説明

使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法及び破砕処理ユニット

【課題】使用済みトナーカートリッジを粉塵爆発を発生させずに破砕処理することができる方法を提供する。
【解決手段】使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆い、その状態で該カートリッジを、水性の泡集合体で塞がれた開口部を介して、内部に破砕手段を備える破砕装置に導入して、該カートリッジを水性の泡集合体に覆われた状態で破砕することを特徴とする使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵爆発を引き起こすことなく安全に、使用済みトナーカートリッジを破砕するための方法、及びその方法の実施に有利に使用することができる破砕処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンターなどの画像形成装置で使用されるトナーカートリッジは、一般に多数の金属部品と樹脂部品とから構成されている。このため、トナーカートリッジを使用後に細かく破砕して、得られた破砕物を金属部品と樹脂部品とに分別、回収して再利用する処理が実施されている。しかしながら、使用済みトナーカートリッジの破砕を密閉された破砕装置を用いて行なうと、トナーカートリッジの内部に残存しているトナーが破砕装置内にて飛散し、粉塵爆発を引き起こすことがある。
【0003】
特許文献1には、破砕装置内での粉塵爆発の発生を防止する方法として、破砕装置内部の破砕刃の周囲を、不活性ガスにより発泡させた泡集合体(不活性ガス発泡層)で覆う方法が開示されている。この特許文献1によれば、被破砕物との接触により火花が発生し易い破砕刃の周囲に不活性ガスで発泡させた泡集合体を覆うことにより、火花が粉塵や可燃性ガスに引火するのが抑えられ、これにより粉塵爆発の発生が防止される。
【0004】
特許文献2には、同じく破砕装置内での粉塵爆発の発生を防止する方法として、破砕装置内に不活性ガスを導入して、使用済みトナーカートリッジを不活性ガス雰囲気下にて破砕する方法が記載されている。この特許文献にはまた、破砕装置の出口に、使用済みトナーカートリッジの破砕処理によって飛散するトナーを回収するための吸引システムを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−47682号公報
【特許文献2】特開2000−51730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1、2に記載されている粉塵爆発の防止方法は、破砕装置に不活性ガスを導入するため、運転コストが高いという問題がある。
従って、本発明の目的は、不活性ガスを特に必要とすることなく、粉塵爆発の発生を防止することができる使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法、及びその破砕処理方法の実施に有利に用いることができる使用済みトナーカートリッジの破砕処理ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、使用済みトナーカートリッジの破砕処理を、使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆った状態で行ない、さらに破砕装置に使用済みトナーカートリッジを導入するための開口部を水性の泡集合体で塞ぐことによって、該泡集合体として空気で発泡させた泡集合体を用いても破砕装置内での粉塵爆発の発生を高い確実性で防止することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
従って、本発明は、使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆い、その状態で該カートリッジを、水性の泡集合体で塞がれた開口部を介して、内部に破砕手段を備える破砕装置に導入して、該カートリッジを水性の泡集合体に覆われた状態で破砕することを特徴とする使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法にある。
【0009】
上記本発明のトナーカートリッジの破砕処理方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)使用済みトナーカートリッジを、予め蓄積された水性の泡集合体に投入することにより、使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆う。
(2)トナーカートリッジの破砕により放出されるトナーを吸引分離する工程を含む。
【0010】
本発明はまた、水性の泡集合体を発生させる泡発生装置、該泡発生装置に接続する泡集合体供給管、上部に該泡集合体供給管に接続する泡集合体導入口と使用済みトナーカートリッジ導入口とを備え、底部に開口部を備える泡集合体蓄積貯留タンク、そして上部で該泡集合体蓄積貯留タンクの開口部に接続し、内部に破砕手段を備える破砕装置を含む使用済みトナーカートリッジ破砕処理ユニットにもある。
【0011】
上記本発明のトナーカートリッジ破砕処理ユニットでは、破砕装置が、破砕手段の下方側面に、トナー吸引装置に接続する排気口を備え、該排気口のさらに下方に破砕物排出口を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法は、破砕手段だけでなく、トナーカートリッジを水性の泡集合体で覆い、さらに破砕装置に使用済みトナーカートリッジを導入するための開口部を水性の泡集合体で塞ぐため、空気で発泡させた泡集合体を用いた場合でも、使用済みトナーカートリッジを安全に連続的に破砕処理することができる。この空気で発泡させた泡集合体は、構成が比較的単純な装置を用いて発生させることができるため、従来技術で用いられている不活性ガスで発泡させた泡集合体よりも安価に製造することができるという利点がある。
また、本発明の使用済みトナーカートリッジ破砕処理ユニットを用いることによって、本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法を有利に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法を実施するのに有利に使用することができる破砕処理ユニットの一例の構成図である。
【図2】本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法を利用して、使用済みトナーカートリッジの破砕処理と、破砕処理により放出されるトナーや破砕物の回収処理とを行なうシステムの一例の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において破砕処理の対象となる使用済みトナーカートリッジは、複写機やレーザープリンターなどの画像形成装置で使用された後のトナーカートリッジを意味する。なお、本発明において、トナーカートリッジは、トナーが封入されたカートリッジのみならず、現像器、感光・帯電器、トナー供給器及び転写器などが一体として構成されたカートリッジ構造体を含む。
【0015】
以下、本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法及び破砕処理ユニットについて、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法を実施するのに有利に使用することができる破砕処理ユニットの一例の構成図である。
図1において、使用済みトナーカートリッジの破砕処理ユニット1は、泡発生装置2、泡集合体供給管7、泡集合体蓄積貯留タンク9、そして破砕装置13からなる。
【0017】
泡発生装置2は、上部が開口し、その内部には界面活性剤水溶液タンク5から供給された界面活性剤水溶液3が貯留されている。泡発生装置2の底部には、複数個の気体噴射口を有する気体噴射ノズル4が備えられている。気体供給装置6から送られた気体を気体噴射ノズル4から噴射することにより、界面活性剤水溶液3が発泡し、水を主成分とする水性の泡集合体が得られる。界面活性剤水溶液の発泡用気体には、通常は空気を用いることができるが、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを用いてもよい。
【0018】
界面活性剤水溶液3に含まれる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性のいずれのものを使用することができる。アニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホ脂肪酸メチルエステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸、アルキルアリールエーテルリン酸塩を挙げることができる。カチオン性界面活性剤の例としては、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、第一級〜第三級脂肪族アミン塩を挙げることができる。両性界面活性剤の例としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミンオキシドを挙げることができる。非イオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコキシドを挙げることができる。これらの界面活性剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0019】
界面活性剤は、アニオン性(特に、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸)及び両性(アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミンオキシド)であることが好ましい。界面活性剤水溶液中の界面活性剤の濃度は0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましい。
【0020】
泡集合体供給管7は、下端で泡発生装置2の開口に接続している。泡発生装置2にて発生した水性の泡集合体8は、泡集合体供給管7の内部を下端から上端に向けて押し上げられるようにして移動する。
【0021】
泡集合体蓄積貯留タンク9は、上部に泡集合体供給管7に接続する泡集合体導入口10と使用済みトナーカートリッジ導入口11とを備え、底部に開口部12を備えている。泡集合体蓄積貯留タンク9の底部は、開口部12が下端となるように傾斜している。泡集合体導入口10から導入された泡集合体8は、泡集合体蓄積貯留タンク9の底部の傾斜に沿って流れて、開口部12を塞ぐようにして泡集合体蓄積貯留タンク9の下部に蓄積貯留される。
【0022】
破砕装置13は、上部で泡集合体蓄積貯留タンク9の開口部12に接続し、内部に破砕手段14を備える。図1において、破砕手段14は二軸ローラ式破砕機であり、二つの破砕ローラ15a、15bの間に使用済みトナーカートリッジを挟んで、圧縮破砕する。破砕手段14には、ハンマー式破砕機、カッター式破砕機を用いることもできる。
【0023】
破砕装置13は、破砕手段14の下方側部に、トナー吸引装置(図示せず)に接続する排気口16を備え、排気口16のさらに下方に破砕物排出口17を備えている。
【0024】
図1の破砕処理ユニット1において、使用済みトナーカートリッジ19は、コンベア18によって、泡集合体蓄積貯留タンク9の使用済みトナーカートリッジ導入口11に搬送される。使用済みトナーカートリッジ導入口11に導入された使用済みトナーカートリッジ19は、予め泡集合体供給管7から導入され、泡集合体蓄積貯留タンク9の下部に蓄積貯留されている泡集合体8の中に投入され、その全体が泡集合体で覆われる。
【0025】
次いで、泡集合体で覆われた使用済みトナーカートリッジ19は、泡集合体蓄積貯留タンク9の開口部12を通過して、泡集合体で覆われた状態で破砕装置13に導入され、破砕手段14によって破砕される。使用済みトナーカートリッジ19の破砕処理によって放出されるトナー20は、泡集合体8で捕捉されて落下し、排気口16にて吸引分離され除去される。使用済みトナーカートリッジ19の破砕物21は、破砕物排出口17より外部に取り出される。
【0026】
本発明では、開口部12が泡集合体8で塞がれているため、開口部12から破砕装置13には空気が浸入しにくい。開口部12から破砕装置13に導入された使用済みトナーカートリッジ19は泡集合体8で覆われているため、破砕手段14と使用済みトナーカートリッジ19とが接触する部分に直接大気が触れない。また、使用済みトナーカートリッジ19の破砕処理によって放出されるトナー20が泡集合体8で捕捉されるため、破砕装置13内に飛散するトナー量が少ない。これらの効果により、破砕装置13内での粉塵爆発の発生が防止される。
【0027】
破砕装置13内の泡集合体8の嵩密度が高い、すなわち泡集合体の泡の膜が厚いと、泡集合体8により捕捉されたトナー20に付着する界面活性剤水溶液(泡成分)の量が多くなり、泥状や粘稠状になり、トナーを吸引分離するのが難しくなる。このため、泡集合体蓄積貯留タンク9に導入される泡集合体8は、嵩密度が0.002g/cm3以下であることが好ましく、0.001g/cm3以下であることがより好ましく、0.0005g/cm3以下であることが特に好ましい。また、泡集合体中の泡の平均直径は、3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることが特に好ましい。
【0028】
泡集合体8の嵩密度や泡の平均直径は、界面活性剤の種類や噴射ノズルからの気体の噴射量によって調整することができる。また、泡集合体8は、発生してから時間の経過と共に泡の膜厚が薄くなり、嵩密度が低くなるため、泡集合体供給管7内での泡集合体の滞留時間によっても嵩密度を調整することができる。
【0029】
図2は、本発明の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法を利用して、使用済みトナーカートリッジの破砕処理と、破砕処理により放出されるトナーや破砕物の回収処理とを行なうシステムの一例の全体構成図である。なお、破砕処理ユニット1は、図1に示したユニットを使用している。
【0030】
図2において、使用済みトナーカートリッジ19は、トナーカートリッジ収容タンク22に一旦貯留される。次いで使用済みトナーカートリッジ19は、コンベア18にて、破砕処理ユニット1に送られる。破砕処理ユニット1に送られた使用済みトナーカートリッジ19は、上述の破砕処理により破砕され、トナー20が放出され、破砕物21が発生する。
【0031】
トナー20は、破砕処理ユニット1の排気口16から取り出されて、集塵機(トナー吸引装置)23にて回収される。
【0032】
破砕物21は、破砕処理ユニット1の破砕物排出口17から取り出されてトロンメル(回転ふるい)24に送られる。トロンメル24において、微細な破砕物がふるい落とされて分離回収される。また、トロンメル24にて、破砕物に付着しているトナーや粉末状の破砕物が舞い上がり、吸引分離されてサイクロン25に送られる。サイクロン25にて、粒子径が相対的に大きい粉末状破砕物は分離回収され、残りのトナーは集塵機23にて回収される。
【0033】
次いで、破砕物は磁力選別機26に送られ、磁力選別機26にて鉄製金属部品の破砕物が分離回収された後、風力選別機27に送られる。風力選別機27にて相対的に比重が重い非鉄金属製金属部品の破砕物が分離回収された後、残りの樹脂部品の破砕物は破砕物収容容器28に送られ、回収される。
【0034】
トナーカートリッジ収容タンク22、破砕処理ユニット1の泡集合体蓄積貯留タンク9、磁力選別機26及び風力選別機27、並びに破砕物収容容器28の周囲は、それぞれ外部にトナーや粉末状の破砕物が飛散しないように、パイプラインを介して集塵機23に接続している。
【符号の説明】
【0035】
1 使用済みトナーカートリッジの破砕処理ユニット
2 泡発生装置
3 界面活性剤水溶液
4 気体噴射ノズル
5 界面活性剤水溶液タンク
6 気体供給装置
7 泡集合体供給管
8 泡集合体
9 泡集合体蓄積貯留タンク
10 泡集合体導入口
11 使用済みトナーカートリッジ導入口
12 開口部
13 破砕装置
14 破砕手段
15a、15b 破砕ローラ
16 排気口
17 破砕物排出口
18 コンベア
19 使用済みトナーカートリッジ
20 トナー
21 破砕物
22 トナーカートリッジ収容タンク
23 集塵機
24 トロンメル
25 サイクロン
26 磁力選別機
27 風力選別機
28 破砕物収容容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆い、その状態で該カートリッジを、水性の泡集合体で塞がれた開口部を介して、内部に破砕手段を備える破砕装置に導入して、該カートリッジを水性の泡集合体に覆われた状態で破砕することを特徴とする使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法。
【請求項2】
使用済みトナーカートリッジを、予め蓄積された水性の泡集合体に投入することにより、使用済みトナーカートリッジを水性の泡集合体で覆う請求項1に記載の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法。
【請求項3】
トナーカートリッジの破砕により放出されるトナーを吸引分離する工程を含む請求項1に記載の使用済みトナーカートリッジの破砕処理方法。
【請求項4】
水性の泡集合体を発生させる泡発生装置、該泡発生装置に接続する泡集合体供給管、上部に該泡集合体供給管に接続する泡集合体導入口と使用済みトナーカートリッジ導入口とを備え、底部に開口部を備える泡集合体蓄積貯留タンク、そして上部で該泡集合体蓄積貯留タンクの開口部に接続し、内部に破砕手段を備える破砕装置を含む使用済みトナーカートリッジ破砕処理ユニット。
【請求項5】
破砕装置が、破砕手段の下方側面に、トナー吸引装置に接続する排気口を備え、該排気口のさらに下方に破砕物排出口を備える請求項4に記載の使用済みトナーカートリッジ破砕処理ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234301(P2010−234301A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86431(P2009−86431)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(594159445)南開工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】