説明

作業車両の変速操作具

【課題】上記課題を解決し、走行主変速装置の変速操作を電気制御により行う主変速操作具を、走行副変速装置の変速操作を行う副変速レバーのグリップ部に設けたものにおいて、副変速レバーを把持することによる主変速操作具の誤操作を防止するとともに、汎用性の高い作業車両の変速操作具を提供することを課題とする。
【解決手段】走行主変速装置16の変速操作を電気制御により行う主変速操作具99を、走行副変速装置19の変速操作を行う副変速レバー12のグリップ部98に設けた作業車両の変速操作具において、前記主変速操作具99を副変速レバー12のオペレータ側の側面に前後回動可能に支持し、該主変速操作具99にオペレータが副変速レバー12のグリップ部98を把持しながら拇指で回動操作を行う拇指操作片102及び食指で回動操作を行う食指操作片103を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は作業車両の変速操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
走行主変速装置の変速操作を電気制御により行う主変速操作具を、走行副変速装置の変速操作を行う副変速レバーのグリップ部に設け、副変速レバーを把持した状態で走行主変速装置の変速操作を行うことができる特許文献1,2に示す作業車両の変速操作具が公知となっている。
【特許文献1】特開2002−127774号公報
【特許文献2】特開2002−178781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献に示す作業車両の変速操作具は、主変速操作具が押操作により走行主変速装置の増減速を行うように構成されているため、オペレータが副変速レバーのグリップ部を把持した際に、誤って主変速操作具を操作してしまうことがあるという問題がある。くわえて、副変速レバーを把持しながら主変速操作具を操作する際、押操作をする指が特定の指に限定されてしまうため、オペレータが食指による操作を望んでも拇指により操作せざるを得ない場合や、拇指による操作を望んでも食指により操作せざるを得ない場合等があり、汎用性が低いという欠点もある。
本発明は、上記課題を解決し、走行主変速装置の変速操作を電気制御により行う主変速操作具を、走行副変速装置の変速操作を行う副変速レバーのグリップ部に設けたものにおいて、副変速レバーを把持することによる主変速操作具の誤操作を防止するとともに、汎用性の高い作業車両の変速操作具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の作業車両の変速操作具は、第1に走行主変速装置16の変速操作を電気制御により行う主変速操作具99を、走行副変速装置19の変速操作を行う副変速レバー12のグリップ部98に設けた作業車両の変速操作具において、前記主変速操作具99を副変速レバー12のオペレータ側の側面に前後回動可能に支持し、該主変速操作具99にオペレータが副変速レバー12のグリップ部98を把持しながら拇指で回動操作を行う拇指操作片102及び食指で回動操作を行う食指操作片103を形成したことを特徴としている。
【0005】
第2に、拇指による増速操作用の増速操作片102aと、拇指による減速操作用の減速操作片102bとにより主変速操作具99の拇指操作片102を構成したことを特徴としている。
【0006】
第3に、主変速操作具99の拇指操作片102又は食指操作片103に滑り止め部104を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の作業車両の変速操作具によれば、副変速レバーのグリップを把持しながら拇指又は食指の何れかにより主変速操作具の回動操作を行うことができるため、主変速操作具の汎用性が向上するとともに、副変速レバーを把持した状態でも主変速操作具を副変速レバーのグリップに対して回動操作させない限り走行主変速装置の変速操作が行われないため、副変速レバーを把持することによる主変速操作具の誤操作が防止される。
【0008】
また、拇指による増速操作用の増速操作片と、拇指による減速操作用の減速操作片とにより主変速操作具の拇指操作片を構成することにより、主変速操作具の操作性が一層向上する。
【0009】
さらに、主変速操作具の拇指操作片及び食指操作片に滑り止め部を形成することにより、主変速操作具の操作性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の作業車両の変速操作具を適用したトラクタの全体平面図である。本トラクタは、走行機体1と、走行機体1を支持する左右一対の前輪2,2及び後輪3,3と、走行機体1の後方にリンク機構4を介して昇降自在に連結されるロータリ耕耘機等の作業機(図示しない)とを備え、走行機体1を走行駆動させながら作業機による作業を行うように構成されている。
【0011】
上記走行機体1はエンジン6(図2参照)が内部に設けられたボンネット7と、該ボンネット7の後方に設けられた運転席8とを備えている。運転席8は、オペレータが着座する座席9の前方にステアリングハンドル11が設けられ、座席9の左側方に副変速レバー12が支持されている。
【0012】
図2は、本トラクタの動力伝動系統図である。エンジン6の動力はトランスミッション13を介して前輪2、後輪3及び作業機を駆動するPTO軸14に変速伝動される。トランスミッション13は、8段階の走行変速切換を行う主変速装置16(走行主変速装置)と、動力の断続を行う油圧クラッチである主クラッチ17と、走行機体1の前後進切換を行う前後進切換装置18と、2段階の走行変速切換を行う副変速装置19(走行副変速装置)とを備えており、上記主変速装置16は、第1主変速部16Aと第2主変速部16Bとにより構成されている。そして、第1主変速部16A→主クラッチ17→前後進切換装置18→第2主変速部16B→副変速装置19の順にエンジン6側の動力が伝動されていく。
【0013】
エンジン13の動力はオペレータによって入切操作されるクラッチ21を介して伝動軸22に伝動される。
【0014】
第一主変速部16Aは、伝動軸22に一体的に固定された4つの入力ギヤ23a,23b,23c,23dと、対応する入力ギヤ23a,23b,23c,23dと常時噛合う4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dとを備えている。該4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dは伝動軸26に回転自在に軸支され、伝動軸22の動力が常時伝動されている。
【0015】
4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dのうち、動力伝動上流側の2つの出力ギヤ24a,24bの間には、シンクロメッシュ方式のシフト部材27が設けられている。該シフト部材27は、上記2つの出力ギヤ24a,24bの何れか一方を伝動軸26に係合させ、もう一方を伝動軸26から脱離させることにより、2つの出力ギヤ24a,24bの動力を選択的に伝動軸26に伝動するように構成されている。また、シフト部材27を上記2つの出力ギヤ24a,24bの間の中間位置(ニュートラル位置)に位置させると、上記2つの出力ギヤ24a,24bの動力が伝動軸26に伝動されないニュートラル状態となる。
【0016】
一方、4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dのうち、動力伝動下流側の2つの出力ギヤ24c,24dの間にも上記シフト部材27と略同一構成のシフト部材28が設けられており、該2つの出力ギヤ24c,24dの何れか一方の動力が選択的に走行軸21に伝えられる。
【0017】
そして、4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dの何れか1つの動力が伝動軸26に伝動されるように上記2つのシフト部材27,28を作動させる。第1主変速部16Aは、以上のようにして、4段階の走行変速切換を行うことが可能なように構成されている。
【0018】
主クラッチ17は、伝動軸26から伝動軸29への動力伝動の入切操作を行う。
【0019】
前後進切換装置18は、伝動軸29に一体的に固定された2つの入力ギヤ31a,31bと、伝動軸32に回転自在に軸支された2つの出力ギヤ33a,33bと、中間ギヤ34とを備えている。動力伝動下流側の入力ギヤ31bと出力ギヤ33bとが常時噛合う一方で、動力伝動上流側の入力ギヤ31aの動力は上記中間ギヤ34を介して対応する出力ギヤ33aに伝動される。このため、動力伝動上流側の出力ギヤ33aと動力伝動下流側の出力ギヤ33bとは、常に逆方向に回転駆動される。そして、上記2つの出力ギヤ33a,33bの間には、前述したシフト部材27と略同一構成のシフト部材36が設けられており、2つの出力ギヤ33a,33bの何れか一方の動力が選択的に伝動軸32に伝動されるため、伝動軸32の正逆転切換、即ち走行機体3の前後進切換を行うことが可能になる。
【0020】
第2主変速部16Bは、伝動軸32に回動自在に軸支された2つの入力ギヤ37a,37bと、伝動軸38に一体的に固定された2つの出力ギヤ39a,39bとを備えており、入力ギヤ37a,37bは対応する出力ギヤ39a,39bと常時噛合っている。上記2つの入力ギヤ37a,37bの間には、前述したシフト部材27と略同一構成のシフト部材41が設けられている。該シフト部材41により、伝動軸32の動力が上記2つの入力ギヤ37a,37bの何れか一方を介して伝動軸38に伝動される。第2主変速部16Bは、以上のようにして、2段階の走行変速切換を行うことが可能なように構成されている。そして、第1主変速部16Aと第2主変速部16Bとにより構成される主変速装置16は、4×2で計8段階の走行変速を行うことが可能になる。
【0021】
副変速装置19は、伝動軸38に一体的に固定された2つの入力ギヤ42a,42bと、対応する入力ギヤ42a,42bと常時噛合う2つの中間ギヤ43a,43bと、対応する中間ギヤ43a,43bと常時噛合う2つの出力ギヤ44a,44bとを備えている。中間ギヤ43a,43bは伝動軸46に回転自在に軸支され、出力ギヤ44a,44bは駆動軸47に回転自在に軸支されている。上記2つの出力ギヤ44a,44bの間には、前述したシフト部材27と略同一構成のシフト部材48が設けられており、該シフト部材48によって、2つの出力ギヤ44a,44bの動力が駆動軸47に選択的に伝動される。副変速装置19は以上のようにして2段階の走行変速切換を行うことが可能なように構成されている。
【0022】
後輪3には、デファレンシャルギヤ49を介して、常時、駆動軸47の動力が伝動される。一方、駆動軸47から前輪2への動力伝動は、切換部材51によって入切操作される。切換部材51は、駆動軸47に一体的に固定された前輪駆動ギヤ52と噛合う小径ギヤ51aと大径ギヤ51bとからなり、軸方向に往復移動可能に伝動軸46に支持され、支持軸46と一体的に回転するように構成されている。
【0023】
切換部材51を往復作動させることにより、前輪駆動ギヤ52と小径ギヤ51aとの係合及び係合解除を行う。小径ギヤ51aと前輪駆動ギヤ52とを係合させると駆動軸47の動力が前輪2に伝動されて走行機体3が四輪駆動になる一方で、小径ギヤ51aと前輪駆動ギヤ52との係合を解除すると駆動軸47から前輪2への動力伝動が遮断されて走行機体3が二輪駆動になる。
【0024】
切換部材51の動力はクイックターン装置53及びデファレンシャルギヤ54を介して前輪2に伝動される。クイックターン装置53は、大径ギヤ51b又は伝動軸46と一体的に回転するギヤ56を介して、切換部材51の動力をデファレンシャルギヤ54に伝動するように構成されている。なお、大径ギヤ51bの動力をデファレンシャルギヤ54に伝動すると、前輪2が後輪3に対して略2倍のスピードで回転駆動されるようになり、走行機体1が急速旋回モードに切換作動される。一方、ギヤ56の動力をデファレンシャルギヤ54に伝動すると、前輪2が後輪3と略同一スピードで回転駆動されるようになり、走行機体1が通常旋回モードに切換作動される。
【0025】
以上のように構成されるトランスミッション13は、主変速装置16及び前後進切換装置18が後述する油圧制御装置57によって変速切換され、副変速装置19が前述の副変速レバー12によって変速切換される。副変速レバー12は、基端部がリンク機構やワイヤ等を介して副変速装置19のシフト部材48と機械的に接続され、揺動操作によりシフト部材48を作動させ、走行機体1を高速走行状態、ニュートラル状態又は低速走行状態の何れかに切換作動させる。
【0026】
次に、油圧制御装置57について説明する。
図3は油圧制御装置の油圧回路である。油圧制御措置57は、比例圧力制御ソレノイドバルブ58と、1速ソレノイドバルブ59と、2速ソレノイドバルブ61と、3速ソレノイドバルブ62と、4速ソレノイドバルブ63と、高低変速ソレノイドバルブ64と、前後進切換ソレノイドバルブ66と、1速ソレノイドバルブ59及び2速ソレノイドバルブ61によって伸縮制御される油圧シリンダーである1速2速シリンダー67と、3速ソレノイドバルブ62及び4速ソレノイドバルブ63によって伸縮制御される油圧シリンダーである3速4速シリンダー68と、高低変速ソレノイドバルブ64によって伸縮制御される油圧シリンダーである高低変速シリンダー69と、前後進切換ソレノイドバルブ66によって伸縮制御される油圧シリンダーである前後進切換シリンダー71と、装置内部の圧力を計測する油圧センサ72と、装置内部の温度を計測する油温センサ73とを備えている。そして、オイルポンプ74によって油圧制御装置54内に圧油が供給される。
【0027】
比例圧力制御ソレノイドバルブ58は、オイルポンプ74から主クラッチ17に供給される圧油の圧力調整を行うことにより、主クラッチ17を入切作動させる電磁切換弁であり、後述する制御装置76からの制御信号によって制御される。なお、主クラッチ17に供給される圧油の圧力は、前述した油圧センサ72によってセンシングされ、その情報は制御装置76にフィードバックされる。
【0028】
1速2速シリンダー67は、伸縮作動されるシフトピストン77が第1主変速部16A上流側のシフト部材27に係合されており、該シフトピストン77の縮小状態時には第1主変速部16A上流側の2つの出力ギヤ24a,24bの一方側の動力が伝動軸26に伝動され、伸長状態時には該2つの出力ギヤ24a,24bのもう一方側の動力が伝動軸26に伝動される。該シフトピストン77の縮小又は伸長状態時には、シフトピストン77に設けられた2つの切欠き部77a,77bの何れか一方がピン78に係合して縮小又は伸長状態が保持される。一方、ピン78が該2つの切欠き部77a,77bの間に位置して切欠き部77a,77bの何れとも係合していない状態では、上記シフト部材27がニュートラル状態になるとともに、上記1速2速シリンダー67に対応して設けられたチェックバルブ79が開放され、主クラッチ17に供給される圧油が減圧され、主クラッチ17が切操作される。即ち、シフト部材27による変速切換中には主クラッチ17が自動的に切操作され、変速切換完了時には主クラッチ17が自動的に入操作される。
【0029】
3速4速シリンダー68は、伸縮作動されるシフトピストン81が第1主変速部16A下流側のシフト部材28に係合されており、該シフトピストン81の縮小状態時には第1主変速部16A下流側の2つの出力ギヤ24c,24dの一方側の動力が伝動軸26に伝動され、伸長状態時には該2つの出力ギヤ24c,24dのもう一方側の動力が伝動軸26に伝動される。該シフトピストン81の縮小又は伸長状態時には、シフトピストン81に設けられた2つの切欠き部81a,81bの何れか一方がピン82に係合して縮小又は伸長状態が保持される。一方、ピン82が該2つの切欠き部81a,81bの間に位置して切欠き部81a,81bの何れとも係合していない状態では、上記シフト部材28がニュートラル状態になるとともに、上記3速4速シリンダー68に対応して設けられたチェックバルブ83が開放され、主クラッチ17に供給される圧油が減圧され、主クラッチ17が切操作される。
【0030】
なお、上記2つの油圧シリンダー67,68のチェックバルブ79,83は、直列的に接続されており、両方のチェックバルブ79,83が開放されないと主クラッチ17に供給される圧油の減圧がされないため、4つの出力ギヤ24a,24b,24c,24dの動力の何れか1のみが伝動軸26に伝動される。
【0031】
高低変速シリンダー69は、伸縮作動されるシフトピストン84が第2主変速部16Bのシフト部材41に係合されており、該シフトピストン84の縮小状態時には伝動軸32の動力が第2主変速部16Bの2つの入力ギヤ37a,37bの一方側に伝動され、伸長状態時には伝動軸32の動力が該2つの入力ギヤ37a,37bのもう一方側に伝動される。該シフトピストン84の縮小又は伸長状態時には、シフトピストン84に設けられた2つの切欠き部84a,84bの何れか一方がピン86に係合して縮小又は伸長状態が保持される。一方、ピン86が該2つの切欠き部84a,84bの間を移動している最中で切欠き部84a,84bの何れとも係合していない状態では、上記シフト部材41がニュートラル状態になるとともに、上記高低変速シリンダー69に対応して設けられたチェックバルブ87が開放され、主クラッチ17に供給される圧油が減圧され、主クラッチ17が切操作される。また、前後進切換が完了すると主クラッチ17に供給される圧油の減圧が解除され、主クラッチ17が入状態になる。
【0032】
前後進切換シリンダー71は、伸縮作動されるシフトピストン88が前後進切換装置18のシフト部材36に係合されており、該シフトピストン88の縮小状態時には前後進切換装置18の2つの出力ギヤ33a,33bの一方側の動力が伝動軸32に伝動され、伸長状態時には該2つの出力ギヤ33a,33bのもう一方側の動力が伝動軸32に伝動される。該シフトピストン88の縮小又は伸長状態時には、シフトピストン88に設けられた2つの切欠き部88a,88bの何れか一方がピン89に係合して縮小又は伸長状態が保持される。一方、ピン89が該2つの切欠き部88a,88bの間を移動している最中で切欠き部88a,88bの何れとも係合していない状態では、上記シフト部材36がニュートラル状態になるとともに、上記前後進切換シリンダー71に対応して設けられたチェックバルブ91が開放され、主クラッチ17に供給される圧油が減圧され、主クラッチ17が切操作される。また、前後進切換が完了すると主クラッチ17に供給される圧油の減圧が解除され、主クラッチ17が入状態になる。
【0033】
次に、制御装置76について説明する。
図4は制御装置のブロック図である。制御装置76はマイコン等で構成されており、入力側には、主変速装置16をニュートラル状態にするニュートラルスイッチSW1(段数クリアスイッチ)と、主変速装置16を増速切換するシフトアップスイッチSW2(増速スイッチ)と、主変速装置16を減速切換するシフトダウンスイッチSW3(減速スイッチ)と、エンジン6の回転数を検出するエンジン回転センサ92と、走行機体1の車軸の回転数を検出する車軸回転センサ93と、前述の油圧センサ72と、前述の温油センサ73と、前後進切換操作具(図示しない)による前後進切換操作を検出する前後進センサ94と、主クラッチ17の入切状態を検出する主クラッチセンサ96とが接続されている。
【0034】
一方、制御装置76の出力側には、前述の1速ソレノイドバルブ59、2速ソレノイバルブ61、3速ソレノイドバルブ62、4速ソレノイドバルブ63、高低変速ソレノイドバルブ64、比例圧力制御ソレノイドバルブ58及び前後進切換ソレノイドバルブ66が接続されている。
【0035】
上記制御装置76は、入力側に接続した機器72,73,92,93,94,96,SW1,SW2,SW3からの入力信号に基づいて、出力側に接続された機器58,59,61,62,63,64,66に出力信号を出力し、主変速装置16、主クラッチ17及び前後進切換装置18の作動の制御を行う。
【0036】
なお、ニュートラルスイッチSW1、シフトアップスイッチSW2及びシフトダウンスイッチSW3のON・OFF操作によって、1速ソレノイドバルブ59、2速ソレノイドバルブ61、3速ソレノイドバルブ62、4速ソレノイドバルブ63及び高低変速ソレノイドバルブ64のON・OFFパターンを切換作動させ、主変速装置16を変速切換作動させる。
【0037】
図5は主変速装置の変速パターンを示す説明図である。高低変速ソレノイドバルブ64及び1速ソレノイドバルブ59がON状態であると主変速装置16が1速状態になり、高低変速ソレノイドバルブ64及び2速ソレノイドバルブ61がON状態であると主変速装置16が2速状態になり、高低変速ソレノイドバルブ64及び3速ソレノイドバルブ62がON状態であると主変速装置16が3速状態になり、高低変速ソレノイドバルブ64及び4速ソレノイドバルブ63がON状態であると主変速装置16が4速状態になり、1速ソレノイドバルブ59のみがON状態であると主変速装置16が5速状態になり、2速ソレノイドバルブ61のみがON状態であると主変速装置16が6速状態になり、3速ソレノイドバルブ62のみがON状態であると主変速装置16が7速状態になり、4速ソレノイドバルブ63のみがON状態であると主変速装置16が8速状態になり、5つのソレノイドバルブ59,61,62,63,64の全てがOFF状態であると主変速装置16がニュートラル状態になる。
【0038】
図6は制御装置のフロー図である。主変速装置16の変速制御が開始されると、まずステップS1に進む。ステップS1ではスイッチSW1〜SW3の入切操作の検出を行い、ステップS2に進む。ステップS2では、ステップS1の検出に基づいてニュートラルスイッチSW1によるニュートラル切換操作の有無を判断し、ニュートラル切換操作がなかった場合にはステップS3に進み、ニュートラル切換操作があった場合にはステップS4に進む。
【0039】
ステップS3では、ステップS1の検出に基づいてシフトアップスイッチSW2又はシフトダウンスイッチSW3による変速操作の有無を判断し、変速操作があった場合にはステップS5に進み、変速操作がなかった場合には処理をステップS1に戻す。ステップS5では、シフトアップスイッチSW2による増速操作の有無を検出し、増速操作がなかった場合にはステップS6に進み、増速操作があった場合にはステップS7に進む。
【0040】
ステップS4では、設定変速段数をニュートラルにセットし、ステップS8に進む。ステップS6では、シフトダウンスイッチSW3による減速操作があったものとみなし、設定変速段数を現状よりも1段低い変速段数にセットし、ステップS8に進む。ステップS7では、設定変速段数を現状よりも1段高い変速段数にセットし、ステップS8に進む。
【0041】
ステップS8では、主クラッチ17に供給される圧油の減圧制御を行って主クラッチ17を切操作し、ステップS9に進む。ステップS9では、ステップS4,ステップS6又はステップS7の何れかにおいて設定した変速段数に主変速装置16を変速作動させ、ステップS10に進む。
【0042】
ステップS10では、主変速装置16の変速切換の完了を検出し、完了が検出されない場合にはステップS10に処理を戻し、完了が検出された場合にはステップS11に進む。ステップS11では、主クラッチ17に供給される圧油の昇圧制御を行って主クラッチを入操作し、処理をステップS1に戻す。以上のようにして、制御装置76による主変速装置16の変速制御が行われる。
【0043】
次に、図7〜17に基づいて副変速レバー12の構成を説明する。
図7は左操作パネル及び副変速レバーの側面図であり、図8〜12はグリップ部の正面図、左側面図、右側面図、平面図及び背面図である。副変速レバー12は、座席9の左側方に設けられた左操作パネル97から前方斜め上方に突設され、上部に形成された上下方向のグリップ部98をオペレータの左手で把持して揺動操作できるように支持されている。
【0044】
グリップ部98は、先端部(上端部)が基端部に対して前方に湾曲しており、先端部に円弧面98aが形成されている。該円弧面98aはオペレータが手の平を置いた状態で拇指を除く4本の指を添わせることが可能なように側面視前方斜め上方に山形をなす略半円形に形成されている。上記グリップ部98の中途部の内側面(右側面)には前述のニュートラルスイッチSW1が押し操作可能に設けられ、グリップ部98の先端部の内側面側には主変速装置16の変速操作を行う主変速操作具99が前後回動自在に支持されている。
【0045】
主変速操作具99は、主に、側面視グリップ部98の先端部外形に沿う略円形の本体部101と、側面視本体部101から外方に突出する2つの突出片のうちの後側の突出片である拇指操作片102と、前側の突出片である食指操作片103とからなり、前方回動操作によってグリップ部98内に設けられた前述のシフトアップスイッチSW2が押操作(増速操作)され、後方回動操作によってグリップ部内に設けられた前述のシフトダウンスイッチSW3が押操作(減速操作)されるように構成されている。
【0046】
本体部101は、円弧面98aに対して側面視内側(下側)に配置され、グリップ部98の内側面に前後回動自在な状態でコンパクトに嵌め込み支持されている。これによって、オペレータがグリップ部98を把持する際に不測に本体部101に触れてしまうことが防止される。
【0047】
図13は主変速操作具の拇指操作片によって増速操作した状態を示す側面図であり、図14は主変速操作具の拇指操作片によって減速操作した状態を示す側面図である。上記拇指操作片102は、側面視グリップ部98の先端部から外方に突出する山形に形成されている。拇指操作片102の後部には前方に向かって上方傾斜する面状の増速操作片102aが、拇指操作片102の前部には前方に向かって下方傾斜する面状の減速操作片102bがそれぞれ設けられている。
【0048】
オペレータは、グリップ部98の側周面を手の平で把持した状態で、拇指操作片102により主変速操作具99の前後回動操作を行うことができる。具体的には、拇指操作片102の増速操作片102aに拇指を置いて前方に押し出すように操作することにより主変速操作具99の前方回動操作を行う一方で、拇指操作片102の減速操作片102bに拇指を置いて後方に引くように操作することにより主変速操作具99の後方回動操作を行う。以上にように、前方回動操作をする場合と後方回動操作をする場合とで、操作箇所を分割しているため、主変速操作具99の操作性が向上する。なお、増速操作片102aや減速操作片102bに滑る止め部104を設けて、拇指が拇指操作片102から滑る事態を防止していもよい。
【0049】
図15は主変速操作具の食指操作片によって変速操作した状態を示す側面図である。上記食指操作片103は、側面視グリップ部98の先端部よりも若干外方に位置して先端部外形に沿う円弧形状に成形されており、表面には食指を置いた際の滑りを防止する滑り止め部104が形成されている。オペレータは、円弧面98aに手の平を置いてグリップ部98を把持した状態で、食指操作片103に食指を置いて下方に押し出すように操作することにより主変速操作具99の前方回動操作を行い、上方に引くようにして操作することにより主変速操作具99の後方回動操作を行う。この際、滑り止め部104によって食指が食指操作片103から滑ることを防止できるため、主変速操作具99の操作性が向上する。
【0050】
以上のように構成される主変速操作具99は、前後回動操作する指がオペレータの好みや状況に応じて選択可能であるため、利便性、汎用性が高い。
【0051】
図16,17は副変速レバーのグリップ部内の構造を示す側断面図及び背断面図である。主変速操作具99は、グリップ部98内に回動自在に支持された回動軸106に固定されることにより、グリップ部98に回動支持に支持されている。該回動軸106には主変速操作具99の回動にともなって前後揺動するカムプレート107が固定されている。
【0052】
上記カムプレート107は、主変速操作具99が前方回動されると後方揺動してグリップ部98内に設けられた前述のシフトアップスイッチSW2を押操作する一方、主変速操作具99が後方回動されると前方揺動してグリップ部98内に設けられた前述のシフトダウンスイッチSW3を押操作するように構成されている。そして、前述したような図6に示す処理が実行される。
【0053】
また、カムプレート107はスプリング108等の弾性部材によってシフトダウンスイッチSW2及びシフトアップスイッチSW3が押操作されない中立位置に付勢されている。このため、主変速操作具99もオペレータが意図して前後回動操作を行わない限り中立位置で停止した状態になる。
【0054】
以上、主変速操作具99の拇指操作片102を増速操作片102aと減速操作片102bとに分割形成した例について説明したが、図18〜25は主変速操作具99の拇指操作片102を単一の操作片とした例につき示している。
【0055】
図18〜22は他の実施例を示すグリップ部の正面図、左側面図、右側面図、平面図及び背面図であり、図23は主変速操作具の拇指操作片によって変速操作した状態を示す側面図である。拇指操作片102は、側面視グリップ部98の先端部よりも若干外方に位置して先端部外形に沿う円弧形状に成形されており、表面には拇指を置いた際の滑りを防止する滑り止め部104が形成されている。
【0056】
オペレータは、グリップ部98の側周面を手の平で把持した状態で、拇指操作片102に拇指を置おいて前方に押し出すように操作することにより主変速操作具99の前方回動操作を行い、後方に引くようにして操作することにより主変速操作具99の後方回動操作を行う。この際、滑り止め部104によって拇指が拇指操作片102から滑ることを防止できるため、主変速操作具99の操作性が構成する。
【0057】
図24は主変速操作具の食指操作片を食指先端部によって変速操作した状態を示す側面図であり、図25は主変速操作具の食指操作片を食指全体によって変速操作した状態を示す側面図である。主変速操作具99の前後回動操作を食指により行う場合、食指の先端部を食指操作片103に置いて操作できる一方で(図24参照)、食指全体を食指操作片103及び本体部101に置いて操作することも可能である(図25参照)。このため、上記構成の主変速操作具99は利便性、汎用性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の作業車両の変速操作具を適用したトラクタの全体平面図である。
【図2】本トラクタの動力伝動系統図である。
【図3】油圧制御装置の油圧回路である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】主変速装置の変速パターンを示す説明図である。
【図6】制御装置のフロー図である。
【図7】左操作パネル及び副変速レバーの側面図である。
【図8】グリップ部の正面図である。
【図9】グリップ部の左側面図である。
【図10】グリップ部の右側面図である。
【図11】グリップ部の平面図である。
【図12】グリップ部の背面図である。
【図13】主変速操作具の拇指操作片によって増速操作した状態を示す側面図である。
【図14】主変速操作具の拇指操作片によって減速操作した状態を示す側面図である。
【図15】主変速操作具の食指操作片によって変速操作した状態を示す側面図である。
【図16】副変速レバーのグリップ部内の構造を示す側断面である
【図17】副変速レバーのグリップ部内の構造を示す背断面図である
【図18】他の実施例を示すグリップ部の正面図である。
【図19】他の実施例を示すグリップ部の左側面図である。
【図20】他の実施例を示すグリップ部の右側面図である。
【図21】他の実施例を示すグリップ部の平面図である。
【図22】他の実施例を示すグリップ部の背面図である。
【図23】主変速操作具の拇指操作片によって変速操作した状態を示す側面図である。
【図24】主変速操作具の食指操作片を食指先端部によって変速操作した状態を示す側面図である。
【図25】主変速操作具の食指操作片を食指全体によって変速操作した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0059】
12 副変速レバー
16 主変速装置(走行主変速装置)
19 副変速装置(走行副変速装置)
98 グリップ部
99 主変速操作具
102 拇指操作片
103 食指操作片
102a 増速操作片
102b 減速操作片
104 滑り止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行主変速装置(16)の変速操作を電気制御により行う主変速操作具(99)を、走行副変速装置(19)の変速操作を行う副変速レバー(12)のグリップ部(98)に設けた作業車両の変速操作具において、前記主変速操作具(99)を副変速レバー(12)のオペレータ側の側面に前後回動可能に支持し、該主変速操作具(99)にオペレータが副変速レバー(12)のグリップ部(98)を把持しながら拇指で回動操作を行う拇指操作片(102)及び食指で回動操作を行う食指操作片(103)を形成した作業車両の変速操作具。
【請求項2】
拇指による増速操作用の増速操作片(102a)と、拇指による減速操作用の減速操作片(102b)とにより主変速操作具(99)の拇指操作片(102)を構成した請求項1の作業車両の変速操作具。
【請求項3】
主変速操作具(99)の拇指操作片(102)又は食指操作片(103)に滑り止め部(104)を形成した請求項1又は2の作業車両の変速操作具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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