説明

作業車両

【課題】作業機を車両前部に容易に装着できる、コストダウンを図るとともに作業性および燃費を向上させた作業車両を提供する。
【解決手段】車両前部に配置するボンネット5の左右側方であって、車体フレーム2に前部作業機21を着脱自在に備え、前部作業機21は、車体フレーム2に設けたポストフレーム31にのみ前部作業機21のメインポスト28を嵌着させて車体フレーム2に装着可能とする。また、ポストフレーム31は、上端部にブラケット35を備えるとともに、ブラケット35は、後部に設けた回動支点ピン34を中心として前後方向に回動自在であり、ポストフレーム31およびブラケット35は、デテント機構dおよび把持部36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部に配置するボンネットの左右側方であって、車体フレームに作業機を着脱自在に備える作業車両に関するものであり、より詳細には、作業機を、車体フレームに設けたポストフレームにのみ作業機のメインポストを嵌着させて車体フレームに装着可能とすることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタなどの作業車両には、車両前部に配置されるボンネットの左右側方に設置されたフロントバンパーの前後にブラケットおよびポストフレームが設けられ、フロントローダなど車両前方で作業を行わせる作業機のメインポストをポストフレームに嵌着して支持させるとともに、作業機のサブフレームをブラケットに固定して、作業機を車両前部に着脱自在に装着させるものがある。(例えば特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2006−257839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両では、作業機を車両側のポストフレームおよびブラケットの二箇所で装着しなければならないほか、フロントバンパーの前端部に取付けられたブラケットが、作業機着脱時の接触や車両走行中の衝撃、あるいは作業機の重量などにより変形し易く、作業機のサブフレームをブラケットに差し込んで固定させる際、サブフレームの前後の動きをロックするためのピンを、変形によりずれたブラケットのピン穴に挿入しずらく、作業機装着に時間と手間、労力を要するという問題があった。そして、ブラケットを介して作業機の重量がフロントバンパーにかかるため、このフロントバンパーの強度を上げる必要があり、材料のコストアップおよび車両の重量増加に伴う燃費の悪化という問題もあった。
そこで、この発明の目的は、作業機を車両前部に容易に装着できる、コストダウンを図るとともに作業性および燃費を向上させた作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、車両前部に配置するボンネットの左右側方であって、車体フレームに作業機を着脱自在に備える作業車両において、前記作業機を、前記車体フレームに設けたポストフレームにのみ前記作業機のメインポストを嵌着させて前記車体フレームに装着可能とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記ポストフレームは、上端部にブラケットを備えるとともに、前記ブラケットは、後部に設けた回動支点を中心として前後方向に回動自在であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記ポストフレームおよび前記ブラケットは、デテント機構を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記ブラケットは、把持部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、車両前部に配置するボンネットの左右側方であって、車体フレームに作業機を着脱自在に備える作業車両において、作業機を、車体フレームに設けたポストフレームにのみ作業機のメインポストを嵌着させて車体フレームに装着可能とするので、車体フレームのブラケットや作業機のサブフレームなどを必要としないほか、車体フレームの強度をさらに上昇させる必要がないとともに、作業機と車両との接続箇所が少なくなり、容易かつ短時間で作業機を車両に着脱することができる。従って、コストダウンを図るとともに、作業性および燃費を向上させた作業車両を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ポストフレームは、上端部にブラケットを備えるとともに、ブラケットは、後部に設けた回動支点を中心として前後方向に回動自在であるので、ブラケットとポストフレームの上部受との間に、作業機のメインポストの上部ピンを挟持することができ、簡単な構成で容易かつ短時間に作業機を着脱することができる。従って、コストダウンを図るとともに、作業性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ポストフレームおよびブラケットは、デテント機構を備えるので、ブラケット前部のポストフレームに対する閉口位置が、車両や地面からの振動や衝撃などを受けても保持され、上部ピンがブラケットからの抜出しを防ぐことができる。従って、安全性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、ブラケットは、把持部を備えるので、作業機を車両から脱着する際、作業者は、ブラケット前部をポストフレームに対して開口するために容易にブラケットを回動させることができ、簡単な構成で容易かつ短時間に作業機を着脱することができる。従って、コストダウンを図るとともに、作業性を向上させた作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一実施例に係る作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図、図2は同トラクタの平面図である。
【0014】
この例の作業車両であるトラクタ1は、車体フレーム2の前後に前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6およびクラッチハウジング7が配置され、さらにこのクラッチハウジング7の後部にはミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。そして、ボンネット5の後部に連続して、車体フレーム2上には、キャビン9が設けられる。なお、トラクタ1は、上述したようなキャビン仕様のほか、ロプス仕様であってもよい。
【0015】
次いで、キャビン9内には、車両操作部として、ブレーキペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル10、ステアリングハンドル11、シート12などが設けられる。また、シート12の両側方に有する左右フェンダ13には、例えば、主変速レバー、副変速レバー、PTO変速レバーなどの各種操作レバー14が突設される。そして、キャビン9の外周はそれぞれフロントガラス15、リヤガラス16、ドア17、屋根18などを取付けてもよい。
【0016】
そして、エンジン6からの動力は、ミッションケース8から前後に突出した不図示のPTO軸に伝達され、このPTO軸から、車両後端部では図示しないユニバーサルジョイントや三点リンク式などの作業機装着装置20を介して車両後端に装着された不図示の後部作業機が駆動されるとともに、後述する本願発明の要部である車両前部に取付けられたフロントローダなどの図1〜2では図示しない前部作業機が駆動される。
【0017】
次に、前部作業機の取付構造について、その具体的構成を説明する。図3は前部作業機を備えるトラクタの左側面図、図4はメインポストを示した前部作業機の右側面模式図、図5は車体フレームに備えるポストフレームを拡大して示した右側面模式図、図6は前部作業機装着時のポストフレームおよび前部作業機の右側面模式図、図7は前部作業機装着後のポストフレームおよび前部作業機の右側面模式図、図8は前部作業機を取外す時のポストフレームを拡大して示した右側面模式図である。
【0018】
この例の前部作業機21は、図3に示すように、前端部にバケットなどのアタッチメント22を備えるフロントローダなどであり、ボンネット5の左右側方であって、車体フレーム2の左右端部それぞれに設けられた取付部24を介して着脱自在に装着される。なお、前部作業機21の構成および作用などは周知技術であるため、詳細な説明は省略する。また、前部作業機21は、フロントローダに限定されず、車両前方もしくは後方での作業をするためのアタッチメント22を備える作業機を車両前部に取付けるものであればよい。
【0019】
そして、前部作業機21の後部には、アタッチメント22の左右後端部に取付けられた左右リフトアーム25のそれぞれに連係し、ボンネット5の左右側方に平行して延設された左右ロッド26および左右アームシリンダ27を取付けた、作業機21側の取付部24である左右メインポスト28が備えられる。
【0020】
このメインポスト28は、図4に示すように、前部作業機21と同じ金属製であってもよく、上部近傍に上部ピン29が貫設されるとともに、下端部の中央近傍は、上方に湾曲させた凹部を有する下部受30が設けられる。
【0021】
次に、左右フロントバンパー23のそれぞれ後部近傍の外側面には、車両本体側の取付部24である左右ポストフレーム31が溶接などにより立設される。また、前部作業機21の図示しない油圧制御弁が、左右ポストフレーム31の上部に不図示の取付具を介して取付けられる。
【0022】
このポストフレーム31は、図5に示すように、前部作業機21と同じ金属製であってもよく、上端部の中央近傍には、下方に湾曲させた凹部を有する上部受32が設けられるとともに、下端部近傍には、下部受30を載置させるためのピン33が、車体フレーム2からポストフレーム31を貫設し、それぞれ左右外側方に突設される。また、後部の上端部近傍に貫設される回動支点ピン34を介して前後方向に回動自在のブラケット35が取付けられる。
【0023】
ブラケット35は、中央近傍の下端部に、上方に湾曲させた凹部を有する挟持部36が設けられるとともに、ブラケット35の上端部には、把持部37が設けられる。
【0024】
そして、図5の状態のように、ブラケット35の前部がポストフレーム31に対して閉じた状態を保つためのデテント部材38,39が、ポストフレーム31の上部外側面上に設けられる。このデテント部材38,39は、弾性材もしくは金属などの材質からなり、中央上部に凹部38a,39aを備える略コ字の形状を有するもので、ブラケット35における挟持部36前後方向に有する角部40a,40bが、それぞれデテント部材38,39の凹部38a,39aに嵌入されることで、ブラケット35の位置が保持される。
このように、デテント部材38,39とブラケット35の角部40a,40bとからデテント機構dが構成される。
【0025】
ここで、車両前部に前部作業機21を装着させる場合には、図6に示すように、まず、装着準備をした前部作業機21に対して車両を前後進させるなどして、前部作業機21のメインポスト28をポストフレーム31の位置に合わせ、ポストフレーム31の外側方であって、ピン33上に、メインポスト28の下部受30を載置させる。なお、図6〜8では、メインポスト28が取付けられている車体フレーム2の記載を省略する。
【0026】
次いで、油圧操作により前部作業機21を車両後方へ摺動させると、メインポスト28の上部ピン29はピン33を回動支点として、図中に示すように、半径Rの描く円弧に沿って移動し、ポストフレーム31のブラケット35と位置P1で接触すると、ピン33の動く力F1は、位置P1においてブラケット35の回動支点ピン34を回動支点として、ブラケット35の前部を上方へ回動させる分力F1´を発生させる結果、ブラケット35の前部が矢印Bの方向へ回動するため、ブラケット35の前部がポストフレーム31の前部に対して開口される。
【0027】
次いで、図7に示すように、上部ピン29がポストフレーム31の上部受32に嵌入された後、前部作業機21のアタッチメント22を油圧操作により地面lから浮かすと、図中に示すように、上部ピン29は、前部作業機21の前端部に備えられた重量を有するアタッチメント22により車両前方へ動くF2の力を発生する。このとき、上部ピン29とブラケット35とが接触する位置P2において、ブラケット35を下方に押す分力F2´が働き、ブラケット35の前部が矢印Bの方向へ回動するため、ブラケット35は回動支点ピン34を回動支点として、ブラケット35の前部がポストフレーム31の前部に対して閉口される。
【0028】
さらには、ブラケット35前部の閉口位置において、図5および図8に示すように、ブラケット35の角部40a,40bが、それぞれデテント部材38,39の凹部38a,39aに嵌入されていることで、ブラケット35の閉口位置が車両や地面からの振動や衝撃などを受けても保持される。その結果、上部ピン29は、ブラケット35の挟持部36と、ポストフレーム31の上部受32との間に挟持され、上部ピン29がブラケット35からの抜出しを防ぐことができる。なお、図8では、ポストフレーム31に接続されているロッド26およびアームシリンダ27の記載を省略したものである。
【0029】
次いで、車両前部から前部作業機21を取り外す場合には、図8に示すように、作業者がブラケット35の上端部に有する把持部37を掴んで、回動支点ピン34を中心とし、ブラケット35を後方へ摺動させることにより、ブラケット35の角部40a,40bが、それぞれデテント部材38,39の凹部38a,39aから脱離し、ブラケット35の前部がポストフレーム31の前部に対して開口される。その結果、車両を後進させるなどして、上部ピン29をポストフレーム31の上部受32から脱離させるとともに、ピン33上からメインポスト28の下部受30を脱離させ、車両から前部作業機21が脱着される。
【0030】
そして、前部作業機21の脱着後に、作業者は把持部37を掴んで、回動支点ピン34を中心とし、ブラケット35を前方に回動させ、ブラケット35の角部40a,40bを、それぞれデテント部材38,39の凹部38a,39aに嵌入させ、ブラケット35前部が元の閉口位置に戻される。
【0031】
なお、ブラケット35の挟持部36には、図示しないロック機構を設けてもよく、作業者は車両前部から前部作業機21を取り外す場合にのみこのロック機構を解除してブラケット35を回動させることができるので、前部作業機21の装着中に誤って挟持部36を回動し、前部作業機21が脱着してしまうことを防ぎ、安全性を向上させることができる。
【0032】
以上のような構成にすることで、車体フレーム2のブラケットや前部作業機21のサブフレームなどを必要としないほか、車体フレーム2の強度をさらに上昇させる必要がないとともに、前部作業機21と車両との接続箇所が少なくなり、容易かつ短時間で前部作業機21を車両に着脱することができる。また、ブラケット35とポストフレーム31の上部受32との間に、前部作業機21のメインポスト28の上部ピン29を挟持することができ、簡単な構成で容易かつ短時間に前部作業機21を着脱することができる。さらに、デテント機構dを備えるので、ブラケット35前部のポストフレーム31に対する閉口位置が、車両や地面からの振動や衝撃などを受けても保持され、上部ピン29がブラケット35の挟持部36と、ポストフレーム31の上部受32との間に挟持されて、上部ピン29がブラケット35からの抜出しを防ぐことができる。そして、ブラケットの把持部により、前部作業機21を車両から脱着する際、作業者は、ブラケット35の前部をポストフレーム31に対して開口するために、容易にブラケット35を回動させることができ、簡単な構成で容易かつ短時間に前部作業機21を着脱することができる。
【0033】
以上詳述したように、この例のトラクタ1は、車両前部に配置するボンネット5の左右側方であって、車体フレーム2に前部作業機21(作業機)を着脱自在に備え、前部作業機21は、車体フレーム2に設けたポストフレーム31にのみ前部作業機21のメインポスト28を嵌着させて車体フレーム2に装着可能とするものである。加えて、ポストフレーム31は、上端部にブラケット35を備えるとともに、ブラケット35は、後部に設けた回動支点ピン34(回動支点)を中心として前後方向に回動自在であり、ポストフレーム31およびブラケット35は、デテント機構dを備えるとともに、ブラケット35は把持部36を備える。
【0034】
また、上述の例では、作業車両の一例としてホイール式トラクタ(農作業車両)について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタのほか、建設作業車両として、バックホーやブルトーザ、その他除雪車両など、車両前部に前部作業機を着脱自在に備えたあらゆる作業車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一例としての、ホイール式トラクタを示す左側面図である。
【図2】ホイール式トラクタの平面図である。
【図3】前部作業機を備えるトラクタの左側面図である。
【図4】メインポストを示した前部作業機の右側面模式図である。
【図5】車体フレームに備えるポストフレームを拡大して示した右側面模式図である。
【図6】前部作業機装着時のポストフレームおよび前部作業機の右側面模式図である。
【図7】前部作業機装着後のポストフレームおよび前部作業機の右側面模式図である。
【図8】前部作業機を取外す時のポストフレームを拡大して示した右側面模式図である。
【符号の説明】
【0036】
5 ボンネット
21 前部作業機
22 アタッチメント
24 取付部
25 左右リフトアーム
26 左右ロッド
27 左右アームシリンダ
28 左右メインポスト
29 上部ピン
30 下部受
31 左右ポストフレーム
32 上部受
33 ピン
34 回動支点ピン
35 ブラケット
36 挟持部
37 把持部
38,39 デテント部材
38a,39a 凹部
40a,40b 角部
B 矢印
R 半径
P1,P2 位置
F1,F2 力
F1´,F2´ 分力
d デテント機構
l 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に配置するボンネットの左右側方であって、車体フレームに作業機を着脱自在に備える作業車両において、
前記作業機を、前記車体フレームに設けたポストフレームにのみ前記作業機のメインポストを嵌着させて前記車体フレームに装着可能とする作業車両。
【請求項2】
前記ポストフレームは、上端部にブラケットを備えるとともに、前記ブラケットは、後部に設けた回動支点を中心として前後方向に回動自在であることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ポストフレームおよび前記ブラケットは、デテント機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ブラケットは、把持部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−91850(P2009−91850A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265374(P2007−265374)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】