説明

作用剤の輸送の制御及び吸収の向上のための逆ミセル送達システム

【課題】関心のある作用剤の制御された徐放のための膜貫通性輸送の送達システム、並びに該送達システムを調製するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】哺乳類の消化管のような生体膜を横切った関心のある作用剤の吸収を高めるための逆ミセル送達システムであり、該逆ミセルは、水性媒体又は生理的媒体において少なくとも1つのイオン性両親媒性化合物と少なくとも1つのイオン化可能な極性の活性作用剤とを含む。送達システムは、消化管又はそのほかの膜を横切る作用剤の輸送を促進し、流体環境の中で関心のある作用剤の生体内の放出及び利用率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心のある作用剤の制御された徐放のための膜貫通性輸送の送達システム、並びに該送達システムを調製するための組成物及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は関心のある作用剤を使用環境に分配するための逆ミセル輸送システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
消化管(GIT)への薬剤の経口投与は、ヒト医学及び獣医学の双方にとって好ましい方法である。特定の化合物は、例えば促進輸送又は能動輸送のようなさらに特異的なメカニズムによって吸収されるが、腸管から上手く吸収される従来の薬剤はほとんど、受動拡散の経路によって細胞透過経路又は傍細胞経路を介してGITを横切って輸送される。
【0003】
経口投薬の治療上の真価及び臨床上の意義は、GITにおける活性剤の吸収にある程度依存する。幾つかの経口投与される医薬用薬剤が臨床的利点を損なわれるのは、ヒトGITにおけるその乏しい吸収に起因し、結果として生物学的利用率が低くなる。
【0004】
非極性分子は、本来備わっている親油性及び高い分配係数のためにGITの粘膜細胞膜で一般に容易に吸収される。
【0005】
メトフォルミン(metformin)、シメチジン、ラニチジン、クロモグリク酸ナトリウムビホスホネート(例えば、クロドロネート)及びカプトプリルのような分配係数が低い極性分子は、経口で服用させると乏しい又は不安定な吸収を示すことが多い。インスリン、カルシトニン(calcitonin)、副甲状腺ホルモン又はその一部分若しくは類縁体、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)又はその類縁体(例えば、ナファレリン、ブセレリン、ゴセレリン)、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン(erythropoietin)、ソマトスタチン、インターフェロン及びヘパリンのようなポリペプチド及び多糖類の薬剤は、その極性の性質及びサイズにより吸収が乏しいだけでなく、GITに存在する内因性の酵素によって分解されうるので、経口で投与することはできない。そのような薬剤を経口で投与すれば、静脈内投与に比べた絶対生物学的利用率(全身性の循環に到達する量として定義される)は一般に低い(通常、1%未満から60%まで)。
【0006】
極性薬剤を経口で投与しようとする際に直面する本来備わっている問題にもかかわらず、経口吸収を改善するために種々のアプローチが提案されている。もっともらしい戦略には、薬剤を安定化し、及び/又はさらに脂質溶解性にして脂質膜又はGITを横切って拡散するチャンスを改善する化学修飾が挙げられてきた。ほかの研究者は、代謝損失を減少させるためにペプチダーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン)のような安定剤を加えているが、ほかでは、非イオン系界面活性剤の形態での種々の吸収促進剤、胆汁塩及びその類縁体、リン脂質、キレート剤又はアシルカルニチンを使用している。
【0007】
これら以前の試みは文書で十分に立証されており、関連する文献に概説されている。例えば、タンパク質、ペプチド及びそのほかの極性薬剤の腸管透過性を高める種々の手段は、スウエンソン及びクラトロ(Swenson and Curatolo,Advan.Drug Del.Rev.8,39,1992)によって概説されている。一方、混合システムが報告されたが、これらは胆汁塩/オレイン酸混合物及びポリエトキシル化水素添加ヒマシ油/オレイン酸混合物を含むシステムに制約されていた。
【0008】
グリココール酸ナトリウム(30mM)及び40mMの脂肪酸(リノール酸)を含む混合ミセルシステムを用いた10単位/kgのインスリンのイヌへの回結腸送達は、スコット−モンクリーフら(Scott−Moncrieff and others,J.Pharm.Sci.83,1465(1994))によって記載されている。報告された生物学的利用率は1.4%であった。
【0009】
中鎖グリセリド(MCG)は、親水性薬剤の腸管吸収を高めると報告されている。例えば、ベスキッドら(Beskid et al.,Pharmacology,34,77,1988)は、グリセリルモノ−及びジ−カプリル酸の混合物を組み入れている製剤が、ラットの腸管からの抗生剤の吸収を高めることを報告した。中鎖グリセリドの中鎖の長さの脂肪酸(C〜C12)との混合物も報告されている(例えば、Muranushi et al.Chem.Phys.Lipids 28,269,1981を参照のこと)。
【0010】
固形医薬組成物における陰イオン系界面活性剤の使用も知られている。しかしながら、最近まで、そのような界面活性剤の存在は、組成物からの薬物の迅速な且つ全体の放出を促進するように設計されていた(例えば、Japanese Kokai 7320778及びA.A.Kassem et al,J.Drug Research,1974,6,95を参照のこと)。
【0011】
米国特許第4,540,566号及びデーリーら(P.B.Daly et al,Int.J.Pharm.18,201(1984))は、マレイン酸クロルフェニラミン、セルロースエーテル及び陰イオン系界面活性剤を含有する徐放性組成物を記載している。しかしながら、該組成物は単純な混合物であり、薬物送達に対していかなる特別の利点も提供していない。
【0012】
高い溶解性及び乏しい透過性を呈する、経口で投与される極性薬剤、特にクラスIII生物製剤学分類に属するものの吸収を改善することが可能である送達システムが望ましい。
【0013】
さらに、当該技術の範囲内には、高度にイオン化した極性の活性剤の使用環境への徐放性の薬剤送達を提供し、生理的pH又は酵素のような使用環境の生理的変数に従順である、信頼できる薬剤送達システムに対するニーズが依然として存在する。
【0014】
本発明の目的は、従来技術の不都合を克服することである。
【0015】
主クレームの特徴を組み合わせることによって上記目的は満たされる。従属クレームは本発明のさらなる利益的具体例を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
(発明の要約)
本発明は、関心のある作用剤の制御された徐放のための膜貫通性輸送の送達システム、並びに該送達システムを調製するための組成物及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、関心のある作用剤を使用環境に分配するための逆ミセル輸送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に従って、逆ミセル及び関心のある極性作用剤を含む膜貫通性の送達システムが提供される。好ましくは、逆ミセルは少なくとも一つの両親媒性のイオン性化合物を含み、関心のある極性作用剤は少なくとも一つの極性のイオン化可能な作用剤を含む。両親媒性化合物は、流体環境でミセルを形成することが可能である陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤又は両性イオン系界面活性剤であってもよい。陰イオン系界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム又はカリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、又はこれらの組み合わせより成る群から選択されてもよい。しかしながら、そのほかの陰イオン系界面活性剤を用いてもよい。同様に、陽イオン系界面活性剤は、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)、臭化セチル−トリアンモニウム(CTAB)、臭化セチルピリジニウム(CPB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DOTAC)、パーフルオロノナン酸ナトリウム(SPFN)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTMA)、又はこれらの組み合わせより成る群から選択されてもよい。しかしながら、本発明の送達システムではそのほかの陽イオン界面活性剤を用いてもよい。
【0018】
上記で定義したように、また本発明に従って、関心のある作用剤がpH7.4にて水とオクタノールとの間の約10未満の分配係数を特徴とする送達システムが提供される。
【0019】
関心のある作用剤は、関心のある治療剤を含んでもよいが、これに限定されない、例えば、高い溶解性及び低い透過性を呈するクラスIII生物製剤学分類の治療上活性のある化合物を含んでもよいが、これに限定されない。例えば、しかし限定を意味するのではなく、関心のある作用剤は、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗アメーバ剤、殺トリコモナス剤、抗パーキンソン剤、抗マラリア剤、痙攣防止剤、抗うつ剤、関節炎防止剤、抗真菌剤、血圧降下剤、解熱剤、抗寄生虫剤、抗ヒスタミン剤、αアドレナリン作動薬、αブロッカー、麻酔剤、気管拡張剤、殺生剤、殺菌剤、静菌剤、βアドレナリン作用性ブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、循環器薬、避妊薬、充血緩和剤、利尿剤、抑制剤、診断薬、電解質、睡眠薬、ホルモン、高血糖薬、筋弛緩薬、筋収縮薬、眼科薬、副交感神経薬、精神賦活剤、鎮静剤、交感神経様作用薬、精神安定剤、泌尿器薬、膣薬、殺ウイルス剤、ビタミン、非ステロイド系抗炎症剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ポリペプチド、タンパク質、催眠薬又はこれらの組み合わせより成る群から選択されてもよい。
【0020】
上記で定義された送達システムは、固形錠剤、マトリクス錠剤、顆粒又はカプセルに製剤化されてもよい。さらに、送達システムは、例えば、粘度増強剤、腸溶性ポリマー、pH特異的バリアポリマー、希釈剤、付着防止剤、流動促進剤、結合剤、可溶化剤、チャネリング剤、湿潤剤、緩衝剤、芳香剤、吸収剤、甘味剤、着色剤、潤滑剤又はこれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない、一つ又はそれより多くの薬学上許容可能な賦形剤を含んでもよい。
【0021】
さらに、上記で定義された本発明に従って、送達システムは、圧縮法若しくは粉砕法によるマトリクス型の固形緻密体によって、又は湿式若しくは乾式の押し出し法によるマトリクス型の押し出し球状体によって形成されてもよい。さらに送達システムは、造粒して又はマイクロカプセルに入れて、固形緻密体に圧縮されてもよい又はカプセルに充填されてもよい粒子状物質を形成してもよい。投薬形態は、造粒混合物、粒子状混合物、球状体混合物、緻密体混合物及び乾燥混合物より成る群から選択されてもよい。任意で、送達システムは、カプセルに充填されてもよいし、又は好適な液体ビヒクルに懸濁されてもよい。
【0022】
また、本発明に従って、一つ又はそれより多くの作用剤を、それを必要とする対象に送達するための送達システムの使用が提供される。好ましくは、作用剤は治療剤である。それを必要とする対象は、例えばヒト対象のような、しかしこれに限定されない、いかなる哺乳類対象も含んでもよい。
【0023】
さらに、本発明に従って、治療剤を、それを必要とする対象に送達する方法が提供される。該方法は、
i)関心のある治療剤で送達システムを製剤化すること;と
ii)関心のある治療剤を含む送達システムを、それを必要とする対象に投与することとを含む。
投与工程は、経口投与を含むが、これに限定されない。
【0024】
本要約は、本発明の必要な特徴すべてを必ずしも記載しているわけではなく、本発明は、記載された特徴の副次的な組み合わせに存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1Aに従って調製した本発明の送達製剤に対するグルコファージXR(従来技術)の溶解プロフィールの比較結果を示す。
【図2】図2は、実施例1Bに従って調製した本発明の送達システムの溶解プロフィールの結果を示す。
【図3】図3は、試験管内で膜貫通性の輸送能力を測定するのに用いてもよい二相の溶解システムの図示を示す。
【図4】図4は、水性相における陽イオン系両親媒性物質、塩化セチルピリジニウムの存在下及び非存在下での水/オクタノールシステムのオクタノール層への染料サンセットイエローの輸送プロフィールを示す。
【図5】図5は、水性相における陰イオン系両親媒性物質、ラウリル硫酸ナトリウムの存在下及び非存在下での水/オクタノールシステムのオクタノール層への染料メチレンブルーの輸送プロフィールを示す。
【図6】図6は、グルコファージXR(メトフォルミン)500mgの徐放性製剤(従来技術)と実施例1Aに従って調製したメトフォルミン500mgの徐放性製剤を含む本発明の送達システムとの間の非水性(オクタノール)相におけるメトフォルミンの溶解プロフィールの比較結果を示す。
【図7】図7は、グリコファージXR(500mgのメトフォルミン)及び実施例1Aに従って調製したメトフォルミン500mgを含む本発明の送達システムを経口投与した際の、健常なヒト被験者におけるメトフォルミンのプロフィールの比較結果を示す。
【図8】図8は、グリコファージXR(500mgのメトフォルミン)及び実施例1Bに従って調製したメトフォルミン500mgの徐放性製剤を含む本発明の送達システムからのメトフォルミン放出の比較結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のこれら及びそのほかの特徴は、以下の添付の図面を参照する説明からさらに明らかになるであろう。
【0027】
本発明は、関心のある作用剤の制御された徐放のための膜貫通性輸送の送達システム、並びに該送達システムを調製するための組成物及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は関心のある作用剤を使用環境に分配するための逆ミセル輸送システムを提供する。
【0028】
以下の説明は、単に例示する目的であって、本発明を実行に移すのに必要な特徴の組み合わせに限定されることのない好ましい実施形態である。
【0029】
本発明の実施形態の態様に従って、逆ミセル及び関心のある極性作用剤を含む膜貫通性の送達システムが提供される。好ましくは、逆ミセルは少なくとも一つの両親媒性のイオン性化合物を含み、関心のある極性作用剤は少なくとも一つの、例えば、治療上活性のある作用剤のような、しかしこれに限定されない極性のイオン化可能な関心のある作用剤を含む。
【0030】
用語「両親媒性の(amphipathic)イオン性化合物」又は「両親媒性の(amphiphilic)イオン性化合物」によって、その分子又はイオンが極性溶媒及び非極性溶媒の双方に特定の親和性を有する、合成の及びそのほかのいかなる化合物も意味する。本明細書で使用するとき、用語「両親媒性の(amphipathic)化合物」は、用語「両親媒性の(amphiphilic)化合物」と同義語である。
【0031】
両親媒性のイオン性化合物に存在する極性基及び非極性基の数及び性質によって、該化合物又は両親媒性物質は、主として親水性(水好性)、親油性(油好性)であってもよく、又は両極端の間で理に適って均衡してもよい。例えば、しかし、限定を望まないが、イオン系界面活性剤は、両親媒性のイオン性化合物の部類である。
【0032】
親水性領域の性質を参照して、界面活性剤を分類することができ、それは、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系又は非イオン系でありうる。本発明では、イオン系界面活性剤又はその混合物が好ましい。
【0033】
本発明の逆ミセル送達システムに陰イオン系、陽イオン系又は両性イオン系の界面活性剤を用いてもよい。本発明によって採用されてもよい陰イオン系界面活性剤の例には、界面領域において界面活性剤分子の好都合な充填幾何構造を呈する界面活性剤が挙げられ、これらに限定されないが、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)が挙げられるが、これらに限定されない。送達システムで用いてもよいそのほかの陰イオン系界面活性剤には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム又はカリウム、オクタデシル硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属硫酸塩、例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及びジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩のようなアルカリ金属スルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1つの実施形態の態様では、陰イオン系界面活性剤は、例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及びジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩のようなアルカリ金属スルホン酸塩であるが、これらに限定されない、アルカリ金属スルホン酸塩である。
【0034】
本発明により採用されてもよい陽イオン系界面活性剤には、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)、臭化セチルトリアンモニウム(CTAB)、臭化セチルピリジニウム(CPB)、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DOTAC)、パーフルオロノナン酸ナトリウム(SPFN)及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、逆ミセルを形成することが可能であるいかなる陽イオン系界面活性剤も本発明の送達システムで用いてもよい。
【0035】
当業者に明らかであるように、本発明の送達システムに用いられる界面活性剤(単数)又は界面活性剤(複数)はヒトの摂取に対する障害がないことが一般的に好ましい。従って、毒性の低い界面活性剤が好ましい。例えば、しかし、いかなる様式においても限定することを望まないで、約10g/kgを超えるLD50を有する界面活性剤が好ましい。さらに好ましくは、界面活性剤は、約15g/kgを超えるLD50を呈する。そのほかの副作用が存在しないことも望ましい。ヒトの摂取についてすでに認可されている界面活性剤が好ましいが、本発明の送達システムでは、そのほかの界面活性剤を用いてもよい。
【0036】
「臨界ミセル濃度」(CMC)は、特定の溶媒においてミセル相を形成するのに必要とされる界面活性剤の最少量を定義し、その溶媒における界面活性剤モノマーの溶解度を表すとみなされてもよい。本明細書で使用するとき、「臨界逆ミセル濃度」(CrMC)は、特定のイオンを含有する特別の溶媒において逆ミセル相を形成するのに必要とされる界面活性剤の最少量を定義する。
【0037】
CMCをかなり上回る界面活性剤の濃度では、いかなる少量のモノマー界面活性剤(及びおそらく小さなプレミセルの界面活性剤の凝集体)もミセル凝集体における大半の界面活性剤と釣り合って存在する。
【0038】
特別の溶媒における界面活性剤モノマーの溶解度は、特定の溶媒−溶質の力に依存する。理論によって束縛されることを望まないで、極性界面活性剤とアルカン溶媒分子との間の主な分子間相互作用は、双極子−誘起双極子の力及び誘起双極子−誘起双極子の力であると考えられている。
【0039】
用語「イオン性モノマー」によって、陽イオン性及び陰イオン性のモノマー、すなわち、エチレン性に不飽和な基を含有するモノマー分子の一部がそれぞれ、正又は負の電荷を有するモノマーを意味する。
【0040】
逆ミセルを形成するイオン性モノマーの能力は、臨界ミセル濃度(CMC)を決定するための当該技術で既知の標準試験によって決定することができる。当業者に既知であるように、例えば、屈折率、光散乱、界面張力、粘度、染料溶解性及び蛍光物質の吸収性のような界面活性剤溶液の特性の一部は普通、CMCまで濃度が増加するにつれて線形に変化し、CMCの時点で、一つ又はそれより多くのこれら特性において破壊又は変化がある(化学技術の百科事典(Encyclopaedia of Chemical Technology)、Kirk−Othmer−第3版、22巻,エイ ワイリーインターサイエンス出版−ニューヨーク(A Wiley Interscience Publication−New York)、1983年、354ページ、本明細書にこれを引用し援用する)。
【0041】
逆ミセルの形成
逆ミセルは、極性の核を有し、[水]/[界面活性剤]の比(W)に依存する溶媒特性を持ち、高度に極性の水溶性化合物(例えば、タンパク質、酵素、イオン化した薬剤、化学触媒及び開始剤のような親水性物質)及び時には普通不溶性の両親媒性化合物でさえ溶媒和することができる。低いW値では、界面活性剤分子におけるイオン性の基及び対イオン核との会合のために、ミセル中の水は高度に構造化される。ミセル核における環境は、大きな対イオンの濃度のためにイオン性流体の環境に似ている。大きなW値では、膨潤ミセル(またはマイクロエマルション)は、識別可能な第3の溶媒環境を提供し、生物体水(bulk water)の特性に近い、自由水の核を有すると考えられている。特定の酵素及び極性化合物は、大量の水で膨潤させた逆ミセルによってしか可溶化されない(約10より大きいW)。
【0042】
以下にさらに詳しく記載するように、また、理論によって束縛されることを望まないで、イオン性の両親媒性物質が親水性流体に導入されると、両親媒性物質の濃度が固有のCMC値以上であるという条件で、ミセルの形成と共に凝集が生じる。ミセルにおける凝集体組成物は、炭化水素鎖がミセルの内側を向いてそれ自体の親油性環境を形成する一方で、炭化水素核を取り囲む極性領域は親水性流体の連続相における極性分子と会合するように、配向する。非極性流体の環境におけるミセル凝集体の配向性は、本質的に逆転させられる。極性領域はミセルの内側を向く一方で、ミセルの核を取り囲む炭化水素鎖は流体環境における非極性分子と相互作用する。
【0043】
低濃度で液体媒体に存在する場合、両親媒性物質は分離して存在し、コロイド状に近いサイズである。濃度が増すにつれて、狭い濃度範囲にわたって凝集が生じる。数種のモノマーから構成されるこれらの凝集体をミセルと呼ぶ。ミセルが形成されるモノマーの濃度を臨界ミセル濃度又はCMCという。
【0044】
陰イオン系又は陽イオン系の界面活性剤のようなイオン性の両親媒性物質が、炭化水素の凝集を介して親油性の核を形成することにより親水性溶媒の中でミセルを生じることは当該技術で周知である。ミセルの核を取り囲むこれら化合物の極性頭部は、流体環境における極性分子と相互作用し、会合する。本明細書に記載するように、極性の核を持つ逆ミセルが親水性流体中に存在することができ、そのような逆ミセル及びマイクロエマルションが、極性のイオン化可能な化合物の生体膜を横切った輸送及び送達を提供することができるという独特で有用な特性を有することが思いがけなく認められた。
【0045】
イオン化の特徴が両親媒性物質の極性頭部に相対する分子又はイオンの荷電を結果として生じる極性分子から構成される親水性流体媒体に、イオン性の両親媒性物質を導入すると、普通予想されるのとは逆の配向性で、会合コロイドが形成されてもよい。両親媒性物質の荷電した極性領域は、流体環境における反対に荷電した極性分子又はイオンと会合する。両親媒性物質の特定の濃度にて、会合コロイドが形成されてもよい。これらのコロイドは、両親媒性物質の極性頭部と会合した、流体媒体において反対に荷電したイオン又は分子から成る極性の核を持つ逆ミセルを含む。
【0046】
そのような逆ミセルは、コロイド状の内部相において両親媒性物質の親油性領域に取り囲まれ、親水性流体の連続相から分離される。
【0047】
消化管内腔のような一般的な生理的環境における高度にイオン化可能である親水性薬剤は、その極性及び電荷のためにある程度、不十分にしか吸収されないと考えられている。これらのグループの化合物はGITの水性の生理的媒体には可溶性である一方で、それらは乏しい分配係数及びGITの膜を横切る低い透過性を呈する。幾つもの治療剤が、時には当該技術でクラスIII(高い溶解性、低い透過性)生物製剤学化合物と言われるこれらのカテゴリーの化合物に属し、低い生物学的利用率と共に飽和可能な吸収動態を示すことが多い。本発明の逆ミセル送達システムは、これらの化合物のGIT膜貫通性の輸送及び送達を高める。
【0048】
いったん、生理的な流体環境に溶解されると、極性作用剤は主として荷電したイオン又は分子として存在する。これらの条件において形成された逆ミセルは、親油性の炭化水素により取り囲まれたミセルの核において結合した作用剤から構成される。結合し、イオン化された作用剤は、球形のコロイド状逆ミセルに内包されると考えられている。これらの逆ミセルのコロイドはGITの親油性粘膜を横切って区分化するので、治療剤に対して輸送キャリアとして作用する。いったん、親油性の膜を横切って区分化されると、膜の内部での濃度がCMC又はCrMCより低下し、親油性環境において界面張力が低下するにつれて、逆ミセルは解離する。
【0049】
逆ミセルの送達システム
本発明の逆ミセル送達システムが水又はそのほかの生物学的流体のような環境の外部流体に接触し始めると、イオン性両親媒性物質の爆発的放出又は漸次の放出が生じてもよい。さらなるイオン性両親媒性物質と関心のある作用剤の同時放出がそれに続く。
【0050】
放出されたイオン性両親媒性物質はイオン性モノマーを形成する水性流体媒体に溶解する。関心のある作用剤の放出の際、流体環境の一般的なpH及び化合物のpKaに依存して、イオン化された分子が形成される。これらのイオンはイオン性両親媒性物質の極性領域とは反対の永久電荷を持つ。イオン化された関心のある作用剤及び両親媒性物質の反対に荷電した極性基は互いに引き付け合う。理論によって束縛されることを望まないで、両親媒性物質の十分なイオン性モノマーが水性流体における荷電した種に引き付けられるある時点で、凝集及び逆ミセルの形成が起きる。この時点が臨界逆ミセル濃度(CrMC)であると考えられている。水性流体環境におけるこれらの逆ミセルは最終的にはコロイド状のマイクロエマルションを形成する。ヒトのGITでは、そのような逆ミセルが、吸収する粘膜細胞の親油性の膜と直接接触する。逆ミセルの外側表面の固有の親油性のために、それらはこれらの膜の中に迅速に区分化し、それによって吸収を促進する。
【0051】
理論によって束縛されることを望まないで、いったん、逆ミセルが親油性の膜の中に区分化すると、逆ミセルの両親媒性分子成分の濃度は、CMC又はCrMCより低くなる。逆ミセルは脱凝集を受け、その核の中に極性作用剤を放出する。これらの作用剤の輸送の動態及び膜貫通性の放出は、本質的にゼロ次であってもよく、又は約ゼロ次に近くてもよい。
【0052】
本発明に従って、用語「極性作用剤」は、pH7.4にて水とオクタノールとの間で約10より小さい分配係数を持つ化合物を包含するように使用される。好ましくは、極性作用剤は、生理的流体に可溶性であり、一般的なpHで高度にイオン化可能である。一つ又はそれより多くの極性作用剤又は極性作用剤の混合物を本明細書で記載されるような投与のために併用することが企図される。
【0053】
極性作用剤は極性薬剤のような治療剤であってもよい。そのような実施形態では、薬剤は好ましくは約100Da〜約100000Daの分子量を有する。さらに、極性薬剤は好ましくは活性のある薬剤であるが、プロドラッグのように本性が隠された形態の薬剤であってもよい。用語「活性のある薬剤」は、例えば、哺乳類、ヒト及び霊長類のような、しかし、これらに限定されない動物において局所性の又は全身性の効果(単数)又は効果(複数)を生じる、治療上、薬理上、薬学上、予防上又は診断上の活性がある化合物を包含することを意味する。
【0054】
治療剤、薬理上活性のある作用剤又はそのほかの好ましい極性作用剤には、当業者に明らかであるように、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗アメーバ剤、殺トリコモナス剤、抗パーキンソン剤、抗マラリア剤、痙攣防止剤、抗うつ剤、関節炎防止剤、抗真菌剤、血圧降下剤、解熱剤、抗寄生虫剤、抗ヒスタミン剤、αアドレナリン作動薬、αブロッカー、麻酔剤、気管拡張剤、殺生剤、殺菌剤、静菌剤、βアドレナリン作用性ブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、循環器薬、避妊薬、充血緩和剤、利尿剤、抑制剤、診断薬、電解質、睡眠薬、ホルモン、高血糖薬、筋弛緩薬、筋収縮薬、眼科薬、副交感神経様薬、精神賦活剤、鎮静剤、交感神経様作用薬、精神安定剤、泌尿器薬、膣薬、殺ウイルス剤、ビタミン、非ステロイド系抗炎症剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ポリペプチド、タンパク質、催眠薬又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の送達システムにおいて関心のある極性作用剤として採用されてもよい薬剤には、当業者に明らかであるように、メトフォルミン、シメチジン、ラニチジン、クロモグリク酸ナトリウム、ガバペンチン、並びに例えば、クロドロネート及びカプトプリルのようなビスホスホネート類;例えば、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、例えば、ナファレリン、ブセレリン及びゴセレリンのような、しかし、これらに限定されない黄体形成ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ソマトスタチン及び例えばオクトレオチド及びバプレオチドのような、しかし、これらに限定されない類縁体、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、プロインスリン、グルカゴン、バゾプレッシン、デモプレッシン、甲状腺刺激ホルモン、心房性ペプチド、組織プラスミノーゲン活性化剤、第VIII因子、コレシストキニン、オクトレオチドのような、しかし、これらに限定されないポリペプチド薬剤;例えば、低分子量ヘパリンのような、しかし、これらに限定されない多糖類薬剤;DNA又はDNAのコンストラクトのような遺伝子及びアンチセンス剤、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明はまた、これらの変異体、類縁体及び誘導体並びに本発明の送達システムにおける関心のある極性作用剤としてのそのほかの薬剤も企図する。
【0056】
そのほかの極性作用剤の例は、レミングトンの薬学(第16版、1980年、ペンシルベニア州、イーストンのマックパブリッシング社により出版;及びグッドマン及びギルマンによる「治療法の薬理学的基礎」、ロンドンのマクミランカンパニーにより1980年出版、第6版、本願に引用し援用する)に開示されている。さらに、関心のある作用剤には、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺生剤、防カビ剤、殺藻剤、防虫剤、殺鼠剤、抗酸化剤、防腐剤、植物成長阻害剤、植物成長促進剤、化学反応剤、消毒薬、殺菌剤、食品、発酵剤、食品補完剤、化粧品、栄養剤、ビタミン類、医薬品、機能性食品、ビタミン類、性的滅菌剤、妊性促進剤、妊性阻害剤、微生物減衰剤、空気清浄剤、又はその使用環境の利益になるそのほかの作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
そのほかの関心のある作用剤には、例えば荷電した分子、分子複合体、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ラウリル酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩及びオレイン酸塩のような薬理上許容可能な塩のような種々の形態における有機化合物及び無機化合物が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグ及び例えば、エステル類、エーテル類及びアミド類のようなプロドラッグの誘導体も包含される。
【0058】
固形粒子、顆粒、マイクロカプセルに入れた固体、マイクロカプセルに入れた液体、粉末及び被覆された粒子の形態で、一つ又はそれより多くの関心のある作用剤、好ましくは、極性作用剤が本発明の送達システムに存在することができ、例えば、関心のある作用剤は複数の別個の活性粒子を含んでもよい。水溶性にする形態において水不溶性の関心のある作用剤を用いることができ、送達システムから放出される際、使用環境に応じて、酵素加水分解により、pHにより又は代謝過程により、それを元々の、又は生物学的に活性のある形態に変換してもよい。
【0059】
送達システムはまた、腸溶性のポリマー又は一つ又はそれより多くのpH感受性のバリアポリマーを含んでもよい。送達システムは
i)例えば、圧縮若しくは粉砕によって作製されたマトリクス型の固体緻密体、又は湿式若しくは乾式の押し出しで作製されたマトリクス型の押し出し球状体;
ii)造粒された、又はマイクロカプセルに入れて形成された、固体緻密体に圧縮してもよく、又はカプセルに充填されてもよい粒子状物質;又は
iii)カプセルに充填された、又は好適な液体ビヒクルに懸濁された、乾燥混合物を含む球状体、緻密体
であってもよい。
【0060】
さらに、本明細書で記載するように、送達システムは、必要に応じて送達放出の速度及び持続時間を達成する好適な作用剤と組み合わせてもよい。いかなる様式でも限定とはみなされない例については、遅延放出のためにヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP55)を添加してもよい(実施例1Bを参照のこと)。当業者に既知であろうそのほかの添加物を加えてもよい。
【0061】
また、逆ミセルが分散された混合物で形成されるように、対象への投与に先立って送達システムを分散してもよい。いかなる様式でも限定とはみなされない例については、本発明の送達システムを液体の中で分散させてもよく、必要に応じて経口で又は注射の形態で該液体を投与してもよい。
【0062】
今や図1を参照して、グルコファージXR(500mgのメトフォルミン)を実施例1A(徐放性製剤)で記載されるように調製した500mgのメトフォルミンを含む逆ミセル送達システムと比較した溶解プロフィールを示す。結果は、例えば、関心のある治療剤のような、しかしこれに限定されない関心のある作用剤を送達するのに逆ミセル送達システムを用いてもよいことを実証している。
【0063】
今や図2を参照して、実施例1B(遅延放出性製剤)に従って調製された本発明の逆ミセル送達システムにおいて製剤化された500mgのメトフォルミンの溶解プロフィールを示す。結果は、メトフォルミンのような極性薬剤及びそのほかの極性作用剤を送達するのに本発明の送達システムを用いてもよいことを示唆している。
【0064】
今や図3を参照して、試験管内での送達システムの膜貫通性輸送の能力を測定するために採用してもよい二相式溶解システムの図示を示す。図4を参照して、水性相での陽イオン性両親媒性物質、塩化セチルピリジニウムの存在下又は非存在下における、水/オクタノールシステムのオクタノール層への染料サンセットイエローの輸送プロフィールを示す。図5を参照して、水性相での陰イオン性両親媒性物質、ラウリル硫酸ナトリウムの存在下又は非存在下における、水/オクタノールシステムのオクタノール層への染料メチレンブルーの輸送プロフィールを示す。図4及び図5で説明された結果は、水性相における両親媒性化合物の非存在下では、極性染料のオクタノール層への有意な輸送を行うことができないことを示している。しかしながら、極性染料及び両親媒性化合物の双方を最初に水性相に加えると、オクタノール/水の界面を横切ってオクタノール層に入る逆ミセルが形成される。
【0065】
図6に示されるのは、当該技術で既知のグルコファージXR(500mgのメトフォルミン)送達システム及び本発明の逆ミセル送達システム(実施例1Aに従って調製された、徐放性製剤)についての非水性オクタノール相へのメトフォルミンの放出を示すプロフィールの比較である。
【0066】
一般に、図4〜6に示される結果は、逆ミセル送達システムが、例えば極性治療剤のような、しかし、これに限定されない極性作用剤の相対的に非極性の環境への移行を高めることを実証している。これらの結果は、本発明の逆ミセル送達システムが、GITを介した極性作用剤の送達及び対象の全身性循環への送達を高めることをさらに示唆している。
【0067】
図7を参照して、当該技術で既知のグルコファージXR(500mgのメトフォルミン)送達システム及び同等の量のメトフォルミンを含有する本発明の逆ミセル送達システム(500mgの徐放性製剤、実施例1Aに従って調製された)についてのメトフォルミンの血漿プロフィールの比較を示す。図7に示される結果が、本発明のメトフォルミン製剤は約330mcg分/mlのAUCを提示するが、グルコファージXR500製剤は約250mcg分/mlのAUCを提示することを示すということは、本発明の逆ミセル送達システムは、当該技術で既知のそのほかの製剤に比べてさらに大きな生物学的利用率を提示することを示唆している。
【0068】
今や図8を参照して、当該技術で既知のグルコファージXR(500mgのメトフォルミン)送達システム及び実施例1Bに従って調製された本発明の逆ミセル送達システム(遅延放出性製剤)についてのメトフォルミンの血漿プロフィールの比較を示す。結果は、本発明の逆ミセル送達システムは、当該技術で既知のそのほかの製剤よりも、さらに長い時間にわたって、さらに均一な用量を送達することが可能であることを示している。従って、本発明の逆ミセル送達システムは、対象に投与したとき、生物学的利用率を改善し、生物学的に利用可能な用量の均一性を高める可能性がある。
【0069】
本発明の実施形態の代わりの態様では、マトリクス組成物に少なくとも一つのイオン性の両親媒性化合物又は界面活性剤を含む逆ミセル送達システムが提供され、該マトリクス組成物は、そのほかの医薬補助剤と共に、又はそれなしで、一つ又はそれより多くの関心のある作用剤を含有する。本発明の送達システムは、1次、ゼロ次、ほぼゼロ次の放出動態で、治療上実用的な時間にわたって、制御された様式にて一つ又はそれより多くの関心のある作用剤を放出することができる。徐放性製剤又は遅延放出性製剤の例は実施例1に提示される。
【0070】
本発明の実施形態のさらなる態様では、工業的に利用可能であり、毒性がなく、加工しやすい好適な賦形剤を使用することによって遅延放出をもたらす経口投与に好適な、例えば、マトリクス系の固形緻密体のような、しかし、これに限定されない固形の医薬用投薬形態が提供される。医薬用投薬形態には、例えば、当業者に明らかであるような、直接圧縮法、湿式造粒法、乾式造粒法、加熱融解造粒法、マイクロカプセルへの封入法、スプレー乾燥法、及び押し出し法によって得られる錠剤、顆粒、ペレット、懸濁体、押し出し球状体、又は緻密体が挙げられるが、これらに限定されない。硬質のゼラチンカプセルのようなそのほかの固形投薬形態も、当該技術で一般に知られているように、乾燥混合物、顆粒、懸濁体、球状体、ペレット、錠剤及びこれらの組み合わせから得ることもできる。
【0071】
医薬用投薬形態はまた、必要に応じて、例えば、一つ又はそれより多くの粘度増強剤、腸溶性ポリマー、pH特異的バリアポリマー、希釈剤、付着防止剤、流動促進剤、結合剤、可塑剤、可溶化剤、チャネリング剤、安定剤、圧密増強剤、湿潤剤、充填剤、緩衝剤、芳香剤、吸収剤、甘味剤、着色剤、潤滑剤、又はこれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない賦形剤を包含してもよい。
【0072】
固形の投薬形態を組み入れる製剤はさらに、風味剤、着色料、希釈剤、結合剤、可塑剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、圧密増強剤、チャネリング剤、流動促進剤、潤滑剤、被覆ポリマー及び付着防止剤を含む、当該技術で既知のものから選択することができる1又はそれより多くの追加の補助剤を包含してもよい。
【0073】
本明細書で教示されるような投薬形態及び逆ミセル送達システムは、医薬用途、獣医の用途、食品用途、殺虫剤用途、園芸用途、除草用途、農業用途、化粧品用途、工業用途、洗浄用途及び製菓用途に使用されてもよい。
【0074】
また、本発明に従って、一つ又はそれより多くの作用剤を、それを必要とする対象に送達するための送達システムの使用が提供される。好ましくは、作用剤は、薬剤又は治療剤である。それを必要とする対象は、例えば、ヒト対象のような、しかし、これに限定されない、いかなる哺乳類対象を含んでもよい。
【0075】
さらに、本発明に従って、治療剤を、それを必要とする対象に送達する方法が提供される。該方法は、
i)関心のある極性治療剤と共に送達システムを製剤化すること;及び
ii)治療剤を含む送達システムを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0076】
投与する工程は、経口投与を含んでもよいが、これに限定されない。
【0077】
上記の記載は、いかなる様式においても請求される本発明を限定することを意図するものではない。さらに、特徴の考察された組み合わせが本発明の解決に絶対的に必要でなくてもよい。
【0078】
以下の実施例において本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は単に説明目的であり、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するのに使用すべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0079】
実施例1:逆ミセルマトリクス錠剤の調製
単純なマトリクス錠剤の製造方法によって逆ミセル送達システムを調製することができる。先ず、関心のある作用剤をスクリーニングしてイオン性両親媒性物質に適した粒度分布を得る。スクリーニングした作用剤を高剪断力ミキサーで約2〜5分間十分に混合する。得られた混合物を均質性について調べる。得られた混合物をさらに、ポリマーのマトリクス組成物を形成するのに必要とされるそのほかの好適な賦形剤と混合する。任意で、例えば、湿式造粒、乾式造粒、加熱融解造粒又は押し出し造粒のような多数の従来の造粒技術によってポリマー組成物を達成してもよい。どんな方法であれ、マトリクス組成物をさらに滑らかにし、好適な錠剤プレスで圧縮して緻密体を形成してもよい。所望のポリマー及びイオン性両親媒性物質から成るポリマー組成物でそのような緻密体をさらに被覆してもよい。被覆技術は、当該技術の範囲内で既知である。
【0080】
マトリクス錠剤の形態での逆ミセル送達システムの製造方法は一般に、以下の工程:
a)イオン性両親媒性物質−極性作用剤の混合物の調製
b)ポリマーのマトリクス成分の調製
c)a)とb)を混合し又は造粒して逆ミセルの混合物又は顆粒を形成すること
d)混合物を好適な緻密体に圧縮すること
e)被覆ポリマー−イオン性両親媒性物質の組成物の調製
f)被覆調製物e)によって緻密体を被覆すること
を含むが、これらに限定されない。
【0081】
実施例1A.塩酸メトフォルミン500mgの徐放性錠剤(表1)
【0082】
【表1】

【0083】
実施例1B.塩酸メトフォルミン500mgの遅延放出性錠剤(表2)
【0084】
【表2】

【0085】
実施例1C.塩酸ラニチジン300mgの徐放性錠剤(表3)
【0086】
【表3】

【0087】
実施例1D.塩酸ガバペンチン400mgの徐放性錠剤(表4)
【0088】
【表4】

【0089】
実施例1E.塩酸カプトプリル100mgの統御送達錠剤(表5)
【0090】
【表5】

【0091】
実施例2:試験管内での薬剤放出の測定
従来のUSP溶解試験は、送達システムからの試験管内での薬剤放出を評価することができる。以下の試験条件を使用する:
試験媒体:リン酸緩衝液pH6.8又は脱イオン水pH7
容積:900ml又は1000ml
温度:摂氏37度±0.5度
撹拌速度:40rpm、50rpm又は100rpm
装置の型:II型(パドル式)又はI型(バスケット式)
【0092】
6、12、又は24時間の持続時間にわたって採取した等量の試料から、放出された活性成分の量を測定する。UV分光光度計又はHPLC分析によって化合物を定量してもよい。
【0093】
上述(実施例1A)のように調製した極性作用剤、例えば、塩酸メトフォルミン500mgの徐放性錠剤と従来技術の徐放性製剤(グルコファージXR)との比較溶解プロフィールを図1に示す。PBS、pH7.0にてII型溶解装置で錠剤を調べた。
【0094】
上述(実施例1B)のように調製したメトフォルミン500mgの遅延放出性錠剤の溶解プロフィールを図2に示す。最初の3時間、人工胃液媒体(SGF)pH2.5を用い、続いてさらに21時間、人工腸液媒体(SIF)pH6.8を用いて、II型溶解装置にて錠剤を調べた。
【0095】
実施例3:逆ミセル輸送の試験管内の実験的証拠
本発明に係る新規の逆ミセルは単相水性流体環境において形成される。これらの逆ミセルは親油性の生体膜を横切って輸送可能である。本発明に係る逆ミセルの存在及び輸送性を実証するために、図3に示す二相の水−オクタノールシステムを用いて実験を行い、水相で形成された逆ミセルの有機相への輸送をモニターした。水/オクタノールシステムを用いて、水性/親油性の生体膜の界面を模倣し、本発明の逆ミセルが生体内でそれを介して輸送される。
【0096】
極性の酸性染料及び陽イオン系界面活性剤を含む逆ミセルの輸送
この実験では、極性の酸性染料と陽イオン系界面活性剤(両親媒性化合物)を最初に水性層に加えて着色された溶液を形成した。その後、オクタノールの層をゆっくり加えて、水性の着色溶液の上に透明の識別可能な層を形成した。双方の液層を50rpmで撹拌した。4mlの試料を上の層(オクタノール)から取り、染料含量について480nmにて分光光度的に分析した。試料採取時間は、水性層における化合物の溶解後、30分、60分、90分、120分、150分、180分、240分、300分、360分及び420分であった。オクタノール相への染料の移動は、時間経過に伴うオクタノール層の色の変化を視覚的にモニターすることによっても追跡した。陽イオン系界面活性剤(両親媒性物質)が存在しない対照実験も同時に行った。実験の結果を図4に示す。実験の設定に関する具体的な詳細を以下に示す。
【0097】
陽イオン性両親媒性物質:塩化セチルピリジニウム(CPC)USP
使用量:20.52mg又は0mg(対照)
極性の酸性染料:2−ヒドロキシ−1−(4−スルホネートフェニルアゾ)ナフタレン
−6−スルホネート2ナトリウム(サンセットイエロー又はFD&Cイエロー#6;p H7の脱イオン水中、485nmで最大吸収)使用量:30.32mg
試験系:二層の水−オクタノール溶解媒体に加えて二重パドル撹拌子から成る改変USP II型溶解装置
水性媒体:600mlの脱イオン水(pH7)
親油性媒体:400mlのオクタノール
温度:37℃
回転速度:50rpm
【0098】
極性の染料と両親媒性化合物の双方を最初に水性層に加えた実験は、時間経過と共に結果として、オクタノール層における黄色の進行性の発色及び極性作用剤の濃度の増加を生じた。対照的に、対照実験では、オクタノール層における有意な発色又は極性作用剤の濃度の増加はなかった。従って、これらの結果は、両親媒性化合物の非存在下では、極性作用剤はオクタノール層に有意に輸送されないことを示している。しかしながら、両親媒性化合物の存在下では、極性作用剤とともに逆ミセルが形成され、それは、水/オクタノールの界面を越えてオクタノール相に入ることができる。
【0099】
極性の塩基性染料及び陰イオン系界面活性剤を含む逆ミセルの輸送
この実験では、極性の塩基性染料と陰イオン系界面活性剤(両親媒性化合物)を最初に水性層に加えて着色された溶液を形成した。その後、オクタノールの層をゆっくり加えて、水性の着色溶液の上に透明の識別可能な層を形成した。双方の液層を50rpmで撹拌した。4mlの試料を上の層(オクタノール)から取り、染料含量について480nmにて分光光度的に分析した。試料採取時間は、水性層における化合物の溶解後、30分、60分、90分、120分、150分、180分、240分、300分、360分及び420分であった。オクタノール層への染料の移動は、時間経過に伴ったオクタノール層の色の変化を視覚的にモニターすることによっても追跡した。陰イオン系界面活性剤(両親媒性物質)が存在しない対照実験も同時に行った。実験の結果を図5に示す。実験の設定に関する具体的な詳細を以下に示す。
【0100】
陰イオン性両親媒性物質:ラウリル硫酸ナトリウムUSP
使用量:20.62mg又は0mg(対照)
極性の塩基性作用剤:塩化3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン−5−イウム
(ベーシックブルー9、メチレンブルーUSP、668nm及び690nmで最大吸収 )
使用量:30.15mg
試験系:二層の水−オクタノール溶解媒体に加えて二重パドル撹拌子から成る改変USP II型溶解装置
水性媒体:600mlの脱イオン水(pH7)
親油性媒体:400mlのオクタノール
温度:37℃
回転速度:50rpm
【0101】
極性の染料と両親媒性化合物の双方を最初に水性層に加えた実験は、時間経過と共に結果として、オクタノール層における青色の進行性の発色及び極性作用剤の濃度の増加を生じた。対照的に、対照実験では、オクタノール層における有意な発色又は極性作用剤の濃度の増加はなかった。従って、これらの結果は、両親媒性化合物の非存在下では、極性作用剤はオクタノール層に有意に輸送されないことを示している。しかしながら、両親媒性化合物の存在下では、極性作用剤とともに逆ミセルが形成され、それは、水/オクタノールの界面を越えてオクタノール相に入ることができる。
【0102】
極性の塩基性作用剤と陰イオン系界面活性剤を含む逆ミセルの輸送
この実験では、上述のように調製したメトフォルミン500mgの錠剤を水性相(脱イオン水又はリン酸緩衝液)に投入し、溶解させた。その後、オクタノールの層をゆっくり加え、水性層の上に識別可能な層を形成した。二重パドルの撹拌装置を用いて双方の層を同時に確実に撹拌した。上(オクタノール)の層から5mlの試料を取り、メトフォルミン含量について232nmで分光光度的に分析した。試料採取時間は、水性層に錠剤を溶解した後、30分間隔であった。従来技術の製剤、グルコファージXR(メトフォルミン500mg)と共に同様の実験を行った。実験の結果を図6に示す。実験の設定に関する具体的な詳細を以下に示す。
【0103】
装置の説明
容器:4000ml、2000ml又は1000mlのガラス製ビーカー
撹拌子:二重パドルの回転シャフト
温度:摂氏37度±摂氏0.5度
撹拌の速度:40rpm又は50rpm
試験媒体:水性相:900ml又は600mlの脱イオン水(pH7)、PBS(pH6.8)、又は好適な水性媒体。油相:400ml又は200mlのオクタノール又は好適な親油性媒体。水性相と油相の比は実験的に決定することができ、1:0.25〜1:1の範囲内であってもよい。
【0104】
図6に示される結果は、本発明の逆ミセル送達システムによって、例えば、メトフォルミンのような、しかし、これに限定しない極性作用剤が事実上、親油性バリアを横切って輸送されてもよいことを実証している。
【0105】
実施例4:生体内における薬剤の放出
逆ミセルメトフォルミンHCLの形成
メトフォルミンは、インスリン非依存性糖尿病又はII型糖尿病(NIDDM)の治療に使用されるビグアニド部類の血糖降下剤である。即放性投薬形態及び徐放性投薬形態はそれぞれ、グルコファージ(TM−ブリストルマイヤーズスクイブ)及びグルコファージXR(TM−ブリストルマイヤーズスクイブ)のように普通、塩酸塩の形態で市販されている。
【0106】
塩酸メトフォルミンはクラスIIIの生物製剤薬であり、GITの下部では本質的に乏しい透過性を有し、その結果ほとんど専ら、GITの上部での吸収となっている。
【0107】
当該技術で既知の経口の生物学的利用率が40〜60%の範囲内であり、一般に投薬量が増えるにつれてそれが低下するということは、飽和吸収過程又は透過性/輸送時間が限られた吸収を示唆している。それはまた、極めて高い水への溶解度を有する(25℃にて>300mg/ml)。このことは結果として、複数の投与から高い生物学的利用率を達成することと同様に製剤からの緩慢な放出を提供することを困難にしうる。メトフォルミンは普通、食事と運動だけで血中グルコースをコントロールできないII型糖尿病患者に、1日2回、又は1日3回又は1日4回服用するように処方される。メトフォルミンの難問は、複数の投薬量が与えられたとき、観察される生物学的利用率に対する投薬量の比例性が欠如していることである。このことが、従来の複数の投薬量の代替としての1日1回の徐放性投薬形態の開発の障害となっている。従来、1日1回又は2回の徐放性の投薬形態は、時間帯にわたって、通常、12時間又は24時間の時間枠にわたって放出されるべき1投薬量に複数の単回投薬量の同等物を含有する。持続的投薬放出が有効であるためには、投薬量に比例する又はほぼ比例する生物学的利用率を提供すべきである。メトフォルミン及びそのほかの類似するクラスIIIの生物製剤薬は、前述の投薬量−生物学的利用率の関係の欠如を経験している。本発明は、逆ミセル薬剤送達を介した生物学的利用率を増強するメカニズムを提供することにより、これらの問題を克服しようと探索した。そのような生物学的利用率を可能にする送達システムは、メトフォルミン及びそのほかのクラスIII生物製剤薬候補の吸収を高める。
【0108】
一晩絶食の後、6人の健常な男性志願者に、上述のように調製した500mgの塩酸メトフォルミンを含有する錠剤又は従来技術のメトフォルミンの500mgの徐放性錠剤(グルコファージXR)を投与した。試験は、投薬間に1週間の洗い流し期間を置いた二方向交差方式の設計であった。投薬後、0.5、1.0、1.5、2、3、5、7、9、11、13、15、17、21、24、及び30時間に血液試料を採取し、メトフォルミンについて分析した。平均血漿濃度を時間に対してプロットし、台形法を用いて時間に対する血漿濃度の下の面積(AUC)を算出した。AUCが薬剤の生物学的利用率を示す。本明細書で記載されたように調製した(実施例1A)逆ミセルのメトフォルミン製剤の2つの変形物の血漿プロフィール及び相当するAUCを、ヒト対象において、従来技術のグルコファージXR製剤と比較した。
【0109】
図7は、実施例1A(徐放性形態)の手順に従って調製した、本発明の逆ミセル送達システムとグルコファージXRの比較試験の結果を示す。
【0110】
図8は、実施例1B(遅延放出性形態)に従って調製した、本発明の逆ミセル送達システムとグルコファージXRの結果を示す。実施例1Aは、胃の区分で内容物の放出を開始するように設計した徐放性製剤である。実施例1Bは、中部及び下部の消化管でその内容物を放出するように設計した遅延放出性製剤である。
【0111】
結果は、塩酸メトフォルミンを送達するのに、さらに高い生物学的利用率を達成するのに、並びに対象の消化管の中部及び下部における吸収を高めるのに製剤を用いてもよいことを示唆している。従って、本発明の送達システムは、ヒト対象においてNIDDMの治療に採用されてもよい。
【0112】
参考文献はすべて本明細書に引用し、援用する。
【0113】
好ましい実施形態に関して本発明を記載してきた。しかしながら、本明細書に記載するような本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形及び修正を行うことができることは当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆ミセル及び関心のある極性作用剤を含む膜貫通性の送達システム。
【請求項2】
前記逆ミセルが少なくとも一つのイオン性両親媒性化合物を含んでおり、前記関心のある極性作用剤が少なくとも一つの極性のイオン化可能な作用剤を含んでいる請求項1の送達システム。
【請求項3】
前記両親媒性化合物が流体環境でミセルを形成することが可能である陰イオン系界面活性剤である請求項2の送達システム。
【請求項4】
前記両親媒性化合物が流体環境でミセルを形成することが可能である陽イオン系界面活性剤である請求項2の送達システム。
【請求項5】
前記関心のある作用剤が、pH7.4にて水とオクタノールとの間での約10未満の分配係数を特徴とする請求項2の送達システム。
【請求項6】
前記両親媒性化合物が約0.5重量%〜約500重量%の量で存在する請求項2の送達システム。
【請求項7】
前記作用剤が、クラスIIIの生物製剤学的分類の治療上活性のある化合物であり、高い溶解性及び低い透過性を呈する請求項2の送達システム。
【請求項8】
関心のある作用剤が複数の別個の活性粒子を含む請求項2の送達システム。
【請求項9】
前記両親媒性化合物が、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤及び両性イオン系界面活性剤より成る群から選択されるイオン系界面活性剤又はイオン系界面活性剤の混合物である請求項2の送達システム。
【請求項10】
陰イオン系界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム又はカリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、及びこれらの組み合わせより成る群から選択される請求項9の送達システム。
【請求項11】
陽イオン系界面活性剤が、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)、臭化セチル−トリアンモニウム(CTAB)、臭化セチルピリジニウム(CPB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DOTAC)、パーフルオロノナン酸ナトリウム(SPFN)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTMA)、又はこれらの組み合わせより成る群から選択される請求項9の送達システム。
【請求項12】
固形の錠剤、マトリクス錠剤、顆粒又はカプセルへと製剤されている請求項9の送達システム。
【請求項13】
一つ又はそれより多くの薬学上許容可能な賦形剤をさらに含んでなる請求項9の送達システム。
【請求項14】
前記一つ又はそれより多くの薬学上許容可能な賦形剤が、一つ又はそれより多くの粘度増強剤、腸溶性ポリマー、pH特異的バリアポリマー、希釈剤、付着防止剤、流動促進剤、結合剤、可溶化剤、チャネリング剤、湿潤剤、緩衝剤、芳香剤、吸収剤、甘味剤、着色剤、潤滑剤及びこれらの組み合わせより成る群から選択される請求項13の送達システム。
【請求項15】
関心のある作用剤が、一つ又はそれより多くの鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗アメーバ剤、殺トリコモナス剤、抗パーキンソン剤、抗マラリア剤、痙攣防止剤、抗うつ剤、関節炎防止剤、抗真菌剤、血圧降下剤、解熱剤、抗寄生虫剤、抗ヒスタミン剤、αアドレナリン作動薬、αブロッカー、麻酔剤、気管支拡張剤、殺生剤、殺菌剤、静菌剤、βアドレナリン作用性ブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、循環器薬、避妊薬、充血緩和剤、利尿剤、抑制剤、診断薬、電解質、睡眠薬、ホルモン、高血糖薬、筋弛緩薬、筋収縮薬、眼科薬、副交感神経様作用薬、精神賦活剤、鎮静剤、交感神経様作用薬、精神安定剤、泌尿器薬、膣薬、殺ウイルス剤、ビタミン、非ステロイド系抗炎症剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ポリペプチド、タンパク質、催眠薬及びこれらの組み合わせより成る群から選択される請求項2の送達システム。
【請求項16】
システムが、圧縮法若しくは粉砕法によって作製されるマトリクス型の固形緻密体、又は乾式若しくは湿式の押し出し法によって作製されるマトリクス型の押し出し球状体から導かれる請求項9の送達システム。
【請求項17】
前記システムが、固形緻密体に圧縮されてもよく、又はカプセルに充填されてもよい粒子状物質を形成するべく造粒され又はマイクロカプセルに入れられている請求項9の送達システム。
【請求項18】
前記投薬形態が、造粒混合物、粒子状混合物、球状体混合物、緻密体混合物及び乾燥混合物より成る群から選択され、前記システムをカプセルに充填することができる、又は好適な液体ビヒクルに懸濁することができる請求項9の送達システム。
【請求項19】
一つ又はそれより多くの治療剤を、それが必要である対象に送達するための請求項2の送達システムの使用。
【請求項20】
i)関心のある作用剤が治療剤を含むような請求項2の送達システムを製剤化することと;
ii)前記送達システムをそれが必要である対象に投与することとを含んでいる、治療剤をそれが必要である対象に送達する方法。
【請求項21】
前記投与が経口投与を含む請求項20の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−163450(P2010−163450A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55000(P2010−55000)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【分割の表示】特願2003−552266(P2003−552266)の分割
【原出願日】平成14年12月13日(2002.12.13)
【出願人】(504220650)
【Fターム(参考)】