説明

作業車の運転部構造

【課題】 操作レバー29の操作位置表示が運転座席側から見やすく、かつ、物入れ凹入部38やカップホルダー用凹入部37が合理的に得られる運転部構造を提供する。
【解決手段】 操作レバー29に案内作用するガイド部材30が、車輪フェンダー20の上面側に位置している。ガイド部材30の車体上下方向での高さが運転座席側ほどより低くなっている。ガイド部材30に、カップホルダー用凹入部37、及び、カップホルダー用凹入部37よりも凹入深さが浅い物入れ凹入部38を設けてある。カップホルダー用凹入部37は、物入れ凹入部38よりもガイド部材30の運転座席側とは反対側の端に寄っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転座席の横側方に配置した操作レバー、及び、前記操作レバーに案内作用するように車輪フェンダーの上面側に配置したガイド部材を備えてある作業車の運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に示されるものにあっては、運転座席6の左側方に、主変速レバー14A、副変速レバー14B、PTO変速レバー14Cを配置し、各レバー14A,14B,14Cを案内するガイド溝15a,15b,15cが形成されたガイド部材15Aを、車輪フェンダーとしての後部フェンダ部8Aの上面部8bに装着している。運転座席6の右側方に、駆動切換レバー14D、昇降レバー14Eを配置し、各レバー14D,14Eを案内するガイド溝15d,15eが形成されたガイド部材15Bを、車輪フェンダーとしての後部フェンダ部8Bの上面部8bに装着している。
【0003】
【特許文献1】特開平11−310159号公報(段落〔0030〕,〔0031〕、図2−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業車にあっては、操作レバーの操作位置を示す表示部がガイド部材に設けられる。ところが、従来、たとえば、ガイド部材に凹部を設け、操作レバーが凹部から上方に突出して凹部内を移動する状態で操作されるように構成し、凹部の内部壁面に、操作レバーの操作位置表示の標記を有した表示を設けた場合、操作レバーに対して表示面とは反対側に位置するガイド部材部分が障害になり、表示面が運転座席側から見にくくなりがちであった。
【0005】
本発明の目的は、操作レバーの操作位置表示の表示面を運転座席から見やすい状態にしてレバーガイドに設けることができ、さらには工具、飲料水用のカップやボトルなどを出し入れが容易であるとともに安定よく保持される状態にして運転者の身近に置くことができる作業車の運転部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、運転座席の横側方に配置した操作レバー、及び、前記操作レバーに案内作用するように車輪フェンダーの上面側に配置したガイド部材を備えてある作業車の運転部構造において、
前記ガイド部材の車体上下方向での高さが運転座席側ほどより低くなった状態に前記ガイド部材を形成し、
前記ガイド部材に、カップホルダー用凹入部、及び、このカップホルダー用凹入部よりも凹入深さが浅い物入れ凹入部を形成してあるとともに、前記カップホルダー用凹入部を前記物入れ凹入部よりもガイド部材の運転座席側とは反対側の端に寄った配置にしてある。
【0007】
ガイド部材の車体上下方向での高さが運転座席側ほどより低くなったものだから、ガイド部材の上面側が運転座席側ほどより低い配置高さに位置した車体内方側下がりの状態になるようにしてガイド部材を装備することができる。これにより、操作レバーが挿通するようにガイド部材に設けた凹部の内部壁面に、操作レバーの操作位置表示の表示面を設けた場合でも、操作レバーに対して表示面とは反対側に位置するガイド部材部分が表示面よりも手前側で比較的低く位置し、運転座席側から表示面を見る際の障害に比較的なりにくくなる。
【0008】
ねじまわし等、工具や小物を物入れ凹入部に収容すれば、物入れ凹入部の凹入深さがカップホルダー用凹入部のそれよりも浅いことにより、出し入れが比較的容易に行えるようにして運転座席の横側方に収容することができる。飲料水のカップやボトルなどをカップホルダー用凹入部に収容すれば、カップホルダー用凹入部の凹入深さが物入れ凹入部のそれよりも深いことにより、振動などで倒伏しにくい状態で支持されるようにして運転座席の横側方に収容することができる。
【0009】
カップホルダー用凹入部を物入れ凹入部よりもガイド部材の運転座席側とは反対側の端に寄った配置にしてあるものだから、かつ、ガイド部材の上面側が運転座席側ほどより低い配置高さに位置した車体内方側下がり状態になるものだから、カップホルダー用凹入部の凹入深さが物入れ凹入部のそれよりも深くなるようにして両凹入部を設けることができる。
【0010】
従って、本第1発明によると、操作レバーの操作位置表示を運転座席側から見やすいようにしてガイド部材に設けて、操作レバーを誤操作しにくいように操作することができる。
また、工具などの小物を凹入深さが浅い物入れ凹入部に入れて、出し入れし易いようにして運転者の近くに収容することができ、かつ、カップやボトルなどを凹入深さが深いカップホルダー用凹入部に入れて、飲料水をこぼれにくいように安定的に支持されるようにして運転者の近くに置くことができる。
【0011】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記ガイド部材のレバーガイド溝に対して運転座席が位置する側とは反対側に、固定ハンドルを前記レバーガイド溝に沿わせて配置してある。
【0012】
すなわち、固定ハンドルをガイド部材のレバーガイド溝に対して運転座席が位置する側とは反対側にレバーガイド溝に沿わせて配置したものだから、固定ハンドルが操作レバーの操作障害にならないようにしながら固定ハンドルに極力長い長さを備えさせることができる。
【0013】
従って、本第2発明によると、固定ハンドルを長さの面から容易に使用することができるように便利なものになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対の駆動自在な前車輪1、左右一対の駆動及び操向操作自在な後車輪2、車体後部に設けたエンジン3が装備された原動部、この原動部の車体前方側近くに配置した運転座席4が装備された運転部5、車体の原動部の前側近くに立設されたロプス6を備えた自走車体の前部に、車体フレームを構成している前部ミッションケース7から車体前方向きに延出されたリンク機構8を介して草刈装置10を連結するとともに、前記エンジン3からの駆動力が前記前部ミッションケース7に位置する動力取り出し軸7aから回転軸9を介して草刈装置10に伝達されるように構成して、乗用型草刈機を構成してある。
【0015】
この草刈機は、草刈りや芝刈り作業を行うものであり、リンク機構8の左右一対のリフトアーム8aが上下に揺動操作されると、リンク機構8が前部ミッションケース7に対して上下に揺動操作されて草刈装置10を、接地ゲージ輪11が地面上に接地した下降作業状態と、接地ゲージ輪11が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。草刈装置10を下降作業状態にして自走車体を走行させると、草刈装置10は、刈り刃ハウジング12の内部の車体横方向での複数箇所において車体上下向きの軸芯まわりで駆動回動されるブレード形の回転刈り刃13によって草や芝を切断し、刈り草や刈り芝を回転刈り刃13の回動によって発生した風によって、刈り刃ハウジング12の内部を刈り刃ハウジング12の横一端側に位置する排出口14に搬送して、この排出口14から刈り刃ハウジング外に排出していく。
【0016】
図1,2に示すように、運転部5は、車体上下方向視で左右一対の前車輪フェンダー20の間に位置した前記運転座席4、この運転座席4の車体前方側で車体前端部に立設した操縦塔21、この操縦塔21の上部に回動操作自在に支持されたステアリングホィール22、前記操縦塔21の下部の両横側に位置した足載せ台23、前記両足載せ台23の間に前記前部ミッションケース7の上方を覆うように形成した設けた中央部床24を備えて構成してある。
【0017】
前記左右一対の前車輪フェンダー20、前記左右一対の足載せ台23、前記中央部床24は、これらが所定の形状になるように、かつ、一体部品になるようにプレス成形された一枚の板金部材で成る上部構造体によって構成してある。前記各足載せ台23は、この足載せ台23の後端部23aが前記前車輪フェンダー20の前下がり傾斜の形状になっている前端部20aと、前記中央部床24の間に入り込んだ状態に構成してある。
【0018】
図2に示すように、前記運転部5の運転座席4の一方の横側方に、主変速レバー25、PTO変速レバー26、昇降レバー27を前記前車輪フェンダー20、及び、この前車輪フェンダー20の上面側に配置した合成樹脂製のガイド部材28を挿通するように配置して設けてある。
主変速レバー25は、前記前部ミッションケース7に支持された静油圧式無段変速装置で成る走行用変速装置(図示せず)の変速操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作することにより、前記走行用変速装置を変速操作して走行速度を変更するものである。
【0019】
PTO変速レバー26は、前記前部ミッションケース7の内部に位置するPTO変速装置(図示せず)の変速操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作することにより、前記PTO変速装置を変速操作して動力取り出し軸7aの駆動速度を変更するものである。
昇降レバー27は、油圧バルブ(図示せず)の操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作して前記油圧バルブを切り換え操作することにより、前記リフトアーム8aを駆動する昇降シリンダ(図示せず)を操作して草刈装置10を昇降操作するものである。
【0020】
図2,3に示すように、運転部5の前記運転座席4の他方の両横側方に、操作レバーとしての切り換えレバー29、及び、ガイド部材30を設けてある。
【0021】
図3,5に明示するように、ガイド部材30は、合成樹脂材を成型することによって作製して前記前車輪フェンダー20の上面側に配置し、前車輪フェンダー20を貫通してガイド部材30の内部に位置する連結部31に装着された連結ネジ32によって前車輪フェンダー20の上面側に固定されている。
【0022】
図3,4に明示するように、切り換えレバー29は、前車輪フェンダー20に設けたレバー孔20b、及び、前記ガイド部材30の後端側の車体横幅方向での中央部にガイド部材30の成型時に同時に形成したレバー挿通凹部33を挿通して前記レバー挿通凹部33から上方に切り換えレバー29の握り部が突出するようにして配置されている。
【0023】
前記ガイド部材30の前記レバー挿通凹部33の底に、切り換えレバー29に案内作用するガイド溝34を設けてある。前記ガイド部材30の前記レバー挿通凹部33の左右一対の内部壁面のうち、切り換えレバー29に対して運転座席4が位置する側とは反対側に位置する内部壁面35を、運転座席側から見やすいように車体上方側ほど車体横外方側に位置した状態に傾斜した傾斜面に形成し、かつ、切り換えレバー29の操作位置を示す一対の標記36a、36bを備えた表示面に構成してある。
【0024】
つまり、切り換えレバー29は、前記前部ミッションケース7の内部に位置する後輪クラッチ(図示せず)の操作軸の回動軸芯まわりで前記ガイド部材30の前記ガイド溝34に沿わせて車体前後方向に揺動操作するようになっている。切り換えレバー29を揺動操作して前記内部壁面35の前記一方の標記36aによって示される操作位置と、前記他方の標記36bによって示される操作位置とに切り換え操作することにより、前記後輪クラッチが入り状態と切り状態に切り換わり、前後輪1,2が共に駆動される4輪駆動状態と、後輪2が駆動されないで前輪1が駆動される2輪駆動状態とを選択できるようになっている。
【0025】
図3に明示するように、前記ガイド部材30に、このガイド部材30の前端部に配置したカップホルダー用凹入部37、及び、前記レバー挿通凹部33よりも車体内側に後端側が位置し、前端側が前記カップホルダー用凹入部37の近くに位置するように配置した物入れ凹入部38をガイド部材30の成型時に同時に成型して設けてある。図6に明示するように、前記物入れ凹入部38の凹入深さD1は、前記カップホルダー用凹入部37の凹入深さD2よりも浅くしてある。前記カップホルダー用凹入部37及び物入れ凹入部38の底面に、水抜き孔39を設けてある。
【0026】
図6に明示するように、ガイド部材30の前記カップホルダー用凹入部37が位置する部位で、かつ、カップホルダー用凹入部37の縁取り突部37aを除く部位において前車輪フェンダー20の上面上に載るガイド部材下端からガイド部材上面までの高さH1が、ガイド部材30の運転座席側の横端において前車輪フェンダー20の上面上に載るガイド部材下端からガイド部材上面までの高さH2よりも高くなった状態に、かつ、ガイド部材30の車体上下方向での高さが前記高さH1の部位から運転座席側に至るほどより低くなった状態にガイド部材30を形成してある。
これにより、ガイド部材30の上面側が運転座席側ほどより低い配置高さに位置した車体内方側下がりの傾斜状態になり、切り換えレバー29の操作位置表示の表示面となっている前記内部壁面35が運転座席側から見やすくなっている。
【0027】
カップホルダー用凹入部37がガイド部材30の車体上下方向高さが高い部位に位置してカップホルダー用凹入部37の凹入深さを深くしやすくなるように、カップホルダー用凹入部37を、前記物入れ凹入部38よりもガイド部材30の運転座席側とは反対側の端に寄せて配置してある。
【0028】
図3に明示するように、切り換えレバー29に対して運転座席4が位置する側とは反対側の部位に、固定ハンドル40を設けてある。
図3,4に示すように、前記ガイド部材30の前記レバーガイド溝34に対して運転座席4が位置する側とは反対側にレバーガイド溝34に沿った車体前後方向の溝状のハンドル設置凹部41をガイド部材30の成型時に同時に成型して設け、固定ハンドル40の握り部を、ガイド部材30の前記ハンドル設置凹部41の上方を前記レバーガイド溝34に沿って位置するように配置してある。固定ハンドル40の後端側は、ガイド部材30から外れた箇所で前車輪フェンダー20の上面側に締め付け連結されている。固定ハンドル40の前端側は、ガイド部材30の前記ハンドル設置凹部41の後端部に設けたハンドル孔42を挿通して前車輪フェンダー20の上面側に締め付け連結されている。
【0029】
図1,2に示すように、自走車体の前後輪間にエンジン用の燃料タンク45を設けてある。図7に示すように、この燃料タンク45は、メインタンク部46、このメインタンク部46の横端部でメインタンク部46から上方に突出して燃料タンク全体としての容量増大を図っている上タンク部47、上タンク部47に設けた給油口48を備えて構成してある。そして、図1,2に示すように、この燃料タンク45は、上タンク部47がロプス6の下方付近の前車輪フェンダー20の車体後方側で、かつ、エンジンボンネット49の前端部の横外側に位置したデッドスペースに入り込んだ状態で装備されている。
【0030】
〔別実施例〕
本発明は、草刈機の他、トラクタ、田植え機など各種の車両に適用できる。従って、草刈機、トラクタ、田植え機などを総称して作業車と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型草刈機全体の側面図
【図2】乗用型草刈機全体の平面図
【図3】切り換えレバー配置部の平面図
【図4】図3のIV―IV断面矢視図
【図5】図3のV―V断面矢視図
【図6】図3のVI―VI断面矢視図
【図7】燃料タンク配置部の後面図
【符号の説明】
【0032】
4 運転座席
20 車輪フェンダー
29 操作レバー
30 ガイド部材
34 レバーガイド溝
37 カップホルダー用凹入部
38 物入れ凹入部
40 固定ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席の横側方に配置した操作レバー、及び、前記操作レバーに案内作用するように車輪フェンダーの上面側に配置したガイド部材を備えてある作業車の運転部構造であって、
前記ガイド部材の車体上下方向での高さが運転座席側ほどより低くなった状態に前記ガイド部材を形成し、
前記ガイド部材に、カップホルダー用凹入部、及び、このカップホルダー用凹入部よりも凹入深さが浅い物入れ凹入部を形成してあるとともに、前記カップホルダー用凹入部を前記物入れ凹入部よりもガイド部材の運転座席側とは反対側の端に寄った配置にしてある作業車の運転部構造
【請求項2】
前記ガイド部材のレバーガイド溝に対して運転座席が位置する側とは反対側に、固定ハンドルを前記レバーガイド溝に沿わせて配置してある請求項1記載の作業車の運転部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate