説明

作業車両

【課題】農業用車両の各種センサは、他の作業車両と異なり、通常、発生するセンサ故障の他に、泥土や泥水、更には藁屑等の影響を受けて起こるセンサ故障も多く、消費材センサが正常に機能しない場合、補給を促す報知(警報)ができない課題があった。
【解決手段】この発明は、農業用の消費材を、搭載した農業用作業車両において、走行時間と、走行距離と、作業時間と、作業面積との各計測項目の少なくとも1項目を計測する装置(3)と、消費材の残量を検出する消費材センサ(4)とを設け、制御手段(5)は、消費材の残量が設定量以下になると告知装置(6)を作動させると共に、消費材センサ(4)が正常に機能しない場合、計測装置(3)から入力される計測情報に基づき、消費材の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると、告知装置(6)を作動させる構成とした農業用作業車両としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業に伴って消費される消費材の残量を、検出センサに故障が発生しても、二重安全機構により補給のタイミングを確保する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農業用作業車両、例えば、苗移植機においては、植付部に苗載せ台が設けられて、これに苗が載置されており、施肥装置の肥料タンクには肥料が充填される構成となっている。そして、苗載せ台上の苗と肥料タンクの肥料は、植え付け作業と施肥作業によって順次消費されるから、その残量を検出するために、苗減少センサと肥料減少センサが設けられ、補給の時期がブザーやランプでオペレータに報知(警報)される構成となっている。
【0003】
その一例として、特開平11−56036号公開特許公報は、多条植えの苗移植機において、各条の植付装置の中で、クラッチが「切」になっている条の苗減少検知手段の情報は無視し、クラッチが「入」になっている条の苗減少検知手段の検知によってのみ警報する構成が示されている。
【特許文献1】特開平11−56036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人が提示した特許文献1から解るように、例えば、苗移植機において、移植苗の残量を検出する苗減少センサや施肥用の肥料の残量を検出する肥料減少センサは、苗等の残量を検出して、つぎの補給時期を報知する構成となっているから、作業の途中で、オペレータが気付かないうちに苗切れや肥料切れが発生し、空運転になるのを未然に防止する有効な技術手段である。
【0005】
しかしながら、農業用作業車両は、他の作業車両と違って、通常、発生する検出センサの故障の他に、泥土や泥水、更には藁屑等の影響を受けて起こるセンサ故障も多く、特許文献1に示されている苗減少センサや肥料減少センサが正常に機能しない場合には、苗切れや肥料切れの報知(警報)ができない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。すなわち、作業を行いながら走行する過程で消費される消費材を搭載した作業車両(2)において、走行時間と、走行距離と、作業時間と、作業面積との各計測項目の中で、少なくとも1項目について計測する計測装置(3)を設け、前記消費材に関し、作業の進行に伴って消費されて減少する残量を検出する消費材センサ(4)を配置して設け、前記消費材センサ(4)又は前記計測装置(3)の情報に基づき消費材の補給を促す告知装置(6)に制御信号を出力する制御手段(5)を設け、前記制御手段(5)は、前記消費材センサ(4)の検出情報を優先して、消費材の残量が設定量以下になると告知装置(6)を作動させる構成とし、前記消費材センサ(4)が正常に機能しない場合、前記計測装置(3)から入力される計測情報に基づき、前記消費材の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると前記告知装置(6)を作動させる構成とした作業車両であって、前記制御手段(5)は、前記消費材センサ(4)の検出情報を優先して、消費材の残量が設定量以下になると告知装置(6)を作動させる構成としているが、消費材センサ(4)が正常に機能しない場合には、これに代えて走行時間や走行距離や作業時間や作業面積の各計測項目の中で、少なくとも1項目の計測情報に基づき、消費材の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると、告知装置(6)を作動させ、消費材の補給時期を告知できるものとし、安全性を高めたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、作業に伴って消費される消費材の残量検出を直接行う消費材センサ(4)が正常に機能しない場合、制御手段(5)が、走行時間や、走行距離や、作業時間や、作業面積等の消費材の減少量を間接的に知ることができる各計測項目の中から、少なくとも1項目の計測情報に基づき、消費材の補給時期を告知することができる特徴がある。
【0008】
このように、この発明によると、制御手段(5)は、少なくとも1項目の計測情報を利用して、消費材の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると前記告知装置(6)に制御信号を発して作動させる構成であるから、間接的ではあっても、比較的正確に消費材の残量が設定量以下になった時点が分かり、直接検出するセンサの故障にもかかわらず、オペレータが気付かずに空運転をする等の事故はなくなり、告知装置(6)の作動により補給時期を知り、安全に作業ができる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき、この発明の実施例を説明する。
まず、この出願の農業用作業車両2の実施例である乗用型田植機2は、図2、及び図3に示すように、走行車体1の後部に昇降リンク装置8を介して苗植付部9が昇降可能に装着され、車体1の後部上側に施肥装置10が設けられている。
【0010】
そして、走行車体1は、駆動輪である左右一対の前輪11,11、及び左右一対の後輪12,12を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース13が配置され、そのミッションケース13の左右両側に前輪ファイナルケース14,14が設けられ、この前輪ファイナルケース14,14の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に、前記左右の前輪11,11が取り付けられている。また、ミッションケース13の背面部にはメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18から外向きに突出する後輪車軸に前記後輪12,12が取り付けられている。
【0011】
そして、エンジン19は、メインフレーム15上に搭載されており、該エンジン19の回転動力が、ベルト伝動装置20及びHST21を介してミッションケース13に伝達される構成としている。そして、ミッションケース13は、トランスミッションによって変速した後、走行動力と外部取出動力とに分けて取出しができる構成としている。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース14,14に伝動されて前輪11,11を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝動されて後輪12,12を駆動する構成となっている。又、外部取出動力は、走行車体1の後部に設けた植付クラッチケース22に伝動され、それから植付伝動軸23によって苗植付部9へ伝動されると共に、上側の施肥伝動機構24にも送られて施肥装置10の回転各部を伝動する構成としている。
【0012】
そして、エンジン19の上部はエンジンカバー26で覆われており、その上に操縦席27が設置されている。操縦席27の前方には、各種操作機構を内蔵するフロントカバー28が配置され、その上部にステアリングハンドル29が設けられている。そして、エンジンカバー26及びフロントカバー28の下端左右両側は、水平状のフロアステップ30になっており、ステップの一部を格子状にしてオペレータの靴に付着した泥を下側に落とすことができる構成としている。
【0013】
そして、予備苗載せ台32,32は、補給用の苗を載せるために、走行車体1の前部左右両側に配置して設け、外側に張り出して苗を載せる位置と内側の収納位置とに折り畳みできる構成となっている。
【0014】
そして、苗植付部9を昇降させる昇降リンク装置8は、平行リンク機構であって、1本の上リンク34と左右一対の下リンク35,35とから構成され、基部側が、メインフレーム15の後部の立設した背面視門型のリンクベースフレーム36に回動自由に枢着され、その先端側に縦リンク37が連結されている。そして、縦リンク37の下端部に、苗植付部9に回動自由に支承された連結軸38が挿入連結され、連結軸38を中心として苗植付部9がローリング自在に連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク34に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ40が設けられており、該シリンダ40を油圧で伸縮させることにより上リンク34が上下に回動して苗植付部9を一定姿勢のまま昇降する構成としている。
【0015】
そして、苗植付部9は、図面に示す実施例では、8条植えの構成で、フレームを兼ねる伝動ケース42、マット苗を載せて左右往復動する苗載せ台39から苗を一株分づつ各条の苗取出口43に供給すると共に、横一列分の苗を全て苗取出口43に供給すると、苗送りベルト44により苗を下方に送り出す構成となっている。そして、41は苗減少センサであって、本件出願の消費材センサ4に相当し、苗の残量を検出する構成としている。45は苗植付杆を示している。
【0016】
そして、苗植付部9は、図面に示すように、左右の中央位置にセンターフロー46が配置して設けられ、その左右両側にそれぞれ2つづつのサイドフロー47,47が配置されて水田面を滑走しながら支持し、前記植付杆45が苗を植え付ける圃場面を整地する構成としている。なお、上記センターフロート46は、植付深さを調節制御するセンサ機能が備えられているが、本件出願には直接関係しないから、説明を省略する。
【0017】
つぎに、施肥装置10は、図面に示すように、上部の肥料ホッパー50に貯留されている粒状の肥料を、下側の繰出部51によって一定量づつ繰出して肥料ホース48によって地面側の前記フロート46,47の側方にまで送り、先端の施肥口49から圃場面に施肥する構成としている。この場合、ブロア52は、上記繰出部51の下側に連通させて強制起風する構成であって、上側から繰り出された定量の肥料を前記肥料ホース48内に吹き込んで風圧で搬送する構成としている。
【0018】
53は肥料切れセンサであって、本件出願の特許請求の範囲に記載した消費材センサ4に相当し、肥料ホッパー50内の肥料の残量を検出する構成としている。
つぎに、制御部(制御手段)5の構成を説明する。
【0019】
まず、制御部5は、図1に示すように、入力側に後輪回転センサ55と、畦クラッチセンサ56と、作業面積調整ダイヤル57と、苗減少センサ41と、肥料切れセンサ53とを接続し、検出情報や操作情報が入力される構成としている。なお、上記苗減少センサ41と肥料切れセンサ53とは、本件出願の「特許請求の範囲」に記載している消費材センサ4に相当する。
【0020】
そして、制御部5は、出力側に作業モニタ装置58と、苗減少告知部59と、肥料切れ告知部60とをそれぞれ接続している。なお、上記苗減少告知部59と、肥料切れ告知部60とは、本件出願の「特許請求の範囲」に記載している告知装置6に相当し、実施例は、警報ブザーでオペレーターに知らせる構成としている。そして、上記作業モニタ装置58は、走行距離表示部61と苗植付面積告知部62を設けてモニタ表示ができる構成としている。
【0021】
そして、制御部5は、後輪回転センサ55の検出結果に基づいてCPU機能によって演算が行われ、走行時間と走行距離とを求め、検出情報として記憶保持し、更に、後輪回転センサ55と畦クラッチセンサ56との検出結果に基づき、同様に作業時間と作業面積とを計測して算出することができる構成としている。なお、本件出願の「特許請求の範囲」に記載している計測装置3は、後輪回転センサ55と合わせて制御部5とを指している。実施例の場合、作業面積調整ダイヤル57は、圃場の形状や植付方法(例えば、植付株間の間隔等)に基づいて植付面積を補正する調整ダイヤルであって、畦クラッチのON,OFFと合わせて、より正確な作業(植付)面積を算出できるものとしている。
【0022】
そして、上記の各計測項目、すなわち、走行時間、走行距離、作業時間、作業面積は、苗載せ台39上に新規にマット苗を補給、装填した時点でリセットされ、計測が開始されるものとしている。又、施肥装置10についても同様であって、肥料ホッパー50に肥料を満タン状態に充填して走行、作業を開始したときから計測が開始されるものとしている。そして、制御部5は、上記の各計測項目について、前記苗減少センサ41、又は肥料切れセンサ53が正常に機能しない場合にのみ利用する仕組みにしており、前記苗、又は肥料が植付作業に伴って消費され、それらの残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると、間接的に補給の時であることを告知する構成としている。
【0023】
このように、制御部5は、作業中に何らかのトラブルによって、苗減少センサ41、又は肥料切れセンサ53が正常に機能しない場合、前記各計測項目の中で、少なくとも1項目の計測情報(4項目全ての計測数値に基づく総合判断にする構成にするのは自由である。)に基づき、苗、又は肥料の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると、前記告知装置(苗減少告知部59、又は肥料切れ告知部60)6を作動させる構成としている。
【0024】
つぎにその作用を説明する。
まず、乗用型田植機2は、苗載せ台39上にマット苗を装填し、肥料ホッパー50に肥料を充填して田植作業を開始する。そのとき、制御部5は、ONの状態に立ち上げてスタートすると、各センサから検出情報が入力されながら正常に作業が進んでいく。そして、苗減少センサ41と肥料切れセンサ53は、正常に機能しているときには、前記のごとく計測されている走行時間、走行距離、作業時間、作業面積が苗、及び肥料の補給ごとにキャンセルされ、新規に計測が開始されることになる。
【0025】
そして、制御部5は、田植作業の途中において、苗減少センサ41、又は肥料切れセンサ53が、何らかの原因で正常に機能せず、検出情報の入力が中断してしまうと、前記各計測項目の中で、少なくとも1項目の計測情報に基づき、苗、又は肥料の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると、告知装置(苗減少告知部59、又は肥料切れ告知部60)6に制御信号を出力して作動させ、オペレーターに補給時期を告知するのである。
【0026】
このように、実施例は、制御部5が、少なくとも1項目の計測情報を利用して、苗、又は肥料の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達したとき、告知装置6に制御信号を発して作動させるから、間接的ではあっても、比較的正確に苗、又は肥料の残量が設定量以下になった時点が分かり、直接検出する苗減少センサ41、又は肥料切れセンサ53の故障にもかかわらず、オペレータが気付かずに空運転をする等の事故はなくなり、苗減少告知部59、又は肥料切れ告知部60の作動により補給時期を知り、安全に田植え作業を継続することができる。
【0027】
つぎに、乗用型田植機2に搭載しているHST21に関する実施例を説明する。
この種の油圧無段変速装置であるHSTは、これを移動車両に搭載した場合、発進時(又は停止時)に急激なレバー操作をすると、油路内の圧力が極端に変動してショックが発生し、スムースなスタートができない課題がある。例えば、特開平10−54461号公開特許公報は、上記の如き課題を解決する技術として開発されて出願公開されている。
【0028】
以下、本件出願の実施例を説明する。まず、HST21は、図4に示すように、可変容量型の油圧ポンプPから第一油路(高圧側)65を経由して油圧モーターMに作動油が供給され、正回転(前進)をし、前記油圧ポンプPから第二油路(低圧側)66を経由して作動油が前記油圧モーターMに供給されることによって逆回転(後進)を得る油圧式無段変速装置を構成している。そして、圧抜き回路67は、上記第一油路65と第二油路66とにそれぞれ接続し、サージ圧を除去する圧抜きバルブ装置68が接続して設けられ、異常圧が発生するとドレン油路69からタンク70に逃がす構成としている。そして、圧抜きバルブ装置68は、第一油路65、及び第二油路66にそれぞれ接続した両側に連通させて、外側ポペット72に内側ポペット73を重ねて二重構成とし、内側から外側に向けて張圧させ、外側ポペット72より内側ポペット71のばね圧を強くした構成としている。
【0029】
したがって、圧抜きバルブ装置68は、圧抜き回路67に流入した作動油の圧が設定値より高く、異常圧の場合のみ内側ポペット73を張圧力に抗して押し開き、ドレン油路69に逃がされて機外のタンク70に送られることになる。
【0030】
このように、実施例に係るHST21は、発進時にHSTレバーを急激に操作することによって発生する作動油の異常な圧力を、第一、及び第二油路65,66に接続した圧抜き回路67の圧抜きバルブ装置68によってドレン油路69からタンク70に逃がしてショック抜きをすることができる。したがって、乗用型田植機2は、HST21による発進時のショックがなくなり、スムースなスタートができる利点がある。
【0031】
つぎに、HSTの製品としての良否判定に関する実施例を、図5、乃至図7に基づいて説明する。
通常、HST内部に循環する作動油は、低い蒸気圧が生じると、内部に空隙が発生し、これが油切れの要因となってロックに繋がる虞があることが知られている。そこで、図5のグラフは、各オイルの蒸気圧の変化(温度変化の伴う)を示している。そして、図6は、HSTの製品良否の検査における周波数分析表であって、HSTの吐出側において油圧データを分析して示している。
【0032】
実施例は、油圧センサと油圧センサ信号の周波数分析部とを備えた装置において、図7のフローチャートに示すように、油圧信号を測定して周波数分析を行い、つぎに、パワースペクトル算出によって各周波数の発生する油圧を求め、一定基準値以下の状態の有無を判定するものである。そして、HSTは、図6に示すように、基準値より圧力の低い周波数の製品を不良品と判断し、製品(商品)から除外するのである。
【0033】
そして、HST内の作動油となるオイルの蒸気圧は、油温によって左右される傾向が強いから、評価を行うための圧力設定値を温度に基づいて補正を行うものとした。したがって、HSTは、生産時期(季節ごとの外気温度の変化)の影響を少なくし、精度の高い検査を行うことができる。
【0034】
そして、HSTの出荷時に行う診断方法として、HSTの油圧ポンプから油圧モーターに作動油を送る高圧側と低圧側との双方の圧力振幅値を測定し、その振幅値が一定値の範囲内にない場合、構成部品の精度に異常があり、焼き付きや性能不良の虞があると判定して不良品として出荷しないものとする。
【0035】
要するに、実施例に係る圧力振幅値測定は、高圧側圧力振幅値を測定する方法に合わせて、低圧側の測定も行って、不良箇所を知ることができる優れた検査手段である。
つぎに、植付伝動装置について、図8に基づき実施例を説明する。
【0036】
この種の植付伝動装置は、疎植用のために偏芯ギヤを利用した不等速伝動機構を備えた伝動装置であって、伝動の途中に不等速に起因して「シャクリ上げ現象」が起きる課題がある。このような植付伝動装置は、本件特許出願人の出願に係る先願(特開2005−143340号公開特許公報参照)によって公知の技術となっている。
【0037】
まず、植付クラッチケースにおける株間変速機構を説明すると、株間変速用シフター75は、押引き操作によって株間変速が高速側からA,B,C,Dの4段階の変速切換ができる構成となっている。76は上記シフター75を係止するボールを示している。77は入力軸、78はクラッチ軸を示している。
【0038】
以下、株間変速の概略を説明すると、Aの変速系は、入力軸77に摺動自由にスプライン係合しているギヤ79からクラッチ軸78上に遊嵌しているギヤ80に歯合し、不等速切替クラッチ81を経由してクラッチ軸78に伝わって植付クラッチ82側へ伝動される経路となっている。
【0039】
つぎに、Bの変速系は、ギヤ83からギヤ84、不等速切替クラッチ81を経由してクラッチ軸78から植付クラッチ82側へ伝動される経路となっている。そして、Cの変速系は、ギヤ79からギヤ84を経由して不等速切替クラッチ81を経由してクラッチ軸78、植付クラッチ82側へ伝動される経路となっている。最後のDの変速系は、ギヤ85、ギヤ86、ギヤ87を経由して、前記入力軸77に遊嵌しているギヤ88、ギヤ89、クラッチ軸78に遊嵌しているギヤ90を経由して不等速切替クラッチ81を経由してクラッチ軸78、植付クラッチ82側へ伝動される経路となっている。
【0040】
そして、不等速切替クラッチ81は、オペレーターが不等速切替操作レバーの切替操作によって行われ、上記A,B,Cの変速時には、図8において、紙面右に係合し、Dの変速では、図8の紙面左に操作して係合する構成としている。そして、上記ギヤ89,90は、偏芯ギヤから形成された不等速伝動機構となっており、前記不等速切替クラッチ81をギヤ90に契合した時にクラッチ軸78に不等速伝動が伝わる構成となっている。
【0041】
以上説明した植付伝動装置は、上記特開2005−143340号公開公報に開示されている公知の技術であるが、実施例は、植付クラッチ82を構成している定位置停止カム91を張圧するクラッチスプリング92を押圧するカム機構93を設けている。実施例は、図8に示すように、入力軸77の右端部に遊嵌状態に軸装されているカム駆動ギヤ94が前記不等速クラッチ81の不等速側(図8の右方向)への入り操作に連動して爪クラッチ95が係合してカム駆動ギヤ94を入りにする構成となっている。
【0042】
そして、カム機構93は、回転に伴って固定カム96に案内されながらクラッチ軸78の軸方向に左右へ移動しながら回転し、前記クラッチスプリング92を押圧したり緩めたりする構成となっている。そして、植付伝動軸23は、図8に示すように、植付クラッチ82が入りになるとユニバーサルジョイント97を介して伝動され、苗植付杆45を伝動する構成としている。
【0043】
以上の構成によって、実施例は、回転するカム機構93が固定カム96のカム面によって左右に摺動して植付クラッチ82の荷重が大きくなる位置でクラッチスプリング92を左側に強く張圧して定位置停止カム91を強く駆動側へ押圧することができるから、偏芯伝動のシャクリ上げ現象を阻止することができる利点がある。
【0044】
更に、実施例は、苗植付杆45の引き上げ時、及び苗取り時に荷重がかからないカム機構に構成すれば、シャクリ上げ現象に対応することができる。
そして、一対の苗植付杆45,45がロータリー状に回転する植付軸の基部に装備されているロータリーカムに適宜強さのスプリングで制動をかけて、負荷の変動を減少して上記シャクリ上げ現象に対応することもできる。
【0045】
なお、図8において、ユニバーサルジョイント97の基部に施肥伝動カム98を軸着して施肥装置10に回転動力を取り出す構成としている。
つぎに、図9に示す実施例は、畦クラッチの噛合爪の展開図であるが、100は、駆動側のクラッチ爪を示し、101は従動側のクラッチ爪である。そして、従動側のクラッチ爪101は、駆動方向側102の形状は直角形状とし、非駆動方向側103に角度をつけた噛み合い形状に形成している。
【0046】
つぎに、苗植付杆45,45の苗取量の調整について、図10に基づいて実施例を説明する。
既に、周知のとおり、苗植付杆45,45は、一対がロータリー状に植付回転軌跡を描きながら半周遅れで植え付け作用が行われる構成となっている。そして、従来から、苗植付杆45,45は、苗載せ台39の苗取出43に対する苗取量を調整する場合、一本づつ別々に調整する構成であった。
【0047】
それに対して、実施例は、二つの苗植付杆45,45にそれぞれ設けた取付アーム104を調整ロッド105で連結して構成し、一方の苗植付杆45を調整すれば、他方の苗植付杆45も調整ロッド105で連結されているから同時に連動状態で調整ができる構成にしたものである。このように、一対の苗植付杆45,45は、両方の固定ねじを緩めて調整ができる状態にしておき、一方を調整すれば、他方が調整ロッド105を介して連動されて全く同一の調整ができる。後は、固定ねじを締めるだけである。尚、植付作業時は、調整ロッド105の連結を外すか、又は調整ロッド105を伸縮自在となるように切り替える構成とすればよい。
【0048】
以上のように、実施例は、相互に半周遅れで同一の植付回動軌跡を描きながら一つの苗取出口43に突入して苗を取る二つの苗植付杆45,45を、一方側の苗植付杆45の苗取量を調整すれば、他方も調整ロット105を介して連動して調整ができる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】制御機構のブロック図
【図2】乗用田植機の側面図
【図3】乗用田植機の平面図
【図4】HSTの油圧回路図
【図5】作動油(オイル)の蒸気圧の変化を示すグラフ
【図6】油圧データの周波数を分析したグラフ
【図7】フローチャートを示すブロック図
【図8】植付伝動装置の展開した断面図
【図9】クラッチ爪の展開図
【図10】苗植付杆の作用側面図。
【符号の説明】
【0050】
1 車体 2 農業用作業車両
3 計測装置 4 消費材センサ
5 制御手段 6 告知装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を行いながら走行する過程で消費される消費材を搭載した作業車両(2)において、走行時間と、走行距離と、作業時間と、作業面積との各計測項目の中で、少なくとも1項目について計測する計測装置(3)を設け、前記消費材に関し、作業の進行に伴って消費されて減少する残量を検出する消費材センサ(4)を配置して設け、前記消費材センサ(4)又は前記計測装置(3)の情報に基づき消費材の補給を促す告知装置(6)に制御信号を出力する制御手段(5)を設け、前記制御手段(5)は、前記消費材センサ(4)の検出情報を優先して、消費材の残量が設定量以下になると告知装置(6)を作動させる構成とし、前記消費材センサ(4)が正常に機能しない場合、前記計測装置(3)から入力される計測情報に基づき、前記消費材の残量が設定量以下になったと同等の計測値に達すると前記告知装置(6)を作動させる構成とした作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−22209(P2009−22209A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188453(P2007−188453)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】