図示されるとともに、各工程の余裕日数および前倒し日数が併せて表示される。なお、図15では、作業対象が部品Bの日程変更状況しか表示されていないが、すべての作業対象の日程変更状況を表示するようにしてもよく、また、ユーザによって適宜選択された複数の作業対象の日程変更状況を表示するようにしてもよい。
【0066】
図16は、図14の「工程日程変更一覧」画面310において「負荷推移状況表示」ボタン312が押下されたときに結果出力部300に表示される「負荷推移状況表示」画面310bの例を示した図である。
図16に示すように、「負荷推移状況表示」画面310bには、ネック工程またはユーザが指定する工程について、各集計日ごとに「平準化処理前作業負荷」、「平準化処理後作業負荷」、「能力」が表示される。さらに、作業負荷平準化処理の効果を示す指標として、各集計日における負荷と能力の偏差(差の絶対値)の合計が表示される。
【0067】
図17は、図14の「工程日程変更一覧」画面310において「負荷推移状況表示」ボタン312が押下されたときに結果出力部300に表示されるグラフ形式の「負荷推移状況表示」画面310cの例を示した図である。
図17に示すように、「負荷推移状況表示」画面310cには、作業負荷平準化処理前後の集計日ごとの作業負荷および工程の能力の推移がグラフで表示されるので、作業負荷平準化処理の効果が一目で分かるようになる。
【0068】
なお、本実施形態の場合、その作業負荷平準化処理(図6参照)を実行したとき、負荷が能力を超過する工程や時期が残存する可能性を全く否定することはできない。そこで、本実施形態では、作業負荷平準化処理を実行に負荷が能力を超過する工程、時期が残存していた場合には、負荷が能力を超過する工程、時期をユーザに提示し、その工程、時期に対して、何らかの能力調整が必要であることを通知する。
【0069】
図18は、能力調整が必要であることを通知する「要能力調整通知」画面310dの例を示した図である。図18に示すように、「要能力調整通知」画面310dでは、集計日が「2010/03/26」である「工程Y」の負荷は、90時間であり、その能力80時間を上回っている。このような場合、そのデータをハイライトして表示したり、表示色を周囲と異なる色にしたりして、ユーザに注意を促す。また、能力調整が必要なことを通知するメッセージを表示してもよく、さらには、その能力調整に必要な調整後の能力を表示するようにしてもよい。
【0070】
以上、本実施形態によれば、ネック工程の作業負荷平準化後の非ネック工程の日程決定に要する時間を短縮することが可能となり、その結果、迅速な生産計画の立案が可能となる。とくに、作業負荷と能力の乖離が大きい場合などには、その作業負荷と能力の乖離の調整を、人手による調整を加えながら繰り返して行うことが可能となるので、より適正な生産計画立案が可能となる。
【0071】
また、本実施形態によれば、設計日程を変更せずに作業負荷を平準化することが可能となる。その結果、すでに設計が進捗している作業対象の日程圧迫を抑止することができ、また、設計部門と製造部門との間での日程調整の手間を省くことが可能となる。なお、本実施形態では、出図日を変更できない初工程としたが、これに限らず、部品の着荷日や作業着手可能日などを、日程変更できない初工程とし、後続する工程の負荷の山崩しを本実施形態と同様の方法で作業負荷の平準化をすることも可能である。
【0072】
(実施形態の第1の変形例)
以上、ここまでに説明した実施形態における作業負荷平準化装置1000では、各工程の最短リードタイムは、入力受付部100を介して外部から入力されるものとしているが、以下に説明する実施形態の第1の変形例では、作業負荷平準化装置1000は、各工程の負荷超過量を先に計算し、その後、その計算された負荷超過量に応じて各工程の最短リードタイムを設定する。
【0073】
図19は、実施形態の第1の変形例において入力されるリードタイムデータ140aの例を示した図である。
図19に示すように、実施形態の第1の変形例では、最短リードタイムは、終工程(E工程)のみ設定され、他の工程については設定されていない。ちなみに、リードタイムデータ140aでは、終工程(工程E)の最長リードタイムは200日、最短リードタイムは150日である。従って、終工程の余裕日数は50日である。
【0074】
この実施形態の第1の変形例において、作業負荷平準化処理部200の演算処理装置が実行する作業負荷平準化処理は、図6に示した作業負荷平準化処理とほぼ同じであるが、一部に相違があるので、ここでは、その相違する処理についてのみ説明する。
【0075】
図20は、実施形態の第1の変形例において、負荷超過合計時間を算出する過程の例を示した図である。
演算処理装置は、ネック工程特定処理(図6:ステップS20)により、図20(a)に示すような負荷vs能力比較表160を生成するが、そのとき、併せて、図20(b)に示すような各工程の負荷超過合計時間を算出する。負荷超過合計時間とは、負荷vs能力比較表160において、「工程162」に含まれる工程ごとに、各「集計日161」についての「負荷163」が「能力164」を超過する時間を合計した時間をいう。なお、図20(a)に示した負荷vs能力比較表160の例では、負荷vs能力のデータは、工程Xについてだけしか記載されていないが、実際には、工程Y、工程Z,工程Eについてのデータも存在するものとする。
【0076】
図21は、実施形態の第1の変形例において、各工程の余裕日数および最短リードタイムを算出する過程の例を示した図である。
演算処理装置は、図20(b)のように算出した各工程の負荷超過合計時間に基づき、図21(a)に示すような負荷超過合計時間データ180を生成する。ここで、負荷超過合計時間データ180は、データフィールドとして「工程181」、「負荷超過合計時間182」、「累積負荷超過合計時間183」を有している。なお、各工程の「累積負荷超過合計時間183」の値は、当該工程の「負荷超過合計時間182」の値に、当該工程に先行する工程の「負荷超過合計時間182」の値を累積した値である。
【0077】
次に、演算処理装置は、各工程の「余裕日数S」を「累積負荷超過合計時間183」の値に比例するように設定する。ここで、終工程である工程Eについては、余裕日数Sが与えられているので(図19参照)、演算処理装置は、余裕日数Sの「累積負荷超過合計時間183」の値に対する比(=50/1000)を算出することができる。従って、演算処理装置は、その比を用いて他の工程の余裕日数Sを算出する。
【0078】
次に、演算処理装置は、最長リードタイムから最短リードタイムを差し引いた日数という余裕日数Sの定義に基づき、各工程の最短リードタイムを算出する。
【0079】
以上のような手順に基づき、最短リードタイムおよび余裕日数Sを定めるようにすれば、負荷超過が大きい工程に対して、より大きい余裕日数を与えることが可能になる。この場合には、負荷超過が大きい工程の負荷超過解消が容易となるため、演算処理装置の計算量が減少し、作業負荷平準化処理の効率が向上する。
【0080】
(実施形態の変形例2)
図22は、実施形態の第2の変形例における作業負荷平準化処理の処理フローの例を示した図である。この実施形態の第2の変形例における作業負荷平準化処理の処理フローは、図6に示した作業負荷平準化処理の処理フローを、ネック工程特定処理(図6:ステップS20)で特定したネック工程だけでなく、すべての工程の負荷超過を解消するように変更したものである。
【0081】
従って、図22の処理フローでは、図6の処理フローにおけるネック工程特定処理(ステップS20)は削除されており、代りに、終工程をネック工程とする処理(ステップS20a)が追加されている。さらに、ネック工程を現ネック工程の1つ前の工程に設定する処理(ステップS51)およびネック工程が初工程であるか否かを判定する処理(ステップS52)が追加されている。
【0082】
すなわち、各工程の負荷超過は、終工程から初工程まで、工程の進行とは逆の順に解消されることになる。なお、この実施形態の第2の変形例の場合、非ネック工程日程変更処理(ステップS40)では、すでに山崩し処理を終了した工程については、日程変更をしないものとする。
【符号の説明】
【0083】
100 入力受付部
110 生産期限データ
120 生産能力データ
130 作業物量データ
140 リードタイムデータ
150 時期別負荷状況データ
160 負荷vs能力比較表
170 山積み作業対象リスト
180 負荷超過合計時間データ
200 作業負荷平準化処理部
210 負荷計算部
220 能力計算部
230 ネック工程特定部
240 ネック工程山崩し部
250 非ネック工程日程変更部
300 結果出力部
1000 作業負荷平準化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程からなる製造工程の各工程の作業の負荷を前記各工程の能力に応じて平準化する作業負荷平準化装置であって、
前記各工程における作業対象の作業を終了させる期限日を表す生産期限データと、前記各工程における作業可能な時間である能力を表す能力データと、前記各工程における作業対象の作業を行うのに必要な時間を表す作業物量データと、前記各工程についての最長リードタイムおよび最短リードタイムのデータからなるリードタイムデータと、を含む入力データの入力を受付ける入力受付部と、
前記生産期限データおよび前記作業物量データに基づき、あらかじめ定められた集計日ごとの前記各工程の作業の負荷を計算する負荷計算部と、
前記工程ごとに作業の負荷と能力とを比較して、作業の負荷が能力を超過する量が最大となる工程をネック工程と特定するネック工程特定部と、
前記ネック工程に対して山積みされた各作業対象の負荷のうち、一部の作業対象の期限日を変更して、当該ネック工程の作業の負荷を削減する山崩し処理を行うネック工程山崩し部と、
前記ネック工程山崩し部による前記ネック工程の前記作業対象の期限日の変更に伴い、前記作業対象の前記ネック工程に先行する非ネック工程の期限日を、初工程側から順に、前記非ネック工程の負荷がその非ネック工程の能力以下となり、かつ、当該期限日が当該非ネック工程の最長リードタイムと最短リードタイムの範囲内に含まれるように決定する非ネック工程日程変更部と、
前記ネック工程山崩し部および前記非ネック工程日程変更部によって変更された前記各工程の各作業対象の期限日および負荷のデータを出力する結果出力部と、
を備えること
を特徴とする作業負荷平準化装置。
【請求項2】
前記非ネック工程日程変更部は、
前記各工程の最長リードタイムから最短リードタイムを差し引いた日数である余裕日数と、当該工程の余裕日数から当該工程の1つ前の工程の余裕日数を差し引いた日数である消費可能日数とを用いて、当該工程で前記期限日の前倒しが可能な日数である残調整日数を算出し、前記算出した残調整日数に基づき、前記非ネック工程の期限日を変更すること
を特徴とする請求項1に記載の作業負荷平準化装置。
【請求項3】
前記入力受付部が受付ける最短リードタイムのうち、終工程を除く工程に対する最短リードタイムは、未設定のデータであり、
前記非ネック工程日程変更部は、
前記各工程で負荷が能力を超過する負荷超過合計時間の初工程からの累積時間である累積負荷超過合計時間に比例する日数を、当該工程の余裕日数として設定し、さらに、その余裕日数と当該工程の最長リードタイムとから当該工程の最短リードタイムを設定すること
を特徴とする請求項1に記載の作業負荷平準化装置。
【請求項4】
前記結果出力部は、
前記ネック工程山崩し部および前記非ネック工程日程変更部により変更された前記各工程の負荷が能力を超過する場合には、当該工程について能力調整が必要であることを通知するメッセージ、および、前記負荷が前記能力を超過しないように調整した能力のデータの少なくとも一方を出力すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の作業負荷平準化装置。
【請求項5】
演算処理装置と入力装置と出力装置とを備えたコンピュータにより、複数の工程からなる製造工程の各工程の作業の負荷を前記各工程の能力に応じて平準化する作業負荷平準化方法であって、
前記演算処理装置は、
前記入力装置を介して、前記各工程における作業対象の作業を終了させる期限日を表す生産期限データと、前記各工程における作業可能な時間である能力を表す能力データと、前記各工程における作業対象の作業を行うのに必要な時間を表す作業物量データと、前記各工程についての最長リードタイムおよび最短リードタイムのデータからなるリードタイムデータと、を含む入力データの入力を受付ける入力受付処理と、
前記生産期限データおよび前記作業物量データに基づき、あらかじめ定められた集計日ごとの前記各工程の作業の負荷を計算する負荷計算処理と、
前記工程ごとに作業の負荷と能力とを比較して、作業の負荷が能力を超過する量が最大となる工程をネック工程と特定するネック工程特定処理と、
前記ネック工程に対して山積みされた各作業対象の負荷のうち、一部の作業対象の期限日を変更して、当該ネック工程の作業の負荷を削減する山崩し処理を行うネック工程山崩し処理と、
前記ネック工程山崩し処理による前記ネック工程の前記作業対象の期限日の変更に伴い、前記作業対象の前記ネック工程に先行する非ネック工程の期限日を、初工程側から順に、前記非ネック工程の負荷がその非ネック工程の能力以下となり、かつ、当該期限日が当該非ネック工程の最長リードタイムと最短リードタイムの範囲内に含まれるように決定する非ネック工程日程変更処理と、
前記ネック工程山崩し処理および前記非ネック工程日程変更処理によって変更された前記各工程の各作業対象の期限日および負荷のデータを、前記出力装置に出力する結果出力処理と、
を実行すること
を特徴とする作業負荷平準化方法。
【請求項6】
前記演算処理装置は、
前記非ネック工程日程変更処理において、前記各工程の最長リードタイムから最短リードタイムを差し引いた日数である余裕日数と、当該工程の余裕日数から当該工程の1つ前の工程の余裕日数を差し引いた日数である消費可能日数とを用いて、当該工程で前記期限日の前倒しが可能な日数である残調整日数を算出し、前記算出した残調整日数に基づき、前記非ネック工程の期限日を変更すること
を特徴とする請求項5に記載の作業負荷平準化方法。
【請求項7】
前記入力受付で受付けられる最短リードタイムのうち、終工程を除く工程に対する最短リードタイムは、未設定のデータであり、
前記演算処理装置は、
前記非ネック工程日程変更処理において、前記各工程で負荷が能力を超過する負荷超過合計時間の初工程からの累積時間である累積負荷超過合計時間に比例する日数を、当該工程の余裕日数として設定し、さらに、その余裕日数と当該工程の最長リードタイムとから当該工程の最短リードタイムを設定すること
を特徴とする請求項5に記載の作業負荷平準化方法。
【請求項8】
前記演算処理装置は、
前記結果出力処理において、前記ネック工程山崩し処理および前記非ネック工程日程変更処理により変更された前記各工程の負荷が能力を超過する場合には、前記負荷が前記能力を超過している旨のメッセージ、および、前記負荷が前記能力を超過しないように調整した能力のデータの少なくとも一方を出力すること
を特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の作業負荷平準化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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